『七つの大罪』ぼちぼち感想

漫画『七つの大罪』(著:鈴木央)の感想と考察。だいたい的外れ。ネタバレ基本。

【感想】『七つの大罪』第310話 さよなら<七つの大罪>

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週刊少年マガジン 2019年 24号[2019年5月15日発売] [雑誌]

第310話 さよなら<七つの大罪

  • 夜が更けて降り始めた雪は、初夏のリオネス王都を たちまちのうちに白く埋めていった。
  • ぇくしょ
    既に20cm以上は積もっている。ハウザーは身を縮めてガタガタと震えた。
    「う゛ぅ゛~~~~ 寒ィ~~~!!!」「冬でもねえのに大雪って… おまけに雷だぞ」
  • 都市の空を駆け降りる稲光が幾筋も見え、ほぼ同時にゴロゴロと音を轟かせている。
  • 「おかしな天気だ… まったく」
    ハウザーの隣で空を見上げるグリアモールは短パン・タンクトップ姿だった。
    冬用ではないとはいえ長袖・長ズボン姿で震えているハウザーに「お前 さむくないの?」と聞かれても「うん」と平然としている。

  • その頃、王城のエリザベスの私室。
    美しい部屋に置かれたクィーンサイズのベッドの上に ぺたんと座って、エリザベスとエレインが お喋りに興じている。
    ◆エレイン、ベッドに土足で上がってる…。(エリザベスも?)
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    イギリスだからか。それにエレインは浮いてるから靴も汚れてないんでしょうしね。(でも日本人的には気になる 笑)
  • 「エ…エリザベス」「本当に こんな鞄一つで行くつもりなの?」
    エレインは戸惑う素振りを見せた。二人の間に置かれたハート型のショルダーバッグを見て。これでは一回分の着換えすら入らないだろう。
    ◆小物くらいしか入らなさそうなカバン一つで異国へ移住すると言われて戸惑うのは当然…ですが、妖精族のエレインが「荷物はこれだけでいいの?」的なことを言ったのは不思議な感じがしました。
    だってエレインも兄のキングも、どこに行くにも手荷物一つ持たないでしょう?(キングはシャスティフォルは持ってるけど。)
    妖精族には荷物を持つ文化がないと思ってました。
    エレインはバンと一緒にリオネス王都の一軒家で暮らすようになってから、短期間に すごく沢山の私物(植物の鉢、服)で家を埋め尽くしてましたし、森で暮らしていた頃には理解できなかった「持ち物(財産)への執着心、持ち物がないことの不安」を学んだんでしょうか。
  • 「うん いいの! これから先は魔界で暮らすのよ私」「入り用の物は なんでも向こうで間に合わせなきゃ」
    明るく答えたエリザベスは毛皮の襟付きのジャケット風ワンピースを着ていた。
    まだ王国を聖騎士から救う旅をしていた頃、姉のベロニカから借りた服である。このとき死んだかと思われたベロニカは生きていたので形見ではなくなったが、姉の愛の籠った思い出の服であることに違いはない。
    ベロニカに貰った服を着て、マーガレットに貰った王家のイヤリングを着けて、エリザベスは魔界へ行くつもりらしい。
    ◆エリザベスが持って行こうとしているハート型のバッグ、デザイン的にはベロニカっぽいし、あるいはエリザベスの手作りなのかもしれないけれど。
    服はベロニカ、アクセサリーはマーガレットからとなれば、バッグはバルトラ王からのプレゼントだった…ってことならピッタリくるかもしれない?
  • 「ねえ… 魔界よ? 不安や恐怖は…」
    「「ある」といえば嘘になるかしら」
    言い募るエレインに、エリザベスはフフッと小首をかしげて おどけて見せた。そこに虚勢は感じられない。
    ◆ちなみにエリザベスは女神族だったとき魔界へ行ったことがあるハズ。
    そこで処刑されそうになったのをメリオダスが助けて、<十戒>二人を殺して魔界をメチャクチャに破壊して、共にブリタニアに逃げ出したそうなので。
  • ついに、エレインは根負けして微苦笑したのだった。
    「…あなたって おっとりしてるようで…」「でも きっとそこがエリザベスらしさなんでしょうね」
  • 「呪いが解けた今 エリザベスとしての最後の人生を」「メリオダスと一緒に過ごせるんだもの!!」
    顔を輝かせて言ってから、ふっと表情を曇らせる。
    「…父上や姉様たちは もちろん―――――<七つの大罪>の団員みんな …ホークちゃん」「エレイン… あなたやディアンヌのような友達もできたのに別れるのは寂しい」「…けど 今は それ以上に――」
  • 言いさした唇を、エレインの指先が そっと押さえた。
    「……いいの 言わなくても伝わってるから… それにね―――」「私は あなたが こうする道を選択したことにホッとしてる」
    優しく微笑みかける。
    「…エリザベスと別れるのは 正直 寂しいけど…」「私たちが友達であることに変わりはないわ」
  • エリザベスも嬉しげに目元を緩めた。
    ◆「言わなくても伝わってくる」か。…読心能力を使った、でいいんですよね。

