【感想】『七つの大罪』第304話 処刑人は願う
週刊少年マガジン 2019年 16号[2019年3月20日発売] [雑誌]
第304話 処刑人は願う
- 「何の真似だ ゼルドリス!?」
魔神王メリオダスが見上げた空の上で、ゼルドリスは「嘆息の賢人」に突き刺していた闇刃を抜いた。丸めた糸が解けたように それはバラけ、幾つかに千切れて断続的に地上に落下する。 - 暫く見つめた それから視線を上げて、魔神王メリオダスは静かに息子を睨んだ。
- 「俺はメリオダスに用事があるのです 父上には どうか ご退場願おう……」「だが その前に一つ聞いておきたい…」
ゼルドリスは背に闇の翼を広げ、滞空して見下ろす。
「あなたは俺とゲルダの仲を知ったうえで 吸血鬼一族の処刑を命じたのですか……?」
◆今更なことを聞くゼルくん。
だってゲルダとの交際を、父はおろか周囲にも一切 秘密にして、自分が魔神王になることで関係を明かそうと考えてたのは、誰にも祝福されない・父は反対するし 危害を加えてくるかもしれないと、最初から警戒していたからなんでしょう? 最初から その方面では父を信頼していなかったのに、それでも確かめて、やっぱり傷ついたり怒ったりすると。複雑な息子ゴコロですね。
そもそも第300話(魔神王メリオダス登場時)にて「ゼルドリスよ… まだ あんな吸血鬼の娘に心縛られておるのか?」と魔神王さんは言ってるんだけど…。あれ聞いて初めて、交際に気付かれてたのを知ったというコト? - 「…息子を
病 から救うための親心に気付かぬ愚か者め」 - 「何…」
父の返答にゼルドリスは戸惑った。 - 「お前は弱い…」「弱さは
病 だ…」
「…我を誰と心得る? 貴様に与えし戒禁が逐一 教えてくれたわ」「我に隠れたつもりで吸血鬼の娘と逢瀬を繰り返していたこと」「我の命令に背き 吸血鬼一族を処刑せず封印に留めたこと…」
魔神王メリオダスは嘲るように口を歪める。
「…そして いずれは魔神王の座を奪い」「誰もが平穏に暮らせる魔界を作るなどと本気で考えていたことも
……くだらぬ!!」 - 「…っ」
ゼルドリスは息を呑んで歯噛みした。 - 「従順だけが取り柄と大目に見てはいたが ―――ここまでだな」
足元に散らばっていた節腕の欠片がピクッと動き、蛇のように再び絡み合っていく。今度は短い脚のある、嘆息の賢人が頭巾を被ったような形が作り出された。 - “刹那の隠者”
◆すぐに倒されちゃうから「刹那」だったんだろーか…。(違います。動きが高速だからです。) - 空に在るゼルドリス目掛け、大地を蹴って飛んでいく。
- 精神世界の戦いは、もはやメリオダスの独壇場である。
- 大剣を野球バットのように振りかぶる老魔神王を前に、メリオダスは静かに佇んだまま、己の周囲に数十個もの闇の弾丸を巡らせる。
- バララララララララララララ
- 「ぬが!!!」
左手で指して一気に弾丸をぶつけてやれば、魔神王は悲鳴を上げて動きを止めた。 - 「がんばって団長~~!!」
懸命に応援するエスカノール。
「いけいけ団長ーー!!」
左拳を天に突き上げて勢いづくディアンヌ。 - ゴボ、と軽く血を吐いて老魔神王は訊ねた。
「貴様の… その闇は!?」「この魔神王の鎧と肉体を貫くなぞ…!!」 - 答えを告げたのはメリオダスではない。
「闇が圧縮されて できた塊……? 測り知れない質量と威力だよ」
と不思議そうなゴウセルに、キングが言ったのだ
「ドルイドの修練窟で オイラの“養分凝縮 ”を元に彼が編み出したんだ」
彼の表情には、ただただ感服しかない。
「でも団長の魔力が はるかに増した分」「あの時の比じゃないはずだ…!!」 - 風を唸らせて闇の弾丸の群れを巡らせながら、メリオダスは ゆっくりと老魔神王に向けて歩いていった。
「不思議なもんだな」「お前らが一緒にいてくれると思うだけで力が湧いてくる…」
振り向かずに言葉を続ける。
「マーリン」「エスカノール」「ディアンヌ」「キング」「ゴウセル」
「エリザベス」 - 頬染めて微笑むエリザベス。
- 「俺はもう大丈夫だ…」「あとはバンを助けてやってくれ!!」
- 老魔神王が両手で振り下ろした大剣は、メリオダスの周囲を巡る弾丸の群れに穴だらけにされた。次いでメリオダスが左手を差し向ければ、弾丸は横殴りの驟雨となって老魔神王の顔から胸にと降り注いで蜂の巣にしていく。
- メリオダスが飛んでいないことを除けば、まるでキングの戦い方をコピーしたかのようである。
- 戦い続ける父子を見ながら、エスカノールが涙ながらに訴えた。
「団長… 僕は昼は面倒で夜は役に立たない男です」「それでも… あなたのためならば この命 喜んで懸けます!!」
「だって」「あなたは僕の命の恩人であり 友人なんです!!」 - 「サンキュー」
大剣を穴だらけにされた老魔神王は、掲げた両手から電光を発する。
「よっ」
難なくバックステップして避けるメリオダス。 - 次に、マーリンが挑発するように笑った。
「団長殿!! もし姉々を一瞬でも諦めれば…」「あの約束を守ってもらうぞ」 - 「こんな状況で脅すか普通?」
避けながらの空中でメリオダスは ぼやく。 - 「フン…」とマーリンは意味ありげに微笑み、「?」「約束?」とエスカノールはキョトンと二人を見回した。
- 津波のように押し寄せた爆炎を避けるメリオダス。
- ゴウセルが朗らかな笑顔で言った。
