【感想】『七つの大罪』第270話 未知との遭遇
週刊少年マガジン 2018年 27号[2018年6月6日発売] [雑誌]
第270話 未知との遭遇
- 煉獄にも植物は生えている。豊かな緑というわけにはいかないが、葉の小さなシュロに似た大木がまばらに並ぶ荒れ地を、バンとメリオダスは駆けていた。
- 「なあ団ちょ♬ 現世に戻ったら まず何するよ?」
「バン! 今はそれどころじゃねーだろ!!」
「いーだろ別に♬」 - ピョンピョンとバッタの群れが跳ねている。
現世のバッタに比べ後肢がより発達しているように思える。反対に前肢は短くて太く、形は人間の腕のようだ。(指は短めで、三本である。)そして、現世のバッタなら前肢と後肢の間にある中肢は存在しない。 - 競技者のように両腕を振って全力疾走しながら、軽く息を上がらせたメリオダスは言った。
「エリザベスの呪いを解いて それから目一杯バーニャエールを呑みまくる!!」 - その前を、両手をズボンのポケットに突っ込んだバンが、平常の呼吸でキツネ笑いして駆けている。
「俺はエレインを生き返らせんだろ♫ そんで 浴びるほどアバディンエールを呑みほすぜ~~~♬」 - 「まっ 悪くねえ
予定 だな」
返しながら、メリオダスは仰のくように背後を確かめた。バッタに…クジラ並みに巨大な、人に似た手を持つ、バッタのような原生生物に、すぐ後ろまで追いつかれていたからだ。 - 「やっぱ気が合うね~~~~~♬」
バンは散歩しているかのような呑気さである。追跡者のことなど気に留めた様子もない。 - 「うんっ」
人の手バッタの鳴き声は囁くように小さく、現世のバッタと異なる牙が多重に生えた口から、オボェと粘液のようなものを吐き出した。 - 「おっと」
メリオダスは足を止めずに背負った剣を抜く。
“全反撃 ”
振り向きざまに振るって粘液を反射した。 - 「うん!!」
ところがである。自身の粘液を頭から浴びながらも怯まず、人の手バッタが殴りかかってきたではないか。 - 「マジか!?」
メリオダスが拳に潰されそうになった瞬間、
「うわっ」
何かが彼の全身に巻きついて、サッと空中へと連れさらっていた。 - 「うん?」
「うん?」
頭を粘液で汚したのも別の個体も、人の手バッタの群れは呆気にとられたように見上げている。中には跳ねたバッタもいたが届かない。 - メリオダスに巻きついたのは細く長い尾だ。装甲めいた大ぶりの鱗が びっしり生え、尾を丸めれば松かさのように逆立って、センザンコウの鎧を思わせる。
- その持ち主は巨大な黒い怪鳥であった。とは言え翼はコウモリ状で、緩く湾曲した長細い くちばしの内側には細かい歯がノコギリ状に並んでいる。歯以外は鳥そっくりの頭部を無視すれば、翼竜と呼んでいいのかのしれない。
◆松本零士の漫画に出てくる「トリさん」を思い出しました。(ハーロックの肩とかに よく とまってる奴)
くちばしあたりのシルエットが ちょっと似てる。 - 鉄のような鱗を逆立たせて巻きつく尾に ギリッと締めあげられて、メリオダスは たまらず苦鳴をあげた。
「くっ」「やべえ!! 外れ………ねえ!!!」 - それがスルッと
解 ける。
「!!」 - 「一気に片付けんぞ~~~~~♬」
メリオダスを左脇に抱えたバンが、足から地上に降りつつ笑った。その背後を、首を切断された怪鳥の死骸が ゆっくりと落ちていく。 - 続いてバンは右腕をスッと掲げ、地上で待ち構える人の手バッタの群れめがけ、その手を残像も見えぬ速度で縦横に振るった。
