【感想】『七つの大罪』第230話 選ばれし戦士たち
週刊少年マガジン 2017年38号[2017年8月23日発売] [雑誌]
第230話 選ばれし戦士たち
- ハアッ ハアッ と荒い息を吐いて項垂れるメリオダスの背には翼の形の闇が広がり、溢れる鬼気が廃都を揺るがして瓦礫を舞い上がらせていた。
- その一帯は、元は都市の中心で建物の密集した小高い丘だったはずだが、先程の破裂は全てを砕け散らせて、今や彼を中心にした、ごく浅いクレーター状の
更地 になってしまっている。 - 「メリオダス… まさか暴走を―――!?」
空に浮かぶ“完璧なる立方体 ”内で言ったエリザベスに、傍らのマーリンが答えた。
「いや…」「あれは これまでの暴走状態とは違う」 - 「ハアァ!!」
そんな中、メリオダスが全身から気を発して己の鎧とインナーを粉砕した。裸身に渦巻いた闇がまとわりついていく。
◆往来でいきなり全裸になるメリオダスさん。そこに ぐるぐるとまとわりついてコスチュームを形作っていく闇。魔法少女の変身みたい。
メラスキュラも全裸をさらしっぱなしで(<大罪>男連中の誰も興奮してなかったなぁ、そういえば)、デリエリも闇で誤魔化した全裸でしたが、<十戒>の皆さんは裸族みがありますよね。(そう思えば、エスカノールに吹っ飛ばされたエスタロッサが おケツ丸出しになってたのも恥ずかしくない!) - 「団ちょ…!!」
エレインの腕に支えられ、高空から見下ろして呻くバン。 大蛇 はカタカタと震えていた。
「もう おしまいよ…!! <七つの大罪 >も…… この私も…!!!」「あのメリオダスは…<十戒>統率者時代 <十戒 >ですら畏 れた「殲滅状態 」!!」
◆アサルトモードっていう語感に素朴さを感じて、ちょっと笑ってしまったのは私だけでしょうか(笑)。
メリオダスって<十戒>時代から暴走を繰り返してたんですね。狂戦士化して、敵味方見境なく潰してたってことか。困ったちゃん。- 「マーリン!!!」
エスカノールが高らかに呼べば、阿吽の呼吸で、求められた行動を正しく魔女は行った。
“完璧なる立方体 ”
刀印を結んだ指先を ス… と口元に当てて、魔術を行使する。
キンッ
向かい合うエスカノールとメリオダスを中心にした更地の広範囲が、巨大な透明の箱の内部に収まった。
戦いは この箱に封じられた。その累は外界に及ばず、反対に、外界から彼らに手出しすることもできない。 - 「メラスキュラの魔力を破るために 一か八か極限まで魔神の力を解放した結果なのだろうが―――…」
珍しく、マーリンは眉根を寄せて呟いた。
「感情を奪われた現状で するべき賭けではなかったな… バカめ」 - 繭の中で待つことができなかったのだろう。
恋人 を案じるあまりと言えば聞こえはいいが、最初に単独特攻したことといい、周囲を顧みぬ独り善がり な行動だ。己が集めた仲間たちを信頼しきれなかったということか。 - 一方、メラスキュラは。
「…」「い…」「一時はどうなることかと肝を冷やしたじゃな~~~~い! ありがと♡ おバカさんたち」
細い舌をチロチロ動かしながら、すっかり調子を取り戻していた。
「メリオダスと あの恐ろしいエスカノールさえいなければ<七つの大罪 >なんて ただの餌」 - その時だ。
「バン!?」
突如 腕を引き抜いて自ら飛び降りた恋人に驚いて、エレインが叫んだ。 - 「てめえこそ 残る心臓を潰されりゃ おしまいだろが♪」
「!!」
ピクッと反応して見上げた大蛇めがけて落ちながら、右手で腰の袋から三節棍を引き抜き、左の手のひらを摑む形に丸めて振り伸ばす。
“獲物狩り ”!!