「団長!! 俺が心を取り戻せたのは<七つの大罪>みんなのおかげなんだ…」「だから そのみんなを集めてくれた団長が戻ってきてくれなきゃ絶対ダメだよ!!」 - 「わかってるって…!」
燃え盛る炎をメリオダスは跳んで避ける。 - 「団長!! キミとはちゃんと面と向かって話をして謝らせてほしいんだ!!」
キングは両拳を握って訴えた。 - 「<七つの大罪><
憤怒の罪 >メリオダスは最強なんだからねーーー!!」
ディアンヌは右拳を突き出して、心配を隠した空 元気でウインクしてみせる。 - 「ああ…!! 戻ったら酒でも呑み明かそうぜ」「全員でな!!!」
メリオダスは周囲に闇の弾丸を飛び巡らせて跳んだ。高く、老魔神王の頭上へと。 - 「メリオダス!!」
最後に声を掛けたのはエリザベスだ。緊張した面持ちで見つめる先で、メリオダスは老魔神王を頭上から弾丸の雨で穿ち続けている。憤怒の相で力を込めるメリオダス、両腕を眼前にかざして耐える老魔神王。
「待ってるから!!!」 - ドゴンッ
- 老魔神王は仰向けに打ち倒された。
- 「すぐに行く!!!」
メリオダスは高らかに答えたのだった。 - 現実世界。
地上ではバンと魔神王メリオダスが、空ではゼルドリスと刹那の隠者が激しい戦いを繰り広げている。 - 蹴りと殴打、回避の応酬を続けるバンと魔神王メリオダス。
- 刹那の隠者の素早さは忍者の分身の術のように己の残像を無数に生み出す。膝丈の頭巾が回転し、尖った裾が開いて回転カッターのようにゼルドリスに迫った。
- こちらも神速を誇るゼルドリスは すれ違いざまに剣で斬ったが、カッターで二の腕を斬り裂かれたのはゼルドリス。隠者は無傷だ。
- (俺は今も魔神族を裏切った お前が許せない)
ゼルドリスは隠者を剣で突き刺そうとする。
(それでも一つ 認めなければならないな)
だが隠者は残像を残して移動していた。真上からゼルドリスを両脚蹴りする。
(お前が持っていたものを)(俺は持つことができなかった) - 蹴り飛ばされ、なんとか空中で制動をかけたゼルドリスに、目にも止まらぬ速さで襲い掛かる刹那の隠者。
- (大切な
存在 のために)(世界 を敵に回す覚悟だ) - まるで猛禽の群れにでも襲われているかのように、一つ一つは致命傷というほどではないが、見る間に血の流れる傷を増やされていく。
- どういうわけか、隠者は一旦ゼルドリスから距離を開けて彼を休ませた。
体を折って荒い息を吐いてから、ゼルドリスはぐっと胸を反らして魔力を使う。
“凶星雲 ” - 「!!」
吸い寄せられる刹那の隠者。 - 「フッ」
眼前まで吸い寄せられた隠者に鼻で笑いかけると、ゼルドリスは神速で粉々に斬り刻んだ。再生不可能なほどに。 - 「邪魔は排除した!! 貴様はメリオダスの体から とっとと魔神王を――――」
そして荒い息と共に地上のバンに呼びかけたが。 - まさにそのタイミングで、バンは魔神王メリオダスに首根っこを掴まれ、叩きつけるように大地に抑え込まれていた。
- 見上げた魔神王メリオダスの手元がチカッと光った、それを認めたときには、放たれた光線がゼルドリスの肩から腹までをバックリと斬り裂いていたのである。
- 「かは…」
血を吐き、頭を下にして ゆっくりと落下していくゼルドリス。 - 「な… なぜだ!? ゼルドリスに魔力攻撃は効かないはず」
驚くマエルの腕の中のリュドシエルは、もはや顔面から胸辺りが残っているだけにまで分解している。 - 魔神王メリオダスは笑った。
「忘れたか? 「魔神王 」は我が貸し与えた力だ…!!」 - 「てめぇ!!!」
地に押し付けられていたバンが足だけ跳ね上げて、魔神王メリオダスに蹴りを見舞った。 - 一方、落ちていくゼルドリスは消えかけた意識の中で考えている。
(メリオダス…)(きっと…お前なら すべてを…… 変えられるはずだ)
(任せたぞ) - 精神世界で、メリオダスは渾身の力で老魔神王に闇の弾丸の嵐を叩きつけた。
- ゴボッと血を吐く老魔神王。
「おのれ… おのれ!!!」 - 「…次で決める!!!」
メリオダスは精悍な顔で言い放った。 - 次回「断末魔」
この親父はクズだから息子たちで殺していい、と天は言った
父殺しを気持ちよく達成させるための準備が着々と積み重ねられた回でした。
(と言っても、今戦っている魔神王は過去に本体から切り離された「力の半分(10戒禁)」に過ぎず、それを
魔神王が戒禁を通してゼルドリスのプライベートを覗き見していたと明かされたのが面白かったです(笑)。カノジョとの秘密のアレやコレやも見られてたのね~(笑々)。
戒禁が逐一教えてくれた、かあ…。マエルの精神世界にいた怪物か寄生虫みたいな形の戒禁を思い浮かべると、中国や日本の道教由来の民間信仰を思い出します。
全ての人間の体内には「
魔神王パパも部下や息子の行状の報告を戒禁たちから受けてたのね。
ところでゼルドリスが戒禁を授けられたのって、聖戦のかなり末期でしたよね。
キングとディアンヌの過去修行編の時点では、ゼルドリスは<十戒>ではありませんでした。当時の「敬神」の戒禁持ちはカルマディオスで、ゼルドリスの肩書は「処刑人」「魔神王の代理」のみでしたから。
あの過去編の直後にグロキシニアとドロールが<十戒>入りし、術士ゴウセルが禁呪を使い、マエルがエスタロッサに仕立てられたはずです。
その更に後に、何らかの事情でカルマディオスから戒禁が離れ、ゼルドリスが<十戒>「敬神」の座を引き継いだ…はず。
さて、ではゼルドリスがゲルダを封印したのは いつのコトなんでしょうか?
