【感想】『七つの大罪』第292話 悪夢の顕現 希望の帰還
週刊少年マガジン 2019年 1号[2018年12月5日発売] [雑誌]
第292話 悪夢の顕現 希望の帰還
- 認識の崩壊が起きる少し前。
精神世界において、まさしく地獄の責め苦が続けられていた。 - メリメリと音を立てて引かれ、ブチンッと千切れる。
「…っ」
プチプチと千切れていく密やかな音、ベキンッと折り取られる大きな音。
「貴様…… 自分が何をしているか わかっ……」
ゴリと噛まれ、ペリリと剥がされ、グチャグチャと意地汚く食い散らかし。
「…!!」
再びブツンと噛み千切られる。 - 「ハ…」「ハ…」
血と冷や汗にまみれて荒い息を吐くキューザック。彼を覗き込んだ幼女は愉快そうに口角を吊り上げて言った。
「流石は最上位魔神 並の魔神であれば この苦痛に正気を失い死んでいる…」「だが… 今以上に耐えてもらわねば私が困るのだ…」 - ワームのように細長く手足の無い甲蟲たちがキューザックを囲み、幾匹かが首や胴を締め上げている。それらに目は見当たらないが顎は発達し、剥き出した歯で老魔神の胴や髪に噛り付いて がじがじと咀嚼を続けていた。
- マーリンは薄く笑って愉しげである。
「アーサーを失った心を満たすには 苦痛と屈辱を お前に与え――」「二度と復活できぬよう精神 を完全破砕させるくらいしか方法はない」 - 既にキューザックに四肢はなかった。右手も左手も左足も右足も。どれも付け根から失われて血が滴り落ちている。暴食の気質を存分に示した甲虫たちに噛み千切り取られ、目前で貪り食われていたのだ。
◆クマに襲われた人が、生きたまま手足から食われた幾つかの実話を思い出しました…。マーリンさんの所業、とても主人公側キャラとは思えない(苦笑)。
この暴食なワーム状の甲蟲たち、マーリンさんが改良した魔界の甲蟲「癒しの天使 」と同傾向のカンジで、これが彼女の趣味嗜好かしらと思わされました。
そーいやバルトラ王に「癒しの天使 」を使った時、口と耳と鼻と肛門どこから入れるかと笑って脅し(?)たり、入れられて悶え嫌がる様子を楽しんで(?)たりしてましたっけ。
マーリンさんって特殊性癖ありそう? 触手プレイ趣味とかリョナ嗜好とか…自分がされるのではなく、人(おっさん)に施す方向で。エスカノールがんばれ。(^^)/ - 身動きとれぬキューザックは目に焦りと恐怖を浮かべていた。
(まずい… 早急に身体に戻らねば)(我らだけでなくゼルドリス様も)
復讐を楽しみ、死への過程を つぶさに観察している、あらゆる意味で規格外の 幼女を見据えて。
(この化け物に!!!)
◆ゼルくんが変態ロリババアに逆リョナられちゃう!
