『七つの大罪』ぼちぼち感想

漫画『七つの大罪』(著:鈴木央)の感想と考察。だいたい的外れ。ネタバレ基本。

【感想】『七つの大罪』第313話 宿命の兄弟

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週刊少年マガジン 2019年 27号[2019年6月5日発売] [雑誌]

第313話 宿命の兄弟

  • ホークとエスカノールが最初に駆け込んだのはバルトラ王の元だった。背後にはスレイダーが控えている。
    「な… なんと そんな恐ろしい事態に……!!」「ううむ… 王国と周辺の民を早急に避難させねば」
  • 次に向かったのは聖騎士団長であるハウザーの元。ギルサンダーとグリアモールも側にいる。
    「わかった…!! 全聖騎士に警戒態勢を取るよう通達する!!」「ドレファス様やヘンドリクセンにも伝えておく!!」
    ◆ドレファスには「様」付けのままだけど、ヘンドリクセンは呼び捨てなんだなあ。
  • 役目を終えると、エスカノールは両膝に手を置いて息も絶え絶えに言った。
    「ゼエッ ゼエッ ゼエッ ゼエッ ゼエッ ゼエッ」「これで…粗方 伝え終わり…ましたかね」
  • 息一つ乱さずケロリとしたホークは、ふと顔を上げると
    「いや まだだ!! 忘れてたぜ!!」
    とんとこ と後も見ずに駆けていく。
  • 「え!? ど…どこへ!?」
    追う余力のないエスカノールは取り残された。
    「げ… 元気だなぁ…」「ハア ハア ハ……ッ」
    顎を伝う汗を拭いかけたところで、
    ゴホッ ゴホ ゲホッ」
    激しく咳き込んで、両手で口元を覆って両膝をついてしまう。
  • 「ハア… ハア…」
    やがて治まると、彼は空の晴れ間を見上げた。
    「…地上は また大変なことになっています」
    「マエルさん…! どうか僕の声が届いてるのなら」「お願いします… もう一度…力を貸してください」
    口から離した手のひらは、血でべったりと汚れている。
    「…手遅れになる前に!!」
    メリオダスとエリザベスのことは とにかく心配しているのに、仲間の誰もエスカノールの健康問題を気にかけない(気付いてすらいない?)のは、悲しいことだなあと思っています。

  • <豚の帽子>亭前に駆け戻ったホークは、雪で覆われた地面に向かって呼びかけた。
    「今度こそ おっかあの出番だぜーーー!!」「わかってると思うけど また魔神王の豚野郎が復活しちまったんだ!!」
  • ゴゴゴゴゴゴゴッ
    ホークママの声が響き渡り、大地が震動する。
  • ところが、いつもなら地面を割って現れるホークママが、今日に限って出てこない。辺りは再び静まり返ったのだ。
  • 「…………はい?」
    地面に向かって耳を傾けるホークは、プゴッと鼻を鳴らして問い返す。
    「「眠い」…?」「何言ってんの?」
  • ブゴゴゴッ
    再び震動と声。
  • 「…………」「…………はい?」
    「「均衡キンコーが大きく崩れて……」」「「…間もなく王が誕生する」…?」
  • 苛立ってホークは喚いた。
    「プガ~~~~ッ!! だから さっき言ったろ!? もう復活しちまってんの!! 寝ぼけんなよ おっ母ーーー!!」
  • ホークママの反応はない。「眠って」しまったのか。
  • 「こうなったら俺が なんとかするしか…」「考えろ… 考えろ…」
    積雪に足跡を円を描いてグルグル歩き回り始めるホーク。
    「いや 考えるな 感じるんだな~~~~!!」
    ごろろろろろんっと樽のように転がって、ゴンッと<豚の帽子>亭の外壁にぶつかった。
    「痛ぇ!!!」
  • ホークは知らなかった。土中にあるホークママの瞳に浮かんでいた映像を。それは長剣に胸から背まで串刺しにされて仰向けに宙に浮かぶ男のシルエットだ。カブトムシの角のような特徴的な前髪を見ればホークも思い出しただろう。
    己の聖剣エクスカリバーを心臓に刺して死んだはずのアーサー王のことを。

  • その頃、メリオダスとエリザベスは それぞれの翼を大きく羽ばたかせて飛行し続けていた。
    眼下には無数の池や湖が点在する広大な湿地ムーアが広がり、行く手には 大気に霞んだ山が見える。
  • 「ねぇ この方角… 魔神王が私たちを待ち受けている場所って―――…」
    エリザベスの問いにメリオダスが答えた。
    「ソールズベリーの魔法の湖だ… ブリタニアで最も魔力に満ちた場所」
    「そこを選んだ理由は …<七つの大罪>との戦いで消耗しきった魔力を回復するため」「――――そして一刻も早く器と完全に一体化するために違いねぇ…!!」
    ◆「<七つの大罪>との戦いで消耗しきった魔力を回復するため」とメリオダスは言うけれど、魔神王と「魔力を消耗させるほど」戦ったのは バン一人だけなよーな…。

