『七つの大罪』ぼちぼち感想

漫画『七つの大罪』(著:鈴木央)の感想と考察。だいたい的外れ。ネタバレ基本。

【感想】『七つの大罪』第314話 無慈悲なる救済

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週刊少年マガジン 2019年 28号[2019年6月12日発売] [雑誌]

第314話 無慈悲なる救済

  • キャメロットより西に十マイルのソールズベリーに存在する魔法の湖]
    ブリタニアで最も魔力を豊潤にたたえる場所とされ――]
    [この湖に住む姫が人間の王に不思議なつるぎをもたらしたという逸話も残る]
  • 湿地に点在する幾つもの湖沼の中、ひときわ大きな丸い湖。岸辺には、不思議にも巨大な水晶の結晶柱が突き立っている。
  • 凪いで周囲を映した湖面には、メリオダスとエリザベス、そして魔神王ゼルドリスが見合い立っていた。
    湖の上だというのに沈むこともなく、足元に幾許かの波紋を広げた程度で、あたかも浅く水を張った地面の上に立っているかのようだ。
    ◆最近アメンボ見ないなあ。
  • 俄かに風が吹いて湖面に さざ波を走らせた。ざわざわと湖畔の針葉樹が揺れるなか、凝り集まった雲が見る見る黒く染まって ゴロ ゴロ ゴロ と不穏に轟き始める。次の瞬間、
  • ドオ
    ガラガラガラガラッ
  • 数十条に及ぶ太い稲妻いなずまが湖を囲うように降り注いで、木々や大地を撃ち叩いた。
  • 「ハ…」「ハ…」「ハ…」
    先程までとは打って変わって波打つ湖の上、雷光に照らされた魔神王ゼルドリスは、おもむろに笑い始める。
  • 身じろぎ一つせず無言で睨むメリオダス
  • 「聞くがよい息子よ…!」「この世に二人の魔神王は要らぬと 大気が猛っておるわ」
  • 「いいや」
    メリオダスは唇を嗤いに歪めた。
    「…一人も要らねえ」
  • ムッとしたように口を閉ざす魔神王。
  • 「…すべての元凶は魔神王てめえ最高神の くだらねえいさかいだ」「三千年経った今も まだ続いている…」
    風が湖面を濁らせ、波を走らせていく。
    「…一体 どれほどの涙と血が流れていったか知っているか?」「一体 どれほどの命が消えていったか考えたことがあるか?」
    ◆全ての元凶は魔神王と最高神のくだらない諍い。戦争の理由が随分と矮小化したものです。第122話の時点では、封印から出たばかりの<十戒>たちが「ブリタニアから豊潤に湧き出していた魔力を巡って五種族のいくさが起きた」と言っていましたが…。
  • 魔神王は嗤った。
    「愚問だ」「貴様は いちいち路傍の石ころや砂粒に思いを馳せるのか?」
    ◆「おまえは今まで食ったパンの枚数を おぼえているのか?」by ディオさん
  • メリオダス「フ…」と自嘲をこぼす。
    「そう… オレは てめえに命令されるがままに無意味な戦いを繰り返していた」「何も感じず 何も考えねえ 石ころ同然に…」
    ◆いい年した大人が、大人になってから犯した自分の過ちを親のせいにすんのはなあ…と思いましたが、「自分の人生が こうなったのは親の育て方が悪かったせいだ」と言う大人は、現実世界リアルでも いっぱいいるのであった。

    肉親に命じられるまま「無感情に」大勢の敵を殺していたというくだりは、リュドシエルの教えで魔神族を殺していたマエルの話に似ていますが、マエルは一度たりとも兄へ恨み言を言ったことがありません。自分の罪として悔いてはいましたが。この違いは…互いの間にある愛情と信頼の差、なのかな?

    メリオダスはエリザベスを愛して、「父親のために女神族を殺す」立場から「エリザベスのために魔神族をも殺す」立場に変わった。
    ちなみに、マエルもエリザベスを愛して、「兄のために」と同時に「エリザベスのために」魔神族を殺していました。
    二人曰く、それによって「くだらない戦争を終わらせる」、そしてエリザベスとラブラブハッピーになりたいと。
  • 「でも エリザベスがオレの世界を一変させた……!!」
    「それから出会った大勢の仲間たち…」「<七つの大罪>が オレたちを ここまで辿り着かせてくれた」

    ◆描かれている「仲間たち」のイメージ映像の中に、ロウと術師ゴウセルがいます。
    彼らは妖精王の森にいた<光の聖痕スティグマ>一般兵たち(曲がりなりにも当時のメリオダスの「仲間」だったはずの人々)を皆殺しにしましたが、メリオダス(作者さん)の評価では、ロウや術師ゴウセルこそが、主人公が慕わしく思い浮かべるべき「仲間」なんですね。

