【感想】『七つの大罪』第276話 悲しき一撃
週刊少年マガジン 2018年 35号[2018年8月1日発売] [雑誌]
第276話 悲しき一撃
- デリエリはエリザベスを そっと抱き起した。
「エリザベス…………」「しっかりしろ…」 - エリザベスは 茫洋と目を開ける。
「どうすればいいのか… わからない」「エスタロッサが… …マエルだったなんて………」
涙が流れ落ちた。
「取り込んだ戒禁が彼の… 絶望と喪失感を増幅し 消し去ることのできない怒りへと変換している」「どうすれば彼を… 彼の心を救うことができるのかしら…」 - 無言で俯くデリエリ。
エリザベスはハッとして口をつぐみ、彼女の支えから身を起こす。
「ごめんなさいデリエリ… あなたの前で」「あなたの大切な人を奪ったマエルを救いたいだなんて…」 - 「いや」
返った声はきっぱりしていた。
「救おうぜ あいつを」「お前が かつて私らを救ってくれたように」 - エリザベスは唖然と目を丸くした。
- 一方。
天空にあるマエルの前に、サリエルとタルミエルが並んで浮かんでいる。 - 「マ…マエル… また あなたに会えて嬉しいわ~~~~~」とタルミエル。
「「元気そうだね」と素直に喜べないのが悲しいよ…」
サリエルの声は硬い。
「どうりで光の魔力が効かないわけだ……」「なぜ その時点でキミだと気付けなかったのか…」 - フッとマエルは微笑んだ。
「やあ サリエル タルミエル…」「その前に聞いても?」
「なぜ 私の前に立ち塞がる?」 - マエルの前に並ぶサリエルとタルミエル。それより離れた背後に
神器 を展開したキング。更にその後方にゴウセルの姿がある。 - 「それはキミが――」
「私から全てを奪った大罪人を なぜ庇う?」
サリエルに皆まで言わせず、マエルは言葉を重ねた。 - キングは左手で術を維持しながらも、袖口まで真っ赤に染まった右腕は だらりと重たげに垂らしている。
- 浅く息を吐きながら彼が背に庇うゴウセルは、痛みをこらえるような顔でマエルを見上げていた。
人形ゆえに、彼に痛覚はないはずだ。それでも痛むのだろうか、心が。マエルが そうあってくれと願ったように。 - 「不浄の魔神族を根絶させることが」「<四大天使>の使命では?」
マエルもまた、光と闇の瞳でゴウセルを見下ろしている。 - タルミエルが訴えた。
「あなたの気持ちは わかります~~~ でも 冷静になって」「失った時間は ゆっくり取り戻せばいいじゃな~~い?」 - マエルの闇に染まった左目が怒りに燃えた。
「私の気持ちが わかる? 取り戻せば いい?」
顔を歪めて ギリ… と歯噛みする。
「わかるはずがない… できるはずがない…」
そんな軽い同情で済まされることではないのだ。 - サリエルとタルミエルが口々に叫ぶ。
「今のキミは正気じゃない!! 取り込んだ戒禁を今すぐ手放せ!!」
「戒禁を宿す限り 決して「太陽」の恩寵は戻らないのよ~~~~~!?」 - 「……残念でなりません」
静かに憤怒しながら、マエルは告げた。
「戒禁は 恩寵を失った私に 唯一残された希望」「この希望すらも奪うつもりならば 代わりに与えましょう」「絶望を」 - 説得が成らなかったことを悟って、それでも どうにかならないかと見つめるタルミエル。無念げに目を伏せるサリエル。
- マエルは両の腕と翼を広げ、右の白翼からは光が、左の黒翼からは闇が発して、頭上に光闇まだらの力球が膨れ上がった。
- 「マエルを救う…………?」
空中で再び始まった戦いをよそに、演舞場ではエリザベスがデリエリに問いかけている。 - デリエリは魔神の中でも特に好戦的だ。そして、マエルは彼女の最愛の人を殺した仇敵である。なのに救うと言い出すとは不思議でしかない。
- 「たしかに マエルはモンスピートを殺した………」「でも それは相手が たまたまあいつだっただけの話」
デリエリは言った。
戦争という殺し合いを続けていたのだ。たまたまマエルが敗北の相手だっただけで、いずれは他の誰かに殺されていたかもしれない。 - 「本当なら