  • その頃、リオネス王都片隅の石積みの丘の上。積もった雪に点々と足跡を付けて、一匹ひとり、ホークはいた。
  • 「マッ♬ マッマッ♬ マイルド♬ お~~やすみ~~」
    口ずさんでいるのは、前夜にメリオダスとバンから聞かされたばかりの子守歌だ。
    「かわいい我が おっとうとよ~~~~~♬」
    そこまで歌うと、「…か」と照れ臭げに呟いて小さく笑った。
    「へへ…」
    その表情は明るく、喜びに満たされているように見える。

  • 雪の降り続く闇空に光が射しつつある。
    <豚の帽子>亭では、<大罪>たちが団長を囲んで別れの酒宴を行っていた。
  • 「ねえ~~ マーリン」「魔界って どんなところなの~?」
    酔ったディアンヌはテーブルに伏せて拗ねた顔を上げて尋ねている。
  • 「さっきから何度目の質問だ…」
    干しブドウを摘まんで口に運びながら、マーリンが呆れたように目を伏せた。
    ◆マーリンの好物は干しブドウ。
  • 「だって………」「だって」「………だって」
    子供じみて唇を尖らせたディアンヌの頭を、隣の席で見守っていたキングが優しく撫でる。
  • 「やれやれ」
    苦笑しつつも、マーリンは幾度目かの説明を繰り返してくれた。
    「暗黒の瘴気に満ち インデュラを筆頭に危険な生物が彷徨う 穢れに汚染されし国」「その穢れは他種族の精神と肉体を腐らせる …だが 姉々ねえねえ魔力ちからをもってすれば問題はあるまい」
    ◆なんか、魔界の環境って煉獄に似てますね。
    そーいや、メラスキュラは ただの毒蛇だったのが魔界の強い瘴気を300年浴び続けたことで魔力を得、上位魔神に変化したそうですが、バンが煉獄に1060年いて魔神王レベルの超生物に進化したのも理屈的には同じことなんでしょーか。
  • 「…でも 僕は驚きました」
    エスカノールは目線を落として戸惑っている。
  • 「そうだね… 王女が あんなことを考えてたなんて…」
    人の心を読む力を持つゴウセルも、その空気は読めなかったらしい。
  • 頬杖をついて聞きながら、メリオダスは先程の…バルトラ王の宴会パーティでのエリザベスとの会話を思い出していた。

  • 『オ… オレと魔界に行く!?』
    メリオダスと一緒に魔界に行くからリオネスの王位を継ぐ話は受けられない。寝耳に水の話に叫んだメリオダスに、エリザベスはケロリとした様子で答えた。
    『うん! ずっと考えていたの』
    ◆この「ずっと」が、「メリオダスの魔神王化に気付いた時からずっと」なら いいのですが、万が一「新聖戦の開戦を決めた時から ずっと、失敗して魔神王化を止められなかったら一緒に魔界へ行こうと決めていた」ってコトだったら、ちょっと酷いですね(笑)。
  • 『お前は人間だぞ? ダメだ!! 行けば必ず後悔するぞ!!』
    『…後悔なんて するわけない』『もう 私は決めたの』
    ◆王女エリザベスは あくまで「人間」なのか。記憶を取り戻し覚醒して以降は、ほぼ女神族そのもののような扱いだったので、もはや女神族化しているのかしらと思っていました。
    「人間の少女の器に女神エリザベスの魂が宿っている」状態ならば、このまま女神族の力を使い続けていたら、ソラシドの肉体が急成長したみたいに、王女エリザベスの肉体にも何らか異常が発生した可能性があったんですね。
  • 動揺していたメリオダスはハッと口を噤んだ。周囲の面々も同様にだ。
  • エリザベスは笑っていたのだ。不敵に。どんな困難をも克服してやろうと言わんばかりに、傲慢なまでの自信と希望に満ち満ちて。

