『七つの大罪』ぼちぼち感想

漫画『七つの大罪』(著:鈴木央)の感想と考察。だいたい的外れ。ネタバレ基本。

【感想】『七つの大罪』第249話 取引

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週刊少年マガジン 2018年 6号[2018年1月10日発売] [雑誌]

第249話 取引

  • 「マ… マーリンが魔神王と最高神の祝福を受けし娘!?」
    唖然と叫ぶディアンヌ
  • 「王女様と団長とは まるで正反対だ」と、エスカノールが声を震わせた。
    二人は魔神王と最高神に呪われている。マーリンが祝福されているのなら、全くの真逆だ。
  • 戸惑い顔で幼女の背を見ていたキングが、ハッと我に返る。
  • 「み… みんな!! 今は それどころじゃないよ!!」「あそこにいるのは<十戒>だ!!!」
    夜空に浮かぶゼルドリスを指させば、エスカノールが「そうですね…」と間の抜けた返しをした。マーリンの件で驚きすぎて反応が鈍くなっているらしい。
  • ともあれ、全員がゼルドリスに向かって身構えた。エスカノールは幼いマーリンを挟むように(しかし触れずに)前後に両手を差し伸ばす。
  • こちらは身構えるでなく、眉根を寄せてゼルドリスは見下ろした。
    「会うのは初めてだな なるほど お前らが<七つの大罪>か…」「<十戒なかま>が大分だいぶ 世話になったらしいな…」
  • 「魔神王の代理ゼルドリス…」「あいつは とんでもない強さだよ…!!」
    他人ドロールの肉体を借りてとはいえ、彼と戦った経験を持つディアンヌが警告する。
  • 「みんな 全力で戦うぞ!!」
    緊迫を込めてキングが檄を飛ばした、その脇を、てすてす とシラケ顔の幼女が歩いていった。
    「手出しは無用と言っただろう」
  • 「え… ちょっ マーリン!?」
    困惑するキングたちを置いて(エスカノールはムンクの『叫び』のように両頬に手を添えて両膝から くずおれている)、マーリンは舞い上がる。
    「ここは騒がしい 一対一サシで話をするとしよう」
    薄く笑って もちかければ、
    「利口な判断だ」
    ゼルドリスも翼を広げ、マーリンの先に立って高度を上げて行った。
  • 二人はたちまち遠ざかり、遥か上空に見えなくなる。
    見上げていたホークは、鼻先に何かが ひらっ と落ちてきたのを感じた。
    「?」「髪の毛?」
    飛び去っていくマーリンが、さりげなく髪の毛を一本 抜いて捨てるような仕草をしていたが、それだろうか。
  • 途端に、それは ポンッと弾けて、花とも生き物ともつかぬモノが出現していた。
  • 「ひいっ!!!!」
    悲鳴をあげるホーク。だって、あまりにも不気味だったから。
  • ヒマワリ系の花のように見える中心には大きな口があって、人間風の歯列を剥いて「いぎ いぎ」と うごめいていた。葉らしき部分は手のようでもある。根はと言えば、あろうことかホークの鼻先にしっかり張られて、半ば同化しているかのごとく頑強にくっついているではないか。

  • 一方、上昇していくゼルドリスとマーリンは、幾重もの雲を突き抜け、雲海を眼下にした高空に至っていた。
    ◆雲一つない晴れた星空だったのに、上に昇ったら下一面を覆う雲海です。
  • 「メラスキュラの わずかな魔力を辿ってみれば よもや貴様のような大物に出くわすとはな… グレイロードも運がない」
    背後の幼子を気にしながら、ゼルドリスは語った。
    「…魔神と女神の どちらにもくみせず中立の立場にあった賢者たちの都ベリアルイン――」「そこに 突如生まれた「無限」の魔力を持つ奇跡の天才児」
    「…噂は瞬く間に魔界と天界に響き渡り 二人の神は 幼子を掌中に収めようとした」「ベリアルインの賢者共は当然 猛烈に反発した 幼子の力は あくまで自分たちの財産だ――と」
    「しかし 幼子は賢者共の意志に背き 自ら二人の神に交渉を仕掛けた」
    「自分の気に入る贈り物をした側につくとな」
    「魔神王は幼子に 魔界の秘術に関する あらゆる知識と 女神の洗脳術を防ぐ加護を授け」「最高神は幼子に いかなる闇の呪いと戒禁すら無効にする加護を授けた」
    「だが幼子は その加護を得た挙げ句 両者を拒んだ… 神を欺くとはな」
    「怒った二人の神は千日間 都を呪いと死の霧で覆い 炎といかずちの大雨を降らせ ベリアルインを滅ぼした」
    ◆賢者の都は魔神族と女神族のどちらにもつかない中立の立場だった…。
    えええ。じゃあ、巨獣アルビオンを魔神族の兵器として与えてたのは何だったのか。中立を保っていたのなら、女神族側にも何か同等の魔導兵器を提供していたのかな。

