『七つの大罪』ぼちぼち感想

漫画『七つの大罪』(著:鈴木央)の感想と考察。だいたい的外れ。ネタバレ基本。

【感想】『七つの大罪』第274話 絶望の堕天使マエル

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週刊少年マガジン 2018年 32号[2018年7月11日発売] [雑誌]

第274話 絶望の堕天使マエル

  • 全ての闇が剥がれ落ちたエスタロッサが、殻から出たヒナのように演舞場にうずくまっている。背後にはエリザベスが うつ伏せていたが、気を失っているのか、身じろぎ一つしない。
  • サリエル、タルミエル、デリエリもうずくまっていた。エスタロッサ共々、頭痛の あまりか動けないようだ。
  • 「な… なぜ魔神族のエスタロッサに女神族の翼が…?」
    ただ一人 何事もなく怪しむキングの脇を、階段状の観客席の上部から降りてきたゴウセルが、靴の踵を鳴らして ゆっくりよぎっていった。
    「魔神族のエスタロッサははなから存在しない」
  • ゴウセル!!」
    ハッとしたキングの前で、人形は立ち止まる。
  • 未だ額を押さえて「お…れ… …私は…」と混乱しているマエルを視界に収め、改めて真実を告げた。
    「あれが彼の本来の姿…」「<四大天使>マエルだ」
  • エスタロッサが顔をあげる。闇に染まっていた両瞳が明るさを取り戻し、くっきりと女神族の紋様トリスケルを浮かべていた。
  • 「ハア… ハア…」「…くっ……」
    それを見て、冷や汗に濡れた顔を憎々しげに歪めるデリエリ。
  • 「そん…な」
    頭痛が治まったか、やはり顔を上げたサリエルが、
    「マエル…なの~?」
    タルミエルが、呆然と呟いた。
  • 呆然としたのは彼らばかりではない。エスタロッサ…いや、マエル本人さえも。
    「私…は」「悪夢を見ていたのか…?」
    不安そうに周囲を見回す全裸の彼を、女神族特有のキラキラしい光のもやが覆い、女神族らしい明色の服を形作っていった。
    「…?」「私の髪が… どうして…」
    腰まであったはずの髪が首のラインで切り落とされていることに気付いて眉根を寄せた、ところで。
  • マエルは目を見開いた。過去の記憶が、改めてフラッシュバックしたのだ。

  • 3000年以上前、壮麗な城のそびえる天空宮で。
  • 気恥ずかしそうに幾分身を縮めて微笑む、女神族の少年がいた。
    少年時代のマエルである。
    服のデザインは現在の彼と同じ。しかし身体は未成熟で、二対四枚の羽も今ほど大きくはない。
  • 少年マエルを、今と変わらぬ姿のタルミエル、サリエル、そしてエリザベスが囲んでいた。少年の新しい髪型を冷かしているらしい。
  • 「あら~~~~~ まるでリュドシエルみたい」
    と誉めそやすタルミエル。
  • 「髪型だけ真似たって腰抜けが治るわけじゃあるまいし…」
    サリエルは冷ややかだ。「…あとクセっ毛だし」と付け足した。
    マエルの兄リュドシエルは、まさに天使の輪の輝く見事なストレートヘアの持ち主なのである。対してマエルは、丁寧に整えてあったが、毛先がピンピンと跳ねていた。
  • 「イジメないの~~~!」
    呆れた様子でタルミエルが咎めても、
    「イジメてない」
    サリエルは素知らぬ顔で己を曲げない。
    ◆多分、サリエルって この四人の中で最年長クラスじゃないかと思うんですが。(エリザベスより年上なのは確定してる。)この歯に衣着せぬ言動、大人げなさと取るか、「冷たく接するのは厳しく鍛えんがための優しさデス」と取るか(笑)。
    ちなみに私は、大人げないな~子供が髪型変えたのくらい褒めたれよ、と思いました(苦笑)。
    でもキツいこと言われようとマエルも特段 傷ついた様子はない。(エスタロッサがモンスピートに虫一匹殺せぬ臆病者だったと指摘された時とは大違い。)女神族組は、普段から みんな仲良しで、信頼関係があったみたいですね。