  • 「…あんな表情カオされたら止められないよ…」
    呟くディアンヌは寂しさと悲しみと悔しさと恨めしさを ごちゃまぜに滲ませている。
  • 「そうだね…」と言葉少なくキングが相槌を打った。
  • マーリンだけは ずっと上機嫌だ。
    「いや! あれこそが本来のエリザベス …流石は 魔神への憎悪に満ち満ちた<光の聖痕スティグマ>に恋人だと のたまい次代魔神王を連れ込む豪胆の強者きょうしゃだ」
    ◆「強者」は「きょうしゃ」読み。「つわもの」でなく。
  • ヒューッとバンが口笛を吹き、
    「間違っちゃいねえけどよ……」
    メリオダスは突っ込んだ。不本意なのだろう。
  • 「ねえ… 団長こそ この世界に なんの未練もないの?」
    ゴウセルが気遣わしげに尋ねてくる。
  • 「そうだな~~~ たとえば そう!!」
    身を起こして頭の後ろで両手を組むと、メリオダスは傍らのバンに にししっと笑いかけた。
    「オレの子供ガキとバンの子供ガキで喧嘩でもさせたみたかったかな」
  • 「ボクの」「オイラの」「「子供は!!?」」
    ディアンヌとキングが同時にテーブルを叩いた。声も動きも タイミングぴったりの揃いっぷりだ。(キングは平手で上品にテーブルを叩き、ディアンヌの拳はテーブルに 半ば めり込んでいたが。)
    そして同時にハッと目線を合わせて、同時に湯気が出そうなほど赤面している。
    ◆キン&ディアは、メリオダスとバンの子供に仲間外れにされたくないという理由で、急いで自分たちの子供を作りそうですね…。

    ところで、メリオダスは王女エリザベスとの間に子供を作る気満々のようですが、これまで3000年、106人ものエリザベスと出逢い過ごしてきて、一度も子供を授かることはなかったんでしょうか? 転生エリザベスは必ずしも記憶を取り戻すわけではなく、何人かは老いて人生を全うしているわけで、子供を産み育てていても おかしくないのですけども。実はリオネス王家、またはダナフォール王家は遥か昔のメリ&エリの子供の子孫なんです…みたいな裏設定があったらどうしよう(笑)。
  • 初々しい二人に、フッとメリオダスは笑った。そして口を開く。
    「それに 他にも山ほど未練はあるさ…」
    「…争いが一時的に停まったとはいえ魔神族と四種族の溝が埋まったわけじゃねえ…」「何より この争いで大勢の犠牲を出した アーサーもそうだ …きっと いい王様になっただろうにな」
    「…それらの責任は全部オレにある」
    「オレはひでぇ男だよ… …この三千年 自分とエリザベスの呪いを解くことしか頭になかったんだ…」
    「そのせいで たった一人の弟を二度も見殺しにしちまった」「…オレには魔界じごくがふさわしい」
    ◆「たった一人の弟を二度も見殺しにしちまった」という台詞、当初web上に「I let my one and only little brother die twice…(たった一人の弟を二度殺した)」という誤訳が出回っていて、海外の読者さんたちが「二度も殺したってどういうこと?」「ゼルドリスの死が確定された!」と激しく議論を交わしていたのが印象的でした。
  • フ…とメリオダスが哀しげに微笑んでみせるや、
    「そんなことない!! 団長は優しいよ!!」
    席を蹴る勢いで立ってゴウセルが叫んだ。
  • 「ぜ…全部が自分のせいだなんて…… おこがましいです」
    エスカノールが懸命に訴える。
  • マーリンは思わせぶりに微笑んだ。
    「…私も含め お前に救われた連中も大勢いる」
  • 「ああ… 俺も その一人だ♬」
    と噛み締めるように微笑むバン。
  • 「でなきゃ… エリザベスが好きになるはずないよ!!」
    ディアンヌは相変わらずエリザベスの正しさと高潔さを信じて疑わない。
  • 「…誰もが愛する人を護るため 必死になるのは当然のことさ…」
    静かにキングが言った。
    ◆キングさんもすっかりメリオダス信者になりましたねぇ…。精神世界でメリオダスに 改めて面と向かって謝罪したい と言ってましたが、実行したんでしょうか。
    「愛する者を護ること」を肯定できても、「愛する者のために、無関係の他者を傷つけること」は肯定されることではないと思います。例えばの話、傷害殺人を犯した男がいて、「愛する恋人の病気を治すためでした、誰でもよかった」と言われたところで、あなたはその男が無罪だと、殺人は仕方のないことだったと思えますか?
    罪は罪です。<大罪>たちが どれだけメリオダスに心酔し恩義を感じていようとも、過ちの部分を認めてやらねば、彼は胸を張って未来へ進める存在になれないのではないでしょうか。
    メリ&エリが3000年越しの愛を語らう足下に関係ない人たちの屍が山になってしまった。その事実に、声高に言い訳して蓋をし続けるのは、いい感じはしません。
  • 仲間たちはじっとメリオダスの反応を窺う。
  • 「お前らが いてくれたから 今のオレが在るんだ」「…………ありがとう」
    メリオダスの顔は晴れ晴れとしていた。
  • 目を逸らし少し寂しげに微笑むバン。哀しみをこらえるように少し俯いて微笑むキング。にっこり微笑んだ目の端に涙を浮かべたゴウセル。両頬をとめどない涙で濡らしたディアンヌ。涙も鼻水も滂沱と流して微笑うエスカノール。マーリンは満足げに笑って目を伏せた。
    ◆マーリンは自由に魔界へ行き来し放題だと思われますから、メリ&エリとながの お別れってワケじゃないんですよね。
  • 「<七つの大罪>は今日をもって」「解散する」
    メリオダスは告げた。
    ◆作中時間で つい三日前の夜にも、メリオダスさん
    「<七つの大罪>は今日限りで――」「解散する!!!」
    って告げてましたっけね、エリザベス連れてチャンドラーと共に魔神側へ寝返るときに。台詞回しが ほぼ同じですし、重ねてるんでしょうか?