スッ ススッ と左手で探る仕草をした。手に触れることなく物体を盗み取る技である。この技で、今までにメラスキュラの心臓を六つまで奪い、潰してきた。
上位魔神には心臓が七つあり、その全てを潰せば死ぬという。残り一つの心臓しかないメラスキュラなど風前の灯火のはずだ。 - 「!?」
だが。バンは驚愕に目を見開く。
「心臓が……!?」 - 「あはん 残念♡」「心臓だったら この長~~い体の どこにでも動かすことができるの」
大蛇は嘲笑うと、落ちてくる男に向け大きな口を開いた。 - “
蛇毒散腐 ”
ジャッ - 「ぐあっ」
大蛇が噴射した毒液に まともに包まれる。 - 「ウフ」「女の体の中を まさぐるなんて イヤらしい男」
ドサッと地に落ちた男を、メラスキュラが笑って見下ろした。 - 「大変…!!」
顔色を変えて舞い降りかけたエレインを押し止 める、バンのくぐもった声。
「ダメだ…!! 近寄るな!!」「ごぼっ」
全身から蒸気のように白煙が上がり、来るなとばかりにエレインに向けて掲げた片手がドロリと崩れ落ちた。 - 「いい
様 ね~~」と、メラスキュラ。
「私の消化液は 触れれば もちろん 蒸気を吸っただけでも死ねるわよ?」
◆えっ…。メラさん、息が臭いどころじゃないね? - 「エレ… …イ…」
バンの全身は肉も骨も溶け崩れ、殆ど原型を留めないほどになっている。それでも骨格だけは半身を起こした形に保てているのは不死の力ゆえか。 - 「バン…」「バーーン!!!」
毒の蒸気ゆえに近寄れず、留まった空中で泣き叫ぶエレイン。 - そこで、解かれた“
完璧なる立方体 ”から出たエリザベスが、無造作にバンに歩み寄った。
「!!」「エリザベス!? ダメよ… 何をする気?」
エレインの声にも耳を貸さず、蒸気の中に平然と踏み入っていく。 - 「う…そでしょ」「私の毒が効かない?」
唖然とするメラスキュラ。
◆今まで<四大天使>ら含む上位女神族とも戦ってきただろうメラスキュラが驚く、女神エリザベスのルール無用のチートぶり。つくづく「神」に愛されています。肉体的には ただの人間のはずなのに…。
以前マラキア暗殺団の猛毒を受けた時も平然としてましたから、「完全毒無効」が彼女の特効スキルなんですかね。 - もうもうと蒸気をあげて溶け続けるバンの前に立って、エリザベスは スッ と右手をかざした。
“健やかなれ”
光の花びらが吹き上がる。 - 「バ… バカな…」「毒が一瞬で中和されていく…!!」
慄くメラスキュラ。 - 「ぐっ」「かはっ」
たちまち、バンが元の姿を取り戻した。 - 「このっ… 卑しい女神族が~~~~!!!」
罵るメラスキュラを鋭いまなざしで見上げたエリザベスの両瞳には、女神族の紋様 が浮かんでいる。 - その時、ゴゴゴ…と軽い地響きと共に、メラスキュラの傍の地面が モコ… と盛り上がった。
「?」
メラスキュラが目をやった次の瞬間、
ドン
「な…!?」
巨大な岩のトゲが突き出して、のけぞるメラスキュラ。 - ドンッ
「!!」
続いて、尾の方にも同じようなトゲが突き出し、シャッと素早く体をくねらせて避ける。 - ドンッ
「ちょっ」
ドン
「これは……」
ドン
ドン
「大地の魔力!?」
次々と突き出すトゲを避け続ければ、それに沿って踊りくねっているかのようだ。 - 忌々しい。<十戒>たる自分を勝手に踊らせている犯人を、メラスキュラはキッと睨んだ。
「巨人の小娘が!!」「力ばかりで能無しの種族が!!」
生え続ける大地のトゲの向こうに、戦鎚を構えたディアンヌの姿が見える。 - 「…でも この姿の私のパワーは巨人族をも上回る」
くわっと口を開いて毒牙を剥き出し、ディアンヌ目指して這い進み始めた。その行く手にもトゲは突出し続けたが、全て躱して シュルルルッ と進み続ける。
「ほらほら どこ狙ってるの~?」「まるで自分の所に来てくれと言わんばかりのアピールよ!?」
ついに間近に迫り、毒牙を打ち込まんと飛び掛かった。 - 「だって そーーだもん♡」
パカッ
シラッとした顔でメラスキュラの脳天を殴るディアンヌ。 - 「ほ… ほげ?」(強…)
反動で俯いたメラスキュラが現状を認識しきる前に、
ガウンッ
「ぺげっ!!!」
今度は振り抜かれた戦鎚 に猛烈に打ち飛ばされた。 - 「並の巨人のパワーじゃ…ない!!」「まるで… ドロール!!」
目鼻や口から血を噴きながら大きく仰け反った背後に、刃 の群れが迫っている。 - “
飛び回る蜂 ”!!!
