【感想】『七つの大罪』第291話 目には目を 歯には歯を
週刊少年マガジン 2018年 52号[2018年11月28日発売] [雑誌]
第291話 目には目を 歯には歯を
- 「弱点がなくば弱点を作る!!?」「かすり傷を負わせた程度で いきがるな小娘!!」
血管を怒張させてチャンドラーが怒鳴る。 - その間も構わずにキューザックは歩き続けていた。
脅すように ゆっくり近づいてくる老魔神たちを前に、リュドシエルが声に緊張をはらませる。
「マーリン… ハッタリが通じる相手ではないぞ!!!」 - マーリンは悠然と笑っていた。
- そして、それは起こったのだ。
キューザックの足元に旋風が、チャンドラーの足元に電光が。小さく生じたかと思われた瞬間、ドンッと膨れて彼ら各々の全身を撃ち叩いた。 - 「「!!!」」
仰け反って足を止めた二人を見てゼルドリスが怪しむ。
「!! 今の攻撃はどこから…!?」「奴 は攻撃の動作を見せていなかった」 - その言葉通り、マーリンは無言で見つめているだけだ。
- 「何…」「
被害 が増大している?」
致命傷には至らぬものの全身に切り傷を開かせたキューザックが憎々しげに顔を歪めた。 - 「ありえん!!」「こんなチンケな攻撃で…!!!」
チャンドラーも全身に火傷を作っている。 - マーリンが微笑んで種明かしを始めた。
「“二重衝波 ”」「戦闘開始直後に私の放った―――― そう お前たちをガッカリさせた魔法を覚えているか…?」 - 「何…!!」と驚くチャンドラー。
薄い円盤状の魔力を二枚、立て続けにぶつけられたことを思い出す。 - 「あれは攻撃魔法ではなかった?」とキューザック。
- 「
第一波 で四大元素及び それらを組み合わせた複数の属性魔法を放ち」「お前たち それぞれの最も低い耐久度の属性を割り出した」「チャンドラーは“雷” キューザックは“風”…」神器 を片手に浮かべてマーリンは不敵に笑った。
「そして第二波 は それらの耐久度を著しく下げる弱体化魔法…」「更に私の魔力「無限 」で一撃を喰らう毎に耐久度が下がり続ける豪華特典付きだ」 - 老魔神たちは衝撃を受けたように黙り込んだが、愕然としたのはリュドシエルも同じだ。
(こいつは絶対 敵に回したくないな…)
と、冷や汗を浮かべて眉根を寄せる。 - 「恐ろしい人だ」
ヘンドリクセンも同意見のようだったが、エスカノールだけは乙女のように両手を握りしめて うっとりとマーリンを見つめていた。 - 「<おしゃぶり>の…!!」
看過できぬ状況だと悟ったのだろう、キューザックが相棒に顔を向けて促す。 - 「種さえ わかれば!!」
チャンドラーは左手を掲げた。「無限 」というチート能力でこそ敵わないが、地力ならば彼はマーリンを凌駕する魔術士だ。
“絶対強制解 ――
全ての魔術を強制解除する呪文を唱えかけた彼の身体に、バチッ と雷が弾けた。
「ぬぎっ!!!」
呪文を邪魔された彼の肌は火傷で裂け弾け、血が噴き出す。 - ガクリと膝を折り片手をついた相棒を横目に、周囲を警戒して
「またか!! どこから攻撃を仕掛けて…」
と言いかけたキューザックの体を フワッ と風が撫で上げたかと思うや、渦巻いて ザンッ と切り刻んだ。
「ごあっ!!!」 - 「ぐ…ぬ!!」
たまらず床に突っ伏していたチャンドラーが、がばっと身を起こし、
「おの…」怒鳴りかけたものの、
バリリッ「れぴっ」
後頭部に雷球が炸裂して舌を噛む。 - マーリンは薄く笑って説明を追加した。
「今 この空間内には貴様らの呪文の詠唱 と攻撃動作 に自律的に反応攻撃する感知不可能の見えざる“雷”と“風”の魔力が無数に踊り漂っているのだ」「それらは我が「無限 」により生み出され続ける…」
◆「攻撃動作」に反応? 立ってただけのキューザックや身を起こしただけのチャンドラーにも反応してたけど…。…ああ、別に呪文詠唱してなくても、攻撃の意思がなくとも、動いたり喋ったりするだけで自動的に攻撃されます、という意味なのか。じゃあ動かず・喋らずに攻撃する分には大丈夫なんですね。 - 「「!!!!」」
「お前たちが息絶えるまでな」
