【感想】『七つの大罪』第185話 <傲慢>vs.<慈愛>
週刊少年マガジン 2016年35号[2016年7月27日発売] [雑誌]
第185話 <傲慢>vs.<慈愛>
- 石床をグツグツと煮え立たせ、掌の上に小太陽を浮かべた男を前に、エスタロッサは緩い苦笑を浮かべていた。
「まったく 物騒な男だぜ……」「そんな魔力を使えば 後ろの連中は まず 黒コゲじゃ済まねぇぞ」 - 指摘通り、数10m離れた場所にいる聖騎士たちは、エスカノールの放つ熱気に焼かれかかっている。
- 「なんて…熱だよ!! 鎧が溶けちまう…」
ハウザーの鎧は溶け崩れ始めていた。
頭まで鎧で覆ったマルマスは「アヂヂアヂ!!」と暴れ、サイモンは汗だくで苦悶、スレイダーは金属の仮面を ついに外す。ギルフロストに至っては、うつ伏せに倒れ伏している始末だ。
◆名前も「フロスト(霜)」だし、熱に弱いんでしょうか(笑)。暑い夏には熱射病で搬送されそう。 - ギルサンダーは膝をつかず耐えていたものの、やはり己の鎧に身を焼かれている。
「メリオダスの仇がとれる…の…なら この身が燃え尽きようと…… あぐっ」
どう見ても痩せ我慢だが。
◆今のギルサンダーは、頑張る方向が間違っていますよね…。 - 「いいのか?」
エスタロッサの揶揄を背に、エスカノールは『やれやれ』と言いたげな軽い溜息を落とした。
「ペーネスの湖畔は たしか西門から正面――でしたね?」「バン」 - 問われた男は、聖騎士たちの中で唯一まっすぐ立っていたが、衣服からは煙が上がり、ついに炎が噴き始めている。
「それがどうした!? このままじゃ全員 燃え――」 - 「よろしい」
みなまで聞かない傲慢さ。
押し出すように掌を前に向けるや、浮かせていた小太陽が一瞬でエスタロッサの眼前に飛んでいた。 - ガンッ
- 小太陽に顔面から跳ねられ、血を吐き散らして仰のけざまに飛んでいくエスタロッサ。
(何が…)
起こったのか理解する暇 すらなく、石ころのように飛んだ身体は王都を遥か離れ、ペーネス湖の上空を舞っている。 - 「言ったでしょう?」
上空に浮かぶ小太陽の上に、エスカノールが降り立ったのが見えた。
「まともには死ねないと」
両脚で踏みつけるようにして、それを蹴り落とす。
“無慈悲な太陽 ” - 先程より大きくなった それは エスタロッサの全身にぶつかり、押し込まれるように湖に落下した。
塔ほどに高く上がる水柱。
逃れられず、焼かれながら一直線に湖底に激突する。
「ごぼっ」「がばば…」
水中でも燃え続ける小太陽から発する膨大な沸騰の泡。その下敷きになったエスタロッサは湖底に半ば埋もれて身動きが取れない。 - 湖の上空から、エスカノールの追撃が放たれた。
“炸裂する傲慢 ” - 彼が左手を差し下ろした、次の瞬間。
ボジュッ
莫大な熱で湖の水全てが蒸発し、水蒸気となって沸き上がっていた。 - リオネス王都からは、何が起きたのか知れようはずがない。
しかし入道雲のように立ち昇った巨大な白い靄 は、はっきりと見て取れた。
「ペーネスの湖畔の方向から大量の煙が…」
そう言ったギルサンダーに、ハウザーが返している。
「違ぇ ありゃあ水蒸気だ!!」 - 追って飛んできたゼルドリスとフラウドリンの眼下に、もはや湖はなかった。湖だった窪地があるだけだ。
「化け物め……!!」「一瞬で湖を蒸発させるとは…!!」
冷や汗を流し、歯噛みするフラウドリン。 - 水のない湖底を悠然と歩くエスカノール。晴れていく水蒸気の向こうに『それ』を見て足を止めた。
- 「か~なり いい攻撃だったぜ… ぐっときたよ!」
薄ら笑いながら歩いてくるエスタロッサ。
といっても無傷ではない。主に左半身が焼けただれ、皮は痛々しく めくれ剥がれて筋肉組織が露わになっている。
「闇を展開すんのが少し 遅れてたら 大ダメージもんだ」
右半身には闇がまとわりついており、そちらは ほぼ無傷だった。
いや。無傷だったのではなく、今しも治癒が行われたところだったのか。闇が無残な右半身に移動して覆えば、火傷は跡形もなく消え失せた。
「そんじゃ」「もう決着 をつけるかな」 - 「…その意見だけには賛成ですよ」
