【感想】『七つの大罪』第295話 集結するものたち
週刊少年マガジン 2019年 6号[2019年1月9日発売] [雑誌]
第295話 集結するものたち
- 一輪の百合を思わせる巨槍が<原初の魔神>の盾に激突し、未だ滞空して
圧 し続けている。 - 「これは…」「キングの
霊槍 …!!?」
四方に放たれる魔力風と舞い飛ぶ瓦礫のなか、マーリンも驚きを隠せない。 - 「…だとすれば本人はどこに?」「ゲホッ」
エスカノールは起き上がったものの血にむせる。 - 「おそらく遠隔操作による攻撃だろう」
周囲を軽く見渡してマーリンは結論した。槍は的確に動いているが、キングの姿は…気配も間近には…確認できない。
「完全な妖精王の力に目醒めたか… たいした進化だ」
◆「完全な妖精王の力に目醒めたか」と、まるで それがどんなものか元より承知してたみたいな言い方をマーリンがしてますが、初代妖精王 すら こんな力には目醒めてなかったですよね? 歴史上初めての事態のはず。「これが完全な妖精王の力なのか…」みたいな台詞回しの方が違和感なかったかも。 - 「<七つの大罪>か………!」
ゼルドリスは小高い場所から戦場を見下ろしていた。巨槍から視線を外し、夜の帳 を越えた彼方…巨槍の飛んできた方角を見やる。
「距離は定かではないが 北から複数の巨大な魔力が この場を目指している………」
気配を探っていたゼルドリスの表情が ピク… と動いた。
「!!! ……これは」 - キングたちは未だキャメロットへの途上、遥か離れた地の空に在った。
- (少し掴めてきたな……)
先頭を飛ぶキングは静かな表情で思考を巡らせている。
身体は ここに在って高速で飛びながら、同時に遥かキャメロットの様子をも把握して霊槍で戦っているのだ。
(遠隔からの操作だと一度に一つの形態しか取れないか……)(何より魔力消費量が大きすぎる…)
口を開いて呟いた。
「…早々にカタをつけるしかないか」 - <原初の魔神>の構えた盾に ギギギギ とたゆむことなく巨槍は食い込んでいく。
「ぬ…」「おう!!!」
押し切られる寸前に、魔神は闇の双剣を振るって巨槍の穂先を三つに断ち割った。 - が、たちまち巨槍は
解 けて渦を巻く。
エスカノールやマーリンも唖然と見上げる前で、それは細かな刺持つ太い茎を伸び上げ、塔ほどもある高みの先端に巨大な蕾を付けた。 - 真・霊槍シャスティフォル
第四形態「光華 」
◆ちび羽時の真・光華 はラフレシアの化け物みたいでしたけど、初期に近いイメージに戻りました。やっぱり光華 はコレがいいですね。 - 牙状の突起を びっしり縁に並べた花弁が開き、内部に光が収束していく。
- 「まずい!!」
マーリンは指をパチッと鳴らして自分とエスカノールを瞬間移動させた。 - <原初の魔神>も後ろに跳んで逃げようとしたが。
- 「逃がさない!!!」
より速く、彼方のキングは伸ばした手に力を込める。 - ボズッ
- 怪花から
光線 が発射された。
地表にぶつかってドーム状に広がった光は、王城を崩壊させ、のみならず城下町の一部までもを粉砕していく。 - 「なんという威力だ…!!」
逃れた上空から見下ろすマーリンは その有り様に驚くばかり。
その隣に浮かぶエスカノールは「生意気ですね…」と傲慢に呟いている。 - 「! … 何…」
しかし、彼方のキングは驚いていた。光線 の一部が消失し、肝心の<原初の魔神>に当たらなかったことを感じたからだ。 - <原初の魔神>の頭上に、闇の翼を広げたゼルドリスが割り込んでいた。その全身から強い魔力光が立ち昇っている。まさか