  • 夜が明けきって後、高い日差しのなか、荒野ヒースメリオダスとエリザベス、見送りの人々(<大罪>、ホーク、バルトラ王と姉姫二人、スレイダー、わんぱく三人組)が立っていた。
    ◆今回分の画では、見送り人の中にギルサンダーの姿が確認できないのですが、ハウザーとグリアモールが来ていて、英雄メリオダス信者の彼が来ない理由がないので、多分どっか近くにいるのだと思っておきます。
  • 空は青く晴れ渡っているが、地上は未だ、夜のうちに降り積もった雪で一面が白く覆われている。
  • 広大な白い荒野ヒースには巨人族の棲み処を思わせる角ばった奇怪な岩山が ぼつんとそびえていた。その右手に、地上から天頂までを真っ直ぐ切り裂いて、一筋の裂け目が走っている。
    柱のようにも見える空間の裂け目は黒く、闇の放電のようなものが漏れ出ており、その先に繋がる異界の禍々しさを思わせた。
  • 旅立つエリザベスは、昨夜 部屋で試し着していた通り、ベロニカのワンピースを着てブーツを履き、今日は黒タイツを合わせている。ハート型のショルダーバッグは落とさないよう しっかりと斜め掛けしていた。
    メリオダスは<豚の帽子>亭の店長服のままで手荷物一つ持っていない。
  • バルトラ王がエリザベスを抱きしめて、頬ずりしながら泣き喚く。
    「エリザベス~~~~!!! 必ず… 必ず幸せになるんじゃぞ~~~!? うおおおお~~~ん!!」
    「ハイ父上」
    と微笑むエリザベス。
  • 王は昨夜も、宴会後は身も世もなく泣き通しで、スレイダーも手のつけようがなかったのだ。
  • 昨夜は涙を浮かべながらも微笑んで「父さんしっかり」と父を慰めたベロニカとマーガレットも、いよいよ末妹を見送る今は、涙が止まらず言葉にならない。
  • 「大分 辺鄙なところに門を出したな マーリンさん」
    空間の裂け目を見ながらメリオダスが言った。
    「ここが魔界に一番近い接点だっただけだ …それに もし王都に門を出して 万が一 王国の民が それをくぐったらどうなる?」
    「ごもっとも!」
    メリオダスは この世界ブリタニアから強制的に排除されるというから、てっきり時間が経過して限界に達したら、周囲の空間が歪み裂けてメリオダスが一方的に世界の外に放り出されるんだろうな悲劇的に、と思ってたのですが。
    マーリンに転移門を開かせて、みんなに見送られながら、望む異界に お引越し…。出発の時間も場所も行先も、全部 自分で選べてら。
    「世界から排除される」とか「存在し続けられない」とかいう言葉のイメージと なんか違~う!(苦笑)
  • それから、メリオダスは傍らのホークを見下ろして明るい調子で誘いをかけた。
    「なあ ホーク! 一緒に来るか? お前なら魔界でも平気だろーし」
  • 「…んにゃ」
    一瞬考えてからホークは答えた。
    「俺は煉獄に行ってみる!!」
    プゴッと朗らかに鼻を鳴らす。
    「自分が生まれた場所を見たいってのもあるけど…」「行ってにいちゃんの お墓を作ってやりてえんだよ!!」
    ◆あれ?
    第307話では「メリオダスとバンは子守唄を聞かせただけで一切 説明せず、ホークは涙したもののワイルドの存在は覚えていない」という描かれ方で終わっていたのに、知らないうちに「ホークはワイルドに関して全て承知している」ことになってますね(汗)。コマの外でメリオダスとバンが全て説明したのですか。

