【感想】『七つの大罪』第132話 僕たちに欠けたもの
週刊少年マガジン 2015年33号[2015年7月15日発売] [雑誌]
第132話 僕たちに欠けたもの
- ジェンナの治癒術により、目を覚ますハウザーとギルサンダー。ダメージが大きかったのか、グリアモールの目覚めは遅れている。
修練窟は、気絶(ゲームオーバー)すると自動的に外に出される仕様らしい。
◆ホークが「俺が あと一歩気付くのに遅れていたら 危なかったぜ ギル坊?」と言うんですけど、どういう意味?? 彼らに気づいたのはスレイダーだし…。「俺が(お前らが残飯ではないと) あと一歩気付くのに遅れていたら(お前らを食べちゃってたぜ)」だったら怖いですね。
白夢の森で蹴られたことは忘れても、「ギル坊」というメリオダス独自の愛称は覚えてるのねホーク。
彼は16歳ですが、21歳のギルに敬称付けを無言の圧力で要求。「ホ…ホークさん」と従うギル。豚の圧力に負けた…蹴った弱味もあるしな。すっかり丸くなりましたね。顔つきも幼くなったし、第一部の頃とは別人みたい。 - キングはヘンドリクセンに食ってかかっていた。
「キミにどんな理由があったにせよ オイラは許さない!!」「オイラの親友 に何をしたか覚えているなら当然だろ?」
ヘンドリクセンは苦しげに俯いた。
「…返す言葉も弁解するつもりもありません…」「いずれ 報いは受けるつもりです」
「いずれ?」カッとなるキング。神器がクッションから<増殖 >になりかかる。
ヘンドリは必死に言い募った。「でも 少しだけ待ってください」「<十戒>の手から王国 を――ブリタニアを死守し友 を救い出す その時まで」
「…そんなの知ったことか!!」人の友情を踏みにじった男が、己の友情を盾にする。火に油を注がれて、キングの怒りは鎮まらない。
◆ここで、キングの周囲に黒いどろっとしたオーラみたいなものが描かれています。憤怒するメリオダスから湧き出る闇の力みたいなやつ。そのくらい烈しい怒りなのでしょう。 - 平然とした様子で、ジェンナがパンパンと手を叩いた。
「話は後にせんか!!」「さあ みんな鍛錬じゃぞ!!」
「正直 今は そんな気分になれない」とキングはそっぽを向いたが、ジェンナはヤレヤレ仕方ないなという風に腕を組んで肩をすくめ「ま よかろう」「もっとも<十戒>共には こっちの気分も都合も関係ないじゃろうが」と笑ってチクリと刺す。キングは黙っていたが、痛いところを突かれた顔をした。
◆キングの怒りを「取るに足らないこと」だと思ってるんだなあ、ジェンナさんは。 - 突然、空間が水面のように揺らいでオスローが現れた。キングの顔をベロンッと舐め上げる。
「オ… オスロー!! オイラについてきたのかい?」
「黒妖犬 じゃな これは珍しい 絶滅したと思っとったが」とジェンナ。
◆今までキング以外の者の前には あまり姿を現さなかったオスローが、自主的に出てきました。出て来るなりキングを舐めましたし、慰めたかったのかな。多分、ヘルブラム周りのキングの苦しみを 一番知っているのはオスローですもんね。(次に知っているのは、他ならぬヘンドリクセンだと思います。) - いよいよ鍛錬開始。挑む者は定められた黒ズボン以外のすべての着衣・武器を外し、所持が許されるのは魔力で補強されたトネリコの枝(持ち手に布を巻いた棒)のみ。己に潜在する力を より感じ 引き出すには、裸になるのが一番だからだという。
◆ゴウセルが「全装備解除!!」と全裸になって、「下まで脱がんでいい」とジェンナをげんなりさせていました。
その後いそいそと服を着直して、修練窟に入る場面ではいつもの服を全身着込んでましたので、てっきり裸にならずに鍛錬に挑んだのだと思ってたら、次回では他の人たちと同じ黒ズボンのみの半裸で修行してるじゃ~ん。
今回の修練窟に入る場面でいつもの服を着てたのは、作画ミスだったのかな?
