【感想】七つの大罪ゲームブック <豚の帽子>亭の七つの大冒険
てきとーな人間によるてきとーな感想なので、てきとーに読み流してくだされ。
久々の『大罪』ゲームブックです。
二年前の前巻に比べて、難易度が かなり落とされていると感じました。
謎解きは前巻以上に平易で、物語も七本の短編に分割されているため、サクサク読み進めることが出来ました。
プレイヤーキャラが小学生っぽい小柄な少年または少女にデザインされていたこともあり、より児童書的な印象が強まっていたように思います。
(デザインは原作者さんの描きおろし。とっても可愛いです。また、原作者さん描きおろしの挿絵が色々あって嬉しかったです。ナイフやら小石やら、様々な小物のカットまで描き下ろされていて豪華でした。)
ただ、全クリアのご褒美のハズの「<七つの大罪>から きみへのメッセージ」は、もう少し複雑さがあるとよかったなあ。二文字くらい入れた時点で、どんな言葉なのか予想できちゃうよ~…。(そして予想通りであった)
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ここから先は、ストーリーや設定への感想…もしくは、ツッコミです。
ネタバレなので、ご注意ください。
そもそもこのゲームブックのお話は
時は、かの王都の決戦、陰謀により無実の罪を着せられていた騎士団〈七つの大罪〉が、黒幕を倒した後です。『七つの大罪』本編では、続いて強敵〈十戒〉との戦いがはじまるのですが、この本の冒険は、その中間に当たる、つかのまの平和な日々――「ありえたかもしれない」パラレル・ストーリーです。
だそうで、原作とは異なる世界線の物語です。
そこに「原作と矛盾してる」とツッコミを入れたり、反対に「こんな設定があったのか、このキャラには こんな面があったのか」と原作と同一視して一喜一憂したりするのは、ハイ、無粋でマヌケですよね。(;^ω^)
まあでも、気になったことをメモしてみたので、ゆるーい気持ちで眺めていただければと。
ディアンヌ編
巨人の塔の女の子
その村は、100年前に水蛇を連れた悪い巨人に襲われたのだという。
するとディアンヌが言うのでした。
「うん……。たしかに、ボクの太腿には『
蛇 』の印 があるよ」「ボクは、実は昔の記憶が抜けていて……思い出せない時期があるんだ。巨人族は人間よりも長生きだから……ボクは覚えていないけど、百年前この村を襲った『悪い巨人』だったのかもしれない……」
ディアンヌの太腿の蛇の紋様は、16年前の<大罪>結成時にマーリンが刻んだものです。
また、ディアンヌの記憶の欠落はキングと暮らした500年分で、消されたのは200年前。100年前のディアンヌは巨人族の里で暮らしており、その時期の記憶に欠落はないはず。
よって、ディアンヌが「蛇の印」と「記憶欠落」を理由に『100年前の悪い巨人は自分かも』と思うのは、辻褄が合わないです。
ディアンヌちゃん、確実にやってないことを、自分がやったかもと自白したりしなくていいのよ?(汗)
村を滅ぼす水害とディアンヌ、仄かに漂う後ろめたさ…というネタと空気感には、ちょっとだけ、小説『彼らが残した七つの傷跡』のエピソードを思い出しました。(<大罪>離散直後、逃亡中のディアンヌが、人知れず人間の村を水害系の災いから救ったが、それが遠因となって人狼族の村が滅んだ。しかしディアンヌはそれを知らない…って奴。)
バン編
レイブンズの盗賊試験
バンは<大罪>に入る前は、盗賊「バンデット・バン」と名乗っていた。
そして今でも、「バンデット・バン」は盗賊たちの間で伝説のヒーローとして憧れられているんだそーな。
「バンデット・バンは、すげぇんだぜ。この町で生まれたけど、ケチな泥棒なんかじゃない。ブリタニアじゅうを旅して回って、欲しい宝があればどんどん手に入れた。貴族や金持ちはしてやられた。騎士や聖騎士だって出し抜いて、まんまとお宝を盗み出したのさ!」
彼のようになりたい、と思う盗賊や盗賊志願者は後を絶たないようです。(メリオダス編に出てくるスレた盗賊も目標にしてた)
でも、バンデット・バンと<七つの大罪>のアンデッド・バンが同一人物であることは知られていない、と。
(原作では、ジバゴはバンがバンデット・バンだってことも、<大罪>のバンと同一人物だってことも知りませんでしたっけ。そもそも盗賊「バンデット・バン」は原作では有名人扱いは されてなかった気がする、現時点では。)
金持ちや聖騎士たちを出し抜いてお宝を盗み出す…。
カッコイイ「怪盗」みたいなイメージなのかな?
