【感想】『七つの大罪』第306話 永き旅の終着
週刊少年マガジン 2019年 18号[2019年4月3日発売] [雑誌]
第306話 永き旅の終着
- 魔神たちに蹂躙され続けているリオネス王都。
ついに王城の壁を破って、太った赤き魔神や小さな白色魔神らが王の間に押し入ろうとしていた。 - 「陛下には指一本… 触れさせないわ!!!」
ハアッハアッと荒い息を吐くスレイダーの大剣は、既に根元から折れている。
彼が背に庇うバルトラ王も剣を握ってはいるものの、武装はしておらず普段着の長衣のままだ。想定外の状況と読み取れる。 - 「キャハハハハハ」
嬌声に似た叫びを上げながら赤き魔神は巨大な手を突き出した。
◆赤き魔神の闘級1000~1300に対し、スレイダーの闘級は2790。本来なら楽勝のはずですけど、流石に満身創痍の疲労困憊ということか。 - 「「!!!」」
咄嗟に目を閉じて身を固め、死を覚悟するスレイダーとバルトラ王。
「「…………」」
しかし衝撃は訪れない。 - 「………………あら?」
目を開けた二人の視界に映ったのは、 - 飛び去って行く赤き魔神の後姿だった。
- 「な…なぜ 急に攻撃をやめたの!?」
二人は壁の大穴から身を乗り出して城下を見渡す。
ハッとするスレイダー。「むむ…」と、王が驚きに呻いた。 - 「これは…… 奇跡か…?」「魔神たちが… 撤退を始めた!!」
王都を襲っていた全ての魔神が、背を向けて無言で立ち去って行ったのである。
◆どうして魔神軍は撤退したのでしょうか。魔神王(の半分)が倒されたからですか? 新たな魔神王が立って代替わりしたからですか? それをどうやって知ったのでしょうか。
ここは、特に海外の読者に批判されていた場面でした。「なんで?」「変だ」と。
新聖戦 開戦直後(第261話)、エリザベスは魔神軍の精神に「無駄な争いは望まない」「道を空けてほしい」と呼びかけていたが「ほとんどの魔神が応じなかった」と語られていました。サリエル曰く、応じなかったのはチャンドラーとキューザックの絶対的な命令に逆らえないからであり、それでも数十体はエリザベスの言葉に応じて去ったと。
また、3000年前の聖戦時に、エリザベスは魔神の大軍に数分 対峙しただけで全軍撤退させています(第202話)。彼女曰く「私は少し話をしただけ」「誰も心の底から こんな争いは望んでいないもの」と。当の魔神は翌日に「オレたち…なぜ逃げたか…わからない」「…あの目見てると…戦うこと… …嫌になる」と述懐していました(第204話)。
明らかに通常の説得ではあり得ませんが、作者さん曰くエリザベスは洗脳術は一度も使ったことが無いとのこと。殺し合いの最中であろうと数分で説得できるのは、彼女の人徳ということらしい。
尤も、低位魔神たちの「なぜ逃げたかわからない」という発言を見るに、彼らが元より戦争に不満や疑問を持っていて、エリザベスの説得(目)に心から共感し、反戦の決意を込めて撤退したというわけでもないようですが…。
以上から考えますに、低位魔神たちは自我や思考に乏しい人形のような、または知能の低い動物のような存在で、上位の魔神や女神の命令に左右されて行動しているだけなのかも?
