『七つの大罪』ぼちぼち感想

漫画『七つの大罪』(著:鈴木央)の感想と考察。だいたい的外れ。ネタバレ基本。

【感想】『七つの大罪』第282話 ゴウセルvs.マエル

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週刊少年マガジン 2018年 42号[2018年9月19日発売] [雑誌]

第282話 ゴウセルvs.マエル

  • 仰向けに石のように落ちていくマエルを、一定の距離を保ってキングは追っていた。
    辛うじて人型に見えるマエルの頭部にはゴウセルが取り付いている。苦しむマエルに上から彼が飛びついた途端、意識と浮遊魔力を失って落下を始めたのだ。
  • 「ゴ… ゴウセルは何をする気!?」
    キングが後方に同速度で引き連れた花粒園パレンガーデンの中から、血相を変えてディアンヌが尋ねた。
    内部には重力操作も働いているらしい。少女たちは転んだり押し上げられたりすることもなく、大地から垂直方向を床にして安定している。
  • 「……!」
    キングは何かを察し、答えた。
    「マエルを救う気だ!!」
    ◆この時、キングはゴウセルの心(場合によっては、精神世界での二人の会話?)を読んだのでしょうか。それとも、ただ状況から察しただけでしょうか。
  • 「あいつ… 本気マジか!!」
    やはり追ってきたスカイマンタ型ホークは、冷や汗をかきながらもニヤける口元を抑えられない。
    この局面で尚、救うことを諦めないとは。大した奴じゃないか。
  • 「お願い… ゴウセル様」
    彼に託すしかない。不安な面持ちでエリザベスは願う。
  • ディアンヌが叫んだ。
    「けど… このままじゃ二人共 地上に激突しちゃうよ!!?」
    既に雲を抜け、山脈そびえる大地が露わになっている。
  • 「今下手に二人を止めれば術を解いてしまいかねない」
    キングは冷静に答えた。
    「何より マエルの身体はもう崩壊寸前だ…」
    頭部に当てられたゴウセルの両腕が手首までめり込んでいるように見える。もはや緩い泥のような状態なのかもしれない。
    ゴウセルに託そう…!!」

