【感想】『七つの大罪』第294話 希望と葛藤と絶望
週刊少年マガジン 2019年 4・5号[2018年12月26日発売] [雑誌]
第294話 希望と葛藤と絶望
- 全天を覆う雲の下、静かな声が響いている。
「ドリマシト・イニマシタ・ラギヲスヤ」「イドチマイノ・リヲンネ」 - 横たえられたデリエリとオスローの遺体の前に立ち、神妙な顔で呪文を唱えているのはマエルだ。
- 「マヨクナイ・ナザレワイン」
かざした右手に光が宿り、ヒイイ…ンと空気を微かに震わせた。 - 「!」
傍で見守っていたゴウセルが残った左目を見開く。 - 遺体を覆って ポッ と光が灯った。包まれたそれらは もろもろと崩れ、光の泡になって フワッ と舞い上がり空に消えていく。
- 「この術は…?」
問うたゴウセルへの答えは静かだ。
「………………“転生の誘 い”」「ただ一度だけ前世の記憶を携えたまま 魂を新たな生命へと転生させる術…」
天へ消えていく光の泡から目を離すことなく、言葉を続ける。
「彼らが転生し 罰を下そうとするならば」「私は それを受け入れる」 - ゴウセルは彼の後姿を見つめた。
「――なら 俺も お前と一緒に罰を受けるよ」 - マエルは無言だったが、なにかしらの動揺を滲ませて俯いた。
◆このマエルは何を感じていたのでしょうか。
気まずかった? 嬉しかった? 苛立った?
重すぎる罪を一緒に背負うという申し出には心強さや嬉しさを感じるとは思うのです。でも、理性や罪悪感で抑え今は小さく鎮火しているのであろうと、ゴウセルへの怒りや恨みも消えてはいないだろうとも思う。優しく気遣われることへの申し訳なさや恥ずかしさ、そこから生じる悔しさもあるかもしれない。どう反応すればいいか分からないのかもですね。 - 「マエル…」「俺たちとキャメロットに行ってくれ」
ゴウセルは表情を引き締めて切り出した。 - 背を向けたままマエルは微かに眉根を寄せる。
「次は女神族として魔神族を倒せと? そんなことを誰が望むのですか?」
グ…と右手を握りしめた。
「兄も… エリザベスも… ――私が この手にかけたサリエル… タルミエル 多くの同胞たち…… 誰一人望みはしない!!」 - 「私は望むわ… だから お願い 力を貸して!」
- 「!」
ギクッと震えてマエルは背後を見やる。
「エリザベス………!!」
いつの間にか現れていた少女の名を呼んだ顔に浮かぶのは、もはや恐れか。 - 対するエリザベスは毅然としている。
「そして」「女神族と魔神族どちらの勝利のためではなく」「聖戦そのものを終わらせるために」 - マエルは口を噤んだ。気まずげに、苦しげに。
- 風は三人の間を吹き抜け、草を撫でて
荒野 を渡っていく。 - その頃、同じ
荒野 の、三人から少し離れた場所。 - 「ゴウセルたち遅いね~~~」
大地に突き立てた戦鎚 を背に座り込んだディアンヌが、立てた両膝の上に両手で頬杖をついて言った。 - 「ややこしい事情だったみてえだし 話しこんでんじゃね?」
返したのは隣に丸くなって休むホークだ。
◆休んでるホークが、ディアンヌとの対比効果で豆っこくて割増可愛い♡ - 「いつまでも待つわけにはいかない」
休まずに宙に浮いたキングは彼方の一点を注視している。
「バンの言う通りキャメロットへは急いだ方がよさそうだ……!」
その方角は、真昼なのに夜のように暗かった。
「…突然現れた この凄まじい気配 嫌な予感しかしない」
そちらから目は離さずに、左手先で印を結び文字を描くように動かしている。 - 「ねえ キング… エスカノールやマーリンたちは無事… だよね?」
俄かに不安になったらしいディアンヌの傍、ホークの足元の地面から、不意に木の芽が伸び出した。「プゴ!?」と飛び退くホーク。 - 芽は見る間に高く伸びて枝葉を張り出させていく。
