『七つの大罪』ぼちぼち感想

漫画『七つの大罪』(著:鈴木央)の感想と考察。だいたい的外れ。ネタバレ基本。

【感想】『七つの大罪』第316話 主恩のインデュラ

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週刊少年マガジン 2019年 30号[2019年6月26日発売] [雑誌]

第316話 主恩のインデュラ

  • 「はあ…!!」
    キングの大槍シャスティフォルとマーリンの殲滅光ビームが群れ飛ぶインデュラ幼体を一閃 数十単位で潰していく。
  • 「あの高さじゃ ボクらの攻撃は ほとんど届かない …二人共 頑張って!!」
    巨人のディアンヌが声援し、その足元のゴウセルも空を振り仰いだ。
    「…それにしても異常な数だよ」「もし あれだけのインデュラの幼体がブリタニアに散ったら大変なことになる!!」
  • その間、何故かインデュラ本体は攻撃してこない。先程キングを噛もうとしてバンに蹴られた、あの一度だけだ。
    幼体を大量に生んだのが<大罪>の殺気に死を感じての種の保存のための本能だったのならば、もはや戦う気も失せているのだろうか。
  • 「………!! 広範囲に飛散しすぎている」「やむをえない!! 「光華サンフラワー」で一帯を焼き払うしか…」
    キングが言った。地上からディアンヌが諫める。
    「ダメだよキング!!」「そんなことしたら近くの人間や動物たちにも被害が!!」
    「わかってる!! でも それ以外に方法がないんだ」
  • 「そんな……」
    呆然としたディアンヌの肩を、傍らから飛び乗った何かがトンっと踏み蹴った。
    「!?」
  • その一蹴りで矢のように跳んだそれは、キングの傍らを すり抜けて遥か高空へ向かう。
    「ここは俺に任せとけ♫」
    すり抜けざまに一声を残して。
  • 「バン!?」
    驚いて振り返るキング。跳んでいく人影から鎖で繋がれた長ものが垂れているのが見える。
  • 「!! バンが手にしているのは―――」
    ゴウセルがハッとした。
  • 「ああ…」
    マーリンが したり顔で笑う。
    「聖棍クレシューズ」
  • 40~50cmほどの長さの金属棒 四本を鎖で繋いだ東方風の武器…四節棍フォーセクション・スタッフだ。
  • 「神器の中でも とりわけ自在かつ変則的な攻撃を可能とする」「今のバンが使えば射程・速度ともに絶大な威力を発揮しよう…!」
    ケレン味たっぷりにマーリンは語る。
    「…極めつけは それらを最大級の精度にまで高めるクレシューズの特性超集中力スーパーコンセントレーション
  • 目を閉じて集中していたバンが、ぼそりと呟いた。
    「神器解放」
  • カッと目を見開くや。
    「ホオオゥ♫」
    怪鳥けちょう音を発し、風を唸らせて空中で直立しながら四節棍を振り回す。
    「ホアァ♫」
    物理的に棍が届くはずのない、遥か離れた位置のインデュラ幼体たちが次々と真っ二つになっていった。
    「ホオオオオオオオ~~ッ♫」
  • 一方で、幾らかの幼体は頭状の部分からタンポポのような綿毛を飛ばしながら、フワッ…と人間の街に漂い降りていたが。
    ◆インデュラ幼体の頭から飛んでるタンポポの綿毛みたいなの、なんなんだろ。最初キングが「胞子?」と言ってたけど、幼体から更に綿毛で殖える予定だったんかしら。(怖っ)
  • 「なんだべ ありゃあ?」
    「怪物?」
    柴や荷物袋を背負った人々が不思議そうに見ている。目の前に降り立ったそれが、まさか恐るべき殺戮衝動に満ちた魔獣だとも知らずに。
  • ドッ ドンッ
  • 「わあっ」
    人々の悲鳴。目の前で破裂した怪物に驚いて尻餅をついての。
  • 人々に危害を加える前に、それらは頭部を破裂させて砕け散っていったのだった。
    まるで自ら破裂したかに見えただろう。だが勿論、全てはバンの振るう神器クレシューズの力である。山すら越えた彼方に拡散した幼体も、剃刀で薙ぎ掻き切った如く、地上に降りる直前に片端から砕かれていく。
  • 死神の一薙アサルト・ハント
    ◆超生命体に進化したとはいえ、一応、バンは飛べないはず…。しかしこの場面、バンは長時間 空中に浮遊直立して節棍を振るっているように見えます。
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    実は高速で落下しながらブンブンやっているのでしょうか?
    それとも節棍を振り回すことでヘリコプターのような効果が起きて滞空出来ているのでしょうか。
    いずれにしても、なかなかシュールな光景かも(笑)。