「♫」
鼻歌交じりに。
“乱獲 ”!!! - 「うん?」
すると、人の手バッタたちは一斉に口から血を噴き、一度に絶命したのである。
◆これは、どういう技なんでしょうか? 心臓などを抜き出している様子は見えません。直接 心臓を握り潰した? 怖い。 - 地響きを立てて倒れる無数の死骸を背に、メリオダスを抱えたバンは華麗に降り立った。
「一丁あがり~~~っ♬」 - その耳が、常人には聞こえぬ音――もしくは、気配を察知したらしい。
- 「ついでにもう一匹♬」
目を向けもせず、右手を背後に差し伸ばす。 - キョトンとして、バンが手を伸ばした先に目を向けたメリオダスは、遥か彼方で ドサッ と倒れる何かを見た。
「!!」 - 「やっぱ あいつの肉が一番うめえよな~~~~♬」
バンは笑った。片腕一本かざすだけで仕留めた、二足アザラシの断末魔の気配を確かめながら。
◆前回と比較してのバンの超パワーアップ。
前回は大変に苦労して狩った二足アザラシが、今のバンには、目視しづらいほど遠くにいても腕一本かざすだけで仕留められる、ザコ中のザコになっています。
なんというインフレ(汗)。
また、感情メリオダスが バンと比較して スタミナにも乏しく力も弱く、全反撃 すら ろくに効かせられない弱者として描かれています。
バンには強くなってほしかったけど…。なんだろう、なんか、ズルいよねえ(苦笑)。キング・ディアンヌ・ゴウセルのパワーアップのしょぼさに対して、このメリオダスをも しのぎかねない強者感。 - 上が繋がった奇怪な岩柱が林立している場所で、二人は食事を始めた。
解体した人の手バッタの殻を持ち、その中身をカニ肉のように喰らう。
焚火はなかった。地面のあちこちから ゆらゆらと炎が上がっている環境では無用なものだ。 - 「不死の俺にも… んがっ 本体じゃねえ団ちょにも いらねえ
行為 なんだろうが やっぱ飯を食うと… んぐっ 生きてる実感湧くよな♬」
ポイポイと空になった殻を背後に捨てつつ、実に食欲旺盛に、美味そうに貪り喰らうバン。 - 「……ってどした?」
食事の手を止めたメリオダスの胡乱げな視線に気付いて窺えば、
「お前と再会して五百年経つけど その適応力には驚き通り越して呆れちまうぜ…」と少年は呟いた。 - 「しゃあねえだろ~~ 団ちょと違って俺は生身なんだ 慣れるしかねえの♬」
口いっぱいに頬張って、最後の殻を放り捨てる。 - 「慣れようと思って慣れられるのが おかしいんだっつの」
メリオダスはバッタ肉を咀嚼したが、さして美味そうな顔をしなかった。肉体を持つ者と持たざる者の差かもしれない。そもそも、明確な実体を持たぬはずのメリオダスが食事できること自体 おかしいのだが。 - 「あ… そうだ 見てくれよ」
「ん?」
不意に、バンがメリオダスの目の前に己の右手の甲をかざした。綺麗なもので、汚れは勿論、傷もしみも一つもない。
「煉獄 に慣れすぎたせいか 火傷と凍傷にも すっかり かからなくなった♬」「肺を ただれさせてた空気も今じゃ うまく感じるしな~~~♬」
◆バンはもう、人間ではない、まったく別の生物に変化してしまったんですね。 - 「バン」
「?」
キョトンとした親友に、メリオダスは愉快そうに口角を上げて語りかける。
「煉獄の中で千年以上正気を保ったまま生き続けた人間は」「きっと 今までも これから先も お前しか いねえだろうな……」 - 「そりゃ 俺は不死だからな~~♬」
