【感想】『七つの大罪』第267話 天空より
週刊少年マガジン 2018年 25号[2018年5月23日発売] [雑誌]
第267話 天空より
- 「ゲ…」「ギ…」
膝立ちで不自然に身を乗り出して、エスタロッサは右手で掴んだエリザベスの首に力を込めている。 - 「あ… くはっ」
男の手を両手で引き剥がそうとするものの、腕力では敵うはずもなく、エリザベスは少しずつ仰け反っていった。 - 「エリ…ザ……ザベベ」
エスタロッサの目に正気はない。 - 「かはっ」
(ダメ…… こんなところで)
どうにか呼吸をしようと喘いで開いた口の端から、唾液が一筋流れ落ちた。
(私は… まだ死ねないわ…)(あなたに もう一度会うまでは……) - 「オ゛」「オ゛」「オ゛」
「は…ぐっ」
苦悶するエリザベスは、喘いでいた口を ぐっと引き結んだ。エスタロッサを引き剥がそうとしていた手を離し、勢いよく突き出して手指を広げる。 - ドカカカカカカ
- その手からキラキラしい光弾を無数に発し、ガトリング砲のようにエスタロッサの横っ面に叩き込んだ。
◆メリオダスには聖櫃 びんた。エスタロッサには聖櫃 ガトリング。
- エリザベスから引き剥がされたエスタロッサは横っ飛びして、仰向けに沈黙する。
- 「ゲホッ」「ゴホッ ゴホッ」「ハアッ ハッ… ハアッ」
エリザベスは身体を折って激しく咳き込み、息を吸った。 - その間、エスタロッサは動かない。
- 「ハッ」「ハッ」
暫く様子を窺ってから、エリザベスは背の翼を消して、改めて周囲を見た。
「ハア…」「ハア…」「………………」
驚きの様子で独りごちる。
「やっぱり ここは」「天空演舞場跡だわ……」 - ここは風化著しい遺跡。女神族の天空宮の一つだったのだ。
折れた柱、半崩落して背後の蒼穹が見える石段式の観客席、女神族の乙女の姿を象った彫像。 - 誰もいない廃墟を、小鳥たちだけが鳴き交わし飛び回っている。
- 寂寥たる想いが、少女の胸を去来した。
まだ半崩落していなかった石段に、メリオダスと二人、並んで腰掛けて、夢中で 語り合ったものだ。 - (古くなって 誰も寄りつかなくなった この場所で)(私たちはいつも隠れて会っていた… それが もう三千年も前のことだなんて)
涙が伝い落ちる。
(…あなたが恋しい…) - 「思い出したよ…」
男の声が響いた。
「俺はいつも見ていたんだ」
仰向けに転がったままのエスタロッサが、静かな表情で目を開けている。 - エリザベスは涙を拭った。話を聞くために。
- その頃、荒野の掃討部隊。
- 「俺たちは このまま魔神族と戦いながら南下を続ける」
聖騎士団やホークママ、ディアンヌらの前で、ハウザーが告げている。 - その中には意識を戻したギーラもいた。自力で立ち、すっかり回復しているようだ。
- 「頼んだぜ… エスタロッサを倒して 必ずエリザベスを救い出してくれ!!」
- 「ああ… 約束するよ」
キッパリと応えたキングは、サリエル、タルミエルと共に空に浮いている。 - ディアンヌが恋人に不安げな顔を寄せた。
「でも… 本当に三人で大丈夫?」
笑って、キングは彼女の額を撫でてやる。
「心配しなくても…」
◆ディアンヌの額を なでなでするキングに萌え。
こういう辺り、精神年齢30歳×15歳な、おにロリカップルの醍醐味ですね♡ …その想定年齢差だと高校教師と新入JKの恋愛っぽくもある?(と書くとキングがヤバい人みたいですが(;^ω^)。実年齢は法令を遥かに超過してるし、そもそも人間じゃないので無問題さ!) - 「いや 四人だ」
遮るように声が響いた。 - 「……!」
軽く目を見開いて、キングは目線だけ向ける。 - 聖騎士たちが ざわめき、どよめきをあげた。
