【感想】『七つの大罪』第284話 希望への扉
週刊少年マガジン 2018年 44号[2018年10月3日発売] [雑誌]
第284話 希望への扉
- 「自分に向けられた どんな攻撃と弱体化も治癒と強化に変換…つまり「反転」させる」「それが「
支配者 」の魔力の正体だ!!」
朗々とメリオダスは語った。まるで推理小説クライマックスの探偵のように。 - 「メリオダス… いいや我が息子の感情よ」「貴様が現世へ戻ることは儂が絶対に許さぬぞ…」
両手両膝をついた状態で、それでも魔神王は譲ろうとしない。 - 「押し通る!!!」
叫ぶや背の剣を抜いてメリオダスはダッシュした。ワイルドとバンも並ぶ。 - しかし剣が振り下ろされることはなかった。
予めの打ち合わせだったのだろう、彼らは魔神王の脇を ただ駆け抜けたのだ。 - 「させん!!!」
一瞬 虚を突かれたものの、這いつくばったまま魔神王が右手で大剣を振りかぶる。 - 「させろって~の♬」
振り向きざまにバンが左手を差しかざした。
“贈与 ”
己の生命力を魔神王に注ぎ込む。 - 「…っ」
息を呑んだ魔神王の動きが止まった。 - 「バン!! 何やってる!!」
先に行っていたメリオダスが咎めたが、バンは完全に足を止めて魔神王の前に立ち塞がり、メリオダスを促す。
「さっさと扉を見つけろ♬」 - じっと動かない魔神王の剣持つ手が微かに震えていた。間違いなく効いているのだ。
「俺の無限の命を喰らいやがれ…♬」
己の新たな技 だけが魔神王にダメージをもたらせる。その確信と自負を込めて、追い打ちとばかりに一層の力を送り出した。
「ハアアア…ッ」 - 一方。
「メリオダス殿 やはり あったぞ!!」 - ワイルドの呼び声にメリオダスは駆け寄った。
「現世 への扉だ…!!」 - 想像していたような「門扉」ではない。大地に口を開けた直径20mほどの大穴だ。内部の壁には螺旋状に筋が巡り下り、奥底は不思議な光に輝いている。
- 「ぐああ… が…ああ~~~~!!!」
そのとき響いた野太い悲鳴に、ワイルドとメリオダスはハッと顔を向けた。 - 「こいつ……力が戻った!? …ぐ…が!!」「どうなってやがる…!!」
魔神王が立ちあがり、左手にバンを握って「ハ…ハ…ハ…」と笑っていたのだ。 - 「…どうもこうも魔力を切っただけのことよ!」
手の中のバンに平易に解説する。
「つまり貴様は儂に負わせたダメージをわざわざ回復したわけだ…」 - 「
支配者 」は任意で使用と不使用を切りかえられる。可能性に思い至らなかった、慢心がもたらした結果だった。 - 「くそが… ナメんじゃねえ…ぞ」
バンは憤怒し、全身に力を込めて魔神王の指を こじ開けようとするものの、ビクともしない。 - 「ほう… 人間の分際で ここまで儂に抗うとは」と魔神王が感嘆の息を漏らしたとき。
バキッと音を立てて彼の五指は開き、空っぽの拳指は衝撃に震動していた。 - 「フン」
鼻を鳴らして彼は足元に目を向ける。 - 地に片膝をついたバンを背に、魔神王の拳指を打撃したのだろう剣を構えてメリオダスが立っていた。
「団ちょ!!」と呼んだバンに
「ここはオレが食い止める!!」
と凛々しく返す。 - 「…ふざけんな!! お前が戻らなきゃ意味ねぇんだよ!!!」
「三人いっぺんに逃がすほど魔神王 に隙は ねえ」
バンは悔しげに歯を噛んだ。
「…必ず来いよ」
「ああ」
メリオダスは魔神王から目を離さない。 - 父子は剣を片手に睨み合った。
- 「誰一人 その扉は潜らせん」
無造作に振り下ろされた父の一閃に呼応するように、息子の剣が振り上げられる。全反撃 でも使ったか、莫大な衝撃波が弾けてメリオダスの前の大地を抉り、土煙が魔神王の巨体さえ覆うほど吹き荒れた。 - 彼の後方にいたワイルドやバンも暴風に襲われ、舞い飛ぶ瓦礫に それぞれ耐える。
- やがて風が鎮まると、メリオダスの周囲は背後の一帯…現世への扉たる大穴と、その近くに立つワイルドとバンを載せた円い台地しか、無事には残っていなかった。その他の周辺は抉れて低地になってしまっている。
- 「今のうちだ二人共…!!」
そう促したメリオダスは未だ目前の魔神王だけを見据え、その巨体の足元も円く台地状に残っていた。父子は それぞれ円形のステージに立っているかのような状況だ。 - 「許さんぞ…!! この父に背き逆らう出来損ないめ」
魔神王が高圧的に吐き捨てた。
「オレはアンタを一度たりとも父親と認めたことはねえぜ?」
メリオダスは眉を吊り上げて反発する。
◆父親と認めたことがない……じゃあ、はは…お…グフッ。
実際は、メリオダスは何度も魔神王を「オヤジ」と呼んでいます(笑)。
