【感想】『七つの大罪』第290話 小賢しき蛆虫たち
週刊少年マガジン 2018年 51号[2018年11月21日発売] [雑誌]
第290話 小賢しき
- ドシャ、とゼルドリスは両膝をついて くずおれた。
- 「とどめだ!!」
マーガレットの器に宿るリュドシエルが右の手刀に光をまとわせ襲い掛かる。 - 「く…」
睨むゼルドリスは動けない。 - だが光の大剣は届かなかった。割り込んだキューザックが二本の闇剣を交差させて床に突き立て、光剣を挟んで押さえつけたのだ。
- 闇と光の剣はそれぞれ床に刺さり、闇剣は墨染のように床を侵食し、光剣は白熱鉄のように床を焼いている。
- 数瞬の膠着を逃さず撃ち放たれたキューザックの両眼
光線 を、リュドシエルは軽く仰のいて避けた。光線 は遠い床に当たるや大爆発を起こす。 - 「「フン」」
面白くなさそうにキューザックが、不敵にリュドシエルが、互いに鼻で笑った。 - 一方、意識のないギルサンダーを抱き起してヘンドリクセンが叫んでいる。
「ギル… ギル!! しっかりしろ!!!」 - 「…傷が深すぎる このままでは危険だな……」
腕組みして傍に立つマーリンが言った。必要を感じなかったのか、彼女はこの決戦に治癒術を込めた呪言の玉一つ用意してこなかったらしい。 - 「ヘンディくん がんばって!!!」
やはり傍に立って痩せっぽちのエスカノールが励ました。ドルイド族であるヘンドリクセンは治癒術の使い手なのだから。 - かざした手のひらから治癒の光が発されるが、塞がる前に血が どっと溢れだす。
「ダメだ… 私の魔力 では…」
早々に諦めたヘンドリクセンは顔を向けて呼びかける。
「リュドシエル殿!! ギルをお救いください!!」
◆リュドシエル「殿」になってますが「様」の誤字ですね。 - しかし、キューザックと間近に対峙したリュドシエルは すげなく言った。
「悪いが その暇はない…」
「…!」
息を飲むヘンドリクセン。
◆ヘンドリクセンのことは心配して自ら癒してくれたのにギルには冷たい。そう思わされた一方で、他メンバーが全員 戦線離脱してギルの周りにいる(誰もリュドのサポートをしようとはしていない)なか、たった一人で魔神に立ち向かっているリュドシエルに、それは無理な お願いですよ、とも気付かされたり。リュドの言う通り、今はそんな暇はないですよね(苦笑)。
ここは、未熟だろうと治癒術の使えるヘンディが頑張らないと。リュドに頼りきって、護ってもらって足を引っ張るために こんなとこまで付いてきたんじゃないんですから。 - そこに、ドンッと床を踏んでチャンドラーが近づいた。
「!!」
驚くエスカノールたち。 - 「
<四大天使>長 は取られたか!!!」「つまり 儂は小娘の相手と!! 残りのゴミの片づけか!!」
老魔神は少しずつ区切って怒鳴るように喋る。
◆変身してもキューザックは口調が変わらず戦闘スタイルも さして変化ないのに、口調も戦闘スタイルも明確に変わるチャンドラーさん。満月と新月的な二面性要素なんでしょうか? - キューザックが背に庇うゼルドリスを促した。
「ゼルドリス様… しばし お休みください 後は我らに お任せを」 - 「ああ… 頼んだぞ」
どうにか立ちあがったゼルドリスは右肩を押さえ、闇を立ち昇らせて自己回復を開始する。 - 「…絶対にメリオダスの邪魔はさせるな!!」
「……」
これには、キューザックは無言を返したが、ゼルドリスは構わずに言葉を接いだ。 - 「キューザック お前たちの実力を思い知らせてやれ」「<十戒>を――――この俺をも上回る最上位魔神の力を」
