【感想】『七つの大罪』第157話 乱れ舞い踊る挑戦者たち
週刊少年マガジン 2016年8号[2016年1月20日発売] [雑誌]
第157話 乱れ舞い踊る挑戦者たち
- 「メッ…」「メリオダス様がいっぱい!!?」
茂みから歩み出てきた十人近いメリオダスを前に、戸惑うエリザベスとホーク。 - 「オレたちの森を返せ…」
<メリオダス>が言った。「アーパインの森… 返せ」「勝手に森を造り変えた …元に戻せ」険しい顔で口々に責めたてる。
◆ん? この辺りの迷路が木で出来てたのは、元からあった「アーパインの森」とやらを造り変えた結果だったの?
じゃあ全てドロール(土地造成)の力だけで、タコ娘は関与していないのかな。 - 「ホークちゃん これって白夢の森の時と同じ…」
怯えるエリザベスに、ホークは頷く。
「ああ! こいつら たぶん ハイドアンドシークだ」
変身能力を持つ魔物で、妖精の眷族である。白夢の森ではディアンヌを匿うためホークやエリザベスの集団に変身して惑わし、追い返そうとしてきたものだ。
その時と同じように<メリオダス>らは本物と見分けがつかなかった。(ただし、よくよく見れば背負う神器に刻まれた紋様が<憤怒 >ではなく、それぞれ異なるラクガキ顔になっている。しかしホークらは気付いていなかった。) - それにしたって、『森を返せ』とはどういうことだろう。エリザベス達が彼らから森を奪ったとでも言いたげではないか。
ホークが怒鳴った。
「お前ら なんか勘ちがいしてるみてーだがな!! この迷宮を造ったのは俺たちじゃねえぞ!!」
<メリオダス>は険呑に声を返した。
「森返せ」
「ダメだ!! 聞いちゃいねえ!!」とホーク。 - 「この中に本物のメリオダス様がいるのかしら?」
エリザベスは不安げにホークを見やる。白夢の森では偽者たちに囲まれてしまい、自分が本物だと主張しても なかなか伝わらなかった。あの時、メリオダスが本物を見極めるために取った方法と言えば。
「…よし! アレをやるか!」
「アレ?」小首を傾げたエリザベスに構わず、ホークは<メリオダス>達に声を張る。
「オイ! よく聞けメリオダス共!!」「エリザベスちゃんの中で 一番好きな部位はどこだ!?」
「ちょっ…//// ホークちゃん!!」赤面して慌てるエリザベス。 - <メリオダス>たちは嗤って、或いは舌なめずりをしながら口々に答えた。
「ハラミ」「ガツ」「ロース」「レバー」「ハツ」「ブタは豚足まで全て食う…!!」
乱杭歯の覗く口から よだれを たらたら垂らしながら。 - 「ひいぃぃいっ!!
豚 の中の好きな部位じゃねえぇぇえっ!!!」
悲鳴をあげたホークに、エリザベスも「あわわっ」と怯えてしがみつく。
一人もエリザベスについて語らない。
「じゃあ このメリオダス様たちは…」
「全部 偽者だ!!!」 - <メリオダス>達が一斉に襲いかかってきた。まるで猿のような動きと敏捷さで。
「のわーっ!!」
エリザベスを背にしがみつかせたホークが素早く体 をかわして逃げ出す。
「けど こいつらがメリオダスの姿をしてるってことは 本物が この近くにいたってことか!?」
エリザベスが顔を輝かせた。「きっと そうよ!!」
はぐれていた彼と、合流できるに違いない。
「まずは こいつらを どうにかすることが 先決だがなっ!!」ホークは叫ぶと、ディアンヌの足元に駆け寄った。
「ディアンヌ 頼んだぜ!!」 - 小魔物のハイドアンドシークごとき、巨人の敵ではない。現に、白夢の森では彼らを脅して女王のごとく君臨していたのだ。
- ところがである。
「ボ… ボクには無理だよ!!」「だって メリオダスは ボクを助けてくれた恩人だもん!!」
困り果てた顔で、彼女は身を縮めていた。
