【感想】『七つの大罪』第271話 一途なる想い
週刊少年マガジン 2018年 28号[2018年6月13日発売] [雑誌]
第271話 一途なる想い
- 「毛深い師匠…」
唖然と呟くバンの前で、メリオダスは大イノシシに尋ねた。
「……ワイルド ――だっけ?」「お前の弟ってホークのことだよな……」 - 「?」「ホーク? はて… 弟の名はマイルドだが………」
キョトンとするワイルドは、ブギッと鼻を鳴らして小首を傾げる。
「…たしかに弟が姿を消したのは生まれたての頃… 己の名を覚えておらずとも不思議ではない」
独りごちると、興奮して問い返した。
「まさか お主たち!? 私にそっくりな男前を知っているのか!?」 - 「自分で男前言ったな」と突っ込んでから
「そっくりも何も 間違えようがねーーというか生き写しというか……」
と返すメリオダス。 - 「プクク…」
その後ろでは、腹を抱えたバンが プルプル震えながら笑いを噛み殺している。 - ぷわわっ、と大イノシシのつぶらな瞳に涙が溢れた。
「ぽぉぉおおおおおおおぉおおお~~~~~ん!!!」
涙と鼻水を噴水のように飛ばして号泣する。 - あまりの大声に、たまらずバンは両耳に人差し指を突っ込んで耳栓した。
- 「おお… これは」「腹を下した時のホークの呻き声に瓜二つだ」
メリオダスが言えば、またも バンは「ブハッ♬」と吹き出してしまう。
◆王都決戦時、腹を下したホークが「ぼおおおっ」と呻いてた件ですね。 - 瓜二つと聞いたワイルドは、更に泣いた。
「ぽおおおおおお~~~~ん!!!
マイルドォォ~~~~~ッ!!!」 - 「ギャハハハ 腹痛ぇっ♬」
何がそんなに可笑しいのか、とうとうバンが爆笑。 - 「世の中 不思議なことも あるもんだねーーーー」
メリオダスは白々とコメントした。 - 「ぼ?」
出過ぎた鼻水で鼻ちょうちんまで膨らませていたワイルドが、空模様を見て、泣くのをやめた。 - 見る間に風が強くなり、砂を巻き込んだ嵐が始まる。
「熱砂の嵐の時間だ
…異界からの客人 どうか 私の住み家へ共に来てくだされ!!」
◆1000年の期間で初めて描写された「熱砂の嵐の時間」です。これが定期的に毎日起きているモノなら、その回数で煉獄での日数経過を計っていたんでしょうか? - 砂嵐は激しく、目の前すら見えないほどだ。直接さらされたなら、高温の大気の中、カンカンに焼けた砂に打たれ揉まれ続けることになっていただろう。
- その嵐に難なく耐えて、イノシシの形をした大きな家が建っていた。
- 「へ~~~♬ この
豚舎 を全部独りで?」とバン。
「うむ! これぞ我が会心の作!! 人に見せるのは今日が初めてだが」
「しかし よく造ったね」とメリオダスが感心を見せる。 - 「何… 暇だからな」
「暇でも ここまでやる?」
砂土を練り固めて造り上げたらしい半地下の屋内は、天井も高く、あれこれ装飾もあって、なかなかに凝っていた。 - ただし、その装飾の ほぼ全てがワイルド自身を模しているのは、どうしたことだろう。床と一体化した円いテーブルにはワイルドの顔が描かれ、何かの台座にもびっしりと小さなワイルドの装飾が並び、柱からは悪夢のように幾つものワイルドの頭像が突き出し、部屋の隅には何十体ものワイルド像が固まっている。室内には壁泉があって水が流れ続けていたが、その出水口もワイルドの頭を模していて、口から水が出ているといった塩梅だ。
- 「うわっ♬ すげぇ座りづれえし♬」
テーブル横の「寝そべったワイルド像」に腰を下ろしたバンが愉快そうに笑った。なんで出来ているのか、荒い毛並みをよく再現して、トゲトゲで ざくっとした座り心地だ。 - 「バン それ置き物だろ」とメリオダスが突っ込む。
よくよく見れば、テーブルを囲む三か所に、細かく切った柴が一束分ほどずつ、60cmほどの円形に敷かれてあった。鳥の巣のような それが座席なのだろう。これも座り心地はよくなさそうだが。 - 二人は芝の座に座り、メリオダスは背負っていた剣を傍らに置いて くつろいだ。
- ワイルドは、犬用食器に似た形の大きな箱に頭を突っ込んで、ぎっしり詰まった何かを がさごそと漁っていたが、やがて二つの
鉢 に なみなみと液体を注いで差し出してきた。テーブルの上ではなく、床に。
「…飲みなさい チチボインの尻のイボから作ったイボ茶だ」 - 「「…………」」
「エサ箱?」と呟いて、思わず黙り込むメリオダスとバン。鉢 の形とサイズ感が、ホーク用のエサ皿(犬用食器)とそっくりだったので。 - 「煉獄の味だな」
