【感想】『七つの大罪』第281話 妖精王vs.死の天使
週刊少年マガジン 2018年 41号[2018年9月12日発売] [雑誌]
第281話 妖精王vs.死の天使
- 『羽が完全な進化を遂げた時 おそらく』『キミは歴代最強の妖精王になれる』
初代妖精王 が別れ際に遺した彼 への言葉が、今、ディアンヌの脳裏に響いている。 - 「おい… まさかあれって…!?」
戻ってきたスカイマンタ型ホークが、背にゴウセルを眠らせたまま声を震わせていた。 - 「なんて深く
碧 く澄んだ湖のような魔力…!」
ディアンヌの右人さし指を抱えて空中に支えながら、エリザベスも驚きを隠せない。 - ディアンヌは彼の後ろ姿を見つめた。整えられた後頭部に寝ぐせは見たらない。僅かに見える頬の線には男らしい鋭さがあって、以前の柔らかな丸みはなくなっていた。幼い少年ではない、男性の姿だ。見れば見るほど戸惑いは増していく。
(魔力だけじゃない 雰囲気も まるで違う……)(キミは本当に僕の知るキング―――なの?) - すると彼は振り向いたのだ。
「心配ないよ ディアンヌ」「オイラはオイラさ」
そう応えて微笑みを浮かべる。 - 「う…そ ボクの心を読んだの?」
ドキッとディアンヌは胸を鳴らした。彼の妹 が心を読めることは知っていたが。
そして、ああ確かに、彼の まなざしの優しさは大人びはしても変わっていない。 - 「さてと マエル… もう この戦いに終止符を打とう」
彼はマエルに向き直った。 - マエルは無言である。四つめの戒禁を取り込んでからずっと。
顔を完全に隠す面布は、彼の声 が戒禁 に押し潰されつつあることを、端的に表しているのだろう。 - しかし今のキングには聞こえていた。
面 に出ないマエルの声が、大に小に、雨だれのように途切れることなく。 - (邪魔をするな)(私の罪は… 許されない)(何をした 私が何をした……)(憎い…)(邪魔をするな)(エリザベス)(我が屈辱を 苦痛を思い…知れ)(エリザベス…)(憎い)(なぜ私なんだ)(エリザベス)(再び… 一つに集結するのだ)
◆小さく聞こえる(再び… 一つに集結するのだ)という異質な声。これだけはマエルではなく「戒禁」の声っぽい。意識の浸食が始まっている。こわっ。 - 「絶え間なく身の内から溢れ続ける呪詛…」「――案外キミはお喋りみたいだね」
嫌悪も怒りもなく、キングの表情は静かだ。 - 少女たちは新たに驚く。
「エリザベス聞こえた?」
「いいえ」 - マエルは『無言のまま』、無造作に手に光玉を生み出した。
“慈愛の光玉”
ドゴオオォォ…
間髪入れず放ったそれは炸裂、猛スピードで逃げたホークを残し、衝撃波はキングと少女たちを完全に呑み込んだのである。 - 低い唸りを上げて巨大な爆発雲が渦を巻いていた。マエルはそれを見下ろしている。
- (エリザベスは)(死に)(
亡骸 も)(魂も)(私のもの)(に なる) - 「…そうはさせない」
低く、静かな声が言った。 - 一方、エリザベスは安定した床の上で身を起こし、目を
瞬 かせていた。
「あれ?」「ボクたち… どうなっちゃったんだろ…?」
傍にはディアンヌも座り込んでいて、同じように目を白黒している。 - ここは空の上だったはずだ。地上に落ちた記憶もない。なのに
浮遊魔力 を出さずとも しっかりと支えられており、痛みもない。 - 周囲を見回したエリザベスは、ハッと顔色を変えた。