「中身は別物!!」とホークが怒鳴っても、「それでも無理ー!!!」と情けない声をあげて、片手にエリザベスと豚、もう片手に戦鎚を持って走り出す。すぐ後ろを<メリオダス>達が追ってきた。ブーツの踵くらいは齧られてしまうかもしれない。
◆やはり今のディアンヌの記憶(<大罪>入団前)の段階では、メリオダスは恩人なだけで、まだ恋心を抱くには至っていなかったんですね。
とゆーことは<大罪>に入団してから(彼に処刑を救われてから)恋して、気持ちが深まっていったのか。キングは、仲間の立場で その経過を見ていなければならなかったってことになります。
それにしたって。メリオダスが恩人なのは確かですが、この時点で一度会ったことがあるだけの人。偽者だと判っていても攻撃できないなんて。
これはディアンヌの「甘さ」だなあと思いました。かつてのマトローナなら、戦士失格だと罵倒していたでしょう。
でも個人的には、ディアンヌは型通りの「優秀な戦士」に ならなくてもいいんじゃないかなと思っています。
守るために力は必要で、戦いの中では「非情さ」は必要。
それでも、「甘さ」は彼女の大きな魅力ですから失ってほしくない。
別に、血で血を洗う修羅の世界で生涯を過ごすとかいうわけじゃないんだし。
かつてのマトローナが推奨してたような戦士の非情とは、別角度の何かを示してくれたらいいなあと。 - そこに颯爽と救いの手が現れた。
何者かの放った雷撃が<メリオダス>達を薙ぎ払い、竜巻が捕らえて周囲の木々に激突させる。
ボンッと煙が上がって変身が解けると、予想通りのハイドアンドシークの正体が現れた。白夢の森の連中とは少し違い、頭巾に尖った耳が確認できる。
「ギ!?」「ニゲロ!!」「ニゲロ!!」
敵わぬと見たのだろう、大慌てで木々の向こうへ退散していった。
◆頭巾の形が違うので、白夢の森や妖精王の森にいたハイドアンドシークとは種(部族?)が違うみたいですね。
ツイッターで担当編集さんを介して公開された作者さんの発言から察するに、ヘルブラムも植物系の物しか食べられないみたいです。
けど、オスローは豚肉が好物。そしてハイドアンドシークも、今回のお話見るに豚肉が大好きで、場合によっては人肉もイケるんですね。
人間に似た姿(妖精側からすれば人間の方が似てるんでしょーけど)でヒラヒラ空飛ぶ系の妖精は基本ベジタリアンで、小鬼や獣姿の眷族は肉食が多いのかな?(小鬼三兄弟も肉食なのだろーか。)
キングが妖精王の森に帰った時、妖精たちが「お前のせいで どれだけの仲間や動物が あの焔 で死んだと思ってる!!?」と罵ってました。森に棲む動物たちを自分らと対等に並べたメルヘンな語り口ですが、現実は、動物は黒妖犬 やハイドアンドシークら肉食系の眷族の食糧でもあったんだなあ。うむ、大自然の摂理。
人肉もイケるとなると、かつて妖精王の森に侵入した人間の中には、黒妖犬やハイドアンドシークに食べられちゃった者も、少なからず いたんでしょうね。 - 「ちぇっ… 肩ならしにもなんねーぜ!!」
逃げ去る魔性を睨んで吐き捨てた男の足元には風の残滓が渦巻き、雷気をまとう剣を持った男は、エリザベス達に呼びかけた。
「…みんな無事か!!?」
<豚の帽子>亭のウェイター服を着た男二人。ハウザーとギルサンダーだった。
◆今までずっと、彼等の上半身までしか描かれていなかったので判りませんでした。
このウェイター服、ズボンが白なんですね。一般的なデザイン(黒ズボン)じゃなくて、かつてメリオダスが着ていた店長服とお揃いなんだ。(丈は半ズボンじゃないけど。)
しかし、なんで彼らに合うサイズのウェイター服が、こんなに沢山(ギル、ハウザー、ヘンディ、アーサーの四人分)あったのでしょうか。元からストックされてたなら、第一部の冒険のころ、裸エプロン男になってたバンに着せてやってもよかったはずです。
となると、王都決戦後の数日間に王都でしつらえたってこと?