両手で鉢 を持って液体を啜 るメリオダスは「チチボイン?」と眉根を寄せる。長年煉獄にいた彼でも思い当たらないらしい。 - 「つっこみが追いつかねえ」
バンは鉢 を片手で持ったが、飲む気は起こらないようだ。液体を眺めて「尻のイボ茶?」と呟いている。 - 一息入れると、自身も柴の座に伏せて、ワイルドは語り始めた。
「…我が弟マイルドは生まれてすぐに魔神王に攫われ 挙げ句 この世界とは別の地に飛ばされたのだ……」「もう800万年以上前にもなるか」 - 「ホークがブリタニアで目覚めたのが16年前」「
現世 の一分が一年だとして… 大体 計算は合ってるか」
両腕を組んでメリオダスは思考を巡らせる。 - その隣ではバンが、イボ茶と並べて出された
小鉢 の中身を摘まみ上げて眉根を寄せていた。
「茶請け?」
彼がしっぽを摘まんでぶら下げた それは、足がうじゃうじゃ生えた得体のしれない小生物で、てんでに手足を蠢かせて生きている。やがてバンの手から逃れて物陰に走った。
「あ… にげた」
◆この「茶請け」、躍り食いするのがオツなのかな。 - ワイルドは言葉を続けている。
「しかし 弟が別の世界に飛ばされた理由は未だに……」
「その理由なら わかってる」
遮るようにメリオダスが言った。
「!」 - 「煉獄の魔神王が息子のオレを監視するためだ」「そのためにホークを選んだのは間違いねえ」
- 「な…!!」
愕然とするワイルド。 - 「魔神王の息子とは!? お主は一体…… そういえば まだ名を聞いていなかったな」
「オレはメリオダス」
少年は名乗り、「こっちはバン」と傍らの相棒を示した。 - 「…して」「我が弟が監視役に選ばれた理由とは」
- 「魔神王は はじめ現世の動物を使って監視してたんだ オレに警戒されないようにってな」「…だけど どれも ささいな事故や寿命で死んじまう」「そこで煉獄の生物に目を付けたんだろう 案の定 ホークは異常なほど頑丈だ」
◆んん? メリオダスが、あたかも最初からずっと「身近な動物が監視者であったこと」に気付いてた風に語っていますが…。
じゃあ彼は、ワンドルもホークも「魔神王の目」だと知りながら、自ら傍に置くだけでなく、可愛がって相棒扱いしてたんですか? - バンが笑ってメリオダスに目を向けた。
「…どーりでヘンドリクセンの攻撃にも余裕で耐えるわけだ♬」
メリオダスも笑顔で見返す。
「そして誰にも警戒されないからな あのお人好しは」
◆え!? ホークが灰色ヘンドリクセンの攻撃で黒化して死んだ後、ちびホークになって復活したのは、特殊能力や魔神王の加護でも何でもなく、「煉獄生まれで頑丈だったから」なんですか(汗)。じゃあ、同じく煉獄生まれらしい吸血鬼王族も超頑丈? オルロンディが目玉だけになっても生きていたように、ゲルダも死んだようなダメージを負おうとも生きている?
それにしても、番外編『相棒』などで、ホークはメリオダスが16年前まで飼っていたオウムのワンドルの生まれ変わりである風に暗示されていましたが、別に生まれ変わりでも何でもなかったの? それとも、魔神王は選んだ動物全てに同じ魂を入れてたの? - ホークの美点を話し合う二人を前に、ワイルドがスクッと立ち上がった。
「メリオダス殿 ……バン殿!!」
ブギッと鼻を鳴らしたイノシシは、つぶらな瞳をキラキラと輝かせている。
「マイルド―― いや ホークのこと もっと聞かせてくだされ!!」 - 優しい目で微笑んで、二人はワイルドに応じた。
「さぞや 立派に たくましく成長したのだろう!」
「ああ♬ 立派に あさましく成長しているぜ~」
「弟は むこうで何を? やはり私のような戦士に?」
「残飯処理騎士団の団長だ!!」
「なんとも豪壮な肩書き!!」 - メリオダスは語った。
ツイーゴがエリザベスを襲ったとき、枝がホークの尻に刺さって、泣きながら逃走したこと。ギーラの攻撃で焼き豚になって吹っ飛んだこと。 - バンは語った。
どんなに みっともなくやられても頑丈さで しのぎ、一度死んで ちびホークとなった際は、エサ皿にすっぽり収まって残飯を貪り食っていたこと。 - 柴の座に伏せたワイルドは、真剣な目で うんうんと頷きながら聞いている。
- メリオダスとバンは更に語る。ホークのドジなところ、ダメなところ。興が乗ってきて、ゲラゲラ笑いながら。
- 次第に血の気を引かせていくワイルド。
それでも話の尽きないメリオダスとバン。 - 「どうしたワイルド!!?」
鋭くメリオダスが問いかけた。大イノシシが腹を上にして痙攣し、口から泡を吹き始めたからだ。
「コッ」「コヒーー コヒーー」 - 「やべえ!!