怪盗バンさん! 夢が広がりますね。
(そして、彼が盗んだものはキングが修理したり磨き直したりして返却して回るのである)
このお話、バンが少年たちに出した試練が道徳的・模範的で、クイズの感じといい、実に児童書っぽかった(笑)。友達は大事。泥棒になるなんてよくない。その通りですね。
自分の目的を果たすために仲間を犠牲にしろと命じられたらどうするか? という命題、前巻のゲームブックのバンのエピソードでも扱ってましたっけ。ゲームブック作者さんにとって、バンというキャラのキモは そこなんでしょうか。
キング編
なまけ者の妖精
この話は、主人公(プレイヤー)がヘルブラムの亡霊の干渉で、妖精たちの過去の夢を見る、というもの。パラレルワールドの、更に夢の話なわけで、そこにツッコミを入れるのは無粋の極み! …なんだけど。(^_^;)
ツッコミ1
ゲラードが
「黒い服で紫の長い髪をした女性だ。頭を黒い頭巾でおおい、片目だけ出している。」
と表現されていました。
しかし現時点の原作のカラーリングでは、ゲラードの服と帽子は緑~黄~赤のグラデーション、または濃緑一色。髪は金髪です。(ファンブック2の裏表紙、単行本26巻背表紙参照)
黒い服はともかく、髪が紫というのは、どこから出てきたのでしょうか?
…強いて言うなら、公式スピンオフ漫画『盗賊と聖少女』初回のカラー扉に描かれていたゲラードが、まさにそんな風なカラーリングでしたが…。(単行本では修正され、原作準拠のカラーリングになっています。)
ツッコミ2
キングやヘルブラムが健在なのに、エレインが
エレインが泉を守護する任務に就いたのは、キングが行方不明になった後です。それまでエレインは妖精界に住んでおり、人間界にある妖精王の森には、来たことすら殆ど無かったはずです。
- キングは「<豚の帽子>亭の居候」
この世界のキングは仕入れ係をしていないの? じゃあ誰が仕入れをしてるんでしょう。 - エレインは「見たところ、十歳くらい」
個人的には、12歳くらいかと思っていました。
バンさんの犯罪 臭が より上がった(笑)。羽生えと同時に頭身が伸びて良かったね。 - 妖精族は寿命が長いので、死後の世界や霊魂の概念が無い
じゃあ、キングが死者の都を探してたのは、人間かぶれした「妖精らしくない」行動だったのかな。
伝承上の妖精は霊魂や死後の世界と非常に関わりが深いので、なんとなく腑に落ちない気分になりました(笑)。 - 妖精族に文字はないが、各々の名前を示す「しるし」がある
皇室の御印章(お印)とか、幼稚園で持ち物に付ける個別マークみたいなもの?
これはイラストがありました。キング、エレイン、ヘルブラムの「しるし」だそうですが、どれが誰のなんだろう。
また、巻末にキングの字は下手だと書いてありました。
ええ…キングは字が下手なのか。(^_^;) 手先が器用だから字も綺麗かなと思っていました。(アニメ版を見るに、絵はすごく上手いですし。)
本来 文字を知らない妖精族だから、書き慣れないので字は下手なはず、という設定なのかな。
ゲラードが
「妖精王は、森から選ばれし王。『存在すること』が重要なのだ。毎日元気なお姿を見せてくださらないと、われわれ妖精は不安になってしまう……」
と言い、一般妖精たちが姿の見えないハーレクイン(キング)をオロオロと探し回っている描写がありました。
小説『セブンデイズ』で、エレインが兄の姿が見えないと不安になって探し回るという描写はありましたが、妖精族全体がそうだったの?(汗)
これ、複雑な気分になりました。
キングがそれだけ一族に頼りにされていると思うと嬉しいです。
けど。
「『存在すること』が重要」って言い方がなあ…。ゲームブック作者さん的には「妖精王は妖精界と妖精族統合の象徴である」ってな解釈なんでしょうか?