…<十戒>復活する前は、しばらく王都に留まって<豚の帽子>亭を経営して、従業員も増やすつもりだったのかな、メリオダス。 - 落ちついてから、ディアンヌに助っ人二人が紹介された。
「…キミたち二人共 王女さんの仲間?」「え…と」「ハウザー…に ギルサンダー?」
興味深そうに覗き込まれて、たどたどしく名を確かめられた二人は、愕然とした顔を見交わし合った。 - 「本当に記憶を失くしてしまっているんだな…」とギルサンダー。
「まさか キングのことすら覚えてねーとか?」と戸惑うハウザー。 - 「キング?」
今度はディアンヌが戸惑った。
その名を聞くのは二度目だ。確かエリザベスも口にしていた。けれど、まるで覚えがない。…と思う。
「ご… ごめん 誰それ?」 - ハウザーの目が、このうえなく見開かれる。
そして、好機 を得たとばかりにグッと右手を握り締めた。
「…よし」
◆「誰それ?」と訊いてるんだから、どんな人物なのか教えてあげてもいいのに(苦笑)。
記憶喪失に付け込もうとするなんて、案外 姑息だな~(^_^;)。 - 一方、エリザベスはギルサンダーに訊ねている。
「ギル… 他のみんなを見かけなかった?」
「ああ… すまない」
「そう…」 - 沈んだ空気の中で、ハウザーが決まり悪げに経緯を口にし始めた。
「全員で迷宮に入って早々罠 の連続だったろ?」「気付いたら 俺とギルだけになっててよ~~…」
◆メリオダスさん、面白そうだと言い放って自ら<十戒>の罠に突入したくせに、まんまと一番守るべきエリザベスとはぐれてんじゃないですか。ディアンヌとの再会という幸運がなければ彼女は死んでましたよ。
今までも「エリザベス」を守り切れず死なせてきたくせに懲りないなあ。作戦も立てずに過信と見切り発車で突っ込んだりするから!
…って思ってましたが、ここのコマ絵で、どんな風にエリザベスと はぐれたかが判るようになってました。
メリオダス、最初はエリザベスをお姫様だっこして迷宮の罠を凌いでいたのか。けど、罠(トゲトゲの巨岩群が転がってくる)に怯えたホークが後ろからメリオダスに激突して、その勢いで抱えてたエリザベスを放り投げちゃって、彼女は沢山開いた落とし穴の一つに落ちて行っちゃった。…みたいな。(メリオダスも足元に開いた別の穴に落ちた?)
ホークのせいかよ!(苦笑)
モンスピートの獄炎鳥に追尾された時も、怯えたホークがメリオダスの顔にしがみついたおかげで剣が抜けず、全反撃 を出せなかったんでしたっけ。
結果的にそれでメリオダスの生存が、その時点でバレずに済んだわけだけど。(その数時間後に、自ら<十戒>の巣に突撃して挑発しちゃいましたが。)
ホーク、メリオダスが大好きなんですね。心底怯えると彼にしがみついちゃうとゆー。
しかし、この経緯でホークがエリザベスと同行出来てたのが奇跡です。(^_^;)
…うーん。実は放り投げられたエリザベスは穴に落ちてなくて、メリオダスら他の全員が それぞれ穴に落ちて消えた後、彼女とホークだけが残った、って状況だったのかな?