魔神王もメリオダスを後継者にすると譲りませんし、してみるに、これはホントに「親子喧嘩」なんだなあと思います。 - 「わからねえのは その出来損ないに固執する理由さ!!」
メリオダスは先手に出た。二跳びで魔神王の足元に飛び込み、三跳びめで彼の目の高さまで跳ね上がって剣を薙ぎ振るう。 - 「貴様は破壊者だからだ…!!!」
魔神王も大剣で薙ぎ返し、激突した二剣は激烈な衝撃波を生み出した。 - グワキィィン
- 再び瓦礫と猛風の荒れ狂うなか、
「バン殿!! 先に扉へ入ろう!!!」
と大穴の縁から促すワイルドにバンは逆らった。
「だめだ!! 団ちょを残してはおけねえ」 - 「破壊者はアンタだ!!!」
ネジのように横回転して断続的に剣を当てながら落ちていくメリオダス。その攻撃の全てを魔神王は大剣をかざすだけで容易く受け止めている。
◆メリオダスを後継者に見込むのは「破壊者だからだ」と父は言い、息子は「破壊者はアンタだ」と言い返す。
なるほど、彼らは似たもの親子なんですね。
魔神王の言う「破壊者」とは、単に乱暴な気質とか破滅的に強いとかいう意味でしかないのか。それとも、魔神王という存在であるためには何かを「破壊」できる素養が必要ということなのか。 - 地上に軽く降り立ったメリオダスの前に、追って先を突き立てた大剣が地を抉り裂きながら迫った。
- 「オレは魔神王の座なんかに興味は ねえ…」「ただ くだらねえ争いをやめさせてえだけだ…!!」
避けずに、大剣と比せば つまようじほどでしかない己の剣で真正面から受け止める。何たる力か。しかし すぐに押され、魔神王が剣先を振り上げきると地礫と共に跳ね上げられた。
◆心の底から社会平和を望むなら、魔神王になって戦争を止め・魔神族社会の平和と幸せに尽くすという方法もあります。王の責務を負い続けたくないというなら、成し遂げて後ゼルドリスに王位を譲ったっていい。
しかしメリオダスは頑なに王位を拒むので、ちよっと不思議な気もしました。200年前にキングに言った「王なんて自分のやりたいことをして気に入らねえ奴は殺すだけのクズ」という発言からして、メリオダスは王という存在そのものを苛烈なほど軽蔑しているようです。どうしてでしょう? 父親の思惑通りにするのが嫌ってだけ? - 「…やはり危険だな」
呟き、魔神王は力を込めて大剣を振り下ろした。 - ドンッ
- 舞いあがる土煙。
腕で顔を瓦礫から庇いつつ、遠く大穴の縁から歯噛みして見ているバン。背後のワイルド。肩越しに見えた常にない獣の毛羽立ちに、バンがハッと驚く。 - 「メリオダスは我が座を接ぐにふさわしい存在」
一方、魔神王は地にめり込んだ大剣を ゆっくりと持ち上げていた。
「余計なのは感情 だけだ」 - 大剣が地に穿った亀裂の底に、メリオダスは仰向けに転がっていた。
大地を切った大剣に打たれたというのに、なんということか、真っ二つどころか見た目は掠り傷ほどしか負っていない。とは言え、流石に すぐには起き上がれないようだが。 - 「…もう消えよ」
片手で持つ大剣の刃を下に向けた魔神王を、動けぬまま無言で睨みつけるメリオダス。
大剣の先が下ろされる。 - ズドンッ
- 「ぬ…」
魔神王が唸った。大剣は下ろさずに。
彼の胸鎧の真ん中がベコンと大きく凹んでいる。
「珍獣… 貴様!?」
巨体がグラ…とよろめいて、大剣の先をゆっくりと傍らに…メリオダスが横たわる亀裂とは別の場所に…下ろした。ズズ…と大地が呻く。 - 寸前までバンの背後にいたはずのワイルドは、今は亀裂の縁に立っている。彼が魔神王の胸に体当たりしたのだ。今まで何度そうしようとも てんで歯が立たなかったというのに、「
支配者 」の魔力が切られた おかげなのだろうか。 - メリオダスが亀裂の中から自力で這い出してきた。
「「!!」」
そして、遠く大穴の縁のバンと同時に驚く。ワイルドの姿をしっかりと見たことで。 - 「その姿は…」「いや その力はなんだ…!?」
二人の気持ちを代弁するかのように魔神王が尋ねた。 - ワイルドの毛並みは激しく毛羽立ち、全身から絶え間ない放電を続けている。
「“野生大解放 ”!!!!」
ブギャルルルと唸るワイルドの口から突き出す牙も、四叉に枝分かれして凶暴性を増していた。
「内に秘めし生命力を爆発させ 敵を討つ最終究極奥義よ!!!!」 - 「バカ野郎… 死ぬ気か!」
傷の痛みをこらえる仕草でメリオダスが咎めたが、構わず、ワイルドはメリオダスの遠く背後に見えるバンに顔を向けた。
「バン殿!! 扉の前へ!!!」 - 「?」
戸惑いながらも、素直に穴の縁へ一歩退がるバン。
「あいつ… 何する気だ?」 - 直後に振り上がった。短い後ろ脚が。
- パカン
- 猪の後ろ脚で蹴られてボールのように飛んだメリオダスを、バンは慌てて正面から抱きとめた。
「が!!!」 - 「!!!!!」