    それはそうと、煉獄には魔神王本体がいるはず。(こないだ消した魔神王は戒禁の集合体で、つまり魔神王の分身でした。)ホークは煉獄行って大丈夫なの? 下手すれば未だにホークの目を通して魔神王が見てるでしょーに。
  • 「そっか……!」
    メリオダス、そしてバンは嬉しそうに表情を緩ませた。
  • 「そんなわけだから ごめんな? エリザベスちゃん」
    エリザベスは しゃがんでホークの頭を抱きしめた。
    「ホークちゃんも元気でね…!」
    「プゴッ」
  • そこに、雪を踏んで近付いたのはディアンヌだ。胸の前で両手を握り合わせ、泣き腫らした顔で気まずげに俯いている。
  • 立ち上がったエリザベスに、ディアンヌは震える声で訴えた。
    「キミのこと……冷たいだなんて言って… ごめん」「だから… だから ボクのこと……嫌わないでね?」
  • キュッ…と、エリザベスがディアンヌの握り合わせた手を包み込むように両手で握りしめた。
    「…当たり前じゃない ディアンヌは私の一生の友達よ」
  • 「ひぐっ」「っく」と、俯いたまま泣きじゃくるディアンヌ
  • 「………それから キング様と ずっと仲良くね……?」
    言い終わると、ス…と離される両手。
  • 「エリザ…」
    ハッと、ディアンヌが泣き濡れた目を上げた。しかし追えずに手で顔を覆って
    「…っ」
    と泣き声を殺す。その肩をキングが支えた。
  • 「行きましょうメリオダス!!」
    未練を断ち切るようにサッと背を向け、エリザベスは そのまま歩いていく。
  • 「エリザベス…」
    声もなく泣き続けるマーガレットの隣で、泣きながらベロニカが叫んだ。
    「エリザベスーーーー!!」
  • 「娘を… 頼むぞ!!」
    泣き過ぎてグシャグシャの顔のバルトラ王に念押しされ、「おう」と屈託なく請け合うメリオダス
  • サク サクと雪を踏んで、エリザベスは黒い空間の裂け目へ向かい歩いていった。
    (さようなら… もう 私は後ろを振り返らない)(それが私の覚悟だから)
    (私は今までのこと 自分で決めたこと 何一つ後悔していない)
    (だから 前だけ向いて歩いていくの メリオダスと一緒に)
    涙をボロボロとこぼしながら口元には笑みを浮かべて、足を止めることなく。
  • 寂しげに、或いは涙を浮かべて、或いは泣き濡れて見送る人々と豚。
  • バンと拳同士を打ち合わせる挨拶を交わしたメリオダスが、最後に明るく手を振った。
    「じゃあな みんな!!」
  • 誰が想像しただろう。
  • グシャッ
  • まさにその時、巨岩が落下して大地に激突、エリザベスのいた場所を押し潰してしまおうとは。
  • 吹き飛んだ雪が吹雪のように吹き付けるなか、皆が衝撃に固まった。
  • ズズズズ…
  • 低く大地が響いている。
    空間の裂け目の隣にあった奇怪な岩山の一部が、崩れ落ちたのだった。
  • 崩れた岩は粉々になって瓦礫の山を成し、その下にハート型のショルダーバッグが はみ出ている。そして、雪が吹き飛んで露わになった草花の上に飛び散る、赤い血。
  • 「な…ん」「……っ」
    吹き付けた雪が力を失って舞い落ちていく。しばしメリオダスは言葉を失っていたが。
    「エリザベーーーーーース!!」
    絶叫した。
  • 次回「まだ終わらない」

…というわけで、終わりませんでした(笑)。『マガジン』巻末の作者さんのコメントによれば、もう少し続くとのこと。

 

去年の雑誌インタビューで仰られていた通り夏に連載終了なら、後二ヶ月くらい連載して単行本38巻くらいで完結?

