『七つの大罪』ぼちぼち感想

漫画『七つの大罪』(著:鈴木央)の感想と考察。だいたい的外れ。ネタバレ基本。

【感想】『七つの大罪』第315話 最終戦争

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週刊少年マガジン 2019年 29号[2019年6月19日発売] [雑誌]

第315話 最終戦

  • ゴカッ
  • メリオダスの右拳が魔神王の頬を殴打する。
  • 一瞬後、その姿はメリオダスの視界から消えていたが、彼は落ち着いて頭上を見上げた。10mほど上空に魔神王は移動している。
  • 「まったくもって忌々しい…!! ここまでの失敗作とはな」
    先程までの余裕はどこへやら。ただ一度 拳を受けただけで、魔神王は苛立ちを剥き出しにしていた。
    「……魔神王は この世界に一人も要らぬだと………?」
    ゴロゴロと不穏に響く雷鳴のなか、声を荒げる。
    「ならば貴様は父を哀れな弟もろとも消し」「自らも消え去るとでもいうのか!?」
  • 「いいや…… この世界から消えるのはオレ一人で十分さ…」「ゼルドリスは必ず救い出す」
    ◆「この世界から消える」と、やたらに悲壮かわいそうぶった言い回しをしてますが、実際は「生まれ育った魔界じもとに帰る」だけとゆー…。
  • 「…?」「待て… では我は」
  • 「てめえは ここでくたばるんだ!!!!」
    稲光が カッとメリオダスの険しい顔を照らした。
  • 魔神王は顔を怒りに歪ませる。
    「ぬかせ~~…」
    ギリリ…と握りしめた拳を振って瘴気弾を放った。
    ◆コントみたいな会話でした(笑)。
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    メリに「オレはこの世界から消え、ゼルは救う」と言われて「では我は」とキョトンとする魔神王。メリに「お前はここで死ぬんだ」と返されると、あれ、本気で怒ってる…。
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    意味わかんなかったです(;^ω^)。
    ハナから殺し合いのために ここにいるのに、なんで「では我は」とキョトンとするの? なんで「ここで死ね」と言われて怒るの?
    まるで家族団欒の輪から弾かれたことに怒ってる父親のホームドラマみたいに見えて、なんともはや場違いでした。

    こういうの見ると、実は魔神王は息子たちを殺す気がないんじゃないか? と思えてきてしまいますが、作者さんに そんなつもりはないんでしょうね…。

    煉獄魔神王との戦いも、魔神王の やりようが ぬる過ぎて、優しく手を抜いてゲームのようにメリたちを鍛えてあげていたようにしか見えなかったのですが、単行本描きおろしで魔神王が無慈悲にワイルドを踏み潰すシーンを追加したり、魔神王は絶対的悪だ、と強いて言わんとしているように感じました。

    では今回の魔神王の、このユルボケた発言は何なんでしょうか。箸休めのギャグ?
    ハッキリしているのは、とにかく魔神王が「愚者」として描かれているということだけです。
    このまま魔神王メリオダス戦と同じ流れを繰り返して、魔神王をアタマもチカラも弱い惨めなアホとして描くだけに終わるのでしょうか。
  • ジュオンッ
  • メリオダスの間近に落ちたそれは水を焼いて水柱を立ち昇らせた。
    メリオダス自身は微動だにせず、もうもうと立ち込めた水蒸気の中に立っている。
  • 避けなかったのは、端から魔神王に攻撃を当てる意図がないと見て取れていたからだろう。ならば、何の意図か。
  • ジロリと肩越しに背後に目を向けたメリオダスは、薄れていく水蒸気の向こう、10数m離れた位置に人影を見た。
  • 「動くな」「いいや… もう動けまい…」
    振り向いたメリオダスに魔神王が告げる。にやにやと嗤いながら。
    「足手まといを連れてきたのは失策だったな…」「再発動してしまった我の呪いから護るためなのであろうが…」
    彼はエリザベスの背後に回って、その首筋に手刀を当てていた。
    ◆「再発動してしまった」? じゃあ呪いの再発動は魔神王が意図したものではなく、彼の意思とは無関係に、復活と同時に自動的に再起動する仕様だったってコトですか?
    …確かにその方が辻褄は合う…というか、意図して呪いを再発動させてメリオダスらに己の復活を報せておきながら、完全体になってないから時間稼ぎにインデュラ呼びますって行動はアホすぎでしたから、こっちのほうが(魔神王のアタマの残念具合が)マシになりますが…。