光線 を自らの身体で受け止めたというのか。しかしダメージを負ってはおらず、むしろ回復術を受けたばかりのように力に満ちているではないか。
…どういう仕組みなのかは判らないが。
「攻撃が… 無効化された!?」 - 父から借り受けた魔力「魔神王」で己が身に受けた
光線 を回復魔法に変換させたゼルドリスは、背後の<原初の魔神>に命じた。
「<原初の魔神>よ こいつは俺が引き受けよう」「お前はエスカノールとマーリンを仕留めることに全力を注げ!」
◆ゼルドリスが認識している<七つの大罪>メンバーの個人名は、メリオダス、ゴウセル、マーリン、エスカノールの四人だけ…ですよね今のところ。キングの霊槍を見ても「<七つの大罪>か…!」としか言わんかったし。キングたちの名前を覚える(知る)ことはあるのかな? - 「…っ」
マーリンは悔しげに息を飲む。
キングの介入で助かったと思ったが、そう甘くはないらしい。 - キングVS.ゼルドリス、マーリン&エスカノールVS.<原初の魔神>。
二組の超然たる戦いを、ギルサンダーとヘンドリクセンは慄然と見下ろしていた。 - 「なんという戦いだ……」
そう呟くギルサンダーは、未だ うずくまって苦しむマーガレット…彼女を器としたリュドシエルに付いており、ヘンドリクセンは二人から数歩離れて立っている。 - 彼らがいるのはメリオダスの籠る繭が貼り付いた壁の真下だった。暗黒領域こそ<原初の魔神>に消し飛ばされたものの、この繭からは己を護る力が発されているのかもしれない。どんなに激しい攻撃の中でも、ここだけは安全地帯のように残されているのだから。
- 「…ここが巻き込まれるのも時間の問題か」
それでも永遠に安全ではないだろう。ヘンドリクセンは若者に顔を向けた。
「ギルサンダー 今のうちに逃げるんだ!!」 - ギルは顔色を変える。
「なっ…!? こ…断る」「こんな状態のマーガレットを置いて逃げるつもりはない!!!」 - 憐憫と迷いの混じった目でヘンドリクセンはマーガレットを…今や足手まといとなり果てたリュドシエルを見つめた。
- 「う…うう マエルは… 生きていた」「あいつが不浄の魔神族などに… 殺されるわけがないと思ってた」
うずくまったリュドシエルは むせび泣いて呟き続けている。
「…ああ」
ユラ、と起き上がろうとしたが立てず、膝で這って、ヘンドリクセンの胸元をガシッと掴んだ。
「ヘンドリクセン… 私をマエルの下へ連れて行ってくれ」 - 「リュドシエル様……………」
両手で縋られたヘンドリクセンは、されるがままで戸惑う。 - 「後生だ……!!」
ぐしゃぐしゃの顔でリュドシエルは泣き笑った。
「あまりのショックに飛ぶことも… 歩くこともままならない」「フ… 無様だろう? 笑ってくれていい… だから… お願いだ」 - 「……………お可哀想に」
ヘンドリクセンの目に浮かぶ憐憫、そして迷いが強まる。
右手を伸ばして長い髪をサラ…と掻き分けて差し入れ、涙で濡れた頬に…その奥の こめかみに そっと触れた。
そこで。 - “
浄化 ” - 触れた手から眩い聖光を放ったのだ。
- (!!?)「あ…… …が!?」
リュドシエルの目の女神族の紋様 が浮き出し、歪んで揺れた。 - 「く…おおおお!!!」
鬼の形相で力を込め続けるヘンドリクセン。 - 「……!?」
事態に付いていけず、ただ腕をかざして目を庇っていたギルサンダーは、光が収まると同時にドサッと腕の中に倒れ込んできた暖かな重みを受け止めた。
「マーガレット……!?」
彼女に意識は無い。 - ヘンドリクセンは右手を差し伸ばした姿勢のまま、ゼエッ ゼッと荒い息を吐いていた。時折むせている。
