【感想】『七つの大罪』第251話 聖戦協定
週刊少年マガジン 2018年 8号[2018年1月24日発売] [雑誌]
第251話 聖戦協定
- 「こ… 国王陛下!! 一大事です!!」
深夜のリオネス城に、時ならぬ急の声が響いた。 - 「どうした!? また魔神族の襲撃か!?」
夜着のまま、バルトラ王が自室から飛び出してくる。 - 「い… いえ それが…」「魔神族に連れ去られた
王国 の聖騎士と民が戻ってきたのです!!」
「なんと… 一体どうやって!?」 - 城下には群衆が溢れていた。深夜だというのに祭りのような賑わいだ。
「ここは… リオネス?」
「帰って来たんだ…オレたち!」
戸惑いながら周囲を見回す者、歓喜に飛び跳ねる者。 - 「父ちゃんが帰ってきたーーーー!」
「あなたーー!!」
やがて人々は自宅に走り、家族や友人と抱き合い涙する。 - 「目撃者によると… まるで魔術のように突然 姿を現したとか」「戒禁も すっかり解けているそうです…!」
- 「そうか… そうか!!」
兵の報告を聞くバルトラ王の顔が昂揚していく。
「やってくれおったな!! あいつら」
「では やはり あの方たちが…!!」
「うむ! こうしてはおれんな 急がねば!!」
バルトラ王は声を張り上げた。
「我が王国 の英雄<七つの大罪>と」「王女エリザベスを出迎えるのだ!!!」 - 彼らが城内に入ってくると、居並ぶ兵たちが手を叩き、滝の轟きのように声高く歓呼した。
王女エリザベスと残飯処理騎士団団長ホークを先頭に、<暴食の罪 >マーリン、<傲慢の罪 >エスカノール、<嫉妬の罪 >ディアンヌ、<怠惰の罪 >キング。 - 群衆など気にした様子もなく普段通りの微笑みを浮かべたエリザベスと、やはり普段通り胡散臭く微笑むマーリン。
得意げに頬染めて鼻息を吹くホーク。
中腰で歩きながら、愛想よく周囲に手を振るディアンヌ。
エスカノールはカチコチに緊張して人形のように歩き、手と足が同時に出ている。キングは そこまでではなかったが、正装 になって背筋をピンと伸ばしている辺り(神器 も隠している)、この歓迎に かしこまって緊張しているようだ。 - 「流石は<七つの大罪>!! そして我が娘よ!! よくぞ人質たちを無事救い出してくれたな!!」
普段着に着替えた王が出迎えた。
「ですが父上 キャメロットは魔神族に占拠されたままです…」
「いや 何にしても よくやってくれた」
手放しの褒めように少々 気後れ気味になったエリザベスに賞賛を重ねて、バルトラ王は訊ねる。
「姿の見えぬ団員がいるようだが…団長 は どうした?」 - 「…」
笑顔で手を振っていたディアンヌが、顔を強張らせて気まずげに視線を彷徨わせた。 - マーリンは微笑みを全く崩さない。
「ゴウセルは深手を負い 治療中でな… 団長殿とバンは それぞれが所用で別行動中だ」
◆メリオダスの離反 を隠蔽する気 満々のマーリンさん。 - 「そうか …ん?」
何か おかしいな、という顔をしたバルトラ王は、しかし、目の前の娘の顔に意識を捕らわれた。
「エリザベス… その目は…!?」
前髪が短くなって露わになった両の瞳。色が金と青の虹彩異色 に固定されているばかりでなく、くっきりと三脚巴紋 が浮かんでいるではないか。
異彩だ。まるで、人ならぬ者であるかのような…。 - 「…父上 あとで お話ししたいことがあるの…」
少し悲しそうに微笑んだ娘に、「あ…ああ」と、戸惑い気味に頷く王だった。 - 「へ… 陛下 …陛下!!!」
そこに泡食った様子で駆けてくる兵一人。 - ビク、とエスカノールがウサギのように飛び上がった。
◆夜エスカノールさん、いちいち怯える(笑)。 - 「ええい! 今度はなんじゃ!?」
「ギルサンダー様が帰還されました!!!」「マーガレット王女様も御一緒です!!」
どよめきの中、城内に数人が歩み入ってくる。
先頭のギルサンダーに帰還の喜びは見えなかった。
その後ろにマーガレット。更に後ろに小柄な吟遊詩人と長身の僧侶。その後ろにヘンドリクセンらの姿がある。 - 「陛下… この度は ご迷惑をおかけしました…」