    ところで、この髪型になる前のマエルはどんな髪型だったんでしょう。髪はイキナリ伸びないから元々長かったハズ。前は、半端に長いのを縛ったり結ったりしてたのかな? それとも前髪が長かったとか、長髪だけどクセ毛でボサボサだったとか?
  • 「私は とっても似合うと思うわ」
    「・・・」
    エリザベスの微笑みに、少年マエルは無言のまま、ドキッと胸を高鳴らせた。
  • 「マエルの 少しでも兄さんに近付きたいって気持ちがわからない?」
    「全っ然わからない」
    もはやコントのようなタルミエルとサリエルの会話も どこへやら。彼女の綺麗な笑顔に、鼓動を高めて見とれるばかりだ。

  • 記憶の中の場面は変わる。
    天空宮ではない、地上の戦場。山と森があり、あちこちから煙や炎が立ち昇っている。
  • 二体の灰色魔神のむくろが積み重なった前に立って、リュドシエルが言った。
    「よくやったな 流石は私の弟だ!」
  • その後ろで、剣を持った少年マエルは、ハアッハアッと荒い息を吐いて尋ねた。
    「私も いつか… 兄さんのようになれますか?」
  • 振り向いたリュドシエルは微笑んで、力強く頷く。
    「……私が保証する」「お前は この兄をも超える男となろう」
  • 幼いマエルの顔が歓喜に輝いた。

  • 【兄さんは教えてくれた】【魔神族を殺すことは罪ではない】【不浄の檻に囚われた魂を救う正義に他ならないと…】
    【そう…】【だから 私は魔神族を数え切れぬほど殺した】
    戦場に出て、女神族の同胞たちと共に戦い続けた。
    ◆ここで、少年マエルと共に戦っている女神族の軍勢の中に、彼を切ない瞳で見つめているショートヘアの女戦士がいます。エリザベスの親友・ジェラメットですね。
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    マエルが未だ10~12歳程度の少年の外見なのに対し、ジェラメットは既に、エリザベスと同年代の16、7歳くらいに見えます。
    こんな昔からマエルが好きだったのかとか、ジェラメットの方が年上?だったのかなとか。