  • ゴウセル両目を見開いた。
    柔らかな風が頬を撫で、髪をなびかせる。
    広々とした美しい草原だ。蒼穹は高く広く開け、白い雲が草原を掠めるように低く流れていく。
  • その端にマエルが座っていた。戒禁に蝕まれた状態ではない、純白の四枚翼の、本来の姿だ。
  • 彼は無言で前を見つめている。草原は途切れて、その先は大地のない雲海になっていた。草原の左右からぐるりと細い岬が続き、奥で環状に繋がっている。その向こうの空には雲と、小規模の浮き島が幾つも見える。
    恐らく、ここは女神族の天空宮の一つなのだろう。
  • 「キレイな場所ところだね」
    歩み寄ってゴウセルは話しかけた。右目も右手も損なわれておらず、血で汚れてもいない姿だ。
  • 「……」
    侵入したゴウセルを拒絶する気はないらしい。顔を向けないままではあったが、マエルは口を開いた。
    「…ここは私が よく 独りになりたい時に訪れた丘です」「…エリザベスは そんな私を見つけては優しく慰めてくれた…」
  • 2mほど開けて並んでゴウセルは耳を傾ける。
  • 「最期は この風景を心に焼きつけて… 静かに消えたい」
  • 正義も信仰も誇りも失ったマエルに たった一つ残った拠り所が、戒禁で得る「強さ」だった。その力で周囲を破壊し尽くす、それが身の置き所をなくした彼の、破れかぶれの慟哭であり復讐だったのだろう。
    だが「強さ」ですらキングに完敗したのだ。己の存在価値を再び見失い、絶望して、もはや心も折れてしまったのかもしれない。
  • 「…エリザベスは そんなことを望みはしないよ」
    やはり景色に目を向けてゴウセルは言った。
  • 「私に生きる資格はない」「数えきれぬ命を この手にかけ… 愛する女性エリザベスをも殺そうとした」
    静かにマエルは拒絶する。
    「さあ 戻るといい この世界は じきに消え去るでしょう」
  • ゴウセルはマエルに顔を向けた。
    「……キミは救われるべきだ」
  • 「誰も望みません…」「この私の帰りを待つ者など どこにもいないのですから…」
    魔神エスタロッサになりきって最高神かみを裏切り、多くの女神族なかまを殺した。
    救おうとしてくれたタルミエルとサリエルを手にかけた。
    エリザベスを殺すところだった。
    果ては仲間だと思い込んでいた<十戒>すら殺して、穢れた力かいごんを更に取り込みさえして。
    「不浄な闇の力を己に宿し貶め…」「信仰心も仲間も捨て去った この私など…!!!」
    こんな大罪人を誰が待つというのか。自分で自分が赦せはしない。
  • 激情を噛み殺すマエルは膝で組んでいた己の手に爪を立てた。ギギ…と食い込んで血が滴る。
  • 『マエルの言うとーりだ』
    不気味な声が響き、背後からドロドロとヘドロのようなものが流れ込んできた。
  • 『出てけ… 人…形ぉ』
    また別の声。
    ヘドロはゴウセルの腰まで うずめてしまう。
  • 「マエル!!!」
    座る彼がヘドロに呑まれていくのに気づいて、ゴウセルは手を伸ばした。しかし彼は顔を膝に埋めて反応しない。
  • 『異物は… 出て行け』
    ゴウセルは振り向いてヘドロの元凶を睨み上げた。
    「お前たちは――」「四つの戒禁!!!」
  • 巨人族の子供ほどの大きさの怪物が四体、二人を取り囲んでいたのだ。
    粘土で造ったかのような不格好で顔すらない彼らには、それぞれ頭部(と思しき部分)に大きく戒禁の紋様がある。
    彼らの手の先が溶け崩れ、ヘドロのように二人を捕えていたのだった。
    ◆真実の戒禁の怪物、なんか卑猥(笑)。
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  • 『出ていかねば お前を喰う~』『喰うど~』
    慈愛の紋様を持つ怪物が大仰に騒ぐ。まるで子供だましの脅し文句だ。
  • 「お前たちは器を通さなければ力を行使できない」「俺の邪魔をしても無駄だ」
    きっぱりと言って、ゴウセルはマエルに訴える。
    「マエル!! ここから戒禁を追い出せるのは お前自身の意思」「今なら間に合う …生きたいと強く思うんだ!!」
  • 俯くマエルは不貞腐れたように眉根を寄せた。
    「残酷な運命を与えたあげく」「さらに生き恥を さらせと…?」
  • 「俺は お前に生きてほしい」
    戒禁の『人形~ 出てけ』という野次を無視してゴウセルは言葉を続ける。
    「そして ちゃんと謝りたいんだ」
  • 「ならば答えてください!!!」「私が選ばれた本当の理由を!!!」
    マエルが怒鳴った。
    無気力に見えるほど感情を抑えていた彼の激昂に、ゴウセルは息を呑む。
  • 「あなたは言いましたね メリオダスに匹敵する存在を魔神族側に引き入れるために このマエルを選んだと!!!」「だが あの男に匹敵する戦士なら他にもいた… エリザベス… そして帆が兄リュドシエルだ!!!」
  • 動揺した目で口を噤んだゴウセルに、マエルは初めて目を向けた。女神の紋様トリスケルは浮かばず魔神の漆黒でもない。彼 本来のいろを。
    「…にもかかわらず あなたは私を… ――なぜですか?」
    激昂は去り、悲しみと恨みが半ばした色が その目に浮かぶ。
    「………なぜ?」
  • 「……お前を選んだのは」「俺を創ったゴウセルだ」
    観念したようにゴウセルは口を開いた。
    「ここが お前の記憶ならば」「俺の顔に見覚えがあるはずだ」
    見返す瞳には深い悲哀の色が宿っていた。
  • 「何?」
    その瞬間、マエルの意識が飛んだのは過去の記憶。