三千年前 私とモンスピートは死んでいた…」
恨みを晴らし、魔神族に勝利をもたらすために、自身の理性と心臓を捨ててインデュラと化した。
「それを お前とメリオダスが救ってくれたんだ」
エリザベスはそれを否定して、メリオダスと共にインデュラ化を強制解除したのだ。 - 「…私らは<十戒>として命令されるがまま 疑いを抱くこともなく女神族や他種族と戦い 殺してきた…」「……それが当然なんだと信じてな」
「お前たちに命を救われた後も 戦いをやめようとはしなかった」
◆インデュラ化から女神エリザベスに「救われた」と度々言うくせに、3000年ぶりに再会した際は いきなり王女エリザベスを殴り殺そうとしたデリエリちゃん。インデュラ化事件の後、再びエリザベスを憎んでしまうような余程のコトがあったんだろうなと思ってたら。別に何にもなかったんかい!
……メタ的に考えれば、デリエリが王女エリザベスを殴り殺そうとしたエピソードの頃は、まだ作者さんが「救います!」のエピソードを考えてなかったってことなんでしょうけどね。 - エリザベスは憂いに瞳を翳らせた。
- 「女神族に煙たがられながら お前の下に走ったメリオダスをバカだと嘲った……………」
希少な天空魚が彼方の雲間を泳ぐのを見ながら、デリエリは静かに呟く。
「バカは私だ」「……なんで もっと早くに気付けなかったのかな」
戦うよりも大切なことがあったのに。
◆劇場版『天空の囚われ人』の天空魚が何気に登場しているサービス。 - 「「モンスピートが私を どう思っていたかは わからない」」「「大切なのは 私がモンスピートを どう思うかだ」」「そう お前に言われて考えたんだ」
- ピクリと反応するエリザベス。
- 「あいつは ずっと私の大切な相棒で片割れだった…」「私は ただ あいつに生きていてほしかった」
それこそが、戦いよりも大切な願いだったのだ。
物憂げにデリエリは空を見上げた。
「もし時間が巻き戻せたら――なんて思っても仕方がねえ」「けど 何もせずに無視を決め込むことは できねえ…」
天空では激しい戦いが続いている。
◆キャラの殆どが死ぬ悲惨なラストに なんかの大魔法で時間が巻き戻って全てなかったことになるオチになったら笑う。 - 「こんな無意味な
聖戦 は終わらせなきゃなんねえ」
デリエリは表情を引き締めた。
「まずはマエルを止めてやることが その一歩だろ」
◆デリエリにとって、戦争は「ケンカ」なんですね。 - 「デリエリ………」
気遣わしげにエリザベスが呼びかける。
「でも… どうやって? 私の力では戒禁を取り除くことはできないわ」
本調子ではないのだろう、よろめいて傍らのホークに両手を置いた。 - 「考えがある… お前は そこで休んでろ……」
闇を翼の形にして背に出すと、エリザベスに微笑みかけ、デリエリは飛び立ったのである。
◆飛び立ったデリエリに「わっ」と驚いてるホークとエリザベスが可愛かった。
- 一対複数にも拘らず、天空の戦いはマエル優位だ。
マエルの発した光と闇の混沌球に、サリエルが竜巻、キングが刃の群れ をぶつけて抑える。一方でタルミエルはマエルが投げつけた無数の闇の旋盤に複数の光線技で対抗している。 - マエルの攻撃がキングに集中した。今の彼は、いわばゴウセルを護る壁である。左腕一本に力を込めて耐え続けていたが、ついに弾き飛ばされる。
それでも十数m 宙を滑っただけで ビタッ と急停止した。体勢を立て直し、散らばりかけた刃たち も霧散させずに留めている。 - だが、限界が近いのは傍目にも明らかだった。
ゼエッ ゼエッ と荒い息を吐く彼の顔色はひどく、真っ赤に染まった右腕からは血がドクドクと流れて滴り落ち続けている。マエルの救済の矢で貫かれた傷は塞がらないのか、かつてないほどに血が失われていた。
◆キングが明らかに出血多量(汗)。
マエルの救済の矢は、魔神族以外が受けると傷が塞がらずに苦しんで死ぬのか? それとも、たまたま上腕の動脈を貫通したのか?