妖精王は、妖精界と妖精王の森を常に監視し、現実の武力で護っているし(哨戒も戦闘も交渉も、基本 一人でやってる)、森の植物の成長や間引きも行っている。神樹の力を受けて森を具体的に繁栄させているのは妖精王ですよね。
「『存在すること』が重要」だなんて、「実際には いなくても困らないけど、民衆を安心させるための偶像として必要」とも取れる感じに表現されると、ちょっとしょんぼりしちゃいますね。
存在するだけじゃなくて、体を張って働いてるよ! その働きゆえに必要とされてるんだよ! …と思うんだけどなあ。
前巻に引き続き、キングのエピソードは「ヘルブラムを失った後悔」を描いたものでした。これがゲームブック作者さん的なキングのキモ、なのかな。
この本の発売時、ちょうど原作がヘルブラムの亡霊の退場直後のタイミングだったので、ヘルブラム&キングのファンは大いに盛り上がったようです。
このお話では、キングの怠惰の罪を「平穏で退屈な日々に慣れきって、怠惰に過ごしたこと」だと定義していました。キングはそれを大いに後悔する、というオチ。
小説『七色の追憶』キング編と同じ解釈ですね。
小説を読んだときも思っていたのですが、私は、この解釈が好きではありません。
妖精界が、百年後も千年後も同じだと言い切れるほど平和だったのは確か。でも、その環境を作り上げたのはキングですよね。
人間族と和平の盟約を結んだのも彼だし、それでも侵攻してくる人間族と一人で戦って追い払い続けていたのも彼です。
あの平和はキングが努力して作ってたものでしょう。
平和に慣れきって警戒心を失くし災いを招いたのはヘルブラムであって、キングが「平和な時間を当たり前だと思って大切にしなかった・怠けた」せいではないと思うんだけどなあ。
この本で二番目にボリュームのあるお話でした。
ゴウセルが記憶が戻る前の性格なので、今となっては懐かしい。
また、ゴウセルが仲間たちを眠らせ、精神世界で「本に書かれていた物語」をお芝居のように再現させるというシチュエーションは、去年まで配信されていたスマホゲーム『ポケットの中の騎士団』のイベントでは定番で、これまた懐かしいなと思いました。
章扉に
この話のなかには、その番号へ進む方法がない文章も含まれている。それはニセの情報だ。
不注意や不正な方法で文章を見てしまった場合も、それが本当かどうかは一見わからないだろう。
正しく捜査し事件に挑むことだけが、真相へとたどりつく方法だ。そして、真相は一つだけとは限らない。
と大仰に注意書きされてあったので(注意書きがあるのは このお話だけ)、クリアしてから、ちゃんと「不正」に、番号を無視して頭から通して読みました(笑)。でも別に推理結果が撹乱されるような文はなかった気がするけど…。(お遊び文は幾つかあった。)読み飛ばしてしまったかも?
精神世界でのお芝居とはいえ、原作キャラたちが身勝手な動機で本気の殺人をするのは、あまり愉快ではなかったです。
特にキングの役回りは酷かった(苦笑)。他人に罪を擦り付けるわ、ディアンヌを脅すわ。そして一切報われない。しかし、やってることがゲスすぎて同情の余地もない。(原作でキングがメリオダスと喧嘩していた時期に書いたのかなあ、このお話。)
ディアンヌも近い。性格が原作最初期仕様のツンツンですね。そして団長 超愛してる。
反対に、メリオダスやバンは人格者の役でした。アレされるけど。
ゴブレットの入れ替えを止めた世界では、メリオダスはディアンヌと結婚したんでしょうか。そして数十年後に自己満足したら、ディアンヌを遺して自殺? なんだかなあ。
挿絵に描かれてあった<大罪>キャラたちの役柄に応じたコスチュームが素敵でした。
貴族っぽい服のメリオダス、キング。(キングのネクタイ、何気にシャスティフォル柄?)