「私も助けに行かせてくれ」
声をあげたのが<十戒>「純潔」のデリエリだったからである。
「<十戒>が?」
「何を企んでいるんだ?」 - 白々とした目でサリエルが見下ろした。
「デリエリ… 君がエリザベス様を?」「冗談は よせよ… 君には なんの得 もないはずだ」
タルミエルも渋い顔である。 - 「仰る通りだ!! <
十戒 >を討つために<十戒 >を連れていく愚者 がどこに!?」
尻馬に乗って声を荒げたのはデスピアスだ。
聖騎士たちがデリエリを遠巻きにするなか、彼を始めとした<蒼天の六連星>だけが、命惜しまず彼女から数mの距離にまで近づいている。 - デスピアスの言葉に反論の声は上がらない。
「悪いね」「この場に キミを信用する者は一人もいない」
そうサリエルが結論付けたとき。 - 「いや」「オイラは信じるよ」
声をあげたのはキングだった。 - 唖然と目を見開いたサリエル。
怪訝そうに眉根を寄せるデリエリ。自分から言い出したことだが、この男は人間どもの言う「愚者 」ではあるまいか。
「「「「!!?」」」」と驚愕する<蒼天の六連星>。
ディアンヌだけが満足げに微笑みを広げる。 - 「――正確には かつてキミたちを命がけで助けたエリザベス様をね」
- 続いたキングの言葉に、デリエリは今度こそ驚愕の顔をした。
「なんで その件 を…!」誰とも知れぬ敵 の一人が、唐突に「信じる」と言い出した上に、3000年前の一件を持ち出したのだから。 - 「……」
サリエルは無言でキングを見つめた。
今まで、この男を「メリオダスの子飼いの一人」…便宜上 戦力利用した、聖戦の部外者としか見ていなかったが。
意外な隠し玉だ。誰かから3000年前の話を聞いていたのか。或いは…『刻還りの術』か。 - 「とにかく
相手 は規格外の化け物 一人でも戦力は多いに越したことはないだろ」
周囲の動揺は無視して、情動的な理建てと並べて実利的な理建てまで淡々と提示した男に、サリエルは初めて自分から話しかけた。 - 「…<七つの大罪>は変わり者ばかりの集団だと聞いてはいたけど――― 本当みたいだね?」
- フッと微笑みで返すキング。
- そうしてエリザベス救出のため、キング、デリエリ、サリエルとタルミエルの四人が天空に飛び立ったのである。
- 女神族の天空宮・天空演舞場跡。
- 「俺は いつも… 見ていたんだ」「エリザベス… お前のことを」
仰向けに倒れたエスタロッサは、静かに語り続けていた。 - ピクリとエリザベスの肩が震えた。目を見開いたまま、どこか呆然と口を開く。
「私も… 少し思い出した」「あなたのこと…」
不意に脳裏に浮かんだのは、岩に腰かけた青年の後ろ姿。そのイメージだけだ。優しい心根が判るのか、小鳥たちが集まり、彼の指や肩にとまって戯れている。
だが、ひとは彼の周囲にいなかった。いつも…。
「あなたは いつも独りぼっちで…」「寂し気な表情 を していたわ」 - 「闇を持たざる魔神王の息子 …虫一匹も殺せない弱虫」「俺は いつも陰で笑われていた…」「……そんな俺を笑わなかったのは 兄貴と お前だけだ」
◆え、ゼルドリスは笑ってたの? 性格的に身内を馬鹿にして笑ったりはしなさそうですが…。
ゼルは兄たちとは別の場所で育てられてて、この当時は あまり会わなかったとか? はたまた、真面目な性格ゆえに、弱い兄に容赦なく きつい叱咤の言葉をかけてたとか? - 「…………」
どう返していいか判断しかねて、エリザベスは黙って聞いている。 - 「いつの頃からか俺の目は お前の姿を追いかけるようになっていた」
記憶の中、青年のエスタロッサは一途にエリザベスを見つめていたが。
