【感想】『七つの大罪』第192話 友を救う その剣 その魂
週刊少年マガジン 2016年43号[2016年9月21日発売] [雑誌]
第192話 友を救う その剣 その魂
- 地上に降り立っても、薄笑いのマーリンは手の中の試験管から目を離さない。
「私は早速 研究室にこもり実験台 をいじくりまわすとしよう…」 - 「そんなことよりも氷の中のジールを救出してください!!」
卵を産みつけられ氷結された人々は放置されたままだ。
尤もな訴えをしたギーラに、青ざめたベロニカが「ギーラ!」「しっ!」と沈黙を促した。
◆ああ…。
16年前、突然現れて挨拶すらせず情報も与えず、「事情を解っている」二人だけで絶対的主導権を取って<七つの大罪>結団の手はずを一方的に整えた、不審 極まりないマーリン(とメリオダス)に、どうしてバルトラ王らは唯々諾々と従ったんだろうと思っていましたが。(全部「千里眼 で そうすべきと思ったから」と説明するにも、限度がある。)
やはり、強大な力を持つ彼女らを恐れて、逆らえなかったってコトなんですね。
<十戒>に屈服し、崇めて、彼らのために聖騎士の魂を狩っている民衆と、本質は変わらない。表面的には友好(主従?)関係だけど、マーリンやメリオダスが ちょっと気を変えたら そこまでなのですから。 - その時、片隅で身じろぎした気配。フラウドリンである。
「く…」
人間のように走って逃げだした彼を、ハウザーを先頭にした聖騎士たちが、調子づいて追いかけた。
「逃げたぞっ 追えー!!」 - “羅漢”
が、振り向きざまに放たれた魔神の一撃が、残っていた壁や天井を崩落させる。
「どわあああ~~~っ!!!」 - 雪崩落ちる瓦礫から身を守る彼らに、背後からデルドレーが呼びかけた。
「危ない!! 引き返して!!」
「陛下をお守りしろ!!」
足止めされたハウザーが怒鳴り返す。
◆ハウザーたち、なんでフラウドリンを追ったんでしょう。
ドレファスそのままの見た目に惑わされたのかもしれませんが、彼は<十戒>で、ハウザーの十倍以上も強いのに。深追いして殺されずに済んでラッキーでした。
…つーか。フラウドリンも、聖騎士たちを直接狙わず、建物を少し壊して足止めする方を選ぶとは。
彼ら(ドレファスの かつての仲間たち)を自分の手で殺すことを避けていませんか? - 闇の翼で低く滑空して瓦礫の滝を潜り抜けたフラウドリンは、ほくそ笑みながら王城(だった場所)の外側に降り立った。
- そこに先回りしていた男がいる。
「!!」「やはり来たな…」
一瞥し、さして驚かずにフラウドリンは言った。 - 「言ったはずだ… 今日こそドレファスを返してもらう――と」
魔神に告げるヘンドリクセン。 - 「フン」「しつこい男は女にモテんぞ」
笑って剣先を向けるフラウドリンに、ヘンドリクセンも己の剣を向けた。
◆「しつこい」? ヘンディが人間に戻って以来、フラウドリンと対峙したのはこれが初めてだったよーな。
描かれていない一ヶ月の間にも、何回か追いかけっこしてた?
いやいや、「一ヵ月も経ってるのに まだその話題? しつこいなー」って意味かしらん。 - ヘンドリクセンが魔力を放つ。
“腐蝕の塔 ”
フラウドリンの足元から円筒形に、塔のように高く腐蝕の気が立ち昇った。地面がジュオッと音を立てて溶ける。
が、魔神は涼しい顔だ。
「忘れたのか?」「その魔力は私にもこの男 にも効かん」 - 立ち昇った腐蝕の気は、頭上に僅かに残っていた柱や天井をも溶かす。崩れ落ちそうな それに気付いた魔神が“羅漢”を放ってそれらを消し飛ばした、その隙に。
ヘンドリクセンは魔神の懐に飛び込んでいた。 - 右手の指先を、トン と、鎧で覆われた魔神の胸元に当てる。
「自然ならざる魂よ… 消えろ」「浄化 」!!! - カッ と光が迸った。
一瞬、魔神は硬直したように見えた。 - ――が。
“流撃”!!!
何事もなく嗤って、強烈な剣撃を振り下ろした。 - 咄嗟に剣で受け止めたにもかかわらず跳ね飛ばされ、ボールのように地や天井に何度も ぶつかるヘンドリクセン。
- とは言え、致命的なダメージでは なかったようだ。十数mゴロゴロと転がったものの身軽に跳ね起きる。口の中が切れたか、血の混じった唾を ぺっ と吐き捨てはしたが。
◆ヘンドリクセンの闘級2650(武力800)、フラウドリンの闘級31000(武力15000)。
本当なら、フラウドリンの軽い一撃でヘンドリクセンは肉餅になって死ぬかと思います。チョー手加減してますよね、フラウドリンさん。
ドレファスの精神的な影響?