    アニメ化したら、きっとバンの周囲に輝く謎フィールドが球形に出来て、空中に謎の滞空をしながら節棍をブンプン回し続けるんだろうなあ。

    バンの技「死神の一薙アサルト・ハント」は新技ではなく、初出は番外編『エジンバラの吸血鬼』。12年前のバンが使っていました。その時も無数の吸血鬼たちを一度に倒していましたが、こんな途方もない威力・規模ではなかったです。
  • 「!!!」
    インデュラが驚いた様子を見せた。
  • 「数千の反応が… 一瞬で消えた!!」
    ゴウセルの顔色も変わっている。もはや神のごとく次元の異なるバンの力に。
  • 「え? え?」
    一人だけ付いていけていない様子でキョロキョロと見回すディアンヌ
  • 「まったく… 人間の範疇を超え過ぎだな」
    マーリンは微笑み、ディアンヌは更に戸惑う。
    「ぜ… 全部倒しちゃったの!?」
  • 「久しぶりすぎで勘が鈍ってるわ」
    その足元に、バンが身軽に飛び降りて ぼやいた。
  • 「?」ディアンヌの戸惑いは重なる。神懸った手際で幼体を殲滅してのけたばかりではないか。
  • 「リオネス方面に一匹逃がしちまった」
    そう言ってバンは眉をひそめて一方を見やった。
  • 「どうにかしないと …たとえ一匹でも十分な脅威だ!!」
    キングも同じ方向を見ている。
  • その瞬間、大人しくしていたインデュラ本体が、唐突に叫びながら飛び掛かってきた。幼体を ほぼ潰されて自棄になったのだろうか。
  • その五つの首の一つを下から大地の刃が貫いた。ディアンヌの技である。
    大地の剛剣グラウンド・グラディウス
  • 頭一つ潰されようと動じない魔獣は、別の頭の周囲に闇の球を五、六個ほど湧き出させた。しかし そこから攻撃に転じるより早く。
  • 大停電の矢ブラックアウト・アロー
    ゴウセルの双弓から放たれた複数の光矢が頭部に刺さると、その目の光が失せ、闇の球は全て自ら蒸発するように消滅したのである。
  • 無力化したインデュラの更に別の頭をマーリンが下から光線で貫く。余裕の笑みを浮かべて。
    衝撃の尾針ショック・スティンガー
  • 空中のキングが右腕を振り下ろし、大槍を轟雷のごとくインデュラの胴の上に落とした。
    “裁きの槍”
  • 畳みかけるような連続攻撃の大トリは、やはりバンである。
    死神の一薙アサルト・ハント
    再びの神器技で節棍の猛襲を与え続ける。インデュラは一撃すら<大罪>に与え得ることなく、サンドバッグのように打たれ続ける一方だ。
    ◆魔神王メリオダス戦の時点でそうだったので今さらですが、超ボス級のインデュラに、そこまで強くないはずのディアンヌゴウセルの攻撃が普通に通っています…(;^ω^)。
    精神介入魔力でサポート的な働きをしてるゴウセルは まだしも、素の闘級は8千、長時間ドロールの舞をしても闘級5万程度に上がったことしかないディアンヌが、踊る描写すらなく、普通に魔神王ら闘級数十万の敵の攻撃に耐えて、相手に攻撃を通している。

    ガラン初登場の際は、闘級3万弱の彼に闘級3千のメリオダスの攻撃は全く通らない、という描写でしたが、今や桁が違い過ぎなはずの相手にも普通に攻撃が通ってる。

    ここに来てサブキャラの覚醒イベントをやる余裕もないけど活躍させないわけにもいかないからってコトで、特に理由を語らず なんとなく強くなっているのでしょうが…。
    もちろん、活躍してくれたほうが嬉しいけど、ちょっと雑なことになってるなあとは思っちゃいました。

    こうなっちゃうのが見越せたから、『闘級』という設定が この漫画に出てきた時、危惧した読者が多かったんでしょうね。(当時、私は闘級設定の是非を気にしてませんでしたが、この終盤になって、なるほどなあ、だから皆あんなに嫌がってたんだなあと思うようになりました。)強さを数値で表してしまったからこそ、このキャラが ここで通用できるのは おかしいじゃないかと感じてしまうわけで。