    魔神族でも女神族でもなかったのなら、賢者の都の人々は種族的には何だったのでしょうか。種族ごちゃまぜ? マーリンの真名は人間に発音できないので、彼女が人間族でないことは確かなんですよね。


  • 『…が 神の加護と「無限」の魔力を持つ幼子は それを難なく切り抜け 姿を消した』『その悪名高あくみょうだかき大物と こうしてまみえるとは たしか 今は――マーリンだったか』
    ゼルドリスの言葉を、ホークの鼻先に咲いた不気味な花が、歯を剥いた口を動かして そっくりそのまま喋っている。ホークは「とって とって」と身悶えて嫌がっていたが、誰も彼の意に沿ってやらなかった。語られた内容に衝撃を受けていたからだ。
    まさか、マーリンが魔神や女神をも手玉に取った稀代の詐欺師だったとは。
    なにかと秘密主義の彼女ではあるが、この辺りの情報は惜しまず開示する気であるらしい。
    ◆幼い頃から特異で規格外な才能を持ち、挙句、生まれ育った都市を滅ぼすこととなった。その点だけを見れば、自身の生まれた国を滅ぼすと予言され・現在 実際に国が滅んでいるエスカノールと、ちょっと似ているかもしれません。

    それはそうと、ゼルドリスの「悪名高き大物とこうして見えるとは」という台詞回し、あたかも伝聞でしか知らなかった有名人と初めて会ったかのようですが。前回のマーリンとゼルドリスの反応からすると、3000年前から顔見知りだった風なんですよね。ちょっと不思議。

  • 「…今度は何を企んでいる?」「答えろ」
    雲海の上で、背中越しにゼルドリスは問うた。
  • 「かいかぶりすぎだ……」「私のことは どうでもよい」
    薄く嗤うと、マーリンは手の中の小蛇入りの試験管を弄んでみせる。
    「…それより お前の目的はコレだろう?」
  • 話を続ける。
    「解せんのはゼルドリス」「兄を恨んでいるはずの お前が」「なぜ 裏切り者のメリオダスのために戒禁を集めるかだ…」「魔神王の力の欠片である十の戒禁をメリオダスに与え――――――」「奴を魔神王にすることに なんのメリットがある?」
    ◆マーリンさん、察しが良過ぎませんか? 実はメリオダスかエリザベスに盗聴器 付けてんじゃないかと疑わしくなる(苦笑)。

  • 「!!!」
    怪花を通して聞いていたエスカノールが顔色を変えた。
  • 「戒禁を集めて団長を魔神王に……!!?」
    キングが声をあげ、不安げなディアンヌと顔を見合わせる。
    つい数十分前に「魔神王になる」と宣言してメリオダスは出て行ったが、そんな方法だったとは。

  • 「答える義理はない ……だが 貴様と争うつもりもない」
    ゼルドリスはマーリンに向き直り、掌を上に向けて左手を伸ばした。
    「…それを渡せば<七つの大罪きさまら>を見逃してやろう」
  • 「なるほど… 取引か」「少々惜しいが やむを得まい」
    澄まして笑うと、マーリンはフッと左手を振った。投げたかのように、小蛇入り試験管が真っ直ぐ宙を滑っていく。
  • 目前に届いたそれを掴もうとゼルドリスが掌を開いた、瞬間。
    キンッ
    「!!!」
    試験管が小さな透明な箱…「完璧なる立方体パーフェクト キューブ」内に封じ込まれたのである。掴めないのは勿論、箱ごと動かすこともできないようだ。
  • 「貴様…」
    「…くれてやる分には いいが」
    凄む魔神を意に介した様子もなく、マーリンは薄ら笑う。
    「それだけでは正直 見合わん」「もう少し色を付けてもらおうか」
  • ゼルドリスは押し黙った。