戦う前に止血して! 腕縛って! 死ぬよ! とハラハラしましたが、心配そうに見てるゴウセルすら その辺を思いつく様子がない。もしかして、人間以外の種族は頑丈&治癒術があるせいで、人間的な医術知識がないのかな。
そう言えばキングは、かつてディアンヌが熱を出した時、薬草は知っていても煎じ薬は知りませんでしたね。メリオダスも、第一部でギルサンダーに斬られた後、何故か頑なに治療を拒否して(自身の耐久力への過信?)、挙句 出血多量で昏倒して死にかけてましたっけ。
妖精族や魔神族には、血を流し過ぎると死ぬ、という知識がない…? - それを地上から見上げ、ゴウセルは焦燥に駆られている。
(ナージャ… 俺は どうしたらいい…?)(仲間が これ以上傷つくのを見ていられない… でも マエルをこれ以上傷つけることも俺にはできない…!!)
母のようでもあった恋人に問う彼の右手首先は、皮一枚で繋がっていたものが、いつの間にか落ちて失われていた。 - 「ゴウセル」
そこで、彼に呼びかけながら歩み寄る人影。 - 「デリ…エリ…?」
- 「今すぐ私の考えを読み取ってマエル以外の全員に伝達しろ!!」「早く!!」
- “
詮索の光 ” - 闇の光矢で彼女の思考に触れたゴウセルは
(これは)
と残った左目を見開く。すぐに光矢を放って、天空で戦う三人の仲間の頭を順次貫いた。
“光矢伝達 ” - サリエルが、
「!!」キングが、
タルミエルが、脳内を駆け抜けた情報に刹那、動揺する。 - 「隙あり!!!」
機を逃さずキングの脇をすり抜けたマエルが、右手に光、左手に闇の長刃を伸ばしてゴウセルめがけ急降下した。 - 「そうは させ…ない!!」
キングが垂らしていた右腕を掲げて バッ と押し出す。
利き腕で行使した術の方が強いのか、今まで以上の刃の嵐がマエルを阻み竦ませた。 - 「チ…」と舌打ちしてキングを見やるマエル。
「苛立たしい小バエです」 - 【まずは妖精王が手数でマエルを攪乱 意識がそれた瞬間】
この一手が、光矢伝達 で伝達されたデリエリの作戦の嚆矢 でもあった。 - 「!!!」
直後、右手と二白翼を海水の渦に、左手と二黒翼を竜巻に、マエルは強力に捕らわれていた。
【奴の両側をサリエルとタルミエルが全力で抑えろ】 - 「正直<十戒>の作戦に乗るなんて癪だけど」
竜巻はサリエル、
「なんだってやるわ~~」「マエルを助けるためなら~~~」
水渦はタルミエルによるものだ。二人とも全力で術を行使・固定している。 - 【そこに私と】
拘束されたマエルに、闇の腕でデリエリが殴りかかった。
「「連撃星 」!!!」 - 【ゴウセルが仕掛ける】
ゴウセルが地上から放った光矢 が、抵抗できず殴られるマエルの頭蓋を貫く。 - 【私はマエルが瀕死になるまで攻撃を叩き込む】【ゴウセルは その隙に戒禁の回収法を頭から読み取れ!!】【奴の言動から おそらく回収には本人の同意がない限り 戦闘不能にする必要がある】
- 『ちょっと待て…』『戒禁を回収?』『おい ゼル… そんなことが可能なのか?』
探り読む記憶の中に目当てのものを見つけて、ゴウセルは顔色を変えた。
「!!」 - その間も、拘束されたマエルはデリエリに滅多殴りされ続けている。
ドゴッ ドゴゴゴゴゴゴッ
「おぐっ」「がっ」
ゴバンッ
「ごはぁっ」 - 鼻口から溢れて飛び散る血、歪んだ苦悶の顔。
その痛々しさは、拘束している天使たちの心をも重く殴り続けた。 - 「く… まだか…!?」
「もう少し耐えて~ マエル…」「あなたを救うためなの~~」
焦燥するサリエルとタルミエル。この状態が長引けば、マエルは救われる前に殴殺されてしまうのかもしれない。 - 『ヲズン…』『メイヘン・カ』
「!」