今回は、絶対的命令を下していたチャンドラーとキューザック(原初の魔神)が死んで命令電波が途切れたので、低位魔神たちは一斉に逃散したってことなんでしょうか。
それにしたって、混乱が一切なかったのは奇異でしたから、新たな誰かが撤退の命令電波を飛ばしたのかなあ。
日本のゲームやアニメには、ボスを倒した途端にザコ敵(魔物)がいなくなる演出をするものが少なくありませんから、作者さんもそれに倣っただけかもしれません。
でも、魔神たちが撤退するに足る状況を何か演出してくださった方が、読者に優しかったかも…とは思いました。 - 辺りは夕闇に沈もうとしていた。
半日前までキャメロット王都があった場所は今や ひび割れて凹んだ荒野であり、奇怪な岩石の塔が天を衝いて伸びている。 - 地下に隠れているはずの人間たちはおろか、あれだけ群れていた低位魔神たちも一人たりともいなかった。
- この地に再び人が住むのは容易くはないだろう。
滅びの光景の中に、ままごと遊びの人形がボロけて転がっている。 - 「…静か………だな」
男はかすれた声で言った。
メリオダスの籠っていた繭の残骸が見える辺りで、彼は看取られている。
「教えて…くれないか」「もう… 私には何も見えない」 - 顔面と体の一部のみを残して消えつつあるリュドシエルを、マエルが膝をついて抱きかかえていた。
側にはヘンドリクセンも立って見つめている。 - 「終わったんです兄さん………」
「魔神王は消滅しました」「脅威は去ったのです…!!」
マエルは答え、微笑んで少し離れた場所に目を向けた。
「すべては彼らの尽力のおかげ…」 - そこには<大罪>が集い、エリザベスに治癒術を掛けられているメリオダスとバンを笑顔で見守っている。施術が終わると、より大きく笑顔を花開かせた。
顔を見合わせて笑い合うディアンヌとキング、両手を挙げて子供のように飛び跳ねるエスカノール、欠けた体で拍手するゴウセル、指を動かして調子を確かめているバン、見つめ合うメリオダスとエリザベスを満足げに見守るマーリン。 - 「<七つの大罪>」「彼らは かつて誰にも果たせなかったことを成し遂げました…!!」
- リュドシエルは返した。
「…フン… 甘いぞ 魔神王を…倒した…ところで 聖戦が…終わるわけではない」
「ですが兄さん…」
「これは小さな一歩に過ぎん」 - 「?」
キョトンとするマエル。 - 「憎しみ合っていた女神族と魔神族が互いに歩み寄るための一歩にな」
マエルとヘンドリクセンが安堵したように微笑んだ。
「リュドシエル様…………!!」 - 「その通りだわ……」
その時、エリザベスが歩み寄って口を開いた。
仲間たちと喜び合って こちらには背を向けていた彼女だが、リュドシエルの掠れた声を しっかり聞いていたようだ。
「まさか あなたから そんな言葉が聞けるだなんて……」 - 皮肉にも取れる言葉に、リュドシエルは僅かに眉根を寄せる。
「忘れて…ください」「私は この不毛な聖戦 にウンザリしただけです…」 - 「…忘れないわ」
エリザベスは微笑んだ。
「みんなを命がけで護ってくれたこと」「ありがとう… リュドシエル」 - そしてマエルにも声を掛ける。
「マエル… あなたも」 - マエルは少し複雑そうに微笑んで目を伏せた。
- 「フッ…」
残っていた口元で微かに息を漏らして微笑むと、リュドシエルは完全に消え去った。光の泡が風に巻かれて サアアアァ と天に立ち昇っていく。 - 「兄さ…」
声を詰まらせて見送るマエル。 - 「どうか安らかに…」
風に乱れる髪を片手で押さえて、エリザベスは別れの言葉を贈った。
◆「安らかに」!? えっ、じゃあリュドシエルは「実体を失って精神体の状態で天界に戻った」のではなく「死んだ」ってこと? 魂の消滅?