「御意…」「ですが お忘れなきよう… あなたは直 に この師 を超える存在となることを」
「…?」
怪訝な顔になるゼルドリス。
「それは どういう―――」
◆いつかきっと強くなるではなく、「直に」自分を超えると、確定した絶対的な事実であるように語るキューザック。なんだか不思議な言い方です。
キューザックが死ぬか何かするとゼルに魔力が移譲されるみたいな契約でもなされているのか? それとも単に「魔神王になる」というだけの意味? - 「別れの挨拶は済ませたか?」
しびれを切らしたか口を挟んだリュドシエルに「ほざけ」とキューザックが返す。 - 一方、マーリンはチャンドラーと対峙していた。
その奥にはギルサンダーに治癒術を かけ続けるヘンドリクセン。
彼らとマーリンの間に立つエスカノールは不安の汗に濡れて顔色を白くしている。
「マーリンさん… 最上位魔神って強いんですか? ……ですよね?」 - 「…最も古き者と呼ばれる魔神 チャンドラーとキューザック…」
不敵な笑みを消してマーリンは答えた。
「すさまじい実力を持ちながら メリオダスたちの指南役として常に魔界に身を置き」「聖戦の表舞台に立つことは ほぼなかったと聞く… 正直 謎の多い存在ではあるな…」 - リュドシエルは鼻で笑う。
「フ… ゼルドリスさえ抑えることができれば貴様らなど この私の敵ではないわ…!!」「我が「閃光」の恩寵の前に散るがいい」
右の手刀に光をまとわせ大剣を形作る。 - 対峙するキューザックは両手に長細い闇の剣を持って交差の構えをとった。その刀身は闇そのものであり、鋭い刃にも、堅い棒にも、蛇のように伸び曲がりもするのだ。
- 一拍後、動く。
光の一閃をキューザックが傾いて避けたのを嚆矢に、激しい剣撃が続いた。
互いに剣を剣で受け、時に体を捻って躱し、舞うように打ち合い続ける。 - 目にも止まらぬ速さとはいえ、それだけだ。なのに。
ドオッ
再び動きが止まるや、周囲の床の数ヶ所が爆発したように砕け、瓦礫が四方に飛び散った。 - それだけではない。リュドシエルの…マーガレットの服が、首から胸元、両袖、スカートの膝上まで千切れて、木の葉のように四散する。重要な部分こそ保たれているものの、王女としては あるまじき はしたなさだろう。
肌にこそ傷一つ付いてはいないが、これはリュドシエルが紙一重で躱した技量か、キューザックの下卑た遊びか。
◆突然のお色気シーン。 - 「…やるな」
口角を吊り上げながらも、リュドシエルは不快げに眉根を寄せていた。 - 「ゼルドリス様に剣を教えたのは私だ…」
見下した笑みを浮かべるキューザック。
◆婦女子の服を切り刻んでニヤニヤする じいさん。 - 直後、その腹に ドズッ と光剣が突き入れられた。
「…だが調子には乗るな!!」
光剣を突き入れたまま勝ち誇った笑みを浮かべたリュドシエルだったが。 - 「ぐあっ!!」
すかさずキューザックに頭突きされ、数歩よろめき下がって、どうにか転ばずに踏みとどまった。 - 「!!」
秀でた額を無残に鮮血で染めた彼は、女神族の紋様 の目を驚きに見開く。
(無傷…だと?) - 先の斬り合いの傷はおろか、今 光剣を強突した腹にすらも。キューザックの体には小傷一つ付いていなかったのだ。
- 「借り物の器では それが限界か? リュドシエル!」
言われて、リュドシエルは己の右手を見る。まとわせていた光が風に吹かれた蝋燭の火のように乱れ、剣の形を維持できていない。悔しげに歯噛みする。
「…く!!」 - 一方のチャンドラーは己に魔力を集中させていた。