ところで、ここの絵を見る限り、マーリンは同行してないみたいですね。ホークママと一緒にお留守番? 今頃、何をやってるんでしょうか。
迷宮探索も押し詰まった頃に、のうのうとホークママごと空飛んで現れそう(苦笑)。
あと、どーでもいいことかもしれませんが、ちびっこ化したグリアモールが、ちゃんと服着てて安心しました(笑)。
そして、スレイダーじゃなくてヘンドリクセンが彼をおんぶしてたのに驚きました。ホントの親子みたいな見た目ですね。え、こんな形で二人のわだかまりが解消?(苦笑) - 「それにしても この迷宮はでかすぎるぜ… ったく」「
怪物 も配備されてるみてえだし 危ねえったらありゃしねえ…!」
ハウザーのぼやきに、ギルが返した。
「配備というよりは怪物 たちが巣ごと迷宮に巻き込まれたようだな」
「ハイドアンドシークたちも そうだったみたい…」とエリザベス。ギルは言葉を続けた。
「おとなしい怪物 まで気が立ってるようだ」「みんな くれぐれも注意して――」 - 親友のクソ真面目な注意を「やれやれ」と聞き流すハウザーの足元を、不思議そうにホークが見つめていた。地面が盛り上がり、モコモコと筋を作って移動しているのだ。まるでモグラだが、それにしては大きいかもしれない。
- それがハウザーの足の下に到達するや、彼は衝撃を感じて悲鳴をあげた。
「ぐああっ!!!」
どうした、と剣に手をかけたギルに「足に何かが食いつきやがった!!!」と訴える。盛り上がった地面が左足をふくらはぎまで包み、がっちりと噛みついていた。まるでそれ自体が口であるかのように。
「くっ!!」
剣を地面に突き刺す。弾力ある塊を掠めた手応え。
ようやく足を解放されて地面に倒れ込んだ。ズボンが ふくらはぎの半ばで食いちぎられ、足首に滲んだ血が、獣に噛まれたごとき歯型を鮮明に浮かび上がらせている。
「くそっ…」「逃げやがった… まだ近くにいやがるぞ!!」 - 「全員 足元に気をつけろ!!」自らも周囲を警戒しながら、ギルが騎士然として指示を飛ばす。
ディアンヌはエリザベスを片手の上に避難させて身構え、ホークは「臭う… 臭うぜ!!」と、鼻を鳴らして地面の匂いを嗅ぎ漁った。 - その鼻先にゴリッと食いついた、鋭い歯の並ぶ
顎 。
「プぎゃああぁ!!!」
悲鳴をあげて跳ねたホークの動きに合わせ、まるで一本釣りのように、地中に潜んでいた それが全身を現した。
ホークと同じくらいの大きさだ。トカゲかカエルのような頭、魚のような体、前びれはイルカのよう。丸々と太り、背には縞模様がある。魚かワニのように牙が幾重にも並んだ大きな口は、ホークの鼻先に食いついたまま一向に離れない。 - 「そ… そいつは!!」ギルサンダーが叫んだ。「砂漠の肉食
怪物 サンドクローラー!!」 - ホークも叫んだ。
「おのれええぇえ~~~~~い!! 豚の雑食性をナメんなぁっ!!!」
鼻先に噛みつかれたまま、その怪物――サンドクローラーの尾びれに食いつく。
「ム? …イケる!!」
夢中になって咀嚼を始めた。 - 「…食ってる!!」と冷や汗を垂らして戦慄するハウザー。
◆怖い…。豚怖い……。 - 時折 骨を噛み砕く音を立てながら、自分と同じ大きさの怪物を、見る間に口の中に収めてしまった。
「う゛!?」その目がクワッと見開かれる。
直後。ポゥンッという軽い破裂音と共に、ホークがサンドクローラーに似た姿に変化 していた。
魚のような体、前びれはイルカのよう、丸々と太って、背には縞模様がある。ただし頭の形だけはホークのまま。荒ぶる鼻息の豚である。 - 「ウゲゲ!! ホークの姿が変わっちゃった!?」未知の事態に驚き慌てるディアンヌ。
しかし他の面々に慌てる様子はない。既知の事態なのだろう。とは言え平気でもないようで、ギルサンダーは無言で冷や汗を流し、エリザベスは「アハハ」と冷や汗を流しながら力無く苦笑していたが。 - 「…どうやら魔力を持った
怪物 だったみてぇだな」
ぺったぺったと尾びれで地面を叩いて偽豚が言った。
「ど… どうなってんの?」
「俺も つい最近 発見したんだけどよ」慄くディアンヌに真顔で語る。「マーリン曰く これが俺の魔力――――」「「変身 」!!!」「なんでも 魔力を持った生き物を食うと そいつの持つ能力や特性が身についちゃうらしいんだな」
◆あれ? 以前闘級を見た時は、ホークって「魔力0」だったのに。
……0から数値が増えることもあるんか。闘級アテになんねー。
メラスキュラ曰く、魔力は本人が死亡した瞬間に消滅するもの。
即ち、魔力ある生き物を「生きたまま」食べなければ、ホークの変身は発動しないと思われ。
怖い…。豚怖い……。 - ディアンヌは、プル プル プルンと尾びれを震わす偽豚を凝視した。
見れば見るほど……可愛くない! 美味しそうにも見えない!