なら、サリエルやタルミエルも「死んだ」のですか。ショックです。
リュドは「女神族と魔神族が歩み寄る第一歩」と言ったけど。そもそも3000年を経てすら回復して活動できた女神族は十人もいなかったわけで、うち三人が死んだのなら、天界に精神体で眠っている女神族が幾らか残っているとしても、種族としては もう成り立たないのでは…。
(劇場版の設定に拠るなら女神族の子孫にあたる「天翼人」のコミュニティも どこかにあるのだろうけど、もう完全に歴史的にも社会的にも断絶された存在みたいだしなあ。)
それはそうと。曲がりなりにも共に戦った仲間が死に逝くところなのに、すぐ近くに居る<大罪>たちが完全無視して仲間内で笑い合っていて、ちょっと驚きました。
元々リュドシエルのことが嫌いだから(メタ的に言うなら、元々敵キャラだから)なんでしょうが、こういうとこドライだなあ。
ゼルドリスの安否も全く気にされてませんけど、こちらは「描写が省略されてる」だけ? エレインの時みたいに、かなり後になって平然と再登場するのか? - 去り逝く者から10数m離れた場所で、エスカノールは鼻歌を歌って浮かれている。
「しかし信じられません …本当に魔神の王を倒せただなんて…!!」「団長もバンさんも戻ってこれたことだし言うこと無しですね!!」 - だが、ディアンヌは気まずげに目線を逸らし、キングは沈痛に俯いていた。
- 「?」「み…みなさん どうしました? 浮かない顔で…」
- 無言のまま涙を滲ませるディアンヌ。彼女を気にしながらキングがエスカノールに答えた。
「もちろん団長とバンが戻ってきたのはうれしいよ」「でも 一番の問題は何も解決してない」 - 「あ…」
メリオダスの方を見やって眉を下げるエスカノール。 - 「そういうことだ…」
腕組みしたマーリンが目を伏せる。
「エリザベスの呪いの刻限は あと一日……」「しかし それを解く手段は失われたのだ」 - メリオダスが顔を向けた先には、マエルらの方から歩み戻りながら微笑むエリザベスの姿があった。
- マーリンは続ける。
「団長殿は呪いを解くために戒禁を取り込もうとしたが」「結局… 魔神王を討たざるを得なかった - エリザベスはメリオダスの頬から耳の後ろに手を差し入れて髪を掻き分け、愛しげに触れるのを愉しんでいたが、ふと気付いた様子で顔を他方に向けた。
- 「このままじゃエリザベスが死んじゃう…」
ついに涙を落として しゃくりあげ始めた巨人の少女の額を、キングが気遣わしげに撫でている。そこにエリザベスは呼びかけた。 - 「ディアンヌ」「もう その話なら ついてるはずよ」「私はメリオダスが戻ってくれれば それが一番なの!」
その表情は晴れやかだ。
「もし メリオダスが魔神王になれば二度と私たちと会えなくなる」「けれど 私は死んでも何度だって転生するわ」 - ゴウセル、バン、エスカノールは俯いて聞いていた。特にエスカノールは苦しそうだ。
- 「最初からそれが
姉々 の願いではあったが…」「本当にそれでいいのか…?」
尋ねるマーリン。
◆マーリンはこの3000年の間、100回以上エリザベスの転生を見てきたはず。
作者さん曰く、転生したエリザベスを見ても「今回の姉々」という認識なのだとか。つまり全てのエリザベスを同一視していて、転生したことによる変化はバリエーションとして認識している感。そして今生の王女エリザベスとの付き合いは三、四ヶ月程度に過ぎず、王女エリザベスでなければならない、というこだわりポイントは特にないはず。
今まで繰り返し見過ごしてきた転生を、自身は呪いを解く手段を持たないのに、今回に限って『いいのか? 取り返しがつかないぞ?』的に問い質すのは何故? - 「…深刻な話の最中に申し訳ありませんが」
ぴこっと頭のてっぺんの癖毛を震わせて、とぼけた口調でメリオダスが割り込んだ。
「呪いを解く方法はある」
飄々と。 - 真顔で目を向けるマーリン、バン。
目をぱちんと開けて頬を寄せ合うディアンヌとキング。唖然とするエスカノール、可愛いポーズで驚くゴウセル。
戸惑うエリザベス。
そして、離れた場所で気まずげに背を向けたまま、片耳だけ向けて聞いているホーク。
◆ホークのこの態度と描写、
深い意味と理由があるのかと思ったのに、次回を見る限り、浅い理由でしかなかったのかな?
