【感想】『七つの大罪』第194話 残酷なる希望
週刊少年マガジン 2016年45号[2016年10月5日発売] [雑誌]
第194話 残酷なる希望
- 「天貫破獄刃」の爆発が生んだ土煙は柱のように立ち昇り、未だ消えずにいる。
- ゼエッ ゼエッ と荒い息を吐くドレファスのもとに、小さな息子が駆け寄った。
「お父さーーーーーん!!!」
「グリアーモール!!!」
我が子を、胸に強く抱きしめる。
「お父さんだ……!」「僕のお父さんだ!!」
嬉しそうに涙を流す息子の小さな頭を抱き寄せ、
「こうして再びお前を抱きしめられる日が来ようとは…!!」
ドレファスも微笑みを浮かべた、が。
「……」「ん?」
違和感に目を丸くして息子を下ろし、まじまじと見つめる。
「グリアモール お前 なぜこんな幼い姿に…?」
息子は今年21歳。父の背丈も超えた頼もしい男に育っていたはずだ。それが、5、6歳ほどの幼子に戻っているではないか。 - 当の本人は、問われても不思議そうに きょとん としている。
◆単行本の描きおろしで、幼児グリアモールとベロニカ姫のお話来ないかなあ。
小さな子(しかし彼氏)相手にベロニカ姫がどんな対応するか(小さい子相手でも乱暴? あるいは意外に甘々か)、そして大人になったベロニカ姫に幼グリアモがどんな反応するかが見たいです。(ベロニカ様じゃない、と泣いたりして 笑)
今回の王都防衛戦でも、幼グリアモはベロニカ姫を守ろうとしただろうし、ヘンディおじさんとも一緒にいたかっただろーと思うんですよ。それがどう説得されて、ジールや侍女たちと一緒に別室に隠れることになったのかなとか。 - 「ドルイドの里の修行中に色々あって――…」「後でゆっくり説明するよ」
傷ついた左肩を押さえ、よろめきながらヘンドリクセンが歩み寄った。目の端に浮かべた涙を隠さず、微笑んで親友 を迎える。夢見ていた言葉と共に。
「おかえりドレファス」 - 「ヘンドリクセン……………!!」
ドレファスも微笑みを返し、広い胸にガシッと年下の親友を抱きしめた。まるで、子を労 う親のように。
「…今まで心配をかけたな」 - 「ふ…ぐっ…」耐えきれず、むせび泣きはじめるヘンドリクセン。
「それは お互い様だろ…!」涙が頬を溢れ伝う。 - 感動の再会の片隅から、か細い声が聞こえた。
「やっぱり… ドレファスは… …強い…なぁ ははは……は もっと早くに私の跡を継がせる…べきだったよ…」
「兄貴!!」
死んだように倒れていたザラトラスだ。横たわったままだが、目を開けて弟たちを優しく見つめ、微笑んでいる。 - 「しっかりしろ!!!」
抱き起したドレファスの腕の中で、ザラトラスは力なく笑った。
「まいったな… もう体に力が入らない……」 - ヘンドリクセンは涙を拭い、父の腕から離れた子供に語りかける。
「グリアモールは ジェリコたちと一緒だったんじゃなかったのか?」
肩の傷に「イタタ…」と呻く大人に「大丈夫?」と眉を曇らせてから、「あのね… オシッコから戻ったら みんないなくなってた」と子供は返した。
◆グリアモールだけグレイロードから逃れてたの、てっきり「障壁 」の魔力のおかげかと思ってたら、単に別室にいたからだったんかい!(苦笑)
城中を探索して全員捕獲した風なこと言っといて、男子トイレは覗かないとは、グレイロードさんは淑女 ですね。 - ドレファスは、命の灯の消えかかった兄の顔を覗き込んでいる。
「兄貴… なぜ あんな無茶を!!」
「気にするな… キミたちを救うために…得たような命なんだから」
微笑みつつも、ぐったりと目を伏せるザラトラス。 - ドレファスは気まずげに兄から目線を外した。