秋から放映のアニメ第三期に合わせて、第一期の時と同じ方式でアニメ終了の少し前に漫画が終わるなら、年末まで連載して単行本40巻くらいで完結…でしょうか?

 

三話前(第307話)の感想

>もしや、これ、夢なんじゃないでしょうね?

>魔神王を倒して呪いを解いたあたりから、実は全部 最高神の見せている夢で、メリオダスが異界に去っちゃうどうしようとモダモダしていたら、実は解けてなかった呪いによって王女エリザベスが死ぬ! …とかいう衝撃展開に………

>なるわけないけど(笑)。

>もしその展開が来たら、きっとアーサー辺りが出てきて「これは夢です」と警告するんだわ。ははは。

と書きましたが、「エリザベス死亡」という点で近い展開になったみたいです。

 

とは言え、現時点の本編だけでは、まだ何が起こったのか、本当にエリザベスは死んだのかハッキリしていないのですが…。でもラストページの後引き文に

「三千年の呪縛は、簡単に彼らを逃しはしなかった…」

「まだ、呪いは続く。」

と書かれてあるので、解けていなかった呪いが発動して王女エリザベスが死んだ、と仮定して、今回の考察と感想を書いていくことにします。

 

 

 

作中の時間経過と、エリザベスの呪いの「三日目」がいつになるのかは、ずっと気にして読んでいました。今までの記事でも二度三度と話題にしています。

第299話 感想内 『エリザベスの三日殺しの呪い』の日数の数え方、答えは? 

 ↑この記事と、前回書いたことの繰り返しになりますが。

 

エリザベスの呪いの発動する「三日目」は、具体的に いつのことか?

呪い開始した当日を「一日目」と数える足掛け方式か。

呪い開始した当日を「0日目」とし、きっかり72時間経過した時点を三日目とするのか。

 

第299話、聖戦当日(呪い開始した日の翌日)にホークが

「エリザベスちゃんの呪いが発動するまで あと一日しかねえんだからなーーーー!!!!」

と言ったので、ならば足掛け方式なんだなと結論していました。

足掛け方式なら、聖戦の翌日(作中時間の昨日)が呪い発動の日になります。

 

とは言え、実は第253話(聖戦当日の朝)のナレーションでは

「エリザベスの呪い発動まで残り二日――」

となってたんですよね。

あれ? どっちですか。

その辺でモヤモヤしつつ、新しい情報(ホーク発言)の方が正しいんだろうな、と。

 

という前提で。

前回の感想に書いた通り、魔神王化したメリオダスブリタニア強制退去リミットとエリザベスの三日殺しリミット が、曰くありげなことに、ちょうど重ねられるようになっていたので、何か起きるのでは…ぶっちゃけ、そこでエリザベス死ぬかも? と思って読んでいたのですが、死にませんでした。それどころかメリオダスの強制退去すら、何故か起きなかった!(苦笑)

 

あれれ? と思ってたら、今回になって死にました。

作中時間の「現在」が、聖戦の翌々日の正午前なら、まさに エリザベスの呪いが動き出してから「72時間後」、きっかり三日目に死んだ、ということになります。

 

…えーと。

つまりホークの「あと一日」発言は間違いだった、という解釈でよろしゅうございますか。(^^;)(豚だからね。日数を数えられなくても仕方ないね。)

足掛け方式ではなく、「72時間」式だったんですね。

 

 

 

なお、エリザベスの死が「呪い」によるものならば、

(発動したら)「何があろうと何に護られようと」「―――必ず三日で死ぬ」

という仕様なので(第224話)、たとえメリオダスであろうと岩が崩れてくることに気付けないし止められないし、バンが華麗に強奪スナッチして救うことも、マーリンが時間を戻したり止めたりして助けることもできません。エリザベスに女神族の力があっても避けられません。

落石ごときで どうして助けられないの? なんで簡単に死ぬの? と言われても、それが「呪い」なんですよ、ってコトになるんだと思います。

 