バンが両腕を組んで笑えば、メリオダスは真顔で訴えた。
「それだけで耐えられるもんじゃねえさ…」
「カカッ♬ ガキの頃からクソみてえな環境で育ったおかげか?」
「そういうレベルの話じゃねえ」
メリオダスは真面目な声を出す。
「煉獄を耐え抜いた経験は お前の肉体と精神に爆発的な変化を与えてる」「現世 に戻ったら みんな驚くぜ?」 - 軽く驚いた顔をしてから、バンは カッカッカッ♫ と呵々大笑した。
「実感が湧かねえな ま… <十戒>と互角にやり合える程度にパワーアップしてくれてると助かるんだがなァ♬」 - 「ぶはっ!!!」
口を押さえてメリオタスが吹き出す。 - 「てめっ… 何 笑ってやがる!!」
「さてさてさーて?」 - 岩柱の陰から覗く、一つの影があった。丸く光るのは獣の目か…。
- 「俺も煉獄に来て よ~くわかった」
バンは 幾分わざとらしく声を張り上げた。
「?」
笑いながら目を向けたメリオダスにニヤリと笑い、
「お前の力は やっぱ とてつもねぇってよ」「煉獄の炎と氷ですら傷を残すことのできねえ俺の不死の体に―――」
己の左顎から首筋にかけて残る大きな傷跡を指で示す。
「こんな勲章をつけてくれたんだ」「団ちょこそ 元の体に戻りゃ 敵なしだろが♬」
◆バンとメリオダスの褒め殺し合い。
エリザベスとエレインが初対面の時、やはり褒め殺し合っていたのを思い出しました(苦笑)。
とゆーか。バン強くなったねの流れで「メリオダスこそ最強だ」と大ゴマで念押ししてくるとは。そりゃメイン主人公ですから強いのは当然ですけど、作者さんの熱い主人公最強推しを感じるなあ。 - にしっとメリオダスは笑い、ニカッとバンも笑った。
- 「そうなりゃ とっとと魔神王を捜して
現世 に戻るぜ~~♬」
「おーーーーー!!!」
バンは長い右腕をメリオダスの首に絡めて肩を組み、メリオダスは拳を掲げる。
「そしてエリザベスに お触りしまくるぞーーっっ!!!」
「エレインと死ぬほどイチャつくぜーーーーっっ♬」
「そんで また<七つの大罪>で<豚の帽子>亭を再開すんぞー!!」
「でも 料理は作んなよーー♬」 - 盛り上がる二人を、未だ岩柱の陰から注視し続けている影。
「……………」
ずんぐりとした体の頭部には、湾曲して上を向いた大きな角か牙が生えているように見える。 - 「気付いているよな」
バンが表情を消して呟いた。
「ああ」
表情を引き締めたメリオダスは、背後の岩柱へ目線を動かす。 - 直後。
二人の姿が消えた。左右へ別れて高速で移動したのだ。 - 岩柱の暗がりにいた影はハッとし、すぐに上を向いた。
「!!」
剣を掲げたメリオダスが襲い来ていたからである。 - 少年の目にも止まらぬ連続斬撃、演舞のような途切れぬ連撃を、影は全て避けた。そのうえでジグザグに跳ねて距離を取る。
- 「なっ…!?」
呆気にとられるメリオダス。ジグザグと跳ね続けるそれを、剣はおろか目で捉えることも出来ない。 - そこに、バンが離れた位置から縦横に右手を振るった。
- 「!!」
跳ね回る影も驚いている。 - 「捉えた♬」
何かを掴んだ仕草をして、バンは口元を笑いに歪めた。遠く離れて高速で動き回っていた影を、魔力で掴み拘束したというのか。 - 「!!」
ところが、バンの右手は何も掴んでいなかった。それどころか、五指の第二関節から先がシュレッダーにかけたかのように 削り掛けて ほぐれ、血と皮がパラパラと散っている。 - 未だ縦横に跳ね続ける影を、バンは目線だけで追う。その眼球が ピタッと止まった。即ち、影が動きを止めたのだ。