…や、作者さんの意図は多分「化け物=反則級に強い」が主で、マーリンさんの凄さを敵キャラを通して讃えさせている場面なんだろうなと思いますが(笑)。 - その時だ。
「!!」
不意にマーリンが眉根を寄せて唇を噛むと、頭を抱えて苦しげに屈み込んだ。
「くっ…」 - マーリンのコントロールが失われたか、甲蟲の拘束が勝手に解ける。
「?」
訝しんだ直後に、キューザックも刺すような頭痛に襲われて顔を歪めた。
(なんだ…!? この頭痛 は…)(とにかく脱出するチャンスは今しか――) - 現実世界。
「大丈夫ですか マーリンさん!!?」
額を押さえて屈み込んだマーリンに、エスカノールが心配げに呼びかけている。 - 「う…ぐ」
苦しげなまま、マーリンは痩せた中年男に指示を与えた。
「くっ…」「エスカノール 今のうちに…神器 を…!!」 - 「は…はい!!」
エスカノールは床に突き立つ神斧 めがけて駆け出す。
マーリンたちは一体どうしたのか。何かの攻撃なのか。それにしては魔神たちも一斉に苦しんでいる。自分やヘンドリクセンには何も起きないというのに。
「ぐ…あああああああああ~~っ!!!」
リュドシエルは更に尋常ではなかった。床に倒れたのみならず、両手で頭を抱えブリッジ状に仰け反り、苦悶に顔を歪めて絶叫していたのだ。 - 「い… 一体何が起こっているんだろう…?」
薄気味悪いが、マーリンの指示を果たすことの方が重要だ。苦しむリュドシエルの横を すり抜けて神器 へ走る。 - 「リュドシエル様…!?」
ヘンドリクセンはリュドシエルを案じる様子を見せたが、「ごほっ」とギルサンダーが血にむせたため、再び彼に向き直って治癒術を強めた。
「く… ギル! がんばれ!!」「うおおおおお…!!」 - その間に、立ったまま硬直していたキューザックが額を押さえながら目を覚まし、気絶していたゼルドリスが苦痛に歯を食いしばりながら目を開け、同じく気絶していたチャンドラーも痛そうに額を押さえながら身を起こす。
魔神たちが動き出してもマーリンの魔術は発動せず、起き上がる彼らをリュドシエルが打ち倒すこともない。 - 仰け反って苦しむリュドシエルの頭は混乱しきっていた。
(うそだ)(弟の仇だと恨み…憎しみ復讐を誓い)(殺そうとしていた<十戒>「慈愛」のエスタロッサが)(マエルだった?)(バカな… そんなバカなことが!!) 幾許 かの時間が過ぎた。- 「…はっ」
正気づいたギルサンダーは真っ先に、己の前で疲弊している男に問いかける。
「ヘンドリクセン!! 自分の傷も治さず どうして俺を…!?」 - 「いい…んだ… 気にするな…」
ゼエッ ゼエッ と荒い息を吐くヘンドリクセンは、深く疲労し、額や口元から流れた血を拭いもしないままだ。
◆自力で成し遂げました。おめでとう! - 「マーリン しっかり!」
太陽変身したエスカノールが、戦斧 を握る逞しい腕でマーリンを抱き起している。
「…ああ…… エスカノール 体は元に戻ったようだな」
「神器 に蓄積 した太陽のおかげで」
◆神器に蓄積 した太陽のおかげで夜でも変身できます…かあ。またまた「特別ルール」ですね。(^^;) 「心に太陽(好きな人)を思い浮かべるだけで夜でも変身できる」ってのも、時間制限バトルを楽しみにしてたので拍子抜けさせられましたが…。 - 「それよりも―――」
男が顎で促した先に顔を向けたマーリンが見たものは。 - 「どうやら運は我らに味方したようだな」
三人の魔神が、それぞれ頭痛に顔を顰めながらも立ち上がった姿だった。闇を立ち昇らせた身体には、もはや傷も血も見当たらない。綺麗なものだ。 - 「! もう回復したか…!!」
悔しげなマーリン。
◆散々掛けられてた防御力低下の魔法の効果は、チャンドラーが解除したんでしょうか? - 「上位魔神族の回復力を!! みくびるな!!」
チャンドラーが例の調子で区切りながら怒鳴り返したが、「ぬが!!」と顔を顰めて自分の頭を押さえる。隣で同じように額を押さえたキューザックが
「大声で喋るな! 頭に響くだろう… まるで二日酔いだ」
と忌々しげに唸った。
「……しかし我らに増して重傷の奴が いるようだ …クク… 当然か」
◆「重傷」は「重症」の誤植?