ハッとする魔神王。抱きとめたメリオダスごと、バンが すぐ後ろに口を開けていた大穴の上に吹っ飛んだことに気付いたからだ。
「逃がすか!!!」
駆け寄って左手で掴もうとしたところを
「ぬが!」
ゴキャ
電光まとう猪に縦回転体当たりされて仰け反った。
◆慌てちゃって「支配者 」の使用 を忘れてるドジっこパパ(笑)。 - 「フー」「フー」
荒い息を吐くワイルドは びっしょりと汗に濡れ、呟く。
「どうやら ここまで…」
全身からドバッと血を噴き出させ、彼は仰向けに地に崩れ落ちたのだった。 - (…800万年 耐え忍んだ甲斐は十分にあったな マイルドが生きていたこと マイルドの成長が知れた… 全ては お主たちのおかげ)
(弟に会えぬことは心残りではあるが やはりマイルドには存在も知らぬ兄よりも二人のような友が必要なのだ……きっと) - 血を噴き倒れたワイルドの姿は、ほんの一瞬メリオダスたちの視界を掠めた。バンは驚きと悲痛に顔を歪め、メリオダスは伸び上がるように左手を伸ばしたが届くはずもない。
- (メリオダス殿)(バン殿)
- 煉獄の風景はたちまち遠ざかり、大穴の底にあった不思議な光に全ては呑み込まれていく。
- (…達者でな!!!)
- 60年来の
戦友 を残し、扉は光に満ちて、望む世界へと二人を帰還させた。 - 次回「その先に
在 るもの」
数話前のオスローに続き、今度はワイルドが犠牲に~~!! …と、パッと読んだときは思ったのですが。
これ、死んでないですよね(^^;)。真っ黒になっても生き返ったホークの兄だというコトを別にしても。
第一に。
ワイルドの
第二に。
最後にワイルドが血を噴いたのは自壊であって、魔神王は彼に何もしていない。
羽無し時代のキングが真・霊槍を使うと、全身から血を噴いて瀕死になってたじゃないですか。ワイルドのも、それと同じだと思うのです。大ダメージは負うけど死ぬわけじゃない、と。
多分、魔神王は瀕死になったワイルドを殺しはしないと思います。メリオダスたちと60年なら、魔神王とは800万年の付き合いです。殺そうと思ってたなら もっと早くやってたと思いますから。
気が向くなら手当するかもですし、機嫌が悪くても、遠くの安全な場所に運んでやったりするんじゃないかな。
平成初め頃のアニメやゲームでは、今まで主人公チームと関わったり・やむなく退場したりしていたキャラたちが最終決戦に助っ人として勢ぞろいするパターンが流行ってた気がします。そういう展開だと、きっとワイルドも その中の一員として颯爽登場してくれるんでしょうね。
この漫画ではどうなるでしょうか。
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慢心の結果
キングが超パワーアップして華々しく大活躍したので、次はバンの番なんだろう(バンだけに)、きっと超パワーお披露目して大活躍するんだろうなと思っていました。
…確かに、魔神王攻略の不可欠の一手となったのは、バンが新たに会得した「
ところがです。
己の新技を過信したバンは、魔神王を足止めしようと余分に追撃。
まんまと回復させてしまったうえ捕らえられ、仲間たちの足止めになるという大失態を犯してしまうのでした…。
えええええ。(;´・ω・)
そんな彼をカッコよく救うのはメリオダス。何故かパワーアップ(?)していて、魔神王と ほぼ対等に斬り結ぶ。
メリオダスが追いつめられると、次はワイルドが超パワーアップして魔神王を怯ませ、我が身を犠牲にバンとメリオダスを現世へ戻すのでした。
その間、バンは棒立ちです。
先に扉へ入ろうと促したワイルドに従わず、メリオダスの危機にも助っ人せず。
彼を中心にして この危機をクリアするんだとばかり思っていたのに、まさかの「失敗して仲間を危機に陥れる」「みんなに護られるお姫様」ポジション。
もしや、この一件は彼の負い目の一つになってしまうのでしょうか。
…このガッカリ感は、キング&ディアンヌの修行編序盤に感じたものと似ています。二人の修行編なんだから当然二人が主役だ、大活躍が見られるだろうと期待していたのに、美味しいトコロでメリオダスが割り込んで「トドメ役」を取っちゃった時の、あの物悲しさと言ったらありませんでした。サブキャラの修行編でくらい花道を譲ってよ、と思った。
この煉獄編も、バンが主人公なんだと思っていたのに、蓋を開けてみれば やっぱりメリオダスが中心。確かにバンも超パワーアップしたし お役立ちの新技披露もしたけれど、その直後に失態、挽回の機会ないまま煉獄編終了という…。
なんだか残念でした。しょんぼり。
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主人公補正 効き過ぎィ!