騎士でありながら攫われたことを気に病んでいるのだろうか。いやに冴えぬ顔色のギルサンダーに、王は首を左右に振ってみせた。
「言うな! 無事で何より!!」 - エリザベスは微笑んでギルサンダーを見上げていたが、ピクッと震えて眉を顰める。
- バルトラ王は訊ねた。
「マーガレット… お前の後ろにいる者たちは――――」「新しい従者か?」 - 「違います 父上」
「?」
険しい顔でスッと右腕を伸ばし、エリザベスは父を背に庇う仕草をする。
「マーガレット姉様では ありません」 - 「エリザベス? 何を言う!?」
「正確には 姉様の体を別の何者かが支配しているのです…」
戸惑う父を置いて、エリザベスはスタスタと『マーガレット』に歩み寄った。 - 「それって 食欲に支配されている的な…?」
プゴッと鼻息を吹いて所感を述べるホーク。
「違うと思います」とエスカノールが突っ込む。 - ごく間近で立ち止まったエリザベスに、『マーガレット』は覗き込むように顔を寄せて微笑んだ。
「これはこれは お久しぶりですエリザベス様…」「最高神 のかけた輪廻の呪いは未だ健在のようですね…」 - 「!!?」
『マーガレット』とは異なる物言いに、驚愕するバルトラ王。 - 「やはり あなたたちなのね…」
エリザベスは険しい目で『マーガレット』たちを見据えた。 - バルトラ王はうろたえ、周囲の兵や騎士たちがざわめきだす。
「ほ… 本当にマーガレットではないのか!?」「ならば お前は…お前たちは何者なのだ!?」 - 純白の翼が広がった。
- 「女神族<四大天使>」「リュドシエル」
『マーガレット』が両瞳に女神の紋様 を浮かべて微笑んだ。 - 「同じく」「タルミエル」
続いて長身の僧侶『アーバス』が、
「同じく」「サリエル」
小柄な吟遊詩人『ソラシド』が、同様に笑って名乗りを上げる。 - ディアンヌが顔をしかめた。
「リュドシエル!! あの超 嫌~~な女神族!?」
「よりによって マーガレット王女に乗り移るなんて…」
キングは困惑している。 - 「
翼 … 生えてるよ…」
呆然とホークは呟いた。メリオダスやキングに羽が生えたのは見てきたくせに、人間に生えるのは想定外だったのだろうか。
エスカノールも呆然として「は… 生えてますね」と返すのが精一杯だ。 - 「女神族だって!?」
「なんと… 神々しい」
純白の翼と清らかな光を前に、周囲の兵や騎士たちからは驚きと感嘆の声があがり始める。 - そのざわめきの広がりを、マーリンは冷めた目で眺めていた。
- 対して、バルトラ王の顔に広がったのは恐怖である。
「これでは まるで…」「デンゼルの時と同じ…」
彼の脳裏に浮かんだのは、弟・デンゼルが、己が身に女神族ネロバスタを顕現させて魔神デリエリに呆気なく殺された、無残な姿だったのだ。 - 「マ… マーガレットを 娘をどうする気だ!? 今すぐ戻してくれ!!」
「マーガレットは自ら身を捧げたのだ …親が 子の決断を蔑ろにするのか?」
おろおろと訴える王に、リュドシエルは にべなく返す。 - その時、靴音を響かせてヘンドリクセンが割り込んだ。
「陛下!! どうぞ 御安心を」「リュドシエル様が宿っておられる限り マーガレット様は確実に安全です!!」 - 「いや… しかし…」
微笑むヘンドリクセンを見返して、王は戸惑っている様子だ。 - 3000年前から女神族との親交を続けたドルイドからの信頼に、リュドシエルは満足げに微笑む。
- 「<十戒>ゼルドリスの攻撃すら リュドシエル様の前には児戯も同然!!」
ヘンドリクセンの弁舌は続いた。英雄 を前にした子供のように瞳輝き、頬を紅潮させて。
そう、ゼルドリスの「怒りの日 」で天空宮は粉々に砕け落ちたが、リュドシエルは己と周囲の人間たちを球状結界で包み、全くの無傷で護ったのである。 - 「何より!!」「再び始まる聖戦において<四大天使>様の
御力 は絶対に不可欠なのです!! どうか ご理解を… 痛ァ」
弁舌は途切れた。人ごみを押しのけて駆け寄ってきたドレファスが、怒り任せにヘンドリクセンの頭を殴ったからである。