- そして傍らの床の上に、四枚の純白の翼を生やした男が うつ伏せに倒れていた。
- 「つ…翼の生えた男?」
ギルサンダーは戸惑う。床に広がった髪は長く顔は見えないが、体格から見て男だろう。かなりの長身だ。2m以上あるかもしれない。
「マーガレットの体から分離…したのか?」「じゃあこれが…」「<四大天使>リュドシエルの本体…?」 - 未だ荒い息の整わぬヘンドリクセンが「…ああ」と応じた。
「“浄化 ”は魔を滅するのみの技に非 ず……」「ハアッ ハ…ッ」「泥水から不純物を排除し真水 に戻すことも可能だ…」
◆浄化 が生活に使える便利魔法に。こんな便利な術を教えてくれた女神族にドルイドたちは感謝の念しかなかったでしょう。
リュドさんが「不純物」扱いになってしまった(^^;)。浄化 って光属性の力で闇属性の魔神を消滅させる術のはずで、それが どう泥水から不純物を取り除くコトと繋がるのか…。泥は闇と関係しないのに。なんか よく分かんないことになっちゃいましたね。
メタ事情を想像するなら、ザラトラスがドレファスからフラウドリンを追い出したエピソードを なぞろうとして、土壇場で女神族に浄化 が効くのは おかしいと気付き、『泥水を真水に変える』設定を追加して誤魔化したのかな。
こうなっちゃうと、「浄化」という言葉から連想できることは この呪文一つで何でもできます、なんてことにさえなりそう。毒状態の回復とか 悪人の改心とか 除霊とか 空気中から花粉を取り除くとか(苦笑)。 - ヘンドリクセンは続ける。
「もっとも 彼本体が ここまで衰弱していなければ不可能だったろう…」「下手を打てば彼は私を警戒し二度と近づけなかったはず」
◆リュドシエルを衰弱させたマエルショックは予想外のアクシデントです。あれ、じゃあヘンディは いつ・どうやって浄化 を仕掛けるつもりだったんでしょう? リュドが戦闘で瀕死になったら、治癒術を掛けるフリをして裏切る予定だった? - ギルサンダーの頬が紅潮し、じわりと目が潤んだ。
「ヘンドリクセン… あなたは初めから…こうするつもりで?」
なんということだろう。自分は、そして叔父ドレファスも、彼を誤解していたのだ。彼は最初からリュドシエルなど崇拝しておらず、マーガレットを救うために道化のふりをしていただけだったというのに。
◆そうかなあ。 - 「一か八かの賭けはうまくいったよ…」「さあ ギルサンダー マーガレット王女を連れて逃げるんだ…」
- ギルサンダーの目から涙が零れ落ちる。
「あなたは どうする気だ!?」 - 「私は… 罪を犯しすぎた」「ここに残るよ…」
ヘンドリクセンは倒れ伏す女神族の男に目を向けた。
「…それに彼を放ってはおけない」 - ギルサンダーに目を戻して微笑む。
「最後に―― 父上からの伝言だ」「「いつも見守っている」……と」
そして声を改めて促した。
「さあ 行け!!」 - ぎゅっと目を閉じて嗚咽をこらえると、若者は抱きかかえた恋人ごと身を電光に包んで飛び去ったのだった。
◆魔術士ではない人間のギルサンダーが電光まとって空飛ぶの、何度見ても一瞬「!?」となります。可能距離・高度・持続時間は どのくらいなんでしょうね。 - 満足げに見送るヘンドリクセン。
- 「ヘンド…リクセン!!」
傍らの床から怒りに震える声が低く響いた。
「私を よくも…謀 ったな…!!」 - 「…覚悟ならできています」
- 身を起こしたリュドシエルは、皆まで言わないうちに返されて「!!」と驚く。
- ヘンドリクセンは己の心臓の上に手を当てて微笑んでいた。