    この場面の欄外に、編集記者さんによる解説文が付記されていました。
    「復活した呪い」
    魔神王復活で、死の呪いは解いても復活してしまうため、解除できるメリオダスがエリザベスと一緒に行動している。

    第312話の「呪いが復活した今 護ってやれんのは魔神王と同じ力を持った おまえだけだ」というバンの台詞に、エリザベスを呪死から救ったのはマーリンじゃん・メリオダスは何もできなかったじゃん、と疑問を抱いた読者向けの解説っぽい。

    でも、(作者さんの意図が元々そうだったとしても、)こじつけ感が強いなあと思ってしまいました、すみません。
    だって第311話で描かれてたじゃないですか、呪いを解除しても見る見るうちに再生してました。
    本当に「呪いは解いても復活してしまうため、解除できるメリオダスがエリザベスと一緒に行動している」のなら、メリオダスには戦う暇なんてない。飛んで移動する余裕もない。数十秒ごとに呪いは復活する(ように見える)んだもの、エリザベスの傍で延々と途切れなく解呪作業をしていなければならないのでは?

    しかも解呪の際は必ず、メリオダスは「魔神王姿フォーム」になり、マーリンが呪いを可視化し、メリオダスが特殊な解呪星光を放って砕く、という三段階の手順を踏んでいましたよね。
    しかし今のメリオダス平常姿ノーマルフォームですし、解呪星光も放ってません。
    これを踏まえると、たとえば「メリオダスが傍にいるだけでエリザベスの呪いは常に解除され続ける」なんて説明も し難いでしょう。

    …うーん…。
    そーゆー設定にしたかったのなら、311話の時点で、例えば「解呪しても一時間ほどで元に戻ってしまう」とか台詞でハッキリ語っておいてくれれば親切だったのに…。そしたら一時間おきに解呪の必要があるからメリはエリから離れるわけにいかぬ、と語って不自然ではなかったのでは。

    逆に、先に「解呪直後から呪いが見る見る再生する様子」を描いてしまった以上、それを踏まえると疑問を感じる後付けフォローは避けてほしかったかもです。
    細かいことですが、出来れば、読者が「その理屈、おかしくない?」と いちいち引っかからなくて済むように描いてくれてたら親切だったなあと。(うるさくて すみません)


    さて。この場面の欄外には、もう一つ突っ込みしたいコトが(苦笑)。沢山の読者の方々が突っ込んでた気がしますが、この場面、見開きページの右欄外には
    エリザベス…リオネス王国の王女で、前世から続くメリオダスの恋人。魔神王に死の呪いをかけられ、死と転生を繰り返している。
    と。そして左欄外には
    最高神…女神族を統べる長で、エリザベスの母。エリザベスに死の呪いをかけた相手でもある。
    と人物紹介が書かれてたのです(大笑)。
    なんじゃこりゃ。見開きの右と左で解説が矛盾してるぞ。
    ギャグみたいでしたが、担当編集さんも破れかぶれになってる?

