【感想】『七つの大罪』第298話 マエルvs.ゼルドリス
週刊少年マガジン 2019年 9号[2019年1月30日発売] [雑誌]
第298話 マエルvs.ゼルドリス
- マエルが両手の中に創り出した太陽は直径1mほどの大きさになった。
- 「マエル!!!」「生きていたんだな…!!」
笑いながら涙を流すリュドシエル。 - 「兄さん……!」
見下ろすマエルの表情は暗く複雑だ。会いたかった。けれど今の自分は その資格のない罪人なのだから。 - ゼルドリスが無粋に声を挟んだ。
「今更 ここに なんの用だ?」「目が醒めたのなら とっとと天界へ帰ればいいものを」 - 「私には聖戦を引き起こした責任の一端がある…」「…しかし 決して戦うために来たわけではありません…」
- マエルの答えにゼルドリスは眉根を寄せる。
「…戦うためではない?」 - 「メリオダス魔神王化の阻止に目をつぶり」「ブリタニアから魔神軍を撤退させると約束してくれさえすれば… 私は一切 手出ししません」
- 天に浮かぶエリザベスは巨大な繭を見下ろして「メリオダス………!」と驚いている。
- エスカノールは繭の傍に手を振るヘンドリクセンを見つけて「あっ ヘンディくん!」とホークの背から手を振り返した。
- (メリオダスの…魔神王化阻止…)
<原初の魔神>は頭の中で ぼんやりと繰り返した。
(そうだ… 奴を… 魔神王にしてはならな………)
そこまで考えて、ブン ブン と勢いよく首を左右に振る。
「!!? 我は今 何を…!?」「く… これはキューザックの意識か…!?」
これは悪しきノイズだ。一つになった己は、魔神王の二人の息子のうち どちらが魔神王になろうと、こだわりなく受け入れるべきなのだから。
振り切るように床を蹴って、マエルめがけて跳び上がる。
「ええいっ 邪魔をするなぁ~~!!!」 - マエルが手の中に浮かべていた小太陽を撃ち放った。
- 「
太陽 なぞ呑み込んでくれよう!!」
頭の獄炎を うねり燃え上がらせて小太陽を捕らえようとする。 - 冷めた目でマエルが静かに唱えた。
「“偉大なる太陽 ”」
パッと差し伸ばしていた手のひらを開く。 - グオッ
- 「!!!!!」
<原初の魔神>の眼前で、小太陽が岩山のように巨大に膨れ上がった。
「か……っ」
もはや止まれない。自ら突入した太陽に押しやられる。彼を呑み込んだ太陽はキャメロット王都を囲む郭壁 を超え、少し離れた荒野 に落下した。 - ズッ
- 重い震動が轟き、巨大なドーム状の火球が大地に赤々と燃え輝き広がる。
- 「ギャーーーーっ こえ~~~~!!!」
奔 る熱風に大きく煽られたスカイマンタ型のホークは悲鳴をあげた。 - 「すごい魔力だ!!」
その背のゴウセルは食い入るように爆心地を見ている。 - 「はわわ…」「これが本家の力………!!」
ゴウセルの後ろに乗ったエスカノールは炎のドームを唖然として見ていた。 - ゼルドリスは冷ややかだ。
「それは脅しのつもりか?」
マエルは戦うために来たのではないと言うが、彼の提示した『一切手出ししない条件』とは魔神族の無条件降伏に他ならない。魔神族に利はない降伏をせねば滅ぼすと武力を誇示してみせている。なんとも傲慢な『和平の呼びかけ』ではないか。 - だが、ゼルドリスにとって今の
示威 は脅威足りえない。
「…忘れたわけではあるまい… 俺には いかなる攻撃魔力も効かぬ」 - 「ええ… もちろん」
静かにマエルも返した。つい数時間前まで彼は『ゼルドリスの兄』だったのだ。弟の能力 は熟知している。 - 「ならば これが俺の答えだ!!」
ゼルドリスの左額の紋様が蠢いて額の真ん中に移動した。そして、体の向きも変えぬまま無造作にマーリンの方に闇の斬撃を放ったのである。 - ドッ
- 剣から放たれた闇はマーリンを背に護るリュドシエルの眼前に落ちた。床を割って迫ってくる闇の奔流を、リュドシエルは中規模の
聖櫃 を放って阻む。 - ところが、阻まれたそれはドロォと粘度を見せて八方に飛び散った。顔が生じ、十匹近い闇オバケになったそれは、リュドシエルを飛び越えマーリンに向かう。
- 直後、その全ては消滅した。
- いつの間に割り込んだのか。リュドシエルの背後、マーリンの前で、両手で印を結んだエリザベスが周囲に三つほどの
聖櫃 をキラめかせている。足元には変身 を解いたホーク。 - 最も後方に立つディアンヌは
戦鎚 を構え、エリザベスの聖櫃 と同じ辺りに幾本もの石柱を生え出させている。彼女の傍に腕組みして浮かぶキングは無数の長剣 を一帯に浮かべていた。 - 今は非力なエスカノールは、それでも揺るがぬ気迫でマーリンを背に両腕を広げ、隣で身構えたゴウセルと共に彼女を囲み護る姿勢である。