ところで、キューザックさんは二日酔いの経験があるんですね。最上位魔神には毒も効かなさそうですが、酒は効く? - 彼が笑いながら目を向けたのは、苦しみ続けているリュドシエルである。
仰け反りから うつ伏せになって、どうにか半身を起こしてはいたものの、それ以上は起き上がれない。 - 「マーガレット 大丈夫か!?」
「あ…」「く…」
覗き込むギルサンダーの声に返事をする余裕もなく、目を見開いて苦しそうに呻くばかりだ。 - 「リュドシエル様に何をしたんだ!?」
「ゼエ ゼエ…ゼエッ」と荒い息のまま、ヘンドリクセンが魔神たちに憤りの目を向ける。 - 「奴らの仕業ではない 原因は… おそらく我が師ゴウセル…」
未だ顔色の悪いマーリンが言った。
「彼は<四大天使>マエルを知る すべての者―――魔神王の記憶すら改竄する禁呪を使ったのだ!!」 - エスカノールは黙って聞いている。マエルという名は、彼にとっては愉快なものではないだろう。己の「太陽」の力の本来の持ち主だと、今朝方リュドシエルに因縁をつけられたばかりなのだから。
- 「マーリン殿 それは一体…」
戸惑うヘンドリクセン。 - 「エスタロッサに ずっと感じていた違和感の正体がわかって 喉の異物が取れたようだ」「…まさか マエルをエスタロッサに作り変えることで女神族に「常闇の棺」を発動させたとはなぁ…」
指先でポリポリと鼻の頭をこすって、キューザックは片頬を上げた。
「だが なんらかの事情で その改変された認識が解け 我々の精神に衝撃を与えた」「そして それはどうやら マエルと深く関わる者ほど顕著に現れるようだな」
マエルの兄たるリュドシエルは未だ うずくまったまま、回復どころか再び頭を抱えて ぽろぽろと涙を落としている。 - 「<十戒>エスタロッサが………」
エスカノールの呟きの後をヘンドリクセンが引き取った。
「<四大天使>マエル…!?」 - マーリンが訊ねた。
「…っ」「だとしたらゼルドリス なぜ貴様は――――…」 - 「なぜ たいした衝撃を受けていない… か?」「つまらん質問だ」
ゼルドリスは嗤う。
「あいにくだが オレは一度としてエスタロッサを兄と慕ったことはない」「奴が実の兄でなかったことが わかって清々しい気分だ……」
そして声を改めた。
「さて… 二回戦といこうか」
◆今までのエピソードでは、他の魔神たちが小馬鹿にしたり無視したりしていたエスタロッサを、ゼルドリスだけが話しかけたり庇ったり心配したりしていました。兄想いで優しいなと好ましく思っていたので、この「一度として兄と慕ったことはない」という暴露に、ちょっとガックリ。そうだったんかい…。 - 「いいえ… ここは我らにお任せを」
「何?」と返り見たゼルドリスにキューザックは続ける。
「たしかに リュドシエルは あの状態… 一見 状況は好転したかに見えますが」
倒れ伏して苦しむリュドシエルを見やり、
「向こうはエスカノールも復活し―――――」
逞しい大男に戻ったエスカノールを、
「何より あの女魔術士の実力は底知れません…」
その前に立つマーリンを見る。
彼女の仕掛けた不快な魔法は停止したようだが、再び何をされるか分かったものではない。 - 「なら尚更 お前たちだけで戦う必要が どこにある…?」
とゼルドリスは不満げだ。つい先程まで、一人ずつの力で戦おうとして、あわや全滅の憂き目を見るところだったのだから。今度は全員の全力攻撃で臨むべきではないのか。 - キューザックは退かなかった。
「奴らには<七つの大罪>という仲間がいるはず ゼルドリス様は そいつらが攻めてきた時のために力の温存を願います」「そのために 我らは目の前の敵を責任をもって仕留めましょう」
言いながら左手で闇の剣を、左に並び立つチャンドラーが右手で杖を掲げる。