    メリオダスは当然という顔で迷いなく魔神王の居場所へ向かう。魔力を感知すれば居場所は判るってこと? だったら<大罪>たちにだって判らないはずがないので(闘級2万のエレインですら、リオネス王都でバンと同衾しながらブリタニア全土の天災の様子を見通す『神様』っぷりでしたからね)、<大罪>が まんまと全員でインデュラの方へ すっ飛んで行ったのは、ちょっと奇妙な感じがします。

    ブリタニアで最も魔力に満ちた魔法の湖」、そこにいれば魔力が早く回復する、と。そんな便利な場所があるなら<十戒>もエジンバラじゃなく そっちを拠点にして魔力回復すればよかったのに。
    つーか、3000年の間にブリタニアに湧き出ていた魔力は動植物に分散吸収されてしまったんじゃなかったっけ?(第122話) だから人間の魂を食べて魔力回復するぞって話だったのに…。

    そしてやっぱり、「魔力が回復してなくて器とも一体化していない」不完全な状態で、敢えてエリザベスの呪いを再発動してメリオダスを呼び寄せる魔神王の行動は、ワケわかんないなと思います。
    万全になってから、新たな呪いなり封印なりを実行すれば、苦もなく報復を果たせたでしょうに。今 魔神王がやってることは、負けるための行動にしか見えないですよね。(^^;)
  • 「大丈夫… きっと助けられるわ」「ゼルドリスだって あなたの助けを待ってるはずよ…」
    微笑んでエリザベスが励ます。
  • だが、メリオダスの表情は逆に曇った。
    「…そうだといいけどな」
    彼の脳裏に浮かぶのは、3000年前の場景だ。

  • 瘴気で曇った空の下、魔界特有の細く尖った岩山にぐるりと囲まれた円い広場は、天然の闘技場のようだった。
    その中央に人影がある。傍らの地面に愛用の大剣を突き立てた<十戒>統率者メリオダスと、彼と向き合ったゼルドリス。
    ◆ここでゼルドリスが腰に差している剣の柄に注目。例の「女神族の紋様トリスケル」が刻まれた剣ではありません。

    女神族の紋様トリスケル」が刻まれた剣の柄頭は突端がハンコのように平たい円台形です。
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    ところが、ここで描かれたゼルの剣の柄頭は、全てのコマで楕円形になっています。
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    明らかに違いますね。

    では、メリオダス出奔以降に、ゼルはあの剣を使うようになったのでしょうか?

    …いえいえ。実は第271話のメリオダスの3000年前の回想、メリオダスがまだエリザベスと出会う前(今回の回想より前)の時期のゼルドリスは、既に「女神族の紋様トリスケル」の刻まれた例の剣を差しているのでした。
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    というわけで、今回の回想のゼルの剣の柄頭の形が これまでと違うのは、何の意味があるのか判りません。
    急に設定変更した? 単なる描き間違い?(今回描かれてる剣、鞘のデザインは従来のと同じに見えますから) ゼルくんも気分で剣を変えることがあるんですよってだけの話?
  • 「魔界を出る!? 正気か 兄者!?」「そんな行為を父上が許すと思うのか!?」
    右手を水平に振り切って怒鳴った弟の前で、メリオダスは冷たい表情を動かすことなく言った。
    「…誰に許しを乞うつもりも ねえさ…」
    「兄者!!!」
    ◆「神(親/王)は その行為を許さない」と言われて「誰に許しを乞うつもりもない」と返すメリオダス
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    (作中時系列的には この後の出来事になりますが、)第208話のエリザベスも同じことを言っていましたっけ。
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    つくづく気が合うんですね、メリ&エリは。
  • メリオダスは僅かに声音を和らげる。
    「ゼルドリス… …オレにも できたんだよ」「心底 護りてぇものが……」
  • ゼルドリスは ハッと息を呑んだ。
    「……!」「最高神の娘エリザベスとの噂は真実だったというわけか!!」
  • 兄弟の会話を、物陰から二人の魔神が聞いている。当時の<十戒>だったアラナクとゼノである。
    だが、メリオダスは頓着しない。
    ◆これはメリオダスの回想なので、聞かれているのに気付いていたと解釈します。
  • 誰に許しを乞うつもりもなく、誰に聞かれても構わないと思う程度には、メリオダスは傲慢だった。
    持って生まれた強大な力で、生まれて この方、邪魔なものは叩き伏せて生きてきたのだ。
    これまでは生きる目的もなく、内心で舌を出しながらも 父のために殺戮と破壊を続けてきたが、エリザベスという光を得た今は、彼女のために、二人の幸せを邪魔する全てを叩き伏せることを厭わない。それが父であろうとも。
    ◆第304話の魔神王の発言によると、戒禁を通じてゼルドリスの言動は全て把握していたそうです。
    じゃあ、この会話も魔神王に筒抜けだった…?