ついつい、眉根が寄ってジト目になってしまう。
「どうでもいいけど 一生そのまんま?」
「どうでもいいとは何だ!!」「ウンコすれば元通りよ!!」
人魚のように横たわりながら、偽豚は得意げに鼻息を吹いたのだった。 - ディアンヌの手から降りたエリザベスが訊ねた。
「ねぇ ギル さっきの怪物 のこと 何か知ってるの?」
「昔 本で読んだことがある…」淀みなく彼は答える。「サンドクローラーは砂漠に棲む怪物 で 主なエサは小動物だから危険度は低い」「ただし縄張りを荒らされると 怒りくるって 人でも馬でも呑み込んでしまうそうだ」 - 「人でも馬でも…って あんな小せぇ
形 で?」ドルイドの聖地 の修練窟で、自分を一呑みするほど大きな暴龍 を喰い返したことを忘れたか、ホークが常識的な疑問を呈した。
ギルサンダーが答える。やけに嬉しそうに。
「さっきのは おそらく幼体だよ」「成体まで成長するとアースクローラーと呼ばれるようになるんだ」「その大きさは実に数十フィートにまで及び 攻撃性・凶暴性が増すことで畏 れられている」「なんと!! 100フィートを超える大物の腹から 家屋と暴龍 が出てきた記録があるんだぞ!」 - 「ギル… お前 昔から そういう豆知識 好きだったよな」
生き生きと語り続ける幼なじみを見つめるハウザーの目は冷めていた。そう、子供の頃は『ブリタニア七不思議』なんて本に夢中になっていたものだ。
そちらを見もせずに「うるさい」とギルサンダーは言ってやった。
◆『ブリタニア七不思議』が好きだって話は、小説版『昔日の王都 七つの願い』から。
ギルサンダーって、ちょっとオタク気質なところがあるんですね(笑)。博物学オタクっていうのでしょうか。
騎士にならなければ、冒険家か、フィールドワーク中心の学者になるのもよかったかもしれません。
100フィートはおよそ30.5m。アースクローラーって、クジラくらいのスケール感なんでしょうか。(世界最大のクジラとされるシロナガスクジラは、体長20~34m) - 「な… なんだか怖くなってきちゃった…」呟いて、エリザベスが「ね?」とホークに同意を求める。
「あくまで記録の話さ そんな大物が頻繁にいるわけないだろう?」とギル。 - 「いや…」そう言ったホークの顔から、一瞬で血の気が引いていた。
「いるんだけど」 - 「「「「え?」」」」
皆の傍に立っていたディアンヌの背後。彼女を軽く一呑みできる顎 が、尖った牙を多重に並べて、奥深い洞窟のように開いている……!