「私がもっと強ければ…」「兄貴を手にかけることも 罪のない人々を苦しめることも なかったはずだ…」
するとヘンドリクセンが跪 いて目を伏せる。
「違うよ…… 悪いのは全て私だ…」「私が弱いばかりにドレファスは奴の言いなりに……」 - ザラトラスが ゆっくりと目を開ける。そして、
「ぶっ」弟 の顔面に ゴッ と頭突きをかまし、
「だっ」弟分 の鼻を指先で ビシッ と弾いた。 - 「あ…兄貴?」
「キミらが そんなんじゃ 私は ちっとも昇天できんでしょうが…」
戸惑う二人に言い聞かせる。微笑んで。
「悔やむ…くらいなら その全てを… 受け止めて生きねば… ならない」「それが… 大人の責任の取り方でしょう……?」
その全身が淡く光り、光の粒となって、端から少しずつ天に昇っていく。
「それから………」「一つ伝言を…………………っ」
ほぼ光となりながら、力を振り絞るように、彼は想いを遺した。
「ギルサンダーに いつも… 見守っている…… と…」 - 淡い光は死者を喰らい、蛍火は飛び去る。
「…必ず兄貴の言葉はギルサンダーに伝えよう」
空になった腕を見つめてドレファスが静かに誓い、ヘンドリクセンも再び目に涙を浮かべた。
「どうか安らかに…」
◆メラスキュラの闇の邪法で土から蘇ったのに、消え方は美しい。腐った肉と骨に戻ってバラバラに散らばるとかじゃないのね。 - 恐ろしい声が、哀悼の空気を破った。
「その約束が果たされることはない…」 - ゾクッと総毛立つ男たち。
素早く立ち上がるとドレファスは左に剣を構える。
「こ… この声はフラウドリン!?」「バ… バカな… “天貫破獄刃”は確実に奴を消し去ったはず」 - 「ククク…」「正確には 貫いた だな」
漸く晴れ始めた土煙の向こうから、その姿が現れ始める。
「さすがは俺の相棒だ」「たしかに元のままでは やばかったよ」
人が通り抜けられるほどの大穴が、確かに その身体には開いていた。ドレファスの渾身の一撃によるものだ。
だが。今となっては、それに何の意味があるのだろう。 - 「二人ともいい表情だ」「その絶望を顔に貼りつけたまま死ぬがいい…」
何が起きたのか。理解したドレファスとヘンドリクセンの愕然と見上げる顔を、魔神は心地よさげに見下ろしている。
「どうだ…? これが本来の俺の魔力――」「巨大化 」!!!」
元々、身長4mは超えた巨体ではあった。しかし今は それを遥かに凌駕する。巨人族すら楽々と超えるだろう。
ドレファスの穿った穴は、巨体の右脛に ぽこりと開いていた。人間なら脛骨の損傷で立てなくなるところだが、何ほどもない様子である。
◆ドレファスの体に入った状態で「巨大化 」使ってたら、どうなってたんでしょうね(笑)。
使っていたら、多分、彼はもっと色々楽に物事を進められたと思うのですが(ゼルドンの研究棟の時とか)、頑なに使わなかったところを見るに、取り憑いた人間の体までは巨大化できないのかな? 中身の魔神だけ大きくなって人間の体が壊れちゃうとか。
そう思うと、フラウドリンはドレファスの体を大事に「着てた」んだなあ。 - その巨体から、無造作に振り下ろされる掌。
咄嗟に腕で己の頭を庇い目を閉じる以外、成すすべのないヘンドリクセン。
「くっ…」ドレファスは、幼い息子を抱いて地を蹴った。 - ズンッ… と、地響きを立てて、掌が叩き付けられる。
今のフラウドリンにとって、リオネス城(既に瓦礫の山だが)は、大きめのドールハウス程度のものだ。
氷の結晶林立する大広間にいた人間たちも、この衝撃では無事でいられないだろう。 - ところが。