「来るんだ ヘンディ!!」
子供にするように、無理矢理 引きずっていく。
「ドレファス ひどいじゃないか!!」 - 「なに やってんだ あいつら」とホークが呆れ、エスカノールもポカンと見送っていた。
- 「そう… それが<
四大天使 >が王国 へ やってきた理由ね」
エリザベスは、未だリュドシエルに あからさまな不信と敵意の目を向けている。 - 「その通り」
その視線を軽く受け流し、薄く笑ってリュドシエルは返した。
「魔神族との激戦に備え 人間の王国と協定を結び」「王国の有する聖騎士 並び…」 - 自分たちを話題に出されて、ざわめく周囲の騎士たち。
- 「<七つの大罪>の力を借りるためです」
- 「「「「「!!!!」」」」」
<大罪>たちが息を呑み、ホークが鼻息を吹いた。 - 「話によると魔神族を相手に何度も王国と民を救ったとか… 何とも心強い限りだ」
そう称賛したリュドシエルが、キッと眉を上げた。
「一番驚いたのは あのメリオダスが団長という事実…」「それにしても姿が見えぬようだが? …やはり土壇場で裏切ったらしいな…」 - 「何…?」
初耳の情報に、ざわめいて顔を見合わせる騎士たち。 - 「彼は裏切ったわけじゃないわ!! 取り消しなさい!!」
エリザベスは食ってかかり、右腕を振って怒鳴りつけた。 - 「あなたは昔と お変わりになられていないのですね …いい加減 甘い夢を見るのは おやめなさい!」
リュドシエルは哀れむように眉を顰める。
「メリオダスが 今 ゼルドリス・エスタロッサを率い 何やら画策しているのが何よりの証拠です」「厄介なことに 奴らの師 <おしゃぶりの鬼>と<うたたねの死神>まで復活を果たしたらしい」
リュドシエルはエリザベスを覗き込むようにして言い聞かせた。
「所詮 黒き血脈と白き導き手は殺し合う運命 …」「魔神族の勢力は強大ではあるが<光の聖痕 >と<七つの大罪>が手を組めば恐るるに足らず」 - 口ごもるエリザベスの前で、芝居がかって両腕を広げてみせる。
「聖戦に貢献すれば最高神 が娘 の呪いを解いてくださるかも」
「そんな話に興味はないわ」
エリザベスは頑なに撥ねつけた。
◆リュドシエルさん、えらく<大罪>を買ってくれてるんですね。メリオダスの部下だった連中なのに(笑)。
ここで魔神族と女神族は「所詮 殺し合う運命 」と言ってるのは、ちょっと目を引きます。女神エリザベスの時代以前にも、和平をしようとして失敗し、互いに痛い目を見た歴史があるのかもしれませんね。
アーサー王伝説と並ぶフランスの騎士伝説群シャルルマーニュ伝説において、フランスの聖騎士たちとムスリム(イスラム教徒…をモデルにした『異国・異教』の人々)は殺し合い、時に和平交渉したり・ムスリム出身の姫や騎士が個人単位で改宗してフランス側に帰属することはあっても、全体が融和することは叶いませんでしたが。
あと、「白き導き手」と言ってたのは、おや、と思いました。第一部で語られていた預言詩では「光の導き手」でしたから。たまたまかな? それとも「白き導き手」は女神族全体を指し、預言詩の「光の導き手」はエリザベス個人を指す、みたいなことだったりするのでしょうか。 - 二人のやり取りを、サリエルとタルミエルは黙って見守っている。
- 「………ともかく」「これは決して あなたたちにも悪い話ではありますまい?」
- エリザベスは肩を怒らせて、子供のようにリュドシエルを睨みつけた。
「私たちの目的はメリオダスを止めることよ」「殺すことじゃない…!!」 - リュドシエルは静かに見つめ返す。その感情は窺えない。
- 「…でも… たしかに あなたの言う通り…」「私たちの力だけではメリオダスたちを抑えることは決して容易ではないわ…」
悔しげに胸で左手を握りしめて口ごもった時、「エリザベス!」とマーリンが呼んだ。 - 「今の
姉々 は団長も同然」「…ならば姉々 の決断に団員 は従おう」
薄く笑って彼女が言えば、エスカノールが一も二もなく頷く。 - 強張った様子のディアンヌとキングは頷かなかったが、強いて異を唱えはしなかった。