    ところで「ジェラメット」って名前、ジェラシー(嫉妬)がメラメラ燃えてるキャラだから…? と一瞬思いましたが、彼女は失恋を受け入れてましたね。メラメラ怒っていたのは、別のことでだった。
  • そして、大きな純白の四枚翼を広げ、美々しい戦鎧が似合う青年姿になった頃。
    【私は いつしか「最強の<四大天使>」「死の天使」と――――】【魔神族におそれられる存在となったんだ…】
  • 【兄さんにとって私は誇りであり】【私には それが嬉しかった…】
    【なのに キミは エリザベス…】
  • 場面は変わる。うらさびれた天空演舞場跡に。
  • 【私には目もくれようともせず】【あの不浄の魔神族メリオダスを選んだ】
  • ひと気のない演舞場の客席で、うっとりと頬染めたエリザベスは、魔神メリオダスと口づけを交わしていた。
  • 【私が どれほど胸をえぐられる思いだったか】
  • 鎧ではなく普段着のマエルが、演舞場の柱の陰に立っている。
    苦いものを呑み下したような、悲しく歪んだ顔をして。
    ◆可哀想。
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    この表情。
    嫉妬に狂うというよりは、飲み下した哀しみの顔に見えます。
    マエルはちゃんと自分の失恋を受け入れていたんだと思うなあ。ゴウセルの介入でオカシクなって、「エリザベスは俺のものだ~」と暴れる痛々しい横恋慕キャラになっちゃいましたが。
  • その時。記憶に異変が起こった。
    【? ……なんだ?】
    柱の陰に隠れていたマエルの頭部が、不意に、闇色の光に包まれたのだ。
    こんなことが、現実にあっただろうか?
    マエルの表情は魂が抜けたように茫洋となっている。
  • やがて光は消えたものの、その口が勝手に動いて、奇妙なことを口走った。
    『私は…… エスタ……ロッサ』
    ニヤリと口元が笑いに歪む。
  • 【何を言ってる? 私は―――――】【お前の名はマエルだ!!】
    マエルの意識は、記憶の中の「自分」と分離して叫んだ。
  • 記憶の中の自分は奇怪な言動を続けている。
    『とうとう私は あの最強の<四大天使>マエルを討った!!』
    【私が私を殺した? バカな!!!】
    『フフフ… 無様な姿だ……!!』
    記憶の自分は、何もない足元を見てニヤつき、グリグリと片足で踏みにじった。まるで、そこに誰かの亡骸なきがらでもあるかのように。
    【様子がおかしい 私には何が見えているんだ……!?】
  • 記憶の中の自分は、踏みにじるのをやめて顔を上げた。
    『この勝利を… 偉大なる我が父 魔神王に捧げる…』
    【ま… 魔神王を ち…父だと!? なんと罪深い言葉 ああ!! 最高神様 どうか御許しを!!!】
  • 次に、自分は己の長い銀髪を掬い上げ、不快げに眉を顰める。
    『この髪は なんだ?』『うっとうしいな』
  • 【? おい! やめろ!!】
    兄リュドシエルを真似ていた自慢の長髪を、自分は容赦なく切り落とす。
  • 襟足のピンピン跳ねた髪を満足げに撫でて、あろうことか、信じられない言葉を口にしたのだった。
    『これで同じだ』『メリオダス兄さんと…』
  • 【ふざけるな!! あの不浄の魔神を 兄さん… だと!?】【ありえない…!! こんな馬鹿なことが―――――】
    嘆いている間に、純白の翼が、更には服までもが、もろい光になって消えていく。
    【あ… ああ… 消えていく!!!】【最高神様より賜りし恩寵が!!】
    ついには瞳に浮かんでいた女神族の紋様トリスケルが、ス…と消えた。
    【そんな… そんな!!】
    ◆マエルは少年時代から、エリザベスの仲立ちで(当時敵だった)メリオダスと交流があったらしいので、場合によっては「メリオダスを兄のように慕っていた」なんて設定の可能性もあるのでは…と不安に思っていましたが、そんなコトなかったようで安心しました(苦笑)。
  • タイミングを計っていたかのように、不気味な声が響いた。
    『よくやった エスタロッサ… 愚息とばかり思っていたが 褒美に これを与えよう』
  • 天空に、禍々しい闇に包まれた、三本爪のような意匠の紋様が浮かんでいる。
  • 『父上… それは…!!』『まさか兄さんが残していった「慈愛」の戒禁!!』
    両腕を広げて感動に声を震わせる自分。長い髪は無く、純白の翼も恩寵も無い、何も持たぬ丸裸の。
  • 【か…戒禁だと!!?】【そんな不浄の力を取り込んだら…… 私は女神族ですらいられなく―――】
    マエルは恐怖に慄いたが、これは既に過ぎ去った記憶だ、止めることはできない。
    【やめるんだ… …やめてくれ】
    ゆっくりと降りてくる戒禁の紋様。裸の男は両腕を広げ、嬉しげに それを迎え入れる。
    【やめろーーーーーー!!!!!】
  • 胸に吸収された戒禁を、大切そうに ぐっと抱きしめた男は。
    次の瞬間、両瞳を漆黒に染めて邪悪な笑みに顔を歪めていた。
  • 左額には何故か、メリオダスや魔神王と同じ魔神の文様が浮かんでいる。
  • 『最高だ!!!』『これが俺の新しいパワーか!!』
    仰け反るようにして叫んだ「エスタロッサ」の裸体を闇が覆い、魔神の服を形作った。
  • 【うそだ】【私は……信じない】
  • 魔神エスタロッサは闇の翼をはためかせて「仲間」と合流した。
    ゼルドリス、モンスピート、デリエリ、グレイロードにフラウドリン。彼を疑う者は誰もいない。
  • 【これは悪夢だ】
  • 魔神の軍勢と共に「エスタロッサ」は出陣した。
    無数の女神族を獄炎で焼き殺した。
    その腹を手刀で貫いて うすら笑った。
    なついて腕にとまった罪なき小鳥を魔神化させて殺した。
    マエルの仇と憎んで向かってきたサリエルとタルミエルを、何度も切り刻んだ。
    エリザベスの首を掴んで絞め上げた。
  • 飛び散る血。返り血を浴びて ものともしない「エスタロッサ」。
  • 【現実なんかじゃない!!!】