- 「これが私たちの意志と覚悟よ!!!」
仲間たちの中心で高らかにエリザベスが宣べた。 - 「マーリン!! 呪文完成まで どれくらい?」
緊張した顔で肩越しに問えば、「五分…」と声が返る。
「あと五分で」「繭の時間を停止させられる!!」 - 火魔時計の時計盤には12まで数字が描かれている。短針が一周回るごとに長針が一目盛り動く。「12」を示す頂きまで、残りの目盛りは五つ。
- 「貴様ら~~!!」
唸りをあげたゼルドリスの背後にマエルが飛び迫っていた。即座に反応し振り向きざまに剣を振るおうとした腕をマエルは掴み、そのままギュンギュンと振り回して地上に投げ落とす。 - 激突は免れぬ勢いだったが、両手両足をついてゼルドリスは着地し、ダメージ無く スッ…と立ち上がった。
マエルを見上げて薄く嗤い、だらりと両腕を下げて技を放つ。
「凶星雲 」 - 「!?」
突如 発生した吸引力にマエルは目を剥いた。 - 影響は<大罪>たちにも及ぶ。
「何… これ 体が吸い寄せられ………!!」
戦鎚を支えに吸引に耐えるディアンヌ。大地に押し当てた鎚の先にはゴウセルが掴まっており、足が地から離れたホークの片耳を掴んで引き止めている。「プガガガガッ」とホークの悲鳴。 - 「…!!」
羽や髪をなびかせながらもキングは空中で耐えていた。エリザベスやリュドシエルも同様だ。 - 「こ… これは まずいです!!」
そしてエスカノールは、ずりずりと吸い寄せられかけたマーリンに抱き着いて、懸命に押さえている。
◆マーリンが吸われないよう抱き留めて踏ん張ってるエスカノール。愛ですね。
自分が吸われないようマーリンに掴まっていると解釈する読者もいるかもですが(笑)。 - リュドシエルがハッとして叫んだ。
「マエルーー!!!」
マエルがゼルドリスに向かって一直線に吸い寄せられていったのだ。
◆ゼルドリスが「本気の」凶星雲 を披露したなか、マーリンは(痩せエスカの支えがあったとはいえ)立ったまま殆ど姿勢を崩さずに呪文を唱え続けることができ、他メンバーも(ホークとゴウセル以外は)少しこらえる姿勢をした程度で吸引に耐えました。唯一 完全に吸引されてしまったマエルは、しかし、この場でトップクラスの闘級だと思われます。
うーん…。他メンバーが無事でマエルだけ吸い寄せられるのは不思議に感じられますね。
…凶星雲 は、実は ある程度 吸引対象を指定することが可能で、今回はマエルだけを狙っていたから、対象外のメンバーは容易く耐えることが出来たってコトかな? - 笑みを浮かべたゼルドリスは、無防備に間合いに入ったマエルに神速の剣を叩き込んだ。
- ドッ
- ところがである。
「!!!」
奇怪なことに、マエルは撥ね飛ばされず、傷も付いていなかった。それどころかゼルドリスの剣が柄部分だけを残して ドロォ… と熔け落ちているではないか。 - 「ゼルドリスの剣が…溶けたぁ!!?」
驚くディアンヌ。 - 「そ…そうか!」
マーリンの腰にしがみついたまま、エスカノールは合点の声を出した。
「「太陽 」の爆発的な力を体の表面だけじゃなく内側にも張り巡らせているんだ……!!」「あ…あれなら「魔神王」と「凶星雲 」に攻撃を阻まれない!!」
◆なかなか際どいところに しがみついてますねエスカさん。 - ゼルドリスが父から借り受けた魔力「魔神王」は、あらゆる攻撃魔力の効果を反転し、実質 無効化する。
だが、魔力であれば何もかも反転するわけではない。
例えば、魔力で形作られた武器でも物質化しているのであれば物理的攻撃と変わらぬダメージを受ける。リュドシエルの光剣やキングの霊槍がそうだ。
また、相手が魔力で防御していた場合、ゼルドリス側から攻撃しても相手魔力を無効化はできない。 - よって、マエルが太陽の光熱を発射してきたなら無効化できるが、己の内に巡らせていただけなら無効化できないのである。そこにゼルドリスが剣を叩き込んだとて、灼熱の魔力に溶かされるだけなのだ。
- そして刃を溶かせば「
凶星雲 」の神速の剣に撥ね飛ばされない。マエルの攻撃は阻害されることなくゼルドリスに届く。 - 偽りとはいえ元兄弟。ゼルドリスの手の内を知るからこその適切な対応とも言えた。
◆己の内側にも太陽の力を張り巡らせる。エスカの驚きようから見て、人間であるエスカには、それこそ「寿命を削る」ほど負荷の高い行いなんだろうなと思いました。マエルは女神族なので平気そうですが。 - 「…五分間キミを抑え込めれば私の勝ち」「五分以内に私を倒せたのならキミの勝ちです」