(原作で着てたのとは違う)メイド服のエリザベス。
執事服のホーク。
お姫様ドレスのディアンヌ。
コックコートのバン。(コックタイがあるバージョンも希望!)
ホームズ風探偵スタイルのゴウセル。
殺人事件なので場面的には物騒ですが、みんな似合いますね。
このお話、主人公(プレイヤー)が「新たな事件が起きるまで、じっと待つ」みたいなのを二回くらいやらなきゃ話が進まないのが印象に残りました。
探偵とはそんなものなのでしょうが、事件が起きる前に動いてよ~…。
そして「推理小説の十戒を無視した」超自然的手段でハッピーエンド(笑)!
マーリン編
ミクロの冒険~エリザベスのひみつ
マーリン編と言いつつ、メリオダス×エリザベスのお話でした。
マーリンの魔法薬で『ミクロの決死圏』。
ホークちゃんが可愛くて頼りになるお話。恥ずかしがったり拒否したりするエリザベスも可愛い。
なんと、「メリオダスの料理」を食べると、料理そのものが体内でミクロの生物のように活動し、体に入り込んだ、バンさえ取り出せないほど小さな「魔神の種」を退治してくれる。それをメリオダス自身が自覚していて、意図的にエリザベスに料理を食べさせていた、という設定で、目ん玉ひっくり返りました。
ええー。
じゃあ魔神化したデールにメリオダスの料理を食べさせたら助かってたんですか。
それにしても、なんでエリザベスの体内に魔神の種が入ってたのか? なんでメリオダスはそれを知ってたのか?
何か読み飛ばしたのかもしれない。謎でした。
エリザベスの血に触れただけで魔神はジュッと焼けちゃうのに、頑丈な種である。
エスカノール編
王女からの手紙
この本で最もボリュームの少ないお話。すぐ終わります。
エスカノール編となっていますが、彼は「いるだけ」で、実質はグリアモール×ベロニカのお話です。
手紙のベロニカの口調が、あまり彼女らしくなくて違和感があったかも。
エスカノールは10年前は わんぱく三人組とも面識があったはずですが、互いに全然気づかないんですね。
この本で最もボリュームのあるお話で、チンピラが成り済ました偽の<七つの大罪>を懲らしめるネタ。
選択肢が多くてややこしかったです。
ところで、この本のメリオダスは「商売する気がなさそう」だそうです。
原作のメリオダスは結構 商魂たくましいのにね。
ニセモノたちの本物との相似や差異を笑う話。
キンダさんがスゲー嫌われてて苦笑。
大した力のない役立たずのくせに威張ってる愚か者、王様とか妖精とか言われてるのは馬鹿にされてるからなのに気付いてないとか。他の偽キャラはそこまで言われてないのに、この人はやたら仲間に貶されてたので印象に残った。
デモンナさんは偽キャラなのに終始カッコいい役回り。そして団長 超愛してる。
マリリンがマーリンの弟子希望者で、マーリンの魔法薬を色々盗んだという設定で、マーリンから盗めるなんて凄いんじゃないかと思いました。
このお話のラスボスを倒す方法は、トンチが効いていて面白かったです。
王都決戦後という設定ですが、何故か<七つの大罪>が未だ「大罪人のお尋ね者」扱いでした。
何故?
王都以外の田舎には情報が伝わってないってコトらしいのですが、<大罪>たちが店員である主人公(プレイヤー)にも正体を意図的に隠していて、何の意味があるのか不明。
あと、<十戒>から身を隠すため魔力を抑えてコソコソ移動して回ってたっぽい。この世界の<大罪>たちは何がしたかったんだろう?
ラストで正体を明かした<大罪>たちは、<豚の帽子>亭を主人公に託して、徒歩で<十戒>との戦いに去っていきました。ホークママを置いていったってことは、もう長距離の移動はしないってこと? その後、彼らはどうなったんでしょうね。
以上でおしまい。
ゲームブック楽しませていただきました。