- 「団ちょ!!!」
- メリオダスはハッとする。
バンの声に。そして、背中に当てられた硬い感触と殺気に。 - 「そこまで…!!」
メリオダスの背に、緩く上向きに湾曲した長く鋭い牙が、ピタッと突き付けられていたのだった。 - 「く…」
歯噛みするメリオダス。完敗である。 - 「…のヤロォ」
メリオダスを人質にされては、バンも動けない。 - 「何者だ…?」
メリオダスの問いを、影は投げ返した。
「その質問… そのまま返すぞ 異形の者共よ!!」「先程 お主ら…「むこうに戻ったら」などと聞き捨てならんことを言っていたな?」「まさかとは思うが こことは異なる世界の旅人では?」
「まあ… そんなようなもんだ」
「やはり!!!」
メリオダスの答えに、得心と感嘆の声をあげる。
◆「ひと」の姿をしたメリオダスとバンは、煉獄では「異形」なんですね。あ、それじゃ魔神王もか。 - 「てめえ…」「魔神王の手先か?」
剣呑な様子でバンが尋ねた。メリオダスとバンを「異形」と呼んだ影は、岩柱の陰の中にいるため、姿がよく見えない。大きさは仔牛ほどか。体高はメリオダスよりやや低く、ずんぐりした体格の、四つ足の獣のようだが…。 - 「魔神王? ああ あのデカ
物 か …居場所なら知っておるぞ」
魔神の王を『デカ物』と一蹴して、影は持ち掛けた。
「奴の下 へ案内してほしいのなら してやってもいい…」 - 「!! 本当か?」
振り向かずに言ったメリオダスの背から、突き付けられていた牙が離れていく。
「ただし!! 私にも協力してもらおう」
と、牙の持ち主は告げた。 - 「協力?」「あんたこそ 一体 何者――」
メリオダスも背に剣を収める。歩み寄ってきたバンと共に、ようやく牙の持ち主と対面した、途端に。 - 「「!!?」」
メリオダスとバンは目を剥いた。 - 「我が名はワイルド!!!!」「生き別れの弟を捜し求め彷徨う戦士よ!!!」
ブギッと、豚鼻から力強く吹き出される鼻息。
口の両端から突き出した立派な牙。タワシのごとき剛毛に覆われた体には幾つもの古傷。しかして、その いかつさにそぐわぬ つぶらな瞳。 - 驚くほかない。人語を操る大イノシシが そこにいたのだから。…毛並みや耳の形こそ違うものの、どうにも誰かにそっくりな。
- 「ホーク!!!?」
「師匠ォ!!!?」 - 唖然と叫んだ二人の前でキョトンとして、
「え? …だからワイルド」
ブギッと、イノシシは もう一度 名乗って鼻を鳴らした。 - 次回「一途なる想い」
煉獄編の三回目です。
ラストに新キャラ ワイルドが登場して、やっと面白くなってきました。
忌憚なく感想を述べますと、正直、ワイルド登場まで煉獄編は面白く感じませんでした。ぶっちゃけ、薄味で つまんないと思ってた…すみません。
バンが煉獄へ出発した時は、どんな冒険が待っているのかと ワクワクしたものだったのに…。(バンが煉獄へ落ちた時に聞いた「コロロロ…」って音は何だったんだ)
個人的な希望を言えば、メリオダスと再会する「前」に、まずは「バンだけで」新キャラや過去の亡霊と出会い、強くなりながら情報や仲間を得るようなエピソードが読みたかったです。
だって、メリオダスと合流した時点で、実質、「バンの」冒険は終了してしまう。
現在のメリオダスは名目上 弱体化していますが、読者の誰が、彼を本当に役立たずだと思って読むでしょうか?