    しかし、この時点のゼルドリスは<十戒>の一員ではなく、戒禁も持っていなかったと思われます。
    彼が戒禁を得て<十戒>統率者代行の立場になったのは、聖戦の末期、「敬神」カルマディオスが何らかの理由で<十戒>から消えた後のことだったはずですから。

    じゃあ魔神王に会話を聞かれてなかったのか…?
    いえいえ、この時点のメリオダスは<十戒>統率者であり「慈愛」の戒禁持ちでした。なので この会話も、それ以前の…エリザベスとの出逢いから交際まで全て…魔神王に筒抜けだったはずですね。

    さて。メリオダス曰く「魔神王に命令されるがままに」殺戮を繰り返していたという時期、彼は「慈愛」の戒禁持ちでした。
    「慈愛」の戒禁を持つ者は、周囲に怒りや憎しみ、敵意の感情を持つと、戦えなくなる呪いを受けます。となれば、アラナクとゼノを「エリザベスを処刑されそうになった怒り」で殺したとき、メリオダスは戒禁を持っていなかったということになります。直前に自ら破棄したんでしょうか?
  • メリオダスは語った。
    「このまま<十戒>の統率者として争いを続ければ」
    己の右拳を目の前で ぐっと握る。
    「…いつか必ず この手でエリザベスを傷つけることになる…」
  • 数拍 押し黙ってからゼルドリスは言葉を吐き出した。
    「…それで魔神族を」「………オレを見捨てるのか兄者ーー!!!」
  • すると、ゼルドリスの前に スッと右手が差し出されたのだ。
    「ゼル…」「ゲルダを連れてオレと来い!!」
  • 目を見開いて顔を上げるゼルドリス。
    差し出された手を ふらりと取ろうとしたが、ぐっと拳を握り、微かに震えながら引いた。パシッと兄の手を払いのける。
    「勝手に出ていけ!!! 俺は もう貴様を… 兄とは思わん…!!!」「次に会う時は敵同士だぞ!!!」
    ◆「だぞ!!!」って語尾が可愛い。
  • そして背を向け、ゼルドリスは歩み去っていったのだ。兄に振り向くことなく。

  • 「…まったく考えなしに言ったもんさ」「ゲルダ吸血鬼やみのじゅうにんだ 恋人の身を思えば魔界に留まるのが当然の話だよな …バカだよ オレは」
    空を飛ぶメリオダスは言った。
    「なによりゼルは根が真面目すぎるからな…」「オレが出て行ったことで余計 重圧に苦しめられたはずだ…」「ゲルダの恋人として… 統率者の代行として… 魔神王の息子として…」

  • 一方、ゼルドリスの器に宿る魔神王は薄笑いを浮かべて湖面に立っていた。
    メリオダスとエリザベスがじきに来よう…」「さあゼルドリス 愚かしい兄への怨みを父と共に晴らそうぞ…!」
    「ハ…」「ハ…」
    メリオダスとエリザベスを待ち受けている魔神王パパ。
    魔力を感知して二人が来ることを察知しただけか、まさか『最初から』二人を待ち受けていたのか…。
    完全体になるまで<大罪>に来られちゃ困ると小細工した一方で、<大罪>より強敵のメリオダスを待ち受けて笑っている。<大罪>の助けが無ければメリオダス単体には確実に勝てる、と思ってるってこと?