「デリエリ…」
近くの床に胸を朱に染めた魔神の少女が寝かされていたのだ。奥には血まみれのオスローも横たわっている。
崩壊のなか失われたと思ったものが、揃って収められていた。
「一体……これは?」 - 呆然とするエリザベスとは背中合わせに座るディアンヌは、自分がどこにいるのかを漸う把握していた。
- 真・霊槍シャスティフォル
第八形態「花粒園 」
左手を軽くかざして霊槍を操るキングの姿が、ツタめいた模様の這う 透き通った治癒結界 の内側から見えた。 - 彼は結界の外側にいる。なのに、慈愛の光玉を
直 に受けて髪の一筋さえ乱れた様子がなかった。 - 「なんじゃ ありゃ~」
遥か高空へ逃げ延びたホークの声が微かに聞こえる。
外側から見ると、巨人 さえ収めて空中に浮いた球形の結界 は、ツタ模様の巨大な風船か卵のようだ。 - 「!!」
ハッとすると、ディアンヌは ドン ドン と透明な壁を叩く。
「ダ… ダメだよ!! ボクたちを庇えば霊槍が使えな――」 - まさにその時、マエルが俊敏に襲い掛かった。
- ドゴゴゴゴゴゴゴゴ ゴ
- 緑色の巨大な拳に滅多打たれるマエル。
- 佇んだまま指先で術印を結んだキングが、ボロ雑巾のようになって吹っ飛ぶマエルを冷徹な顔で見ている。
- 「!! …霊槍を同時に複数!?」
ディアンヌ、そしてエリザベスも、治癒結界 の中で 唖然と口を開けた。 - 真・霊槍シャスティフォル
第二形態「守護獣 」 花粒園 を背に、巨人王 サイズの豹紋のクマが鋭い爪持つ十本の剛腕を広げている。かつては紐で固く縫い閉じられていた口も今や解放され、隠されていた鋭い牙が狂暴に露わになっていた。
◆ディアンヌがパワーアップしたらドロールみたいに腕が増えるんだ、なんて冗談が読者間で交わされることがありましたが、腕が増えたのはキング(の霊槍)だったでござる。
ドロールやカルマディオスにはインドの神を連想させられますが、これには なんとなくギリシア神話のヘカトンケイルを連想させられました。- マエルは右手を掲げると巨大な大鎌を具現化させる。
“沈黙の大鎌” - だが。それが振るわれるより速く、殺到した無数の刃が大鎌を粉砕しマエルをもズタズタに切り裂いていた。
- 真・霊槍シャスティフォル
第五形態「増殖 」
佇むキングの指先の術印に応じて刃先を揃えて向ける、人の背を越すほどの大剣の群れ。 - 「マエル… オイラはキミのことを よく知らない」
静かにキングは言った。 - その指先が素早く複雑な動きで術を形作る。
一斉に放たれた大剣の群れを、彼の指先は印の形を変えては大胆かつ繊細に操り続けた。一本一本異なる動きでマエルを追い、先回り、回避も逃走も許さず切り刻み続ける。 - 「でもオイラたちには よく似た共通点もあるよね」
荒れ狂う刃に反して言葉は静かだ。
「大切な時間を…」「大切な存在を失ってきたことだ」 - キングは想った。背に護る
少女 との大切な500年を捨てたこと、王として兄として在るべきだった500年を失っていたこと。今も腰で揺れる冑の欠片に宿っていた親友 や、もう動かない愛犬 のことを。 - 「…失ったものは二度と元には戻らない」
奇跡があろうと形を変えることになるだろう。
「それでも今在る大切な存在のために生きることはできる」「…キミにだっているはずだ キミを心から思ってくれる存在が」
◆タルミエルやサリエルや、リュドシエル兄さんがいるさ!