それはそうと今回、ディアンヌとキングが いちいち くっつくほど頬を寄せ合ってて面白かったです(笑)。
並んだおもちがくっついてるみたい。仲良しで微笑ましい。 - 「実は煉獄を脱出する際 偶然たまたま その力を手に入れちゃってよ~」「はっはっ」
へらへら笑って言葉を続けるメリオダスに、仲間たちは戸惑いと不審の目を向けた。 - 「状況判断ミスのジョークは場に殺意を生むね」
と、かつてはその常連だったゴウセルが戸惑い気味にメリオダスに耳打ちしたが、
「はっはー ジョークじゃねーし」
と笑い飛ばす。仲間たちに背を向けたまま。 - バンが口を挟んだ。
「ゴウセルの言う通りだ そんな力が都合よく手に入るわけが――」
ふと言葉が途切れた。
「……」「お前… まさか」 - 横目で じっと窺っているマーリン。
- 「さてさてさーて…」
わざとらしく口笛を吹いて歩き離れるメリオダスを、無言で軽く睨むバン。 - 「?」
二人の様子を不思議そうにゴウセルが見ている。 - 「メリオダス…………?」
歩み寄ってくるメリオダスを見ながら、エリザベスも戸惑っていた。 - 「そんじゃ オレとエリザベス以外は全員離れてくれ」
エリザベスと対峙する位置に立って、メリオダスは仲間たちに指示する。 - 「な… 何を始めるの?」
不得要領ながらも、ディアンヌ、キング、エスカノール、ゴウセルは素直に後ずさった。 - 「マーリン 頼むぜ!!」
チャラけた様子で ぴっ と指でさせば、マーリンは目を伏せて
「…ああ」
と応じた。まるで予め打ち合わせでもしておいたかのようだ。 - “
露顕 ”
マーリンが印を結べば、向かい合うメリオダスとエリザベスから黒い気が噴き出した。
驚くエリザベス。
「!」
それは奔流のように ドッ と天に立ち昇る。 - 「二人の体から黒い
靄 が…」
たちまち己より高く昇った それを見上げて驚くディアンヌ。 - 「マーリン これは?」
キングはマーリンに顔を向けた。 - 答えるマーリン。
「…これこそ魔力により可視化した呪いの姿…」
二人に靄 で繋がって天空に並ぶ それは、あまりに巨大で、あまりに不気味な形をしたものだった。
「永遠の生と永劫の輪廻だ」 - 一つは丸い肉塊に見える。
ボコボコと血管の浮き出た肌。ぐるりと外周に生え出た無数の翼。肉を真ん中から割るように上から下まで一本の筋が走っており、それに貫かれた中心点には まつ毛に縁どられた単眼が開いている。その眼球には更に無数の目が開いて ぎょろぎょろと蠢いていた。
その形は二分割した胚を…受精卵を思わせもするし、戯画化された女性器のようでもある。『生命』を想起させる形だ。 - もう一つは円環だった。
瞑目した人の頭が別の人の頭を吐き出しており、その頭も また別の頭を吐き出して、それがまた別の頭を吐いて、繰り返した大小無数の頭が連なって最初の頭に繋がり、全体で大きな環を形作っている。
いや、これは吐き出しているのだろうか。飛び去らんとする前方の頭に後方の頭が追いつき食らい付いて、前を呑み込まんとしながら自分も後ろの頭に追いすがられて食いつかれ、食い合う頭たちが追い巡り続けて環になったようにも見える。
頭が「霊魂」を象徴するならば、これは無数の魂が始まりも終わりもなく食い合って一体となった、切れ目のない『輪廻』の形なのだろう。
◆可視化した呪い。
パッと見て、肉塊の方は女神族みたいに翼が生えてて形も受精卵や女性器を思わせて女性っぽいのでエリザベスの、頭の環の方は「憤怒 の紋様」のウロボロスに似てるのでメリオダスの呪いかと思っちゃいましたが、よくよく形に含まれた意味を考えてみれば、