    ロウの裏切りで大勢が死んだし、ゲラードは身体欠損の大怪我をしてグロキシニアは狂った。取り返しのつかない害を及ぼしてる。それでも「メリオダスを支えてくれた好ましき仲間」に数えられるのは何故か。
    …まあ、ロウは「メリオダスには」悪いことをしておらず、むしろ「アンタは いい奴だ、魔神族でも仲間だ」と手放しで褒めて全肯定してくれましたもんね。

    術師ゴウセルは大規模すぎる策略と裏切りで数多くの悲劇をもたらしました。彼は出奔後のメリオダスと仲間だったことも、協力し合ったことも無いはずです。それでも「聖戦を止めたから仲間」という扱いなんでしょうか?

    この二人の共通項は「愛のためなら他者を裏切り傷つけることを厭わなかった」「メリオダスを肯定した」こと。愛する女のために全てを投げうったという点で、メリオダスと志を同じくする仲間だった、という意味なんでしょうか。
  • 神々てめえらに運命を弄ばれた奴ら」「運命を狂わされた奴ら」「運命に抗い死んでいった奴ら」「運命に打ちった奴ら」
    「その全ての想いを……」
    パキ パキ とメリオダスは右手指の関節を鳴らした。
    魔神王てめえにぶつける!!」
    ギリッとこぶしを握る。
    「覚悟しろ」
  • ゴオッ
  • 拳の真下の水面が抉れて同心円状に波と水しぶきが広がった。その水面に強風を吹きつけたかのように。収まることなく起こり広がり続ける。
  • バサバサと長髪とマントをなびかせた魔神王は笑みを消すことがない。
  • 次に起きた全ては、瞬きの間に過ぎていた。
  • 魔神王 目がけ落ちた稲妻。同時に拳を振りかぶって突進したメリオダス
    「!!」と息を呑んだ魔神王がメリオダスの右手首を掴んで拳を止める。同じくして己の右拳を叩き込もうとしたが、メリオダスが左掌でガード。
  • ボッ
  • その衝撃は二人を中心に高い水柱を噴き上げさせ、生じた魔力衝撃波は グオッ とドーム状に せり広がって稲妻を阻んだ。
  • バリュッ
  • 砕かれ数十条に枝分かれした稲妻は、透明なドームの壁を流れ落ちるごとく二人を避けて湖に吸い込まれたのである。
    メリオダスが利き腕ではない右拳で魔神王を殴ろうとした(それ以前に、剣を使わなかった)のは何の主張? 優しさなんでしょうか (・ω・`)?
  • 魔神王は掴んだメリオダスの右手首に渾身の力を込め続けている。彼が退かないからだ。
    「この…程度か!?」「その想い…とやらは!!」
    こめかみに血管を盛り上がらせながらも余裕ぶってみせるが。
  • 「はあぁ…」
    いっそう気合を高めたメリオダスの右手は、ついに魔神王の手を弾き退け、
  • ゴカッ
  • パンチが魔神王の左頬に叩き込まれた。
  • 次回「最終戦争」

今回のサブタイトルは「無慈悲なる救済」でしたが、誰も救済されていないし無慈悲なことも起きていません。

予定していた内容を土壇場で変更したのかなと思いました。

単行本収録される際にサブタイトルも変更されそう。

 

内容を変更した? せいか、話が全くと言ってイイくらい進まず。(^^;)

メリオダスが長口上して魔神王を一発殴っただけ。

 

半面、荒れる湖や落雷の背景描写は、綺麗でダイナミックで大変 素晴らしかったです。

アニメ版では どう表現するのかも楽しみになりました。

 

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目クソが鼻クソを笑う

 

 

メリオダスは「全ての元凶」は魔神王と最高神の「くだらねえいさかい」だと批判し、「神々てめえらに運命を弄ばれ」て死んだり苦しんだりした人々「すべての想いを…… 魔神王てめえに ぶつける!!」と魔神王への攻撃を開始しました。

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少年向け勧善懲悪物語の主人公として、オーソドックス かつ 王道のセリフです。

…この場面だけを切り取って読むならば。

全体を通して読んだとき、釈然としない想いにとらわれないでしょうか。

 

私は勧善懲悪の物語が嫌いではありません。

主人公が最終戦でラスボスを糾弾する展開を当たり前に楽しんできたし、それらに違和感や疑問を覚えたこともありません。

 