「どうか この魂と命尽きるまで私を器として お使いください」
治療を施さぬままの傷から流れた血は半ば乾いて、顔色も悪い。しかし微笑みは満たされていた。まるで高潔な殉教の徒のように。
(…さらばだ ドレファス)
「私は死を畏れていません… なれば あなたも存分に力を使うことが出来るはず」 - リュドシエルのこめかみに血管が怒張した。
- ゼルドリスは霊槍と戦い続けていた。
襲い来る長剣の群れ を、神速の斬撃で全て受け弾く。
「無駄な抵抗は やめておけ… お前たちに勝機はない!!」
マエルショック直前の有様を忘れたように傲然と言い放った。 - 彼方のキングは印を結んだ両手を素早く動かした。たちまち長剣の群れが渦巻いて
解 ける。 - ハッとして振り向こうとしたゼルドリスは顔面を重い拳に打たれた。
豹紋の巨熊 の六腕に成すすべなく打たれ続ける身体は、まるで跳ね返り続けるピンボールの球のようだ。 - 「くっ」
たまらず、闇の翼を開いて逃れる。
借り受けた「魔神王」の力では、物理ダメージは反転できない。 - 「…これでも無駄な抵抗?」
ゼルドリスに聞こえはしないが、彼方のキングは澄まして微笑んだ。 - 対してゼルドリスは霊槍の主に聞こえていると確信しているのだろうか。口元を血で汚しながらも不敵に嗤って揶揄したのである。
「そろそろ気付いてもいい頃だぞ……? <七つの大罪>」「ここへ向かっているのは お前たちだけではないことに…!!」 - 「…何」
キングはハッとする。キャメロットに集中していた意識を広げた。 - 奇しくも、まさにその瞬間、キングの後方に付いてキャメロットへ急ぐエリザベスやディアンヌは気付いたのである。
- ハッとするエリザベス。
「!」 - ピク…と反応するディアンヌ。
「?」 - 「ねえ エリザベス …気付いた?」
「なにかしら……? キャメロットへ向かって私たちの ずっと前を進む この気配は…」 - 「まさか……!!」
マエルが足を止めた。たちまち最後尾に遅れた彼を、スカイマンタ型ホークの背からゴウセルが振り返る。
「どうしたマエル?」 - マエルは翼を鳴らして飛行を再開した。
「ゼルドリスは最初から こうなることを想定していたのか!!」「凶気の淵にあった私 いや…エスタロッサが手当たり次第に回収し取り込み 耐えきれずに自滅することまで…」
◆慣用句の「狂気の縁(精神的に正常と異常の境界ギリギリの状態)」ではなく、音は同じだけど造語の「凶気の淵(攻撃性にドップリ溺れた状態?)」を使っているトコにポイントが。 - 「な… なんの話?」
戸惑うディアンヌの隣で、エリザベスが愕然と表情を強張らせた。
「それじゃ… この気配の正体は――」
「マエルから出た四つの戒禁!!!」 - マエルの精神世界から追い出された「慈愛」「純潔」「真実」「沈黙」の戒禁は、今この時も闇に包まれた一塊となってキャメロットへの空を飛んでいる。
- マエルは語った。
「戒禁とは魔神王の力の欠片 一つに集まるほどに力を増し 自我すら持つようになる…」「…そして 自我を持った戒禁は互いに強い引力で引き寄せあう」
「今 キャメロットでは メリオダスが五つの戒禁を取り込んでいるはずです…」「戒禁たちが目指す先は それ以外に考えられません」 - 「そ…それって超やっべーんじゃね!?」
ホークが鼻息を吹いた。 - 「うん 超ヤバい」と、背上のゴウセル。
◆ここのゴウセルの反応、「心が無かった」時代みたいな「実も蓋もなさ」ですね(笑)。 - 「止める手段は?」
訊ねたエリザベスに
「……………ありません」