「ん?」
フラウドリンは目を瞠る。 - 「なんだ このバカでかい化け物はよ!?」
けたたましく叫んでいるのは、十年 手塩にかけた愛弟子 だ。空に浮いた透明な箱…「完璧なる立方体 」の中から、王族や聖騎士たちと共に魔神を見下ろしている。
「ドレファスを乗っ取っていた魔神の正体だ」
箱内の中央に浮かぶ、作り主たるマーリンが、神器片手に告げた。 - その足元には、魔神の掌に潰されたかに思えたヘンドリクセンが、本人も唖然とした顔で座り込んでいる。間一髪で保護されたらしい。
- 「ドレファス!! グリアモール!!」
箱の中から眼下に向けて、彼は呼んだ。
「!」ハッとするハウザーたち。
魔神の掌によって すり鉢状に抉れた床の縁に、片手で息子を抱き、片手で岩肌にしがみついたドレファスの姿が見える。
「私たちなら大丈夫だ!!」 - ハウザーの顔が驚きと期待に輝いた。
「じゃあ… 元の聖騎士長に戻ったのか!?」
「ああ…!」と、ヘンドリクセン。
「本当かよ… やったぜ!!」 - 胸板に開く口を忌々しげに歪め、魔神は言った。
「まとめて 踏み潰してくれる」
◆さっきまで、マーリンから命からがら逃げようとしているように見えましたが、彼女が来ても悠然としてますね。巨大化したら大抵の魔法に負けないって自信がある? - その顔がバキッと音を立てて歪み、魔神は「むご!?」と苦鳴をあげた。
- 「!?」ぎょっとするスレイダー。
「急になんだ?」ハウザーも目を丸くし、「わからない…」ギーラは細い目で凝視している。 - 「う゛」「が!!」
魔神の顔は何度も歪み、激しい衝撃に巨体が揺らいだ。まるで見えない拳に何度も殴られているかのように。
一体何者の仕業か。不埒な暴漢の動きを追ったフラウドリンの目が、ついにそれを捉え、驚愕に見開かれた。
「なっ…」「なんだと!?」
己の指の先に、ちょこんと立っている小さな姿。
「メリオダス………!!?」「なぜ 貴様が生きている!!?」 - かつて普段着にもしていた、<豚の帽子>亭の店長服に身を包んだメリオダスが、神器を片手に飄々と笑っていた。黒いベストの裾が、バサバサと音を立てて風になびいている。
- ハウザーの目が、零れ落ちそうなくらい大きく見開かれた。
「うそ…」
ギルサンダーがいたら、それこそ躍り上がっただろうに。
「夢… じゃないよな?」
あの死に様を目の当たりにした一人であるスレイダーは、喜びよりも怪訝さが勝 っている。 - 「メリオダス殿 …生きていたのか!!」
キョトンとした息子を抱いて、喜びに輝くドレファス。 - マーリンは、当然と言わんばかりに薄く笑みを浮かべた。
「やはり戻ってきたな…」 - 「団ちょ…♪」
バンは、嬉しさと困惑を半ばしたように顔を引きつらせている。
◆ホークが生き返ったときは、泣いて震えて吠えて、純粋に喜んでいたものでしたが。
この微量の困惑は、どんな心情なんでしょうか。
- 「かっ!!」
虫を払うように手を振って、フラウドリンがメリオダスを振り落とした。
宙に投げ出されたメリオダスは……眉一つ動かさない。すかさず両手で叩き潰そうとしたフラウドリンより早く、その指先を蹴って二の腕から肩へと蚤のように跳ね上がっていき、一瞬で顔面に迫る。 - 「ぐっ…」
咄嗟に顔だけは避けたフラウドリンの胸に、魔剣の傷が斜めに走って血が噴き出した。そうしながらも拳に力を籠め、今度は過たずメリオダスを叩き落す。
「おあ!!!」 - 両手両足で ダァンッ と着地するメリオダス。すかさず、フラウドリンは何度もそれを踏みつけた。
「砕けろ!!! 砕けろ!!! 砕けろ!!! 砕けろ!!! 砕けろ!!! 砕けろ!!!」