慄然とした二人の僅かな動作にすら反応し。以降は絶え間なく術は発動し続けた。なすすべなく痛めつけられ、血まみれに なり果てていく老魔神たち。 - リュドシエルが慄いた。
「な… なんなんだ この無茶苦茶な魔法は!?」
「…自分でもわからん “二種の属性魔法攻撃”に“透明化” “感知不可” “自動追尾”と「無限 」を即席で掛け合わせたのでな」 - (…反則だろう)
そらとぼけた女の顔を、恐れと苛立ちが半ばした目で見やるリュドシエル。 - 「そ…それにしても 一体いつの間に仕掛けたんです?」とエスカノールが尋ねた。
- 「なーに… 「
凶星雲 」から瞬間移動 で逃げ続けている間に…な」
「は…はは」
流石のエスカノールも目が点になる。瞬間移動 で手一杯のマーリンを護った気でいたが、彼女は素知らぬ顔で罠の準備を並行作業していたのだ。
◆超越者扱いのマーリンが、今回の戦いではピンチに陥ったり仲間に庇われたりしたのが珍しく、親しみが持てたしエスカ×マーリンに萌えもしたのだけれど…。『本当は罠を仕掛ける余裕アリアリでした』と、それも『おや、そんなに すごいことをしてしまったかな? 大したことではないのだが』的なスカし顔で明かされて、なんか しょんぼりでした。ひがんだ気分になっちゃう(;^ω^)。
昔の漫画『ダイの大冒険』の序盤のクロコダイン戦だったかに、魔導士のポップが一見して愚かな行動をとって、でも実は油断させつつ起死回生の魔法を発動させる準備だったという、今でも思い出すくらい好きなエピソードがありまして。今回のマーリンの行動と流れとしては似ているのに全く違う印象になるのは、ポップが自分の持てる力の範囲内で最大限に知恵を巡らせて格上の相手に対抗する起死回生の一手とした…死力を尽くしてたのに対し、マーリンはチートで余裕綽々にスカしてて、それが敵味方含めて小馬鹿にしてるように見えちゃうから…かなあ。 - 一方で、ギルサンダーが血にむせて「ゴホッ ゴホッ」と咳き込んだので、ヘンドリクセンはハッとする。
「リュドシエル様!! ギルサンダーに癒しの奇跡を…!!」「彼はあなたを守るため 自ら盾に…」 - だが、リュドシエルの表情は白々と動かなかった。
「私を護るためではないだろう?」「それに 何より今は少しでも魔力を温存せねばならん」 - 「……!」
唖然とするヘンドリクセン。
◆もしも ここでギルが死んだとして、ヘンディはリュドを「盾になってやったのに、助けてくれなかった」と恨むのでしょうか。だとしたら、彼とギルは何のために ここまで付いてきたのでしょうか? - 血まみれのキューザックは ドウッ と床に突っ伏した。
「ぎ…」 - チャンドラーも雷に打たれ続けている。
- よろめきながらキューザックは起き上がった。
「我ら最上位魔神が人間如きに屈辱を」「あっては…ならんことだ」
高みの見物のマーリンを見上げて、悪鬼のように ニィ… と嗤う。
◆キューザックは喋ってるし動いてるのに、何故か術が発動しない不思議。
少し前の場面では喋るだけ・動くだけで発動してたのに、ここでは呪文を唱える・攻撃動作をするのでないと発動しないことになってる? 発動条件が一定してない感じ…。
あと、マーリンのこと「人間」と言ってて奇異に思いました。
人間には発音できない本名を持ち、自分で それを発音できるマーリンは、つまり人間族ではないんでしょう? 彼女が<ベリアルインの娘>だと知るキューザックは それを知ってなきゃおかしい。今更「人間でした」と言い出す気なんでしょうか。 - 「…何が
可笑 しい?」
マーリンが薄く笑って訊ねた、そのとき。 - “
共鳴 ” - くわっ と見開かれたキューザックの目をマトモに見たマーリンも目を見開き、立ったまま硬直したのだった。
- 「マ… マーリンさん どうしました?」
エスカノールの声にも反応しない。
キューザックも同じように立ったまま沈黙していた。 - 「ハーー ハーー…」「ハ!! ハ!!」
血まみれのチャンドラーが床から身を起こして笑う。
(さすがは!! <うたたねの死神>!!)(一瞬のうちに標的の精神を支配し 一切の生殺与奪権を奪う!! その所行は まさに うたたねの如し!!)