  • 『…………言ってみろ』
    怪花を通して聞くキングたちは、綱渡りの交渉にハラハラと固唾を呑んでいる。

  • マーリンは言った。
    「エリザベスの身柄を引き渡してもらおう」「エリザベスには あと三日… いや 二日と少しの猶予しか残されてはいない… このまま魔神の巣窟に放っておくわけには いかん」
  • ゼルドリスは答える。
    「……悪いが却下だ メリオダスは絶対に拒否するだろう」「その呪いを解くために メリオダスは魔神王の力を手に入れようとしているのだからな…」
    諭すように続けた。
    「だが安心しろ メリオダスが護っている限り 誰もエリザベスあのおんなに手出しはできん」
  • 「………信じよう」
    無表情にマーリンは返す。不満はあるが、ゼルドリスの言う通り、無理だと判断したようだ。
    「だが それでは取引には応じられんな」
  • 「なら 別の要求にしろ」
    ゼルドリスは誠実な魔神だった。叶えられるものなら本当に願いを聞くつもりでいるらしい。

  • 『では――』
    怪花がマーリンの声音で語った。
    キャメロットの王の身柄を引き渡してくれ』
  • アーサー王…)(やはりマーリンさんは…)
    痛むように胸を押さえるエスカノール。

  • 「それも却下だ」「あいにくだが王の名も顔も知らん 故に保証ができん」
    生真面目にゼルドリスは断る。適当に嘘をついて取引を成立させる気はないようだ。
    「王都制圧の際に戦死したか逃亡したか… 封印を解くための生贄になったかもしれんしな」
  • 「…っ」
    マーリンは顔を強張らせ、ぐっと手を握りしめる。
  • 「そうでなくとも 魔神族こちらは この数日で正体不明の襲撃者により 多数の被害が出て 気が立っている」「そんな小物一匹の身柄の保証はできん」
    ◆あらあら…。ゼルドリスさん、自陣営の弱みを必要もないのに自ら暴露しちゃってますよ。この人、交渉ごとに向かないなあ。(^^;)
  • 握りしめられていたマーリンの手が緩んだ。

  • 二人は知らなかった。まさにその頃、キャメロット城へ続く通路を、マントをまとった人影が進んでいたことを。
    通路の上方に見える広場にチャンドラーがいたが、彼は背を向けたまま気付いていない。まるで、気配を持たぬ死神か何かが、音もなくすり抜けて行ったかのように。
    ◆まるでドラえもんの「石ころ帽子」でも かぶっているかのごときアーサーくん。
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    アーサーは誰とも戦うことなく、ゼルドリスらの留守中に簡単にエクスカリバーを取り戻してしまうのでしょうか?


  • 『わかった… ならば別の要求だ』
    怪花はマーリンの声で語った。
    ホークは身悶えるのこそやめたものの、「ナゼ 俺の鼻に」と、青ざめて涙目になっている。気持ち悪くてたまらないのだろう。
    ◆花だけに、鼻に咲くと。

  • 「「敬神」の戒禁で虜にされたキャメロットとリオネスの聖騎士と民を解放しろ」
    「………それなら容易い…」「現時点での生存者すべての解放を約束してやる…」
    ゼルドリスは応じた。
    「それと配下の魔神たちにも手出しをさせぬようにな」
    「…いいだろう」
    注文の追加にも大人しく従う。
  • 「…よし 解いたぞ」
    しばし目を閉じてから、彼は言った。
    流石は魔神王代理ということか。<十戒>当人にさえ制御不可に見えた戒禁を(なにせ、ガランは自らの戒禁で石になったのだ)、こうも容易く解除できるとは。