ジェラメットも生きててくれるといいんですが。 - 刃の渦の上にマエルは どうにか抜け出した。
(邪)(魔)(を)(す)(る)(な)
両腕を揃えて突き出す。周囲にキラキラしい光の球が十個ほど輝き出た。一気に腕を開けば、弾かれたように十本の光矢が放たれる。
“救済の矢” - ほんの数十分前のことだ、一本の救済の矢でキングが激痛にのたうち、血が止まらずに死にかけたのは。
だが今や。 - 「もう やめろ」
キングが目を向けた直後。 - ドオッ
- 矢など意味すら持たされない。
極大の力が直上から落下、マエルを中心にした一帯を問答無用で焼き貫いたのだった。 - 一瞬でボロ屑のようになったマエルを見て、少女たちは もはや恐れを抱き、ホークも あんぐりと口を開けて冷や汗に濡れている。
- 真・霊槍シャスティフォル
第一形態「霊槍 」 - マエルを焼いた極大の槍。その形も、他の形態と同じく今までとは異なっていた。穂先は一輪の鬼百合の花のようだ。めしべに当たる部分が巨大な刃となって突き出している。
- 第八形態「
花粒園 」、第二形態「守護獣 」、第五形態「増殖 」、そして第一形態「霊槍 」。霊槍の四つの形態が同時に現れ、キングの周囲に配備されていた。
二つの形態の同時使用ならば、まだ羽の無かった頃にも行っていたものだが。今は四つ、それどころか十の形態 全てを同時に使えるのかもしれない。 - 「復讐は憎しみを育てる養分にしかならない…」
哀れな有様のマエルを見下ろし、キングは静かに言った。
「…だからオイラはキミを殺さない」
(これでいいんだよね ヘルブラム オスロー) - オスローはマエルに殺された。だが、その怒りに囚われるまい。
相手の心を見極めて、むやみに殺さない。
これは刻還 りの試練の際、グロキシニアの前で誓ったことでもある。
力がなければ難しいことだが、今ならそう出来る。 - ただし。それは理不尽に屈して「戦わない」ということではないのだ。
- 「それでも気が済まないのなら何度でも相手になろう……」
キングは告げた。
「この妖精王ハーレクインが」
◆キングさん「かかってこいや」のポーズ(笑)。 - 焼け焦げたマエルはフラフラと小さく揺れていたが、
「ア゛…」
ビクンと大きく体を震わせると、面布を被って以来 初めて声をあげた。
「オ゛…」 - 「マエル…!」
異変を感じてエリザベスが顔色を変える。 - 「やっぱり…………」
静かに呟くキング。 - 「ア゛…」「ガアアアァ~~!!!」
全身を不気味に歪ませてマエルは絶叫した。 - 遠巻きに見ていたホークはビクッと震えて恐れをなす。
「今度は何よ何よ~~!?」「あいつ急に苦しみ出しやがったぞ!!」 - その背に載せられたゴウセルは、未だ純潔の香の呪いに囚われていた。
- 「ナージャ お願いだ… 俺を行かせて」
夢幻の闇の中で、仰臥したゴウセルは懇願していた。己に馬乗りになった愛しい少女に向かって。
「今… 仲間が―― 俺の大切な仲間がピンチなんだ…」「俺がマエルを酷く傷つけてしまったから―――」 - 「ダメ……」「どこへも」「行かせない」
無情に少女は応えた。
「ゴウセル… あなたは私の純潔と心を奪ったわ」「それが重い枷となり あなたの身体を永遠に縛り続ける」
◆「心を奪った」という言葉には比喩なしの「心臓を奪った」意味も重ねることが出来ますね。 - 「永遠…に?」
ぎょっと目を見開いたゴウセルに「後悔しても手遅れよ…」と告げると、ナージャは抑え込んでいたゴウセルの両手首に力を込めた。泥に沈むように、彼の身体が闇に押し込まれていく。 - ゴウセルは恐怖と絶望の悲鳴をあげ…はしなかった。
「嬉しい!!」
笑ったのだ。あどけない子供のように。 - 「え?」
驚くナージャの下でゴウセルは半身を起こした。 - 「俺は何一つ後悔なんてしていない」「たとえ時間が戻っても 俺は何度でもキミと出会い同じ道を進む」
ぎゅっ…と少女の首にしがみついて彼は愛おしげに笑う。
「キミは俺の中で唯一の特別で大切な女の子なんだよ」「キミへの想いを ずっと背負って生きていたい」 - 夢幻の闇は失せ、今や柔らかな光が二人を包んでいた。
ここは「純潔の香」が創り出した精神世界。このナージャもゴウセルの記憶から引き出された幻なのだろう。彼を ここに閉じ込めるための。
「………………」
しかし抱きしめられて彼女は頬を染めた。ゴウセルの背に手を回して抱き返す。
「ありがとう ゴウセル…」
そう言ったナージャは、嬉しそうに微笑んでいた。