    ちなみに第311話で「魔神王が生きているから魔神王の掛けたエリの呪いは復活した(対して、最高神の掛けたメリの呪いは復活しない)」と語ってしまった以上、魔神王と最高神が同一存在とか、共同で呪いを掛けたとか理屈づけることは、いまさら困難でしょう。
  • 「……」
    メリオダスはむっつりと黙り込んでいる。…焦る様子はない。
  • 魔神王は勝ち誇った。
    「この女さえ盾にとれば貴様は手出しができん」「では ゆっくり本来の力を取り戻させてもらおう」
    ◆ええ…(困惑)。
    「本来の力を取り戻す」までに どのくらい時間がかかるのかは判りませんが、魔神王さんは その間ずっと、こうしてエリザベスを捕まえてメリオダスと睨み合いながら立ってるつもりだったの? 漫画とはいえ言動が不可解でござる。
  • 首に手刀を突き付けられたエリザベスは背けた顔を俯けていたが、不意に
    「……っ …プッ」
    と息を吹き出した。可笑しくてたまらないというふうに。
  • 「!? …何が可笑しい!?」
    思わず顔を覗き込んだ魔神王は見た。
  • 「酷い勘違いだからよ…」「私がここへ来たのは足手まといになるためなんかじゃない」
    こちらに目を向けた女神が、明らかな嘲りの笑みに口元を歪めたのを。
    魔神王あなたを倒すため」
  • 傲慢に言い切った女の全身から光が発してキラキラしく輝いた。
    「“聖櫃アーク”」
  • 光に女からし剥がされ、一人、光球アークに包まれる魔神王。それでも光の檻の中で せせら笑う。
    「愚かしい………!!」「こんな哀れな技で魔神の王を倒せると本気で思うのか…!?」
  • 水面に立つエリザベスが右手を掲げた。呼応して魔神王を包む光球アークも浮き上がる。
  • 「!!」
    魔神王がハッとした、直後に。
  • 「「そう」」
    エリザベスが素早く複数の印を結んで手を動かす。その動きを再現するように、たちまち光球アークは すっ飛び跳ね回って幾度も水面に己を叩きつけた。中の魔神王ごと。
  • ドン ドン ドン
  • 「「れつ」!!」
    印を結んだ手を突き出してエリザベスは唱える。
  • バキュッ
  • 光球アークは破裂して四方に弾け飛んだ。
  • おかげで魔神王は光の檻アークから解放されたが、すっかり血にまみれている。
    「こ………の!」「小娘が……!!」
  • メリオダスが真顔で言った。
    「…ナメると痛い目に遭うぜ? 昔のオレみてえにな… てめえも魔界の王ならエリザベスの魔界での呼び名を知ってんだろ…」
  • 魔神王は怒りに歪んだ顔で空から見下ろす。水面に立ってこちらを見上げる女を。その白い頬を滴り落ちた魔神王の血が汚したが、銀髪をなびかせた女の双眸は小揺るぐことさえない。
  • 「「血まみれエリー」」
    返り血に汚れた女の かつての悪名を、メリオダスが告げた。
    ◆本来、魔神王の魔力「支配者ザ・ルーラー」は、物理・魔力あらゆる攻撃を反転して無効化するもの。ところが魔神王メリオダスや魔力を借り受けたゼルドリスは魔力攻撃しか無効化できず、理由は語られませんでした。
    そして今、魔神王ゼルドリスには物理も魔力も、どちらの攻撃も普通に通じています。
    なんじゃこりゃと思ってましたが、この先の展開で その疑問には触れ、一応の回答を見せていましたね。無視されたままにならずによかったです。