第271話、メリオダスの述懐。
「オレはかつて次期魔神王候補と呼ばれ<十戒>を統率していた」(中略)「そんな時さ エリザベスと出会ったのは」「―――俺の世界は一変した」「大切な
存在 のいる喜び」「大切な存在 を護りたい気持ち」「オレはやっと弟を理解した」「あいつには とっくにいたんだ」「護るべき大切な存在 が」(中略)「一方でオレはエリザベスと共に不毛な争いを終わらせることを誓い 魔神族を裏切った」「それが聖戦のキッカケになるとも知らずにな…」「<十戒>統率者の裏切りは思わぬところでの ひずみも生んだ」「魔神王に隷属することを不服としていた配下の吸血鬼一族が 魔神王への謀反を企んだんだ」「でも謀反は失敗し」「魔神王は吸血鬼一族を見せしめに処刑するようゼルドリスに命じた……」「自分の手で」「恋人を殺せと」
第273話、エリザベスの回想。3000年前、天空演舞場での秘密の逢瀬の場面。
メリオダス
「……オレは どうにかしてゼルドリスと恋人 を救ってやりてえ……」女神エリザベス
「そうね… でも あなたは本当に弟想いなのね」
以上から判ること。
- メリオダスがエリザベスと出逢う前から、ゼルドリスはゲルダと交際していた。(メリオダスはそれを知らなかった?)
- メリオダスはエリザベスと秘密の交際中の時代、ゼルドリスの交際相手について詳しく知っており「救ってやりたい」と言うほど二人の状態が哀れだと感じていた。(この時点でゲルダは封印されていたのか? 単に交際を公表できないことを哀れんでいるだけか?)
- 吸血鬼一族が謀反を起こしゼルドリスに処刑人の仕事が回されたのは、メリオダスが魔神族を裏切った後。
さてさて。
ゼルドリスが戒禁を得たのは、メリオダスが魔神族を裏切った後、加えて術士ゴウセルが禁呪を使った後だったはずです。
…その後に、吸血鬼一族は謀反を起こしたんでしょうか??
だとすれば、ゼルドリスが戒禁を得てからゲルダの処刑を命じられるまで、殆ど間は無かったのではないでしょうか。
とゆーか。そもそも、メリオダスすらゲルダの名前も交際状況も把握してたんですから、戒禁で見てたなんて関係なく、周囲にバレバレだったのかも?
そして思いました。今回、
「ゼルドリスがゲルダと交際していたと知っていながら処刑を命じたなんて、魔神王は酷い!!」「こんな毒親、殺しても当然だ!」
と読者が思うように、魔神王がいかに非道であるかが語られていましたけども。
でも、吸血鬼一族が謀反を起こしたのは(ゲルダ本人とメリオダスの説明から)冤罪ではなく事実。(黒爪のレンちゃんは「陰謀だ」と主張してたんで、これから「なにもかも魔神王が悪い」展開に運ばれる可能性もありますが。)
そしてゼルドリスは元々、裏切り者を粛正する「処刑人」の仕事に、望んで就いていたのです。
ゼルドリスを役職から外して、他の誰かにゲルダを殺させた方が「優しかった」ですか?