◆サンドクローラーに食いちぎられてたハウザーのズボンが再生している…! - その頃、迷宮のどこか。
不意に響いたドーーーー…ンという轟音に、迷路を行く冒険者たちが怯えた顔を向けていた。
「い… 今のは なんの音だ?」と、軽装の弓使い 。
「近いぞ」と、鎧で身を固めた剣士の誰かが叫ぶ。
最も屈強な体をした斧使いの大男が「なんなんだよ 俺 もう帰りてえよ…!!」と泣き言を漏らした。意気揚々と入った迷路は死の罠の連続。行くも戻るも出来ぬ牢獄なのだと、そろそろ思い知り始めていたのだ。
「わ…」
ズズッと地面が揺れた。地震ではない。
「しっ 下から何かが来…」斧使いの大男が言い終わるより前に。
地面から谷のごとく巨大な顎 が、十数メートルの高さで飛び出した。
「ぁああぁあ…」
一人だけ、たまたま弾かれた斧使いの大男の前でバツンと顎が閉じ、仲間の全員が姿を隠す。岩のような牙の隙間から無情に血肉が飛び散った。 - 「このバケモンがぁ~~~~!!!」
落下しながら態勢を整えて、大男は、怪物 の縞模様のある背に斧を叩きつけた。ところが、厚い粘液に覆われた皮膚にヌルッと刃が滑る。
「刃が通らねえ…!!」 - 二撃目を試みる猶予は与えられなかった。
怪物 の尾が大男を叩いて跳ね飛ばす。葡萄酒 入りの革袋を石壁に叩きつけたように、男は一声もなく潰れて血と内臓を撒き散らした。 - ワニのように長く裂け開いた口、縞模様のある背中。そして指のある逞しい前肢。後肢はないが、尾びれを持ち上げて前肢だけで雪崩のように駆けていく。
幼体から様変わりした山のような怪物 が、未だ難に遭わず道を歩く男を追い、巨大な口を開けて突撃していった。 - 恐ろしい轟音が響いていたが、男は毛一筋も動じた様子がない。
鎧も身に着けておらず、袖口の大きい長衣にマントを羽織っていた。留め金には なかなか大きな石がはまっている。
環飾りの付いた杖を持ち、ゆったりと振り向いた涼やかな顔に、銀色の長い髪が幾筋か流れ落ちた。 - 次回「狂宴の勇者たち」
最後に登場した長髪イケメンお兄さん。
彼は何者なんでしょうか。
パッと見、顔や雰囲気は前聖騎士長ザラトラスや、その息子ギルサンダーに似てるかも。
でも装備しているのは剣ではなく長杖。それも、輪が付いてて、ちょっと錫杖っぽいデザインです。
んじゃ、この人はドルイド族で、ドルイド出身のザラトラスとは血縁があるから似てて、魔神の魂を消滅させうるドルイドの秘術<
……と。こんな風に想像した人は多いと思いますし、私もそう思いました(笑)。
ドルイド族は血族集団でありつつ宗教団体でもあり、ごく一部の女性が「女神の使徒」と呼ばれ、やはり一部の男性が「司祭」として彼女を補佐するのだそうです。それ以外は「一般信徒」なのだとか。
ドルイドの長であるジェンナ&ザネリ姉妹には、テオという司祭の少年が付いていました。彼女たちが「女神の使徒」なのかは不明ですが。
(そしてテオくん、「ボクは長たちをお守りする司祭テオだよ」と自己紹介してたのに、守る様子なく昼寝してたよ…。ドルイド族は呑気なのかな?)
エリザベスも「女神の使徒」だと、ヘンドリクセンは言います。
けれど、彼女に「司祭」は付いていません。
これ、ずっと気になっていました。せっかくドルイドの長にも会ったのに、その辺 総スルーでしたし。
もし彼女に「司祭」が付いたら、実はかな~り嫉妬深いメリオダスさんは心穏やかじゃいられないだろうなぁ…とも思ってた(笑)。
さて。
例の長髪イケメンお兄さんが、もしドルイド族だったら。
里を出て単独で危険な迷宮をウロウロしてるんですから、かなりの使い手のはず?(ただの不幸な迷子じゃない限り…。)錫杖っぽい杖のイメージからして、まさに「司祭」なのかも。
彼が「女神の使徒」たるエリザベスの補佐役になろうとしたら面白いですよね。
何事にも懐の広さを見せるメリオダスですが、エリザベス関連だと余裕ないですし。ちょっとくらい「飄々」の仮面が壊れた彼も見てみたいです。
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なんで砂漠の魔物がブリタニア(イギリス)に!?