◆フラウドリンの足って、指の形が掌みたいですね。サルみたい。 - が、何の効果もなかったらしい。
「んがっ」
跳ね上がってきたメリオダスの頭突きに顎を打たれて のけぞる。 - 「やるなぁ…!! だが今の俺なら貴様の力にも ひけはとらん!!」
片腕で顎をさすって、身軽に地に降りたメリオダスに語りかけた。
「16年前の続きを とことん やろうじゃないか!!」 - 「すげーー… ほぼ互角の勝負だぜ!」
感嘆するばかりのハウザーの前で、マーリンが眉を曇らせた。
「妙だ…」
手の中に「バロールの魔眼」を出現させ、メリオダスの闘級を「視る」。
(団長殿の闘級3万…)(以前よりも数値が――)
「死んだ」時点で、メリオダスの闘級は3万2500だった。僅かながら下がっている。そんなはずはなかった。「戻ってきた」ならば、以前よりも「上がっているはず」だ。ならば…。
マーリンの顔に得心の笑みが浮かんだ。
そうだ、メリオダスは先程から一言も喋っていないではないか。決して無口とは言えない、あの男が。
(ああ… そういうことか) - 彼女の推測を裏付けるように。
「俺の分身相手には上出来だったぜ」
メリオダスの声がした。今までフラウドリンと戦っていた、すり傷だらけで服をボロボロにしたメリオダスではない。その背後から現れた、パリッとした店長服を着た、傷一つない彼が言ったのだ。 - 「へ?」
間抜けた声をあげたフラウドリンの視線の先で。
ボロボロのメリオダスが、後ろから歩み寄ってきたメリオダスに重なって吸いこまれた。 - 「ぶ…分身?」
その力を初めて見たハウザーとヘンドリクセンは唖然としている。何もかも驚くことばかりだ。
薄く笑うマーリンが解説した。
「神器ロストヴェインの特性「実像分身」だ」
神器の力を解放することにより、最大で(?)四体の分身を作ることができる。ただし分身の闘級は本体の半分となり、四体の分身ともなれば1/4だ。(本体の闘級は、分身を何体作ろうとも変化しない。)
今回の分身は一体だけらしく、その闘級は3万だった。
「よって 団長の現在の闘級は――――」「6万」 - 「……」
「…どうした? なんか言えよ フラウドリン」
だらだらと冷や汗を流し始めたフラウドリンに、飄々とメリオダスは語りかける。
「希望から絶望に叩き落される その表情…」「最高にいい気分だ」
その片頬がぐっと吊り上がり、顔面に闇の紋様が蠢き現れた。全身から炎のように闇が噴き上がり、闘級が更に上がっていく。 - 「メリオダス…殿…?」
救国の英雄らしからぬ。
邪悪な魔神そのものの言い様に、戸惑うヘンドリクセン。 - 「いや…」
ドレファスも動揺していた。ヘンドリクセン側からは彼の顔が殆ど見えないが、こちらからは よく見えたのだ。
額の紋様が今までとは違う形になっていた。額の中央に目玉のように大きく広がっている。だが、それよりも。
「あれは本当にメリオダス殿…なのか?」
あんな表情を、彼は今まで見せたことがあっただろうか。
相手を圧倒的な力で いたぶる、それが心地よくて たまらないかのような。歪んだ歓びの滲む笑みを。 - 次回「リオネス防衛戦終結!」
今回、一番笑ったところ。
←柱の『七つの大罪 公式ファンブック 罪約聖書』宣伝文です。
「答えてまっちょ」。
まっちょ先生…………(震笑)。
※念のため。作者さんのニックネーム、正しくは「ばっちょ」です
本屋で吹き出すところだった。
この誤植、以前からこうだったんでしょうか。はは。
-----------------------------
「大人の責任の取り方」とは?