- 凛々しく顔を引き締めてマーリンに頷くエリザベス。
- 蚊帳の外に置かれたバルトラ王やギルサンダーは、勝手に進む話に口も挟めず戸惑うばかりだ。
◆<大罪>がエリザベスとメリオダスを手助けすることに異論はありませんが、「今のエリザベスは団長も同然」とは、なんとも暴論だと思いました。公私混同し過ぎでは。流石はエリザベス至上主義者のマーリンさん。 - 「…では 決まりですね」
静かに目を伏せて、リュドシエルは腰の刺突剣 を抜き放った。その刀身が光を発し、長大な光の剣となって辺りを照らす。 - オオ…と どよめく騎士たち。
エスカノールは怯えて身を縮め、ホークは派手なカッコよさに興奮して鼻息を吹いた。 - 「最高神の名において」
率先して誓句を唱えたリュドシエルは「さあ… エリザベス様」と少女を促す。 - エリザベスは声高に唱えた。
「愛する者の名において」
リュドシエルが最高神の名に…公 に向けて誓うのなら、自分はメリオダスの名に…私 の愛に誓う。それが彼女にとっての永遠の「正義」だ。
掲げた右腕が光に包まれ、光条となって真上に伸びる。 - 城の天井を突き抜けるほど高く伸びた光を斜め十字に交差させ、二人の女神族は声を揃えて誓った。
「「……今 ここに」」「「<七つの大罪>と<光の聖痕 >の盟約を結ばん」」 - 交差して天空を貫く光は、かつて見た、夜空を十字に切り裂く流星を思い出させたかもしれない。新たな聖戦の開始を告げるという、あの
予兆 を。 - エリザベスを探し続けていたのだろう。彼方キャメロットの高所に一人立って、漆黒の瞳でメリオダスは それを見つめていた。
- 次回「
宿怨 」
今回のラスト、盟約の光の交差する夜空をメリオダスが眺めている場面。
なんとなく、第16話の、ブリタニアの古詩通りに流星が十字に流れた場面を思い出しました。
一天を流星が十字に斬り裂く時
ブリタニアを至大の脅威が見舞う
それは古 より定められし試練にして
光の導き手と黒き血脈の聖戦の始まりの兆しとならん
エリザベスが私的な動機で不本意ながら女神族と盟約を結んだことが、自動的に、女神族と人間族(リオネス王国)・巨人族(次期巨人女王?ディアンヌ)・妖精族(妖精王キング)との盟約になり、四種族と魔神族の総力戦の嚆矢となった。
今こそが、本当の意味で新たな聖戦の始まりなんでしょう。
古詩では新たな聖戦を
「
古 より定められし試練」
としています。
誰が定めたのか?
…魔神王と最高神ですよね、恐らくは。
いつの日にか再び聖戦が起き、それが「メリオダスとエリザベスを中心した」試練になる。
そのように最初から父と母が定めていたのなら、その「試練」の果てに、どんな結果になることが望まれているのでしょうか。
さておき。
16話の十字流星の場面、よく見ると、荒野の果てにトゲトゲの岩城のようなものがあります。
これ何なんだろう、いつか行くことになるんだろうかと、ずっと気になっていました。
もう物語も終盤だと思われます。
結局あれ、ガラス状に融けたエジンバラ城だった、ってコトでいいのかなあ?
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キングの服装のこと
チャンドラー戦で鎧が砕け、インナーもボロ
バンが煉獄に旅立った後で、ワイシャツとネクタイに着替えてました。
これまでのキングとは傾向の違う、堅めの
さて。
今回のキングは、騎士たちの歓呼に かしこまって、おっさん姿に正装していました。
ところが、服のサイズが明らかに合わない状態になっており、胸とお腹がパンパンで、今にもシャツのボタンが引き千切れそうでした。
折角の正装なのに、服が最高にみっともない! よくこんな格好で王の前に出たな、という状態です。
でも、あれれ?
第一部の頃は、少年からおっさんに変身して服のデザインが そのままでも、サイズは自動的に修正されていました。パッツンパッツンに なったことなどなかったです。
これは一体…?