空中を舞うキングに操作された増殖 形態の神器 が、縦横無尽に大蛇を切り刻んだ。
◆「飛び回る蜂 」は大槍形態シャスティフォルの技だと思ってましたが、増殖 形態でやってもいいんですね。(真シャスティフォルの大槍形態だと、大きすぎて画面に入らないからかな?)
となると…守護獣 形態でもやれるのだろーか。(クルクル飛び回って敵を殴り続けるクマっぽいヌイグルミ。ちょっと見たい) - 「あぎゃああ~~!!」
全身から血を噴いて、メラスキュラは悲鳴をあげる。
「これは… 神樹の魔力?」「まるでグロキシニアの―――…!!」
巨体がゆっくりと仰のいていき、ズッズ~~~ン…と、建物をなぎ倒して廃都に沈み込んだ。 - 「許しがたいわ… この私が たかが巨人や妖精に圧倒されるなど」「魔神族<十戒>である この私が…」
伸びたまま ぶつぶつと呟いていたメラスキュラは、やがて「は!!!」と目を見開いた。 - 暗澹の繭の中で、メリオダスが言っていたではないか。
『<七つの大罪>は <十戒 >を倒すため集まった運命の仲間だ!!』
◆キングが神樹の力を使ったことに驚いていたメラスキュラさん。<大罪>の中に当代の妖精王がいることすら知らなかったんですね。
<十戒>離脱前のグロキシニアたちが あえて情報を提供しなかったってことか。
ところで、メラスキュラを殺せばエレインは死ぬというのに、割と迷いなく攻撃したディアンヌとキング。手加減したのかな? それとも覚悟を決めてた? - いつしか、<大罪>がメラスキュラの前に居並んでいた。
先頭に腕組みして立つ魔女 が、不敵に笑って言い放つ。
「愚かなりメラスキュラ 我らを あなどり その姿で戦ったが勝敗の分かれ道だ…」「貴様の本来の魔力を使いさえすれば如何様 な戦いにも展開できたものを…… 慢心したな」 - 「…!!」
その通りだ。メラスキュラは ぐっと息を呑む。
巨体をさらしてパワー勝負でゴリ押すのではなく、<大罪>を一人ずつ暗澹の繭に閉じ込めたり、魂を抜いたり、己の術の影響下にある妖精の小娘 を操ったりと、搦 め手は色々できたはずだった。慎重に戦えば高確率で大打撃を与えられただろう。<大罪>を侮り、ミスを犯したのだ。
(くやしいけど……)(…ここは一度 撤退ね!!)