しかしゴウセル、最近やたらと脱ぎますね。しかも必ず女性の前で、全裸・仁王立ち。露出狂のケが出てきてません? - 鍛錬に挑むのは、血気盛んなわんぱく三人組(二度目)、やる気満々のスレイダー、無表情ながら全裸も厭わぬ意気のゴウセル、少し不安そうなアーサー、そして、なんとホークとオスロー。
- ホークはオスローを「頭の悪そうな犬野郎」と呼び、「素人の分際で無茶したらケガすんぜ?」と先輩風を吹かせている。かつて巨大化オスローにブルプゴ ブルプゴと震え怯えていたのは忘却の彼方らしい。
オスローの方は、丸々太ったホークを見て(おいしそう)と考えていたのだが、幸せな仔豚が気付くことはないのだった。 - 一方、やっとマーリンの前に立てたアーサー。彼女が鍛錬に参加しないので「マーリンはやらないの?」と不安そうにしている。「仕方あるまい 今の私は霊体に過ぎんからな」と答えて弟子を励ます彼女を見ながら、ゴウセルは「怪しい」と呟いていた。
◆マーリンが参加しない理由は他にある? - 修練窟に入れば、鍛錬は自動的に開始される。暗闇を抜けて明るいホール状の場所に至ると、勝手に振り分けられた二人だけになっている。ホールの空中には様々な種類の岩石結晶が浮かんでいる。それは かつてマーリンが開発した「女神の琥珀」で、一つを選べば砕け、中に封じられていた強力な
怪物 が出てくる。それと戦うことで鍛錬を成すのである。
ちなみに、修練の様子は全てジェンナがモニターしていて、呼びかけたりシステムを操作したりも思いのままだ。
◆「女神の琥珀」って、魔神族専用の封印具じゃなかったんですね。そして、バイゼルでメリオダスを封じたヤツもでしたが、「琥珀」と言いながら殆どが鉱物です。(琥珀は樹液の化石。)要は、封印能力を持たせた貴石の総称?
そして、これがシステムとして組み込まれているということは、修練窟の設計の段階からマーリンが関わっているってことか。どこまで仕組まれて(癒着して?)るのかな。 - ギルサンダーとハウザーは、一回目の鍛錬に続いて今回も同じ組になっていた。『お主たちは仲が良いの~』とジェンナの声が響く。相性の良さで自動的に同じ組になっているらしい。
◆ちょっと、グリアモールが可哀想。 - どの琥珀を選ぶか迷う二人に『さっき お主たちをボロ雑巾にした同じものでよければ出してやってもいい』とジェンナは告げた。お願いします、弱い相手ではなんの意味もありませんと即答するギルと「マジか」と焦るハウザー。
『よう言った さすがは王国 の聖騎士じゃな』とジェンナの声が響き、宙に浮いていたトルコ石が砕けた。
たちまち、巨大な泥土竜 が出現! - その竜は丸々とした巨体で、後肢がない代わりにボールのように跳ねて飛びかかってくる。かと思えば地面を泥海のようにして姿を隠し、地中から頭や太い尾で攻撃してくるのだ。
風ではびくともしないほど重く、雷も大して効かないので、マトモな武器のない状態では太刀打ちできない。
いつも使っているような高位の武器があれば正面からゴリ押しできたかもしれない。一回目は、いつものつもりでそんな戦い方をして、ボロボロにされてしまったのである。 - ヤケになって今回も突撃しようとするハウザーと、「バカ!!」と怒鳴って、戦い方を変えないと勝てないと言い張るギル。「アホ!!」と怒鳴り返して、考えたって勝ち目ねぇだろとハウザーは言った。「いい加減なんだよ お前は!!」「お前が堅ブツすぎんの!!」と睨み合った二人の脳裏に、それぞれ、過去の出来事が去来していた。
- そう。ギルは幼い頃、師匠のメリオダスに同じことを言われたことがあった。「お前 堅物すぎるぞ」と。
メリオダスは剣の勝負中に石を投げ、泣いて非難するギルを呼び寄せると、頭に何度もチョップを喰らわした。
「…というふうにだな 話をしている最中 いきなり不意をつかれるかもしれん」「お前が正しく剣を構えているところで 弓矢で攻撃してくるかもしれん」「お前一人に対して何人… いや何匹で襲ってくるかもわからん」「どんな大きさかもわからん」「それが実戦ってもんさ」「正しい剣技を学ぶのもいいけど 型通りだけじゃ強くなれねぇぞ」「もっと頭を柔軟にしろ」
途方に暮れて「どうすればいいんですか…?」と尋ねれば、「ハウザーでも見習え」と言われ、「え~~~~~」と、不満で一杯な気持ちになったのだ。なにせ、その頃のハウザーは、剣の修行中に竜巻で遊んで(変な技を編み出して)はドレファスに叱られていて、まったく不真面目だったのだから。 - そして幼い日のハウザーは、師匠のドレファスに「ハウザー いい加減すぎるぞ」と呆れられたことがあった。