  • その頃、リオネス王都の城壁外すぐの場所で。
  • 「ギャーー!!」
    「隊列を立て直すんだ!!」
    「なんだ この化け物は!!」
    爆音が響き、聖騎士たちの悲鳴が上がっている。
  • 「ここは俺たちに任せて あとはケガ人を連れて城壁内へ退避しろ!!」
    ギルサンダー、グリアモールの二人と居並んだハウザーが、座り込んだ聖騎士たちを返り見て指示した。
  • 「で… ですが聖騎士長!!」
    「早くしろ 命令だ!!」
    「は… はい」
  • 彼らの退避行を背に守りながら、わんぱく三人組は「それ」と対峙する。
  • 「こいつは そこらの魔神族じゃない…」と、ギルサンダーが言った。
    「ああ… 全力で仕留めんぞ!!」とハウザーが檄を飛ばす。
  • キノコか蜘蛛の繭のように柔らかそうな丸頭に、虫か蟹のような硬そうで尖った節足を生やした得体の知れない生き物。ただ一匹バンから逃れた、インデュラ幼体である。
    カチ、カチと爪先を鳴らして歩み寄ってくる それには、一見して目も口もない。体高は小柄な成人ほど。見た目だけなら赤き魔神の方が よほど恐ろしい。
  • だが、聖騎士たちの どんな攻撃も通じなかったばかりか一隊が容易く蹴散らされたのだ。予め<大罪>から魔獣インデュラ出現と魔神王復活の警告を受けて覚悟はしていたが、これほどとは。
  • 「フン」
    グリアモールが幼体の周囲を六角形の結界で囲んだ。上は開いている。そこに、「「おお…」」
    ハウザーとギルサンダーが各自の魔力技を叩き込んだ。
  • 三位一体合技トリニティアタック
    六角の墓場ヘキサゴナルグレイブヤード
  • 六角形の小さな囲みの中でインデュラ幼体は風雷に揉まれ続ける。
    ……それも数秒だった。
  •  ヒャッ
  • 何かが伸び出て結界を掻き切ると同時に、鞭のように わんぱく三人組を薙ぎ払ったのだ。
  • 「ごあ」
    「が…」
    「ぐ!!」
    吹っ飛んで血を吐くグリアモール、ギルサンダー、ハウザー。
  • 薄い氷のように パリン パリン と砕け散った結界の中から現れた幼体には、今まで見当たらなかった口が開いていた。人間のような歯と厚い唇があり、薄く長い舌を伸び出させている。刃物のように鋭利な舌先を汚す血は、わんぱく三人組のものだろう。
  • カチ カチ
    再び足音を鳴らして、よちよちと歩み寄り始める。
  • 「つ…強すぎる」
    「このままじゃられるぞ!」
    対して、三人組は起き上がることすら難しい。
  • 「く…そ」
    頭しか起こせずにハウザーは悪態をついた。
  • 「あの人たちが… <七つの大罪>さえ いてくれたら…」
    突っ伏すばかりのグリアモールが弱音を吐いた。
  • 「ダメだ二人共 いつまでも… あの人たちに頼ってばかりじゃ……」
    ギルサンダーは一人、フラつきながらも身を起こす。
    「俺は まだ や…れる」
  • 棒立ちが やっとの彼めがけ、無情に、幼体は鋭い舌を突き伸ばした。
  • ガンッ
  • 咄嗟に目を閉じて身を強張らせたギルサンダーは、しかし、己に何事も起こらなかったことに気付いて目を開けた。
    「な…!?」
    その光景に驚きの声を漏らす。
    エスカノール殿………!!?」
  • 「か…間一髪でした…ね」
    両手で構えた円盾ラウンドシールドで攻撃を防いだ小柄な中年男が、ギルサンダーの懐に ぶつかる寸前のところで踏み止まっていた。どうやら数mは後ろに押しのけられたらしく、踏ん張った両足の跡が地面に長く筋を描いている。
  • 「ど… どうしてここに?」
    「助けるために決まってるじゃないですか…」
  • 革製の円盾ラウンドシールドからは ブスブスと焦げ臭い煙が上がっていた。摩擦熱のせいだろうか。
    盾ばかりではない。彼の装備は見習い騎士が訓練で使うような革鎧だ。
  • インデュラ幼体は『おやおや』と言わんばかりに、舌先で己の頭を掻く仕草をしながら闖入者を見ている。
  • ハウザーが血を血の混じった唾を飛ばして警告した。
    「キングに聞いたぞ アンタは「太陽サンシャイン」の魔力を失ったと…」「今の… アンタに この化け物は…倒せ…ねえ!!」
    ◆キングとハウザー、普通に会話してるんですね。
    容姿の変化した彼をハウザーはどう思ったんだろう? 「お前もリーゼントじゃねぇか。このカッコよさが解るようになったとは気が合うな!」とか意気投合してたりして(笑)。