  • 3000年前の戦場だ。黒煙を伴って戦火が上がっている。
  • 「発見しましたマエル様!!」
    女神族の部下が呼ぶ。隠れていた十数人ほどの魔神族を見つけ出したのだ。
  • 部下たちに囲まれて岩の上に集められた彼らは戦士ではない。民間人だった。
    「殺さないで」
    押しとどめるジェスチャーをしながら哀願する者。
    「ヤメテ」
    自分とよく似た子供を抱き寄せて訴える親。
  • 無言で、まとめて切り刻んだ。苦痛を感じる暇もなかっただろう。
  • (大丈夫)(怖くない)
    血と肉が飛び散るなか、彼らの間を ゆっくりと歩きながら剣を振り回して肉片にしていく。
    (私はキミたちを不浄の檻から解放する者)(私は祈ろう キミたちがき魂へ生まれ変わるようにと)
  • これは慈悲だ。救済なのだ。
    だから何も感じない。苦しくなどない。
    返り血に汚れたマエルの顔は、死の天使の二つ名に相応しく、人形のように硬質に動かなかった。
  • 「最期に言い残すことは?」
    それでも、最後に残った一人に問いかけたのは、固く閉じた心の内に波立つものがあったからかもしれない。
  • 血の海に座り込んで小刻みに震えていたのは、コウモリ状の小振りの黒羽を持つ女性だった。泣き腫らした目から ぼろぼろと涙をこぼしている。
    その姿かたちは あまりにも似ていた。羽や眼鏡の有無や女性であることを除けば……人形のゴウセルに。
    ゴウセル…………」「もう一度だけ会いたかった」
  • それが彼女の末期の言葉だ。剣は振り下ろされた。

  • 意識は戻り、愕然とマエルは目を見開いた。
  • 「今のは……?」「ゴウセル あなたと瓜二つの顔の――」
    「それは俺じゃない」
    頭を抱えて苦しげに項垂れた彼にゴウセルは告げる。
    「お前が殺した女性の名はグラリーザ」「俺の原型となった魔神族」
  • 頭を抱えたまま、マエルは もう一度 目を見開いて硬直した。
  • ゴウセルの恋人だよ」
  • 魔神族ゴウセルは優れた魔術士だった故に<十戒>「無欲」に選ばれ、牢に幽閉された。
    「無欲」の戒禁は欲望を抱く者から記憶や感情を奪う。しかし欲望を持たぬ者など滅多にいない。彼に接する者が片端から呪いに侵されることを防ぐために、魔神王も そうせざるを得なかったのだ。
  • 彼が自由を奪われていたのは、3000年前の聖戦終結までの500年間。その間、意識を同調シンクロさせて外界と接するための器…己の分身として造ったのが人形のゴウセルである。人形を介せば戒禁は発動しなかったから。
  • 人形ゴウセルは恋人グラリーザをモデルに開発された。
    最初は彼女の代わりとなる愛玩人形ラブドールのつもりだったのかもしれない。だが人形相手だろうと「情欲」を抱けば術士ゴウセル自身が戒禁の呪いにかかる。
    よって顔立ちはグラリーザに似せたが男性体に造り、父親として、欲のない愛を注いだのだ。
  • マエルの手が わなわなと震えた。
    胸に去来するのは、己を支配してきた怨嗟と呪詛の声。
    (なんで私ばかり こんな仕打ちを)(許されざる罪です)(なぜ私なんだ)(私の気持ちがわかる? わかるはずがない)
  • 力なく彼の手が下ろされていく。
  • その時、地鳴りと共に世界が揺れ動き始めた。
    「!!!」
    マエルの精神世界の消滅が近づいている。ハッと見回したゴウセルは己の手に目を落とす。それは像を結んだり薄れたり、乱れて消えつつあった。
    限界リミットが近い…」「マエル!! 戒禁を追い出すんだ!!」「でなければキミは――」
  • 言い終わらぬうちにゴウセルの姿は掻き消えていた。
    美しい草原に残るは、すっくと立ったマエルと、彼を囲む四体の戒禁のみ。
  • 『いなくなった』
    『ザマァミロォ』
    『邪魔者 消えた』
    戒禁たちは四方からマエルに頬を摺り寄せた。殆ど押し潰さんばかりに。
    『マエル死ぬまで俺たち一緒~~』
    『死んだら体ちょーだい? ちょーだい?』
  • 「愚かしいにも限度がある」
    マエルは小さく吐き捨てる。
    「……この私だった」
  • 『体くれたら もっと力やる』
    『好きに使わせろ』
  • 許されざる者は……」
    拳を固く握って。
  • 『マ゛エ゛ル゛~~』
    頭から半ばマエルを埋めて、甘えるように慈愛の戒禁が のしかかったとき。
  • 「…いけ」
    マエルは言った。
    「出ていけ!!!」
  • その一声で。
    ドロドロと重く絡みついていた戒禁たちは、一斉に跳ね飛ばされた。