  • その時、ゼルドリスは バチッと目を開けた。真っ白な何もない精神世界で。
  • 「……………………ここは…………?」
    「そ… そうだ!! キューザックが俺に戒禁を…」
    勢いよく半身を起こし、フラつきながらも立ち上がる。
    「父上!!!」「俺に身体を返してください!!」「俺は もう 父上の所有物ではないぞ!!」
    真っ白な空間に叫んだ。
    「なぜ黙ってる… なぜ応えない…!?」
    歩き回りながら訴え続ける。
    「…こんな所に いつまでも いるわけにはいかない…」「俺には まだ やらねばならんことがあるんだ!!」
  • すると応えが返ったのだ。懐かしい女の声で。
    「……私を捜し出すこと…?」「その必要なら もうないよ…」
  • ゼルドリスは ピタッと動きを止め、顔色を変えて振り返った。果たしてそこには、思い描いた姿があったのだ。
    ゲルダ!!!」
    かつて己の手で封印した恋人が「………ずっと 会いたかった」と微笑みを たたえて立っていた。
  • 「………違う」「本物じゃない…!!」
    ゼルドリスは あからさまに警戒を見せる。
  • 「本物だよ… わからない?」
  • 「本物のゲルダメリオダスにより再封印され 今もエジンバラに……」
    声を震わせながらも反論するが。
    ◆あれ? ゼルドリスが「ゲルダメリオダスによってエジンバラに再封印された」ことを知っている…。
    ゼルドリスは、メリオダスに「ゲルダは生きている」と聞かされたものの、今どこにいるかは知らされていなかったはずです。その情報と引き換えにメリオダスの魔神王化を手伝ったのですから。
    エジンバラに いると知っていたなら、第300話にて魔神王化したメリオダスに早速「ゲルダの…居場所を…教えてくれ」と訊ねた辻褄が合わなくなってしまいます。
    細かいことですが、またまた設定が破綻してる。砂絵がポロポロと零れ落ちていっているような印象。
    作者さん、物語も終わりに近づいたし、大きな仕事をしているとコメントされてますし(劇場版第二弾?)、お疲れなのでしょうが、しっかりしてくだされ…。
  • 「…キミは嘘をつかれたんだよ」
    彼女は言った。
  • 「嘘……だと?」
    ゼルドリスは耳を傾けてしまう。
  • 「彼の目的は自身の魔神王化… 戒禁を集めるには あなたを懐柔するのが てっとり早いから」
    「そ… それじゃゲルダは…!?」
    「とうの昔に殺されたわ」「…メリオダスと その仲間<七つの大罪>に」
  • 「な…ん…だと」
    ゼルドリスは衝撃と怒りに身を強張らせた。
    メリオダスと<大罪>に とうの昔に殺された、というのは嘘ですが、十分に起こり得た現実でもありました。12年前、<大罪>がエジンバラに吸血鬼討伐に向かった際、ゲルダと対戦したのがメリオダス以外だったり、ゲルダが名乗り出なかったり、メリオダスゲルダの願いに素直に従っていたならば…。

    嘘には少しの真実を混ぜると本当っぽさが増すという。魔神王さん流石です。
    …と思ったけど、考えてみたら12年前のメリオダスには お供の動物がいませんでしたから、魔神王はメリオダスの様子を覗き見できてナカッタはず。となると、12年前の一件を踏まえたっぽい嘘になってるのは偶然に過ぎなかったのかな。

    ところで、12年前にエジンバラの石棺を破壊して吸血鬼王族を封印から解放したのは誰だったのか、今回 読者の質問コーナーで明かされてましたが。盗掘屋の仕業だそうです。
    えええ…な~んだ、ただの盗掘屋かあ…。特にドラマは なかった。ガッカリ。そこらの人間でも簡単に封印解除できちゃうものなのね。
    そのせいでエジンバラは滅び、ただ一人の生き残りのデスピアスも背中に傷痕が消えないほどの大怪我を負ったのだから、恐ろしいことでした。
  • 「でも どうしてもキミに会いたい一心で――――」
    ゲルダは両手を差し伸ばす。
    「私は魂となり ここまで辿りついた」
    ゼルドリスの頬を そっと包み込んだ。
  • 「だ… だが ありえない」「父上が お前の侵入を許すとは思えん!」
    そう言いながらも拒めないゼルドリスの顔を、ゲルダは優しく上向かせる。
    「…よく聞いて ゼル? 魔神王様はね 私とゼルとの仲を お許しくださったの」「…だから私は こうしてキミと また会えたの…」
    「もう こそこそする必要はないの」「ずっと二人でいられるのよ」
  • ゼルドリスは動揺を隠せずに黙り込んでいた。
    父に許され、恋人と堂々と過ごす。それは彼が長年望んでいた夢だったから。
  • 「…っ」
    柔らかな胸に抱き寄せられたゼルドリスの頬を涙が伝った。
  • ゲルダの声が歪に響く。
    『永遠に…』
    ◆ゼルドリス、偽ゲルダ(正体は魔神王パパ?)の おっぱいに陥落す!
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    いや…陥落したかに見せておいて、嘘を見抜いてました展開になるんでしょうけども、定石ならば。

    精神世界に現れた幻の恋人が留まらせようと誘惑する展開は、戒禁マエル戦のゴウセル(純潔の香)と同じですね。魔神王(戒禁)さん、コレ好きなんだな(笑)。
    ゴウセルは自力で幻を打ち破りましたが、同じような展開の繰り返しは避けそうですから、ゼルは誰か(本物ゲルダメリオダスか)の助けで幻から覚める系でしょうか?