◆「純潔の香」が創った幻のはずのナージャが、後半は まるで本物のような反応をする。本物の彼女の魂だったのだと解釈するのもアリでしょう。でも個人的には、このナージャはあくまで幻であり、反応が変わったのは、ゴウセルが「純潔の香」の呪いから夢の主導権を奪い取ったから…精神世界で打ち克ったからだと解釈しています。
「ナージャを穢した罪」をゴウセルは受け入れて喜びと見做した。そのため純潔の呪いが壊れて、悪夢(見せられていた夢)が望む夢(自分で見る夢)に ひっくり返され、己の精神世界の支配を取り戻して目覚めることが出来たのだと。 - 「ガぎ…あ゛あ゛」
- 歪み膨れ捩じれるマエルを高空から見下ろすホーク。その鼻の両穴に、不意に指が突っ込まれた。
「プガ!?」 - 彼の背で目覚めたゴウセルが身を起こすため伸ばした手が、まるで取っ手のようにホークの鼻を掴んだのだった。
- 「ゴッ」「ゴウセル!?」
プゴッと鼻を鳴らして驚く。
「残飯長… 一つ俺の願いを聞いてくれる?」
まるで全ての状況を悟っているかのように、寝起きとは思えぬ様子でゴウセルは頼んだ。 - その眼下、悶え苦しむマエルの前で、
花粒園 の中からディアンヌが尋ねている。
「ねぇ キング… マエルはどうなっちゃうの?」
「限界がきたんだ」
キングは答えた。
「彼はおそらく もう助からない… <四大天使>とはいえ相反 する戒禁の力を四つも取り込んでしまったんだから…」
全身があらぬ形に曲がり凹み膨らみながら細かな塵となって端から千切れ、面布に並んでいた戒禁の紋様も歪み混じり うねっている。
「体力も魔力も尽きたマエルは戒禁に蝕まれ… 消滅する」 - 覚醒したキングに抵抗したことで、マエルは体力も魔力も使い果たした。結果、己の内の戒禁を抑え込んでおくことが出来なくなったのだ。
彼が四つめの戒禁を取り込んだ時点で、最終的にこうなることは予想がついていた。彼の自我は完全に消え、抜け殻となった肉体は歪みながら周囲への攻撃と破壊を続けるのかもしれない。
それはもう、マエルとは言えない。 - 「マエル…!! 目を醒まして!!」
結界 の透明な壁に両手を押し当ててエリザベスが叫んだ。 - 「エリザベス……………」
痛ましげに見下ろすディアンヌ。自分にとっては恐ろしい怪物だが、エリザベスにとっては、こうなってさえ旧友なのだ。 - 「ガガ」
- 歪み叫ぶマエルの10数m頭上にホークは
停止 した。
「あいつの真上まで来たぜ? そんで何を…」 - スッ…とゴウセルは立ち上がる。
- 「はい?」
呆気にとられたホークの背から、ゴウセルは水に飛び込むように頭を下に身を躍らせた。眼下のマエルめがけて。 - (マエル)
折れ溶けて失われた右手は内蔵神器も壊れて役に立たない。残る左手に闇色の光を まとわせると両腕を軽く広げた。
(どうか もう一度与えてくれないか)
マエルの頭に手のひらが触れる。
(キミを救うチャンスを!!!)
「侵入 」
闇色の光がマエルの頭部全体を包み込んだ。 - そして、ゴウセルの意識はマエルの
精神 へ潜水 する。 - 次回「ゴウセルvs.マエル」
汗ひとつかかず突っ立ったまま指先だけで敵を圧倒する様は、まさに初登場当時の強キャラ感への回帰で、すごくカッコよかったです。
また、心が完全に読めるようになったのは驚きました。
エレインもゲラードもグロキシニアも(ロウを殺したとき彼の心の声を聞いた描写がある)、明瞭に ひとの心を読んでいたのに、キングだけ「苦手」で、漠然とした感情を読み取ることしかできていなかった。
個人的には、能力が足りないというより彼の心の問題だったんじゃと思っていたので(グロキシニアの器に宿って彼の魔力使い放題だったときも読めてなかったから)、彼の中の色々な意味の障壁が取り払われて覚醒に至ったんだろうなと思いました。
キングの元ネタの一つと思われる妖精王オベロンは、心を読み人の罪を見通す力を持っています。この漫画の妖精族に「心を読む」種族特性があるのは、そうした伝承を踏まえてのことでしょう。
メタ的に見るなら、今までキングが読心を苦手としたのは「便利な力を持たせすぎると物語がシラける」からだと思われます。
その制限が取り払われたのは、やはり、物語が いよいよ終幕近くに至ったからかと。全能力解放して最終決戦突入、ですね。
ちなみにエレインを例にとると、小説版によれば「集中することで相手の心の声を聞く」というのが基本のようです。本編漫画によれば かなり遠くの心の声も聞きとれる模様。
ドロールの魔眼でも心が読めるらしいですが、やはり「集中して」読み取る感じでしょうか?