  • 落下していくマエルとゴウセル
  • 「まだかゴウセル もう時間が――」
    追うキングが迫る地表を前に焦れた声を出したとき。
  • 「!!」「マエルの体が……」
    花粒園パレンガーデンの中でディアンヌが目を見張った。
  • 膨れ上がったマエルの身体が輝き始め、
    カッ
    「!!!」
    慈愛の光玉にも劣らぬ強烈な閃光を放ったのだ。
  • 思わず足を止め、腕をかざして目を庇うキング。
  • 「にゃっ!?」
    ディアンヌは くらんだ目をつぶり、
    「プギャーーッ 目がーーー!!!」
    まともに見たらしいホークはヒレで目を覆って悲鳴をあげている。
  • 「くそ… 失敗か!!」
    キングは歯噛みして、すがめながら どうにか目を開けた。
    そして気付いたのである。マエルが消え、ゴウセルだけが意識のないまま落下していくのを。
  • 「ゴウセーーーーーーーーーーール!!!!」
    花粒園パレンガーデンを置いてキングは飛び出した。片手を伸ばすが、数瞬の足止めが致命的な遅れとなって、届かない。
  • ゴウセルの身体が大地に激突せんとする、刹那。
    ディアンヌは恐ろしさに両手で目を覆い、ホークは絶望に涙した。
  • しかし、ゴウセルの左手首は力強く掴まれた。ギリギリで空中に支えられ、激突せずに済んだのだ。
  • キングは伸ばしていた手を止める。
    彼の手は何も掴んでいない。
  • 「やあ」
    目を開けてゴウセルは微笑みを向けた。己の手首を掴む者へと。
  • 一部始終を見守っていたエリザベスの目から涙が流れ落ちて、彼女は指先で それを拭った。
    「…………よかった」
    安堵と喜びの涙を。
  • ゴウセルの手を掴んで支えたのはマエル。
    未だ体のあちこちに傷はあり、治癒の光のもやがキラキラしく たなびいてはいたが、五体満足だ。何の欠けも歪みもない。
  • その両瞳に女神の紋様トリスケルが浮かび、四枚の翼は全て純白に輝いていた。
  • 次回「生還への渇望」

マエルが救われました。よかったです。

タルミエルやサリエルすら手にかけてしまった時から、もはや赦されるまい、せめて心だけでも救われてくれたらなあと半ば諦めていたのですが。なんと心身ともに救われようとは!

 

心を操られ、暴走して、無数の仲間を裏切り殺してきたマエル。

彼は大罪人です。でも、彼が救われたことに異論は感じませんでした。

彼が「己の罪を自覚し、重く受け止めている」と語られているように見えたからです。

 

 

ヘンドリクセンやデリエリにも、それぞれ可哀想な過去と事情がある。彼らは悪人ではないし、優しさも勇敢さもあるし、素敵な友情や恋のドラマを持っていました。

それでも「いい仲間」扱いされるのはモヤッとすることがあります。

 

ヘンドリクセンは被害者に責められても、無視したり・ドレファス救出が優先だからと後回しにしたりで、ろくに取り合いませんでした。マーガレットに「あなたが腹を立てるのは わかります(どうせ私が悪いと思ってるんでしょう)」的に絡んで赦してもらうエピソードには、彼の甘ったれな気質が よく表れていたように思います。