    でも、ゲルダが外から呼びかけただけでゼルが魔神王の精神に打ち克てたら、ゼル&ゲルの愛がメリ&エリの愛より上等だってコトになっちゃうし(エリが魔神王メリオダスに外から呼びかけても声が届かなかったから)、といって精神世界にゲルダメリオダスらが入って呼びかけたら、魔神王メリの精神世界にエリと<大罪>が入って呼びかけた展開の繰り返しになっちゃうし…。
    どうなるんでしょうね。

    戒禁を通してゼルドリスのデートを観察していた魔神王パパは、息子が おっぱい星人だと見抜いていたのでしょうか。

  • 満足げに口角を吊り上げて目を閉じていた魔神王が、顔を上げてギロッと一点を睨んだ。
    「来たか……!!」
    空からメリオダスとエリザベスが向かってくる。
  • 二人はそれぞれの翼を閉じて湖の上に降り立った。濡らしたのは つま先だけで沈むことはなく、広がる波紋も僅かなものだ。
    十数m開けて、魔神王ゼルドリスも同じように湖面に立っている。
  • 波も殆どない湖面には、彼らの姿、そして周囲の風景が逆さに映り込んでおり、三人は磨き抜いた鏡面に立っているかのようだ。
  • 敵意を みなぎらせて魔神王を睨むメリオダスとエリザベス。
    魔神王は不敵に微笑んだ。
  • 次回「無慈悲なる救済」

エスカノールの余命、ホークママの異変、そしてアーサー復活に なんかトンデモナイ設定が付いてきたぞ…? と、色々気になるところが出てきました。

 

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死ぬ死ぬ詐欺

 

 

生来のものと思われたエスカノールの魔力「太陽サンシャイン」が、<四大天使>マエルから失われた最高神の「恩寵」だったと明かされ、人間が使えば身を蝕まれて死に至るとリュドシエルが指摘したのは第253話です。

「恩寵の力は神の力 人の子が手にすれば必ずや その身を蝕み 破滅へと導くだろう…」「それは お前が一番 よく理解しているはず」
「身の程を知るがよい 人間」「死にたくなくば その恩寵 今すぐ手放すのだ…!!」

そして第258話、作中時間で言うなら前述のリュドシエルとの会話の二、三時間後に人知れずエスカノールが吐血する場面があり、更に第297話、作中時間で言えば 吐血の数時間後には、<原初の魔神>に敗れたエスカノールは泣きながらマエルに訴えたものです。

「…もう僕には「太陽サンシャイン」に耐えられるだけの寿命が残っていません…」「でも…」「「太陽このちから」がなければ魔神かれらには勝てない!!!」
「…時間がないんです」「早くしないと… 取り返しのつかない事態になってしまう」

 

エスカノールは「貸してあげましょう」と うそぶいて「太陽」をマエルに返却しました。ところが、その後も小さくながら咳き込む描写があり(第299話)、そして今回の吐血です。

返却したところで、一度 蝕まれた身体が元通り回復するわけではない…「寿命が残っていない」ままなのですね。

 

現在のエスカノールは「太陽」を持っていません。マエルは「太陽」を持ったまま、どうやら天界へ帰還したらしい。

エスカは貸しただけなんだから、マエルは「太陽」エスカに返すべき?

でも「太陽」が戻ったら、ただでさえ弱っているエスカは すぐにも死んでしまいそうです。そもそも「貸してあげましょう」発言自体が、渋るマエルに「太陽」を返すための方便で、エスカに再び「太陽」を取り戻すつもりはなかったと思います。

 

でも、ここでエスカノールがマエルを呼ぶってことは、再びエスカに「太陽」が戻るのでしょうか?

でも、単純に「借りてた太陽を返します」展開はナイでしょう。太陽に身を蝕まれてるエスカに返すのは、殺すも同じの行為ですから。

となればマエルが死亡、または瀕死になって、致し方なくエスカに「太陽」が戻されるのでしょうか。

正午の一分間だけ戻してザ・ワン発動、みたいな展開は熱そう?

でも、そうなったらマエルに続いてエスカも死ぬ、暗いオチになってしまうかも。

 

…や。エリザベス辺りがピカーッと光ったら蝕まれていたエスカの身が完全治癒したうえ「太陽」を宿しても平気になるとか、マーリンが薬を飲ませたら一瞬で治るとかの、例によっての『そんな簡単に解決できるなら ナンで今まで放置してたのさ!?』と言いたくなる解決きせきが用意されているのかもしれませんが…。

それともエスカ自身が取ってつけたような理由で 突如 超進化して、バンみたいに人外になって「太陽」に蝕まれなくなるとか(笑)?