◆おお、<七つの大罪>を高く買って最大限に警戒してくれている…と思ったけど、考えてみたら チャンドラーは つい前日<大罪>に完勝していて、現時点、キングのパワーアップもバンの帰還も知らないわけで。
なので この台詞の真意は、<大罪>を強敵と見ての作戦ではなく、ゼルドリスを戦わせず護るための詭弁だったんでしょうね。 - 「やむを得まい!!」とチャンドラーが、
「これが使命だ…」とキューザックが、どこか不本意げに言って剣と杖を交差させ、カンッと合わせた。声を揃え、人間には聞き取れぬ言葉で短く唱える。 - グオッ
すると合わせた剣と杖が眩く輝いたのだ。 - 「!?」
咄嗟に手を目前にかざして目を眇めるゼルドリス。 - マーリンが、エスカノールが、うずくまるリュドシエルを囲むヘンドリクセンとギルサンダーもが、目を奪われて戦慄した。
二人の老魔神が杖と剣から発した光に融け、電光をチラつかせながら、互いに吸収し合うように歪み始めたからだ。 - 異様な有様に、思わず、といった様子でゼルドリスが一歩後ろに下がった。
◆ゼルくんもドン引く。 - 「かつて魔神王様は魔界を統治するために一人の魔神を生み出した」
混じり合う老魔神は語る。
「その者は<原初の魔神>と名付けられ 魔神王様の腹心として力を与えられた」 - マーリンが愕然とした様子で呟く。
「この魔力は……!」
◆この台詞、どういう意味なんでしょうか。
「魔力が とんでもなく上がった」ってだけ?
それとも「過去に同じ魔力を感じたことがある」とか「魔神王の魔力と同じだ」とかいう意味? - 「…だが 罪深い<原初の魔神>は己の力に自惚れ… あろうことか魔神王様の座を狙い謀反を起こしたのだ」
「無論 返り討ちにされ 奴は重い罰を受けた」
「肉体と精神を二つに分断され 重大な役目を与えられたのだ」「二人の王子を次代の魔神王候補に育てるべく それぞれの指南役として仕えるように―――とな」 - 「キューザック! …チャンドラー お前たちは一体 何者だ…!?」
驚きに畏れを滲ませて問うたゼルドリスに、融け混じるキューザックは半分残っていた顔を向けた。
「ゼルドリス様……」「私は願っておりますよ」
一方で、やはり半身だけのチャンドラーは頭上の繭を見上げる。
「メリオダス坊ちゃん」「必ず魔神王へと おなりください」 - 二魔神が一つになる。
猛烈な魔力が暴風を伴って四方へ奔 った。
ギルサンダーはリュドシエルの器たるマーガレットに覆いかぶさって庇い、ヘンドリクセンは眼前に手をかざして飛散する瓦礫に耐え、マーリンも顔の前に腕を交差させて「く…」と耐えしのぎ、隣に立つエスカノールは彼女を手で支える仕草をしながら魔力の中心から警戒の目を離さずにいる。 - バアァァァン
次いで、キャメロット城を球状に覆っていた闇の結界が砕け散った。 - 仰のけざまに吹き飛ばされるヘンドリクセン。マーガレットに被さったまま、瓦礫に打たれようとも耐えるギルサンダー。
- エスカノールと、彼の腕に庇われたマーリンは揺らがず立っていた。
「ありえん」「メリオダスと戒禁が作った暗黒領域を はねとばしただと!?」
マーリンは開いた空を見上げて叫ぶ。
なお、辺りは「夜」のままだ。
◆一度入ったら解除されるまで誰も出入りできないという設定だった暗黒領域。メリオダスが どうにかなるまで逃げられないし誰も助けに来れないのね、そんな限定条件下で どんなドラマが…と思ってたら、ストーリー上 何の意味も持たされないまま、アッサリ消えて しまいました(;^ω^)。 - 続いて彼女の視線は魔力の爆心地へ向かった。
「あれが… 奴らの本来の姿……?」
もうもうと立ち込めた土煙の向こうから、次第に その姿が見えてくる。 - 今のエスカノールより二回りほど大きいだろうか。
上半身は鎧めいた装甲に覆われた人型。ただし腕は二対四本ある。