「こちらも始めるか!!! <ベリアルインの娘>!!!」「今度は!!! 儂を!!! 存分に楽しませろ!!!」 - 「怖い~~~~~!!」とエスカノール。
- 前回、廃都コランドからキャメロットへの途上の戦いでは、開始早々にマーリンの魔力は封じられ、全くの無力になり果てた。今回チャンドラーがそうしないのは「存分に楽しませろ」という言葉からして、正々堂々と魔法合戦を楽しみたいという余裕であり傲りなのか。
- 刀印を結んだマーリンは眼前に浮かべた
神器 を媒介に太い光線を発射した。
“殲滅の光 ” - チャンドラーは何の動作もせず小声で呟くのみ。
「“殲滅の光 ”」
が、マーリンの二十倍はあろうかという極太の光線が、何の媒介もなしに発射された。 - エスカノールが怯えた声で叫ぶ。
「マーリンさんと おっ同じ魔法!!?」「しかも特大!!!」 - 光線は正面から激突し、生じた衝撃波にエスカノールは仰け反り、ヘンドリクセンは意識のないギルサンダーを抱きしめた。
- 「ひええええ~~~~!!!」
悲鳴を上げ続けるエスカノール。 - ぶつかり合う光線は一応は拮抗しているが、チャンドラーの優勢は明らかだ。
- 「マーリン殿の魔力を これほどまでに上回るというのか…」
と慄くヘンドリクセン。 - 「エスカノール! 隙を見計らって神器の
下 へ走れ」
光線を放ちながらマーリンが命じた。 - 「は…はぁ え?」
青ざめたエスカノールはチラ…と少し離れた床に刺さった神斧リッタを見るが。
「無理無理無理ですよーー!!!」
ぶつかり合う光線の余波が火花のように降り注いでいるのを見て、涙目でイヤイヤと頭を振って駄々をこねた。 - その間にも、マーリンの光線はどんどん押されてくる。
- 「どうした!! どうした!! どうした!!」とチャンドラー。
- ついに彼の光線にマーリンのそれが押し切られるか、と思われたとき。
「無限」符呪
涼しい顔で刀印を結んだ手先を振ったマーリン。神器 が反応して輝いた、次の瞬間。
グオッ
マーリンの光線の威力が爆発的に増大したのである。
◆『「「無限」符呪 』の「符呪」は「付呪」の誤字…ですよね?
以前メリオダスが剣に獄炎 を付呪させた時(第56話)は「付呪・“獄炎” 」で『付呪・術技名』表記だったけど、今回は逆?- 「!!!!」
ゴボッ
形勢は逆転、押し返したマーリンの光線がチャンドラーに激突し、派手な爆炎をあげた。 - 細かな瓦礫が煙の尾を引いて飛んでくる。
「直撃した!!!」とヘンドリクセン。
「さ…流石だ!! マーリンさんの「無限 」の前には最上位魔神も形無しですねぇ!」
エスカノールは両手で頭を庇って床に這いつくばっている。
「で…では今のうちに神器 を」
瓦礫の飛散が収まったのを見計らって、煙の立ち込める向こうを見やった、そのとき。煙を割って大きな何かが跳び迫ったので、ビクッと目を剥いた。
「わひっ」
ピョイッとカエルのように飛び退いた場所にバックステップ状に滑り込んできたのはリュドシエルだ。両手両足をついて数mを後滑し、どうにか転ばずに顔を上げる。 - 激しく肩で息をして、前方を睨んだまま余裕なく訊ねた。
「マーリン!! 奴らはどうなっている!!?」「まるで手応えがないぞ…!! これが奴らの魔力なのか!?」
その余裕もなかったのだろう、マーガレットの体は血と汗に汚れ、先程の頭突きで負った傷も癒されていないままだ。 - 「…いや」
マーリンは涼やかに前を見据えた。 - 薄れゆく爆煙の向こうから、並んで ゆっくりと歩み来たる老魔神たちの影が露わになってくる。