マエルが言った。 - 無効化されるのでマエルは放射系の魔力攻撃を使えない。攻撃の殆どを失った状態だが、彼の瞳に焦りは一片も見えなかった。
対してゼルドリスは、虎の子の「凶星雲 」を無効化された状態だ。吸い寄せて斬ったところで溶かされるのみ。 - ならば、出来ることは何か。
- スッとゼルドリスは
凶星雲 の構えを解いた。
男たちは対峙し、ジリジリと互いの隙を窺い合う。 - ボボボ ボボ ボ
ガウッ - 空気を裂く音を響かせて徒手空拳の格闘が始まった。
目にもとまらぬマエルの連続突き。左手に柄だけになった剣を持ったまま、その全てを右手で受け逸らし、鋭い蹴りを放つゼルドリス。身を反らして避けるマエル。間を置かず再び放たれた蹴りを左手で止め、右肘を互いに打ち込み合う。 - ――出来ることは何か。
大規模な魔力攻撃の応酬が出来ぬなら、近接の肉弾戦しかないのだ。 - そして肉体で戦うのならば、体格に恵まれたマエルに分があるのは自明である。
- ボッ
- 空気を裂いて喉笛を突こうとしたマエルの左手を、ゼルドリスは半ば仰け反るようにして両腕で抱き止め阻む。
- ゴズッ
- 直後、マエルの右腕がゼルドリスの頭を強打した。
- 次回「すべてが凍り付く」
今回は、もしかして締め切りギリギリだったか、作者さんの体調が ご不調だったのかな? と思わされました。
普段よりページ数が少なかったし(普段は20P、今回は15P)、背景が間に合わなかった? と感じられるコマがあったし(元々背景を入れないコマだったのかもですが)、何より終わり方が唐突で、いつもは最後に付いている後引き文もなかったので。
(雑誌掲載時は、この後に続けて やたら贅沢な見開きで別漫画の宣伝広告なんかが入ってました。)
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ゼルドリスの剣
マエルを斬ったゼルドリスの剣が溶けちゃいました。あらあら…。
この剣、3000年前から ずーっと愛用しているもの。そして柄頭に
でも、刃が溶けちゃったとなると、剣としてはガラクタ。廃棄することになるのかな…と思ったら。
なんと、その後もずーっと持ったまま、手放しませんでした。
おかげで、マエルと格闘している間、剣を持ってる左手は殆ど使えていない状態。
そうまでして手放さないなんて!(ビックリ)
メリオダスだって、思い入れ深い「リズの剣」であろうと、戦闘中に折れたら即座に新しい剣に交換していたのに。
ゼルドリスにとって、この剣は よほど思い入れ深い大切なもの…ということなんでしょうか。
思わせぶりに
与太話。
柄だけになった剣は、ちょっとだけ、かつてメリオダスが肌身離さなかった「刃折れの剣」を思わせますね。
アレと同じように、実は柄の部分こそが重要で、何かの鍵になってるんだったりして(笑)。
(
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魔力「魔神王」のルール
魔神王の魔力「魔神王」または「
「自分に向けられた どんな攻撃と弱体化も治癒と強化に変換…つまり「反転」させる」
と説明され、魔力・物理すべての攻撃を反転無効化させるチート魔力でした。
しかしコレがゼルドリスの魔力「魔神王」になると、無効化するのは「魔力攻撃だけ」ということに…。
なんで借り元の父親の魔力と効果が違うのかは説明されていません。
さて。今回マエルは魔力を体内に張り巡らせることで、「魔神王」に攻撃を無効化されることを防ぎました。
でも、それってどういうこと?
話 逸れるけど、こうして見るとマエルさんってガチムチですね。グリアモールにも負けない筋肉だるま。
色々考えてみたのですが。
つまり、ゼルドリスの「魔神王」は、魔力なら何でもかんでも反転無効化するワケではない、ということなんだろうなと結論しました。
今までも、リュドシエルが手の先に出した光の剣で斬られて倒されたり、キングの霊槍(
そして、次回になりますがキングの魔力障壁(
炎熱や光線、闇などを発射してくる魔力攻撃は無効化できるけれど、魔力で作った刃や、魔力で飛ばしてきた武器は無効化できない。
攻撃の用途に使われていない、ただそこに留まっているだけの魔力も無効化できない。
よって、マエルが体の内側に「太陽」の魔力を充填させておけば、無効化されることなく、攻撃してきたゼルドリスを魔力で返り討ちできる。
そういうこと…なんですかね??