再会して以降は自然に主眼がメリオダスに移り、「メリオダスが、強くなっていくバンを上から見守る」お話になっていました。
そのうえ「メリオダスこそ本当は敵なしだ」と、強くなったバンに讃えさせる 周到さです。
いや、メリオダスは確かにメイン主人公で、最強であるべきなんだけど。
その前に、「バンが」煉獄で出会い・知り・強くなる お話が読みたかったんだけどな。
このガッカリ感、読みたかったのはコレジャナイ感は、キング&ディアンヌの修業編と似ています。
ずーーーーーーっと
カルマディオスと戦えばメリオダスが しゃしゃり出てカッコよく倒してしまい、キン&ディアは彼のサポートに回る。以降は女神エリザベスが いかに凄いか・素晴らしいかが語られ、キン&ディアは傍観者でした。燻ったまま、パワーアップは オマケ のような扱いで。
あるいは、メリオダスが<十戒>に殺された時にも、ちょっと似ているかも。
メリオダスばかりが闘級・把握情報 共に優位になり過ぎていたので、彼が生き返るまでの間に他キャラを成長させて頭を揃えてくれるんだなと期待していたのに。全然成長しないうちに、すぐさまメリオダス復活・さらなるパワーアップを披露したとゆー。
バンの修行エピソードなのだから、クライマックスまでは メリオダスには お休みしてもらってて よかったのになあ。
フラフラしてる怪物と散発的に戦うんでなく、もっと「煉獄ならでは」のストーリー性のある事物が見たかったなあ。
バン&メリオダス最強タッグの、イカしたサバイバル
話は少し変わりますが。
感情メリオダスは、闘級が低い以外は元のメリオダスと全く変わりませんね。変なの。
彼は「愛や優しさの感情だけ」のはずなんだから、本物のメリオダスと比べて勇気がなかったり、敵を哀れんで戦いを躊躇して めそめそしたり、もっと解り易く差異があっても よかったと思うんだけど。
実は感情メリオダスは「奪われた愛の感情」ではない、何か別の存在なんでしょうか?
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煉獄の時間経過
前回バンは言いました。
煉獄へ来て最初の100年は燃えて凍って腐っての繰り返しで、200年経って慣れ、もう200年経って眠れるようになったと。
そして今回、メリオダスは言いました。
バンと再会して500年経ったと。
どうやら、バンが煉獄に来てから、およそ1000年経過しているようです。
煉獄の一分を一年として換算すれば、現世では およそ17時間経過していることになりますね。
王都決戦が行われたのは王国誕生祭の二日前、即ち3月20日。
そこから日数を数えれば、メリオダスが<十戒>に殺されたのは3月末。
メリオダス復活・<大罪>再結集・キャメロットへ出発したのが、その一ヶ月と少し後と見れば、エリザベスの呪いが発動したのは5月半ば~6月頭頃。(エリザベスの17歳の誕生日の少し前。)
イギリス南部の5~6月の日没時間は20:30~21:00前後。
チャンドラー襲来が日没の少し前で、再襲来を その1、2時間後とするなら、メリオダスが離反してバンが煉獄へ旅立ったのは、エリザベスの呪い発動当日の22:00(夜の10時)頃だったと推測されます。
22:00から17時間後と考えますと、現時点の現世の時刻は、翌日の15:00(昼の3時)頃だと推測されるかと。
(あれ? すでに正午を過ぎて、エスカノールの今日のピークは終わってる?)
どうやら1000年前後でバンの修業は修了しそうで、ちょっとホッとしました。
へたすればエリザベスのリミット ギリギリまで煉獄にいて、(呪いの「三日」が、足かけを意味するなら2500歳超、普通に72時間のコトなら4300歳超の、)メリオダスに次ぐウルトラ年配者になっちゃうかと思ってた(汗)。
1000歳前後なら妻のエレインと同じくらいですし、義兄のキングより年下に留まる。今後のことを考えると具合がいいと思います。
(あれ、そうか。バンエレは もはや「おねショタ」カップル ではなくなったんですね…。見た目も、エレインが少し成長したので、「おにロリ」ぽさは薄れましたし。実年齢・見た目ともに年の差が解消された?)
ところで、今のバンの精神年齢はどうなってるんでしょう? 煉獄に行く前は、実年齢は43歳だけど精神年齢は20代だとされていました。現在の煉獄のバン、ぶっちゃけ、以前より老成・枯れたようにも感じられないけど…。
さて。
煉獄でバンは超パワーアップしたと語られました。
具体的な闘級こそ伏せられていますが、<十戒>を「笑っちゃうほど」超え、しかしメリオダスより下らしいので、闘級8万~13万くらいなんでしょうか?