↑肉塊の方がメリオダスに掛けられた「永遠の命」、
↑環っかの方がエリザベスに掛けられた「永劫の輪廻」の呪いですよね、多分。 - 「これが………」「私たちに かけられた呪いなのね」
見上げて、その形の おぞましさに思わず口元を覆うエリザベス。 - 「…消えてなくなれ」
そう言ったメリオダスの服が霧のように解 けて色形を変えたのを見て、エリザベスは驚いた。
「!」 - 「だ…団長?」とエスカノールが、
「その姿は…!?」とゴウセルが驚く。
ディアンヌとキングは ぽかんと大口を開けた。 - 無言で目を逸らして俯くバン。険しい表情で見ているマーリン。
- 身体は少年のままで、デザインも細かくは違っていたが、メリオダスの変化した服装は「魔神王メリオダス」にそっくりだった。後背に浮かぶ翼こそ何故か純白に変わっていたが、そこから異形の節腕も生えている。
「エリザベス… 三千年も待たせて悪かったな」「これで やっとお前との約束が果たせる…!!」
その表情は自信に満ちて晴れやかだ。
◆子供魔神王メリオダス、大人の時は黒かった後背の羽の色が白い。
ちょっと宝塚の羽飾りっぽい(笑)。
魔神王なのに羽が白くて女神族みたい…何か意味があるのかしらと思っちゃいましたが、よくよく考えてみたら、ただのベタの塗り忘れの可能性もあるのかしらん(苦笑)。いや、全てのコマで白いから、多分ちゃんと「白い」設定なんでしょうけど。…カラー原稿になったら白以外の奇天烈な色に塗られる可能性も捨てきれませんが。 - 「…………」
言葉もなく驚いていたエリザベスの脳裏に、前夜、彼から聞かされた言葉が蘇った。 - (オレに残っているのは)(お前との約束を守ることだけなんだ)
- エリサベスを愛しく想う心は既に無く、残っているのは「約束を守る」義務感だけだとメリオダスは言った。
だが今の彼は感情を…エリザベスへの恋情を取り戻しているはずだから。 - 「ねえ… メリオダス」
呼びかけたエリザベスに「?」とメリオダスが顔を向ける。 - 「約束を果たした後も ずっと……」「私を好きでいてくれる?」
- 涙の粒を はらはらと落として確かめてきた恋人に、メリオダスは満面で明るい笑顔を返した。
「…当たり前だろ エリザベス……」「お前がウンザリするまで ずーーーっとな」 - メリオダスは節腕を掲げ、その手の間に光と闇が混然とした四角の暗星を創り出す。放たれたそれは、天空に並ぶ二つの呪いへと……。
- パキィッ
- ぶつかったかに見えるや、呪いは呆気なく砕け散っていた。
- 「わーー キレー」
キラキラと星のように輝く光が、暮れた空に散らばって瞬きながら舞い落ちてくる。 - 「信じられん…!! 神々の呪いを容易く破るとは」
マーリンの讃嘆。 - メリオダスは「魔神王」の姿を解いて元に戻した。「ふう」と息を吐く。
- すると勢いよくエリザベスが抱き着いてきた。
夜の帳に舞い落ちる光の中、されるがままに抱擁を受け止めるメリオダス。 - 「オレたちの永い旅も ようやく終わったな」
穏やかに笑った彼を抱きしめながら、エリザベスは涙が止まらぬままに言った。
「ううん」「これから始まるの」 - やがて涙が治まると体を離し、彼を見つめて明るく言ったのだった。
「リオネスに戻りましょう」「みんなが待ってるわ」 - 二人の様子を、<大罪>たちが微笑ましげに、満足そうに見つめていた。
- 次回「エピローグ1」
「リオネスに戻りましょう、みんなが待ってるわ」か…。それをメリオダスに向かって曇りなき笑顔で言う。
彼女の認識では、「 みんな」がメリオダスの帰還を待ち望んでいるんですね。
「みんな」って誰でしょうか。バルトラ王やドレファス?