◆「一瞬のうちに標的の精神を支配し 一切の生殺与奪権を奪う!! その所行は まさに うたたねの如し!!」…ちょっと何言ってるのか解らないです。
チャンドラーの<おしゃぶりの鬼>の由来説明「鬼が如く敵の骨の髄液まで しゃぶりつくす 冷酷執拗な戦いぶり」も、ちょいムチャな説明だなあと思ったものでしたが、こっちは まだ納得できたのに。
なんで一瞬で精神支配するのが「うたたねの如し」なのか。…「うたたね→居眠りして頭がガクッとなる」イメージから、「うたたね→一瞬で意識を失う≒一瞬で精神を支配する」という連想なんですかね? ムチャだけど。(;^ω^)
余談ですが、居眠りとは座っているとき、うたたねとは寝転んでいるときに、うっかり眠っちゃったことを指す、という解釈もあります。その解釈で見ると、うたたねは「頭がガクッとなる居眠り」とは別モノということになるので、先の解釈は適用できなくなりますね。 - そこはマーリンの精神世界なのだろう。何もない暗闇の中にシンプルなチュニックを着た幼女が裸足で立っている。
- 「随分可愛らしいなぁ… それが本体の姿か…」
現れたキューザックの精神体は、現実ままの変身姿だ。
「貴様も あのアーサーとかいう小僧と同じ運命を辿るがいい…!!」「が…… その前に貴様の仕掛けた魔力の弾幕を解いてもらわねばな…… フフ…」
ぼんやりと立ち尽くす幼女を垂れた前髪が触れるほど覗き込んで、キューザックはトカゲのように長い舌をチラつかせて嘲り笑う。
「最上位魔神に刃向かったことを地獄で後悔しろ…」「貴様の意志は もはや我が虜」
◆「意志」より「意思」の方が適切かもしれない。(どーでもいい程度のコトで すみません) - ところがだ。
「そのまま言葉を返すぞ…」
人形にしたはずの幼女が反論した。そして、
バキッ
「ずわっ!!!」
なんと、幼女が軽く突き出したパンチ一発で、魔神は鼻を潰して殴り倒されたのだった。 - 大の字に倒れた彼の胸を裸足で踏んで、幼女が上がってくる。
「が…っ なぜ…」 - 「貴様が憑依してくることなど想定済みだ…」
ぺたっと胸の上に しゃがみ込んだ。
「最高神の祝福の上に精神強化を施した私に取り憑くことができるとでも?」「フン… まだ事態が呑み込めていないようだな… 愚か者め」
◆最高神の祝福があると精神支配に掛かり難い? じゃあゴウセルの術にも掛からな…って、しっかり掛かってたやんけ3000年も。神々すら掛かってたけど、マーリンならば精神強化さえしてたら掛からなかったということなんでしょうか。
そもそも最高神の祝福は「いかなる闇の呪いと戒禁すら無効にする加護」で、精神支配は関係ないじゃないかと思うのですが…。ちょっと何言ってるのか解らないです。…キューザックの「共鳴 」は闇の呪いの一種だった? ムチャだけど。
つーか「戒禁すら無効にする」と言いつつ『自分が何者かうっかり忘れてたからガランの戒禁に掛かったけど思い出したら解けた』と言ってみたり、「いかなる闇の呪いすら無効にする」と言いつつゼルドリスの呪いで死にかけたり(自分が何者か思い出してたので先述の言い訳は使えませんが、説明はされないまま)、マーリンさんは神の愛し子で設定盛り盛りなぶん、「反則 」…もしくは「後付け設定破綻」が起こりがちですよね。 - 「…!!」
支配権はこちらにないのだと悟って慄然とするキューザック。 - 「地獄に足を踏み入れたのは お前の方だ…」
幼女は にんまりと嗤った。パキ、と威圧的に右人さし指の骨を鳴らしてみせる。 - 2000年以上むかし、遠い異国の法典に「目には目を 歯には歯を」と刻まれた。人の目を潰したなら己の目を潰し、歯を折ったなら己の歯を折って
贖 わねばならない。罪には等価の償いが必要だ。