※面白くない、超グダグダ論です。
今回、ザラトラスが言いました。
「悔やむ…くらいなら その全てを… 受け止めて生きねば… ならない」「それが… 大人の責任の取り方でしょう……?」
まずは。
彼が、ジェンナやメリオダスのように「魔神のせいだから君たちは悪くない、仕方がなかったんだ」的なことを言わなかったので、ホッとしました(笑)。
ザラトラスのこの言葉は、メタ的に突き詰めれば「死んで責任を取るのはNG」という「読者への」釘刺しかと思いますけど、まあ、それは置いておいて。
「大人の責任の取り方」とは、具体的にどういうものでしょうか。
個人的な考えですが、「責任を取る、罪を贖う」には大きく分けて二つ(厳密には三つ)の要素があると思います。
一つは「相手に与えた損失の補填」です。
これは更に二つに分かれます。
1-A 精神的な補填
「謝罪」がこれに当たります。まず、これが最初になければ話になりません。
(私がヘンドリクセンにモヤモヤするのは、この点の初動が不十分だったからです。)
ただし、これだけでも話になりません。
それこそ子供の喧嘩レベルの諍いなら、簡単な謝罪だけでも済むでしょう。「ごめんなさい」「うん、許すよ」って。
しかし相手に多大な損害を与えている場合、釣り合うだけの、もっと具体的な補填が必須になります。
(ジェンナとメリオダスが、キングに軽々に「許してやれ」と言ったのは、子供の喧嘩の仲裁レベルの対応でした。
でも、ヘンドリクセンたちの起こした問題は、それを遥かに凌駕しています。よって、ちぐはぐだったんですよね。
結果、身内の贔屓でヘンディを「子供扱いして」甘く庇い、キングには「大人の対応」を強いて我慢を強要しているように見えました。
ともあれ、今回ザラトラスが釘を刺してくれたので、ヘンドリクセンが「ドレファスを救い出せたので心残りはありません、さあ殺してください」とキングらに向かうみたいな展開には、100%ならないなと判ったので、ホッとしているところです。
もしそんなことやったら、ヘンディが ほんまもんのアホだということになってしまうから…。
けど、自分からそれを盾に逃れておいて、黙って有耶無耶にするのも大人として最低なんで、さて、どうするつもりなんでしょうね、ヘンディ。)
1-B 物理的な補填
相手に金銭の損失を与えたなら、その分を返還するのは当然でしょう。
同じように、怪我をさせたなら治療費や、本来なら得られるはずだった収入など、相応の補償を行うことになります。
しかし、損失は必ずしも金銭に置き換えられるものではありません。
たとえば、命を奪ってしまった、まして大勢の人間の命を奪ったなら。それは、取り返しのつくことではありません。
前々回、フラウドリンとヘンドリクセンがこんな会話をしました。
フラウドリン
「手遅れだよ ヘンディ 貴様とドレファスの手は血に染まりきっている …何をしたところで贖 うことなどできんよ」ヘンドリクセン
「それを決めるのは私たちだ……!!」
フラウドリンは「諦めて言いなりになれ」と言いたかったのでしょうから、それにヘンドリクセンが反発するのは当然です。
しかし私は、フラウドリンの意見の「何をしたところで
常闇の棺が開いて以降のことや、<七つの大罪>に罪を着せて命を狙ったことはノーカウントにしても、この10年で、多くの人が苦しめられ、酷い殺され方をしています。加えて、聖騎士長ふたりでマラキア王国を滅亡させてすらいる。
これらの罪は非常に大きく、個人の力で贖えるものではありません。
魔神と戦ったり(他の聖騎士たちだって戦っています)、なんらか善行を積めばチャラになるような、そんなレベルの話ではない。
たとえ二人が「死んで詫びた」としたって、逃避か自己満足に過ぎず、何の償いにもなりはしないのです。
…と書くと、じゃあどうすればいいんだ、と思う人がいるかと思うのですが。
「許されるのが当たり前ではない、許されない覚悟を持ってほしい」、ということですね。