少し離れたのに、結局は見る間に太った幹や根に押されて コロンと仰のけに振り落とされたホークだった。
◆ひっくり返されたホークが可愛い♡ - 見上げるほどに育った木は枝を震わせ、ザッと一斉に葉を散らす。宙に舞った葉は旋風のようにキングを取り巻いた。
- 「心配なのはオイラも同じさ ディアンヌ…」
渦の中心で彼は言った。
手や足を個別に葉が取り巻いて、たちまち袖や靴が形作られていく。
「だから急ごう」 - 役目を終えて冬枯れのようになった木を背景に、青年は すっかり装いを変えていた。
細身で着丈が長めのダークスーツにドレスシャツを合わせ、首元にはひだ飾り 。足先はウィングチップ の装飾入りの革靴である。(葉から創ったのだから革『風』というべきかもしれないが。)高貴 で正装 な印象の、威厳と繊細さを併せ持つ服装だ。 - 「わ」「わ」「わ♡」
ディアンヌは口の中で声を弾けさせて、真っ赤になった顔を思わずツインテールの両方で隠した。彼のこんな装い、見たことがない。
◆おっさんキングのとき着てたひだ襟 ・提灯ブルマ・タイツの「正装」じゃなくてよかった…(真面目に)。
フォーマルなスーツ。かつてエレインが花びらから創って着てた真紅のイブニングドレス(アニメ版は黒)と並んだら映えそうです。 - ポーーーッとなっているうち、ふと違和感を覚えた。
「! …あれ? そういえば…霊槍 は どこ?」
これまでの彼なら、クッション型にした霊槍 を常に傍らに浮かべて、隙あらば しがみついてダラけていたのに。それこそ「怠惰」の二つ名に相応しく。 - 「あ!!」
キングが答えるより先にホークが声をあげた。プゴッと鼻を鳴らす。
「豚野郎共が戻ってきたぜ!!」 - 低く飛ぶエリザベスと、遅れてゴウセルが走ってきたのだった。
マエルは見当たらない。 - 「…っ」「やっぱりマエルは………」
心の傷が深すぎて独りを選んだのか。
ディアンヌが悲しげに眉を曇らせた隣で、キングが何かに気づいたように顔を上げた。 - 間を置かず、ディアンヌの目の端をハラッ…と舞い落ちる純白の羽根。
ハッと顔を上げた彼女は、既にキングが見つけていた姿を自分でも確かめた。 - エリザベスは微笑む。
- 上空にマエルがいた。気まずげに背を向けてはいるものの、肩越しにチラリと目線をよこして。
<四大天使>マエルが仲間に加わった。 - 一方、キャメロット城。
『夜』の闇の中に明るく輝く一点がある。 - 黄金の戦斧を振るうエスカノール。太陽の化身のごとき彼と相対するのは闇の双剣を持つ<原初の魔神>だ。斧と剣の激しい応酬が続き、やがて弾かれたように互いに背後に跳んで間を開けた。
- <原初の魔神>が口角を吊り上げる。
「残念だ正午 を過ぎれば この程度か……」 - ドシュ
- エスカノールの厚い胸板が横一文字に裂けて血を噴いた。臓器に達したらしく、ガフッと口からも。
- 「フンッ」
しかし例によって筋力のみで傷を塞いだか、不遜に鼻を鳴らし、何事もなかったかのように手に小太陽を発して投げつける。
「この程度の手加減は要 るでしょう?」
“冷酷なる太陽 ”
◆あれ?「無慈悲な太陽 」では? - カッ
- 爆炎に包まれる<原初の魔神>。並みの者なら消し炭に、上位者でも大火傷は避けられぬ威力であろう。
- 一息つく間を得て、瓦礫の上からマーリンが言った。
「ここはキングたちが早々に合流してくれることを願うしかあるまい… それまで持ちこたえなければな!!」 - 「フン… 私たちで十分倒せる相手です!」
傲慢に うそぶいたエスカノールに、それ以上に奢った声が投げかけられた。 - 「粋がるな お前たちの死は すでに決定事項だ」
薄れて消えた炎と煙の向こうから現れる、一つの焦げすらない<原初の魔神>の姿。
「そして――」
かざした盾から煙が上がっていた。この小さな盾一枚で、これまで無敵の威力を誇ってきた小太陽 は完全に防がれてしまったというのか。