  • 同時刻、キャロメット王都では人間たちが一斉に自我を取り戻していた。
    「…………」
    「こ…こは…?」
    「?」
    「俺たち今まで…一体」
    呆然と呟く老若男女を、橙や灰の魔神たちが黙って見つめている。
    見回して、やっと気付いた人間たちは悲鳴を上げた。
    「ま…魔神だっ うわああああ~~~~っ!!!」「たすけて~~~!!」
    パニックを起こして逃げまどい始める。

  • 雲海の上では、ゼルドリスがマーリンに告げていた。
    「―――今度は貴様が約束を果たす番だ… さあ術を解け」
    掌の上に浮かんだ、魔力の箱パーフェクト キューブに封じられた試験管を示す。
  • 「フム… そうだな」
    薄ら笑いのまま「フー」とマーリンは溜息を落としてみせ、「…おっと その前にすまない」と、おもむろに左手で自分の右肩を揉んだ。首を振ってコキコキと関節を鳴らす。幼女の外見では違和感 著しい、中高年のような仕草だ。
    「どうも この姿は肩がこってな… 久しぶりすぎて しっくりこない」
    ◆キングが(10年ぶり?に) おっさん姿に変身した時(第26話)、やっぱり「久々で 肩がこった~~」って言ってましたっけ。
  • 声を荒げるゼルドリス。
    「下手な芝居はやめて さっさとしろ!!」

  • 怪花を通じて聞くキングらは気が気でなかった。
    「マーリンってば わざわざ相手を怒らせるようなことして…」
    ハラハラするディアンヌ
    「ま…まさか 何か仕掛けるつもりじゃ?」
    キングは懸念し、
    「しし… 心配だな 心配だな」
    エスカノールは不安を繰り返すしかできない。
    その間じゅう、ホークは「鼻が痒いー!!!」と喚き続けていた。それでも動かず我慢しているのは偉い。

  • 「そろそろだな…」
    揉む肩を左に変えつつ呟いたマーリンは、
    「言っておくぞ」
    ドスの利いた声音に、ふてぶてしい顔を上げた。
  • ゼルドリスは腰の剣に手を掛けている。居合にも似た、一触即抜の姿勢だ。
    「俺は今 貴様の一挙一動に全神経を集中させている… 妙な真似をすれば」「即 斬る」
    全身から発される鬼気。
  • 「…何もしない」
    マーリンは薄ら笑いのまま軽く両手を挙げた。そして、告げたのである。
    「私はな」
  • その刹那。
    、とゼルドリスの全身に怖気が走った。振り向き見た雲海の果てに チカ と光が瞬いた、その直後には、おぞましくも強大な魔力が、極太の光線となって雲を貫き、目前まで迫っていたのである。
  • 光はゼルドリスに激突し、莫甚な十字の爆発となって、雲海を攪拌した。

  • ズ ズ ズ ズ… という低い轟きは、光線の発射地点にも届いていた。雲海に浮かぶ女神族の天空宮である。
  • 慄然として歯噛みするドレファス。唖然とするギルサンダー。陶然と目を輝かせているヘンドリクセン。
  • 三人の視線を集めているのは、王女マーガレットの器に宿りし<四大天使>リュドシエルである。
    「受けとれ」「始まりの ほんの挨拶代わりだ…」
    例の光線を撃ち放った刺突剣レイピアを突き出したまま、美しき四翼の女神は高慢に微笑ってみせた。
  • 次回「構図」

メリオダスとリュドシエル

 

 

かつて(第206話)、人形を操る術士ゴウセルは、リュドシエルを こう評しました。

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「ただ一つの目的のために全てを捨て去った男か」
「…俺も」「そんな男を知っている」

これは、エリザベスとの愛のために「友も家族も捨て去った」メリオダスのことを指しているのだと思われます。 

 

一見して、メリオダスとリュドシエルには似ているところはない。しかし、一つの目的を果たすためなら残酷にもなれる(ただ一つの大切なもの以外は捨てられる自己中心性を持つ)という点では、実は相似の存在なのかもしれません。

 

 

今回、マーガレットの器に宿るリュドシエルは魔神ゼルドリスに極大の攻撃をぶちかまし、「ほんの挨拶代わり」だと言いました。

女神族は既に各地に復活して活動を始めてはいますが、これが、女神族から魔神族への事実上の宣戦布告だと思います。

 

そして第135話、メリオダスは<十戒>の拠点に乱入して攻撃をぶちかまし、「ほんの挨拶」だと言っていたものです。

魔神族は既に活動を始めてはいましたが、あれがメリオダスから魔神族への事実上の宣戦布告で、そこから苛烈な魔神族の侵攻(メリオダスへの復讐)が始まったのです。

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「ほんの挨拶」と言いながら、笑って過激な先制攻撃をぶちかまして宣戦布告する。

メリオダスとリュドシエルって、ちょっと言動が似ているかも?