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デリエリは、マエルを赦せた度量の広さは見事でしたけど、姉や恋人を失った自分の悲しみは切々と語っても、自分が大切なひとを失わせた人たちへの視点は最期まで持てませんでした。<蒼天の六連星>の「復讐」を存在しないもののように無視したエピソードは残酷で悲しかったです。

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人によって感じることは様々でしょう。

私には、彼らのエピソードは「被害者としての自分」の視点に偏っていて、自分の罪には向き合っていない、または軽く受け止めているように見えていました。

(デリエリは魔神族陣営に居続けたのなら罪を感じる必要はない。しかし敵陣営に自ら足を運んで救いを求めながら、自分が彼らに何をしたかを一切考えないのは、傲慢であるように思います。)

 

 

 

マエルは、怒りや復讐心を爆発させて暴走はしたけれど、一方では言っていました。「自分の罪は許されない」と。

それゆえの怒り、復讐心、自暴自棄の暴走でもあったのだと思います。記憶が戻ったところで、もう自分に未来も居場所もない、「生きる資格はない」と絶望したんでしょう。

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「エヘエヘ遊んで~♡」とか「俺がメリオダスだ!(コスプレ)」とか怪物化して暴れるとか、散々やらかしちゃいましたしねー。しかも好きな女の子エリザベスの前で…。社会的に死んでるわ、もう。(-_-;)

 

今回、術士ゴウセルがマエルを生贄に選んだのは、恋人を殺された「復讐」だった、という視点が加えられました。

とは言え、聖戦当時に戦士だった者の ほぼ全員が、誰かの大切なひとを殺した仇だったことでしょう。

視点を裏返せば同胞を護るための戦い。魔神族に死の天使と呼ばれたマエルは、女神族や同盟種族を大勢 救ってもいるはずです。

しかしマエルは、殺したのは罪だと、重く真摯に受け止めました。

 

自分には怒る資格すらなかったと思ったからこそ「怒りや復讐心」が消え、償わねばならないと思ったからこそ、(生き恥を さらそうとも)生きろという人形ゴウセルの意を酌み、自暴自棄な死を思い直せたのだと思います。

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今回のエピソードで面白かったのは、ゴウセルは直接にはマエルを救っていない、という点でした。

彼が精神世界から追い出された後に、マエルは自分の意思で戒禁を追い出した。

彼は自分で自分を救った。

ゴウセルは そのキッカケを作り、返礼として現実世界でマエルはゴウセルを助けた。

その形が素敵でした。

 

マエルが救われたのは

「あなたは悪くないよ」と優しく慰められたからでも

「あなたを赦す」という容赦に甘えたからでもない。

生きて贖罪の道を歩くことを己に課したからではないでしょうか。

結果として、「闘級的な強さ」を捨てて「心の強さ」を得た形になっているのは、面白いなと感じています。

 

 

 

それにしても。

エスタロッサ~マエルのエピソード、実に長かったし二転三転しましたね~。

作者さんはギリギリまでマエルを救うか殺すか迷ってたんじゃないかな、と思いましたし、そもそも この形・メンバーでの着地を最初は想定してなかったんじゃないかとさえ思える変動っぷりでした。(ゴウセルの「マエルを救う」か「戦う」かの宣言ひとつ取っても、クルクル変わりっぱなし。)

キング、ゴウセルディアンヌで解決してくれたのは、半ば諦めていただけに、とても嬉しかったです。悲しかったチャンドラー戦の、胸のすく リベンジのようでもありました。

 

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戒禁の怪物

 

 

か…戒禁が喋ったァアアア!!

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物語の都合上「精神世界での敵」が必要で こうなったんでしょうけども、戒禁がそれぞれ自意識を持っている風に描かれたのは衝撃ではありました。

しかも、魔神王の力の一部のはずなのに、魔神王っぽさが全くない!

 

たまたまなのか?

まさか、戒禁とは魔神王の力の一部ではなく、元々 別の怪物なのか?

 

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3000年前のメリオダスに匹敵する戦士

 

 

マエルだけではなく、リュドシエルとエリザベスまでもが「メリオダスに匹敵する戦士」だと明かされてビックリでした。

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え…ええー。そうだったん?