ゴウセルは戒禁回収の呪文を探り当て、読み始める。 - その間もデリエリの殴打は続いた。
- 血をまき散らすマエルが、
女神の紋様 の浮かんだ右目でタルミエルを見る。
「タルミ…エル」 - ゴパッ
- 「なん…」「で…」
- ドッ
- (まだか)
黙々と殴り続けるデリエリ。
瀕死になるまで殴るとは言ったが、どこまでが「瀕死」か見極める法はない。死なないことを祈って、ゴウセルが情報を読み取るまで殴るしかない。 - ゴシュ
- 一打ごとに威力を増す殴打で、マエルの顔は腫れ上がり、もはや血だるまだった。そこらの者なら、とうに ぐちゃぐちゃに潰れているだろう。
「私ばかり………」「こんな…っ 仕打ち…を」 - 言葉なく見つめるタルミエルの目に、涙がにじんでいく。
- 「助け…て」
消えそうなマエルの呟き。 - 『イシュマ ノ・ジメウ』
「呪文がわかっ…」
ゴウセルが叫んだ、その時。 - マエルの右半身を拘束していた水渦が掻き消えた。
- 凍り付いたデリエリの目前で、己の血に濡れた男が静かに嗤う。
腫れ上がった肉に埋もれて闇の左目は塞がり、かろうじて開いている右目には女神の紋様 が輝いていた。 - 「ありがとう我が同胞…」
苦しげに目を伏せたタルミエルに礼を言うや、 - “救済の矢”
自由になった右手から光の矢を放つ。それはデリエリの胸を貫き、直径20cmほどもある大穴を空けていた。
最後の心臓のあった、その場所に。 - 「受け取るがいい…」「<死の天使>からの慈悲を」
女神の紋様 の輝く瞳で告げるマエル。
闇の目と翼が隠されている今、それは紛れなく<四大天使>からの告死に見えた。 - 次回「愛から自由になる
術 はない」
デリエリが死亡しました。
可哀想に、とだけ述べるのが「正しい感想」なのだと思います。ごめんなさい。
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デリエリの「結論」は
「マエルを救い、聖戦を止める」と宣べたデリエリ。
その理由は
「戦えば愛する人と死に別れると知ったから」
でした。
模範的な回答だと思います。
ただ、個人的には もう一歩先へ行って欲しかったので、物足りなさはありました。
愛する人を殺されて苦しかった。
そこで止まらず、もう一歩先へ。
――では、自分が今まで殺してきた他種族たちも苦しんだのではないか。愛する人を殺されて泣いたひとがいたのではないか。
できれば、その境地まで達して欲しかったです。
そう思うのは、デリエリにデンゼルを殺されて怒りを捨てられないデスピアスらのエピソードがあったから。デリエリに無視され、エリザベスにも軽視された彼らが、あまりにも悲しかったからです。
デリエリが死んで、「彼女は正義のために戦って死んだのだ、恨むのは間違っている」とデスピアスらが説教されたり自己反省して終わるのは座りが悪い。無視されて捨て置かれるのも悲しい。
できればデリエリは ここで死なず、デスピアスと向き合って話をしてほしかったなあ。感情を共有して、彼らの怒りを正当に溶かしてほしかった。
綺麗な空に浮かぶエリザベス様への告解もいいけど、泥に のたうつデスピアスたちとの腹を割った対話こそ見たかったかもです。
もう一つ。
今回のデリエリの述懐で大いに引っかかった点がありました。
「…私らは<十戒>として命令されるがまま 疑いを抱くこともなく女神族や他種族と戦い殺してきた…」「……それが当然なんだと信じてな」
今まで<十戒>として戦ってきたのは「命令され」てのことだったと言っています。
ものすごくビックリしました。
話が違うぞ!? だって第260話では「姉や仲間を殺された憎しみから戦ってきた」と言ってたじゃん。
「…生まれた頃から女神族とそれに