いやいや、ドレファスの肉体だと実力出せない仕様? ゼルドンの研究塔で、対等に戦おうとしたデスピアスを「次は皮を脱いで戦 ろう」と脅してたし。
今となっては一つも利点がないのに、ドレファスの肉体に執着するのは何故なんでしょう。 - 「どうしたヘンディ 終わりか?」
友人のように呼んで揶揄する魔神に、「それはこっちのセリフだ…!」と軽口を返す余裕もあった。「貴様の方こそ ドレファスの剣技には遠く及ばないぞ!!」
◆…とヘンディさんは煽っておりますが、フラウドリンはドレファスの技しか使ってないし、今回、自分の利き腕ではなく、ドレファスの利き腕である左手だけで剣を使ってるんですよね。なので、これはフラウドリンの剣技ではなく「ドレファスの剣技」なんじゃないでしょうか。 - 「…言ってくれるわ」
魔神の口元が吊り上がる。間合いは一瞬で詰められ、横薙ぎに叩き付けられる剣。これも受けたが、完全に打ち負けている。両膝をついたヘンドリクセンの前で、魔神が両手で剣を振り上げた。 - 「ぐっ…」
どうにか剣でガードしようとするも。
ガンッ
「が!!!」
それごと叩き伏せられ、頭から地面に突っ込んで転がった。 - 魔神は嗤う。
「何が貴様を そこまで駆りたてる…? その手で罪なき者を殺 めてきた罪悪感か? 友にこれ以上の罪を犯させぬため…か?」「手遅れだよ ヘンディ 貴様とドレファスの手は血に染まりきっている …何をしたところで贖 うことなどできんよ」 - 地に頬をこすりつけて這いつくばり、ゴホッと血を吐きながらも、ヘンドリクセンは魔神を睨み上げた。
「それを決めるのは私たちだ……!!」
震える身体で起き上がろうとする。 - 前向きなのか、傲慢なのか。魔神はどう思ったのだろう。
「話にならんな」「もう死ね」
呆れた口調で言うと、再び両手で剣を握って、立ち上がれないでいる背に突き立てようとした。 - その時だ。
“雷神の粛清”
轟音と共に、極太の雷が地に突き刺さった。 - 跳んで避けたフラウドリン。
「ギルサンダー!? いや…ちがう!!」
落雷地点に もうもうと昇る水蒸気と土煙。その中に うっすらと見えている人影を睨む。
「この魔力は……!!」 - ヘンドリクセンは唖然として座り込んでいた。
巨大な雷は彼を避けて落ち、何の被害も もたらしていない。
「そんな… そんな…」
雷光をまとわせて土煙の中に見えてきた人物に、体を震わせる。
「ザラトラス…なのか?」 - きらめく銀の鎧、銀の髪なびく長身に雷気をまとわせ、神のごとく美々しく立つ男。
「私も共に戦おう ヘンドリクセン」
この世に いるはずのない男が、よく通る声で呼びかけた。 - 「まさか これは夢だ…」「あなたは私たちの手で……」
呆然と見上げる以上の反応ができないヘンドリクセンに、ザラトラスは一歩近づいた。ニッコリと人好きのする笑みを浮かべ……たかと思いきや、ムスッと目を細めて弟分 の頬をつねりあげる。容赦なく。
「夢ではありませんよ」
「イダダダダ!!」
「しっかりしなさい 今はドレファスを救うことが先決!!」「いいね ヘンディ!?」 - 10年前と変わらぬ、優しい叱咤だ。
「…は」溢れ出した涙のこぼれる目元を腕で押さえて、
「はい!」幼子のように、ヘンドリクセンは強く応 えた。 - その間、魔神は剣を構えて目を閉じ、じっとしている。
静かな表情で、まるで彼らの手筈が整うのを待っているように。
◆これ、ホント不思議でした。なんでフラウドリンは停止してたんだろう? 気を溜めているかのようにも見えますが、何もなかったですし。
彼、マジに手加減してる? - 「では行こう!!」
「はい!!」
騎士二人は魔神へ向かった。
まずはヘンドリクセンが突撃し、激しく斬り結ぶ。そこに全身を雷気で包んだザラトラスが文字通り『飛び』掛かって、高速で入れる一太刀。
“雷神剣”!! - 「…!」
フラウドリンの左の二の腕が鎧ごと切れて、ブシッと血が噴き出した。
◆ザラトラスの闘級3060(武力930、魔力1180)。フラウドリンの闘級31000(武力15000、魔力13000)。
…闘級10400のメリオダスは、どんなに斬りつけても、闘級26000のガランに小傷一つ付けられなかったのに。どーなっているのか この世界。(体調や気合のせい、とかで片付けるには、元の闘級差があり過ぎる。)
やっぱり、ドレファスの肉体に入ってると、ドレファスに毛が生えたくらいの力しか出せない、って結論でいいのかな?(ドレファスの闘級3000、武力・魔力共に1000) - すかさず高速で飛び戻ったザラトラスの更なる一撃! 二撃! 連撃!!