  • 「あぁあああぁぁぁあぁあぁぁぁ!!!!」
    頭を抱えてマエルは絶叫していた。
  • ビクッと震えて警戒したキングの向こうで、ようやくデリエリが身を起こしている。
  • 「あ… あ…」
    両手で顔を覆い、マエルは苦しそうに よろめいていた。
    「あ… 悪夢じゃ……ない… この手に…残っている…」
    両手を降ろせば、現れた顔は絶望に染まり、滂沱の涙で濡れそぼっていた。
    「幾千もの同胞をあやめた感触が!!」「無辜むこの民を焼き尽くした感触が!!!」
    震える声で、誰にともなく呟く。
    「誰なんだ……………?」「誰がこんな真似を…!!」
  • 答えは返った。
    「全ての責任は俺にある」「だから俺を―――壊せ」
    間近に立ったゴウセルが、胸に提げた魔法の心臓を固く握りしめながら、静かな顔で告げたのである。
  • マエルの顔に血管が怒張し、女神の紋様トリスケルが戻ったはずの左目が、再び闇に塗り潰された。
  • 次回「心を一つに」

今回は減ページ(14P)でした。

 

 

どうでもいい話をひとつ。

今回の回想に出てきたリュドシエル兄さんの肩鎧。<四大天使>の紋章が大きく入っています。

…あれ? 紋章の羽の数、多くない? 七枚ある。

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<四大天使>の紋章は、サリエルやタルミエルの紋章を見る限り、本来、羽が五枚のはず。

あれあれ? 紋章がビミョーに違う。間違い探しか? 実は偽物のリュドシエルなのか…!?

 

と思って読み返したりしてみましたが、場面によって羽が五枚だったり、それより多かったりで定まらない、というのが実情でした(笑)。偽物ではなさそうです。

 

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戒禁の紋様

 

 

十の戒禁には それぞれ違う文様があり、戒禁を授かった者の体のどこかしらに、その紋様が浮かび上がる。……らしい。

 

今回、慈愛の戒禁の文様が明かされましたね。

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鉤爪っぽい、カッコよさげなカンジ。

愛だからハートマーク…ってワケにはいきませんでしたか(笑)。

 

また、額にあるメリオダスやゼルドリスと同じ渦紋様は、戒禁とは無関係だと確定しました。

 

戒禁を授かったことで、エスタロッサ(マエル)の体のどこかに、この紋様が浮かび出ていたはず。どこにだったんでしょうか?

エスタロッサは作中で何度もオールヌードを披露してたのに、見当たりませんでしたね。足の裏とか、太腿の内側とか、頭皮なのかしら。

(それを言うなら、メラスキュラの戒禁の文様もだけど。オールヌードを見ても、どこにあるのか不明でした。)

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メラスキュラ(信仰)の戒禁の文様だけ、カッコ悪くない?(^^;)

アレが顔面とかに浮かんだら、外に出たくなくなるレベルじゃよ。

 

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その気になれば、何でもできる?

 

 

マエルが恩寵を失い、戒禁を授かった くだりが、今回説明されました。

ただ、例によっての「回想」なので、それも改変された記憶でしたー☆ とか言い出されちゃうと、もーどうしようもないんスけどね…。

 

ともあれ。

今回描かれた様子だと、

 

マエルが、自分を魔神エスタロッサだと思い込む
 ↓
自動的に 羽、恩寵、瞳の女神の紋様 が消える
 ↓
魔神王が向こうから出向いてきて「マエルを倒した褒美に」戒禁を与える

 

でした。

 

 

二つ疑問を感じました。

 

一つ。どうして羽が消えたのか?