    スマホゲームの『七つの大罪 光と闇の交戦グランドクロス』で<豚の帽子>亭にいるキングに親密度アップのために話しかけると、ディアンヌはどんな男が好きなんだろう、という疑問への選択肢の中に「リーゼントヘアをしてる男?」というのが出てきます。キングの拒絶的な反応から見てハウザーのことのようですが、初めてこの選択肢を見たとき覚醒キングのことかと思って「んんっ?」となりました(苦笑)。私の中で、『七つの大罪』におけるリーゼントキャラの認識が、ハウザーからキングに変わっていたようです。
  • 「おこがましくて すみません…」「それでも 僕一人 おびえて隠れてるわけにはいかない」
    エスカノールは険無く微笑む。しかし冷や汗が吹き出しており、
    「…っ」「ごほっ」
    と血に むせた。
  • ハッとするギルサンダー。焦げ臭い煙が収まってみれば、インデュラ幼体の攻撃を防いだかに見えていた円盾ラウンドシールドには大穴が開き、エスカノール自身の腹部にも僅かながら到達して、シャツが破れ血が流れだしていたのだ。
  • 「俺たちを庇って…」
  • 「……いいんです… 僕にはもう時間が残されていません」「しかし あなたたちのような若者には キラキラ輝く未来があるんですよ…」
    盾の裏に収納されていた短剣を しゃこっ と抜いた。
    「ならば それを守るのが老兵ロートルの務め!!」
    ◆これ、短剣ですよね? ただでさえ伸びる舌による驚異的なリーチを持つ幼体インデュラに対して不向きな武器ですが、普通の長剣だと今のエスカでは重くて持てないってことかしら。鎧も盾も訓練用っぽい革製なのは、金属製の実戦用だと重くて動けないから?
  • おもちゃのような短剣、およそ魔神との戦いに向くとは思えぬ革製の盾と鎧。
    血で汚れた口元は拭われず、腹の傷からは血が滴り落ちていた。
    それでも腰のベルトには変わらず太陽をかたどったバックルが輝いている。
    エスカノールの体のサイズが変化しても絶対に千切れも緩みもせずフィットし続けるベルト。ベルト部分のマイナーチェンジはありますが、太陽の形のバックルは初登場時(ガラン&メラスキュラ戦)から ずっと身に着けています。マーリン作の魔法具マジックアイテムかなと思う。
  • 決死の顔で小柄な男は叫んだ。
    「<七つの大罪><傲慢の罪ライオン・シン>」「エスカノール いざ…参る!!!」
  • 次回「傲慢なる決意」

力無きエスカノールの戦い。

神に愛された圧倒的強者チータが下等の敵を見下しながら軽~く一掃する展開も、願望や自尊心が満たされて心地いいものですが、一方で、力無き弱者が心だけは折れずに強敵に立ち向かう展開にも心躍されるものです。

 

エスカノールの「太陽サンシャイン」が最高神の恩寵で、彼の素の人格は気弱な夜の方だと明かされて以来、個人的に、借り物の力に依存せず素の自分に自信ほこりをもって生きてほしいと思っていたので、この展開には燃えました。

エスカノール、カッコいい!! こういうの待ってた!

 

 

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…と、雑誌掲載時は盛り上がったものでしたが(笑)、以降の展開は、結局「借り物の力への依存に回帰」でしたね。

大方の読者の間で予想されていたことではあるし、バトル少年漫画である以上 当然とも言えますが(十代の読者の大方は、目に見える力で派手に敵を ぶっ潰す無双展開を望むものでしょうから)、個人的には少しだけ残念でした。

 

 

 

エスカノールが後進の若者たちを守って前線に出てきた流れに不満はありません。(捨て身以外に策の無い自己犠牲は悲しくはあるし、弱者であるからこそ肉の盾になる以外の捻りある戦い方を見せてほしかったというのはあったけれど。序盤のエリザベスがルインの鈴を食いちぎって起死回生の一手としたように。)この展開で よかったと思うし、感動しました。

けど、それとは別次元で、益体なく思ってしまったところもありました(苦笑)。

 

太陽サンシャイン」無しの素のエスカノールの闘級は たったの15。ホークの半分。そこらの一般男性以下、女性や子供レベルの弱さかと思われます。(ベロニカ姫とマーガレット姫の中間くらいの強さです。)

それが一撃とは言え、インデュラ幼体の攻撃を防いだ。(しかも革の装備で!) 流石に不自然じゃないか? 