 

なんにせよ、無事に「死ぬ死ぬ詐欺」になることを期待するばかりですけども。

個人的には、エスカには今回の戦いを最後に「太陽」を完全に手放して(精神的に「太陽」から自立して)、「人ならざる力」に振り回されない平穏な暮らしと平凡な幸せを手にしてほしいんですが…。

でもエスカが永遠に変わらぬ最強であることを望む読者は多いのでしょうし、どうなるんでしょう。

 

 

あ、でも考えてみたら、最高神を倒したら その力の欠片である「太陽」も消えるはずですよね。

それ以前に、もし最高神と敵対するなら、魔神王がゼルに貸してた魔力を取り上げたみたいに、戦いの土壇場で「太陽」を取り上げられちゃいそうです。

 

エスカは「太陽」をマエルに貸すと言いましたが、元々「太陽」最高神から借りた、彼女の力の一部に過ぎない。自分のものでない限り、本当の意味で好きに使うことはできません。

それを思えば、やはり、エスカが永遠に変わらず「太陽の英雄」であり続けることは難しいのかな、と思いました。

 

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時代の変わり目?

 

 

常に笑顔で文句ひとつなく奉仕してくれていたホークママが、初めて、息子からの出撃要請を拒否しました。

理由は

「眠い」

サラッと語られてるけど、実は大きな出来事なのかもしれません。

 

 

 

2016年に発行されたファンブック『シン約聖書』の「マーリンの好きな動物」の欄に「混沌の母」と書かれてありました。

その後、番外編『やさしい魔法の解きかた』にて「混沌の母より生まれし太古の幽鬼アナオン」と語られ、本編第233、234話でも「仮にもボクは混沌の母より生まれし吸血鬼王族なんだぞ~?」「このボクこそ混沌の母より生まれし吸血鬼王族… オルロンディ様さ!!」と名が出て、読者質問コーナーでは、五種族(魔神・女神・妖精・巨人・人間)以外の あらゆるモンスターを「混沌の母」が生み出したと明かされました。

 

そして、ホークママの正体が<混沌の母>であると、昨年2018年に公開された劇場版『天空の囚われ人』で明かされています。

(劇場版の設定は本編に適用されない、だから漫画のホークママは<混沌の母>じゃないと主張する読者も少なくないようですが、『七つの大罪』においては、しっかり適用されていると見ていいと思います。なにせインデュラだって劇場版から漫画本編に流用された設定なんですもの。)

 

劇場版と その関連漫画では、より深く<混沌の母>の設定が語られていました。

 

劇場版本編、ラストシーンのマーリンの台詞

「かつて、白く輝く巨大な生き物が存在したらしい。それは魔神族すらおそれる闇と、女神族すら崇める光を持つと言われた。人々は、その生き物をこう呼んだという―― <混沌の母>、と」

※この台詞の後、ホークママのお尻から緑の苔が少し剥げ落ちて白く輝く肌が見える

 

劇場版入場者特典冊子 番外編『ガランの忠告』より、3000年前の<黒の六騎士>たちの台詞

「<調停者>…
 …女神にも魔神にも属さぬ存在」

「世界の均衡が崩れし時 片方を間引き均衡をとる者
 逆に均衡が保たれている時 それを崩す者」

「またの名を<混沌の母>」

※この直後、<黒の六騎士>の背後にホークママのシルエットが現れ、彼らと、彼らが連れていた業報のインデュラを封印した

 

 

番外編『ガランの忠告』によれば、<混沌の母>は<調停者>とも呼ばれ、世界の均衡が崩れれば均衡を取り、均衡が保たれていれば崩す者だそうで。

そして今回ホークママは、戦闘に参加する(メリオダス側に加担する)ことを拒んで

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「均衡が大きく崩れて……」「…間もなく王が誕生する」

と言いました。

とっても意味深ですよね。

 

ここで誕生する「王」とはアーサーのことらしい。つまり、崩れた均衡をとって世界を安定させるために、アーサー王が覚醒すると。

素直に考えれば、復活したことで均衡を崩した魔神王を討つ救世主にアーサーが選ばれたということなんでしょうが。

その場合、メリオダスも討伐対象に入るんでしょうか?(今のメリオダスブリタニアにいるだけで天変地異を起こす、均衡を崩す存在です。)

 

そして、なんかメリオダスと対等の力を持つらしいエリザベス様や、魔神王と対等に殴り合ってたバンは、討伐対象にならないんでしょうか。

 

 

 

 

<混沌の母>は3000年以上前から存在していました。

女神も崇めるほどの清冽な光と、魔神も畏れるほどの穢れた闇を持ちながらも、そのどちらにも属さない。

そして、世界の均衡が崩れれば天秤の傾きを元に戻し、しかし均衡が保たれていれば崩すという。

 

彼女は非常に大きな存在に思われます。

立場的には、魔神王・最高神と対等…「三つでワンセット三位一体」なのかも?