「誰も間に合わない」 - 無慈悲な宣告の直後に、魔神の頭上高くにマーリンが
瞬間移動 で現れた。 - 視野外のはずの位置への音もない出現。なのに、魔神は当たり前のように くるっと顔を向ける。
- “
殲滅の光 ”神器 を媒介に、マーリンが太い光線を放った。 - カアッ
対して、<原初の魔神>は口から気を吐いたに過ぎなかった。光線や液体が出たわけではない。 - なのに「
殲滅の光 」は強風に煽られた粉塵のようにブアッと吹き返され、マーリンにぶつかって爆発したのである。「無限 」を付呪 する暇 もなく。 - ズズン
- 撃墜されドカッと床に激突したマーリンを見てエスカノールが顔色を変えた。
「!!!」 - 彼女は半身を起こしたが、胸を強く打ったか、「ゲホ」「かはっ」と血に むせている。床に ぼとぼとと落ちた血が丸い模様を作った。
- <原初の魔神>は静かに嗤う。二人に分かたれていた時は この女に後れを取ったが、今や敵ではないと。
- 「おお!!」
憤怒に駆られたエスカノールが飛び出した。 - ボコォッ
無謀な突撃は無為に終わる。背を向けた魔神に揃えた両脚で馬のように蹴られたのだ。血を撒き散らして高く飛んだエスカノールは、目を開けたまま半ば意識を飛ばしている。 - 「まずは一匹…」
魔神は体を向けて闇の双剣を向けた。
しかし振るう前にピク…と震えて、再び身体を元の方角へ回す。
「なんだ…? この遠方から飛来する巨大な――」
魔神が彼方の空を注視した、そのとき。 - ドンッ
- 空一面を覆う雲海を突き破って巨大な槍が激突した。
- 「がっ」
咄嗟に盾で受けたものの足は床を滑って押され、メキメキと音を立てて槍の穂先が盾に食い込んでいく。 - マーリンが驚愕して叫んだ。
「あれは」「霊槍!!?」
彼女の知る「霊槍」とは形が異なる。だが、花を思わせる異形の巨槍の放つ魔力には覚えがあった。そしてまた、こんな無茶をしてまで仲間を救おうとする意志の持ち主と言えば。 - 同時刻、数百kmは離れた彼方からキャメロットを目指す一団があった。
土石津波の頂に乗ったディアンヌ、ゴウセルを背に乗せたスカイマンタ型ホーク、それぞれ純白の翼で飛ぶマエル、エリザベス。 - 彼らの先頭を青い羽を広げて飛ぶキングは、霊槍を投げ放った左手を前に突き出している。
「待っててくれ みんな…」
霊槍を操る指に魔力 を込めた。
幾度も遅れて来た。護るべき時に間に合わず、大切なものを失ってきたのだ。そう、これまでは。
「もう誰も…… 失わせやしない!!」 - 次回「集結するものたち」
年末につき、一週休みを挟んでの2018年最終掲載の回でした。
ラストのキングがカッコい~い!!
「誰も間に合わない」宣告からの、数100km彼方から槍だけ先に投げて
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「転生の
「ドリマシト・イニマシタ・ラギヲスヤ」「イドチマイノ・リヲンネ」「マヨナクイ・ナザレワイン」
↓
「留まりし・魂に・安らぎを」「今一度の・輪廻を」「迷いなく・
誘 われん」
「ただ一度だけ前世の記憶を携えたまま 魂を新たな生命へと転生させる術…」
女神族には こんな術があったんですね。じゃあ3000年前の聖戦時に仲間が死んだら使っていたのでしょうか?
でも、何に転生するかは判らないわけで…。魔神族に殺された記憶を持って魔神族に生まれ変わったら苦しみの人生じゃない? 誇り高き女神族の記憶を持って無力な豚とかトロールとかに生まれ変わったら悲惨じゃない?
なんとなく、この術って本来はドルイドの「死者使役」のような禁呪扱いなのでは…と感じました。
それにしても、どうしてマエルはこの術を使ったのでしょうか。
「記憶を携えたまま生まれ変わる」ことを「生き返る」ことの代替と定義して、「償い」のつもりでやったとか?