なのに、この物語では引っかかる。

理由の一つは、「ほんの挨拶」の一件を看過し難いからです。

恋愛という私欲のために大勢の無辜の罪なき民を犠牲にし、かえりみることもなかった。

そんな人物が、「みんなの想いを背負う」と高らかに宣言して悪を糾弾するとは、おこがましい限りではないですか。 

 

 

神々てめえらによって運命を狂わされた奴ら」~と口上を述べるメリオダスの背景には、沢山の過去の情景が描かれていました。魔神王によって酷い目に遭わされた人たち、という意味に受け取れます。

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中にはメリオダスあずかり知らぬはずの情景も含まれているので(魔神化失敗したツイーゴの自壊死とか)、メリオダス自身の回想ではなく、あくまで作者さんからのイメージ映像ということかもしれませんが…。

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注意すべきは、描かれている全てが、王女エリザベスがメリオダスと出逢った以降に起きたこと、だという点です。3000年前の映像は(デリエリの死の間際の夢以外は)ありません。

前聖戦は とうに終結し、魔神王や最高神は力を失っていました。その期間に起きた悲劇をも「魔神王のせいだ」と責めたてるのは、流石に乱暴ではないでしょうか。

この期間に起きた悲劇は「フラウドリン」や「妖精王の森を燃やした赤魔神」に起因しますが、彼らは魔神族だから元を辿れば魔神王のせいなんだ、という理屈?

(だったら、フラウドリンや赤魔神を復活させたのは そもそも魔神王だったんだとか、今からでも設定を 後付けしますか?)

 

情景の中には「メリオダスがダナフォールを滅ぼしたことで故国を失ったケイン・バルザド」や「メリオダスが無慈悲に殺したフラウドリン」もあります。

えっ、これらも魔神王のせいなんですか? これらのとがは(少なくとも半分は)メリオダスにあるのでは? …メリオダスの凶行は元を辿れば魔神王のせいなんだ、という理屈なんでしょうか。

また、大きくエスタロッサの姿が描かれていますが、彼の運命を狂わせたのは術師ゴウセルでしょうに。…元はと言えば戦争が悪いんだから つまり魔神王のせいなんだ、という理屈なんでしょうか。

更に言えば、キングとヘルブラムを巡る悲劇は、魔神族よりも「人間族と妖精族の対立」要素の方が大きいです。それでも魔神王かみが悪いのか。

 

なんでもかんでも罪を魔神王に押し付け過ぎに見えます。自分がやったことすら魔神王おやのせいにするなんて。

そこも、釈然としなかった理由の一つでした。

 

 

メリオダスは、エリザベスに出会う前の自分は無意味な戦いを繰り返しており、それは魔神王の命令だったと言いました。

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てめえに命令されるがままに無意味な戦いを繰り返していた」「何も感じず 何も考えねえ 石ころ同然に…………」

同じようなことをデリエリも言っていましたね。(第276話)

「私らは<十戒>として命令されるがまま疑いを抱くこともなく女神族や他種族と戦い殺してきた…」「……それが当然なんだと信じてな」

 

過去の自分の思想や行いは間違っていたと気づいて改める。それはいいのです。素晴らしいことだと思います。

でも、どうしてそこに毎度「自分の間違いは、人に命令されてのことだった」とくっつけるのでしょう。

作者さんの意図は計り知れませんが、あたかも「言われてやっていただけだから悪くない」と言い訳しているかに思えてしまう。

何の権力も持たない民間人や一兵卒ならともかく、軍幹部や王子の立場で「命令されてやっていただけ」と言い出すのは、何の免罪符にもなり得ない、むしろ愚かの二乗だと私には感じられます。

こんなことを言わせないでほしかったなあ。いちいち責任転嫁してるみたいで、すこぶるカッコ悪いじゃないですか。

 

 

もう一つ引っかかったのは、「神々に運命を弄ばれた人々すべての想いをぶつける」と、まるで全ブリタニアの想いを背負った代表であるかのように口上を述べたメリオダスが、実際は、たった六人と一匹の仲間にすら本心おもいを明かさず、嘘をついて この場に来ているというコトでした。

自分勝手な行動しか出来ていないのに、みんなに想いを託された代表のような顔をして「全ての想いをぶつける」だなんて、おこがましくないですか。

 

 

かつてエジンバラに「ほんの挨拶」した時も そうでしたっけ。(第135話)