目には目を以て。歯には歯を以て。死には死を以て。…いや、それでは収まらない。より苦しめて思い知らせてやらねば。これは復讐だ。等価以上の報復が必要なのだ。 - 「さあ… たっぷりとアーサーの恨みを晴らしてくれよう」
- 現実では、立ち尽くすキューザックにチャンドラーが苛立って呼びかけていた。
「まだか!!」「早く小娘の魔力を――」
喋ったため魔術が発動し雷に打たれる。悲鳴を上げれば また。
「ごは!!」「解除…さ…せ」「が!!」
◆メリオダスはドレファスにテレパシーで話しかけてたのに、相棒にテレパシーで呼びかけられないのですね…。 - 相棒の苦境にも反応せず、意識なく硬直しているキューザック。
意識あるマーリンは、それらを眺めて「フッ…」と嗤った。 - 「まずい」「このまま…では……!!」
死にかけたライオンのように舌をだらりと垂らし、チャンドラーはもはや虫の息だ。 - そのとき駆け込んで跳躍した影が、一帯に発生し続ける不可視の魔力を一度に斬り裂いた。
ズババババババババ
爆発し消滅する無数の魔力たち。 - 「!!!」
マーリンたちは驚く。 - この時この場で、その動きを目で追えたのはリュドシエルだけだっただろう。
- 「!!」
影が床に降り立ってから、マーリンもその姿を確認した。 - 「調子に乗るな」
ゼルドリスだ。血を ぼたぼたと落とし荒く息を吐きながらも、強い気を吐いてマーリンを睨みつけている。
「「魔神王」の魔力をもってすれば貴様の魔力といえど恐るるに足らず!!」 - 確かに、一切の攻撃・弱体化魔力を反転し無効化するゼルドリスは、マーリンにとって天敵と言えるのだろう。もし彼に老魔神たちへと同じ術を仕掛けていたら、彼は たちまち回復・強化されて無敵化していたに違いない。
- だが彼は術の対象とされず、ダメージを受け過ぎていた。
「く…」
眩暈を起こしたか大きく仰け反り、ふらついた足を踏ん張ってこらえた、その一瞬が。またも致命的な隙となり得たのだ。 - まさに閃光。
瞬きの速さでリュドシエルが眼前に飛び迫っていた。 - ザンッ
- この一瞬のために温存した魔力は揺らがぬ光の大剣を形作り、すり抜けざまに闇の王子の胸を鮮やかに斬り裂く。
- 大の字に倒れたゼルドリスは完全に意識を失っていた。
- 「ハア…」「ハア…」
荒い息を吐くリュドシエル。一撃ではあったが渾身のそれは、現状 の限界まで魔力と集中を振り絞ったものだったのだろう。 - 既にチャンドラーも沈黙し、キューザックは立って硬直したままである。
- 「は…」「はは…は…はははは…」
リュドシエルの唇から笑いが溢れ出した。
「勝った!!!」「永きに及んだ聖戦に終止符を打ったのだ!!」「女神族 は勝ったんだ!!!」
両手を広げて天を仰ぐ。
「見ているかマエル…」「兄さんは とうとう成し遂げた…ん…」
不自然に言葉が途切れた。 - 「…っ」
「マーリンさん…?」
痛みをこらえる顔で額を押さえた彼女に、エスカノールが声を掛ける。 - 同時に、リュドシエルは心臓が破裂したような衝撃を感じていた。
脳裏に浮かぶ人物の顔。亡き弟マエルの幼い姿を思い浮かべたはずなのに、その顔は白くぼやけ、代わりに<十戒>エスタロッサの顔が強く浮かんで消えない。 - 「な…! なぜ…」「マ… マエルを殺したエスタロッサの顔しか思い出せな――…」
ぱしっと両手で頭を抱えた彼の顔が更なる混乱に歪む。
「…!!」 - 巨大な繭が見下ろすホールに、ドサ…と人が倒れる音が響いた。
- [―――この瞬間 はるか天空の地でゴウセルの禁呪が解け][<十戒>エスタロッサと<四大天使>マエルを知る者の改変された認識が崩壊した]
[――そしてその衝撃はキャメロットの戦局を一変させてしまうことになる]
◆禁呪が最初に解けたのは煉獄の魔神王とメリオダスで、そこを綻びの起点として連鎖・波及して現世各地の全員の認識が崩壊したと思ってましたが、ここでは天空演舞場で最初に解けたかのように語ってますね。 - 次回「悪夢の顕現 希望の帰還」