また、魔神王はゼルドリスが命令に従わず吸血鬼族を封印に留めた(いつか封印を解くつもりである)ことも「戒禁を通して見て」知っていたと言う。
けれど彼は、ゼルドリスを叱ったり罰を与えたりしませんでしたし、封印された吸血鬼一族を改めて殺させることもしませんでした。知らないふりをして そっとしておいてあげたのです。
魔神王が息子を苦しめるために わざとゲルダの処刑を命じた残忍なクズ親父だと言うなら、イマイチ辻褄が合いません。むしろ非常~~に甘い措置だと思います(苦笑)。魔神王本人は「大目に見ていた」と言ってますけども。
作者さんに「魔神王は甘い」意図はなく、子供に殺されるに相応しい真正のクズという 意図しかないのかもしれません。しかし煉獄の本体魔神王が感情メリオダスやバンと遊んでいたようにしか見えなかった件含め、読者としては困惑させられる、魔神王の「抜けた」部分ですね(;^ω^)。
常に詰めが甘いし、言動が
そーいや、戒禁を通して監視することができたってコトは、戒禁を得ていた期間がごく短い(と思われる)ゼルドリスより、(数百年は戒禁持ちだったはずの)メリオダスの方を気にすべき事案なのでは…。
だってさー。
つまり、魔神王はメリオダスがエリザベスと何百年も交際してたことを知っていたし、二人がチューしてたのもマエルの比でなく覗き見してたし、エリザベスのために<十戒>の仲間を殺して逃げた状況も、全部・ぜ~んぶ、リアルタイムで知っていたってことになっちゃうんですもの。
なのに一切口を挟まなかった。かなり長いこと自由にさせていた。なんでやねん。
魔神王パパは「見守る」のが基本方針なんですかね。
メリオダスに不死の呪いを与えた後も、人間界で暮らす彼の傍に可愛いペットを付けて、3000年間 様子を見ていたってハナシですし。
神様なので、人間とはだいぶ感覚が違うのかもしれませんね。(神様ってのは、基本、「見守ってるもの」だって気がしますから。たま~に祝福と処罰。)
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あーん! ゼル様が死んだ!?
魔神王の攻撃で肩から腹までがバクっと割れ、遺言っぽくもある台詞を
えっ、死んじゃったの?
…とは、全然思えなかったです(苦笑)。
なにせ、キャメロット決戦に入ってからこっち、「大ダメージを受けたゼルドリスが死んだように崩れ落ちる(暫く出てこない)」→「起き上がって平然と戦う」っての、何回繰り返してるんだっていう。申し訳ないですが「またか」と思いました。
これが一回目。この後リュドシエルが「聖戦に勝った!」と歓喜→
これが二回目。この後ホークたちが「聖戦が終わった!」と歓喜→
今回ので三回目。
古人の言う通り、二度あることは三度ありましたですね。(;^ω^)
キャメロット決戦では似たような山と谷が何度も繰り返されてきたので、ちょっと疑心暗鬼な気持ちも沸きます。まさかの四度目があったらどうしましょう。
この後 戒禁魔神王を倒して「聖戦が終わった!」とメリオダスらが歓喜した後で何かが起こって新たな戦闘開始、ゼルドリス起き上がって戦う、みたいな(笑)。
流石に、もうナイだろうけど。
そもそも、ゼルドリスら最高位魔神族って人間とは体のつくりが違ってて、バックリ体が裂けたからって死なないハズ。
胴体を真っ二つにされようが、
身体の内側から「太陽」に焼かれて真っ黒焦げに燃えながら崖から落ちて岩にぶつかって上下真っ二つに折れようが、
首を皮一枚まで斬られようが。
人間なら150%死んでる状態になっても、そんなコトでは死ななかったです。
なので、今回のゼルドリスも死ぬように見えませんでした。
もしも死んだら、逆に「え?(汗)」って思っちゃいそう。
最高位魔神族であろうとも、七つの心臓全てを失えば死にます。
モンスピートやデリエリが胸を貫かれただけで死んだのは、残り一つしかなかった心臓を潰されたからという設定でした。
しかし、七つの心臓全てを潰されようと生き返った者もいます。そう、メリオダスが魔神王の力によって。
魔神王は任意で死者すら甦させられる。
そう思えば、この攻撃で万が一ゼルドリスが死んだとて、魔神王にとっては大したことではない? だって必要なら生き返させられるから。
かつてバンが不死身だった頃、メリオダスもキングもディアンヌも、彼の腹に穴を開けたり神器で刺したり握り潰したりと、普通なら死ぬ攻撃を日常的かつ安易に行っていました。どうせ死なないと思っていたからですよね。
それを思うと、今回のゼルドリスへの攻撃も、魔神王にとっては、幾らでも取り返しのつく程度のコトでしかなかったのかもしれません。
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魔神王がゼルドリスを評して言いました。
「いずれは魔神王の座を奪い」「誰もが平穏に暮らせる魔界を作るなどと本気で考えていた」
おお。
キャメロット決戦以前までは、ゼルドリスはメリオダスとは鏡合わせの存在なんだなと思っていました。
魔神族の王子という同じ立場。容姿も声もそっくり。
ただし「自分個人の幸せを優先して一族を裏切った」社会破壊を体現するメリオダスの対照的存在として、ゼルドリスは「皆の幸せを優先して個人の幸せを捨てた」社会秩序を体現したキャラなんだなと。
ところがキャメロット決戦において、ゼルドリスが
「聖戦? そんなものに興味はない!!」
(メリオダスから恋人 の居場所を聞き出すことが最優先である)
と言い出したので驚いたものです。
それじゃメリオダスと変わらないじゃないか。今まで あなたを信じて戦ってきた魔神族の皆はどうなるの?