誰にも相談せずに独断決行したにも拘らず、

「お前らが まだ三千年前の続きをやろうってんなら…」「オレと<七つの大罪>が全力で叩き潰す!!」

と、勝手に仲間の名を使って<十戒>にケンカを売り、勝手にブリタニアの民をエサにして「作戦だ」と のたまって。

まるで自分が全ブリタニア代表おうであるかのように振る舞っていたので、釈然としなかったものです。

ブリタニアの民や<大罪>の命をどう使うか、どう戦うか否かを、メリオダスが独りで勝手に決めていいわけないでしょ。

…と私は思ったのですが。作中では「メリオダスは間違っていない、悪くない」という評価に終わりましたね。

 

作者さんは「ほんの挨拶」のエピソードを その場のノリで描いただけで、悪行のつもりはサラサラなかったんだろうなと推察します。むしろカッコいいことをさせたつもりだったのかも。

でも主人公の「正義」の汚点になったのは確かだと思うんですよ。無視できないレベルに大きく、黒々と。

 

 

メリオダスは魔神王の罪を責める一方に見えます。

彼が「ほんの挨拶」して(3000年前の戦争とは無関係の)ブリタニアの民をエサにし、それによって幾つもの町や国が壊滅したのは、看過できない規模の悲劇だったと思いますが、これも「魔神王が悪い」コトになるんでしょうか。

 

3000年前に魔神軍のリーダーとして戦っていたのは「魔神王に命令されていただけだから、メリオダスは悪くない」。

<大罪>とリオネス王国を裏切って魔神族に再び寝返って新聖戦の引き金となったのも「魔神王に感情を奪われていたせいだから、メリオダスは悪くない」。

 

では、「ほんの挨拶」には どんな言い訳が付くのか? 魔神王に命令されていたわけでも、判断が狂うほど感情を奪われていたわけでもないのに。…「エリザベスへの愛のためだから悪くない、いい人で恩人でエリザベスの選んだ男である メリオダスのすることが間違っているはずがない」と、作中で<大罪>たちが言ってましたっけ。

 

 

魔神王とメリオダスを比べれば、勿論、魔神王の方がずっと悪いでしょう。

でも、メリオダスが自分の罪を遥か高い棚に上げて魔神王を糾弾している様子は、読んでいて微妙な気分にさせられます。

たとえて言うなら、強盗殺人犯が無差別殺人犯を激しくなじっているのを眺めるような。

 

 

 

…と、言ってもしょーがないことを長々と書いてしまいました(;^ω^)。

別に、主人公がラスボスを糾弾する展開自体は いいんです、少年バトル物語の王道だもの。

 

~以下、好き勝手な妄想~

たとえば、仲間たちに嘘をつかずゼルのことを話して「インデュラを頼む、魔神王は俺たちに任せてくれ」と信頼を結んでから最終決戦に赴いたのなら。あるいは仲間たちが最終決戦場に加勢に駆けつけた状況なら。メリオダスが「全ての想いを魔神王にぶつける」と口上しても違和感はなかったかもしれない。

はたまた、メリオダスが一旦 魔神王を糾弾してから「俺もエリザベスを救う名目で多くの命を犠牲にした、責める資格はない」と認めたうえで「だからこそ この世界に魔神王は必要ない、てめえも俺も ここから消え去るべきだ」と戦いを挑む系なら、引っかからずに納得できたかもしれない。

 

ホントにしょーもないですね\(^o^)/。

ただの無い物ねだりです。 

 

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メリオダスが魔神王をパンチ。

それ こないだ魔神王vs.バン、そして精神世界の魔神王vs.メリで見たよ、飽きた!

…と思ったけど、まだ戦いは始まったばかりですし、わざわざエピソード付きで魔剣ロストヴェィンを持参したのですから、剣を使った見せ場が予定されている?

 

久々に実像分身を使ってくれるでしょうか。

今のメリオダスなら、分身体でも<大罪>より強そうです。

分身を出してもメリオダスは疲弊せず、分身が倒されても本体には影響が無い。強力でノーリスクなんだから、戦術的には使わない手はない。物語的には強すぎて盛り上がらなさそうだけど…。

 

魔神王メリを殴って十戒禁を追い出したバンばりに、メリたちが魔神王ゼルの肉体をボコって十戒禁を吐き出させるか。

はたまた、四戒禁を精神世界から追い出したマエルばりに、ゼルの精神が内側から十戒禁を追い出すか。

そんな感じでゼルの器から十戒禁が飛び出るやメリオダスが襲い掛かってロストヴェインで ずんばらり、「それがお前の罪だぜ(キメ顔)」バーン!

…いやいや、取り逃した戒禁が煉獄に逃げていって魔神王が真の完全体に…! 系の展開もアリなのかなあ。  

 

 

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