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主人公が反省することを許さない仲間キャラたち

 

 

今回、ついにメリオダス

「オレは酷ぇ男だよ… …この三千年 自分とエリザベスの呪いを解くことしか頭になかったんだ…」

と言い、多くの犠牲が出た責任が自分にあると認めました。

 

ところが、彼がそう言った途端、<大罪>全員が一斉に否定。

メリオダスは当然のことをしただけ、優しいから恩人だから救われた人々がいるからエリザベスに愛されてるから、メリオダスは正しいのだと口々に論点をズラして、彼の反省を無効化してしまったのです。

なんじゃこりゃ。(;´・ω・)

 

優しかったり誰かの恩人だったりすることと、犯した罪に責任を持つことは別問題ですよ。ごっちゃにするのは感心しないです。

エリザベスに愛されてるからメリオダスは正しいというディアンヌの主張が最も意味不明でした。アホの子ですね。エリザベスは素晴らしい女性だから素晴らしい男しか愛さないと言いたいんでしょうが…。

 

仲間キャラが六人もいるのですから、一人か二人くらいは「犠牲が出たのは悲しいことだし繰り返してはならない、罪は負わねばならない。でも友人として、エリザベスを救いたかった あなたの気持ちは理解できる」程度にでも、メリオダスの罪と反省を受け止めてほしかったです。

 

ちなみに、メリオダス

「それらの責任は全部オレにある」

と言ったことへのエスカノールの反論

「ぜ…全部が自分のせいだなんて…… おこがましいです」

にだけは、私も賛成です。

メリオダス一人に全部の責任はないですよ。特に3000年前の聖戦に関しては色んな所に責任はある。メリさん言い過ぎ。(とゆーか、ワザと過剰に反省させることで「そんなことないよ!」と聞いた人に否定させる、いわゆる誘い受けの意図で作者さんが言わせたよーな。笑)

しかし<十戒>散開の一件は紛れもなく彼の罪ですし、新聖戦に関しては、彼とエリザベスに大きな責任があるのは間違いないです。

そう、新聖戦の責任はエリザベスにもあるんですよ。お互いに、意図して二人の恋愛に周囲を巻き込んで命や生活を失わせた。メリオダス一人のではなく、「二人の」責任なんです。

しかしメリオダスは、エリザベスと話し合おうとも罪を共に背負おうともしません。

「責任は全部オレにある」

エリザベスを護っているつもりなんでしょうか? カッコいい男の在り方のつもりでしょうか?

結婚するのなら、自分独りで背負えばよし、という独善的な姿勢は、もう改めた方がいいと思います。彼女にも一緒に背負わせてあげてね。

 

…とは言ったものの。エリザベスの方は、責任を背負う気なんてサラサラないようで。

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(私は今までのこと 自分で決めたこと 何一つ後悔していない)(だから 前だけ向いて歩いていくの メリオダスと一緒に)

とうとう開き直ってしまいました。しかも、なんかカッコイイことみたいな言い方で。

 

後悔しない、前だけ向いて歩いていく。

どんな意図で彼女はこう言ったのでしょうね。

メリオダスとの恋愛のために多くの犠牲を出したことを後悔していない。反省したり罪を負ったりしない。全て無かったことにして切り捨てて、メリオダスとの幸せな未来だけを考えて生きていきます。」

そんな意味なのでしょうか?

もしそうだったら、まるで悪役の台詞みたいです(苦笑)。ゲームや漫画の敵キャラが倒されて死ぬ時に「悪事を働いたことを後悔していない、何度やり直したとしても同じ道を選ぶ」とか言い遺すやつ。

 

…いや。作者さん的には

「こんなに愛してくれる家族や友達を置いて異界へ旅立つ私は罪深いけど、旅立ちを決めたことを後悔してないわ。新天地でメリオダスと幸せになります。」

くらいの意味でしかないのかも?