捕らえられたバンを救い、魔神王に立ち向かうメリオダス。
ド迫力で斬り結ぶ!
最終的には負けたけれど、ほぼ対等の強さに見えました。
この場面。
メリオダス強いカッコイイ! と思うべき見どころなんでしょうが。
正直、戸惑う気持ちの方が強かったです。
だって、煉獄にいるメリオダスは、本体から切り離された感情の一部に過ぎない。それ故に「とても弱い」という設定だったはずなのに。
煉獄の原生生物にすら まるで敵わず
「あくまでオレはメリオダスの感情… 魂みてえなもんだ」
「煉獄から脱出しようにも……必ず お前の足手まといになっちまうな…」
それから500年経過して、バンが煉獄の原生生物を片手で倒せるようになった頃も 、メリオダスの方は てんで駄目。
「
体力差も如実で、バンが両手をポケットに突っ込んで笑ってお喋りしながら走るのに、荒い息を吐いて少し遅れて どうにか付いていく状態。
怪鳥に尾を巻きつけられたら自力では抜け出せず、お姫様のようにバンに助けてもらっていました。
そして、二人と一匹での魔神王との初戦でも。
バンが身軽に避けた瓦礫をメリオダスは避けられない。魔神王の剣からも、バンに庇ってもらっていたものです。
それが今回。
バンが魔神王の手に捕らえられて抜け出せずにいると、メリオダスが一撃で魔神王の手を開かせてバンを救う。巨大な魔神王の剣を受け止め、殆ど対等に斬り結ぶ。
オイオイオイ、おかしいじゃないか。ど~なってんですか?
魔神王と60年戦ってパワーアップしたんですか?
魔神王が「
…いや。そんな説明で終われる違和感じゃない。それだったらバンやワイルドも それ以上に強くなってないとおかしいし。
明らかに理屈に合わない強さになっている、この場面のメリオダスは。
いわゆる「主人公補正」というやつでしょうか。
確かに、バトル少年漫画において主人公が強くカッコイイことは大切です。
漫画の読み方は人それぞれ。
今週の この瞬間に燃えや萌えがあるコトこそ肝要、という読み方もあれば
前後のつながりを見てドラマを盛り上げていく読み方もある。
私は繋がり重視派なんで気になってしまいました。
感情メリオダスは弱い、という設定だった。
だから煉獄にいるうちはバンこそがパワーアップして、これまでとは逆に、メリオダスを庇って危機をクリアするのだと思っていたのでした。バンに花が持たされ、メリオダスはサポート役に回るのかと。
しかし「主人公のメリオダスこそ強い」という補正が、ここでも入ったようですね。
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現世に戻ったバンとメリオダスは、どこからどんなふうに現れるんでしょうか。
ホークの目から出る?
ホークママの鼻か口かお尻から出る?
ドルイドの聖地の修練窟から出る?
バンはそのままの姿で帰還するのが当然として、感情メリオダスはどうなるか。
まさかの感情メリオダスも実体を伴ったまま現世に現れて、メリオダスが二人いる状態になる?
それとも、アイテムかマスコットか何かに姿が変わる?
はたまた、繭の中で眠ってた本体メリオダスが感情を取り戻した状態で目覚める? そんで、メリオダスは正義ですってことになり、問答無用で戦いを挑むリュドシエルが悪人扱いされて排斥される系の、哀しい展開になっちゃう?