ひとつ理由として挙げられそうなのは、 キングが現在着ている服が、どうも彼の自作ではなく、既製品らしい点です。
彼の趣味ではないし、デザインを見るに<豚の帽子>亭の従業員服(ベスト無し)ではないかと思われるので。
ギルサンダーやハウザー、ヘンドリクセン、アーサーと、複数かつ各サイズの従業員服がストックされていたらしく、それを拝借して着ていたのではないでしょうか。
チャンドラーによるグロキシニアらの殺害・メリオダスの裏切り・バンの煉獄行きと、立て続けの事件が相当ショックだったようですから、ボロボロになった服を いつものように手縫いや魔法で修繕する気力が湧かず(時間もないし)、とりあえず店にあった従業員服を借りたんじゃないかな。
というわけで、既製服なので魔法が効かず、変身したら服がパッツンパッツンに…?
…しかし そう考えてみると逆に、少年サイズの服を肥って背の高いおっさんが着て、ギリギリながら、よくボタンも千切れずに着れてたな、と不思議になりますね。
うーん…。
少年キングが、実は大人サイズの服をたくし上げて着ていた?
あるいは、キングが精神的に疲弊していたため、普段は無意識に行う細かな魔法の精度が狂っており、おっさんに変身した時、半端なサイズ変更になってしまった?
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立場によって「正義」は変わる
メリオダスはやはり裏切ったらしいなとリュドシエルが言うと、エリザベスは激昂して怒鳴りました。
「彼は裏切ったわけじゃないわ!! 取り消しなさい!!」
メリオダスは常に「エリザベスへの愛」を動機に動いている。
今回の離脱もそうです。
なるほど、エリザベスの立場から見れば、彼は一途に想いを変えていないのだから「裏切ってはいない」のでしょう。
もしかしたら3000年前に魔神族を裏切ったことさえ、エリザベス視点では「裏切りではない」「正義」なのかもしれません。
しかし客観的に見れば、今回のメリオダスの離脱は「裏切り」です。
ごく私的な動機で<大罪>やリオネス王国を捨て、敵陣営に移ったのですから。
今回、エリザベスは<大罪>の団長扱いとなり、女神族との同盟を自己判断で決めました。なし崩しにリオネス王国をも道連れにして。
あたかも全権を得ているかのような状態です。
ならば、エリザベスにはメリオダスの裏切りを認めてほしかったなぁと、個人的には思いました。認めたうえで「しかし彼は戻ると信じているから殺さない、止めるだけ」と言ってもよかったのに。
メリオダスが裏切ったと…彼が客観的には必ずしも正義ではなく、今は(リオネスや<大罪>側の視点から見て)間違った行動をとっていると認めることが、そんなにも でき難いのか。
エリザベスへの愛のためにしていることなら、公的にも尊重されて当然だと考えているのか。
魔神族の侵攻で無数の人間が殺されています。
リオネスも、今日の昼に再び襲われて、今度こそ滅びかかっていました。
今、エリザベスらが平和なリオネスに戻ってバルトラ王や民と対面できたのは、サリエルやタルミエルら女神族が魔神族を追い払い、人々を治癒してくれたおかげです。女神族の助けがなければ、キャメロットから民を転送しても、廃墟となったリオネスで別の魔神たちの餌食になっただけだったかもしれません。
この状況・立場で、メリオダスの行動の非を認める度量もなく、脊髄反射的に食ってかかった様子は、私の目には自己中心気味に映りました。
(第242話、メリオダスが周囲の健康を害する瘴気を発していると明らかにされた時、誰も責めていないのに いきなり「彼(メリオダス)は何も悪くないわ!!」と怒鳴った場面にも、同じような感想を抱いたものです。
メリオダスの非をつかれることを過剰に嫌っていて、攻撃的になるみたいですね、記憶が戻って以降のエリザベスは。)
物事は、立場や見方によって評価が変わるものです。
エリザベスの目で見たメリオダスは、常に二人の愛のために行動し、身を挺してでも護ってくれる、誰よりも誠実で優しい男なのでしょう。
ギルサンダーやアーサーやバンから見れば、メリオダスは優しくて強い、困った時に助けてくれる素敵な英雄でしょう。
しかし魔神族から見れば、メリオダスは次期王という立場にありながら女の色香に迷って国を捨て家族や友人を裏切り同胞を虐殺した、誰より不誠実で冷酷な悪人です。
そしてメリオダスが作戦と称して<十戒>をけしかけたことで滅んだ国や街の人々にとってみれば、メリオダスは、恋愛という私的な動機で、自分たちを撒き餌扱いして理不尽な死に追いやった、まさに悪魔でしょう。
3000年前、リュドシエルは大勢の魔神族を捕らえて<十戒>を誘き寄せる餌とし、全員消滅させました。
非常に残酷ですね。姉を目の前で消されたデリエリが可哀想でした。
しかし<十戒>らが「非戦闘員を犠牲にした」と憤ったのには、当時読んでいて失笑したものです。だって、魔神族こそ非戦闘員どころか老若男女問わず人間を虐殺していたと、それまでに描写されていたからです。
今回ディアンヌが「リュドシエル!! あの超 嫌~~な女神族!?」と言ったように、現時点、作中でリュドシエルは「悪」寄りに扱われています。
実際、無駄に偉そうに威張ってることが多くて、性格的には嫌な奴ですよね(笑)。
一方、例えばゼルドリスは、真面目で誠実な人柄に描かれています。(私も好きです。)しかし、では彼は「善」なのでしょうか?