「…だが お前の視線の先には」
彼女が見つめる方角から現れる、剣を片手に持った小柄な人影。
「メリオダスしかいなかった」
今と変わらぬ子供の背格好のメリオダスが、優しく微笑んで、エリザベスに手を振りながら歩み寄ってくるのだ。 - この様子なら懐柔できるかもしれない。エリザベスは言った。
「エスタロッサ ……お願い…」「メリオダスが魔神王になるのを阻止するのに協力してほしいの」 - 「はっ」「…こんな時にまで兄貴の心配かよ」
エスタロッサは鼻で笑う。 - 「…兄貴なら たしかに戒禁を難なく
自分 の力 にできんだろうな」
横たわった彼の目は虚ろになりつつあり、皮膚の下に何かが根を張っていくかのように血管状の盛り上がりが蠢き始めていた。ビキビキと小さな音を立てて、胸や顔面に広がっていく。
「メリオダスは本当に強くて…尊大で…誰からも信頼されて…自信に満ちていた」 - 表情を変えずに ピク、と震えるエリザベス。
「…………」
◆このエリザベスの反応、どういう意味なのか気になりました。
エスタロッサが闇に浸食されていく様子を見てヤバいと思った? …それにしては焦る・警戒する・同情する色が全く見えないので変な感じがする。
彼の語る「メリオダス像」に、無意識の違和感を覚える部分があった? - 「何より 俺をいつも庇って見捨てずにいてくれた」「どんな悩みだって聞いてくれ――」
浸食が目元まで達した時。 - 「…………そうだっ」
不意に、エスタロッサが剥いた目に狂気を宿らせた。
「だから 俺は兄貴に打ち明けたん…だ お前への気持ちを」「そしたら兄貴は言ったんだ……!!」
「「俺が お前とエリザベスの」「仲を取りもってやる」」 - それを聞いたエリザベスは、数瞬きょとんとすると、哀れむように苦笑する。
「メリオダスは絶対に そんなことは言わない」「きっと あなたの記憶違いよ…」 - 「言っだ!! あいづ…は嘘を゛ついた」「アガ」「俺に嘘っづい゛だ!!!」
男の身体が闇に覆われ、メギッ バキバキと音を立てて荒れ狂い蠢いた。 - 「エ…… エスタロッサ」
あまりの異様さに驚くエリザベス。 - 「言っダのニオォォオオオ!!!」
膨れ上がり蠢く闇から胸から上だけを突き出した姿になったエスタロッサが、獣のように咆哮する。 - 「取り込んだ三つの戒禁が 拒絶反応を起こしてるんだわ」
力が猛風のように四方に噴出し、エリザベスは両腕を顔の前に交差させて耐えた。その時、聞こえた『声』にハッとする。 - 『助…け』『エリ…ザ…ベ…』
◆彼が助けを求めてくれてよかった。 - 「エスタロッサ!! 戒禁を今すぐ吐き出して!!」
蠢く闇の中の男にエリザベスは呼びかけた。 - 『に…い…』『さ…』
- 途切れて小さくなっていく声に焦って叫ぶ。
「意識を保つの!!!」「このままじゃ戒禁に呑み込まれるわ!!!」 - 闇が無数の触手のように伸びた。エリザベスの胴と両足首に巻きつき、掴んで高く持ち上げる。
「エ゛リリリザアベエエエス!!」
「キャアッ!!」
◆えっちな巻きつき方はしない。逆さにしてスカートめくったりもしない。闇に汚染されてもエスタロッサ君は紳士。 - 「メリオダスに盗られ…れるぐらい…なら」「アハッ」「俺に…に喰われろ」「俺のモノにな゛れ゛!!」「バハハッ」
舌を出して濁った声で吠えるエスタロッサの目の辺りは闇に塗り潰されていたが、そこから肌を垂れ落ちるような形で蠢く数筋の闇が、まるで涙のようにも見えた。 - エリザベスに巻きつく闇は見る間に増え、全身を巻き尽くしていく。
(メリオダス…)
涙を浮かべ、少女は その名を想った。
◆この場面、エリザベスはどうして涙を浮かべたのでしょうか?