ヘンドリクセンは、フラウドリンに「(贖えないかどうか)それを決めるのは私たちだ」と言いました。
自分たちが諦めずにいさえすれば贖える、と思っているように読み取れます。
けれど、贖えたかどうかを決めるのは被害者の方で、加害者ではないでしょう。
無論、許す人も いるはずです。
しかし許さ(せ)ない人も、きっと いるでしょう。
それを理不尽に思わず、受け入れてほしい。
それこそ、ザラトラスの言う「全てを受け止めて生きねばならない」ってやつを実行してほしい。
(個人的には、公的に裁判受けて、数年の禁固などの一定の刑罰を受けるのが、加害者・被害者双方にとってのケジメ・救いになると思う。許せない人でも、公的な刑を受けたとなれば、表向き口は閉ざすと思いますから、ドレ&ヘン側も楽になるはずです。
でもバルトラ王は身内贔屓で甘く許して、何事もなかったかのよーにするんだろーなあ。)
2 同じことを繰り返さない
さて。
大人が「罪を贖う、責任を取る」に必要な、最後の一つ。
それは「同じことを繰り返さない」です。
当たり前ですね。
どんなに謝罪して償おうが、また同じ罪を犯すようでは話になりません。
ただ、ここ数話を見ていて感じましたが、ドレファスとヘンドリクセンて、同じ状況に置かれたら、100%同じことを繰り返すと思う(苦笑)。
今回、二人は互いに「自分が強ければこんなことにならなかった」と悔やみ合っていました。
しかし、ここ数話で判明したのは、10年前のフラウドリンは非常に弱っていて、人間に憑くくらいしかできなかったらしいってコト。
つまり、あの場で最強のカードだったのは、実はドレファスだったと言える。
(ヘンドリクセンはドレファスより闘級も低く、彼の魔力「腐蝕」はドレファスに通じない。当時のフラウドリンは人間に憑いて精神を操るくらいしかできず、ドレファスには同意がない限り憑けなかった。)
本当は、ドレファスには選択肢が幾つかあったと思う。
魔神を倒せないまでも、王国に被害を出さないよう打てる手ならば。
でも、彼はそうしませんでした。
何故なら、彼の見ていた方向は「王国を守る」ではなく、「ヘンドリクセン(身内)を守る」だったからです。
前回の感想に「自分たちの何が悪くて大惨劇が起きたのか、彼らは考えていないし、反省する気もない」と書きました。
私が思う彼らの「悪いところ」は、庇い合い過ぎるところ、です。
はい、それは人間として「悪いことではない」ですね。
しかし、ここで一つの要素が問題になります。
それは彼らが国を守る聖騎士であり、あの場へは仕事として赴いた、という点です。
たとえば、二人の男が庇い合って凶悪犯の言いなりになり、結果として大勢の市民が死んだとして。二人が一般市民なら、彼らも被害者の一員と見なされ、とやかく言う人はいないでしょう。
しかし二人が警官で、同僚同士で庇い合った結果、市民が大勢 死んだならば。法が許しても、世間は彼らを許さないでしょう。
ドレファスとヘンドリクセンの間の愛情は、同僚や友人というには、どうも質が異なります。と言って恋愛でもありません。
特に、ドレファスからヘンドリクセンへの態度に強く感じるのですが。「小さな子供を守る親」に近い感じがする。
今後、似たようなことがあっても、彼らは きっと同じ道を選ぶでしょう。
それが二人の正義だから。
ただ、責任を負って国を守る仕事には向かないんじゃないかと思います。
------------------------------
メリオダスが、第一部の懐かしい服装にリターン。
デリエリに殴り飛ばされて倒れたホークママの頭で、<豚の帽子>亭は完全に壊れてしまっていたはず。
そこから、わざわざ服を引っ張り出して着替えてきたんですね。
<豚の帽子>亭、魔神族との戦いに決着がついたら再建するんでしょうか。
どんな感じになるでしょう?
メンバーも増えてきたし、カップルもいそうだし、部屋数増やさなきゃですね。
マーリンの手助けがあれば、外観と間取りの合わない謎ハウスも夢じゃないか?