「ドレファス様」「ただ型通りの剣の練習なんてつまんないスよ~」「要は戦いに勝ちゃいいんでしょ~?」「俺 下町じゃケンカに負けたことないから」
ドヤ顔でそう言ったハウザーだったが、「では この私と勝負して勝つことができるか?」と問われて、「ム…無理無理!!」と、ブンブン首を左右に振る。
「ならばハウザー」「お前は 実戦で自分が勝てそうな相手だけを いちいち選ぶのか?」「お前は弱い者イジメは大嫌いだったんじゃなかったのか?」「いいか ハウザー 己より強い相手にただ がむしゃらに突っ込めば 負けは目に見えている」「万が一にも勝機をつかむには まず 冷静に考える頭と正しい型を覚えることが大事なんだ」「お前の父親は鍛冶屋だったな…?」「熱く焼けた鉄を何度も何度も正確に打つことで強い剣を鍛えるのだろう?」「ギルサンダーを見てみろ」「毎日 ああして同じ練習を繰り返すことで確実に腕を上げている」
だが、その時のハウザーは「へっ ギルは頭が堅いからな~」と揶揄して、素直に聞き入れなかったのである。 - 図らずも、ギルとハウザーの口元に同時に笑みが浮かんだ。それぞれ、試してみたいことがある、と構えを変える。ギルはハウザーのような変則的な構えに。ハウザーはギルのような教科書通りの構えに。
- 修練窟の外で、術を用いて二人の様子をモニターしていたジェンナが「ほ~~~~? さすが 2回目ともなると 少しは掴めてくるか…」と感心の声をあげた。一緒に「経過観察」しながら、マーリンがニヤリと笑みを浮かべる。
「ギルサンダーにハウザーか…」「おもしろいな この二人…」「闘級に変化が生じ始めた」 - 次回「あせりと不安」
ヘンドリクセンが生きていて、正気に戻り、「あの魔神たちのことを知らせなければ……」と半裸で彷徨いを始めたとき、てっきりリオネス王都に向かうのだと思っていました。
王都に入れば、民や騎士たちに憎悪の目で見られるでしょう。殺されそうになるかもしれません。それに耐えて、なりふり構わぬ姿のままでも王に謁見し、「処罰は免れないことは解っています、しかしブリタニアとドレファスを救うため、どうか私に、今一度、皆と共に戦うことをお赦し下さい!」とか何とか頭を下げる。即ち、プライドを捨てて誠実を見せる。そうしようとも当面は憎まれ疑われるに違いありません。けれど、それに耐えて目的のため果敢に闘う姿に、周囲の騎士たちも次第に認めて、再び信頼を取り戻していく…。形はどうあれ、そんな風な贖罪と再生のドラマがあるんだろーなーと思っていたんです。
ですから、第123話でわんぱく三人組の前に現れたヘンドリクセンが、綺麗な服を着て立派な剣を持ってカッコよく推参し、一言の謝罪すらせず、以前と変わらぬ上司の態度で戦いの指示を出したのを見て、非常に驚きました。
しかも、彼を憎んで咄嗟に協力できなかったグリアモールの方が「器が小さくて人間として劣っている」、協力してもらえなくても耐えたヘンドリクセンの方が「器が大きくて立派」というニュアンスが感じられてしまう描き方で。それは違うでしょと、かなりモヤモヤしたのです。
この時は結局、「魔神に操られた発端」を話して同情させただけで済ませ、とうとう謝罪しませんでした。この男、どんだけプライドが高いんだろうと思いました。
ヘンドリクセンが思考の一部を操られていたことなんて、読者の私はとっくに知っています。そのうえで、最終的に許されて仲間に戻るにしても、謝罪は第一にすべき不可欠の「通過儀礼」だと思っていました。
ですから、今回ヘンドリクセンが謝罪してくれたのは本当に嬉しかったのです。
謝罪のないまま進むのは異常だと感じていたので、とても安心しました。やっと地に足が着いた感じです。
でも。
またも、「ヘンドリクセンを憎むキングの方が、器が小さくて劣っている」というニュアンスが感じられる展開になっていて(この場の最上位者であるジェンナが、キングの怒りを一蹴して皮肉まで言うため、怒っているキングの方に非がある感じに見える)、愕然としました。
どうしてこうなるのでしょう?
キングの怒りは、「話は後にせんか!!」で済ませられるほど軽いものなのでしょうか。もっとデリケートな問題で、対処によってはどうしようもなくこじれてしまう類のものではないのですか?