長い沈黙を置いてマエルは答える。 - エリザベスは表情を不安と焦りに歪めた。
「そんな… 戒禁が全部そろえば…」「…メリオダスは本当に魔神王になってしまうわ!!!」 - 「それなら大丈夫だよ!! …たしかマーリンがメラスキュラの戒禁を持ってたはずでしょ?」
そのマーリンは よりによってメリオダスのいるキャメロットで戦っているが、あの『反則』な彼女のことだ。易々と戒禁を渡すはずがあるまい。
楽観を決め込んだディアンヌの取り成しに
「そ… そうね」
と幾分の余裕 を取り戻したのだが。 - 「…………」
マエルの表情は浮かない。苦く言葉を落とした。
「もう手遅れでしょう…」 - マーリンはエスカノールと共に<原初の魔神>に痛めつけられていた。
「!?」
爆煙のなか荒い息を吐き時折むせていたが、己の傍らにハッと顔を向けて顔色を変える。何もなかった空間に光りながら試験管が現れたからだ。 - 呪印の描かれたコルク栓で封じられた試験管には、一匹の小蛇…メラスキュラが収まっている。
- (隠匿していたメラスキュラが …勝手に!?)(違う… 戒禁が何かに共鳴を――)
- 試験管の端にピシ、とひび割れが走るや、パリンッと砕け散った。
自由になった小蛇から、螺旋を模した紋様が…「信仰」の戒禁が、独りでに離れて飛び出す。
◆この後メラスキュラはどうなったんでしょう。
戒禁は所持者が拒めば回収できない、殺すか瀕死にしなければ。という設定、アッサリ無効化しましたね。自動回収できたんかい。 - それは猛烈な勢いで天へ駆け昇り、残した強い衝撃に「くっ」とマーリンは顔を顰めた。
- 雲海の上まで昇った「信仰」の戒禁は、飛んでくる四つの戒禁を待ち受けるように停まる。
- 「おお…」
沸き上がるように笑みを浮かべる<原初の魔神>。 - 高速で通り過ぎた戒禁の群れに「信仰」も加わった。
- 「ついに来たか…」
夜空を横切る一塊の戒禁をゼルドリスは感慨深げに見上げる。
(ゲルダ…)(もうじきだ) - 一方、彼方の空を焦って飛ぶエリザベス。
(メリオダス)(だめよ!!) - <原初の魔神>が抑えきれぬ歓喜を含めて言い放った。
「新たな魔神王 誕生の時だ!!!」 - 次回「友として 兄として」
2019年の掲載第一回目でした。
今回のサブタイトルは「集結するものたち」。「者たち」ではなく「ものたち」なトコロがミソで、集まるのはキングたちではなく戒禁でしたとさ、と。
第281話の時点でマエルが取り込んだ戒禁が「再び… 一つに集結するのだ」と呟いていましたから、予告されていた事態です。
もしキングとゴウセルが鎮めなかったら、自我を失くして戒禁に支配されたマエルは自動的にキャメロットに戻って、メリオダスに吸収されてたのね。
この事態をゼルドリスは最初から想定してエスタロッサを送り出したのだと判明して、また少し彼への好感度が下がりました…。
その時点で実兄だと思っていたエスタロッサが戒禁を取り込んで自我を失い暴走することは勿論、彼が戒禁を入手するために<十戒>たちを殺す…よくて半殺しにすることも、最初から想定…容認していた、と。
グロキシニアとドロールが<十戒>脱退を申し出た時、ゼルドリスは何の報復もせずに戒禁だけを回収しました。だから、彼は一度でも仲間だった者には無体なことをしないんだ、仲間想いで優しいんだなと思っていました。
そんなことなかったぜ!
結局、
…あらやだ。メリオダスとゼルドリスって、
今回のラストシーンの後引き文に噴き出したのは私だけなんでしょうか(苦笑)。
恋人のためなら、手段は選ばない。
闇に染まりしメリオダス、復活…!!