 

…まあこれは、元々エスカノールは「強運」の持ち主ギャンブルで負け知らずだったり、夜の最弱時に強敵と出遭っても不思議と死なずに切り抜けられたり…でしたから、今回も(まさに「神に愛された」ごとき)幸運によって、曲がりなりにも攻撃を受け止めることができたのだ…などと脳内補完することもできますが…。

 

それでも、闘級2000~3000レベルのギルサンダーたちが成す術なく吹っ飛ばされた攻撃を、闘級15のエスカが辛うじてであろうと立って受け止めた様子には、やはりご都合感強い印象を受けざるを得ないのは確かで。

不自然を押して「正面から受け止め」なくても、ギルを横から突き飛ばして攻撃から助けるくらいの形でも よかったかも、とも思いました。

でもまあ、それだと漫画的に画面映えしないのでしょうか(;^ω^)。

 

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ギルはえらい 

 

 

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ハウザー
「く…そ」

グリアモール
「あの人たちが… <七つの大罪>さえ いてくれたら…」

ギルサンダー
「ダメだ二人とも いつまでも… あの人たちに頼ってばかりじゃ……」「俺はまだ や…れる」

 

この場面は嬉しかったです。

強い人に頼ったり助けを求めることは少しも悪いことではありません。エスカノールだって、ここに来る前にマエルに「力を貸してください」と助けを求めていました。(第313話)

それでも、(騎士の立場なら)頼りっぱなしになってちゃカッコ悪い気もしませんか?

 

そんな風に思ったのは、第二部のギルサンダーメリオダスを崇めすぎ・頼りすぎに見えていたからです。

メリオダスが何を考え何のために行動しているのか知る気もなく、ただ盲目的に肯定することしかせず、金魚のフンのように付いて回って、魔神族侵攻の危機下でもメリオダスの強さに少年のように はしゃぐ。

彼がこれほど無邪気でいられたのは、まさに、メリオダスに心酔し、子供のように頼り切っていたからだと読み取っていました。メリオダスさえいれば大丈夫、彼は絶対的に間違わず、彼に付いていけば間違いなく、彼が全て解決してくれると。

 

ですから、この長く続いた物語の終盤、恐らく一般聖騎士たちの活躍としては ほぼ最終なのだろうエピソードで、ギルが「いつまでも頼ってばかりじゃダメだ」と言ってくれたのは嬉しかった。

中断した形になりましたがメリオダスは魔界に帰還するところだったし、それに伴い<大罪>も解散したはずでした。ですから その意味でも、ギルたちリオネスの聖騎士は彼らから自立する頃合いだったと思うのです。

 

 

…ただ、今まで最も重篤メリオダスに心酔しきって視野狭窄な役だったギルが、急に「頼ってちゃいけない」とカッコよく仲間を叱咤する役に回ったのは、ちょっとズルいなあとも思わなくもなかったです(苦笑)。

今までの物語の流れで見るなら、ハウザー辺りが「いつまでも あの人たちに頼ってるわけにはいかねえだろ」と、メリに頼ろうとするギルを叱咤する方が順当だったんではなかろーか? な~んて。

でも わんぱく三人組で花を持つ役なのは、基本、ギルなのであった。イケメン特権ですね。

 

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バンの神器解放

 

 

バンが神器解放を お披露目しました。

今まで、メリオダス、キング、エスカノール、ゴウセルディアンヌが神器解放を見せてきましたが、その中で最も規模も効果も大きかった。もうこれ神様レベルじゃよ(汗)。凄すぎて変な笑いが出そう。

 

恐らく この花道を歩かせるために、廃都コランド戦あたりのバンは過剰に弱く描写されたのでしょうし、あの屈辱があったからこその輝かしい応報であり、読者は魔神王メリオダス戦から続くバン無双に胸をすかしていることと思います。

 

…でも正直に言いまして、このバンの神器解放エピには複雑な感想を抱かされました(苦笑)。素直に「カッコイイね、凄いね」と言い難い…。

えええ。これは強すぎない…? いくらなんでも凄すぎない…?