記憶を持って生まれ変わったデリエリとオスローが自分に復讐するなら受け入れると彼は言い、共に罰を受けるとゴウセルは言ったけど…。
人によって感じるところは様々だと思いますが、すみません、私はマエルの この行いを肯定する気持ちになれませんでした。
何故なら、デリエリやオスローが後悔や未練を残して死んだように見えなかったからです。特にデリエリは、知りたかったモンスピートの想いを知れて満足していた。それを汚された気持ちになりました。
「記憶を持ったまま生まれ変わる」なんてのは、よほどの未練や目的がある場合を除いて、いいことだとは思えないです。
もしも、デリエリが仮死状態から奇跡的に生き返ったというのなら、彼女が「これまでの人生の続き」を…様々な負の感情や過去の罪に向き合って悩んだり苦しんだり、その先に新しい幸せや喜びを見つけたりして生きていくことに異論はありません。
しかし、死んで生まれ変わったのなら別人じゃないですか。
生まれ変わった者には まっさらな人生が用意されているはずで、それを前世の記憶なんていう「余計なしがらみ」で汚し「前の人生の続き」のレールを敷くのは、救いではなく、逆に、残酷な行いなのでは?
解放してあげなよ。善行や償いのつもりかもしれないけど、自己満足のために死者の魂まで縛っちゃいかんよ。
前世の記憶のあるまま生まれ変わったなら。
今の自分には関係ないことなのに、わざわざ前世の仇であるマエルを探して復讐したり赦したりしてやらないとイケナイの?
前世と同じ力に目覚めて戦ったり助けたりしないとダメ?
前世で好きだったゲラードや、モンスピートの生まれ変わりと恋愛成就しなきゃイケナイの? それ以外を選んだら不貞扱いになりますか?
デリエリやオスローとしての人生は終わったのに、生まれ変わってまで前世の業に縛られて、その続きを生きなきゃいけないのでしょうか。
勿論、どう生きるかは本人の自由なんですが。
(エリザベスは前世に縛られ続けることを至上の喜びとしていて、どうやら「二人の永遠」を望んでいて、メリオダスが終わりにしようとしたのを絶許! とビンタして、皆を巻き込んだ全面戦争をしてでも別れるのを拒否ってるトコですし。)
報われなかった前世の恋や使命を転生して成就させるというのは物語の王道の一つですし、ロマンチックで私も好きです。
とは言え異常に固執したり、成就のために過度に周囲を巻き込んだり、「前世」を今生の行動の正当化に使うのなら疑問も感じます。記憶の無い転生をして偶然 前世の縁と結びついてた、とかなら問題ないけど。
その意味でも「記憶を携えたままの転生を強制する」術は嬉しくないなあ、と。
ちなみに なろう系転生小説の「記憶を持ったまま転生」は自己のアバター化みたいなもんで、逆に前世の面倒な しがらみを捨てて(都合のいい部分だけ持って)、素敵な未来が期待できる新天地に逃げるためのギミックなんで全然違いますが。(あれはあれで好きです。)
個人的には、
「前世の記憶を携えたまま転生する術」じゃなく
「幸せな転生が出来る術」みたいな、おまじない程度のものでよかったなぁ。
それだったら、エピローグや次世代編でデリエリやロウの面影のあるキャラがちらっと横切ったりしたとき、もしかしたら彼女たちの生まれ変わりかも、きっと今は幸せに暮らしてるのね、などと単純に ほっこりできたのに…。
次世代編で前世の記憶のあるロウ似の男がゲラードの恋人とかキングの補佐とかに収まってたりしたらなんかヤだし…(それしか存在意義ないんかと言いたくなる)。前世から容姿も性格もそのままの ちびデリエリが そのまま「デリエリ」として次世代編で親世代の立場で活躍したりしてもビミョーだなあ。
いやいや、うん、キャラ本人が幸せで周囲がそれを受け入れてるなら、他人が文句言うことじゃないですね。この話は終わり。
それはそうと。
「転生の
魔界を転生に…魔界で転生と言えば『魔界
とかいう どーでもいい連想が脳を駆け抜けました(笑)。
あ、物語の終章に至って未だに正体不明の ななしさんが実は「転生の誘い」で記憶を携えて生まれ変わった3000年前の女神族の生まれ変わりだったなんて展開はいかがでしょうか。
死んだリュドシエルの親友の生まれ変わりだったのだ! とか、死んだエリザベスの兄の生まれ変わりだったのだラスボス化も可! とか(笑々)。女神エリザベスが飼ってた犬のエスタロッサも誰かの記憶持ちの生まれ変わりだったのです、とか。あはは。
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キングは どうしてオスローの葬送に立ち会わなかったのか?