自分 の想像と あまりにかけ離れてたことがショックすぎて 過呼吸 起こしたんだ♬」
歌うような口調は やめないながらも、バンも慌てている。 - ワイルドには袋が与えられ、それに頭を突っ込んで、二酸化炭素を深呼吸して落ち着いた。
「悪かったな つい正直に話しすぎちまって」とメリオダス。
バンは ポンポン とワイルドの背を叩いてやっている。
◆ワイルドが過呼吸対策に使った袋、素材は何なんでしょう。ビニール袋のはずはないけど、縫い目がないから、巨大魚の浮袋とかかしら。 - 「…やっぱ 想像の弟と違ったらガッカリするもんなんか?」
バンが尋ねると、袋を口から外してワイルドは微笑んだ。
「ショックにはショックであったが――」「どれだけ想像と違えど 違う道を歩もうとも 血を分けた兄弟だ」「私にとっては 可愛い弟に他ならない!!」 - メリオダスは目を見開いた。その表情が、ゆっくりと崩れていく。微笑みと哀しみを半ばしたものに。
「…………そうだな」 - 「………………」
バンは横目で親友の顔を盗み見ていた。 - 熱砂の嵐は収まっていた。
「さて!! 嵐もおさまったし出発しよう!!」「魔神王の下 へ!! かわいい我が弟マイルドの下 へ!!」
ワイルドの先導で、二人はワイルド型の豚舎 を出る。 - 「しかし魔神王の
足下 に弟のいる世界への扉があろうとは… いやはや」
てんてけ てんてん と駆けるワイルド。
「あくまで推測だけどな」
付いて疾走しながらメリオダスが言い、バンが尋ねた。
「魔神王は いつから煉獄 にいるんだ?」 - 「奴は私が生まれる はるか昔より のさばっておるわ」
メリオダスが口を挟む。
「あいつが封印されたのは現世 の時間で三千年前だからな」煉獄 の時間で言えば、15億7千6百80万年ほど前から存在しているということなのだろう。
◆魔神王は魂ではなく、肉体ごと封印されているんですよね? いくらなんでも長生き過ぎじゃないですか?(汗)
馬鹿馬鹿しくなるほど莫大な年齢で、よく自我を保っていられるなと思えるレベル。そんなに生きててなお、後継者はメリオダスでなくちゃダメとか、女神族に戦争で勝ちたいとか、そういう現世欲みたいなコトに こだわれるもんですかね…。もう どうでもよくならない? 誰が魔神王の後継になろうと、誰と誰が結婚しようと、どーでもいいじゃん。誰がどうなろうと、死んでは生まれて風化していく長大すぎる時間の中では些細なことですよ。
ちなみに地球は46億年前に生まれ、15億年前と言えば、単細胞生物しか存在していなかっただろうと言われる時代。単細胞生物が進化して人間になって文明が幾つも潰れて生まれてくらいの時間を、煉獄で魔神王は一人で過ごしてたことになる。
つーか。煉獄と現世は時間経過が全く違うから、魔神王が監視者の目を通して現世のメリオダスの様子を一時間眺めたら、それだけで煉獄では60年過ぎてる…というのを繰り返してたんでしょうか?
監視者の目を通して現世を覗き見することで、魔神王の精神的な時間経過は、メリオダスと大差なく調整されている??
でも三千年だって、執着し続けるのがバカらしくなるには、十分すぎる時間だと思いますが。 - 「私は弟の行方を捜しつつ 元凶たる魔神王に何度も戦いを挑み 敗れつづけている!!」「戦績にして12万118戦 12万118敗!!」
「お前もすげえ執念だな…」と、メリオダス。
「このワイルドに諦めの二文字はない!!」
ワイルドは叫んだ。
◆煉獄にも文字があるんですね…。 - 「だが!! 弟に会えるかもしれぬ希望が見えた今 すべては無駄ではなかったのだーー!!」
- 「師匠も腰抜かすだろな~~~~~♬」
バンはキツネ目で笑い、メリオダスも「同感」と笑った。 - 「マッ♬ マッマッ♬ マイルド♬ お~~やすみ~~ かわいい我が 弟よ~♬」
突然歌う大イノシシ。
「なんだよその歌」
「私がマイルドによく聞かせてやった子守唄だ!! あいつは この唄が好きでなぁっ」 - うおおっと雄叫びながら疾走を続けるワイルドを、メリオダスは好ましげに眺めて言った。
「いい兄貴だな ワイルドは…」
すると、バンは ふと表情を消して尋ねる。
「団ちょは どうだったんだ~?」 - 「ほう!」「メリオダス殿にも 弟が?」
駆ける足を止めずにワイルド振り向く。 - 「ワイルドが弟の話をした時の お前の表情―― 初めて見たぜ…」
バンは、どこか痛ましげにメリオダスを見つめる。
「弟は確か… ゼルドリス…だっけ?」 - 「そっか… そういや ちゃんと話したことはなかったな」
「別に話したくねえなら 無理にとは言わねえよ♬」
「そうじゃねえ」