魔神が海越えて運んできたんでしょうか。
ちょっと無茶を感じた(苦笑)。
無理に砂漠の魔物にせずとも、
砂地を移動する生き物のはずなのに、木の根の張った森の中や固い岩盤から顔突き出してて、これ大丈夫なの? と気になってしまいました。土を泥土状に変えてるようにも見えなかったです。うーむ。
アースクローラーの、後肢がないのに前肢のみで巨体を支えて疾走し、獲物を追う様は、アレを連想させられました。
ほら、アレ。怪談に出てくる「テケテケ」(苦笑)。
下半身がない幽霊で、両腕だけを使って走って、超速で追って来るってゆー。
アースクローラーに冒険者たちが殺される場面、すんごい残虐で「ウゲっ」てなりました。(牙で穴ぼこだらけのバラバラに噛み砕かれて喉の奥へ落ちていきつつ「母ちゃ…」とか呟いてる様子は、初期の『進撃の巨人』を思い出しました。)
キャメロットの聖騎士たちやレイブンズ市民の殺され方もそうでしたが、この漫画、第二部に入ってから時々すんごいグロイ死に絵を描くようになりましたね。それも悪人とかでない普通の人々が えげつなく死ぬ死ぬ。(第一部の頃は、ツイーゴの破裂死とか、辛うじて一番グロイところはコマ外にして見せなかったのに~。)
なんか作者さんの心境の変化なのでしょうか。刺激を強めたい、あえて隠さない的な。
斧使いの大男がアースクローラーの尾びれに叩かれて容易く破裂死した場面は、前回、罠にかかってボコボコに叩きのめされたホークが、打撲だけで済んで すぐ元気になったのと対照的でした。
うん、普通は肉餅になって死ぬものですよね。
この漫画世界でも、本当はそれが「当たり前」なのだわ。
巨大なモノにバシバシ殴られ叩きつけられても多少の打撲と出血で済んでいるホークやキングは、やっぱ只者ではないんだなと、再認識させられましたです。
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ホークちゃんの魔力<
えええ。ホークの魔力はゼロだって言ってたじゃ~ん。
ゼロって「今後も魔力が生じる可能性なし」の意味だと思ってましたよ!
もー、自由だなっ。
そーいや。
日本のファンフォーラムでは、能力が今後の戦闘で使えるかどうかくらいで、そんなに話題になってない感じでしたけど、海外では「ホークの新能力可愛い!!」と、今回の変身姿自体が大絶賛だったので、注目点が違ってて面白いなあと思いました。
あと、海外の人は「ホークは星のカービィだったんだ!」と口々に言ってた。これも日本で言ってるのは(自分は未だ)見てないので印象深かったです。
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時間経過について。
ホークの<
第137話の感想時点で「食べた物を完全に消化してウンチしたら戻るのかな」と推測はしていました。
というのも、ゴウセルが捨てた魔力安定薬を盗み食いして 頭がおかしくなった時、消化してウンコしたら治ったと語られていたからです。
でも第142話の、キングが<豚の帽子>亭を離脱する場面で未だ偽豚のままだったので、この予想は外れたかなと思ってたのに。
外れてなかったんかい(汗)。
なんで外れたと思ってたかと言うと、キング離脱場面を、<十戒>散開の日から三日以上後だと認識していたからです。
健康そのもののホークが、これだけ日数経ってウンコしてないはずないから、「ウンコすれば戻る」予想は間違っていたんだなと。
ううーん。
つまりキング離脱は、<十戒>散開の当日で「確定」なんですね。
しかし、第151話の感想に書いたように、バンルートの時間経過を考慮すると、辻褄が決定的に合いません。
バンは「二、三日前から広まった」死者が蘇る噂に引かれて盗賊都市へ行き、その翌日にエレインが蘇っている。
彼女の復活に気付いたキングが<豚の帽子>亭を離脱。そして、エレイン含む死者を復活させていたのは、散開した<十戒>メラスキュラである。
この流れを踏まえれば、キングの離脱は最短でも、<十戒>散開の三日後でなければなりません。
なのに物語は、あくまで散開当日だと強く主張してくるのです。
これ、どう考えればいいんだろ?
まさか本当に、メラスキュラが怨反魂の法を使う二、三日前から、別の誰かが死者を復活させていたってことなんですか?