マエルが「転生の
…これ、かなり疑問を感じました。
オスローはキングの大切な友達のはず。しかもキングを庇って亡くなった。
どうしてキングはオスローの葬送に立ち会わなかったの?
エレイン完全復活にキングが立ち会えなかったのも ちょっぴり残念でしたが、まあ仕方ないかと思えました。でも これは…。
時間や距離に問題はなかった。不自然に「少し離れた場所で待機」するくらいなら、オスローの葬送にはキングも ちゃんと立ち会ってほしかったなあ。
色々な お考えがあって こういう形を選ばれたのでしょうが、ちょっぴり作者さんに恨みを抱いてしまいそうです。(´・ω・`)
どうせなら、オスローとデリエリを皆で送った後に、ゴウセルが「マエルを説得するから皆は離れて待っててくれ」と言うとか、あるいはキングが「オイラたちは遠慮するから二人で話し合ってくれ」と席を外すみたいな方が嬉しかったけど。話が複雑になるからダメなんかな。
…うーん。ポジティブに考えてみよう。
説A 文化の違い
今までの描写を見る限り、妖精族には葬儀の文化が無いらしく思われる。よってキングには「葬送に立ち会う」概念自体なかった。
説B 覚醒キングは離れていても立ち会える
今回ラスト~次回の描写を見るに、キングは数百km離れた
説C 覚醒キングは懐が広くなった
オスローを殺したマエルが葬送を行いオスローの友であるキングは立ち会わない。そんな通常なら有り得ない状況を受け入れたのは、覚醒して心も読めるようになったキングに心の余裕が生まれ、マエルを許せているからである。自分の手だけで葬送することで少しでも償いたいというマエルの気持ちを酌んで、彼の望むようにさせてやった。
他には どんな解釈ができるでしょうか。
とゆーか、キングが自分から立ち会わないことを選んだのか、それともマエルの方から「立ち会わないでくれ」と願ってキングが受け入れたのか。どっちなのかで解釈も違ってくる気がしますね。
もしもマエルの方から「立ち会わないでくれ」とキングらに頼んだのなら、何か後ろ暗いことがあったのかもしれません。それこそ、「転生の
だからエリザベスや妖精王には使ってるとこを見せたくなかった…ゴウセルは「罪を共有する者」だから立ち会うのを許した、なんてことも?
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エリザベスの変化
エリザぺスがキリッとして言いました。
「お願い 力を貸して!」「そして」「女神族と魔神族 どちらの勝利のためではなく」「聖戦そのものを終わらせるために」
…あれ? エリザベスが今こうして出陣してる目的って
「メリオダスの魔神王化を阻止すること(彼と別れずに永遠に一緒にいるため)」
じゃなかったっけ? いつの間にか目的が すり替わってないか。
改めて読み返してみました。
まず、メリオダスに連れられてキャメロットに行ったエリザベスは、彼が魔神王化して呪いを解くのと引き換えにエリザベスと別れるつもりであると知って激怒。説得しても話を聞いてくれなかったので
「私は<七つの大罪>と協力して…」「あなたが魔神王になるのを 全力で阻止するから!!」
と宣言、彼の下を離れて<豚の帽子>亭に走りました(第248話)。
↓
<七つの大罪>に協力を要請。言葉での説得を諦め武力を行使してでもメリオダスを止める理由は「二度と会えなくなる」から(第250話)。
第二部前半の頃は、メリオダスが元から協力させるつもりで<大罪>を集めたくせに情報を与えず頭を下げて協力を頼むこともなく いたずらに振り回していたのを不満に思っていたので、ここでエリザベスが<大罪>に正面から協力を要請したのは嬉しかった……けれど、タイミング的に違う!! とも思ってました(苦笑)。
だって、チャンドラーに大敗して死者まで出た直後だったんですよ。
この時点の<大罪>は高位の魔神族一人にすら敵わぬ弱者だった。なのに「(魔神の本拠地に乗り込んでメリオダスを武力で ねじ伏せて取り戻すために)力を貸して」って、死ねと言ってるのと同義です。
これが、皆を死なせてしまうかもしれない、でも…! と心苦しみながら頼んでいるのなら可愛げがあるけど、全くその様子はない。むしろ反対で「この命と引き換えようと」と、自分こそ誰よりも犠牲を払わんとしているとも取れる姿勢になっている。