与 する他種族を忌むべき敵と そう認識してきた」「当然 否定する気はねえ …実際 大勢の仲間たちが女神族率いる<光の聖痕 >にブッ殺されてきたんだ… …………姉貴もな」
この第260話の発言から、デリエリは「愛する者を殺された怒りと憎しみ」で戦っていたのだと理解していました。
また、魔神族の精鋭中の精鋭<十戒>の一人で、一兵卒ではないのですから、当然、自分が魔神族の命運を背負っているという誇りや責任感もあるものだと思っていました。やってるのはケンカじゃなくて戦争ですからね。
…そう思っていたので、ここにきて
「命令されるがまま~戦い殺してきた」
なんてことを言ったのには、非常に驚かされました。
作者さんが 何の意図でそう言わせたのかは判りませんが、まるで
「命令されてやっていただけで、デリエリは悪くない」
という責任転嫁のようにも解釈できてしまうからです。
(責任転嫁じゃないなら、自分で ものを考えることすらしない おバカちゃんだったという意味になりますが…。まあ実際、今回デリエリ自ら「バカは私だ」と言ってましたね。)
常闇の棺の封印から目覚めた後、人間の魂を当面の食料にしようと提案したのはデリエリでした。誰に命令されたわけでもありません。ブリタニア侵攻を開始すると、モンスピートと共に少なくとも八つの町村の魂を喰いつくして滅ぼしています。
第189話、復活したメリオダスと戦った際、デリエリは己の「
技の威力を上げる、ただそれだけのために51体もの同胞を殺す。
そんなことが まかり通ったのは、モンスピートとデリエリが魔神軍の特権ある「将」であり、「戦争に勝つため」という大義名分があったればこそではなかったのでしょうか。
デリエリは命令されて従っていただけではない。将軍としての権利も、戦争のためという大義名分も享受し行使してきた。そう見えます。
その分 発生する責任を「命令されるがまま」やっただけだと言って かき消す? のは、ちょっと卑怯かなあと思ったりもします。
まあ、全ては「死んだことで帳消し」になってしまったのだけど。
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デリエリの作戦に「愛」はあるか?
マエルを救い聖戦を止めると宣べたデリエリは、自ら作戦を発令し有無を言わさず全員に協力させました。
その作戦とは、拘束させたマエルをデリエリが殴り続けて、その間に戒禁を取り出す方法を探る、というもの。
…んんん。この作戦は…(;^ω^)。
仲間に取り押さえさせて瀕死になるまで殴る、って。
最も苦痛を与える方法を選んじゃってるなあ~。
デリエリはマエルを救うとは言いましたが、許すとは言っていない。モンスピートを殺した彼に最大限の苦しみを与えたかったのでしょうか。
それとも、魔神族の価値観が特殊で、こんなにも苦痛を与える方法を選ぶことに躊躇や疑問を感じなかった、悪意はありませんでした、というコトなのでしょうか。
なんにせよ、マエルへの恨みは捨てたのだとしても、愛はなかったんだな、と思わせられる作戦でした。
他に方法がなかった…とは思わないけどなあ。
要は、戒禁を取り出す呪文が判ればいいんでしょ? そして戒禁を取り出すためにマエルを戦闘不能にしたいと。
例えば、デリエリ自ら「戒禁を渡す」と申し出てはどうか。
マエルは その場で戒禁を取り出す呪文を唱えますから、それで呪文と方法は判る。
で、デリエリの戒禁が取り出された瞬間にサリエルとタルミエルが左右からマエルを取り押さえればいい。デリエリは戒禁を持って退避。
それからゴウセルの「
……と、埒もなく考えてしまいましたが、メタ的には「失敗すべき」で「退場前のデリエリに花を持たせるための」作戦なので、彼女のスキルが「殴る」以外にない以上、これしかないのか。