 

ハイ、ぶっちゃけ、バンさんの扱われ方の良さに嫉妬したよ!(;^ω^)

くそう、作者さんバンが大好きだな!(←色眼鏡)

 

闘級2万のエレインがベッドに居ながらにしてブリタニア全土の天変地異の様子を詳細に感じ取っていた描写(第308話)にも困惑させられたものでしたが。バンも今や魔神王(神)と同等に殴り合える男です。バン&エレ夫婦は、もはや人間や妖精の域を超えた神サマ的存在なのでしょうか。

 

うう。

嫉妬にまみれた愚痴を述べますと~。

四節棍は本来「近接戦闘用」の武器で、バンは「飛べない」。なのに、空を飛んで広範囲に分散したインデュラ幼体を殲滅する状況下で、空を飛べて遠距離攻撃を得意とするキングやマーリンはイマイチ役に立たず、バンの神器解放で「しか」完全には対処できないという展開にも、なんだか納得し難い思いを抱かされちゃいましたです。 

 

空を飛んで広範囲に無数に散らばる敵を一匹単位で追跡して殲滅する作業ならば、今までならキングに適性のある分野でしたよね。

覚醒キングは数百km離れた場所でも精密に霊槍を使えるし、最低でも四つの形態を同時かつ別々に操れるんですから、高空を群れ飛ぶ幼体を「第四形態サンフラワー 」で潰しつつ、散らばって人里に降りた幼体は「第五形態インクリース 」で一匹ずつ追尾して潰すなんてことも出来たんじゃないか? と思えるのに、何故か やらない。人里ごと無差別に焼き払うこと「しか」できないと語られる。そんな攻撃の仕方、今までやったことないのになあ。

 

神器解放の当番が回ってきたバンに大きな花束を持たせるのは結構なのですが、そのために不自然に他キャラを無力化させたり、お株を取るような形には してほしくなかったですね…。

すみません、嫉妬です。

 

 

リオネス王都決戦時に魔神化した新世代から魔神の芽を取り除いた時みたいに、バンとキング、あるいはマーリンらも加えて協力してインデュラ幼体を殲滅する形じゃいけなかったのかしら…。

もしくは、他人のお株に抵触しない、本当にバンだけの得意分野での神器解放だったらなあ。ありきたりですが例えば、幼体を下手に潰すと破裂して悪い胞子が広がるから体を傷つけずに心臓を潰す必要がある、それにはバンが神器解放して魔力を使うのが最適だ、みたいな。

 

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変化するキャラクターへの一考察 

 

 

バンの神器解放お披露目の前振りに描かれたキングの発言は衝撃的でした。

インデュラ幼体が広範囲に飛散し過ぎたからと、キングが「周囲の人間や動物ごと一帯を焼き払う」と言い放つ。ディアンヌが止めても聞く耳を持たない。

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キング
「………!! 広範囲に飛散しすぎている」「やむをえない!! 「光華サンフラワー」で一帯を焼き払うしか…」

ディアンヌ
「ダメだよキング!!」「そんなことしたら近くの人間や動物たちにも被害が!!」

キング
「わかってる!! でも それ以外に方法がないんだ」

ディアンヌ
「そんな……」 

・・・(;゚Д゚)

「周囲の人間ごと焼き払う」って、少年漫画で主人公側キャラの言っていい台詞じゃないよね。'`,、('∀`) '`,、

しかもキングは、今まで「『大のため小を切り捨てる』ことを よしとしない」、「全部守りたい」と一貫して主張してきたキャラだったのに。

つまるところ、二重の意味で「キングが言ってはいけない」台詞だったと思うのです。

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人間や動物はキングの大切なもの(妖精族やディアンヌや仲間)じゃないから、犠牲にしても構わない?

いえいえ、そんな了見だったら そもそも今 戦場にいないでしょう。リオネス王国(人間)を守る目的でインデュラと戦っていたはずです。

 

「全部守りたい」という主張を、私はキングの信念であり、このキャラクターの『骨』であると思って読んできましたし、そこを気に入っていました。

ですから、唐突かつ理由無き この変節は、とても残念だと感じました。

 

キング、君は どうして かた く持ち続けてきたはずの信念を捨てたんだい? 何を契機に「大を守るためなら小を捨ててもいい、みんな守るのは無理」だと思うようになったんだい? そこに葛藤は、迷いはなかったの?