  • [同時刻――][魔界の泉より はるか北 ブリタニアの中心地点]
    雪に覆われた荒野。少し前に見送りのため居並んだ場所に、<大罪>五人は再び集結している。
    ◆「魔界の泉」ってなってますが「魔法の湖」の間違いですよね?
  • 「こ… これがインデュラ!!」
    早くも戦鎚ギデオンを構えたディアンヌは、本来の巨人の姿だ。
  • そのディアンヌすら遥か遥かに凌駕した巨大さで、彼らの前には奇怪な怪物が蠢いていた。
    かつて過去の世界で見た二体のインデュラの比ではない。
    昆虫か蟹を思わせる10本の硬い節足。蛇か鞭のように伸びて しなり うねる尾。先端は蛇の舌のような二股だ。長い五つの首の先には、それぞれ異なる形の不気味な頭が付いている。どの頭にも目は見当たらず(いや、鎌のような形の頭に幾つも付いた模様が、あるいは全て目なのだろうか)、裂けたような大きな口には尖った歯が びっしりと並んでいるのだ。
    なんと巨大で おぞましい怪物。
  • しかし怯みはしない。これを倒す。五人の<大罪>は揃って気構えた。
  • 刹那、インデュラは動きを止める。そして思いもよらない反応を見せたのだ。
  • 「!!?」
    驚く<大罪>たち。
    ビンッと天衝いてインデュラの長い尾が立てられたのだから。
  • 「…我々の殺気に反応したようだ」
    マーリンは面白そうに口角を吊り上げる。
  • 「なんだか すごく虫っぽくて嫌~」
    対照的に、ディアンヌは露骨に嫌悪して全身を震わせた。尾の先端近くの肉が モリ モリ モリ と瘤のように盛り上がり始めたのを見て
    「みてみてホラホラ モリモリしてる!!!」
    と けたたましく声をあげる。
  • 瘤は ゴポン…と丸い塊になった。まるで尾の先端に果実でも実ったかのように。
  • 「……尾の先端に無数の魔力が集中している…!!?」
    訝しげに言ったキングの眼下からゴウセルが叫んだ。
    「違う… これは生体反応だ!!」
  • ドッ
  • 尾の先端の裂け目の間から…そこにも小さな「口」があった…塊が打ち上げられる。それは空中でグニグニと動き、モゴ モゴ ボコンと小さな瘤を無数に生成すると、パァンと音を立てて弾け散った。
  • 「ニ゛ャーー!!! 何アレ~~!?」
    涙目でドン引くディアンヌの前でキングは身構える。
    「爆発四散した…?」
    空一面に白い綿毛状のものが拡散していた。
    「あれは何かの胞子………?」「……いや… それにしては大きすぎる…」
  • マーリンが顔色を変える。
    「あれは……!」
    フワフワと漂う綿毛どもが蠢き、どれもが めりっと四本の節足を生やしたのだ。
    「インデュラの幼体か…!!!」
  • ブリタニア中に散らばるぞ!!」「絶対に喰い止めるんだ!!!」
    檄を飛ばしたキングが大槍シャスティフォルを放った。
    飛び回る蜂バンブルビー
    絵筆で塗りつぶすように、群れ飛ぶ幼体が大槍に一掃されていく。
  • 殲滅の光エクスターミネイト・レイ
    マーリンは太い光条ビームを撃って幼体たちを消し飛ばす。
  • 「一匹でも撃ちもらせば 大きな被害が―――」
    大槍を操り続けながら警告しかけたキングの背後に、インデュラの頭の二つが迫り大きな口を開いた。
    「!!!」
  • ドドンッ
  • 軽く高空まで跳んだバンがインデュラの頭二つを蹴り飛ばす。
  • 獲物狩りフォックスハント
    ついでに軽く腕を振るえば幼生たちも数十体が一度に弾け飛んだが、多過ぎて減ったようにも見えない。
    「チッ… キリがねえな」
  • 舌打ちしたとき、マーリンが鋭く呼びかけた。
    「バン!! これを使え!!」「今のお前なら性能以上の力を引き出せよう」
    バチンと指を鳴らせば、バンの頭上に金属の物体が転送されてジャラッと鎖を鳴らした。
    ◆ここからの場面、どう見てもバンが長時間滞空してるんですけど、彼は頑丈になっただけでなく、知らんうちに空まで飛べるようになってたんですか? 何でもアリ過ぎだな~…(汗)。
  • 「!!」
    咄嗟に見上げたバンの顔が、したりとばかりに緩む。
    「んだよ~~♫ やっぱ お前が持ってたのか♫」
    久しぶりでも馴染むそれを手に取って構え、ぺろりと舌なめずりして、その四節棍神器の名を呼んだ。
    「聖棍クレシューズ!!!!」
  • 次回「主恩のインデュラ」

血まみれエリー 

このパワーワードに全てが持って行かれた回でした。'`,、('∀`;) '`,、 

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女神時代のエリザベスが「血まみれ」などという かくも おぞましき悪名を馳せていようとは。しかも、よりによって五種族で最も好戦的とされる人食いの魔神族側から。

どれだけ残酷に、あるいは大量に魔神族を蹂躙していたというのか?