再び、エスカノールは掲げた掌中に太陽を発生させる。 - すかさず手を突き出すエスタロッサ。
“暗黒回帰 ”
◆「暗黒回帰 」って、ゴウセルの「大停電 」(一定範囲の全生物の思考を停止させる技)と読みが同じなんですけど、何か関係あるのかな。 - 「!!」
エスカノールの掌ごと、小太陽が闇に呑み込まれた。 - 「終わりだな」
落ち着いた声音で言いつつ、エスタロッサは既に闇の短剣で斬りかかっている。 - 「それが どうしました?」
エスカノールも静かな表情で、反対の手の神器 を無造作に振り上げた。 - その瞬間、エスタロッサが発揮する魔力。
「全反撃 」 - エスカノールに眉根を寄せさせた。
それだけは間違いない。
彼自身の物理攻撃力が、倍加して反射されたのだ。 - 「俺の闇が お前の太陽を呑みこんだ …つまり 魔力に関しちゃ 俺に分があるようだ…」「そして「
全反撃 」は物理的攻撃を すべて はね返す」
真顔で述べると、エスタロッサは薄ら笑いを戻した。
「わかるよな この意味は?」「けっこう楽しめたよ… エスカノール」 - エスカノールは血を噴き出させながらも立っていたが、左手の小太陽は闇に呑まれたままである。
彼の魔力「太陽 」を闇に封じられ、物理攻撃も跳ね返されるのであれば、なるほど、もはや打つ手はないのだろうか。 - 「勝負あったな」
天空からゼルドリスが判じた。 - 同時刻。
未だ魔神を知らぬ平穏な羊飼いの家で。
「こらーーっ また さぼってやがったな!!」
息子が父親に叱られ、頭にゲンコツを喰らっていた。
「昼までに 羊 全頭の毛を刈るなんて無理だよう…」
息子の泣き言を、父親は一喝する。
「甘ったれるな!!」「正午までは まだ半刻 以上ある!!」「いいか? さぼっても太陽 が しっかり見てんだからな!?」
◆半刻とは一時間のこと。つまり現在、午前11時前。 - 干上がったペーネス湖の底では。
ドン、と鈍い音が響き、パクッと一文字に裂けたエスタロッサの胸から、噴水のように血が噴き出していた。 - 「!!?」
有り得ない展開に、天空のゼルドリスが驚愕する。 - 血で濡れた己の胸を不思議そうに撫でるエスタロッサの前で、戦斧を持ったエスカノールが朗々と吠えていた。
「我の攻撃が通用しない?」「誰が決めた?」 - 「攻撃が見えなかった…」
全反撃 で返せなかった。事態が呑み込めず、ぼんやり呟くエスタロッサ。 - 「我の太陽を呑み込んだ?」「誰が決めた?」
闇に包まれたエスカノールの左腕に力が込められ、血管が盛り上がっていく。 - 「…………口調が変わった…」
エスタロッサが表情を変えた。唖然と見やり、その目線が上がっていく。いつしか高く昇っていた太陽に、不意に気づいたかのように。 - 掲げたエスカノールの左人差し指の上に浮かぶ、巨大な太陽。
“無慈悲な太陽 ”
それを呑み込んでいたはずの己の闇は、消える間際の煙のような頼りなさで、下に微かに たゆたっているだけだ。 - いつから こうなっていたのだろう。見上げるほどに、今、
この男 は強大ではないか。 - 知らず、エスタロッサの目は大きく見開かれていた。
(こいつは いったい何者なんだ…)(闘級が今まで以上に膨れ上がってやがる…!) - 「決めるのは」「我だ」
燃える太陽を掲げた男が、冷たい蔑みの瞳で見下ろしている。その目を細め、ニコッと一瞬だけ微笑んだ。 - 莫甚に燃え盛る、あの太陽は魔力の塊。エスタロッサの「
全反撃 」では返せない。
「う…」「お」「おお」「おおおお…」
既に気を呑まれたエスタロッサは立ち尽くし、変な声を断続的に上げながら、それを仰ぎ見るしかできないでいた。 - 「まずい… 兄者ーーーーっ!!!!」
異状を感じたゼルドリスが天空から急降下したが。 - 「死ね」
太陽を掲げる男からの、無慈悲な宣告。 - ボールのように投げつけられた太陽が、エスタロッサを直撃した。
- 次回「リオネス防衛戦」
デスバトルなドッヂボール。(ボールはエスカノールしか持たされてません)
受け止められなかったら場外に行かなきゃね。我がそう決めた。
「○○した? 誰がそう決めた。決めるのは我だ」ってフレーズ、色々と応用がききそうですな。(『大罪学園』で使われるのが楽しみ!)