第286話でマーリンが「
キューザックに小傷があってゼルドリスにないのは、彼が「魔神王」の魔力で攻撃を反転・無効化してる意味だろうと思いましたが、チャンドラーの放電は意味が分からなかった。
どんなに目を凝らしてみても、チャンドラーに傷がついているとは判断できなかったからです。(微かな汚れみたいなのは見えるが、元々の肌の質感の描写みたいに見えるし、傷とは認識できなかった。)
なので、ちょっと引っかかったけど当時の感想には「この放電は何の意味があるんだろう?」と書くに留めておいたんですが…。
マーリンの罠という意図だったんですね。伏線が凄いです。全然分からなかった。(^^;)
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あなたは どう解釈する?
前回に引き続き、ヘンドリクセンが「ギルを癒して」とリュドに頼みましたが、またも断られました。
前回は戦闘中でしたから頼んだヘンディのタイミングがおかしかったけど、今回は戦ってない。「ギルはあなたの盾になったせいで死にかけてるのだから」と、ある意味リュドを責めるようなことまで言いましたが、意にも介さず。
これ、二通りの解釈ができるなと思いました。
A.リュドシエルは人の命を大切にしない冷たくて悪い奴。ヘンディは彼を見限る?
ギルサンダーはリュドシエルのせいで死にかけています。なのに癒してやらないなんてヒドい奴です。癒すなんて片手間で簡単にできるんでしょうにケチくさい。
リュドシエルは やっぱり心の冷たい悪人で、人間を使い捨てのコマとしか思っていない。ヘンドリクセンはそれを思い知って目が覚め、彼への妄信・依存を失くして自立するのかも?
B.リュドシエルは判りにくいけど意外と配慮するひと。ヘンディは任されてる?
ギルは私を護ったのではないとリュドシエルは指摘しました。そう、彼はリュドシエルではなく、その器にされているマーガレットを庇ったのです。
そして、「今は少しでも魔力を温存せねばならん」とリュドシエルは言いました。前回 彼の魔力剣が乱れ「借り物の器ではそれが限界か?」とキューザックに指摘されたばかりです。
サリエルとタルミエルのエピソードにて(第266話)、強力な恩寵を持つ<四大天使>が人間の器に宿って魔力(恩寵)を多用し過ぎると、死体でもない限り、器が急成長する・髪が急激に伸びるなどの異変を起こすことがあり、それでも使い続ければ必ず滅ぶと述べられていました。(下位の女神族は力が弱いので、ずっと器に宿っていても問題ないようです。ザネリとジェンナは何千年も人間の器を使ってますから。)
今のところマーガレットの肉体に異変は起きていません。(既に変化して おっぱいが大きくなっているとか老けているなどと解釈する感想も お見かけしますが、私は変化していないと思います。髪の長さも変わってないように見えるし。)しかし この先も魔力(恩寵)を むやみやたらに使えば、先に限界が訪れるのはリュドシエルではなく、器であるマーガレットでしょう。
戦うにはマーガレットの器が必要。しかし器の限界は近付いており魔力(恩寵)は多用できない。だからこそ、リュドシエルはギルの治癒に魔力を使うことを拒否したのではないでしょうか。そもそも治癒術を使えるヘンドリクセンがいるのだし。
ギルはマーガレットを護るために己の命を賭して庇った。なのに、リュドがギルを癒すことで より早く器の限界に達してマーガレットの肉体に異変が起きてしまったら、本末転倒です。
つまり、リュドシエルは戦闘はもちろん、マーガレットとギルの未来のためにも、今は魔力を温存すべきだと断ったのかも。そしてヘンディは安易に上位者に頼らずに自分の力で役目を全うすることを学んで、リュドへの依存・妄信から自立するのかも?