まさかリオネスの民や聖騎士たちが「メリオダスを無事に取り戻すために」戦っていたと、彼の帰還を待っていると、思っているわけではありますまい。
それとも、メリオダスは「魔神王を倒し聖戦を終わらせた英雄」で、平和を待ち望んでいた「みんな」が英雄の帰還を待っている、と考えているのでしょうか。
メリオダスは自らの意思で魔神族へ寝返りました。チャンドラーらが魔神軍をリオネスへ進軍させるのを、戒禁を取り込むまでの時間稼ぎとして容認しました。
そして、この戦いで多くのリオネスの民と聖騎士が死にました。キャメロット王都なんて跡形もなく粉々です。(きっとマーリンが魔法で一夜で元に戻しましたーとか やるんでしょうけど…。)
それでも明るく「みんなが待ってるわ」と言えちゃうのかあ…。んむむ。
戦いには勝てた、魔神王を倒し呪いを解くという宿願は果たした、でも失ったものが大きすぎた……とは思わないんだなあ。
呪いが解けてよかったねと思います。けれども、自分のことばっかりで、それでいいのか? という据わりの悪さも残りました。
呪いを可視化して物理的に破壊するというのは、分かりやすくて面白かったけど、少し陳腐な印象も受けました。
すごく呆気なかったせい?
エリザベスは死ななかった。メリオダスの感情も戻った。呪いも解けた。
まあ、メリオダスが既に魔神王の力に覚醒していてブリタニアに あと一日も留まれないとは、既に第302話で明かされちゃってるわけでして。
これからメリオダスがいなくなるだのの騒動が起きるコト、今は仮初めの平穏に過ぎないコトは、元より読者には判っているわけですから、この時点で どう感じればいいのか判断に困る、ってのも大きいです\(^o^)/。喜べないし、一応は一区切りついたから作者さんが物語を どっちの方向へ向かわせるのか判断できないし。
ちなみに、メリオダスが
「煉獄を脱出する際 偶然たまたま その力を手に入れちゃってよ~」
と言ってて、これを煉獄脱出の際にメリオダスが仄めかした「真の魔力」のことだと思った読者もいるかもしれませんが、ブラフですよね。
メリオダスが呪いを解けたのは「実は既に魔神王化していたから」。
つまり、真の魔力が何なのかは まだ明かされていない。…はず。
このまま有耶無耶にされる可能性も無きにしも非ずですが…。
ところで、エリザベスはメリオダスが魔神王化していてブリタニアに留まれない身になっていること、気付いているのでしょうか。
バンとマーリンが気付いているのは間違いない。
エリザベスは?
彼女の性格からして、メリオダスがブリタニアに留まれず別れることになるのなら、もっと必死に「絶対別れない! 方法を探す!」と騒ぎそうな気がします。そうしないということは、気付いていないか、気付いてるけど別れる気が無い、ということかと。
「一緒に異界に付いていくわ」とか、「あなたが3000年かけて呪いを解いてくれたように今度は私が一生かけて あなたをブリタニアに戻す方法を見つけるわ!」とか、彼女の性格的になさそうだけど「せめて私にあなたの子供を残してちょうだい」とか、後で言い出すのかもしれません。
もしそうだとしたら、彼女が明るく、現実の暗い部分を無視して「リオネスに戻りましょう」と言ったのは、ブリタニアを去るメリオダスに せめて楽しい思い出を…と、あえて取った態度だったのです、みたいな意味があったのかもですね?
さて、どうなるか。