「メリオダス助けて!」という恐怖でしょうか。
それともエスタロッサへの憐れみでしょうか。
女神エリザベスが数多の上位魔神の闇を祓い・調伏してきた、祓魔浄化の超エキスパートであることを踏まえると、この程度の闇に絡まれたからって、今更 小娘みたいに泣いて怖がる気は、あまりしないんですよね。
作中時間で、メリオダスと離れてから未だ半日しか経ってませんが、淋しいから気弱になっちゃったの、ということなんでしょうか。 - その頃、キャメロット王城。
城の大半がスッポリと、蠢く闇の玉に包まれてしまっている。なんとも異様な情景だ。 - 城内は、壁や天井に生物の一部のような襞や筋のある管が絡み合って貼り付いており、あたかも虫か何かの巣窟のような様相になりつつある。
- そんな中、元は謁見の間だった場所で、両腕を組んだゼルドリスが何かを見上げていた。
- 「メリオダスの様子は…?」
第二段階姿のキューザックが歩いてきて、己の主人に尋ねる。 - 「流石といったところだな…」
ゼルドリスは応えた。
「時間はかかっているが なんの拒絶反応もなく戒禁を吸収しつつある」「急ぎ 残りの戒禁を集め 与えねば…」 - 魔神二人が見上げる視線の先。
そこには巨大な繭があった。命育むものであると証明するように、ゆっくりと脈動している。
糸に包まれた内部、その闇の中では、どこか苦悶の表情でメリオダスが眠っているのだ。 - 闇の中でエリザベスは涙した。
(メリオダス)(あなたに会いたい) - 次回「煉獄より」
一挙二話掲載の1話目です。
子供のままのメリオダス
エスタロッサとエリザベスの回想にて、メリオダスは「エスタロッサが子供だった時代」から「エスタロッサが青年になった時代」まで、変わらず、今と同じ子供の姿で描かれていました。
メリオダスはずーーーっと子供のままらしい。
これはどういうことなのでしょうか?
説A
体質的に成長しない
キングと同じように、少年姿のまま変化しない・その姿で
例えば、女神族のサリエルは10~12歳くらいの少年姿ですが、あれで、(3000年前の聖戦時点で)エリザベスより年上なのだそうです。
ならばメリオダスも、少年の外見で成長が止まった「
少し脱線。
女神エリザベスはエスタロッサが少年の頃から青年になるまで、年恰好も服装も全く変わっていませんでした。彼女も16歳くらいの少女のままで外見的成長が止まっていたらしい。
場合によっては、女神エリザベスはメリオダスより ずっと年上だった可能性さえある?
説B
エスタロッサとエリザベスの記憶が間違っている
この二人の記憶には何らかの不自然さがあるように見受けられます。
実はメリオダスには(王女エリザベスが夢で見た大人メリオダスのような)青年時代があったのに、二人がそれを忘れている可能性も、ゼロではないかもしれません。
さて。
実は第224話にて、メリオダスは、自分が成長しなくなったのは、聖戦末期に、魔神王と最高神に呪いをかけられたせいだと語っていました。
『
魔神王 と最高神 が私たちにかけた呪い』『永遠の生と――』『永劫の輪廻』『あなたは二度と
齢 を取ることもなく たとえ死んでも蘇る』
そして、彼自身が「自分が齢を取らなくなったこと」に気付いたのは、女神エリザベスを失い、その転生体である蛮族エリザベスに出逢うまでの放浪期間中であったように語られています。
あと なぜかオレは少しも
齢 を取ることがなくなっていたまあ その理由は あとでわかったけどな
エリザベスは死ねば直後に転生し(近場の人間の赤ん坊の器に宿り)、必ずメリオダスと出逢うよう運命づけられていますから、この放浪期間は16年程度だったはずです。
おかしくありませんか? メリオダスが聖戦時代の何十年何百年と、弟が子供から大人になっても、自分は子供の姿のままだったのなら、たった16年程度 姿が変わらなかっただけで「齢を取らなくなった」と感じるなんて。
勝手な推測ですけども。
「メリオダスは魔神王に呪われたため、子供の外見のまま齢を取らない」
という設定自体は、ガランの二度の発言(第119話、第135話)から見て、最初からあったのだろうと思われます。
しかし「いつ」呪われたかという時期の設定を、作者さんは迷うか、混乱しておられる…? ような印象を受けています。辻褄が合いにくい。
とにかく、色々とスッキリしないです。
スカッと明かされる時を楽しみに待ちたいです。
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その記憶は正しいか
エスタロッサの過去の記憶とエリザベスの記憶には齟齬があるようです。
エスタロッサは「戒禁を授かって以来、精神が不安定になった」という設定ですから、彼の記憶が間違っていると、第一に疑うべきなのでしょう。
ところがです。
エリザベスの方もエスタロッサに『一度』会ったことがあると既視感を覚え、ついに今回「少し思い出した」「エスタロッサは『いつも』独りぼっちだった」と自ら述べました。
少なくとも「過去に『何度も』会っていた」のは事実のようです。(会ったのは『一度』か『いつも(何度も)』か、第246話時点でのエリザベスの記憶と今回とでズレがある。ここ数話で、ちょっと設定変更された?)