ゼルドリスは戒禁を用いて、騎士も平民も老若男女も問わずに人間を洗脳し、キャメロットに集めていました。
集められた人々は、ある者は常闇の棺を完全に開くための生贄として、ある者は食料として、魔神たちに消費されていました。思考能力を奪われて逃げることもできず、むしろ喜んで、封印解除のエネルギーとして魂を消費されたり、嗜好品として魂を喰われたりしていたのです。
魂を喰われると、死ぬだけでなく、生まれ変わることもできません。普通に殺されるより もっと非道です。
リュドシエルが魔神族の人質たちを殺したことと、ゼルドリスが人間たちを生餌にしていたこと。どちらが より残酷でしょうか。
どっちもどっちですよね。
立場が変われば評価も変わる。
ゼルドリスは魔神族から見れば優しく誠実な男ですが、作中の人間族から見れば、子供や老人さえ洗脳し、生き餌とすることにカケラの罪悪感も覚えない冷酷な悪魔です。
バルトラ王はキャメロットに囚われていた人々を「人質」と言っていましたが、ゼルドリスは人質を取っているつもりなんてなかったでしょう。そんな交渉をする価値など、人間族に感じていなかったようですから。ただ餌として集めていただけかと。魔神族が聖戦に勝利すれば、人間族は漏れなく餌として飼われることになると思います。
リュドシエルも、ディアンヌやエリザベスの目から見れば嫌な奴でしかないのでしょうが、他の視点から見れば違うのかもしれません。
マーガレットにリュドシエルが憑いたと知ったバルトラ王は、弟・デンゼルの最期を連想して恐怖し、「娘をどうする気だ、今すぐ戻してくれ」とリュドシエルを責めました。
しかし、リュドシエルが言ったように、この憑依はマーガレット本人の同意によって成された契約です。騙しても脅してもいません。
とは言え、親であるバルトラ王が心配するのは当然ですから、得意がってリュドシエルの素晴らしさを説いたヘンドリクセンは、確かに空気読めてない(笑)。
でも、ドレファスがヘンドリクセンの頭を子供にするみたいに叩いて引きずり出したのは、ちょっとどうかなあとも思いました。
ドレファスは魔神フラウドリンの記憶に引きずられ、リュドシエルを極悪人だと捉えているようです。
マーガレットが悪人に騙されて、不当に意思と自由を奪われたように感じているっぽい。
でも、どうなんでしょう。
マーガレット自身の意思を聞いてみたいところです。
リュドシエルがマーガレットの望みを叶えてくれたのは確か。(パッとギルを救っちゃったので簡単なコトだったかのように錯覚しますが、マーガレットたちには とても難しいことだった。)
そして今、王国は魔神族の侵攻を受けていて、それを打ち払う力がマーガレットに与えられたのです。
「戦うのはギルたち騎士に任せておけばいいもの。死にたくないから私は手を貸さないわ」と、彼女は言うでしょうか。
リュドシエルは魔神族と刺し違えてでも滅ぼす覚悟なので、確かに、最後までマーガレットに憑依させているわけにはいきませんけど、今の段階で否定するのはどうなんだろう。
人間に憑いた魔神族を女神族系の術「
<大罪>団長エリザベスと女神族が盟約を結びましたが、きっと女神族が裏切るに違いない、と思う読者が多かったりする?
私は反対に、エリザベスやマーリンやドレファスが、ある程度 女神族を利用した後で裏切ったり、消極的に見捨てるんじゃないかと、ちょっと戦々恐々としています(苦笑)。
エリザベスは例によっての「救います」をやりそうな気もするけど(;^ω^)。