それはそれで、自分のしてきたことを一切 客観視できていない、相当にヤバい奴と言うことになってしまいますが…。

 

 

今回、エレインが

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「…あなたって おっとりしてるようで…」「でも きっとそれがエリザベスらしさなんでしょうね」

と言い、マーリンは

「あれこそが本来のエリザベス …流石は 魔神への憎悪に満ち満ちた<光の聖痕スティグマ>に恋人だと のたまい次代魔神王を連れ込む豪胆の強者だ」

と評して、魔界へ「後悔も恐れもなく」向かうエリザベスの行動は実に「彼女らしい」のだと強調されていました。 

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作者さんの定義する「エリザベスらしさ」とは、『いかなる困難にも臆さず、屈することなく立ち向かう心の強さ』なのだと思います。

 

彼女の その性質は、確かに、連載初期から一貫して描かれてきたものです。

ただし、連載初期の彼女は、その強さを「他者の幸せのために」使っていました。自身をボロボロにしながら。

今の彼女は、自身の欲望(恋愛)のため万事に立ち向かい、周囲を巻き込み傷つけようとも構うことがありません。

とうとう「何一つ後悔していない」「前だけ向いて歩いていく」と、自分が傷つけた諸々を省みないと宣言してしまいました。

 

これは美点とすべき「エリザベスらしさ」なのでしょうか。

 

「立ち向かう強さ」という部分だけ見れば彼女は変わっていないのに、言動から受ける印象は、もはや別人のようです。

 

 

 

 

ところで、メリオダス

「オレには魔界じごくが相応しい」

と、自虐風味に言ったの、奇妙にしか思えませんでした。

だって魔界はメリオダスの生まれ故郷じゃん。故郷に帰るだけなのに、いかにも「悪いところに罰を受けて行かされる」みたいな言い方…。

そんなに故郷が嫌いなんでしょうか。そこに住んでる魔神たちの立つ瀬がありませんね。

 

今回のメリオダスの反省場面を見て、不思議に思ったことがあります。

責任は全部オレにあるだの、たった一人の弟を見殺しにしたオレには地獄が相応しいだのと自虐するのも結構なんですが、そう思うのであれば、魔界に帰ったら四種族と魔神族の溝を埋めて全種族が平和に交流できるようにしてみせるとか、魔界を地獄ではない平和な国にするつもりだ、いつかゼルドリスが戻ってきた時に安心してゲルダと暮らせるように。…というようなことを、どうして言わないのでしょうか。

自虐したり罪を無かった扱いにしてもらうよりも、建設的だと思うのにな。

 

…まあ、メリオダスが本当に魔界に行く展開には ならないから、そんな未来を語らせるわけに いきません(メリオダスが嘘つきになっちゃうから)、という作者さんの意図なのかもしれませんけども。

 

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さて。

呪いが発動したのならば、王女エリザベスは確実に死亡したはずですね。 

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けれども、次世代編ではアーサー王に仕える円卓の騎士として、メリ&エリの子・トリスタンや、バン&エレの子・ランスロットらが活躍することが、インタビュー発言などから確定しています。

つまり、今からエリザベスが赤ん坊に生まれ変わって子供が産める歳まで成長していたら、次世代編に間に合いません。産まれた子が成長する頃には、アーサーが おじいちゃんになってしまう。

 

…というようなことを一年半くらい前にも考察したことがあって、そのとき考えたのは

「どこかに保管されていた女神エリザベスの遺体にエリザベスの魂が戻って復活する」

という説でした。これならすぐ子供も産めるし、エリザベスが女神族に戻ってメリオダスとの寿命差もなくなるはずなので、二人が夫婦として暮らしていくなら、色々都合がいいんじゃないかなあと。

 

 

でもトンデモ設定を使っていいなら、もっと考えようはあるかも。

 

トンデモ説A
エリザベスが生まれ変わって成長して子供を産んで その子が成長するまでの 大体40年くらいの間、アーサーを死にっ放しにしておく。エリザベスの子が騎士になった頃にアーサーが生き返れば、アーサー16歳で次世代編が可能。(40年もキャメロット王国を放置して大丈夫なのか? アーサーの死体は40年間 マーリンの部屋のクローゼットの中に ぷかぷか浮いてるのか?)

 

トンデモ説B
未だ産まれていないメリ&エリの子・トリスタンが、時空を超えて未来から現れ、アーサー王の円卓に参加。(トランクスのパクリ)

 

トンデモ説C
最高神の魔力、またはマーリンの魔術によって、生まれ変わったエリザベスが受精卵から急成長して一瞬で16歳になる。すぐ子供産めます。(雑なご都合主義)

 

色々 酷い(苦笑)。

 

この漫画、最近「繰り返し」を好むようなので、バイゼルでメリオダスが殺された時の「繰り返し」で、しばらくエリザベスの魂が煉獄なり死者の都なりを彷徨う展開になるのも有り得たりするのかな? 

 

 

 

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