では、精神が不安定だというエスタロッサはまだしも、どうしてエリザベスが忘れていたのでしょうか。
エスタロッサの記憶が確かなら、彼の少年時代から青年になるまでの長期間…魔神と女神のことですから何十年、下手すれば何百年もの間…密会を続けていた相手です。しかもメリオダスが同席していたらしい。
メリオダスと逢っていたことは覚えているのに、エスタロッサの存在だけ忘れているのは、あまりにも不自然です。
そもそも、今のエリザベスは「3000年前の記憶を全て取り戻した」から、三日殺しの呪いが発動したのではなかったのでしょうか?
なのに「忘れている」ことがあると、今更言い出すなんて。
実は三日殺しの呪いは発動していなかったというオチなんでしょうか。
それとも、エスタロッサの件は特例で、忘れてても呪いは発動します、なんてご都合設定なんでしょうか(溜息)。
エスタロッサの記憶
エリザベスの記憶
- 現時点、少年時代のエスタロッサの記憶はない
- 「いつも」独りぼっちで寂しそうな青年エスタロッサの「後ろ姿」を、「遠くから」見ているイメージのみ思い出している
- 天空宮で「いつも」メリオダスと「二人だけで」逢っていた
エスタロッサの不安定な記憶には、術士ゴウセルが関わっていることも推測されます。
エスタロッサが狂う場面、またエスタが殺したとされるマエルの死と復讐について語られる場面で、決まって人形ゴウセルが気まずげ・哀しげに俯いたり顔を背けているからです。
多分、「マエルをエスタロッサが殺した」のは、何かの行き違いや誤解の果ての哀しい事件だったんでしょうね。
その前後にエスタロッサの記憶に何らかの改竄が加えられ、その影響で記憶が混乱しているのかもしれません。
しかし、だったらどうしてエリザベスの記憶まで消えているのでしょうか。
例えば、エスタロッサがメリ&エリの仲に嫉妬して狂ったのを記憶を消すことで宥めたのだとして、エリザベスの記憶まで消す必要はありません。
マエルはエリザベスを称賛していたと、人形ゴウセルが語っていました(第261話)。
術士&人形ゴウセルとマエルは、そんな雑談を交わす程度には交流があったということ。
ゴウセルとマエルと、場合によってはエスタロッサが協力して聖戦を終わらせようとしていて、土壇場で、エリザベス絡みでエスタロッサが狂った?
…それで、エリザベスが責任を感じたら可哀想だから記憶を消した…というのもシックリこないですよね。そんなんで記憶消されてもエリザベスも困るでしょうし。
さて。
エスタロッサの記憶では、メリオダスはエスタロッサとエリザベスの仲を取り持ってやると約束したのだそうです。
それを聞いたエリザベスは「メリオダスは絶対にそんなことは言わない」と失笑しました。
凄い自身ですね。彼は私を愛しているから絶対にそんなことは言わない、という不動の信頼でしょう。
…でも、二人が恋人になる前の、メリオダスが まだエリザベスに恋してなかった、恋の自覚がなかったなどの時期だったら、普通にありうることだと思うんですけど…。
この漫画の恋愛観は「一棒一穴 至上」とお見受けします。
特に主人公とヒロインの恋愛は、一切の穢れのない完璧な愛に描くことを目指されているように感じます。
ですから、メリオダスが「弟とエリザベスの仲を取り持とうとして裏切った」なんてことは、エリザベスの言う通り「絶対に」ない可能性が高そうです。
…でも、だったら何で わざわざ こんなエピソードを入れたんだろう? とも思うんですよね。
頭のおかしいエスタロッサが横恋慕したあげく妄想と現実の区別もつかなくなって(または、術士ゴウセル辺りにそのように記憶を改竄されて?)メリオダスに理不尽な恨みを抱いてました、ってか?