 

 

キングが「人里ごと焼き払うしかない」と人が変わったかのような問題発言をぶっ放してディアンヌを絶望(失望?)させると、横から飛び出したバンが一切の犠牲を出さずに鮮やかに解決。

色んな意味で辛い。

もう一つ加えるなら、このキングの変節は小さなコマで描かれていて、作者さん的には大した意味も含蓄もない…今この瞬間にバンの神器解放を盛り上げるための前振りでしかない…んだなと読み取れるのが、また辛い。

 ・

 ・

 ・

そう。

「理由無き」変節と書きはしましたが、メタ的な「理由」は見て取れる感じがします。全てはバンの神器解放を盛り上げるため。

それにしたって、今までキャラが命を懸けて貫いている風に描いてきた信念を、そんな理由で曲げさせなくたって よさそーなもんなのに…。彼の過去の名場面が台無しになりました。

…いやいや。

もしかしたら作者さんは、キングが ここで役に立たないのは弱いからでも能力が足りないからでもないですよ、むしろ火力が強すぎたからですよと、キングのファンに配慮したおつもりで「人里ごと焼き払うしか方法がない」発言させたんだったりして?(←考え過ぎか。)

万が一そうだったなら、申し訳ないけど、ズレていませんか? としか。

 

海外の読者さん方が、雑誌掲載当時に感想で

「キングが壊れたw」

と皮肉に笑い合っていて、共感するやら悲しいやらだったのが、今でも思い出深いです。

 

…でも思い返してみると、日本でキングの この変節に触れた感想は、寡聞にして見かけたことがないですね。

皆さんは気になりませんでしたか?

私は「ウボァ(>ω<;)」ってなりました(苦笑)。

 

 

…とは言うものの、思い返せば、少し前から「変節」の兆候はあったのでした。

第310話、『自分とエリザベスの呪いを解くことしか考えずに多くの犠牲を出した、新聖戦の責任は自分にある』とメリオダスが懺悔するや<大罪>たちが一斉に『メリオダスは悪くない』と庇い立てた場面。そこでキングは こう言っていたのです。

「…誰もが愛する人を護るため 必死になるのは当然のことさ…」

えええ。「みんな守りたい」を信念とし、最愛の親友であろうと罪を犯せば自らの手で処刑して王として責任をとった厳しさもあるキミが、愛する人を護るためなら他者を犠牲にしようと当然のことだと、そう言うのかい!? …と、この時とてもビックリしたのですが。

まあ、仲間メリオダス を慰めるための台詞だし、言葉の綾みたいなものだろう…と強いてスルーしておりました。

でも、実はキングはマジに それまでの「みんなを守る」信念を棄てて、メリオダスを教主に掲げた「愛する一人(大…大切なもの)を守るためなら他者(小…その他)を犠牲にしても罪にはならない」教に入信していたのでしょうか?

 

…戒禁マエル戦でキングが覚醒したエピソードを、ヘルブラムやオスローが死んだ時は覚醒しなかったのにディアンヌを護らねばと言って覚醒した、しょせん仲間や親友より恋人を取るんだ、「みんな守りたい」という信念をキングはここで棄てていたんだ、と解釈………したことは、私は全くありませんでした。たまたま最後に残ったのがディアンヌだっただけで、状況のタイミングが合えば、仲間や一族のためにも覚醒していただろうと思っています、妖精王の森でのアルビオン戦みたいに。

けれども、310話でのメリオダスへの慰め、そして今回の「一帯を焼き払う」発言と続いてしまったのを見るに、作者さん的には『キングは「みんな守る」という信念を棄てた』という お考えだったのでしょうか……。

 

 

…とまあ、色々ショックでは ありましたが。

救いは、この漫画は既に終盤に入っていて、脇キャラのキングが活躍する機会は もう巡ってこないだろうと思われますから、これ以上の「変節・崩壊」は見ずに済みそうだという点ですね(^^;)。

 

最近、スマホゲーム『七つの大罪 光と闇の交戦グランドクロス』をプレイすることで、原作初期に基づいた性格のメリオダスやエリザベスを見ることになり、その魅力に癒されるやら複雑な気持ちになるやらです。あのゲームのエリザベスは原作以上の社会愛の持ち主ですね。戦いで破壊された街に留まって自ら復興に携わったりとか。ホンマいい子です。

 

原作のメリオダスとエリザベスのキャラが(私の観点からは)どんどん好ましくない方向へ壊れていったのにも、残念かつ悔しい思いをさせられたものでしたが…。(前回の「血まみれエリー」を見たときは、ぶっちゃけ、『私の好きだったエリザベスは今 完全に死んだ…』と思っていました。血まみれ設定が好きな人はすみません、一個人の好みの問題です。)よもや脇キャラのキングにまでも波が及んで、(私の観点での)キャラの核と言うべき部分が崩壊しようとは。