民間人を含めた魔神族を大勢殺して文字通り血まみれになっていたマエルや、大勢の魔神族捕虜を一度に殺す作戦の指導者だったリュドシエルすら、「血まみれ」とまでは呼ばれていませんでした。素直に考えて、それ以上に大量に・残酷に殺していなければ、「血まみれ」などという不名誉に過ぎる名では呼ばれないはずです。

 

第309話で、ゲルダ

「…魔界で あなたの悪名を知らない者は いなくてよ…」

とエリザベスに言ってましたけど、せいぜい「次期魔神王をたぶらかした毒婦」系の悪名かと思っていました。だって、これまでのエピソードでエリザベスと相対した<十戒>もチャンドラーも「メリオダスを裏切らせた女」的なことしか言わなかったから。

 

…以上から、「血まみれ」の呼称は なんかノリで急遽 付け加えられた後付け設定なんだろーなと思ってます。

そもそも「血まみれエリー」という名称は、ご存知の通り、16世紀イングランドの女王 メアリー一世の悪名「血まみれマリー(ブラッディ・メアリー Bloody Mary)」のパロディなのでしょうし。(作者さんは お酒好きということで、カクテル名から採ったのかもしれませんが…。いずれにせよ)一種の洒落ことばあそび程度の意図しかないんだろーな、と。

ちなみにメアリー一世以外にも歴史上に「血まみれ」の悪名を持つ王侯貴族は何人かいますが、いずれも思想や税で民を弾圧したうえで大量に処刑し続けたことで そう呼ばれています。

 

しかし後付けであろうと、その設定が語られてしまった以上、読者は過去エピソードをそれに準拠して読み直さざるを得なくなる。

 

ええ…。「血まみれ」と呼ばれるほど殺しておきながら、潔癖な態度で頭からリュドシエルを軽蔑したり、「魔神族だって他種族と変わらない、私が救います」と高潔な顔で唱えたり、「不安はない、後悔もしない」と不敵に笑ってメリオダスと共に魔界に移り住もうとしていたってコトなんかい…(冷汗)。

 

メリオダスが16年前から<十戒>の戒禁を奪って呪いを解く目的で活動していた(魔神族の封印を解くつもりだった)と明かされたあとづけされた時も。

メリオダスが既に多くの犠牲を出してしまった後になって「実は本気を出して真の魔力を使えば戒禁を奪わなくても魔神王に なれたんだよね」と言い出したあとづけした時も。

「たとえお前が死んでも約束を果たす」という序盤の名台詞が「メリ&エリは 自分たちが どんなに傷ついても世界を平和にする決意」という意味ではなく、本当は「エリの呪いを解くためなら メリ自身はもちろん、関係ない人たちでも犠牲にする決意」という意味だったと明かされたりくつ づけられた時も。

とてもガッカリしたものです。だって、それじゃメリオダスが 身勝手な悪党ということになってしまう。

 

 

それと同じくらい、今回の「エリザベスはかつて『血まみれ』の異名を持ち、元から十戒禁魔神王を血だるまにできるくらい強かった」という展開はショッキングでした。

だって、廃都コランドで記憶が戻って覚醒して以降、エリザベスにパワーアップイベントは一切ありませんでしたから。つまり、その時点からずっと、エリザベスは今と同じ強さだったハズで。(またまた後付けで「新聖戦終結後に突然 覚醒しましたが黙ってました」とか言い出さない限り。)

結果として、チャンドラーや魔神軍や四戒禁マエルや<原初の魔神>はエリザベスの敵ではなかったし、魔神王メリオダスとだって戦えたのに、本気を出さなかった、と解釈せざるを得なくなってしまうじゃないですか。

 

これは酷い。あんまりです。

じゃあ、エリザベスが本気を出してさえいれば、グロキシニアとドロールはもちろん、デリエリもサリエルもタルミエルもオスローも死ななくて済んだかもしれないんだ…。

魔神王メリオダスと対峙したとき(第300話)、殺そうとしてきた魔神王の攻撃に反応できず ぎりぎりでゴウセルに助けてもらったり、

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魔神王に殺されかけたホークを前に成すすべなく泣き叫んだりしてたのは、

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みんな「本気出してなかっただけ」だったんだ…。

 