3000年前のメリオダスは、恐らく闘級14万2千ですから、マエル、リュドシエル、エリザベスもそのくらいの闘級だったってことですか。(マエルは正午には もっと突出したんでしょうが。)

 

…確かに、リュドシエルは

「(マエルは)正午を迎えると この私でも歯が立たぬ強さを誇った」

と言っていて(第253話)、つまり正午以外だと同等か、むしろリュドの方が強かったって意味に取れますね。

 

リュドシエルとエリザベスがそれほどに強かったと知って戸惑うのは、過去修行編での二人が、それほど強くは見えなかったせいです。

リュドシエルは二体のインデュラを前に、まだ本気は出してなかったようですが かなり追い込まれていたように見えましたし、エリザベスは闘級5万のデリエリに一発殴られただけで気絶していました。

 

実は彼らの闘級が14万だったと思って読み返してみます。

インデュラ二体はサリエルやタルミエルを凌駕していました。彼らの闘級は8~9万と思われるので、インデュラは10万以上だったと考えられる。

それぞれ闘級10~13万程度だったなら、リュドシエルが闘級14万でも、二対一で苦戦して おかしくないですね、確かに。

 

そしてエリザベス。彼女はサリエル、タルミエルの助力を得ることで、ヨロヨロになりながらインデュラ二体を浄化した。リュドシエルと同じくらいの闘級と考えて違和感はない?

デリエリに一発殴られただけで気絶したのは、彼女はあくまで浄化・治癒系に特化していて、戦闘能力や持久力は闘級5万の相手にも劣る、ということでしょうか。

 

 

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術士ゴウセルとグラリーザのこと

 

 

人形ゴウセルが、術士ゴウセルの恋人を模して造られたことは、第217話で語られていました。

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「(術士ゴウセルは)魔神の王も一目置く魔術士だった」「その腕がたたって<十戒>の「無欲」に選ばれちまった」

「「無欲」は欲という欲を抱く者 全ての記憶や感情を奪っちまう」「だから魔神の王は 奴を牢へ幽閉せざるを得なかった」

「奴はゴウセルを自分の分身として生み出したのさ」「容姿は恋人と瓜二つ …でも決して情欲を抱かぬよう 男の体に作ったんだと」

番外編集『七つの大罪<原罪>』収録のインタビューによれば、ゴウセル外伝の初期のネームでは、術士ゴウセルは人形ゴウセルを恋人の身代わりの「愛玩人形ラブドール」としても使用していた設定だったんだそうです。二人のキスシーンもあったんだとか。

しかし人形ゴウセルを そういう意図で使用していたならば、術士ゴウセルは「色欲・情欲」を抱いていたことになり、自身の「無欲」の戒禁に掛からなければおかしいコトになる。

このように矛盾が生じることもあって(?)その設定は没になり、現行の「息子として愛した」形に変更されたらしい。少年漫画としては倒錯的ですしね。

 

 

人形のモデルとなった術士ゴウセルの恋人が、当時どうしていたのかは気になっていました。

本物が近くにいるのなら、そっくりの人形を作る必要はない。つまり亡くなっているか、別れたか、逢えなくなっているか。

 

第195話のフラウドリンの回想で、術士ゴウセルは「祖国や同胞を裏切るほどのメリオダスの狂愛」 に賛同・共感している様子でした。彼自身も狂おしいほど愛おしい恋人を失った経験があるのでは、と感じさせられたものです。

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ついでにもう一つ。

第212話、過去修行編でグロキシニアとドロールの器に宿ったキングとディアンヌが術士ゴウセルと直に遭った際、二人が「無欲」の戒禁に掛からなかったのを見たゴウセル「羨ましいよ」と手放しに褒めていました。

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「無欲」の戒禁に掛かると、記憶か感情を奪われるのだという。

そして、術士ゴウセルは感情が希薄であるように見えました。

 

以上から、てっきり、術士ゴウセルと恋人は「無欲」の戒禁に掛かって、ゴウセルは感情を、恋人は記憶を失ってしまい、二人は離れてしまったのではないか……と想像していました。

だから術士ゴウセルは戒禁を与えた魔神王を恨み、脱獄して裏切ったのではないかと。

 

でも、外れでしたね。(^^;)

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術士ゴウセルの恋人グラリーザは彼の名を呼んで恋しがっていて、しっかり彼の記憶を持っていましたし、感情も失われていませんでした。

 

 

では、「術士ゴウセルが戒禁を得て幽閉された」こと、「グラリーザがマエルに殺された」こと、「人形ゴウセルが作られた」こと、この三つの出来事の時系列はどうなっているのでしょうか?