死んでも「エリザベス」として転生する彼女が、死んだら二度と生き返らない仲間たちに向かって、自分の命を担保に協力を要請しているのです。いやいや、その説得の仕方は使いどころが間違ってるでしょ、と思ったものでした。
↓
リオネスでリュドシエルら<四大天使>と遭遇。
<四大天使>の目的は、リオネス王国と協定を結び、王国に所属する聖騎士と<七つの大罪>と共に魔神族と戦うこと。その戦いこそが真の「聖戦」であると提示されています。
エリザベスはそれを承知したうえで<七つの大罪>の「団長の立場で」共に戦うという盟約を結びました(第251話)。
「たしかに あなたの言う通り…」「私たちの力だけではメリオダスたちを抑えることは決して容易ではないわ…」
つまり、今回の聖戦の開戦に携わった主要メンバーの一人がエリザベスなのです。メリオダスを止めるには武力が必要。よって<四大天使>の手を取って、意図して「聖戦に参加した」。作戦会議では最も上座に座っていました。
それが、今や「聖戦そのものを終わらせるために力を貸して」と言っています。自分から開戦メンバーに加わっといて、どうなっちゃってるんでしょうか? つい今朝の出陣前までは、「戦争をしてでもメリオダスに戒禁を渡さない(魔神王化を阻止する)」ことしか考えてなかったのに。
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…これは きっと、デリエリの影響なんでしょうね。
彼女は失敗して殺されてしまい、聖戦を終わらせることはできませんでしたが…。
けれど、彼女の死を看取ったエリザベスは言いました(第277話)。
「デリエリ… あとは任せて ゆっくり眠って」「あなたの想いは決して無駄にしない………」「聖戦も…マエルも…」「止めてみせるから……」
(そしてメリオダス)(きっと あなたを救う)
なるほど。メリオダスを救う(魔神王化を阻止する)という従来の目的に加えて、ここで「聖戦を止める」という目的を語るように変化していたんですね。
元々、3000年前の女神エリザベスは「聖戦を終わらせたい」「魔神族と和平したい」と述べていました。
しかしそれは、女神族の勝利、または主導によって成されるものと考えていたのかもしれません。メリオダスを女神族側に引き込んで共に戦わせていましたから。「話し合いによる対等な和平」を望んでいたなら、そんなことはしないでしょう。
インデュラを鎮めた際のサリエルらとの会話を読むに、なんだかんだ言って女神エリザベスは、魔神族を「女神族が救ってあげるべき存在」と見ていたのかも。
そんなだったのが「女神族と魔神族 どちらの勝利のためではなく」と言うようになったのは、3000年の転生越しに現れた彼女の変化なのでしょうか。
尤も、ここでエリザベスが「女神族と魔神族どちらのためでもなく」「聖戦を終わらせるため」という言い方をしたのは、マエルを説得するにはそう言うしかなかった、って事情があるのも確かですよね。流石に「私とメリオダスの幸せのために力を貸して」と頼むのは酷ですから。
一緒にキャメロットに行こうと請われて「今度は女神族として魔神族と戦えというのか、そんなことは誰も望んでいない」と立ち竦むマエルは、面倒くさい奴と言えるのかもしれませんが、私は好きです。
己の罪に真剣に向き合っている感じがするから。
拭い去れない罪を犯しているけれど、悩み苦しみながらでも生きていってほしいと思えます。
それはそうと、戦線に加われと説得する前に、エリザベスにはマエルをきっちりフッてあげて欲しかったかもなあ。
マエルの失恋なんて判り切ってるんだから今更だろ? ってハナシじゃないですよ。ケジメです。
マエルの片想いをエリザベスはずっと知らなかった、あるいは知らないふりをしていた。その恋の痛みもあって彼は これほど暴走したのだし、しかもエリザベスの恋人であるメリオダスを助けに行くのに力を貸せというのですから。
であれば、ここで「ごめんなさい、あなたの気持ちには応えられないわ」と「終わらせる」手順を踏んであげて欲しかったかもです。そのうえで協力を要請する、と。
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キングの新衣装
キングが服を着ました!(笑)
おお……フォーマルスーツ…!!
王侯貴族のイメージで、かつ、軍服風(詰襟系)を避けたのかな…?