そうですね。エリザベスにとって、チャンドラー襲来時は仲間を守って戦うことよりも気絶しているメリオダスを抱きしめて守ることの方が重要だったし、戒禁マエル戦では弟分のマエルが可哀想で本気で戦う気になれなかったんだろうし、魔神王メリオダス戦では器にされているメリオダスが心配で本気を出せなかったんでしょう。全て愛と優しさなんですね。偏ってるけど…。

 

 

いえ。メタ的に見たなら、作者さんに「エリザベスは手を抜いて人々を見殺しにしてきた」なんて意図は無く、ただ、理想的にカッコいいエリーを描いたつもりなだけなんだろうなとは理解できます。

でも、結果的にそうなってしまっている。

どうしてこの漫画は、過去の名シーンを自ら どんどん台無しにしていくんだろう?

 

 

実を言うと、エリザベスの過去の悪名が「血まみれ」だったことよりも、今回、彼女が魔神王を小馬鹿にしたように嘲り笑ってから強攻撃を繰り出した態度や表情の方が、ずっとショックでした。

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多重人格を疑ってしまいたくなるほどに、今までのエリザベスとは かけ離れた言動、表情。 

 

…いや…。序盤(第13話)で聖騎士ルインの錫杖をあえて受けてニコッと笑って食いちぎった鈴を不敵に吐き出した場面に、既に片鱗があると言えばある…のでしょうか?

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ともあれ、唖然としたし、しょんぼりしました。

でも多分、作者さんは 最大限にカッコイイ展開として描いたんでしょう。

 

実は、今話が雑誌に掲載されたのと同時期に発売された単行本37巻の読者イラスト投稿コーナーのコメントに、こうありました。

マーリン
「魔神共も感謝するのだな。姉々ねえねえの性格が温厚すぎることに。」

ホーク
「え…? 何それ… 怖いんですけど」

マーリン
「ニヤリ…」 

このマーリンの誇らしげなこと(苦笑)。 

こういうことなんだそうですよ、奥さん。エリザベスは昔から魔神族を圧倒できる強さだったけれど、温厚だやさしいから、本気を出さないでいてあげてたんですって。

 

 

元から、作者さんがエリザベスを「メリオダスと同格か、場合によってはそれ以上に強い」存在として描いていたことは判っていました。

廃都コランドでのvs.メラスキュラ、新聖戦でのvs.エスタロッサ時の圧倒的な戦いっぷりは勿論、単行本32巻の読者イラストコーナーのコメントに

マーリン
姉々ねえねえの本気は ある意味メリオダス以上かもしれんぞ」

ゴウセル
「俺もそう思う」

とあったり、マエルが自分だけでなくリュドシエルやエリザベスも「メリオダスに匹敵する戦士」だったと言ったり(第282話)してましたから。

 

それでも私は、エリザベスの純粋な殺傷能力がこれほど高い(そして好戦的)とは思っていなかったし、また、思いたくありませんでした。闘級上はメリオダスや<四大天使>に並ぶとしても、彼女が得意とするのは浄化や癒しであってほしかった。

何故なら、彼女は3000年前から非戦主義者だったんだと思っていたし、あれだけ「気高く」不殺・非戦・救済を唱えていた以上、そうでなければならないとも思っていたからです。

「血まみれ」と呼ばれるほど過去に多くの魔神族を殺してきたのなら、潔癖な女子中高生のような「周囲を糾弾する」物言いで平和を訴えるのは、傲慢というものでしょう。

 

 

今話、メリオダス

「…ナメると痛い目に遭うぜ? 昔のオレみてえにな…」

と語っていますから、かつてメリオダスはエリザベスと戦って、今回の魔神王のように「痛い目に遭った」ことがあるんですね。

てっきり3000年前のメリ&エリの馴れ初めは、

殺戮を繰り返す魔神メリオダスの前に不殺を唱えるエリザベスが立ちふさがり、戦闘力は及ばずとも気高い姿にメリが惚れた

…のかと想像していたんですが、そっち系じゃなくて、

同格の男戦士と女戦士が激しく戦い合い、その果てに互いの実力を認めて恋が芽生えた

…系だったのかな(苦笑)。

 