ゼルドリスが「社会の幸せのため戦っていた」のはカンチガイだったのか…と落胆したものです。それが ここにきて「誰もが平穏に暮らせる魔界を作ると本気で考えていた」と、今更のように魔神王パパが言いました。
そうか、よかった。カンチガイじゃなかったんですね。
聖戦に興味が無いと言い放ったのは、一時的な気の迷いだった……………
…ってコトなんかいな???
ところが今回、ゼルドリス自身は こう独白しているのです。
(俺は今も魔神族を裏切った お前が許せない)
(それでも一つ 認めなければならないな)
(お前が持っていたものを)(俺は持つことができなかった)
(大切な
存在 のために)(世界 を敵に回す覚悟だ)(メリオダス…)(きっと…お前なら すべてを…… 変えられるはずだ)(任せたぞ)
最初に「魔神族を裏切ったメリオダスを今でも許せない」と言ってますから、聖戦なんてどうでもいいと言ったのは一時的な気の迷いで、本心は今でも「皆のために戦いたい」という気持ち…?
と思いきや、「恋愛のために世界を敵に回す覚悟」をしたメリオダスを認める発言が続いて、「お前なら全てを変えられるはず、任せたぞ」と太鼓判を押す結論に至っています。
あなたは これを どう思いましたか?
ちょっと漫画『進撃の巨人』のエピソードを思い出しました。
エルヴィン団長は、人民(世界)の命と兵士(仲間)の命を天秤にかけて、兵士を切り捨てる作戦を遂行した。兵士が大勢犠牲になった結果を主人公らが批判するなか、主人公の友人で一兵卒であるアルミンが団長を評して言った台詞。
「何かを変えることが出来る人間がいるとすれば」「その人はきっと」「大事なものを捨てることができる人だ」
「化け物をも凌ぐ必要に迫られたのなら」「人間性をも捨て去ることができる人のことだ」
「何も捨てることができない人には」「何も変えることはできないだろう」
ゼルドリスは、恋人のためなら「
でもエルヴィン団長の覚悟は「同志(大切な存在)を犠牲にしてでも、閉じた世界を開く」というものなので、「
ゼルドリスは「恋のためなら世界の全てを敵に回せる男」とメリオダスを評価しつつ、だから世界を変えられる頼んだぞと、まるで彼が「皆のために世界を よりよく変えてくれる」
私はここに、クラインの壺かメビウスの輪のような不可解な
「誰を敵に回しても あなたの味方」とは、かつてエリザベスもメリオダスに言っていました(第196話)。
恋人のために世界すら棄てる覚悟。恋人のためなら手段を選ばない覚悟。この漫画では、それら「覚悟」を非常に価値高いものと定義しているようです。世界を素敵な方向に変革すらできると。
この辺り、価値観は人それぞれですから感じることは人によって大いに異なるのでしょうし、正解もないのだと思います。
そのうえで私個人の感想を言うなら、恋愛のために他者を(直接・間接に)殺す「覚悟」を、価値高いものだとは思えません。
また、王子・王女という立場で己の恋愛を最優先したこと、民族紛争規模の裏切りと殺害を繰り返したことも、結果論的に「世界を変えるために必要だった」と言われても、称賛する気持ちには なり難いです。
私が、恋愛を「絶対叶えなければならないモノ」「何より優先すべき至上のモノ」だとは思っていないからかもしれません。
無論、可能ならば結ばれるのが最高だと思いますが、人を殺し生活を損なわせ国や町を滅ぼしてまで、一組のカップルを幸せにすべきだとは、どうにも思えませんでした。
恋愛成就のため周囲が払わされた代償が大きすぎる。
当の二人は、恋人のためなら永劫の転生の呪いで今回も死んでいい、魔神王になって異世界に去ってもいいと自己犠牲を訴えていますが、それを二人の恋愛とは関係ない他者を利用したり殺したりしても許される代償として掲げられても困りますよね。
何年も前の感想に「関係ない人たちの屍の山の上で『私たち、3000年の試練を越えて幸せになりました♡』とやられても心から祝福し難い(だから、その方向に展開しないといいのに)」と書きましたが、今も気持ちは変わっていません。そして、杞憂であってほしいと思っていた終着駅に、この漫画はどうやら到着しそうです。
物語として読むなら、そうした恋愛にも魅力はあります。皆が死に絶えた世界で二人きりで抱き合っているような、双方ヤンデレ、幸せなのは二人だけのメリーバッドエンドの世界でも、それはそれで倒錯的な美しさと中毒性がある。
そう、二人の恋愛のために「世界を敵に回す」なら、本来、孤独が待っているはずですよね。
ところがこの漫画、世界を敵に回すと言いながら、実際には
ここにも
メリオダスは<十戒>統率者時代から戦争をくだらないと思っていた。エリザベスと共に戦争を止めることを誓って魔神族から離れた。これは世界平和のためだから裏切りではない。<大罪>を解散して魔神族側に戻ったのもエリザベスへの愛ゆえだから(或いは、感情を奪われたせいだから)裏切りではない。殺したのは正当防衛で、向こうが悪を成すから降りかかる火の粉を払っただけである。メリオダスに罪はない。
そう思いますか?