 

 

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などと文句ばかり言ってる私ですけども。

一方では、作者さん物語の神さま が決行した変化に、気に入らないからといって文句をつけるのは よくないことなんじゃないか、ファンなら全てを受け容れて応援し続けるべきなんじゃないか、と迷う気持ちもあるのです。

 

今回のキングの「変節」を見て、改めて色々と考えてみました。

それで気付いたのですが、変化の中にも「受け容れられるもの」と「不満はあっても受け容れられる」ものと、「どうしても受け容れ難いもの」があるなあ、と。

 

例えばキングの変節は受け容れ難いけれど、少年から青年になった容姿の変化は、当初は髪型にビックリしましたが、今はコレもいいよねと受け容れています。

エリザベスの前髪や瞳の変化も、初期の方が可愛かったなと思っていますが、受け容れています。しかし民を想う決意の王女から恋愛脳の血まみれエリーへの変節には受け容れ難い部分があり、今でも悔しいような気分です。

ゴウセルは容姿こそ変わりないながら性格や口調は全く違うものに変化しましたけれど、違和感は持っていません。この変化は、彼にとって いい成長だと感じています。

バンは「人格的に欠けた部分のある悪党だけど、恋には一途で いいところもある」というキャラだったのが、今や「完全無欠の いい男」で(単行本37巻の投稿コーナーコメントでキングが「彼ほどの男はいない」と手放しでベタ褒めしてたのは、感慨深い反面キモかったです 苦笑)、作中の誰よりも成長…いや「超進化」しており、羨ましい限りです。

ディアンヌは「粗暴ワイルド な女戦士だけど、恋には純粋ピュア 」だったのが「人を傷つけることを好まぬ心優しい少女」になり、今や「『ニャー』が口癖の天然ほわほわ少女、地中の生き物が傷つくのが可哀想だから神器解放したくない」になったのは…可愛いし いい変化ではあるけれども、ちょっと度を超えてきてないかと思わなくもない(苦笑)。毎日のように生き物を狩って食べる暮らしをしている子が、生き物が可哀想だから自分や仲間を守るためでも神器解放したくないなんて言い出すのは不自然だし、『優しさ』を履き違えているように感じてしまいます。しかも、そう言いながら土石津波系の術は平気で使うという矛盾。(ソレやると戦いと無関係の地中の生き物も地上の生き物も いっぱい死んだり傷ついたりしてると思うけど…。)

 

 

ちなみにメリオダスの崩壊は、変化というより「ブレ」と 形容した方が適切だと思っています。ストーリー進行の都度都度で作者さんが その時 最もカッコイイと思う言動をとらせた結果、整合性が乱れてしまったのか? 辛うじて「エリザベスへの愛のため」という行動原理のみは『骨』として保たれているものの、それ以外はブレブレだと私には見えています。

最近は「意志を貫き男を導く男前なヒロインエリザベス 」が作者さんのブームとお見受けしますが、結果としてメリオダスの意志が より弱く見えているかも。

3000年前に魔神軍を率いてたのは魔神王の命令だったから。魔神族を裏切る最終決断したのはエリザベスが手を引いてくれたから。不満そうな顔をしつつも<光の聖痕スティグマ >に入ってたのはエリザベスに連れていかれたから。何かと「誰かの望みに従ったため」と受動的に語られています。

ゼルドリスへの対応も、ゼルドリス(十戒)を討って自分とエリザベスの呪いを解くとニシシ笑いしたり、自ら殴り込んで宣戦布告してたかと思えば、可哀想な環境にいる弟を3000年前からずっと救ってあげたかったんだとセンチメンタルに語り出す。

言うこと・やることが場面ごとに風船みたいにフラフラしてブレがちに見える…。

個人の感想です。

 

 

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追記

もうブログの更新はしないんですかという質問メールをいただいていたことに、更新してから気づきました。ありがとうございます。一話分ですが更新しましたよ!

他にも同じことを思っている人もいるかなと思ったのでここで返信しますが、「もうやめていいかな…」という気持ち六割、「いやいやここまでやったんだから最終回まで感想書こうよ」という気持ち四割でした。

でも読みたいと思って下さる方もいるのかなと思ったので、ネジを巻き直して、とりあえず最新話に追いつくことを目標に頑張ってみたいと思います。<(_ _)>

 

 

 

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