体勢を整えれば、戦況は いくらでも変えられる。 - メラスキュラは身を起こした。後ろは がら空きだ、逃げられる。
- だが。
“嵐瀑布 ”
ゴッ
「!!」
十本近い巨大竜巻が巻き上がり、密集して退路を塞いだ。 - 「もう 終わりにしましょう」
「エレイン お前…」
ハアッ ハアッと荒い息を吐きながら術を行使する恋人に、バンが非難めいた顔を向ける。 - その気持ちを代弁するかのように、メラスキュラが言った。
「わかっているの…? 私を殺せば お前も死ぬのよ…!?」 - こちらが術を解いて、この妖精を死体に戻して逃げる方法もあるが。
- しかしその前に、ゴウセルが大蛇の身体を身軽に跳び登って頭頂に降り立った。
「…っ」
頭を振って振り落とす間もなく。
「チェックメイト」
“神経切断 ”
しゃがんだゴウセルが手をついて闇色の光を走らせ、精神干渉の術を行使していた。 - 「お前の神経を10秒だけ完全に切断した」
「体が… 動…か」
かつての仲間に、無情に告げる。
「だが10秒あれば問題ない」 - 魔女の隣に舞い降りて、エレインは依頼した。
「マーリン お願い…」
この役は、兄にも、ディアンヌにも、まして バンには絶対に頼めない。
「いいのだな 妖精の姫」
マーリンが覚悟を問えば、強張りながらもエレインは頷く。
生きていたい。だが、自然ならざる生を無理に永らえても、愛してくれる人々を苦しめるだけだろう。 - その時、カツ と靴の踵を鳴らして、エリザベスが無言で歩み出た。
- 「エ…リ」
神経麻痺で動けず震える大蛇に無造作に歩み寄ると、両腕を広げて目を閉じる。
“安らかなれ”
彼女の周囲に三脚巴紋 型の光が無数に発生し、両腕を合わせて差し伸ばした動きにつれて、光の靄 がメラスキュラめがけ押し出された。 - 「…?」
動けない大蛇の目やウロコの隙間から、トロ…と流れ出す闇。
「やだ… …うそ」「私の瘴気が……」
水に溶けだしていくインクのように、ドロドロ…と闇は流れ、光の靄 の中に消えていく。
「や… やめて」「やめてぇぇ~~~~~!!」 - メラスキュラの怯えた悲鳴が聞こえなくなった後。
そこに残っていたのは、ほんの小さな小蛇一匹だった。 - 魔神だった時の自我や記憶は残っていないのだろう。無防備にキョトンとしている。
「これが… メラスキュラ?」「プゴ」
覗き込んだ子豚 の鼻息にすら縮み上がって、慌てて逃げ出す始末だ。
「はっはっ まいったかね!!」
勝ち誇るホーク。
◆大蛇メラスキュラに比べれば遥かに無力とはいえ、ただの毒蛇でも噛まれたら肉が溶けるし下手すりゃ死ぬんだけどね(苦笑)。覗き込んだホークちゃんは怖いもの知らず。 - 逃げる小蛇は、行く手にあった細い筒の中に這い込んだ。それを女の手が掴み上げて、キュッとコルクで蓋をする。
- 「メラスキュラは魔界の強い瘴気を浴びつづけながら300年生きた毒蛇が魔力を得た者なの…」「メリオダスに そう聞いたわ…」
マーリンの手の中に浮かんで弄ばれている小蛇入りの試験官を見つめて、可憐に微笑むエリザベス。
◆メラスキュラは3000年前に封印された時点で362歳でした。第176話で語られた過去の場面では幼女の姿でしたが、その時、蛇から人型に変化できるようになったばかりの300歳くらいだったのなら、あの回想場面(デリエリ、エスタロッサも子供だった)から聖戦まで、およそ62年 経過しているということ?
それと、魔神族の「闇」って単に「瘴気」だったんですね。
それを簡単に浄化して、メラスキュラの人格を失わせて動物に戻し、無力化したエリザベス。……そんなことが これほど簡単にできて、かつ、エリザベス自身に人格を失わせることへの躊躇いが欠片もないのなら、なぜ3000年前の聖戦の時点でこの力を用いて魔神族を無力化しなかったのだろう。 - 「フン」
マーリンも笑うと、姉と慕う少女を褒めたたえた。
「流石だな姉々 は…」
子供時代のように呼んだ後で、「はっ」となって顔を背け、ゴホッと咳払いしている。 - エリザベスは嬉しそうに微笑んだ。
- 一方、巨大“
完璧なる立方体 ”内で対峙しているエスカノールとメリオダス。 - 「面白い変化です」「どうやら明らかに いつもの団長とは違う様子――――」
エスカノールは静かな目でメリオダスを見下ろしていた。
「私の言葉は通じていますか?」 - 「黙れ」
応 えは にべもないもの。傲慢にして冷酷な響き。
漆黒の瞳の少年は、額から目元までが闇の紋様で殆ど塗り潰されていた。裸身を闇で覆って尖った衣服と成し、下半身を覆う闇は つま先が鉤爪型に伸びて、いかにも魔神らしい異形めいた姿になっている。手にした神器 の刀身すら、金色から毒々しい赤と黒に変化していた。 - 「下賤な人間が おこがましい」
怒りもあらわに吐き捨てて、初対面のように名乗りをあげる。
「俺はメリオダス <十戒>の統率者」
哀れにも、自分が何を捨て何者になったのかさえ見失ったらしい。
◆「殲滅状態 」メリオダスって、ちょっぴりデビルマン(原作版)っぽい。 - 「おこがましい」
下賤と呼ばれた人間 は、冷たく燃える目で愚かな魔神 を見下ろした。 - 次回「<傲慢>VS.<憤怒>」
次回は一挙二話掲載・巻頭カラー。
「エリザベス様」のチートっぷりが ますます冴え渡った回でした。
他キャラたちがボロボロになったり泣いたり、地べたを這いずり回っても なかなか解決できないような案件を、綺麗な顔で歩み出て、キリッとしながら手をかざすだけで次々と片づけてしまう「エリザベス様」。
すごーい。まさに女神。
それだけでなく博識で賢いと、妹分マーリンも褒めたたえます。
嫉妬で憎くなっちゃいますね(苦笑)。
最終回までずーっと、彼女が戦場に出てくる限り、こうなのでしょうか?