メリオダスはエジンバラに籠っていた<十戒>に独断で挑発を仕掛け、ブリタニア全土に分散させました。そして笑顔で語ったものです。奴ら全員を一度に倒すのは自分でも無理だから、二人組くらいにバラけさせる。ブリタニアには人間の国や町が ひしめいているので、彼らはそれを侵略するために分散するはずだと。(第135-136話)
その後、分散した<十戒>に苦しめられたり食い殺されたりしている人間たちの様子が描かれ、リオネスの九つの町の住民が食い尽くされたこと、キャメロット王国が陥落し住民は魔神の生餌や封印解除の生贄にされたことが語られました。
メリオダスは直接 殺していないのだから罪はない、と思いますか?
私にはそう思えません。
滅ぼされた九つの町に生きていた
笑ってエサにしていいものではなかったと思います。
エリザベスは、メリオダスの魔神王化を…彼がブリタニアに留まれなくなって別れることになるのを…阻止すべく、
そう思いますか?
私の感覚では、愛が動機だろうと敵に寝返れば裏切りですし、立場ある者として軍を出陣させたなら責任は生じます。
戦場でエリザベスは、リュドシエルの「
平和な時代の平和授業の教室であれば称賛される発言でしょう。あるいは、せめて開戦前であれば。しかし戦場では不適切です。「甘い考え」という次元の話ではありません。強大すぎる化け物の群れを前に、死ぬ気で戦わなければ死ぬこと確実の極限下だというのに、死力を尽くしてはならないと士気を下げている。しかも『私の恋人を救うために戦って』と皆を戦場へ導いたのは彼女自身なのに。
エリザベスの言葉は いつも優しくて綺麗。しかし、ここでは捩じれています。
新聖戦(キャメロット決戦)での彼女に、自身にも戦争責任があるという自覚(認めて背負う覚悟)が あるように見えなかったのは、もどかしく感じられた部分でした。
彼女に与えられた物語上の役割は綺麗な場所から正論を言うこと。それまでの自身の言動と繋がらなかろうとも。
3000年前、メリ&エリが愛を貫こうとして起こした裏切りや殺害によって、女神族と魔神族の争いが聖戦と呼ばれる規模にまで激化したのだと、複数のキャラが語っています。
そして現代でも、メリ&エリが愛を貫こうとした結果、争いが激化しました。
勿論、彼ら二人だけの責任ではありません。
けれど彼らが重要な要素であったコト、自ら積極的にそうなるよう動いているコトは事実です。
メリオダスと別れないために戦力を募って出陣したエリザベスは、いつの間にか「くだらない聖戦を止める」ために戦っていることになっていました。
<大罪>を欺き予め不殺の戒禁を盗んでおいて、魔神族に寝返って、ゼルドリスに暴力を振るいゲルダの情報で釣って、魔神王になろうとしたメリオダスは、いつの間にか魔神王に騙されて体を乗っ取られかけた被害者になっていました。
この二人、少なくとも今回の聖戦に関しては、二人の恋愛のためだけに行動していたのに、まるで元より世界の平和のために行動していたかのように話がすり替わっています。
そして今回、ゼルドリスによって「恋愛のために世界を敵に回す覚悟のある者が世界を変えられる」と、それこそが正道であったというように結論されました。
いつの間にか裏が表に変わっているメビウスの輪のように、話が
この結論は流石に強引だなあと、胸のザワつきを抑えられませんでした。
だってね、考えてみてくださいよ。
「恋人のために世界を敵に回し、裏切りや殺害を繰り返す」って、一般的には敵キャラの行動原理じゃないですか。(^^;)
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メリオダス総愛され
※世の中には こんな風に感じるやつもいるんだなぁ~くらいの心の余裕をもって読んでくださると幸いです。
個人の嗜好の話で恐縮ですが、特定のキャラが過剰に周囲(大勢)から愛される展開が苦手です(;´Д`)。
主人公が仲間たちに愛されるのは当たり前のこと。主人公と仲間たちの仲がいいと嬉しいものですね。
けれど過ぎたるは及ばざるがごとし。甘いお菓子も甘すぎるとツラくなる。
昔プレイしていたゲームのエンディングで、旅立つ主人公(プレイヤーキャラ)を十人以上の仲間キャラたちが取り囲んで口々に褒め称え始めた時は、元より物語は架空の娯楽とはいえ「
この苛立ちは、メアリー・スーやチートキャラに感じるものと似ています。承認欲求が過剰に押し出されているように感じてしまう。
そんな嗜好の持ち主なもんで、今回の、メリオダスに<大罪>らが一人ずつ「熱い」好意のコメントを伝えていくエピソードは しんどかったです(苦笑)。
別に無意味に褒めたのではなく、今メリオダスは精神世界で戦っているので、パワーアップさせるためには褒めて好意を伝えて
どうにも過剰、そして褒めどころがズレているように感じられてしまって。
メリオダスをアゲアゲし隊のトップバッターはエスカノールでした。
「あなたのためならば この命 喜んで懸けます!!」「だって」「あなたは僕の命の恩人であり友人なんです!!」
涙ながらに忠愛を叫ぶ様子が激しすぎて ちょっと引いた…ごめんなさいエスカノール。