魔神族の羽は闇を変形させて疑似的に作ったもの。実際に生えておらず、よって、出し入れは自由です。

女神族が人間に憑依している場合、羽は魔力で疑似的に作ったもので、実際に生えてはいません。だから出し入れは自由です。

しかし己の肉体を持つ女神族の羽は、背中から実際に生えています。

以前のQ&Aに「Q.女神族の羽は室内で邪魔にならないんですか」「A.邪魔にならないよう室内がデザインされています」というようなものがあったと記憶しています。つまり羽がある状態で日常生活を過ごしているのだと。

 

てっきり、女神族の羽は生物学的に生えていて、出したり消したりできないのだと思っていました。妖精族や鳥や虫の羽と同じように。

ところが今回、マエルが「魔神だと思い込んだ」だけで羽が溶けるように消えてしまい、「女神族だと思い出し」たら生えてきたのです。

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これは一体どういうことなんでしょうか? 

 

…って。

まあ、例によって深い理由なんてない「物語の ご都合」なんでしょうけども。(^^;)

 

 

今回の扉絵は、人形ゴウセルが洗脳術を使うと、自分は鳥だと思い込んだ魚は飛んでゴウセルの指先にとまり 、自分は岩だと思い込んだホークは丸まって硬直し、自分は杖だと思い込んだ蛇はピンと体を伸ばしてゴウセルの手に握られている、というものでした。

作者さんは「思い込めば、何にでも変化できる」と仰りたいようです。

「魔神族だと思い込んだ」マエルは肉体すら変化させ、羽も溶け消えたんですよ、ってコトなんでしょうか。

 

でも私は、いくら「自分は鳥だ」と思い込もうと、魚は鳥と同等には空を飛べない、と思ってしまうので、イマイチ不納得かもです。(;´Д`) 

 

 

 

 

疑問の二つめ。

魔神王が「マエルを倒した褒美」としてエスタロッサに戒禁を与えたのは、おかしくありませんか?

 

術士ゴウセルが用意した設定は

「闇を持たぬ息子を哀れんで、魔神王が戒禁を与えた」

というもので、魔神王自身もそう語っていました。(第272話)

 

ところが今回の回想では

「マエルを倒した褒美」

として戒禁を与えています。

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そもそも、メリオダスと拮抗する実力を持つ 女神族最強の戦士マエルを、闇の力を持たぬエスタロッサが倒すなんて不可能だし、不自然すぎる話です。

設定と事象が噛み合っていない。無理がある。

術士ゴウセルの作った「設定」は、この時点で破綻している。と思うのですが。

 

魔神王は煉獄で15億年も考える時間があったのに、どうしてこんな あからさまな設定破綻に気付かなかったのでしょうか。

 

 

 

 

マエルの羽が溶け消える絵で「恩寵が消えていく」とも語っていて、まるで

羽=恩寵

みたいな描写だな、と思いました。

 

でもマエルは(恩寵を授かっていなかっただろう)少年時代から四枚羽でしたし、現時点、恩寵を失っているけれど羽は生えています。

つまり、恩寵と羽は関係ないんですね。

 

どうして恩寵は消えてしまったんでしょう?

マエルが「自分は魔神族だ」と思い込んだだけで勝手に離れた? そんなにもデリケートなモノなのでしょうか。

 

 

マエルが自分はエスタロッサだと思い込んで恩寵が消え去った途端に、見事なタイミングで、魔神王が現れて戒禁を与えています。

魔神王が戒禁を与えたのが「ゴウセルに操られた結果」ならば、

恩寵が勝手に消えてしまったのは最高神が「術士ゴウセルの意に沿った」から、という可能性も、ある、のかしらん?