度を超えたチートパワーを易々と行使されるとドラマが陳腐化してしまうので面白くない。(周囲のキャラが信者化すると最悪。)
といって、行使しなければ「なんで助けてやらないの」という疑問が生じてしまう。毎回、彼女がチートパワーを使えない理由付けをしなければならなくなるかも。
『ドラゴンボール』でも、神系チートキャラは異界や遠い異星など簡単に会えない場所にいることにしてバランスを取っていましたが、真面目な話、これから「エリザベス様」をどうするのでしょうか。
今は人間の肉体だからチートパワーを使える回数が限られるとか、何か制限を付けてくれたらなあ。読者の精神安定的に(苦笑)。
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エレインは「完全に生き返った」のか?
「エリザベス様」がメラスキュラを無力化し・マーリンが生け捕りにしました。
これによりエレインの死の危機は回避された……らしい?
「いつか必ずエレインを生き返らせる」という、バンの重い命題。読者は、それを ずっと追いかけてきました。
これが、その結末?
横から出てきた第三者が美味しいところを かっさらい、バン自身は ろくに関われもせず・役に立たずに終わった、これが?
「エリザベス様」がチートパワーを発揮してエレインを完全復活させることになったら嫌だなあと危惧はしていたけど、よもや ここまでバンを蚊帳の外に置くとは思っていませんでした。
唖然、です。
エレインは、これから未来永劫、メラスキュラの暗黒の術の支配下で生き続ける?
寿命を持たない・自然ならざる「生きる死体」として、半永久的にバンと連れ添っていくのでしょうか。(頭を破壊されたり、大怪我したら死ぬようですが。)
それとも…?
このエピソードには、他にも多くの「納得できない」点がありました。
ひとつ。
メラスキュラは魔神だった時の人格も魔力も失い、普通の蛇となり果てた。
魔力を失ったのなら、「
これは とても気になりました。
…どーにかこじつけるなら、
本人も気づいてなかったが、実はエレインに羽が生えた時点で完全に生き返っていて、メラスキュラの術は関係なくなっていた、とか?
エレインが自家発電の愛の奇跡で生き返れていたのなら、ますますバンの立つ瀬はありませんね(苦笑)。
ふたつ。
第223話でそういう風に話してたのに。
実際、第228話ラストまでは、歩くも飛ぶもできないほど衰弱していたのに、第229話から戦場に現れると ピンピンして、闘級5万近いディアンヌを揺るがす大技さえ使っていました。
エリザベスが完全覚醒したことで、エレインの衰弱を より しっかりと治せるようになったということなんでしょうか。
もしそうなら、今後エレインは継続的にエリザベスに治療してもらわねば、衰弱して死んでしまう?
三日後にエリザベスが死んで赤ん坊に戻ったり、はたまた、呪いが解けたエリザベスが50年後に人間としての天寿を全うしたら、治療を受けられなくなるエレインも衰弱して死ぬことになる?
エレインの命は「エリザベス様」頼りになってしまったのでしょうか。
あるいは、前述したように、エレインに羽が生えたことで完全に生き返り、衰弱も治った?
実は読んだ当初は そう思ってたのですが、よく見たら「
この辺スッキリしないので、いずれ作中でちゃんと説明してほしいです。
みっつ。
マーリンが試験管にメラスキュラを保管している限りエレインが死なないということは、逆に言えば、マーリンがエレインの命を握っているということになりませんか?