煉獄に入った時点で闘級3220だったバンが、闘級10万前後? まで一気にパワーアップ。メリオダスがベタ褒め。すごいですね。
でも、そうなると闘級10万以上レベルのメリオダス、エスカノール、バン、別格マーリンときて、物語のキーとなる新機能が搭載されたらしいゴウセルはともかく、既にパワーアップイベントを終えているのに中ランク程度でしかないキングとディアンヌは、ますます役立たずになるのかなと、ちょっと寂しくなりました。彼らにも今後「最前線で最高ランクの敵と対等に渡り合える」機会は残されているのでしょうか。
バンが桁外れに強くなれたのは「1000年、苛酷な煉獄に耐えてサバイバル生活をしたから」。
でも、少しモヤモヤする面もあります。
それは、バン超強化の根拠たる「超・時間経過」が、実感しづらいからです。
ここまで描かれた様子を見るに、煉獄には夜がありません。
太陽も月もなく、季節がある様子もない。
バンもメリオダスも齢を取らない。
飲まず食わず眠らずで数十年も戦い続けられる。(体内時計も当てにならない)
もちろん、マーリンに魔法の時計を持たされていたなんてこともない。
このように、時間経過の指標となるものが、ひとつもない。
なのに、数10年経った、100年、200年、500年、1000年経ったと、バンやメリオダスが断定する。
なんで、それだけの年数が経ったことが判るんでしょうか?
時間が経ったことを疑いはしていません。
けれど、なんで判るの? 何を以て計っているの? と戸惑います。
定住しているなら、例えば特定の植物の様子を観察して…なんてこともできますが、あてなく放浪してますし。定期的に出現する怪物がいるとか、一定周期で亡者行列があるとかでもないし。
もう一つ。
本来「時間の経過」は、経験を蓄積できると同時に「老化劣化・寿命の消費・周囲との別れ」という、取り返しのつかない・二度と戻らないリスクをも もたらすものですが、1000年経とうと、バンもメリオダスも若く美しく、記憶や気力の減退や忘却もなく、精神も健やかで、現世の誰との別れも乖離もなく、未来の夢に満ち、何一つ失うものがありません。
1000年以上のんびり過ごそうとも、十二分に『三日殺しの呪い』に間に合います。
こうした都合の良い緊張感のなさも、面白さを損なう理由の一つかもしれません。
まあ、「精神と時の部屋」に代表される、バトル少年漫画の「短期間で都合よくパワーアップする」黄金パターンのバリエーションに過ぎないのだと、割り切るよりないのでしょうが。
でもせっかく煉獄だし、もっと曰くがあって独特で魅力的な風物やキャラやエピソードを堪能したかったです。…という一読者のワガママでした。
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バンとメリオダスの夢
バンとメリオダスが「現世に戻ったら何をするか」を しきりに語り合っていました。
煉獄で最も忌避すべきは「絶望すること」なので、明るい夢や希望を繰り返し語り合うのは理に適っています。
メリオダスは、戦闘中に夢を語り始めたバンに少し呆れていましたが、バンは むしろ意図して夢を語り・メリオダスに語らせたのかもしれません。絶望して真っ黒ケモノに成り果てるリスクを減らすために。
食事の場面でも、バンのテンションは異常に高かったです。呑んでないのに酒に酔ってるみたいな陽気さ。もしかしたら、意識して気分をアゲていたのかも?
さて。
現世に戻ったら何をしたいか。
二人の夢が、現実を無視した、ひたすら明るいモノだったのは目を引きました。
メリオダスは「エリザベスの呪いを解き、彼女に触りまくる」。
つまり、呪いを解いた後も、ずっと一緒にいると。
どうやって?