 

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女神族の宗教・死生観

 

 

本来は虫も殺せぬほど優しかったマエルが、誰よりも多くの魔神族を殺し「死の天使」と恐れられるようになった。

彼が「腰抜け」ではなくなった理由の一つは、兄リュドシエルの教えだったと語られています。

 

↓不謹慎ですが、このコマに描かれてる「救われた」魔神族たち、みんな愛嬌あって可愛いデザインですね。

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【兄さんは教えてくれた】【魔神族を殺すことは罪ではない】【不浄の檻に囚われた魂を救う正義に他ならないと…】

異教徒の殺害を「正義」とする詭弁は、宗教の歴史においては ありがちなものですが、神に捧げる・護るというような方向でなく、「殺すことで魂を救う」という理屈なのには、現代日本人なら誰しも、オウム真理教の教義「ポア」を連想し、胸を嫌な感じにザワつかせるに違いないでしょう。

 

ええ…。ここでリュドシエルに、あの宗教を重ねてきちゃうのか…。作者さんはリュドを、悪の位置に置くのかな。

こんなこと言わせてしまったら、立場や価値観の違いでは片づけ難いし、和解できそうにもない。リュド&マエル兄弟は、メリ&エリの正義の名のもとに誅殺されるか、精神的去勢される役になりますか?

 

女神族と魔神族の戦争には正義と悪を決定づけてほしくなかったので、ここにきて「殺すことが正義」と、いかにもな悪の理屈を一方の主力に言わせたのは、どうにも残念でした。

 

 

に、しても。

「不浄の檻に囚われた魂を救う」

とは、厄介なことを言いますね。

何故なら現実世界とは違って、この漫画世界には「魂」「死後の世界」「転生」が確固として実在しているから。(;^ω^)

なので、殺せば肉体から魂が抜け出て魔神族以外の新たな命に生まれ変わる可能性が、詭弁ではなく、大いにあるという…。

困ったものです。

 

なお、魔神族の魂を「不浄」と見るのは、リュドシエル独自の思想ではありません。

3000年前の聖戦時、サリエルやタルミエルが

不浄の魂ども裁きの光に滅せよ」

と唱えて大量の魔神族を殲滅しています。(第205話)

 

魔神族を「不浄」と見るのは女神族の一般的な価値観らしく、そう思われるだけの理由があったらしいことは、ゼルドリスの

「魔神族は その存在そのものが世界の異物」だから魔神族は孤独を理解している)

という発言(第215話)や、メリオダス

「ほとんどの魔神族が たいした理由もなく女神族や他種族と争いを起こす」

という台詞(第271話)に表れているように思います。

魔神族は種族の成り立ち的に他種族に忌み嫌われる異端な面があり、他種族に対し好戦的でもあるらしい。加えて、他種族の魂を食べますし。(転生して救われることすらない、完全な死をもたらす。)

 

 

3000年前の魔神族捕虜殺害は、エリザベスが蚊帳の外に置かれていただけで、サリエルやタルミエルを含む女神族全体による共同作戦でした。リュドシエルの独断専行ではありません。(後にネロバスタは、全て「我らが長」の命令だったと言い訳していました。女神族の長とは、即ち、最高神です。)

サリエルやタルミエルも決して嫌々戦ってはおらず、女神族を不浄とみなし、殲滅する意思を持っていました。しかしリュドシエルのような「殺すことで救う」、あるいはエリザベスのような「闇の魔力を抜いて、精神的去勢…浄化して救う」思想は持っていなかったようですね。

 

 

 

 

なお、魔神族側にも、女神族を「不浄」と見る者はいます。チャンドラーやキューザックは、エリザベスを「不浄の女神」と称していました。

単純に「メリオダスを性的に たぶらかした=不浄」というだけの意味かもしれませんが。

 

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七つの大罪 番外編集<原罪>』、読みました。

予告通り、収録漫画は全部、既に単行本化されてるやつで、全部持ってる。

作者さんと担当編集さん方の座談会に作品裏話が載ってるとゆーから、それだけを目当てに買ったわけですが…。

ははは。裏話の多くも、既に本編単行本のオマケページなんかで明かされてたことだよう~~。んもーー。

 

でも一個だけ、これ知れてよかった! と思った裏話がありました。よかった。

第168話、ゼルドンの研究棟の崩壊跡に張られたデンゼルの天幕の上に、何故か人が寝ていたってやつ。

当時の感想に書きましたが、なんでここに人が寝てんの!? と気になってました。単行本収録時には消されてたんですよね。

真相は……そういうことだったのか!

スッキリしました(笑)。ありがとうございます。 

 

 

 

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