キューザックのより柄の装飾が豪華な闇の双剣を一対の腕に構え、残り二本の腕には、チャンドラーのとは形状の違う魔法杖と、大きな紋様の描かれた盾をそれぞれ携えている。
下半身は大型ネコ科の獣を…獅子の身体を思わせた。ただし尾は無毛装甲状で太く短く、二枚が上下に重なっている。尾の周りには闇の紋様が網目状に広がっていた。
顔は人間なら壮年の男を思わせた。どちらかと言えばキューザックに近い顔立ちと言える。目は冑か仮面のようなパーツに覆われて鼻と口しか見えず、チャンドラーのように豊かな髭が頬と顎から胸元まで垂れ下がっている。
そして眉間の辺りから黒い炎…獄炎が沸き上がり、頭頂から松明の炎のように燃え上って揺らめいているのだった。 - 上半身は人間、下半身は獅子。四腕の「
半人半獅子 」である。
◆どーでもいい豆知識~。
ご存知のように、上半身が人で下半身が馬の怪物を「ケンタウロス」と呼びます。ギリシアの伝承に登場する存在で、語源的には「牛殺し」であり、ギリシアのテッサリア地方の民が馬に乗って牛を追っていた姿が伝聞されるうち歪んで、半人半馬の怪物として伝えられることになったと言われています。
なお「ケンタウロス」を半人半獣の怪物の総称とする場合もあり、その際には半人半馬は「ヒッポケンタウロス」、半人半魚は「イクテュオケンタウロス」、半人半驢馬は「オノケンタウロス」、半人半竜は「ドラコケンタウロス」、そして半人半獅子は「レオントケンタウロス」と呼称されます。
繁殖期の馬からの連想もあってか馬のケンタウロスは野蛮で好色とされ、中世のキリスト教の神学者たちは、それを「情欲」を象徴する倒されるべき「悪魔」とみなしたのだそうな。
とは言え、ギリシアの伝承にはケンタウロス族ながら賢者と呼ばれるケイロンというキャラも存在します。彼は天文・医学・植物などあらゆる学問に通じ、狩猟や運動も得意で、様々な英雄や半神の「教師」として名を残しているのでした。 - 「我は
罪人 」「<原初の魔神>」
ギザついた歯の並ぶ口を薄く開けて、朗々と魔神は名乗った。 - ギルサンダーもヘンドリクセンも、ゼルドリスすら驚愕を隠せない。
エスカノールは静かに闘志を燃やしている。
そしてマーリンは。 - 「勝機は今 完全に…」「失われた!!!」
強張った顔で そう言ったのだ。 - 暗雲がブリタニアを覆っていた。
二体の老魔神の融合で発生した爆発的な魔力、それに伴う猛風は、キャメロットを越えて四方を吹き抜け、太い木々を折り、広い水面を激しく波立たせた。 - その異変は、キャメロットより遠く400km程も離れたブリタニア中部、キングやエリザベスたちがいる
荒野 にまで届いたのである。
◆285話扉絵の各キャラ現在地点図で見る限り、キャメロット(ウィンチェスターと想定)とキングたちのいる場所は直線距離で400kmは離れています。東京からなら神戸辺り? - 「キャメロットの方からだよね…… これ?」
戦鎚 を片手に立つディアンヌが、幾分険しくした表情で彼方を見やる。 - 「うん… マーリンとエスカノールの魔力も感じられる」
隣に腕組みして浮かぶキングも同じ方角を見ていた。
◆400km離れててマーリンたちの魔力まで感じるとは、覚醒キング凄いな。 - 「急ぎましょう みんな…!!」「きっと向こうでは大変なことが起こっているわ…」
スカートや髪を風になびかせて、エリザベスも緊張をみなぎらせている。 - 「とりあえず おっ
母 たちと合流しようぜ」
プゴと鼻息を吹いたホークにエリザベスが頷いたとき、
「ぷごっ」
唐突に、ホークの目からシュワワッとガスのように光が吹き出した。 - 「ホークちゃん! その光は…?」
戸惑うエリザベスの前で、両目から光を迸らせたホークは首を左右に振って慌て悶える。