命が他人に握られているのは、気分的にスッキリできないです…。
とにもかくにも、色々スッキリしない、つまらない幕引きでした。
今まで提示されてきた設定を無視した ご都合感も気になりましたし、バンとエレインの愛の山場になると数年越しで期待していたエピソードが、まさか、「女神エリザベス すげ―!」と讃えるためのものになるなんて。流石は姉々だな。
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<七つの大罪>は、あくまで「<十戒>を倒すため」選ばれた戦士です?
第182話で語られた、メリオダスとマーリンが<大罪>を集め始めた16年前のエピソード。
そこで「大罪が戒めを討つ時だ」と笑った後、メリオダスは祝杯をあげて言ったものです。
「三千年だぜ…?」「嬉しくて酔いもするさ…」「三千年の間 呪いを解くため待ち続けたんだ」
なので てっきり、<大罪>を集めなければ<十戒>を倒せないし・呪いも解けない……呪いを解くには<大罪>の力が必要なんだな、と思っていました。
でも。
ディアンヌの記憶はキングが取り戻す! と煽っておいて~~術士ゴウセルが戻したり(キングは何の役にも立たなかった)、
エレインはバンが生き返らせる! と煽っといて~~エリザベスが解決したり(バンは何の役にも立たなかった)、
こんな、悪い方向に読者を裏切る がっかり展開が続くのを見ていると。
どうも、<大罪>は呪い解除の役には立たないんじゃないか、蚊帳の外に置かれるんじゃないか、という気がしてきました。
たとえば、
メリオダスとエリザベスが超パワーアップして自力で解いちゃうとか、
横から出てきた第三者が呪いを解いちゃうとか、
呪いが古くなって勝手に解けましたとか。
<大罪>なんて いてもいなくても変わらなかったじゃん、せいぜいエスカノールとマーリンさえいればよかったんじゃん。みたいな、尻つぼみの がっかりオチになるんじゃなかろーか…? と、ついつい疑心暗鬼に。(;^ω^)
いやいやいや。気を取り直しましょう。
何故「運命」か?
恐らく、バルトラ王の予知でメンバーを選んだからなのでしょう。
しかし、バルトラ王は「七人の大罪人がリオネス王国の守護者となる」としか予知していないのです。
それを<十戒>を倒す仲間だと(何故か・根拠なく)定義したのはメリオダス。
よくよく読んだら、すごく 奇妙で あやふやですよね。
どうしてメリオダス(とマーリン)は、「リオネス王国の守護者となる七人の大罪人」が<十戒>を討つ仲間だと、即座に確信したのでしょうか。
…バルトラ王 以前に、別の誰かに「七人の大罪人が揃ったら<十戒>を討てて呪いも解ける」と予言されたことでもあったのかな?? メリオダスは「呪いを解くため待ち続けた」と言ってますし。
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バンのズボン
メラスキュラの消化液でドロドロに溶かされてしまったバン。
あわわわわ……!!
当然ながら、服も全部溶けています。
溶けた肉の中に腰骨が確認できますから、下半身も完全に とろけている模様。
すぐに「エリザベス様」の解毒で肉体は元に戻ったけど、服は再生できないから、こりゃ すっぽんぽんだわ。
…と、思っていた期間が、私にも数ページ分ありました。
あれ!?
バン、ズボン穿いてるじゃん!!!