となると、メリオダスの魔界出奔の決定的動機となった「<十戒>アラナクとゼノが魔界でエリザベスを処刑しようとした」件も、今までしてきた想像とは違う感じだったんだろうなあ。

今までは、アラナクとゼノがエリザベスを捕らえて魔界へ連行したのかと想像していましたが、戒禁魔神王並みに強い女を、たかが<十戒>二人で捕らえられるはずがない。

エリザベスが わざと捕まって魔界に来たか、彼女の方から魔界に潜入してきて見つかったか、と考える方が自然でしょう。

エリはメリに逢うために魔界に来て、結果、メリはアラナクとゼノを殺して故郷を捨てざるを得なくなったのだとしたら、彼女が出奔時にメリオダスの手を引いて、悲しみや罪悪感の欠片もなく不敵に笑ったのも、ストンと腑に落ちる気がします。(エリ的には「魔王の城から救い出しに来たよ、お姫様メリオダス」みたいな気持ちだったのかしら 笑)

 

・ 

私がエリザベスに戦闘力の高い存在であってほしくなかった理由は、もう一つあります。彼女が戦闘で大活躍してしまうと、<大罪>が活躍できないからです。コランド戦で それを強く感じ、以降、忌避の気持ちを持っていました。

ですから、エスタロッサ~マエル戦や魔神王メリオダス戦で、彼女がサポートや護られ役に回っていたのには安心していました。

 

けれども、最強エリザベスを望む一部読者の方々が嘆いているのも知っていました。

 

今、魔神王戦のやり直しをしているのは、作者さん自身が、魔神王メリオダス戦でエリザベスを戦闘的に活躍させなかったことを後悔しているからなのかな、と勘繰ってもいます。

作者さんは元々エリザベスが戦闘でも最強ランクのつもりだった。でも<大罪>(とゆーか、バン)が活躍する場を与えるためには彼女を無力化しなければならない。

メリオダスの精神に呼びかける役も、エリザベスだけでなく仲間たち全員で、という形にしたのは、もしかしたら作者さんの本意ではなく、仲間キャラの活躍を望む一部読者の要望を酌んだものだったのかな、と。

 

結局 魔神王戦は読者に概ね不評でしたから、だったら元々やりたかった、最強メリオダスと最強エリザベスが、仲間抜きの二人きりで魔神王と戦うバージョンをやってやる、と思ったんだったり…?

 

まあ、全然違うのかもしれませんが。

ただ言えるのは、今のところ、魔神王戦の やり直しは(私の感覚では)戸惑うくらい面白くないです…。(^^;)

 

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主恩のインデュラ

 

 

インデュラの全身像が明かされました。

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このデザイン、見たことある…。

そう、単行本26巻のおまけページ(設定集[1])に載ってたやつ!

そのページにはインデュラのデザインが四つ載せられていました。インデュラは元々 劇場版『天空の囚われ人』用にアニメ制作側から依頼されてデザインしたモンスターだそうですから、その時 作ったデザインの数々なんでしょう。

今回のインデュラは、その設定集に載せた没デザインの一つのリサイクルなんだろうなと思います。

 

そのページに書かれていた説明文の簡略版っぽい文章が、次回 第316話の扉絵に書かれてありました。

単行本26巻

七つの心臓を有し、かつ闘級五万を超える上位魔神が六つの心臓を犠牲に転化した伝説の獣「インデュラ」。

闇と契約し本性を曝け出すことで理性を失い、時間が経つごとにその姿は禍々しく変化していく。

中でも魔神王から戒禁を授かった<十戒>が転化したものは“主恩”のインデュラと呼ばれた。

他にも“灰燼” “星霜” “怨嗟” “遠雷” “業報”など様々な名を冠するインデュラが、今も尚、魔界を彷徨っている。

 

第316話 扉絵

主恩のインデュラ

上位魔神が七つの心臓のうち六つを闇に捧げ転化した伝説の獣

他の名を冠するインデュラと異なり 主恩のインデュラは魔神王に忠実な<十戒>が転化した姿

その力は極めて強大で他のインデュラよりも高い闘級を持つと言われる

 