心を読むと言えばゴウセルこそ
なお、メリオダスの心はエレインにもドロールにも読めませんでした。
ゴウセルはメリオダス本人の許可を得て記憶を読んだことはありましたが、それすら不明瞭だったものです。
きっと覚醒キングにも読めないんでしょうね。
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霊槍の変化
キングの霊槍の形状が、またまた変化しました。
これで、初期のノーマル版、一段階目パワーアップの真・霊槍版、完全パワーアップの覚醒版の三パターンあることに。
それはそうと、真版も覚醒版も同じ「真・霊槍」の呼び名なんで、ちょっと判りにくいですね。(^^;) 「超・霊槍」「神・霊槍」とか呼び名が変わるかと思ってた(笑)。
初めて真・霊槍版「
>考えてみたら、
恥ずかしかったんでボカした書き方してますが、口が縫い閉じられているのは一種の封印(の象徴)なんじゃないかな、完全パワーアップしたら口が開いて「狂暴性解放!」になるんでは、という中二な妄想をしていたワケでして(^^;)ゞ。
なので今回、完全パワーアップした
こうして並べてみると、初期の霊槍は まさしく「子供の おもちゃ」のカタチだったんですね。可愛くて好きだったけども。(大槍のデザインは、初期版が最も秀逸だと今でも思います。)
霊槍の形態を複数同時に使用するのは、羽無し時代のキングも行っていました。
死者の都でバンを「
けれど、この頃は二つ同時に使うので精いっぱいだったのだと思います。ディアンヌが やたら驚いてましたから、同時使用は滅多にやらなかったんでしょう。
今回は四つ同時。
多分、やろうと思えば十の形態全て同時に使えるのでは?
霊槍の十の形態といえば。
あと一つ、第九形態だけが未公開のまま残っていますね。
物語の終幕までに明かされるでしょうか。
最後の最後まで隠されていた形態がどんなものか、ワクワクして待ちたいと思います。
そして第七形態「
「うおっ まぶしっ」な目潰しどころではない、なんかスゴイ眩しいものに進化しているのか…!? 夜も昼に変えちゃうくらいの。それとも、また全然違う感じなのかしらん。
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リジェネレート
前回、瓦礫の中に落ちて消えていったデリエリとオスローの亡骸。仕方のないことだけど切なく思っていました。
赤や灰の魔神の例を見る限り、魔神族の死体も腐らない。<十戒>ほど頑丈なら地上に落下しても砕けないかもしれない。デリエリの遺体は 概ね形を保って地上に落ちるんだろうか? オスローはきっと粉々になってしまうんだろうな。
…などなど考えてたんですけど、そんな心配は無用でした。
キングが遺体を回収してる! オスローだけでなくデリエリまでも。
凄いし優しいな、と思うと同時に、少し不思議にも思いました。
かつてのキングには「遺体を保存する・回収して葬る」概念がなかったように見えたからです。かけがえのない大切な親友のヘルブラムの遺体すら、二度に渡り、亡くなった場所に放置して立ち去っていました。(手を組ませて姿勢を整えたり、胸の上に形見を置いたりはしましたが。)
なので、妖精族には遺体を葬る風習がないんだろうなと思ってた。
小説版では、妖精王の森に侵入した人間が森の中で死ぬと、エレインは決まって
「大丈夫」「あなたが死んでも、この森の命になって生き続けられる――」
と唱えていました。埋めることなく放置して立ち去ります。
多分それが妖精族の弔いの言葉であり、風習なのだと思っていました。
葬儀も墓標もない。自然のまま森に還すという。
妖精族が植物から生まれることを考え合わせると、この死生観は納得がいくもののような気がします。
しかし今回、キングは仲間の遺体を回収しました。
大地に落ちて砕けて自然に還るままにすることを よしとしなかったわけです。
この変化は、バンがエレインの遺体を保存して花で飾っていた様子を見たからかもしれないし、重なる仲間の死が、遺体を手放し難くなるほど耐え難くなってしまった、ということなのかもしれません。
ヘルブラムの形見の冑も、一度は遺体と共に置いていったのに、最終的にはアクセサリーに加工して常に身につけるほどに変化していますから。
そんなことを考えたりする一方で、遺体が「
「
羽無し時代は「完全回復に かなり時間がかかる」ものでした。
しかし覚醒した今は、効果も飛躍的に上がっているのではないでしょうか?