うむむむ~。改めて時間経過を整理してみましょう。
通常の時間経過 | バンの行動 | |
---|---|---|
3月20日 | 第60~100話
|
|
3月21日 (王都決戦の 翌日) |
第101~102話 | 第102話
|
3月22日 (王都決戦の 2日後) |
第103話
|
|
3月23日 (王都決戦の 3日後) |
第103~109話
|
第103~105話
|
3月24日 (王都決戦の 4日後) |
第110~121話
|
第138~141話 |
3月25日 (王都決戦の 5日後) |
第122~145話
|
第142~147話 |
3月26日 (王都決戦の 6日後) |
第150~154話 |
第147~150話 |
3月27日 (王都決戦の 一週間後) |
第152、154話 | |
3月28日 (王都決戦の 8日後) |
第155~ |
この日、バンらがエスカノールの酒の配達地に到着するはずである |
こうして表にすると、矛盾がはっきりしますね。
やはりおかしい。
ジバゴの言葉を信じるならば、<十戒>が未だ常闇の棺の封印の中にいた頃…王都決戦の翌日あたりから、既に、盗賊都市レイブンズ周辺では死者が蘇っていたことになります。
これはどういうことなのか?
マジに、この矛盾は伏線であって、メラスキュラ以外に、早くから死者を復活させていた何者かがいる、ということなんでしょうか。
その謎が第三部に繋がっていく仕掛けなら凄いけど……。
------------------------------
ハウザーのこと。
ギャグ表現に過ぎないんだろーなと思ってはいますが、それでも、ハウザーの「…よし(グッ)」には、いい印象を抱けなかったです。
恋は戦い。とは言え、記憶喪失に付け込んで出し抜こうとするのはフェアじゃないさ。
なにより、読者はディアンヌがどれだけ強くキングを好きなのかを知っていますからね。
ハウザーは好漢だと思います。
ディアンヌが巨人だと判っても好意を持ち続けたり、己の信じる正義のため、ディアンヌを守って師に背いたり。
でも彼のディアンヌへの好意は、『七つの~』の他メイン男性キャラ達とは質が違う気もします。
メリオダス、バン、キングらが示すような、生涯 彼女しか愛さない・愛せない、という尋常ならざる重さの感情ではなく、「あの娘いいな」的な、健全で軽やかな想いのような。
たとえば、わんぱく三人組がドレファス変貌の真相を探る旅に出た際、ギルサンダーとグリアモールは、それぞれ愛する女性に直接逢って熱烈に再会を誓ったのに、ハウザーは たまたま顔を合わせたエリザベスに「あ ディアンヌにヨロシクな」と軽く伝言を頼んだだけでした。
また、ドルイドの聖地ではエリザベスの太ももに若者らしく鼻の下を伸ばし、メリオダスに目潰しを喰らっていたものです。キングらのような、想う女性以外には性的興味すら持てぬ尋常ならざる一途・潔癖さは感じられません、よね。
それにしたって今更ハウザーを割り込ませる(?)とは。どうなるんだこれ。
近年の少女マンガだったら、当て馬キャラは最終的に綺麗に身を引くか、主人公カップルの仲立ちをしたりして、いい人ぶりをアピールするのがお決まりです。
でもそれ、どっちもジェリコがやっちゃってるんですよね…。それも、このうえなくいい形で。
ジェリコが通ったばかりの道を、またハウザーに歩かれてもなあ。という気もします。
ところで、どうしてハウザーは「まさか キングのことすら覚えてねーとか?」と訊いて、忘れていると知るや「…よし」とガッツポーズしたのでしょうか。
ディアンヌにとってのキングが特別な存在だと思っていなければ、出ないであろう言動です。
ディアンヌがキングを愛していることを知っていたのか?
彼女がつい先日までメリオダスを好きだったことは知らないのか?
ハウザーがディアンヌと顔を合わせたのは、これで四度目。
初めて会ったのはバイゼル喧嘩祭り。キングの存在は眼中にも入っていなかった模様。(ザコと認識しており、<大罪>の一人だとも思っていませんでした。)
二回目は王都決戦。ここでキングの存在を認知し、彼がディアンヌを愛していることも悟ったはず。
次は勲章授与式。キングは欠席でした。
そして今回となります。
(アニメ版では、王国誕生祭の夜の<豚の帽子>亭にハウザーが来て、ウェイトレスのディアンヌに絡んでいましたが、原作では来ていません。)
とりあえず、想像できるのは以下でしょうか。
想像A
王都決戦時の二人の様子に絆を感じ、割り込むのは難しいと感じていたから。
想像B
王国誕生祭の夜、二人のデートを目撃したから。
あれこれ想像してみるのも楽しいです。