 

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戒禁というモノ

 

 

初めて「戒禁」が登場した時、これから十種の機知に富んだ戦いが描かれるんだとワクワクしたものです。

が、現実はご存知の通り。

ろくに活用されないまま、「集めるとパワーアップできるアイテム」に成り果ててしまいました。

 

戒禁は、「特定の条件で発動し、敵のみならず戒禁所持者 自身も呪いを受ける」という絶大ながら諸刃の力だったはずですが、その設定が生かされたのはガランだけ。

しかも「呪いにかかった者か、戒禁を持つ<十戒>自身が死なない限り、呪いは解けない」厳しい設定だったはずなのに(第183話で魔神王とメリオダスがそう語っていました)、

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↓今回、ゼルドリスが少し念じただけで簡単に呪いを解いてしまいました。

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この漫画、ホントに設定をコロコロ変えますよね。

設定に縛られていたら面白い漫画にならない、という考えもあるでしょうし、それも間違いではないと思いますが、限度ってものがあると思うの。

 

戒禁の呪いが、念じただけで簡単に解けちゃう程度のモノだったんなら、なんで術士ゴウセルは500年も牢屋に入れられていたのか。

てっきり「無欲」の戒禁のせいで、恋人など大切なひとから忘れられたり・自分自身の大切な感情が消えたりして、苦しんだんじゃないかと思ってたけど、任意で簡単に呪いが解けるんなら問題なかったんじゃん。

(もし、大切なひとへの感情が消えた経験を術士ゴウセルが持っていたなら、今のメリオダスの苦しみに最も共感しうる人物だったのかもしれない。)

 

エスタロッサの「慈愛」の戒禁も、一度かかったら死ぬかエスタロッサを殺すまで解けないと思っていたのに、どうしてバンやハウザーは解呪されてるんだと不思議に思っていましたが、何かの拍子に簡単に解ける程度のモノでしかなかったのでしょうか。

それとも「<十戒>を倒す」という解呪条件が、実は、殺さずとも「精神的に負けたと思わせただけでOK」などとゆー、緩い判定だったのでしょうか。

 

 

ついでに。

メリオダスが戒禁を複数集めて己が身に取り込んだとして、呪いはどうなるんでしょう? 全ての呪いがメリオダスを縛って、嘘を吐くことも・欲望を抱くことも・憎悪を抱くことも・虫一匹殺すことも、諸々一切できなくなるリスクがあると面白いけど(笑)。

どーせ そんな面倒くさいことにはならず、都合のいいパワーアップアイテムとしてしか扱われないんでしょうね。 

 

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マーリンのこと

 

 

魔神王と最高神の祝福を受けし娘、というマーリンの二つ名。

前回初めて見た時は、なんという中二ワードかと思って むず痒い気分になったものでしたが(笑)、由来を聞いてみると、どっちかというと伝承のトリックスター寄りな話でしたね。

 

幼い子供でありながら特殊な力を備え、強大な神を知恵でやり込めてしまう辺りには、ギリシア神話の奸智/詐欺/商業の神・ヘルメス(マーキュリー)を思い出しました。

あるいは、悪魔も天使も知恵でやり込めてしまったがゆえに、死んだ後、地獄にも天国にも受け入れてもらえなくなり、永遠にあの世とこの世の間を燃えながら彷徨っている男の民話とか。

 

 

魔神王と最高神に目を着けられたマーリンを、賢者の都の人々が「幼子の力は あくまで自分たちの財産だ」と主張した、という表現に、何気に、当時マーリンが故郷でどんな扱いをされていたのかが滲み出ている気がします。