かねてより、ネット上の感想には、メリオダス(とエリザベス)を「恋人のため・自分の恋愛のためなら手段を選ばない恋愛脳」と評した感想を(ウチ含めて)チラホラ見かけることがありますが。あら。制作側も それを認識してたのかな…。
今回のコレはゼルドリスを指してるんでしょうけども、読みようによってはメリオダスのことをも含めてるように受け取れる? 読者の反応をネタに狙ってやったのなら、なかなか憎いことをするなァと思いました(^^;)。お見事です。
にしても。
闇に染まりしメリオダス、とか言ってますが、ほぼ同時に煉獄から脱出したバンが とっくに現世に帰還しているわけで。であれば、繭の中のメリオダスにも とうに感情が戻っていて おかしくない。
読者目線ではそれが分かっているので、ハラハラも なんもないという…。
そもそもメリオダスが魔神王になろうとした目的は「エリザベスの呪いを解く」ことで、聖戦に勝利するとか魔神族以外を滅ぼすとかではありません。ですから、たとえ感情が戻っていなかろうと、マーリンたちに危害を加える気はしないんですけども…。
それとも都合よく「力を制御しきれずに記憶を失って暴走」とか「戒禁に意思を乗っ取られて暴走」とかするのかな。そして お約束にエリザベスに抱きしめられて元に戻る?
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全ては作戦だったのさ!
マーガレットに女神族リュドシエルが憑いてからというものの、彼の熱烈な信者となって痛い発言を繰り返し、危険な魔神の本拠地にまで付いてきたヘンドリクセン。
天空城でゼルドリスの「
キャメロットでの戦いが始まっても、キューザックの攻撃から身を挺して庇い、その献身にリュドシエルも ご満悦…もとい心打たれて、手ずから彼に治癒術を施し、気遣う言葉まで掛けていたものでした(第286話)。
それが。…演技だっただとぉおお!?
つーか、キューザックから身を挺して庇ったのも、実際はマーガレットを庇っていただけで、リュドシエルは勘違いして喜んでいた…? アイタタタ(涙)!!
一か八かの賭けは上手くいった…全てはリュドシエルを いい気にさせて油断させ、隙を見てマーガレットから引き剥がすための作戦だったと。
えええええ……。
今までの あれもこれも、全部ウソだった…?
…確かに、第250話の以下の場面を見たら、ヘンドリクセンがマーガレットとギルに負い目を感じてたのは間違いありません。
でも その後リオネス王都に帰還した場面(第251話)での あの痛々しいほどの はしゃぎっぷりも、「リュドシエルを油断させて裏切るための」演技だったというの?
正直、「油断させるため」と言われても、リオネス王の前に しゃしゃり出てまで こんな演技する(リュドシエル様が宿っておられる限りマーガレット様は確実に安全です!!と説得する)必要があったとも思えないのですが…。
ヘンディは平和になったら舞台俳優に転向できるかも?
ヘンドリクセンはリュドシエルを裏切る機会を虎視眈々と窺っていた。
…いや、確かに その懸念は前から抱いていましたよ。ヘンディだけじゃなくマーリンやエスカノールに対しても。リュドシエルを仲間としてキャメロットに乗り込んでいるけれど、いざとなったら彼を「悪」扱いして裏切ったり見捨てたりする展開になるんじゃないかって。リュドシエル自身も そうされるに相応しい悪しき言動をとるんじゃないかって。
でも実際に戦い始めたら、リュドシエルは意外と仲間との連携を重視した戦い方をするタイプで、ヘンドリクセンに庇われると返礼するし、ちゃんと仲間の絆が構築されてきてるじゃないか、杞憂だったかなと安心した……ところだったのにぃぃ。
ちなみに第251話感想には、以下のように書いていました。
>「悪いのはこいつだ、他の魔神族や女神族は本当は平和を望んでる」とリュドシエル一人に責任(悪役)を負わせる展開になるんじゃないかとハラハラしてたので(メリオダスが目覚めたらマーリンとエスカノールがリュドシエルを『メリオダスの敵』と見做して裏切って攻撃するのではとか、土壇場でヘンディが「私が本当に守るべきはマーガレット様だ」とリュドシエルを裏切るのではとか…)、どうやら彼を ただの悪人にする展開にはならなさそうでホッとしました。嬉しい。