------------------------------
エスカノールの闘級を考察してみる。
そんなこと言われると、それこそ53万でも100万でも、無限に上がるような想像をしちゃいますね。
が、本当にそうでしょうか?
考察ブログらしく、エスカノールの闘級について、そこそこ真面目に考察してみましょー。
ただし、基準とすべき数値が軒並み「不明」なので、仮定の上に仮定を重ねた、砂上の楼閣です。
つまり、ちっともアテになりませんので、そこは予めご了承をば。
いや誰も本気にしないって分かってるけど、一応。(^^;)
では始めまーす。
まずは、前提とすべき要素を。
- エスカノールの闘級は夜明けと共に刻一刻と上昇し、正午にピークとなる。以降は下がっていき、夕暮れと共に「最弱の聖騎士」となる
- 夜間のエスカノールの闘級は15(魔力5 武力5 気力5)。これが底値かは不明
- 「正午まで半刻以上ある」時点で、エスタロッサ(闘級6万)を圧倒的に凌駕
- 夜間の一人称は「僕」。夜明けと共に「私」に変わり、「正午まで半刻以上」辺りから「我」に変わる
さて。
まずは、エスタロッサの闘級が上がる「夜明け~正午」が、どのくらいの長さかを定義します。
現時点の作中の月日は、(王都決戦の日時から推測して、)四月末~五月頭と思われます。
この時季のイギリスの夜明けは、5:30前後です。
そこから正午までを数えると6時間半(390分/23400秒)となります。
第149話で、ガランと相対したエスカノールの力を探知したマーリンが、こう言います。
「団長殿… たった今“
探知 ”した」「現在の闘級5万55…60」
喋っている間に、もう闘級が5上がっています。
どのくらいの時間でどれだけ上がるのか、常に同じ割合で上がり続けるのか、定かではありません。
が。とりあえず、1秒で闘級が5ずつ上がり続けていくと仮定してみます。
そうすると、夜明けから正午までの間に闘級は11万7000上がります。
これに夜間の闘級15を足して、
正午のエスカノールの闘級は、およそ11万7015と推測してみます。
この計算に従えば、第149話でマーリンがエスカノールの力を探知した時間は、朝の8:30~50頃だったということになります。
今回、一人称が「我」に変化してエスタロッサを凌駕したのは「まだ正午まで半刻以上」の時間帯でした。
これは10:30~10:50くらいだと思います。(これ以上早い時間なら「正午まで一刻近くある」、遅いなら「正午まで半刻もない」という表現が相応しいと思うので。)
そう仮定して上述の計算で考えれば、一人称が「我」に変わった辺りのエスカノールの闘級は、9万15~9万6015だったと推測できます。
夜明け時を0%、正午を100%とするなら、およそ80%のパワーだったということになりますね。
さてさて。
では、闘級の内訳はどうだったのでしょうか?
夜間のエスカノールの闘級の内訳は
魔力 5 武力 5 気力 5 です。全ての値が均等ですね。
正午のピーク時でもそうならば、エスカノールの正午時点の闘級内訳は
魔力 3万9005 武力 3万9005 気力 3万9005
となります。
しかし私は、エスカノールは超 武力特化型であって、魔力と気力は結構低いんじゃないかと思っています。
根拠は二つあります。
●『エジンバラの吸血鬼』にて、一人称「我」状態のエスカノールを、ゴウセルの「
この技が第112話で使った「
マーリンの「
だとすれば、パワー80~100%時点のエスカノールでも、気力は400以下~800程度なのではないかと。
●一人称が「我」に変わる数分前の時点で、エスカノールの魔力はエスタロッサ以下。
エスタロッサの現時点の魔力は3000です。
10:00~30時点(パワー70%)のエスカノールの魔力はそれ以下で、10:30~50頃(パワー80%)に、それ以上に上昇したと考えられます。
もし、闘級の内訳がずっと均等なまま上昇し続けるのなら、10:00~10:30時点で、魔力2万7000~3万5で、既にエスタロッサの魔力の10倍はあったことに。
以上から、パワー80%時点で魔力4000~5000くらいで、正午でも5000~1万くらいなんじゃないかなあと。
以上、仮定に仮定を重ねた、足元ぐらぐらの考察でした。
------------------------------
闘級と言えば。
『罪約聖書』に載ってた闘級見て、なんかしっくりこないなぁ~と思ったのは、エレインの闘級でした。
だって、2830もあるんですよ!