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↑このイメージイラストで見るに、中央に立ってる賢者は杖の形からしてマーリンの父ですが、マーリン自身は、父や他の賢者たち大勢に囲まれて、その足元に うずくまっている。子供だったし、彼女の自由と権利は乏しかったのかもしれないですね。 

 

第223話、女神としての記憶を取り戻した直後のエリザベス曰く

「久し振りねマーリン…」「見違えたわ… あんな幼かった子が…」「まだ一人でベリアルインに いるの?」「今日は また メリオダスのところへ遊びに来たのかしら?」

だそうで、第229話のエリザベスによれば、それはマーリンが12、3歳の頃のことらしい。

 

ベリアルインは魔神王と最高神によって滅ぼされ、マーリンが ただ一人の生き残り。

ならば、エリザベスの言う「一人でベリアルインにいる」というのは、ベリアルインが滅んだ後のことなんでしょう。

 

マーリンは故郷が滅ぼされた後、その廃墟に戻ってきて、独りで暮らしていたらしい。そして、度々メリオダスのところへ遊びに行って、そこでエリザベスとも会っていた、ってことでしょうか。

 

どうして彼女は、一度は逃げたのに、廃墟となった故郷に戻ったのか?

故郷が滅んだのは彼女の本意ではなかった・後悔していて、離れがたかった、ってコトならば、人間味があって共感できるんだけど。

 

時系列的には、都市が滅ぼされる前にマーリンの父は煉獄へ行って廃人になっていたハズ。「死の間際まで」煉獄の詳細を語り続けたとのことですが、その「死」は都市の滅亡に巻き込まれてだったのか、煉獄で衰弱したせいだったのか。

 

 

 

マーリンに授けられた祝福とは

魔界の秘術に関するあらゆる知識と 女神族の洗脳術を防ぐ加護」

いかなる闇の呪いと戒禁すら無効にする加護」

 だそうで。

 

えええ。ちょっと待て。作中時間で つい二日くらい前に、ゼルドリスに呪われて、精神世界が真っ暗闇になって死にかけてたじゃないですか マーリン。(第219-221話)

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どこが「いかなる闇の呪いも無効」なの?(-_-;)

 

一度かかったガランの戒禁が「自分が何者か、うっかり忘れていたから掛かったけど、思い出したので解けた」という扱いになった時も、展開の あまりの強引さに驚かされましたが。ゼルドリスの呪いで死にかけたのも「うっかり忘れてたから」だと説明されてしまうのでしょうか。

 

……それとも、実は3000年経って自然に祝福の効果が薄れ始めてるんだったり?

もしも祝福の効果が薄れるのなら、呪いも、3000年も経てば自然に劣化して綻びてきたりしないのでしょうか。

 

 

 

もう一つ。「女神族の洗脳術」とサラっと言ってて、おおっと思いました。

3000年前の女神エリザベスは、見つめただけで魔神族の軍勢を「何故か」撤退させましたし、リズも敵だったはずのダナフォールの騎士たちに「何故か」愛されるようになった不思議な魅力を持つ娘だったと語られていました。

これは、エリザベスに精神干渉能力…良く言えば魅了、悪く言えば「洗脳」の力があるってコトではないかと、当時の感想に書きましたが。本当にそうだったんですね!

 

とゆーか、エリザベスだけでなく、女神族全体の能力だったんですか。

つまり、女神族の種族特性なのね。

 

妖精族の種族特性である「心が読める」力の強弱や範囲に個体差があるように、女神族の「洗脳」も、強さや効果は各々で少しずつ違うんだろうなと思いました。

 

そして、魔神の軍勢を「洗脳」で撤退させたエリザベスが、それを恥じるどころか正義だと信じ切っている様子なのが不気味で仕方なかったんですけど、その力が種族特性で、女神族の社会では当たり前のことだったならば、なるほど、自分のやっていることがおかしいとは思わないんだろうなと納得できました。

リオネス王都で暮らし始めたエレインが、周囲の心を平気で読むうえ、全く隠さない・悪びれないのでビックリしたんですが、これも、妖精族の社会では当たり前のことだから、悪いこと・傷つけたり気味悪がられたりするかもしれない等とは全く思ってないんだろうなと。

 

 

 

最後に。

13世紀フランスのロベール・ド・ボロンによる散文『メルラン』(フランス語読みの「マーリン」のこと)によれば、マーリンの生い立ちは以下のようなものです。

 