 

条件1
術士ゴウセルが幽閉されたのは前聖戦終結の「500年前」。

条件2
グラリーザを殺したとき、マエルは「大人」。
エリザベスとメリオダスが既に交際していた頃、マエルはまだ子供だった。
以上から、マエルがグラリーザを殺したのは、術士ゴウセルが幽閉された500年より前とは思い難い。

条件3
グラリーザと術士ゴウセルが、記憶も感情も失わず、彼女が殺されるまで交際を続けていたならば、彼女そっくりの身代わり人形を使用するのは奇妙だと思える。術士ゴウセル自身を模した身代わり人形を使うのが自然である。よって、人形ゴウセルが作られたのは彼女の死後では?



以上から想像してみます。

 

想像A
術士ゴウセルは幽閉後も自分そっくりの身代わり人形を使ってグラリーザとの交際を続けていた。(直接逢うと戒禁の呪いにかかるため。)彼女がマエルに殺されてから、彼女を模した身代わり人形を使い始めた。

想像B
術士ゴウセルは幽閉されてグラリーザと逢えなくなった。(当初は、まだ身代わり人形を開発していなかったため。)彼女がマエルに殺されてから、彼女を模した身代わり人形を開発して、牢の外で活動できるようになった。

 

 

 

それはそうと。

恐らく幽閉される前の「術士ゴウセルとグラリーザ」の回想イメージ見るに、術士ゴウセルの髪が黒い(濃色)です。

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ああ、脱獄したときは白髪だったけど、戒禁を得てなかった若い頃は黒髪だったのね……って。

いやいやいや、カラーイラストで見るに術士ゴウセルって金髪じゃん。

それが若い頃は濃色の髪色だったって、どういうことなんでしょうか。染めてんのかな?

 

にしても。

グロキシニアたちが<十戒>を離脱した辺りのエピソード見るに、<十戒>って簡単に辞められる組織みたいなんですけど。

なのに術士ゴウセルは辞めさせてもらえなかったんでしょうか?

それとも、実は魔神王は強制してなくて、術士ゴウセルは自分の意思で(牢という名の研究室に)幽閉されてたんでしょうか。

 

想像C
実はマエルは500年前から大人で、術士ゴウセルはグラリーザの死で自暴自棄になり、自ら「無欲」の戒禁を受諾して牢(研究室)にこもり、彼女を模した身代わり人形で活動を始めた。

 

でも これだと、メリオダスとエリザベスは500年以上前から「秘密のお付き合い」をしていたコトに…。そんなにも長期間、メリオダスはエリザベスに愛を囁きながら戦場では女神族を虐殺していた・エリザベスもそれを容認していたというコトに…。うーん。

 

 

 

 

術士ゴウセルが「聖戦を止めるために」選んだ「生贄」が彼の恋人の仇で、彼の行いは結局、個人的な復讐だったのだと判明して。

彼が聖戦を止めると言った途端「いい人」扱いして全肯定、殆ど崇拝の域だったディアンヌを思い出し、ビミョーな気分になります(苦笑)。

それしか聖戦を止める方法がなかったのではなく、マエルとその周囲を最大限に貶め・苦しめる方法を選んだんですね。

彼を嬉々として送り出したディアンヌは、何も思わないのかな?

 

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ゴウセルが地面に激突しようとしたとき、キングは間に合わなかった…という展開でしたけども。

実際は、キングって手で触れなくても物を動かせるので(第一部の頃、手で触れずにカップや水を動かしたり持ち上げたりしていた)、追いつけなくてもゴウセルを助けられたんじゃないでしょうか?

動転してて思いつかなかったのか。それとも、マエルが間に合わなかったら そうしてたのかな。

 

 

 

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