そこまでしてエスタロッサを貶めることはないですよね(汗)。
何か意味があるのか。
別に無くて、ただエスタロッサを哀れの海に落とすだけの意図のエピソードなのか…。
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過去のメリオダス像の違和感
第176話、エスタロッサは3000年前の(エリザベスに恋する前と思われる)メリオダスを、こう語っていました。
「あの頃のお前の強さ… 非情さは凄まじかったなぁ」
また、魔神王(第183話)やマーリン(第196話)は言っていました。
「かつて最凶の魔神の名を ほしいままにした 貴様が」「あの女のせいで役立たずの骨抜きにされて はや三千年…」「それが今の状態まで 戻れたのは誰のおかげだ?」「そう… 貴様が死を選び煉獄へ来るたびに」「我が 貴様に芽生えし感情を喰らってやったからにほかならぬ!!」
「…問題は死から蘇る都度 感情を喰われ」「最凶の魔神と呼ばれた時代の彼に逆行しつつあることなのだ」
以上から、3000年前の、エリザベスを愛する前のメリオダスは、非常に冷酷な性格で、表情も乏しく、冷たい男だったのだと思っていました。
なにせ、二つ名が「最凶」ですもの。手のつけられないほど凶悪でヤバかったのだと。
そんなメリオダスがエリザベスと出逢って激変し、面倒見がよくて愛嬌のある、今のメリオダスになったんだとばかり思ってました。
ところがです。
ここ暫くのエスタロッサの回想に登場するメリオダスが、とても優しくて面倒見がいいんですよね。
「メリオダスは本当に強くて… 尊大で …誰からも信頼されて …自信に満ちていた」「何より 俺をいつも庇って見捨てずにいてくれた」「どんな悩みだって聞いてくれ――」
あれ? 十戒統率者時代から、今と大して変わらなかったの? 今より尊大(人を見下した偉そうな態度)だっただけ?
じゃあ「感情を喰われて最凶の魔神に戻る」というのは何だったの??
なんでメリオダスは「昔の自分に戻るのが怖い」って泣いたの??? 「偉そうなオレになるのが嫌」ってだけ?(今も、飄々とした態度と笑顔で覆ってるだけで、尊大なのは変わらないと思うんだけど。)
感情を喰われようが喰われまいが、昔に戻ろうが戻るまいが、大して変わらないってコトじゃん!?(汗)
うーーん…。
大山鳴動して鼠一匹というか…。
散々、「昔のメリオダスはヤバかったんだ」「そんな昔のメリオダスに戻ってしまうのは大変悪いことなんだ」と煽っておいて。
別に大したことなかったんじゃん……。アホらしい…。
ちょっとガッカリしたかもしれません。
作者さん的には、いつの時代もメリオダスは最高にいい男だ、強くて皆に好かれて頼られていたんだ、悪い男だった時代なんてない、と仰りたかったのかもしれませんが…。
ただ、少し気になったのは、エスタロッサが「メリオダスは本当に強くて、尊大で、誰からも信頼されて」と語ったコマに続けて、
エリザベスが無言・無表情のまま、ピク、と反応する様子が、単独のコマで挿入されていた点です。
エスタロッサの語る、完璧超人なメリオダス像に、何か感じるところでもあったのか?
…そんなことはなく、大した意味のないコマなのか。
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「独りぼっちの可哀想な子」を保護するエリザベスとメリオダス
今回のエスタロッサ&エリザベスの過去語りを見て、3000年前にエリザベスとメリオダスが「独りぼっちの可哀想な子」だったマーリンに優しくして懐かれていた件を思い出しました。
状況的に、よく似てますよね。
回想場面のメリオダスの服装から見て、二人がエスタロッサに構っていたのはメリオダスが魔神族陣営にいた時代、マーリンに構っていたのはメリオダスが<
二人は「独りぼっちの可哀想な子」に優しくするのが好きなのかしら。
エスタロッサも、上手くすれば、今のマーリンに近いポジションに落ち着くことが出来てたのかなあ。
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今回の一挙二話掲載の「答えてばっちょ!」大回答祭りに、以下のようなものがありました。
Q.三千年前のメリオダスの戒禁はなんでしたか?