唐突に「命の恩人」と言ってますが、今までの本編に そうしたエピソードはなく、そうした過去が言及されたこともなかったので、恐らく間もなく公開されるのだろうエスカノール外伝で明かされる過去話なんでしょう。
恩人のあなたのためならば喜んで命を懸ける。友人だとも言ってますけど、これは やはり、主従関係と
第289話、ゼルドリスの問い「人間である貴様が己の命を懸け 戦う理由とは なんだ?」に答えた彼の台詞「全ては友のため」に感動した読者は多かったようですが、対等な友情ではなく、メリオダスの恩に報いていたんですね。
でもエスカノールは もう十二分に恩に報いてると思います。メリオダスの
恩人のため友人のためと叫ぶ姿は美しくはあるけど、哀しくも見えるので、この戦いが終わったら自分の未来のために生きてほしいです。
次はマーリン。
「もし姉々を一瞬でも諦めれば…」「あの約束を守ってもらうぞ」
彼女のコメントは直接的な表現を避けていたので、過剰な感じがしなくて良かったです。うんうん、大勢の仲間が主人公を応援するなら、捻くれた言い方で激励するキャラの一人や二人は居てほしいっすよね(^^)。
「あの約束」とやらも、きっと間もなく公開されるのだろうマーリン外伝で語る予定のエピソードなんでしょうね。
メリ&エリが呪われた後で再会し、消沈するメリオダスに「姉々を諦めたら私と結婚してもらう、生涯 私の実験体になってもらう」的なことを約束させたとかかな? メリオダスが諦めるなど有り得ないという前提の、失恋少女の捻くれた激励。
でも3000年の時を経て、マーリンの気持ちも、当時から幾らかは変化しているんじゃないでしょうか。彼女が今 いちばん一緒に居たい人は誰なんでしょうね。
三番手はゴウセル。
「俺が心を取り戻せたのは<七つの大罪>みんなのおかげなんだ…」 「だから そのみんなを集めてくれた団長が戻ってきてくれなきゃ絶対ダメだよ!!」
トンデモ論にぶっとんだ!(大汗)
ゴウセルが心を取り戻せるように頑張ったのはディアンヌです。その手柄をメリオダスに すり替えるかのような褒め方は、聞かされて気分のいいものではありませんでした。
褒め方がズレてるし、メリオダスのおかげだとする理屈は無理がある。(集めたおかげだと言うのなら、真の功労者は<大罪>集めを予言してメリオダスを派遣したバルトラ王ってことになるのでは?)
逆に言えば、こんなトンデモ論を捻り出さねばならないほど、人形ゴウセルとメリオダスの関係性が希薄だったというコトなんでしょうが…。
無理やり「恩」を捏造しなくても、ささやかであろうと直接に関わった(読者も知っている)思い出をネタにしてくれた方が、自分的にはグッときたのになと思いました。「俺が何者だろうと大事な仲間だって言ってくれたよね。だから、団長も何があっても<七つの大罪>に戻ってきてくれなきゃダメだよ!」とか。
四番手と五番手は、一コマにまとめられちゃったキングとディアンヌ。
「キミとは ちゃんと面と向かって話をして謝らせてほしいんだ!!」
非常に驚きました。
キングは もう面と向かって謝罪してるじゃん?!(第217話)
まさか、あの時は「面と向かって謝罪できていない」という扱いなんでしょうか。メリオダスが茶化して有耶無耶にしちゃったから。
確かに、(作者さんは「謝罪をわざと有耶無耶にしてあげる優しいメリオダス」の おつもりで描いたのかもしれませんが、私の感覚では)真剣な謝罪を有耶無耶にしたメリオダスの態度は良くないと思ったし、逃げないで謝罪を受け止めてやればいいのに、と私自身、当時 感想にも書きました。同じような思いが作者さんにもあって、改めてきちんと謝罪をという意図もあるのかもしれません。
でも、今更ですよ作者さん。
しかも状況が変わっているのに。
そもそも、どうしてキングはメリオダスに謝らなければならなかったのでしょうか。
メリオダスは魔神族ではないか、<十戒>と旧知の仲ではないか、いずれ<大罪>を裏切るのではないか、という疑念を抱いたから、でしたよね。
それは誤解だった酷いことを言ったと、キングは第217話時点で謝罪しました。
では今現在は、どういう状況でしょうか。
メリオダスは魔神族でした、<十戒>と旧知の仲でした、そして<大罪>を裏切って魔神族に寝返りました。
キングの疑念は全て的中しています。
なお、この寝返りはキャメロット出発前(上記のキングの謝罪直後)に予め不殺の戒禁を盗んでおいて行われた計画的なものです。
今、重ねてキングが謝罪しなければならない理由が どこにありますか。
むしろメリオダスこそが
「みんなを騙して裏切ってすまなかった、なのに俺を命がけで助けに来てくれてありがとう」
と謝罪と感謝を述べるべき局面ではありませんか。
とは言え、実際にメリオダスに そう言ってほしいとは全く思いません。今更ですから。
だって、今は全員が(登場人物も読者も)知っていますもの。メリオダスが嘘つきで自己中心で恋愛脳の裏切り者だって。(悪口ではなく、物語で描かれてきた客観的な事実です。)解っていて、それでもボロボロになりながら助けに来たんです。なので今更です。
逆に言えば、キングに非があるのだとしても、ここで謝罪を蒸し返すエピソードを入れるのは今更だし、無粋だと思います。
ですから非常に驚きました。
そうまでメリオダスにマウント取らせたいのかな、と つい捻くれたことを思っちゃいましたよ(苦笑)。