キリストが生まれたことで神のシェアが拡大してギリギリしてた悪魔たちは、アンチ・キリスト的な悪魔寄りの人間を生み出して、悪魔のシェアを拡大しようと目論みます。

ある裕福で幸せな一家を不幸のどん底に落として破滅させ、最後に残った鉄のようにクソ真面目で融通が利かなくてガチキリスト教信者の娘を、精神的に追い詰めて追いつめて、ついに夢の中に夢魔を侵入させ、処女を奪って妊娠させたのです。それこそがマーリンなのでした。

しかし、悪魔ごときの計画など、神はお見通しだった!(と、著者は勝ち誇ったように語るのである。)

悪魔には元々、「過去に起こった全てを知ることができる」という種族特性があって、悪魔の父を持つマーリンには自然に遺伝して備わっていました。

そして、神はマーリンに「未来に起こる全てを知る力と知恵」を新たに与えたのです。

それは悪魔の与えた力とバランスを取るためで、悪魔と神、どちらの陣営に付くかを、幼子が自分の意志で選べるようにするための配慮だったのでした。

 

『七つの~』のマーリンが、魔神王と最高神のどちらに付くかを迫られ、双方から祝福を授かったというエピソードの元ネタの一つは、恐らくこれなのだと思います。

 

ちなみに、『メルラン』のマーリンが悪魔と神のどちらを選んだか、はっきり語られてはいません。

とにかくもー、こいつ、メチャ性格が悪いです。

七歳にして、自分を効果的に演出するために友達をも利用する。人が隠している深刻な過去をペラペラ明かす(名探偵コナンばりに…)。間もなく死ぬ運命の人間が、そんなこと知る由もなく明日のことを考えて行動してるのを見かけたら、ゲラゲラ大爆笑する。

流石は悪魔の息子だ、お前にはおよそ人間の心って奴がねぇーーっ! と読んでて思っちゃうんですけど、作中ではスゲーッ流石だーっ是非 参謀になってくださーいっと周囲から崇められ一目も二目も置かれる一方です。

与えられたチート能力で努力など一切せず周囲を軽く見下しつつ崇められ、自分は責任のある立場にはつかず王のアドバイザーになって出世させ、気が済んだら無責任に姿を消す。なんという自由と万能感。あたかも な○う系主人公のような奴だっ…。(笑・偏見です)

 

伝承上のマーリンには、私見では三系統くらいあって、

一つは『メルラン』系の、生まれつきのチート能力で周囲をひれ伏せさせ、好き勝手に影で世間を動かす奴。

もう一つは電波ゆんゆんの預言者系。子豚やりんごの木に思わせぶりに未来の民族紛争について語るよ~。未来の読者が いい感じに解釈して「預言が当たった!」ってことにしてくれます。

そしてもう一つが『マーリンの生涯』系の、優秀な軍師だったけど戦場で精神をやられて森に籠って電波な野人隠者になるやつです。こいつがまた、性格悪い。元妻の再婚式に鹿に乗って乱入して新郎に鹿角を投げつけて殺害して逃げ去るエピソードには、モヤモヤした怒りしか感じない(苦笑)。元妻には一切の非が無かったのにだよ。

 

 

 

そういえば『メルラン』で語られていたことに

「憤怒してはならない」

というものがありました。

マーリンの祖父に当たるお金持ちの男は、悪魔が与えた不幸により、財産である家畜が全滅し・跡取り息子が寝ている間に急死し・妻が首吊り自殺して、憤怒してやけになって、周囲と付き合わなくなって孤立してしまう。そのため神の加護を失い、いよいよ没落して、とうとう病死したのだと。

 

悲しみに囚われ、憤怒して、孤立してしまうこと。

それこそが悪魔につけ込まれ、身を滅ぼす原因なのだそうです。

 

まさに、今のメリオダスがそうですね。

悲しんで怒ってヤケになって孤立して、悪魔になった。

 

さてさて、伝承上のマーリンが、窮地に陥った母を奸智わるぢえによって助けたように、『七つの~』のマーリンも、エリザベスとメリオダスを知恵で救えるのでしょうか。  

 

 

 

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