A.「慈愛」。女神族と共闘するため、魔界を去る際に戒禁を捨てました。その後、魔神王がエスタロッサに「慈愛」を与えたのです。
…え、ええっ!?
では、メリオダスが魔神族を裏切るまでは、エスタロッサは戒禁を持たず、<十戒>ではなかったのでしょうか?
しかし回想で見る限り、メリオダスがまだ魔神族陣営にいた頃、既にエスタロッサは青年姿。そして第176話の回想で見るに、少年姿のエスタロッサが、メリオダスと共に<十戒>の一人として描かれていました。
辻褄が合いません。これはどういうことなんでしょうか?
説A
エスタロッサは少年時代、「慈愛」とは別の戒禁を与えられていた。メリオダスの出奔後、その戒禁と「慈愛」の戒禁が入れ替えられた。
説B
第176話の回想は間違いで(エスタロッサの記憶違い。本当は十人目の十戒はゼルドリスだった)、メリオダス出奔前のエスタロッサは<十戒>ではなかった。
(だから、少年時代のエスタロッサに精神不安定な様子がない。戒禁を得ていなかったので精神が狂っていなかった。)
説C
エスタロッサはメリオダスの分身的な存在。メリオダス出奔前には そもそも存在せず、エリザベスが記憶する「一人ぼっちで寂し気」な青年はメリオダスだった。
説D
エスタロッサの正体は、エリザベスが拾った小犬。いつもメリオダスとエリザベスの逢瀬を見ていた。
うーんん?
メリオダス出奔前 | メリオダス出奔後 | 封印直前 | |
---|---|---|---|
慈愛 | メリオダス | エスタロッサ | エスタロッサ |
敬神 | カルマディオス | カルマディオス | ゼルドリス |
信仰 | メラスキュラ | メラスキュラ | メラスキュラ |
沈黙 | モンスピート | モンスピート | モンスピート |
純潔 | デリエリ | デリエリ | デリエリ |
無欲 | ゴウセル | ゴウセル | 欠員 |
真実 | ガラン | ガラン | ガラン |
不殺 | エスタロッサ? | 欠員 | グレイロード |
安息 | アラナク/ゼノのどちらか | 欠員 | グロキシニア |
忍耐 | アラナク/ゼノのどちらか | 欠員 | ドロール |
例えば、メリオダス出奔以前のエスタロッサの戒禁は「不殺」だったと想定してみます。虫一匹殺せなかった彼に、この戒禁はピッタリに思えます。
しかし。
過去回想見るに、少年時代のエスタロッサが女神族に殺されそうになっていたり、青年になった彼が女神族を ぶった斬ったりしています。(その直後に垣間見たメリオダスの服装からして、メリオダスがまだ<十戒>だった時代。)
「不殺」の戒禁持ちを殺せば、殺した方も死ぬ。そして「不殺」の戒禁持ちが誰かを殺せば、自分も死にます。(<十戒>や<四大天使>など、魔神王や最高神の加護を持つ者を除く。)
それを思えば、殺されそうになったり・殺したり? していたエスタロッサが「不殺」の戒禁持ちだったとは思いにくいかも?
さておき。
<十戒>時代の「最凶」「非情な」メリオダスが、よもや「慈愛」の戒禁持ちとは思いませんでした(汗)。
「慈愛」の戒禁は、憎悪を抱けば
ということは、女神族をバッサバッサと斬り捨て殺しまくっていたメリオダスは、彼らに一切の憎悪を抱いていなかったということになります。
エスカノールと同じで、強すぎて尊大だから、敵にも憐れみしか抱いていなかった、という理屈なんでしょうか。
しかし、何の怒りも憎しみもないのに、バッサバッサ大量殺戮していたと思うと、そちらの方が怖いような気もします。流石は「最凶の魔神」?