 

 

七つの大罪』の世界では、長らく魔神族と女神族が争い続け、その力はメリオダスの裏切りで均衡が崩れて聖戦が起きるまでは)拮抗していました。戦乱にあって「均衡がとれていた」のです。

 

第301話にて魔神王は言いました。

「我は魔神王!!! 死と恐怖をもたらすことが」「我が使命にして役目なり!!!」

戦乱を起こし恐怖を もたらし続けることが彼の「使命」で、義務として役割を全うしている…そう言っているようにも受け取れます。

だとしたら、魔神王(魔神族)と最高神(女神族)が争い続けていたのは「世界の均衡を保つため」だったのでしょうか。

光(最高神)・闇(魔神王)・混沌(ホークママ)の三人で均衡を保ち、世界を維持し続ける……それが創世の時代からの、この世界の「システム」だったのかも?

 

さて。ならばホークママがメリオダスの前に現れ、彼に全面協力を始めたのも、意味のあることかもしれません。

メリオダスとエリザベスに協力してブリタニアから争いを一掃し、平和にして、世界の均衡を保つため…?

 

いえいえ。こうも考えられないでしょうか。

魔神族と女神族が沈黙して3000年、ブリタニアは安定し均衡を保っていましむた。

けれど、均衡が保たれ続ければ、それを崩すのが<混沌の母>だと語られています。

そう、ホークママは世界の均衡を再び崩す…戦乱を起こすために、メリオダスに協力した。そうも考えられないでしょうか(笑)?

 

だってメリオダスは、呪いを解くために魔神族を復活させて力を奪って魔神王化することを目的に活動していたのです。

実際、メリオダスとエリザベスの行動に端を発して、ブリタニアに複数種族を巻き込んだ戦乱が再び起こり、ついには新聖戦が勃発しました。

ホークママが「均衡を崩す」目的で動いていたのなら、目論見通りです。

 

そして、均衡が崩れれば天秤を元に戻す、それもまた<混沌の母>の使命です。

やがてアーサーが目覚め、「魔神王」、もしくはそれに比肩する「均衡を崩す者」を討って、均衡を失った世界を安定させるでしょう。

それもまた、ホークママの目論見…「世界の意思」かもしれません。

 

 

……などなど、ありがちな妄想をしてみましたが。

今回、ホークママが「眠い」と言って戦闘に参加しなかったのは、もしかしたら意味があることなのかなあ、とも思いました。

親から子へ代替わりするように、世界のシステムも変容する時が訪れたのではないでしょうか。

魔神王・最高神・ホークママの三柱の神々が形作っていた世界は終わり、アーサーを旗印にした人間たちによる、誰の加護も妨害もない自由で恐ろしい世界が始まるのかもしれない。

魔神王や最高神ら親神たちは打ち倒されるなり譲るなりして あの世へ去り、ホークママは眠りにつく、とか。

 

…って。別にそんなことはなく、しばらくしたらホークママは普通に地面から出てきて戦場で大暴れするのかもしれないけど(苦笑)。 

 

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ソールズベリーとアーサー王伝説

 

 

メリオダスらと魔神王の最終決戦場は、「ソールズベリーの魔法の湖」だそうです。

次回 第314話 扉絵にて、以下のように説明されてありました。

キャメロットより西に十マイルのソールズベリーに存在する魔法の湖

ブリタニアで最も魔力を豊潤にたたえる場所とされ――

この湖に住む姫が人間の王に不思議なつるぎをもたらしたという逸話も残る

 

エジンバラに続いて、実在のイギリスの地名が出ましたね。

ソールズベリーは有名なストーンヘンジの近くにあって、かの遺跡を観光する際に必ず立ち寄る街として知られています。ストーンヘンジにはマーリン絡みの伝説もありますが、今回 この地名を出してきたのは、多分 違う意図があるんだろーなと思いました。

 

アーサー王が命を落とすことになった最後の戦いは、「カムラン」という場所で行われたとされています。古い歴史書にも そうある。

けれども、日本で最も知られているアーサー王物語、トマス・マロリーの『アーサー王の死』(15世紀イギリス)と、その元ネタである作者不明の『アーサー王の死』(13世紀フランス)では、最終決戦場は「ソールズベリー」の丘になっています。

アーサー王は瀕死の重傷を負い、家臣二人に抱えられて海辺の寺院まで移動しました。しかし家臣の一人も力尽き果てて死んでしまいます。ここから、迫る死を実感したアーサーが「聖剣エクスカリバーを湖に投げ入れろ」と家臣に命じる、あの有名なエピソードに繋がります。