ぶっちゃけ、ゴウセルやバンとそんな変わらん。
エリザベスの場合は、闘級(魔力)は高くとも実際の戦闘力は低い、という理屈だったけれど、エレインは「戦うと結構強い」ってことになってる。
700年 妖精王の森を守り続けた聖女だから強くて当然、という理屈なんでしょうが……。
どーにも、違和感がぬぐえません。
だって。
こんなに強かったんなら、なんで赤き魔神に一撃で殺されたんですか。(^^;)
赤き魔神の闘級は、個体差はあるけど「1000~1300」ってことになってる。
エレインが「闘級2830、戦うと強い」存在だったなら、不意打ちされたわけでも舐めてたわけでもなかったのだから、楽に勝てたか、せめて対等に戦うくらいできたんじゃないの?
現在 闘級3220のバンが、当時、赤き魔神に一度殺されたのは納得できるんです。
あの頃は不死身でも騎士でもなかったし、まさか心臓を奪っても死なない生き物がいると思ってなくて油断してたし。<大罪>に入ってから修行して、闘級もアップしたんだろうなと、自然と思えたから。
でも、エレインは…。
うーん…。
そもそも、エレインが700年妖精王の森を守ってたって言っても、一人きりでガチンコで戦ってた、ってのじゃなかったはずなんですよ。
小説『セブンデイズ』によれば、
それを潜り抜けて森の奥の大樹まで到達した人間が、エレインの担当でした。
加えて、妖精王の森には「森を守る力」が働いていて、エレインはそれを借りて戦っていたと。
つまり、妖精王の森を守ってた当時は、本来の闘級にブーストが掛かってた状態。
それでも赤き魔神には敵わなかった。…という状況だと理解してたのに。
しかも、22巻で明かされました。
エレインは未だ未成熟で羽が生えていない。生えるとより多くの力を引き出せるようになると。
え、まさか、最終的にエレインの闘級5000とか1万とかいくんですか。
同じような立場で3000年も森と妖精界守ってたゲラードが、「羽生えてて」闘級2370なんだけどな。年寄りだから極端に弱ってるのかしら。
ううーん…。
まあ、この闘級は「22巻終わり時点」なのがミソかもしれません。
この時点のエレインは、メラスキュラの
そして、怨反魂の法で蘇った死者は、生前より遥かにパワーアップしていると語られています。
蘇った普通のおっさんが、素手を突き出しただけで、バンの胸を貫いていたくらいです。
仮に、騎士でない一般男性の武力が50で、武力150(ジェリコは130)あれば素手で人間の胸を貫けると定義するなら、怨反魂の法で蘇った死者の闘級には、生前の三倍のブーストが掛かる、ということかもしれない。
であれば、エレインの本来の闘級は、およそ943になります。
これに妖精王の森のブーストが、例えば1.5倍かかっていたなら、1400。
闘級1400くらいなら、聖騎士でない人間は楽に撃退できる、しかし赤き魔神(闘級1000~1300)に、ギリギリ敵わなくても不思議ではない。
という、ちょうどいいラインなんじゃないかなーと…。
で、やがて羽が生えたら、闘級がゲラードと同等くらいの2000~3000台になる、と。
こんな感じだったら、自分的には しっくり来たのになあ。
勝手なこと書いてすんません。
まあ、エレインの闘級をこんだけ高く設定したってことは、作者さん的には、今後エレインやエリザベスら、本来は「守られる」ポジションだったヒロインたちを、ガチの戦闘要員に加えたい、という心づもりなんですかね。
------------------------------
もう一つ、闘級の話。
エレインの闘級は高くて驚きましたが、ヘルブラムの闘級は低くてビックリでした。
1400とは…。
妖精王の血族ではないから、なんでしょうけども。
せめて2000前後あってほしかったなあ。第一部の強力な敵キャラだったのに。
いや、ヘルブラムには「
うーん。
…いやいや。これも「22巻終わり時点の闘級」であることが、ミソなのかもしれない。
だって、この時点のヘルブラムって「亡霊」じゃないですか!
生前は、もう少し闘級が高かったのかもしれません。魔力や気力はあまり変わらないかもですが、武力は。
そーいや、ヘルブラムの武力が200あるのにも驚きました。
そこら辺の一般騎士より、ジェリコより、腕っぷしが強いんじゃないですか!
妖精族は肉体的には ひ弱だと思い込んでいたので、これはいい意味で意外でした。
ヘルブラム、肉体的な強さでは、妖精族でトップクラスだったのかもですね。