走り続けるメリオダスの横顔は、静かだった。
「別に」「おもしろくも なんともねえ話だからさ」 - 奇岩が並ぶ、ここは煉獄の高地帯と言えるのだろう。塔のような奇岩と並ぶ、細い岩橋のような道が続いている。
山の尾根を日本語で馬の背、または牛の背と言い、英語では豚の背 と呼ぶが、高所に岩橋のような奇岩が続くこの地は、さしづめ豚の背骨といったところだろうか。 - 「オレには二人の弟がいる… ゼルドリスとエスタロッサ」
「エスタ… はぁ!? 団ちょを一度殺した あの… ヒゲ野郎かよ!?」
素っ頓狂な声をあげるバン。
「おう あいつは次男だ」
「待て待て!! どう見ても弟って顔 じゃねえだろが!!!」
「仕方ねえだろ」 - バイゼルでバンはエスタロッサと対峙している。その際、彼がメリオダスを「兄弟」と呼んだのを何度か聞いていたはずだが、本気にしなかったのか、メリオダスの兄とでも思っていたのか。
- 「あ… いや話の腰折って悪ィ …続けてくれ」
冷静さを取り戻して促せば、メリオダスは話を続けた。 - 「…オレは かつて次期 魔神王候補と呼ばれ<十戒>を統率していた」「…………本音は嫌で嫌で しょうがなかったけどな…」
笑顔で そんなことを言う。 - 「女神族との
諍 いを くだらねえと思いつつも 魔神族のリーダーとして戦いに明け暮れていたんだ」「ゼルドリスは そんなオレを畏れながらも慕ってくれてたよ」 - メリオダスの脳裏に、かつての
弟 と自分の姿が浮かんだ。
「バカがつくほど真面目で正直な奴で オレから戦いを学び 魔神族のために剣を振るい続けた」
そんな弟を、冷酷に殴り倒したこともある。
「正直 オレには なんで あいつが そこまで必死になるのか理解できなかった」
弟は下位魔神たちを統率し、真剣に女神族に立ち向かい続けた。魔神族を女神族に勝たせて戦争を終わらせるために。
…どこか片手間に、嫌々 戦っていた己 とは違って。 - 「そんな時さ エリザベスと出会ったのは」「―――オレの世界は一変した」
脳裏に浮かぶ、彼女との出会い。純白の四枚羽を広げて、まさに燦然と天に浮かぶ彼女を、魂を捕らわれたように見上げていた。
「大切な存在 のいる喜び」「大切な存在 を護りたい気持ち」
「オレはやっと弟を理解した」 - 「あいつには とっくにいたんだ」「護るべき大切な
存在 が」
恋に上気した弟の顔を、メリオダスは思い浮かべる。
実際には、一度たりとも、弟のそんな顔を見たことはなかったはずだ。彼は己の恋を大っぴらにしていなかった。恋人が、魔神族に隷属する下位種族の姫だったからだろう。誇り高き魔神族、まして魔神王の息子の相手としては、足りぬと思われたはずだ。 - 「…ほとんどの魔神族が たいした理由もなく女神族や他種族と争いを起こす中」「ゼルドリスは自ら恋人を護るため非情な処刑人として戦うことを望んだのさ」
- メリオダスは話を接いだ。
「一方で オレはエリザベスと共に 不毛な争いを終わらせることを誓い 魔神族を裏切った」
魔神族を裏切り、女神族の陣営に付いたのだ。魔神族に勝利して戦争を終わらせるために。
「それが聖戦のキッカケになるとも知らずにな…」
エリザベスは、メリオダスと自分が愛を示せば、女神族と魔神族が対等の立場で和解できると信じていたのだろう。むしろ争いが激化するなど、実際にそうなっていてさえ、認めきれていなかったように思える。
◆ああ…。メリオダスが魔神族を裏切った経緯は、そうせざるを得なくなる陰謀があった等の特殊な事情はなく、マジに、短慮浅薄な行動に過ぎなかったのか。
「弟を理解した」のに弟を裏切る辺り、自分の行動が魔神族にどんな悪影響を及ぼすか、考え至ってなかったんだろうなあ。(メリオダスはともかく、この方法で怨恨も生まれず殲滅戦にならず対等に和解できると本気で思ってたらしいエリザベスの思考は、私には理解し難いです。)
ゼルドリスは恋人(ゲルダ)だけでなく魔神族全体をも護るべき存在だと思っていたようですが、メリオダスは恋人(エリザベス)至上だったように読めます。後々 免罪符が更に追加されそうではありますが、現状、結果として そうなっていますよね。 - 「<十戒>統率者の裏切りは 思わぬところでの ひずみも生んだ」「魔神王に隷属することを不服としていた配下の吸血鬼一族が 魔神王への謀反を企んだんだ」
彼ら吸血鬼王族は、混沌の母より生まれし、不死に限りなく近い種族だという。
王イズラフを中心にした六人組で、他種族の血を吸って下僕と成す。日光に当たっても塵になることはないが、夜間には闘級が倍になる。 - 「でも 謀反は失敗し」「魔神王は 吸血鬼一族を見せしめに処刑するよう ゼルドリスに命じた……」