というわけで、魔神王さんが呼び出したインデュラは、元<十戒>の主恩のインデュラだそうです。理性を失ってなお魔神王の召喚に応えるほど忠義に厚いんですね。

そんで、主恩のインデュラはそれ以外のインデュラより闘級が高いと…。つまり劇場版に出てきた業報のインデュラ(<十戒>ガランの友人バルージャが転化した姿)より強いのか。

 

…ん、あれ? デリエリとモンスピートもインデュラに転化したことがありますけど、彼らも主恩のインデュラでいいんでしょうか? 何気に「魔神王に忠実な<十戒>」と、26巻の時よりも微妙に条件が増えてるし(笑)、モン&デリのどちらも、魔神王への忠誠心はビミョーでしたもんね…。

 

しかし、元は知性ある魔神だったものが、尾っぽからドバっと子供を産んだのは、なんかこー…。得も言われぬ哀れさを感じましたね。(^^;)

いやでも、グレイロードもいっぱい卵生みつけてたっけなあ…。

 

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でもマーリンなら…マーリンさんなら許される!

 

 

バンの神器が遂に登場。

え、今さら…?

不気味な牙ウィアード・ファング>によってバステ監獄に囚われていた時代に盗まれたというバンの神器。一体どこにあるのか、どんな形でバンの手に戻るのかと色々想像したものでしたが、結果は。

 

マーリン
「バン!! これを使え!!」

バン
「やっぱ お前が持ってたのか♫」

 

…ええ~~~? なんじゃそりゃ!!!(ガックシ)

この感想を書く前に連載は四話先に進んでおりますが、どうしてマーリンが隠し持っていたのか、何でバンに渡さなかったのか、説明は未だされていません。

もはや作者さんも考えるのが面倒になってて、マーリンだったら何しても許されるだろうと雑に やっつけたんだろうか…と、つい邪推しちゃいます。

 

バンが「やっぱ お前が持ってたのか♫」とサラッと言っているけど、そう思った理由があったの? なら、どうしてマーリンを問いただすなり奪い取るなりしなかったの?

素敵なナイフは他人のものでも奪い、リオネス王都決戦時に誰かから盗んだ三節棍を長らく愛用してた程度には武器を必要としていたバンが。

 

また、なんでマーリンは神器を渡さなかったの?

バンが「やっぱ」と言ったので、結構 前から隠し持っていた感が醸し出されちゃってますが。どう屁理屈をこねてみたところで渡さずにいた理由がないので、色んな意味で、残念な気持ちになりました。

 

個人的には、バンの神器入手&神器解放エピは、ガラン&メラスキュラ戦でやるのがベストだったろうと思っています。ここでやるのが一番盛り上がっただろうと思う。遅くとも魔神王メリオダス戦。

マーリンが隠し持っていた設定なら、煉獄に行く際に持たせてやればよかったのに~。(失くすといけないから持たせませんでした、なんて説明はナンセンスです。神器を失くすかもしれないリスクより、バン自身の帰還の確率を少しでも上げてやることの方がよっぽど大切だもの。)

 

まあ、連載が終わる前に出しておきたかったんですよね。

神器が何処にあったかとか探すとかのエピを今さらやる余裕はないから、マリえもんに四次元ポケットから出させたんですよね。

 

 

神器周りで残っているのは、

・マーリンの神器解放

・キングの霊槍第九形態

の二つ。

これも最終回までに見せてもらえたら嬉しいです。

贅沢を言えば、キングの霊槍は覚醒バージョンの「第三形態フォシライゼーション」「第六形態ユグドラ・クロス」「第七形態ルミナシティ」も見てみたいけど、これは流石に望みが高いでしょうか。(^^;)

 

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今回の欄外には、第2回人気投票のWEB投票の結果も載っていました。忘れられて終わることにならなくて安心しました。(^^;) ありがとうございます。

ただ、募集時は「ハガキとWEBの投票数を合わせた結果を欄外で発表」としてたと思いますが、WEB分のみの順位発表に。票数は全て伏せられていますから、ハガキとWEBを合わせた総合順位は謎のままになりました。

 

順位の内容は、以前書いた人気投票の記事に追記しました。→こちら 

 

 

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