「ぐっ」
やや押されたように見えたが、魔神はその全てを剣で受け止めた。
「さすがは元聖騎士長 …だが お前たちにドレファスを殺すことが果たしてできるかな!?」
絶え間ない剣の応酬の中で、嗤って口をきく余裕さえある。
「ハアッ!!」
気を吐いて強撃すれば、ザラトラスのみならず、背後のヘンドリクセンまでもが跳ね飛ばされて地を滑った。 - 魔神を睨む目は揺るぎないが、一打も与えられず荒い息を繰り返すばかりのヘンドリクセン。
ザラトラスも、身を覆っていた雷気は消え失せ、「フ~~…」と長く息を落とした。 - 「どうにか奴の隙をついて「
浄化 」を決めることさえできればな~~」
子供のように唇を尖らせる。
「試してみましたが やはり<十戒>… たとえ「浄化 」でも消滅させることはできませんでした」
ヘンドリクセンの応 えを聞いたザラトラスの口元から、ふと、飄々とした表情が消えた。
「なるほどねぇ…」
何かを心決めたかのように。 - 嗤うフラウドリンの攻撃はやまない。
- 次回「覚悟の聖騎士長」
今回はページ数が少なく、13Pでした。(いつもは20Pくらい)
扉絵の煽りと最初の柱の「あらすじ」に「残る<十戒>はフラウドリンのみ」と繰り返し書いてあって、違和感バリバリ…。
まあ、「リオネスを攻めていた<十戒>のうち、未だリオネスにいて、戦闘不能になってない<十戒>」ならば、確かに「フラウドリンのみ」ですけども。
上記の表現だと、フラウドリンが<十戒>最後の生き残りみたいじゃないですか(苦笑)。
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マーリンとメリオダスの自己中心性
今回のマーリンの様子から、自分の研究が第一で、その他は些事程度にしか思っていないらしいことが明らかになりました。
彼女が博士キャラというだけなら「マッドサイエンティスト的で面白いね」で終わるところです。
しかし、どうにも理不尽さを感じる。
だってマーリンは、自ら進んで、<十戒>を討つ目的で<七つの大罪>を集めた張本人の一人なのですから。
なのに<大罪>は ほったらかしで、自分の好きな研究ばかり。子供かってくらいの無責任さで。
あなた、何がしたくて<大罪>を集めたの?(汗)
メリオダスも同じ。
彼はマーリンと共謀して、<十戒>を討つ目的で<大罪>を集めた。
なのに<十戒>が現れても、一切情報を<大罪>に与えない。連携すらしない。
仲間を引きずり回しながら、常に独断で突飛に動き、結果 状況がおかしくなると「作戦でしたが何か?」と言い訳する繰り返し。(常に己を正当化しようとする。…これは「作者が、主人公を正当化しようとする」と解すべきなんでしょうけど。)
なんて自己チューな連中なんだ!!
これで、彼らが集団から はぐれたアウトローの立ち位置なら、まあ解ります。でも、彼らが首謀者で、リーダーで参謀なんですよ。
皆をまとめて導く立場のはずなのに。
あんたら何がしたいの?
それぞれ単独で<十戒>を滅ぼせるくらい強い、3000年前関連の知識も誰よりある。だから周囲に文句を言わせない。圧倒的主導権を誇示して、好き勝手してるんですよね。
じゃあ、なんで<大罪>を集めたの?
メリオダスとマーリンが3000年前からの生き残りで、封印されていた<十戒>を討つ目的で<大罪>を集めた。
第一部の頃は、メリオダスはそれ(<十戒>復活)を阻止しようとしてるんだと思ってました。聖戦を後悔し、悲劇の再来を回避しようとしている、傷ついたヒーローだと。
でも、第二部で明かされたのは、メリオダスが<十戒>を討つことを、「自分の呪いを解くため」待ち望んでおり、いよいよ それが出来そうだと喜んで祝杯をあげていた。という過去。
そうなってしまうと。
3000年前の負の遺産を、3000年前から生き続けてる亡霊(メリオダスとマーリン)が、自分の望みを果たすという私欲で、現代に生きる人々にもたらした(もたらされることを よしとした)、ってコトになっちゃいます。
ゼルドリスは、自分たちを封印した四種族に復讐すると言ってましたが。
3000年も前のことなんか、今生きてる人間や妖精や巨人たちには、知ったこっちゃないんですよ。
過去から現れて過去しか見ない、過去の価値観でしか動かない亡霊の争いは、亡霊同士でカタをつけてればいい。
でも、現実には過去だけでカタをつけるのは無理です。時間は動いてるから。
聖戦と関わりなく生まれた「今」の人々と共に戦う、それが先へ進む糸口なら、もっと「今」に目を向けて、(強さは ともかくも、せめて気持ち的に)肩を並べてほしいのになあ、と思うのでした。
マーリンもメリオダスも、