その場面をメリオダスは見ていない。しかし想像はした。剣を携えて歩み寄る鉄面皮のゼルドリス。屈辱に震えて身構える吸血鬼王族たち。
「自分の手で」「恋人を殺せと」
そして『彼女』は微笑んでいたのだろう。己を処刑に来た恋人 を優しく見つめながら。 - 「―――その時の あいつの苦しみは どれほどのものだったろうな」
想像の中のゼルドリスは、普段の鉄面皮を悲憤に歪めていた。剣の柄を握る手に力を込め、俯き、歯を食いしばって声を殺しながらも涙をこぼす。 - 「………団ちょ」
沈黙したメリオダスの背を、バンが気遣わしげに見つめた。 - 「メリオダス殿……」
ワイルドも言葉のない様子だ。 - 「これで以上だ」
こらえるような声音で、メリオダスは話を断ち切った。
「一番いてほしい時に傍にいてやれず」「一番頼りてえ時に役に立ってやれず」
振り向いて切なげな微笑みを浮かべる。風が彼の金髪を嬲っていった。
「弟の大事なものを奪っちまった」「つまらねえ兄貴の話は」 - 「…つまらなくなんかねえよ」
痛ましげに呟くバン。
◆何故か「メリオダス可哀想…!」という空気になってますが、本当に可哀想なのはゼルドリスです。 - 実際には、ゼルドリスは恋人を殺していない。吸血鬼王族全員を石棺に封印してエジンバラの洞穴に置くことで片を付けたからだ。魔神王も それを許している。
- その封印は、原因不明ながら12年前に解除されて、復活した吸血鬼王族は人間族を襲い、エジンバラ王国を一夜で滅ぼした。
<蒼天の六連星>のデスピアスは、その唯一の生き残りである。彼の背には、その時 吸血鬼に付けられた傷が、未だ消えずに残っている。 - 吸血鬼化したエジンバラはリオネスに侵攻を目論んだ。調査と討伐に向かったのが王国騎士時代の<七つの大罪>で、その際、バンも吸血鬼王族の一人を倒している。そしてメリオダスは、その時 初めてゼルドリスの恋人ゲルダと対面し、彼女に「殺して」と乞われて応諾したのだった。
- しかし、それらの顛末をメリオダスは語らなかった。不要と思ったのか、得意の秘密主義か。恐らくバンは、この話と自身の過去が交差していることに気付いてはいまい。
- 「で? もう一人の弟の話は?」
ブギッと鼻を鳴らし、ケロリとして ワイルドは尋ねた。空気が読めない…というだけでなく、同情に浸れるほどメリオダスとの付き合いが長くないからだろう。 - 「ワイルド!!!」と、バンが目と歯を剥いて咎める。
- 泣き笑いのような顔で、メリオダスは「にしし」と笑った。
「その話は また今度に――――」
そこで、目を大きく見開いて硬直する。
「………!?」
頭を両手で抱えて、グラ…とよろめいたので、バンが驚いて呼びかけた。
「どした団ちょ!?」 - 応えず、メリオダスは片手で己の後頭部を押さえたまま、ひどい顔色でフラついている。
「なんだ? おかしい エスタロッサとの記憶が…………」「なんで あいつのことを………?」 - ただならぬ様子に戸惑い、顔を見合わせるバンとワイルド。
- 不気味な声が響いた。
「お前も気付いたか …儂と同様 何も思い出せぬことに」「ハ… ハ…」 - 「こ… この声は…!!」
眉根を寄せて周囲を見回すバン。 - 「間違いない ――奴だ!!」
とワイルドが叫んだ。 - 「それにしても 呆れるほど女々しい奴よ」「やはり
感情 は我が息子には不要な存在だ」 - 声の主を捜したバンは、見上げた空に釘づけになった。
高地の奇岩上に立つバンたちの周囲には、更なる高さの奇岩と峰々がそびえている。その一つに、まるで肘掛けでもあるかのように片手を置いた、超巨大な姿を見たからだ。 巨人族 さえ、この男なら片手で掴んで持ち上げることが出来るだろう。- 漆黒の大角兜と全身鎧、蠢く闇のマントをまとい、豊かな顎髭を胸まで垂らしている。腰には相応しい大剣。老齢ではあるが、あまりに頑健に見え、気配は禍々しい。
- 煉獄の けぶる大気のなか、魔神王が姿を現していた。
- 次回「永劫なる戦い」
ついに魔神王出現。
ところで、第182-183話と比較すると、場所も様子も全然 違いますね。
↓第182-183話で魔神王が出現した場所
円筒状のトンネルのような、巨大生物の内臓の中のような場所に見えます。空はありません。
↓そして、今回 魔神王が出現した場所
浸食系の奇岩が並ぶ高地地帯に見えます。空は広く高く開けています。
魔神王は現世に繋がる門を護っているという。
つまり同じ場所から動かずにいるはず。
なのに、出現した場所の景色が全く違います。なんでじゃろ?