意外だったけど似合ってる。ヤンキーにもロックスターにも見えなくてホッとしました。シルエットがスマートでノーブルさもあってカッコよかったです。
ただ、これから最終決戦なのに、結婚式か舞踏会にでも行きそうな格好は場違い感が…と思ったんですが、よくよく考えてみたらエリザベスの決戦服も「お庭を散歩するお嬢様」みたいな戦争には全く そぐわない服でしたね(苦笑)。なら いっかー。
アニメ『七つの大罪 聖戦の
ディアンヌがキングにポーーッとなってて新鮮でした。
今までは殆ど、ディアンヌは自然体で、キングの方ばっかりディアンヌに見
おお、ついにカノジョに見
ちょっと感慨深かったです。
今回、キングの方は戦闘(冷徹)モードが持続してて、ディアンヌの前でも一貫してクールでしたね。(言わずもがなですが、キングは子供姿の頃から戦闘時は こういう性格です。)
子供キングの最初期服のデザインって、秀逸だったと思ってるんですよ。
ダボッとしたパーカーで形や色も可愛いってだけじゃなく、
一見して都市にいる子供でも通りそうな現代的なデザインなんだけど、森にいる妖精として見ても違和感がない。フードとか、インナーの素朴な
加えて、素材の一部がディアンヌの服とお揃いと思われたり(
そういう意味では、このキングの新衣装は、妖精らしさが皆無なのがちょっと残念かもしれません。森に居たら浮きそうです。どこかに植物をモチーフにした飾りが入ってても よかったかも?
どうせ戦いの中で すぐ破れるさ、なんて声も聞こえてきますが(苦笑)。
本編後のエピローグや次世代編では、森に妖精王として居ても違和感のない服も期待したいですね。(無茶ぶり?)
そーいや、大人キングを見たバンの反応が楽しみだったのに、前回、完全スルーでしたねえ(苦笑)。キングの真の姿を初めて知った時や、目の前で おっさんに変身した時みたいに「あれの どこがキングなんだ~!!?」とか大声出したりして驚いてくれるかと期待してたのに、機を逃してしまった。残念。
メリオダスは少なくとも表面上は全く驚かなさそうですね。チビ羽が生えた時みたいにニヤニヤ笑いながら揶揄う程度か?
じゃあエスカノールは驚いてくれるでしょうか。昼エスカは「生意気ですね」くらいの反応で終わりそうですけど、夜エスカなら いい反応してくれそうです。
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霊槍はいつ投げられたのか
<原初の魔神>に命中した大槍。しかしキング自身は未だキャメロットへ向かう途上にある。彼は、いつ霊槍を投げたのでしょうか?
今回、キングが新しい服を着た後、ディアンヌが
「! …あれ? そういえば…
霊槍 は どこ?」
と訊ねる場面がありました。
私はこれ、「いつも傍らに浮かべていたクッションが無い」という意味だと受け取ったのですが、全く違う解釈の読者も多いみたいです。
曰く、キングは霊槍をこの時 既にキャメロットに向けて投げていた。それを暗示した場面だと。
確かに そうも受け取れます。なるほど。そうかもしれない。
でも私は、この時は投げてなくて、キャメロットに向かう途上の空の上でエスカノールたちの危機を感じて投げた、という説を掲げさせていただきたいです。
何故って、そっちの方がカッコイイ気がするから(笑)。
いや…。
キングが服を着る前から槍を投げてたなら、どうして隣にいたディアンヌがそれに気付かないのか、と思うんですよ。別に隠して投げなきゃいけないわけじゃないし、隠して投げるのは大変そうだし。
また、キングらが まさに「キャメロットの異変」を感じた場面(第292話)、つまり確実に槍を投げていないだろう時点でも、やっぱりキングの周囲にクッションは浮かんでいないのです。
なので、キングは覚醒以降クッションを周囲に浮かべることを やめたって意味じゃないかな、それをディアンヌの台詞で明示したんじゃないかな、と思ったのでした。
では、どうしてキングはクッションを浮かべなくなったのか?
メタ的に考えるなら、子供姿のキングが隙あらばクッションに
物語が終章に入って、<大罪>各キャラの「罪」のテーマにも着々と決着がつけられています。
ディアンヌはキングと結ばれて嫉妬の必要がなくなり。
ゴウセルは心を得て他人の愛の感情(色欲)の観察が不要になり。
バンはエレイン復活で満たされて強欲に奪い取る必要がなくなった。
その流れで穿って考えるなら、キングの「怠惰」は「王なのに大切なものを護れなかった」 罪だったので、真の王の力を得れば怠惰であり続ける必要はなくなる。だから怠惰の象徴であるクッションの常備がなくなった…なんて こじつけることもできるかもしれません。
ところで、キングたちがキャメロットに着くまでにどれほどの時間がかかるのでしょうか。
第285話扉絵から各チームの位置を大雑把に現代のイギリスの地図に当てはめてみます。
大体こんな感じ?