メラスキュラの消化液でも溶けなかったズボン。なんという安心感でしょうか。
エスタロッサがお尻をさらしても、メラスキュラが全裸を披露しても、バンは戦場でズボンを脱ぎません。
今週もバンの下半身は聖域でした。
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邪眼と蛇の毒の話
メラスキュラがバンに消化液を吐いた(※)場面を見て思ったこと。
(※でも、その後の場面では「毒」と言われてて、消化液なのか毒なのか曖昧な扱いでしたね。)
古代ローマの博物学者・大プリニウスが著した『博物誌』(1世紀)に、毒蛇「バジリスクス」の記述があります。
現代の認識では、バジリスクスは「蛇の尾を持つオンドリ」怪物・コカトリスと同一視されますが(中世以降そう考えられるようになった)、プリニウスはバジリスクが半オンドリだとは述べていません。
バジリスクスという蛇はキュレナイカ(アフリカ北部。リビアの東部にあたる)に産し、長さは12
指幅 (24cm弱)を超えない。頭に王冠の形の白い斑紋があり、鳴き声はあらゆる蛇を退散させる。他の蛇のように体をくねらせて這い進むのではなく、体の前半分を直立させて進む。触れれば勿論、その吐息がかかっただけでも、あらゆる灌木が死に絶え、草が燃えあがり、岩は裂けてしまう。それほど強い毒を有するのだ。
兵士が槍でバジリスクスを刺し殺したならば、馬に乗っていようと、毒が槍を伝いのぼって男ばかりか馬まで死ぬと言われていた。
中世以降、バジリスクスは「見ただけで敵を殺す(または石化する)」、いわゆる「邪視」の力を持つと言われるようになりましたが、プリニウスは そう書いていません。吐息だけで周囲を焼く猛毒を持つとしています。
ただし、視線だけで人を殺す怪物・カトブレパスの記述に続けて「バジリスクスという蛇も同じ力を持つ(触れずに殺す力を持つ)」と述べてもいるので、そこからバジリスクスも邪視の力を持つと解釈されることになったのでしょう。
一説に、プリニウスの言うバジリスクスは、コブラの類を指すとされます。
フードコブラ属は威嚇時に上半身を高く起こして首の周囲の皮を団扇状に広げます。広げたフードの背側には、種によって白い輪の模様があり、王冠に見えるかもしれません。
バジリスクスは上半身を起こしたまま這い進むとブリニウスは述べていますが、コブラ属は上半身を起こしフードを広げた威嚇ポーズのまま進むことができることが知られています。
バジリスクスがコブラ属を指しているのなら、吐息だけで周囲を焼く、馬に乗って槍で刺した(離れた位置にいる)兵士を噛まずに毒で殺すとは、どういうことなのでしょうか。
実は、エジプト(北アフリカ)に分布するクロクビコブラなど、種によっては、毒液を牙から3メートルも噴射するのだそうです。
毒液は獲物の目を狙って放たれ、目に入れば激痛があり、失明することもあるそうで。なるほど、これは「視られた」「息を吐かれた」だけで致命的打撃をこうむりそうですね。
離れた位置にいる敵を殺す毒蛇なんて、空想上の怪物のようですが、実は現実の生き物の生態を、又聞きで、大げさに描写しただけだったのかもしれません。
現実の生き物は、時に、幻想以上の特異な生態を持っています。
怪物や幻想の成り立ちを遡って追っていくと、色々面白いです。
余談ですが、バジリスクスの天敵は「イタチ」だと、ブリニウスは述べています。これはコブラの天敵がマングース(イタチに似た動物)であることを連想させて面白いですが、より面白いのは、イタチは肛門腺から臭い液を噴射する…いわゆる「イタチの最後っ屁」で知られており、その臭い液も敵の目に入れば失明の可能性がある刺激物(毒)であることです。
コブラが口から毒液を吐く行動と似ていますよね。
似た者同士として、天敵だと考えられるようになったのかも?
プリニウス曰く、イタチは最後っ屁の臭気でバジリスクスを殺し、同時に自分も、その臭いで死んでしまうのだと。
ただし、バジリスクスが唯一枯らすことのできない植物・ヘンルーダ(ミカン科の小低木)を解毒剤として予め食べておけば、難を逃れることができるらしい?
コブラ風に頸部のフードを広げ上半身を起こしたメラスキュラが、口から毒液を噴射したので、以上の内容を思い出しました。
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暴走したメリオダスが「<十戒>の統率者」と名乗ったのには苦笑してしまいました。
魔神王はメリオダスの感情を喰らうというけれど、記憶は失われない。記憶があるなら深刻なことにはならないだろうと思っていたら、ご都合で記憶が退行するのかー。
自ら裏切って捨てた肩書を掲げて、自ら集めた仲間を殺そうとするメリオダスは、傍から見ててイタかったです。
正気に戻った時、羞恥で もんどりうつがいい(笑)。
「<十戒>の統率者」であることは、かつての彼にとって、自身の大きな存在価値だったのでしょうか。