また、今回登場した魔神王は「実体がある」存在のように見えました。
でも第183話に登場した際は、地面の あちこちの亀裂から湧いた黒モヤが集まった巨大な黒影で、「実体のない」存在であるかのように描写されていたのに。
煉獄は「死後の世界」の一端だと思っていたので、そこに封じられている魔神王は、てっきり、亡霊なんだと思っていました。黒モヤだったし。
でも、今回の煉獄編で描かれた様子だと、煉獄は実体のある生物たちの生まれ育つ「異世界」で、死後の世界ではないっぽい?(汗) 一応、死者の魂も堕ちるらしいけど、メインの住人ではないらしいし。
思えば、メラスキュラが「
「煉獄を彷徨う魂たちよ」「この世に未練を遺す魂たちよ」
と呼びかけていました。
でも、呼ばれて来たのは「死者の都」にいたはずのエレインの魂でした。
えっ、煉獄と死者の都って同じ場所なの?
いやいや、作者さんが読者の質問コーナーで違いを(つまり、違う場所だと)語ってました。(死者の都は魂の安住の地、煉獄は魂の牢獄だと。)
じゃあ なんで、「煉獄の魂」を呼ぶとエレインが来たのか?
同じ術で蘇ったザラトラスの魂は、呼ばれるまでは煉獄にいたのか?(10年前に死んだのだから、520万年くらい煉獄にいたの?)
あと、今回の煉獄編で描かれた設定だと、煉獄に堕ちた魂は漏れなく自我を失って真っ黒ケモノになってましたが(そうならなかったのはバンだけ、と持ち上げられてた)、ならば煉獄に堕ちた魂は「この世に未練を遺す」コトは出来ないのでは? 自分が何者かも、何を遺してきたのかも忘れてるんだもの。
更に遡れば、連載初期、エレインが赤き魔神が吐いた炎を指して「煉獄の炎」「自然ならざる魔力」と言っていましたっけ。
あたかも魔神族が煉獄出身であるかのような表現でしたが、現行の設定だと、煉獄と魔界(魔神族の世界)は別世界として扱われています。
ならば、魔神族の操る「獄炎」が、どうして「煉獄の炎」と呼ばれていたのでしょうか??
まだまだ、色々 謎ですね。
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ホークの謎
ホークは、煉獄時間で800万年ほど前に魔神王に攫われて、メリオダスの監視役として現世に送られていたのだそうです。
メリオダス曰く、それ以前は現世の普通の動物を使っていたが、すぐに死ぬので、頑丈な煉獄の生物に目を付けたのだろうと。
…え?
いや。ホークが「魔神王の目」足り得たのは、彼が煉獄と繋がっていたからでしょう?
そして、ホークが煉獄と繋がっていたのは、彼が煉獄で生まれた生き物だったからじゃないんですか?
なんか、クラインの壺のごとく、話が捻じれてるよーな。(^^;)
えーと。
メリオダスの発言を真とするなら、ホークが煉獄と繋がっていたのは彼の出自とは無関係で、魔神王の力であると。
ならば、ホーク以前の監視役だった現世の動物たちも、魔神王の力で、みんな煉獄と繋がっていたってことですかね。(;^ω^)
メリオダスがそう語った場面の背景に、過去の「監視役の動物たち」の姿が描かれていました。
…ワンドルが描かれていますね。
番外編『相棒』では、ホークはワンドルの生まれ変わりであると暗示されていました。
ワンドルが死んだ年の二ヶ月ほど後にホークが「ホークママの中」から生まれています。また、ホークの尻にあるのと同じ四葉マークがワンドルの胸にあるので、てっきり生まれ変わりの印だと思っていたのですが。
実はワンドルとホークは生まれ変わりでも何でもなく、四葉マークは「魔神王の目」の印だったのでしょうか?
…ただ、そう定義すると新たな疑問も湧きます。
ホークが人語を喋るのが「煉獄の生き物だったから」ならば、ワンドルが人間並みの知能と自我を以て人語を喋っていたのは何故だったんでしょうか?
てっきり、ワンドルもホークも同じ一つの「魔物」で、3000年、色々な動物に姿を変えては生まれ変わってメリオダスに付いていたのかと思っていました。だから普通の動物とは違って「知能が高く、人語を喋る」のかと。
ワンドルが、魔神王に目を付けられただけの「普通のオウム」だったならば、物真似・オウム返しのお喋りはできても、人間と同等の会話はできないはずです。
それとも、「魔神王の目」になった動物は、同時に「人間並みの知能と会話能力」をも付与されていたのでしょうか、魔神王によって。
…そうだとしたら、魔神王が動物をメリオダスに付けたのって、監視目的だけじゃなく、メリオダスが孤独にならないよう、可愛くて賢いペットを与えてたってことなんじゃあ…。(割とマジにそう思った。)
死なないようにはしてあげたけど、人間界を彷徨うメリオダスが心配だな。よーし、GPSと安全確認カメラを付けて見守ろう。どうせなら可愛いペット型がいいかな、人語を喋れるようにしたら、メリオダスも淋しくないぞ。これでパパも安心だ!