そして、「慈愛」の戒禁を捨てた今の二つ名が「憤怒」で、怒りと憎しみを爆発させては周囲を崩壊させる罪を繰り返してきたと思うと、なんだかモゾモゾしますね。
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キングがデリエリを信じた件
予想通り、デリエリがエリザベス救出に加わりました。
ちょっと予想外だったのが「私も助けに行かせてくれ」と頼んできたところ。傍若無人に「私も行く」と同行するか、黙って後をつけてくるのかと思ってました。
ガラは悪いけど 意外に育ちのよいお嬢さんなのね、デリエリちゃん。(モンスピートに護られていた分、スレてないのかな。)
今が戦時で、デリエリが敵将なのは事実です。彼女は<
その状況下で、「エリザベス救出作戦に協力してくれるの、いい人だね、ありがとう♡」となるはずがない。ご都合な漫画やラノベでもない限り(苦笑)。
段階踏みの お約束として、まずは<蒼天の六連星>たちが先頭に立って猛反対。当たり前ですね。
で。今回は、その意見を却下して「デリエリを信じる」と言う役が、キングに回されていました。
すごくビックリしました!
いや、第二部に入ってからというもの、『物語上の負(反対する、言い負かされる、カッコ悪い役)』ポジに ずーっと置かれてましたから。
すっごい久々に『物語上の正(賛成する、言い負かす、カッコよさげな役)』の、しかも筆頭ポジに置かれた気がする。
…とは言え、言っていることは第209話での発言と全く同じです。
「命がけでデリエリを救ったエリザベスの気持ちを無下にしたくないから、デリエリを尊重したい」
ということ。 その視点で見ればブレてない。
209話時点では葛藤しながら苦しげに言っていたのが、今回はシラッとした顔で一片の迷いもなく言っていて、彼の中でこの問題に整理がついてしまったんだな(エリザベスに盲従するという形で)、と感じて、少し複雑な気分でした。
<蒼天の六連星>やリュドシエルの言うことも間違っていないんですよ。
だからキングには、その都度 迷って・考えてから結論してほしい気もするんだけども。
友達を信じるということと、その考えを何も考えずに全肯定するということは、また少し違うことだから。
でも、それをやっていると、また一部読者に「ウザい、嫌いになった」と評価されるんでしょうし、これでいいのかな。
今回ホッとしたのは、サリエルたちが<蒼天の六連星>と同じ「反対」側に立ったことです。
これで、反対したのが<蒼天>だけで、サリエルたちやキングが彼らを見下して小馬鹿にしたり、ディアンヌやハウザーが正義の名の下に怒ったり説教したりしたら、見ていられない、居た堪れない気分になるところでした。
<蒼天>たちの意見は却下されはしたけど、彼らが人格否定されたり・愚か者扱いされて惨めな感じに描かれたりしなかったのは、嬉しかったです。
しかし。
キングは、エスタロッサは強いから戦力は多い方がいいと言うけれど、エスタロッサは元々デリエリの戒禁を狙っていて、それを奪われてメリオダスに渡ってはマズいわけで。連れてっていいんかなあ(;^ω^)、とも思いました。
キングは「主が死ねば簡単に戒禁を剥がせる」ことを知らないんでしょうし、デリエリは「戒禁がメリオダスに渡ったらエリザベスが悲しむ」ことを知らないんでしょうから、互いの情報共有不足が招いた不備かしら。
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読者の多くが何となく予想してそうな展開
- キングらエリザベス救助隊は大して役に立たず、結局エリザベスが自力で解決する
- サリエルとタルミエルは最後の見せ場なのでそれなりに活躍するが、実体を失って退場
- キングは いつものように決定打を与えられない
- デリエリは戒禁を奪われる
- エリザベスが颯爽とエスタロッサを浄化して救う
- 解決したかと思われた時、(掃討部隊にも?)ゼルドリス側の魔神が現れて戒禁を奪われる
今回、闇暴走したエスタロッサが、心の声でエリザベスやメリオダスに助けを求めてくれて、安心しました。
インデュラ化したデリエリとモンスピートを女神エリザベスが「救った」際は、助けを求められてもいないのに、殺されそうになってた味方(リュドシエル)を放置して、敵であるインデュラの方を救うと言い出して、なんだかモヤモヤしたのですが。
エスタロッサは助けを求めたので、エリザベスが「救う」理由が十分にあります。
これまでインデュラやメラスキュラにやったような、「圧倒的な光のパワーで無理矢理 調伏・浄化」もいいんですが、折角救いを求めてもらったんで、「闇に囚われた精神世界に入って優しく抱きしめて救う」系の、光ヒロイン鉄板パターンも見てみたいですね。(この漫画じゃ、そのパターンはゴウセル専用かしら。)