キャメロットをウィンチェスターに当てているのは、トマス・マロリーの『アーサー王の死』にキャメロットとはウィンチェスターのことだと書いてあって、恐らくこの漫画ではそれを元ネタにキャメロットの位置を決めてあるんだろうと思うからです。
(キャメロットが どこにあったか、そもそも実在したかには諸説あります。)
ともあれ、こうやって大雑把ながら当てはめてみるに、キングたちがいると思われる辺りからキャメロットまで、直線距離にして400kmは離れていることが判ります。
例えばキング一行が普通自動車並み…時速100kmで飛んだとして、到着までに4時間かかってしまいますね。
ではジャンボジェット機並みの速度(時速600~1000km)で飛んだならどうでしょうか。それだと40~24分ほどで行けますが、風圧や負荷が物凄そうです。目が潰れそう。虫や鳥に当たったら大怪我する。
とゆーか、ゴウセル乗せたスカイマンタ型ホークや土石津波で移動してるディアンヌ(彼女が通った後の地上は大惨事になってそう)が遅れずに付いてこれてますので、時速600kmなんて出せてるのでしょうか。ディアンヌはまだしも、ホークがそんな速度で飛べるか? …先頭を飛んでるキングが魔力でフィールドを張って風圧を抑えつつ皆を牽引しているとかだったらアリかしら…?
そして、キングの投げた大槍は一行より ずっと早くキャメロットに到着しています。エスカノールの危機を感知して<原初>を狙って投げたなら、投げて殆どタイムラグなく届いたように見えます。
うーん…。
仮に時速600kmで飛んで10分経過してたとして、100km進んでいたことになります。
残り300kmを、大槍が大陸間弾道ミサイル並みの速度(マッハ20~23)で飛んだとするならば、44~50秒くらいで届きますから、なんとか間に合う、のか?
ちなみに、キングたちのいた場所からエレインたちのいた場所までは100kmくらいあると思われます。そしてエレインたちのいた場所からキャメロットまでは やはり400kmくらいあるでしょう。地上を行くならもっと遠回りかもしれません。
よって、いくらバンが煉獄で超進化してるとしても、徒歩で人間サイズなので、流石に500kmの距離を「キングたちの到着から殆ど間を置かず踏破」したら、移動が速過ぎでご都合過ぎるかもしんない。
…リオネス一の魔導士たるビビアンが再登場して転移魔法を使ってくれたら一瞬なんだけどなあ。(彼女は死んでないと私は思う。)
にしても400~500kmを大急ぎで自力移動したうえで超難敵と戦闘したら、ヘトヘトになりそうですね。
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二度と「遅すぎた男」と言わせないために
キングは「遅すぎた男」と呼ばれてきました(第72話)。
ヘルブラム
「いつものことだよ いつも チミは遅れてやってきた」「いーや 遅すぎた」「二十年前の妖精王の森 大消失の時も」「七百年前の あの時も」「そして今回も」
キング自身、それを深く、幾度も悔いてきたものです。
「どうして… オイラは いつも…… いつも…」「大切なものを… 守ることが… できないんだ」(第72話)
「オイラは なんで いつも いつも…」「今度こそ… 間に合ってくれ!!」(第212話)
この苦しい積み重ねがあってからの、今回の
マーリン
「キングたちが早々に合流してくれることを願うしかあるまい…」<原初の魔神>
「誰も間に合わない」
であり、不可能な状況下で起死回生に間に合わせての
キング
「もう誰も……失わせやしない!!」
です。
キング、よかったねえ。きっとヘルブラムも喜んでいるでしょう。
護るためには力がいる。「みんな護りたい」キングは誰よりも強くあらねばならなかったのでしょう。
キングの物語はマエルを倒したところで終了で、あとは その他大勢に入って めぼしい活躍はないかもと覚悟してたので、これまでの葛藤を拾って しっかり昇華してくれた流れが、スッとして、思いがけずに嬉しかったです。