…的な(笑)。
今回の話で、メリオダスが「監視役の動物」を父に付けられていたことを、あたかも「オレは昔から知っていましたが何か?」って感じに語っていて、気になりました。
あれ? つい最近、やっと気付いたんですよね?
昔から気付いていたんなら、ホークやワンドルらと行動していた時は、父親同伴のような気分でいたんでしょうか?
それは置いといて。
前掲の「監視役の動物たち」の絵の中に、第265話のエスタロッサの回想に思わせぶりに出てきた、「エリザベスが助けた小犬」がいないのは気になりました。
あの小犬はホークや「監視役の動物(メリオダスの相棒)」とは無関係?
では、エスタロッサが「思い出せない」あの小犬の名は……。
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この場合、可哀想なのはメリオダスなのか?
メリオダスが、ゼルドリス関連の過去を、バンに語りました。
とても いいことだと思います。心を開いてきてますね。
でも、別の部分が気になりました。
話を終えたメリオダスは「俺は つまらねえ兄貴だろう?」と泣きそうな顔で儚げに微笑む。するとバンが、痛ましげな顔で「つまらなくなんかねえよ」と同情する。
哀しく切なげな、メリオダスが可哀想…という空気が流れていました。
うーんん。
皆さんはどう思いましたか?
「なぁ ゼルドリス」「お前は 封印の眠りの中で恨んでいるんだろうな」「できそこないの
兄貴 を……」
と言った場面では、切なく思って、メリオダスが可哀想に感じられたものでした。
この当時はまだ、メリオダスが魔神族を裏切ったのは、恋愛以外の やむにやまれぬ事情…誤解や陰謀があったのではないかと期待していたからです。
メリオダスが、本当に「エリザベスのためだけに」家族も仲間も捨てたとは思わなかった・思いたくなかったこともあり、弟を想う この発言には人間味が感じられ、切なくも嬉しく感じられたものでした。萌えでした。
しかし。
あれから三年。本編で様々なエピソードを読んできた今となっては。
申し訳ないけど、メリオダスさんてば色々と身勝手な男だな~と感じるので、複雑な気分です。
少なくとも、今回メリオダスが語った範囲では、メリオダスはちっとも可哀想じゃない。可哀想なのはゼルドリスですよね。
なのに、なんで「メリオダスにバンが強く同情する」流れになっちゃうんだろう。
もう一つ気になったのは、メリオダスが、まるで魔神王が わざとゼルドリスに恋人を殺させたかのように語っているところ。
『エジンバラの吸血鬼』や第235話扉絵(隠れて抱き合っているゼルドリスとゲルダ)を見る限り、ゼルドリスの恋は身分差ゆえの禁断の愛で、周囲には隠されていたもののように受け取れます。他の吸血鬼王族たちも知らなかったようですから。
つまり、魔神王も知らなかったんじゃないか?
知っていたとして、わざわざ「ゼルドリスを」苦しめる必要もありません。(それとも、実はゼルドリスも吸血鬼王族の謀反に加担していたんでしょうか?)
もしも、魔神王がゼルドリスを苦しめるために処刑を命じたなら、殺さず封印するに留めたのを見逃したのは、おかしくないでしょうか。
そう、ゼルドリスは恋人を殺していません。封印しただけです。そして、封印から解かれた吸血鬼王族を討伐したのが<七つの大罪>でした。
メリオダスは、その経緯を説明していません。
何が言いたいかというと、話を省略・選択して、魔神王が悪いみたいに操作してるなあと(苦笑)。
そもそもです。
ゼルドリスに悪いことをした、と「同情に値するぐらい」後悔してるにしては、メリオダスの言動ってそぐわないものが多くないですか?
16年前、<七つの大罪>を集めたら<十戒>を倒して呪いが解ける、と思ったときは
<十戒>(ゼルドリス含む)を討てると、そりゃ嬉しそうに にしし笑いしてたし。
封印から甦ったゼルドリスと初めて顔を合わせた際にしたのは、暴力による「ほんの挨拶」と、事実上の宣戦布告でした。
少なくとも ここでは、全く謝罪しなかった。
そのずっと後、魔神族陣営に「エリザベスのためだけに」戻ってゼルドリスを暴力(と、
「ゼルドリス …許せよ」「こんな兄貴を」
と、やっと本人に謝罪してはいるんですが。(背を向けて)
こういう諸々のエピソードを見ていると、メリオダスさんは身勝手な男だよなあと思うのであります。
まあ、ここまで来たら、あとは和解して、3000年越しに とうとう、仲良し兄弟になるのかな?