前回から今回にかけての、ヘンドリクセン周りのジェンナの態度には、また別の意味でモヤモヤとさせられました。
一つは、彼女がヘンドリクセンを「ヘンディ」と愛称で呼び、「坊主」と子供のように扱っていて、おばあちゃんだか親戚のオバちゃんみたいに感じられる点です。実際、ドルイド族は血族結婚が主らしいですから、長生者らしい長のジェンナにとって、彼はそういう存在なのでしょう。
しかしこれでは、身内ゆえにヘンドリクセンを擁護しているように見えてきてしまいます。
もう一つは、彼女が前回「私に免じ」怒りを収めてくれと言ったのを、てっきり「ドルイドの長として」の発言かと思っていたら、そうではなかったらしい点です。
一族の不始末は自分の不始末、他人事ではないと重く受け止めている。だからこそ私の顔を立てて、ここは抑えてくれと。そういう意味で「私に免じ」なのかなと思っていたのに、今回のジェンナの言動を見たら、完全に「他人事」ではないですか。
少しやるせなくなったのは、キングの過去と対比したからです。
キングは一族の長として、罪を犯した身内(ヘルブラム)を、どんな事情があろうとも許しませんでした。怒りを収めてくれと周囲に頼むこともしていません。処刑という最も重い罰を与え、一方で、親友を殺した罰を自身に与えるために、人間に言われるまま牢に200年入りました。
でもそれは、愚かなことだったんですね。
キングの行動を、王として当然のことだと考える読者もいるようですが、私はそう思いません。こんな行動を取る首長なんて、他には物語にも現実にもまず存在しないです。そうでしょう? あまりにも潔癖・愚直で、それを人間に付け込まれたと思っています。
今回のジェンナとヘンドリクセンを見ていたら、ああ、こういう対応でよかったんだ、つくづく、キングは損をしたんだなぁと哀しくなりました。
ヘルブラムを殺さず、人間の王国に出頭もせず、黙って妖精界に帰るのでよかったんだ。ヘンドリクセンが、リオネス王国に出頭することなくドルイドの領域に留まっているように。
ヘルブラムが(妖精王を殺された報復として)人間を殺していたことを、500年の間、人間は突き止めてもいませんでしたから、そうしていても何も気付かれなかったでしょう。万が一、人間に怒りをぶつけられたとしても、「キミが彼を恨む理由は解っているつもりだよ。でも悪い人間のせいで病んでいた心も、今は治って正常だから、オイラに免じて怒りを収めてくれないかな?」なんて言えば、それで済んだことだったんだ。だって、ジェンナはそうしているじゃないですか。
結局私は、キング基準でこの世界の罪と罰を考えていたので、ヘンドリクセンを巡る状況に違和感を感じるのだと思います。
これでいいのなら、キングの過去は何だったのか? っていう。
…まあどうも、ここしばらく続く、このキングの精神に妙に過酷な流れ(森が襲われて仲間がミンチ、ディアンヌの記憶を消される、ディアンヌ行方不明で命の危険があるのに捜しに行くのを止められる、ヘンドリクセンを恨むなと言われる)は、どうやら彼を苛立たせてメリオダスと衝突させるための前振り(になった)らしいので、あまり深く考えることでもないんでしょうけどね。
でもモヤモヤするな~。
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そーいや今回、キングに謝罪したヘンドリクセンの言葉遣いが丁寧語になってて、ちょっと可笑しかったです。
だって、王都決戦の時は、キングには全く丁寧語は使わなかったでしょう、憧れのメリオダスには少しだけ使っていたけれど。
でも、謝罪する時は流石に丁寧語になるんだなーと(笑)。
ところで、ちょっと不思議に思ったこと。
上にも書きましたが、ジェンナはヘンドリクセンを愛称呼びして子供扱いして、身内としてすごく可愛がってる感じに見えます。
けどヘンドリクセンは元々、<
そういう経緯で里を出されたのなら、こんな事件を起こして戻ってきたら、「一族の面汚しめ」みたいに冷たくされそうなものなのに、そういうことは起こらなかったのかな? ドルイド族、よく解らん。
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ファンブックには「個体数は多くない」とか書かれてありましたが、他にも何匹かくらいはいるのかな? オスローが最後の一匹ってこともあり得るのか…。
小説版によれば
ハーレクインが森にいた頃「戦わなかった」妖精たちは、彼が行方不明になっても、森の外に捜しに行こう・助けに行こうとは、思いつくことすらなかったそうです。でも、唯一オスローだけはハーレクインを追って森を出たんですよね。捜し当てるのに700年かかったっぽいですが…。
オスローは元々「戦っていた妖精」だったから、王に頼りきりで「臆病・怠惰」だった他の妖精たちとは一線を画していて、捜しに行く勇気や覇気があったってことなのかな。