 

さて、ここでアーサーが剣を投げ入れろと言った湖が、かつてアーサーがエクスカリバーを授かったのと同じ湖であるのか、説明は一切ありません。

それどころか、湖なのかすら はっきりしません。「あの水辺」としか書いてないから…。

瀕死のアーサーは海辺に運ばれているので、海に投げ入れたんじゃね? と思ってしまいそうです。エクスカリバーを授かったのが湖だったから、返却した先も 湖なんだろうな、と想像はできますけども……。

 

つーか、テニスンの『国王牧歌』(19世紀イギリス)じゃ海に剣を投げ入れて、アヴァロンに向かう小舟も海を渡っていかなかったっけ? でも手元に本がないから うろ覚えナリ…と思って検索してみたら、マロリーが元ネタにしたとされる作者不詳の『アーサー王の死』が もう一つあって(こっちは14世紀イギリスの詩)、それでは海に剣を投げ込んでたんですね。

それを踏まえれば、マロリーの『アーサー王の死』も、やはり海に投げ込んだ意図で書かれてたんではないでしょうか。だって海辺に行って「あの水辺に行って投げ込め」と命じて、湖という単語は使われてないんですから。

でも読者の多くは「剣は湖で授かったのだから返却も湖のはず」と脳内補正しちゃうのかも。

 

アーサーは戦場から運び出されて海辺まで敗走したのですから、その湖がソールズベリーにあったとは思われません。

けれど作者さんは「エクスカリバーが返却された湖はソールズベリーにあった」と定義して、この最終決戦場たる「ソールズベリーの魔法の湖」を設定したんだろうな、と思いました。

 

アーサー王の都・キャメロットが 何処にあったか、そもそも実在したのかには諸説ありますが、この漫画では「ウィンチェスター」説をとっていると思われます、ファンブックや作中の地図に記された位置を見る限り。

そして「キャメロットはウィンチェスターのことだ」と書いてあるのは、トマス・マロリー『アーサー王の死』です。

アーサー王伝説は色々なバリエーションがありますが、ソールズベリーの件と併せて見るに、作者さんはマロリーの『アーサー王の死』を元ネタの基本に定めているみたいですね。

 

次回 扉絵の解説によれば、「ソールズベリー」はキャメロットより西に十マイルに位置するとのこと。

十マイルは、およそ16km。

…現実世界だと、ソールズベリーはウィンチェスターから西に30kmくらいの位置だなあ。むむ。であれば、この漫画世界のキャメロットは現実のウィンチェスターより西側にあるのかもしれない。それか、湖がソールズベリーの東端にあるのか。

 

 

ところで、「魔法の湖」というファンシーな名称に、最初は ちょっとビックリしました。(^^;)

でもWEBを見たら、エクスカリバーは「魔法の湖」に投げ込まれた、と書いてある日本語のサイトが多いんですね。

これ、どっから出てきた名称なのだろう…。Wikipedia

とりあえずマロリーの『アーサー王の死』には「魔法の湖 enchanted lake / magic lake」とは書かれてなかった。アーサーが剣を授かる場面でも 湖に名称はないし、剣を投げ込む場面では、前述したように「湖 Lake」という単語すら使われてない。

湖の貴婦人が住む湖は「不思議な湖 enchanted lake」に違いない、というだけの解説文上の造語?

…うん、どーでもいいことですね。

 

 

「魔法の湖」の絵は、素晴らしく綺麗です。

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綺麗すぎて この世じゃないみたい!

岸辺に突き立ってる巨大な水晶柱も非現実的な不思議さで、まるで死者の都みたいだと思いました。

 

もう一つ気になったのは、画面左端、魔神王の向こうに見える大きな丸い岩です。

なんか、あからさまに不自然な形じゃね?

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↑この絵だと画面右上にある丸い大岩。

いかにも、この岩の下に何かが封じられてますと言わんばかりな…。杞憂でしょうか(苦笑)。

(ところで、この湖の形が豚に見えるという人もいますが、あなたには どう見えますか?)

 

 

エクスカリバーに貫かれて死んだアーサーの復活を示唆し、同時に、エクスカリバーをもたらしたという魔法の湖を最終決戦場として描く。

更に言えば、メリオダスたちは湖のほとりではなく、湖の上で戦うのです。

なんか、意図がありそうですよね(笑)。

 

果たして、復活したアーサーは「魔法の湖」に現れるのか。

エクスカリバーは水ポチャするのか。

それとも、メリオダスらのうちの誰かが水ポチャするのか。

エクスカリバーを授けたという「湖の姫」は現れるのか。湖の中から手が出てきて掴んだりするのか。(ホラー)

気になりますね。 

 

 

 

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