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3000年前のメリオダスの性格
長らく、3000年前の…女神エリザベスと恋に落ちる以前のメリオダスは、冷酷で狂悪な「最凶の魔神」だったと語られてきました。
ところが ここ最近のエスタロッサの回想で、メリオダスは その頃から優しくて皆に頼られていたと語られ、違和感が生じています。
今回、「エスタロッサ」周りの記憶は信憑性が怪しいと示唆されましたので、彼の回想中の「優しかった兄メリオダス」も、間違った記憶なのでしょうか?
エスタロッサの回想の「
しかし決定的に違う点もある。
エスタロッサの回想では、メリオダスは弟に決して暴力を振るわなかったし、弱い弟を理解して、優しい励ましの言葉を掛けていました。
しかしメリオダスの語る過去では、メリオダスは魔神族のため真剣に行動していた弟が理解できなかったと言うし、殴っていた様子すら描かれています。
似ているようで、真逆と言えるかもしれません。
さて。
メリオダスは今回、明かしました。
3000年前の、最凶の魔神と呼ばれていた時代から、女神族との戦争を「くだらねえ」と思っていたと。また(戦争のことか、<十戒>統率者だったことか、次期魔神王候補だったことか、どれを指すのか判然としませんが)「嫌で嫌で しょうがなかった」とも。
おやおや。では、メリオダスも元々、エリザベスに負けない平和主義者だったんでしょうか?
個人的には、違うと思っています。
この「嫌で嫌で しょうがなかった」「くだらねえ」というのは、どちらかというと怠惰や無関心、
理由の一つは、恋人や仲間を護るため真剣に戦争に取り組んでいたゼルドリスを「理解できなかった」と述べていること。
何よりも、これまで本編に登場した「感情を奪われて最凶時代に戻ったメリオダス」の言動が、好戦的、かつ、傲慢で差別主義的だったからです。
エスカノールと対峙した際は、「下賤な人間」「人間か… 口には気をつけろ…」など、明らかに人間族(他種族)を見下す言動を取っていました。
エリザベスは「全ての種族に朝の光も夜の
以上から、最凶時代のメリオダスは、平和や融和を求める意味で「嫌で嫌で しょうがなかった」わけではなく、むしろ他種族や弱者を見下し・蹂躙することを
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今回、メリオダスが「女神族との戦争をくだらねえと思っていた」「エリザベスと共に不毛な戦いを終わらせるために魔神族を裏切った」と語ったので、例によって不毛に、ごちゃごちゃ考えてしまいました。
※ウザいこと この上ない内容なので、嫌な人は読まずに自衛をお願いします。※
魔神族を裏切って女神族陣営に付くことで、戦争を終わらせる。
素直に考えれば、 女神族側の戦力を増大させ、魔神族側を敗北させる・戦争続行不可能なほど疲弊させることでの、女神族主導による戦争終結を狙った、ということになるでしょう。
それなら筋が通っているので、なるほど、と理解できます。
ところがエリザベスは「全ての種族は平等であり、魔神族を救わねばならない」と言って、(女神族を殺そうとしていた)魔神族を庇う行動をとりました。
この漫画では「素晴らしい行い」扱いになっていますが、個人的には釈然としません。その場の感情に囚われただけの、全体を見渡せていない行いに見えました。
あくまで対話による融和を目指したかったのなら、そもそもメリオダスを女神族陣営に引き込んで、前線で戦わせて魔神族を殺させていたこと自体、筋の通らない悪手に思われるからです。
そのせいで魔神族との仲がより険悪になり、戦争が激化していたというのに、どうして そこは省みずに、自分の正義を叫べたのでしょうか。
「愛」と「正しさ」は、必ずしも同義じゃないけれど、エリザベスは そこを混同しているように見える時がある。
愛のためなら正しいか? 愛があるなら皆に優先されるべきか?
キング&ディアンヌの過去修業編で見た、
魔神族陣営にいても女神族陣営にいても不満、だったらしい。
別の やり方を選べばよかったのにね。
ゼルドリスを苦しめたことを「つまらねえ兄貴の話」だと物哀しげに述べたメリオダスは、戦争を止める やり方に「裏切り」を選んだことを、正面から後悔できているのでしょうか。
この漫画では戦時中の「裏切り」を、それほど大したことではないと定義している節があります。しかし、次期王にして軍のトップが「色恋に目が眩んで」自陣営を捨て、敵の前線に立って元味方を殺したっていうのは、物凄いことだと思うんですよ。
少なくとも、胸を張れる「正しい行い」ではないと思う。
戦争を終わらせたかったと正義を語るけれど、そのために やったことは、悪いけれど、幼く思えます。
裏切り者のメリオダスを「正義と悲劇のヒーロー」として描くなら、彼が捨てた魔神族が よほどの悪であるとか、捨てるしか方法がなかったとでもするしかない。
しかし この漫画では、魔神族も悪い連中じゃない、魔神族にも正義がある、むしろ女神族が悪で魔神族は可哀想なのだ、という風に語ってくるので、ますます困惑します。
魔神族に正義があって悪くなくてむしろ女神族こそ悪い(あるいは、どっちもどっち)なら、なんでメリオダスは魔神族を捨てて女神族に付いたのよ?
…と、思っちゃいますよね。