もしかしたら、デリエリやオスローが
無論、キングが言った通り「失ったものは二度と元には戻」りません。しかしデリエリもオスローも死んだばかり。万が一「まだ辛うじて息があった、仮死状態だった」ならば…。
まあ、無いでしょうけども(^^;)。デリエリは心臓を潰されちゃってるしなー。
予想外の回収を見て、チラリと期待しちゃいました。
もしデリエリが復活したら、<蒼天の六連星>と「大切なひとを失う悲しみ」について語り合ってほしいですね。今度こそ無視はせずに。
妄想です。
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復讐と赦し
キングは「復讐者」として登場したキャラでした。
それが今回「復讐は憎しみを育てる養分にしかならない」と結論した。
復讐者が、葛藤を経て精神的成長を遂げ、
その角度で見れば、キングというキャラクターの物語は美しく完結したと言えるでしょう。
ただ。
理屈でそう思っても、キングの「復讐は憎しみを~」の台詞を読んで、どこか納得できない、モヤッとした気持ちが湧いた自分がいます。(;^ω^)
復讐は そうまで否定されねばならないことなんだろうか? 憎しみしか育てないか? と、埒もなく反抗じみた考えが浮かんでしまうのです。
別に復讐を推奨したいわけじゃありません。逆恨みや「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」レベルに拡大した復讐は忌むべきものでしかないとも思います。
復讐はイケナイと言われれば そうだねと一般論的に思いますし、世に溢れた「復讐を否定し、赦しを礼賛する」物語の数々も、特段引っかかることもなく楽しんでいます。(最近ではアニメ『プラネット・ウィズ』が面白かったです。)
なのに、この漫画ではモヤッとしてしまう…。
考えるに、「赦しの大切さ」を結論するための
一つはヘンドリクセンのエピソード。
二つめはロウのエピソードでした。
ヘンドリクセンは どこか子供っぽい面があって可愛らしい
けれど、彼の「罪への向き合い方」は、どうにも好きになれないです。
謝罪より先に己の哀れを訴えて泣いたこと。自分の都合(ドレファス救出)を免罪符に掲げて、怒る人々に謝罪どころか目を合わせることすら ろくにしなかったこと。マーガレットの護衛を贖罪に代えるかと思いきや、逆に彼女に絡んで(甘ったれて)自分を赦させたこと。そのうえで、リュドシエルに心酔して、器となったマーガレットを 事実上 見捨てたこと。それらへの罪悪感すら希薄に見えること。
彼の罪は「心を操られてしたこと」だから、全ての責任があるわけではない。それでも無関係とは言えないと私は考えます。
しかるに、彼は
ヘンドリクセンを赦せと、ジェンナやメリオダスはキングに言いました。
理由は「事情があったから、可哀想だから」です。
罪に向き合ってもいない(ように見える)者を、可哀想だから赦せと言う。対して、被害を受けた側の苦しみには共感や同情がされません。上辺で「お前の気持ちは解る」と言うだけ。
頭ごなしに「赦すことこそ正しいのだ」と一面の正義を押し付けられたように感じて、素直に受け取れませんでした。
ロウのエピソードは、あらゆる点で納得し難かったです。
ロウは復讐者で、それこそ「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」レベルに怒りと被害者意識を拡大させて虐殺を行った人物でした。
それが土壇場でゲラードを庇って自分の仲間をも殺した。
虐殺を成し遂げたなら、血塗られたものであっても「復讐という大義」は成立したと思います。けれど仲間すら殺した時点で、ただの身勝手な殺戮になり果てました。どの角度からも肩入れが出来難くなった。
復讐は「間違い」だが、女のために仲間を裏切って殺すのは「正しい」のか? 可哀想な事情があれば「赦されるべき」なのか?