ただもう、マエルが痛々し過ぎて可哀想だったのと、これじゃ失敗するべくしてする作戦だよデリエリちゃん、と まんまと(作者さんの思惑通り?)思わされちゃっただけで。(^^;)
ふと思いましたが、デリエリとモンスピートの死に方って似てますね。
マエル(エスタロッサ)を拘束して瀕死に追いつめる→仲間のマズい行動で形勢逆転してしまう→マエル(エスタロッサ)に最後の心臓を貫かれて死ぬ
デリエリの作戦が残酷で、手を離してしまったタルミエルを責める気持ちにはなれませんでした。
キングがゴウセルを庇って戦い始めてしまったのと同じ。理屈上は すべきでないと解っていても、仲間が痛めつけ続けられるのを黙って見ていることが出来なかった、という点で。
サリエルが最後まで手を離さなかったのは本当に凄いことで立派です。鋼の意思だし仲間思いなのだとも思います。
一方で「大岡裁き」を思い出していました。一人の子供に二人の母親、両方から引っ張らせて勝った方が本当の母。子供が痛い痛いと泣いたとき、耐えられずに手を離した母と、最初に提示されたルール通り離さなかった母。どっちが本当の愛情か? という。
マエルのために離さないべきだった、というのが物語上の正解ですが。
仲間に捕らえられてボロボロに殴られて強制的に力を抜かれたとして、無力化はするだろうけど、彼は救われたのだろうか。
色々考えちゃいますね。
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「強さ」にすがる
戒禁を手放せと説得したサリエルたちに、マエルは言いました。
「戒禁は 恩寵を失った私に唯一残された希望」
過去回想を見るに、マエルはずっと強さを求めていました。
強くなることで兄を喜ばせたがっていたし、エリザベスへの想いを成就させるために強くなろうともしていた。
彼にとって「強いこと」は己の存在意義で、裏を返せば、強くなければ愛されないのではないか、という恐れを持っているのだと思いました。
だからこそ、かつては不浄の力と忌んだ戒禁にすら、今は縋っている。
恩寵がなく、戒禁さえ失ったら、自分は弱くなって、誰にも愛されない顧みられない存在になると、彼の中の小さなマエルが怯えて訴えているように感じます。
となれば、正論で説教したり暴力でゴリ押しするよりも、彼が愛されたいと思うひと…兄リュドシエルや愛しのエリザベスに「弱くても変わらず愛している」と実感させて心を解くことが有効ではないかと思うけど…。
残念ながらリュドシエルはここにいません。(キングだって復活したエレインの元に辿り着くまで一日半かかったので、リュドシエルがパッと この場に現れるのは難しいのではなかろーか。)
エリザベスには失恋しているので(彼女は超強いメリオダスを選んだ)、彼女に優しくされるのは傷口に塩を擦り込むようなものかもしれない。
となると、ゴウセルの精神侵入でリュドシエルの夢を見させる方法もあるかもですが、これは「偽の記憶で騙している」ことになるので、これまでの経緯を思えば、後々、かえって厄介なことになるかもしれません。
…今回、エリザベスが「どうすればいいのかわからない」「私の力では戒禁を取り除くことはできない」とヨボヨボしていて、意外に感じました。
だって今まで、あれだけ「救います!」ピカー「エリザベス様は凄い!」ってのを繰り返してきたのに。
エリザベスが活躍し過ぎると他キャラが活躍できないからでしょうか。
全てのキャラが頑張ってもマエルを止められませんでしたとなった時、最後の最後に、満を持して「救います!」ピカーとやったりするのでしょうか。
なんにしても、マエルが哀れ過ぎるので、彼の心が救われる結末になってほしいなと思っています。