ホッとさせといて、結局裏切るんか~いヘンディ。しかも「最初からそのつもりだった」なんて しょんぼりな形で…。ああ…なんか寂しいなあ。
いや…でも「彼を放ってはおけない」とも言ってるし…。リュドシエルへの親愛の全てが嘘だったってワケでもないのでは…。だったらまだ救いがあるのにぃい…。
…と、雑誌掲載当時、次回分を読むまで モヤモヤしちゃってたものでした(苦笑)。
ともあれ、ヘンドリクセンのリュドへの過剰な心酔を苦々しく感じていた読者には、快哉を叫ぶべき嬉しい展開だったのだろうと思います。
この辺り、リュドシエルをどう評価しているかで、読者の感想が全く違っていたように感じました。
彼を「悪・敵」と見做す読者は、次回以降ヘンディが器として容赦なく使い潰されるんじゃないかとか、「彼を放っておけない」という台詞は無理心中フラグで、ヘンディは刺し違えてリュドを倒すつもりではないかとか、とにかくヘンドリクセンの安否を案じる感想を多く お見かけした気がします。
私はリュドシエルの方に感情移入していたせいで、全然違うことを考えていました。(^^;)
「どうか この魂と命尽きるまで私を器として お使いください」「私は死を畏れていません… なれば あなたも存分に力を使うことが出来るはず」
リュドがこめかみに青筋立ててピキピキしてますが、そりゃ怒るよねぇ、と思ってた。
単純に「裏切られた」ことは勿論、当たり前のように、リュドがヘンディを器として使い潰して殺すと思われてることも。
だって、リュドさんはヘンディを信頼してたんですよ。弱った時に みっともない姿をさらして縋るくらいには。
そういう相手ですら簡単に殺す程度の男だと思われている。こっちは信頼してたのに、向こうには全然信頼されてなかったし、見くびられていたのだと。
そりゃ、勝利を優先してきた自分の行いのせいではあろうけど、腹立たしいし悔しいし哀しいだろうと思ったのでした。
それとは別に、ヘンディが自分の命を簡単に捨てようとしている…自己犠牲で己の罪を清算しようとしているのにも苛立ちました(苦笑)。
ヘンドリクセンの罪の向き合い方で嫌だったところは、文字通り正面から向き合ってなかったところと、そのうえで「この戦いが済んだら好きにしていい」とか「私を代わりに殺せ」とか、自分の身や命を犠牲にすることを償いと定義しがちなところでした。
そういう事じゃないんだよ。自分の命を粗末にすれば償えると思うのは安易だよ。それに償われるべき相手を処刑人に指名して執行を丸投げするのは酷いよ。と思ってた。
ちなみに私、この戦いでヘンドリクセンが死ぬ(退場する)とは思っていませんでした。リュドは高確率で退場するだろうと思っていますが、ヘンドリクセンは、ここまで来たら死なないでしょ? ドラマ的に美味しく死ねる機は逃しています。
償いで自己犠牲されても誰も楽しくなりませんし、ここまで生き抜いたのですから、受け止めて考え続ける方向で逞しく生きていってほしいです。
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そういえば、長らく単行本連載していた番外編『祭壇の王』が35巻でひっそり完結してましたね。
物語としてはイマイチ盛り上がりどころのない終わり方になりましたが、ジェラメット(女神族)を極悪定義してぶっ殺してスカッとするオチ、にはなっていなかったことにホッとしました。マエルと再会できそう。
女神族って精神体の状態で天界に帰って眠ることが出来るんですね。じゃあサリエルやタルミエルもそうなっている?
そして、ならばブリタニアで遺物に宿って肉体の再構築を待っていた女神族たちは、一族全体からすると一部で、いずれ復活する魔神族と再び戦うことを己に課して故郷での休息を拒んだ戦士たちだったのでしょうか。