エピローグで、みんなで酒場で祝杯をあげて、酔った おっさんキングが おんおん泣きながら団長ゴメンよ~オイラが間違っていたよ~と謝罪しているみたいな様子をコマの端に描く予定が、この時点ではあったんでしょうか。
まあ、キングは元々マジメで抱え込み過ぎる性格として描かれてきたので(大罪人扱いになった『1000年の禁固刑』だって、本来なら彼が受ける必要のない刑罰です)、一度謝ったのだろうと いつまでも罪悪感に囚われ続ける、という彼の性格を示した描写だったのかも? それも可哀想ですね。
にしても。
この状況でキングに再び謝罪させようとするからには、作者さんは「エリザベスのための行動なのだからメリオダスは裏切り者ではない」と心底から考えておられるというコトなのですね。
これにも驚きました。まさかまさかと思ってきましたがマジだったんかー…。
勿論、価値観は人それぞれなんですけども。
私の価値観では そう思えません。愛する人のためにしたことであろうと罪は罪です。
最終盤まで この漫画を読んできて、最も意表を突かれ 且つ ザワザワさせられたのは、主人公カップルが己にも罪はあることを認めているように見えない点でした。
メリオダスはまだ、悪いことしてると薄っすら自覚してるようではある。自覚しつつエリザベスのためだから悪くない・異世界に去るという自己犠牲で帳尻を合わせるから許されると自己完結しているように見えます。
しかしエリザベスの方は、そもそも自分たちに罪があるとはカケラも思っていない、気付いてすらいないように見えます。視野と思考の幅が狭い。悪いのは周囲で、自分とメリオダスは それに立ち向かっていると、少女のように考えている節がある。百回以上の人生経験があるはずなのに、視点が「メリオダスとの恋愛至上」に固定されたまま、3000年前から思考停止している感じ。リセットされては必ず彼を好きになるよう呪われてるからか?
勝手ながら私、第一部を読んでいた頃までは、メリは3000年前のエリを救えなかったことを、エリは前聖戦を封印と消滅という事実上の両種族滅亡エンドにしてしまったことを、それぞれ己の罪だと深く悔いていて、今度こそ平和な世界を作ろうと戦う二人を、仲間たちが「いやいや、世界だけでなく今度はあなたたちも幸せにならないと」と支えて助ける話なんだろうなと想像していました。そして世界は平和になって恋愛でもハッピーエンドになるんだと。
エリザベスは、
全然違いましたね(苦笑)。むしろエリザベスの方がヤバかった、というのがここまで読んできての感想です。
この戦いの後リオネスに戻ったら、メリオダスが裏切ってたことはナアナアに無かったことになって、魔神王を倒し聖戦を終わらせた大英雄として民衆に歓呼で迎えられるのかなあ。
続くディアンヌのコメントは「メリオダスは最強」と単純に
ヘタに過去エピソードに触れたら、彼女がメリオダスに恋愛感情を抱いていたことを蒸し返しかねず、正式にお付き合いしている
さてさて。
エリザベス
「メリオダス!!」「待ってるから!!!」メリオダス
「すぐに行く!!!」
エスカノールから始まった ここまでの一連の流れ、なんかちょっとゲームのシナリオっぽいかも(笑)。
思い出したのは『テイルズ オブ ジ アビス』のエンディング直前。
ラスボス戦後に主人公が「自分にはまだやることがある、みんなは脱出してくれ」と仲間たちを促す。仲間たちは一人ひとり無事に帰って来いという想いを込めて主人公に語りかける。最後にヒロインが「必ず帰ってきて! 待ってるから」と言うと主人公は「必ず帰るよ」と返す、という流れでした。流れだけ見たら、ちょっと似てませんか?
思えば、そのゲームの主人公も過去に取り返しのつかない大罪を犯して、その贖罪のため戦っていました。
仲間キャラたちは主人公を支えましたが、罪をナアナアに無かった事にはしなかったし、責任転嫁も許さなかった。その厳しさはプレイヤー間でも賛否両論でした。私は主人公に感情移入していたので、仲間たちは厳しすぎじゃないかと恨めしく思いもしましたが、総合的には それは正しいことだったと思いました。
可哀想だとか仕方なかったんだとかもっと悪い奴に利用されたんだとか悪気はなかったとか無知だっただけだとか、幾つもの言い訳を積み上げようとも、大勢の人の命を奪ってしまった罪は消えることが無い。犯してしまった罪は抱えて生きなければならない。
そのゲームの主人公の親友キャラも、主人公に向かって「世界中を敵に回しても俺はお前の味方だ」と言ったことがあるんですが、それは世界を傷つけてでも主人公を護るという意味ではなかったです。そのキャラは、お前の罪を俺も一緒に背負う、と結論したんですよね。罪は罪と認めたうえで、重荷を分かち合う覚悟を決めたという。
一人では抱えきれない重い罪を、最終的に逃げずに受け止めて、最期まで生きようとした主人公の、哀れだけれど強い姿には胸を打たれました。
今思えば、そうした価値観が心の隅に残っていたから、この漫画の、愛を言い訳に己の罪を認めないところ、主人公が明らかに間違ったことをしても仲間キャラが肯定しかしないところ、恋人のために世界を敵に回す覚悟こそ素晴らしいという結論に至ったところなどに、困惑してしまったのかもしれません。