他にはどんな解釈ができるでしょうね。
さて、真実はどうなのか。
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目には目を以て、歯には歯を以て
今回のサブタイトルは『目には目を 歯には歯を』でした。
ご存知の通り、紀元前18世紀バビロニアの『ハンムラビ法典』に載っている律法です。
「やられたらやり返す」「過激な復讐」の意味で解釈されていることが多く、今回サブタイトルで使われたのも、その意図なのだろうなと推測します。
マーリンによる、キューザックへの個人的かつ過激な復讐、という。
ただ、この律法の本来の意味は「過激な復讐」ではなく、「同等の損害を以て償いをする(させる)」こと。人によってはこれを「過激な復讐を諫める」意図の平和的な律法だと解釈するようです。(とは言え、同等の贖罪は同等の身分間でのみ成り立つもので、奴隷が自由民に暴力振るったり子供が父親を傷つけたりしたら、罪人は同等以上の損害を与えられると法典にあるそうですが。)
ついでに。『新約聖書』には、キリストがこの律法(正確には、よく似た『モーセの律法』)を挙げて否定し、例の超有名な「右の頬を打たれたら左の頬を差し出せ」発言をしたと書かれています。
ただ、これも正確には一般に解釈されがちな「何をされても無条件で赦せ、理不尽を受け入れろ、無抵抗主義を通せ」という意味ではないのだそうです。
『聖書』を読むに、キリスト自身や彼の弟子たちも、理不尽な平手打ち・むち打ち・投獄などに抗議の声を上げているので。
右の頬を打たれたら左の頬を~というのは「復讐心から解放された姿」を示す戯画的な例えであって、「悪人は戒めを受け悔い改めねばならない。もし彼がそれを達成したならば、あなたも赦してやりなさい」というのが真意ではないかと解釈されているそうです。
さてさて。
私がキングの「復讐の否定」のテーマにモヤモヤ感を拭いされなかったのは、頭ごなしに赦しを強要されるばかりで、罪人たちが本当に償っているようには正直言って見えなかったからです。
償いもしない・己の罪を見据えもしない者を「可哀想だから、赦しは正しいことだから」赦せと強要されるのは理不尽だと感じていました。
今回、マーリンさんは復讐を行ったわけですが。
少し前のエピソードで、キングが「復讐はいけない、しない」という結論に達したのに、一方ではマーリンが嬉々として過激な復讐をしている。
これはどういう意図なのかなあと、少し考えさせられました。
マーリンさんは好きに復讐しても誰にも「赦してやれ」と説教されない。
それとも、この後の展開で「復讐なんて愚かだった…」とマーリンさんも言い出すのでしょうか。
つーか、まあ。
復讐も何もアーサーは生き返るに決まってますしねー。(;^ω^)
アーサーが再登場してマーリンさんは復讐なんて したことも忘れて終わり、ですかね。
ちなみに今回のエピソードを見ていて、キューザックが、「自分がアーサーを殺したこと」を ちゃんと自覚・認識していたのは、見どころがあるというか、素晴らしいなと思いました。
だって、デリエリもゼルドリスも、自分が殺した人間のことなんて存在すら認識してなかったから。