死体の山の中で赦し合い、歪な愛を語らうロウとゲラードには、申し訳ないですが、愛という免罪符に狂った身勝手さと異様さを強く感じたのでした。
このエピソードにおいて、彼とバンは重ね合わされていました。冤罪のバンにキングが復讐しようとしたのは間違いだったから、ロウも赦すべきという理屈です。
けれど彼とバンは事情も立場も全く違う。バンは冤罪でも、ロウは拭えない罪を犯しています。
その点でも、無理あるこじつけで「赦し」を強制された感じがして、納得し難かったですね。
これら二つのエピソードに感じたのは、「被害者」への冷たさです。
親友を失って一週間のキングに「お前の気持ちは解るが怒るな、赦してやれ」と簡単に言える冷たさ。
死体が山になっているのに「ロウはゲラードに愛されているから赦さねばならない」と結論する冷たさ。
キングやグロキシニアの「失った怒り」は悪い感情と定義され、その感情に寄り添って悲しみを癒す存在は現れず、死者たちは顧みられることがありません。哀れまれるのは加害者ばかりです。
なんとゆーか。
殴られたので怒ったら、「加害者には事情があるのだ、怒ってはならない、赦しなさい」と頭ごなしに説教された感じ。理不尽を感じます(苦笑)。
まあ、でも、この漫画の「復讐と赦し」のテーマは今回で完結なんですよね、多分。
結論までキッチリ描かれきったことは、よかったと感じました。
ちょっと溜飲が下がったというか、笑った点もありました。
今回のキングの言動を見るに、命を取りさえしなければ、瀕死になるまで暴力を振るおうとも「復讐」したことにはならない、というのが この漫画の定義らしい?
じゃあ、殴られたとき気が済むまで殴り返すのは許されるんだ。怒ったり命を取ったりしない限りは。安心しました(笑)。
にしても。
「復讐はいけないことだ、復讐しても虚しいし何も得られない、赦しこそ正しい」という価値観、いつから流行るようになったんでしょう。最近のような気がします。
『恩讐の彼方に』でも赦すけど、それこそが正しいからという教科書的な決めつけではなく、加害者の「他を捨てて一生をかけて贖う」という姿勢があってこそで、加えて被害者遺族の見極めんとする想いが、長い長い時間を経て結実した上でのカタルシス…だったと思う。
前世紀や それ以前の物語には、復讐を否定しないものも多々あったと思います。『モンテ・クリスト伯』とか、それを下敷きにした漫画『銀色の髪の亜里沙』とか。
復讐者たる主人公は闇落ちしているわけでも悪でもなく、復讐は正義として果たされる。時代劇の『必殺』シリーズも近いのでしょうか。
「赦してくれ」と命乞いする加害者はいても「赦してやれ」と お説教するキャラは現れない。
そういう価値観もあるのですよね。
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覚醒キングの闘級は?
覚醒したキングの闘級は、どのくらいなんでしょうか。
戒禁を四つ吸収したマエルの闘級は「20万以上」。
ぼやけた表現ですが、21~23万くらいの範囲かなと想定します。
覚醒キングは、そんなマエルを汗ひとつかかずに圧倒しました。慈愛の光玉や救済の矢を避けることなく受け流して、髪の毛一筋 乱さずにいます。
マエルを圧倒的に凌駕している。
よって、25~30万くらいでは? と推測したいところ。
実際はどうなんでしょうね。
闘級は多分、11月頃に発売らしい『キャラクターガイドブック<ペア
さて。
今回のキングのパワーアップで印象的だったのは、喜ぶ声だけでなく、彼がマエルの闘級を凌駕したことに激しい拒絶を示す声も、国内外ともに 今までになく大きく聞こえてきたことです。
曰く
「今までずっと弱かったキングが現時点のメリオダスより強くなるのはおかしい」「樹なんてものを力の源とする妖精族ごときが、神である魔神族や女神族を凌駕するなんておかしい」「初代妖精王グロキシニアは5万程度の闘級だったのだからキングがそれ以上になるのはおかしい」
「アーサーが聖剣を抜いた時と同様に、圧倒したと見せかけて、次回でボロ負けするに違いない」
「マエルはキングがパワーアップする前に弱体化していた。羽の数が四枚に減っているのが証拠だ。だからキングの闘級は10万程度がせいぜいだ」
などなど。
それだけ、世界中の読者がビックリしたということなんだなあと思いました。
今回、ボロボロにされたマエルが苦しみ始め、
「戒禁の力を四つも取り込んでしまったんだから…」「体力も魔力も尽きたマエルは戒禁に蝕まれ…消滅する」
とキングは解説しました。
これを『マエルは元々 戒禁のせいで弱っていたということだ。だからキングが倒したわけじゃない』と解釈する向きもあるかもしれません?
でも、反対ですよね。
キングに打倒されたからこそマエルの体力と魔力は尽き、戒禁の拒絶反応を抑えられなくなった、という意味なのだと思います。
次回 第282話のあらすじ文にも
「キング、マエルを撃破!! 折れた精神が戒禁に蝕まれ、限界に至るマエル」
とあるので、この解釈で間違っていない…と思うのですが。 どーでしょう。