「奴らは理由 あって元来所有する魔力を封じられているらしい」「にもかかわらず奴らは魔神王を除く魔神の中で最強と謡われる」「…その答えは単純 だ」
歯を剥いて口角を上げた彼らの どちらも。何ひとつダメージを負ってはいない。
「極めて強く
極めて速く
極めて堅い」
◆「最強と謡われる」になってるけど「謳われる」の方が適切ではなかろーか。 - 「…っ」
悔しげに息を吸ったリュドシエルの額の傷からキラキラしい光の靄 がたなびき、ようやく、傷は痕を残さず消えていった。 - 「そ… それって弱点なしってことじゃないですか~~!?」
ガタガタと大げさに震えるエスカノールを「・・・」と汗タラで見つめるヘンドリクセン。 - 「平たく言えば……な」と、マーリンは否定しなかった。
- 「ハッハッ…」
嗤い、更に一歩、老魔神たちが近づく。その鼻先に風が渦巻き、キューザックの顔から胸を包んで ヒュゴッ と吹き荒れた。 - 軽く驚いて見やったチャンドラーの顔の横には電光が閃き、バチッ と雷球が弾ける。
- とは言え、足を阻むものではない。
- 「?」とキョトンとするチャンドラーの隣でキューザックが小馬鹿にして言った。
「小賢しい蛆虫 共め」「こんなチンケな技が通じると――」 - 口を噤む。キューザックの胸に小さな切り傷が、チャンドラーの胸に僅かな火傷が出来ていたのに、彼ら自身が気付いたからだ。
- (な…)(奴らに傷を…!!)
驚愕するリュドシエル。
今まで あれほどの強攻撃で傷一つ付けられなかったというのに、あんな軽い魔力攻撃で?
◆リュドシエルさん、現時点この場にいる者の中では闘級的に最強のはずなのに、既に役立たずの観客になり果てている…(;^ω^)。
作者さんが意図してるのかは分かりませんが「フッ、我が恩寵を見たか」→「ウワーッ、全然敵わないだと~!?」のパターンが短いスパンで何度も繰り返されてて、もはや芸風になりつつあるなあ。 - 「弱点がない…」「ならば」
豊満な胸の前に浮かべた金属球 が、刻まれた無数の神秘文字 を煌めかせて妖しく光る。
「弱点を作ればいい」 - 全身から魔力光を湧き上がらせ、邪悪に見えるほどの不敵な笑みを浮かべたマーリンに、エスカノールは顔面が紅潮するのを感じながら目を奪われていた。
- 次回「目には目を、歯には歯を」
師匠ズに攻撃が全く通らな~い! 倒すどころか小傷一つ付かな~い!
それは単純に めっちゃ強くて硬くて速いからだ!
…と言われて、何とも言えない釈然としない気分になりました。
だって、いくら「封じられた真の魔力」とやらがあると言っても、現時点で解放されていません。戦闘開始時点にマーリンの読み取った
チャンドラー闘級17万3000
キューザック闘級16万8000
のままのはず。
その彼らに闘級20万1000のリュドシエルが「小傷の一つも付けられない」。理由は「単純に強いから」です、って。
えぇ…えええ? …はあぁ~~?(困惑) って感じです。
納得しがたいなあ。
闘級は目安に過ぎないとか相性で変動するとか、そういう小手先の理由で誤魔化せるレベルを超えてるでしょう、「小傷の一つも付けられない」格差っていうのは。力の解放も覚醒もしてないのに、突然、提示された闘級を無視した強さになるなんて。
そして前回まで手も足も出せず怪我を負っていたマーリンが、例によって「反則だー」なチートで師匠ズを小馬鹿にしながら叩き伏せる流れ到来のようですが。
待ってました! な気分になれないのは、マーリンの強さに爽快感よりも「作者(神)に贔屓されている」ような狡さを感じてしまうからかなあ。
スポーツの試合を見ていて、常に判定で贔屓されるスター選手が登場した時みたいな。