煉獄から出るには魔神王を倒さねばならぬ。魔神王を倒したら呪いは解けるからハッピーエンド、ということなんでしょうか。
バンは「エレインを生き返らせる」。
…え?(汗) バンの認識では、エレインは もう死んでいることになってるんですね。
まだ死んでないよ、瀕死で苦しんで、死の床でバンを呼んで泣いているのに。
この漫画の価値観では、メリオダスのため煉獄に身を投じたバンの行いは「大変 素晴らしいこと」と評価されているけれど、私はやっぱり、死にかけたエレインを置いて当てもなく煉獄へ行ったバンの行いは、あまり好きではありません。
エレインは死んで、邪術で生き返って、再び死にそうになった彼女を親友のために捨て置いてきて、もう死んでるだろうから 戻ったら また生き返らせますよ、って。
命って、愛って何だろう……。
いやまあ、最初に書いた通り、煉獄では絶望してはならないから、とにかく明るいことだけ考えるようにしてるんでしょうけど。
もしかしたらエレインは死んでしまっているかもしれない。でも きっと再び生き返らせるから、不安になるな・絶望するなと、自分に言い聞かせているのかもですね、バンは。
メリオダスも同じように、魔神王を出し抜いて現世に戻れるか・呪いを解いたエリザベスと一緒に暮らせるか判らないけど、失敗することは考えるまい、と自分に強いているのかも。
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消えない傷の謎
メリオダスに、闘級も人格も素晴らしいと ベタ褒めされたのに、実感が湧かないと謙遜して、メリオダスこそ敵なしだと褒め返して話を逸らしちゃうバンさん。
ずっと自分を「どこへ行っても爪弾き者のクソみたいな男」だと過剰に低評価していましたし、褒められ慣れていないんだな~🌸と思いました。
メリオダスに ベタ褒めされる男になったよ。自分を誇っていいよバンさん。
それはさておき。
バンが、メリオダスこそバンより素晴らしいと根拠に挙げたのが、煉獄の環境でも傷つかぬ己の不死身の体に、メリオダスが付けた傷だけが消えずに残り続けている、ということ。
バンの左顎から首にかけての大きな傷跡は、王国騎士時代、刃折れの剣を奪おうとしたバンに、静かにキレたメリオダスが、魔神の力を用いて付けたもの。(第9話)
今にして思えば、この時のメリオダスはカケラも本気を出してなかったように見えるのですが、それでもバンに傷痕は残って、消えなくなった。
第一部当時、読者間には、バンの傷が消えなくなった理由を
「メリオダスが魔神だから。魔神の力で付けられた傷は消えないのでは?」
とする考察がありました。
なにせ、他にも
- 魔神の力を得たジェリコがバンを斬ると、何故か傷がすぐに再生せず、出血多量で危機に陥った
- 神樹の加護を得た妖精王の森の木は通常の炎では燃やせないが、魔神の発する煉獄の炎であれば燃やすことが出来る
- バンを不死にした
生命 の泉は、神樹に由来する
という要素もありましたから。
神樹は魔神の力に弱く、バンも魔神の力には傷つけられてしまうのでは? と。
でも、この説には穴があります。
だって、ジェリコと同じように魔神の力を得たギーラや、赤き魔神や灰色ヘンドリクセン、<十戒>らに受けた傷は、すぐ治っていましたから。
どんな魔神の力で攻撃されても普通に再生して、痕は残りませんでした。
今となっては、ジェリコも新しく
ともあれ。
では、どうして王国騎士時代にメリオダスが付けた傷だけが、痕になって残り続けているのか?
この時のメリオダスは、心底本気の攻撃をしているようには見えません。そして、この時のメリオダスより もっと強威力の攻撃を、その後のバンは何度も魔神から受けているはずです。しかし、それらは傷痕を残しません。
うーーん?
思うのですが。
この傷痕が消えなかったのは、バンの精神が大いに影響しているのでは?
そもそも、バンは頭部そのものを破壊・消滅させられて、一から再生するのを繰り返しています。
通常なら、頭部が一から再生すれば、傷痕は消えてしまうものだと思うんですよ。皮膚も骨も、細胞そのものが、何もかも新しく作り直されるんですからね。
見ていると、バンの頭部が消滅して再生される時、髪の長さや髪形は固定していないようです。どうも、その時点のバン自身の記憶・認識に即した髪型に再生されているっぽい。(王国騎士時代ならその時代の髪型に、本編では その時点の髪型に。髪が長く伸びていても頭部が破壊・再生すると散髪した状態になるが、不死になった当時の髪型ではない。)
同じように傷痕も、バン自身が「付いている方がいい、これはメリオダスとの特別な記念である」と思っているからこそ、常に傷痕ごと再生され、ずっと消えないのではないでしょうか?