「あばばば 知らねえって~~!!」
光は膨れ上がり、ブワアッと激しく吹き出した。
「プギャ~~~~ッ!!!」 - 「キャッ…」とエリザベスが悲鳴をあげ、振り向いてディアンヌは驚愕し、キングも軽く目を見開いている。
- そして、
靄 のように流れて薄れていく光の中に、一同は待ち望んでいた人影を見たのだ。 - 「…っ」
エリザベスの顔が輝く。 - 「うそ……」
ディアンヌは涙ぐんでツインテールの毛先を弄った。 - 「うぶ… うぶぶ」
ホークはプルプル震えて涙と鼻水を垂れ流し、健気にも唇を噛んで嗚咽をこらえている。震える声で言った。
「本当に戻ってきたんだな」 - 彼の旅は
現世 では ほんの17時間半ほどのこと。しかし現世の1分が1年にもなるという煉獄 では1060年ほども過ぎているはずだ。灼熱と極寒と猛毒と修羅の世界へ、求める場所も帰る方法も判らぬまま旅立ち、掴むべきものを掴んで戻ってきたのである。 - その気配の劇的な変化をも見て取って、キングは少し困ったように微笑みを浮かべた。もはや意地を張れる余地はないだろう。認めざるを得ない。この男を、妹エレインに相応しい伴侶だと。
「キミを選んだ妹の目に狂いはなかったようだ…」「バン!!」 - 光の
靄 の消えた後、長身の男が丸めていた背を伸ばして精悍な顔を上げた。
(戻ってきたぜ)(エレイン… 団ちょ…) - 次回「「いつか」が叶う時」
チャンドラーとキューザックの師匠ズがフュージョンし、実は二人は元々一つだったんだと明かされました。
元々一つの存在だったのに神に二つに引き裂かれたなんて、プラトンの『饗宴』で語られる「アンドロギュノス」みたいですね。人間は元々 両性具有で欠けるところのない完全な存在だったが、神が二つに引き裂いたので不完全になり、互いの半身を求めて愛し合うのだと。師匠ズは運命の半身同士だったのか(笑)。
<原初の魔神>のデザイン、強そうだし、神話の生き物っぽい雰囲気だし、頭に獄炎が燃えてて なんか好きです。しっぽの形が鹿を連想させて、二重になってて可愛い♡
にしても。師匠ズの正体が二人で一つの<原初の魔神>だったのなら、今朝方アーサーが彼らと戦った時に背後に見えた異形の影は何だったのか(第256話)。全然形が違うじゃないですか(;^ω^)。
なので、今回新たに造られた後付けの設定なのかも、と勘繰ったりもしました。
<原初の魔神>について、色々ギモンに思う点もあります。
- 謀反を起こした罪人に、どうして魔神王は自分の息子たちの教育を任せたのか? 危険だとは思わなかったのか?
- 罰として二つに引き裂かれたのに、自分たちの自由意思で簡単に融合できるのはどうしてか?
- 3000年前に封印された時点でゼルドリスは252歳。<原初の魔神>が受けた罰は魔神王の「二人の」王子を魔神王候補として育てること。ということは、彼が謀反を起こし罰を受けたのは既にゼルドリスが産まれていた時代…前聖戦終結の ほんの200年くらい前でしかなかったのか?
- 魔神王が<原初の魔神>を造った以前は、魔神族は存在しなかったのか? 魔神王は全ての魔神族を造ったのか?
- <原初の魔神>は魔神王に造られたのに、息子扱いにはならないのか?
- 魔神王は自分の力の半分を十の戒禁に分けて魔神族の精鋭に与えた…今は力が半分になっていると語られてきたが、<原初の魔神>に与えたという分も、魔神王の力は減っているのか? だとすれば彼は本来の力を殆ど失って、半分以下の力しか持たない?
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時間経過のギモン
今回、時間の進み方に疑問を感じる点がありました。
- エスタロッサの認識が崩壊…マエルショックが起きて戦闘が中断する。
- ショックから立ち直ってすぐ、師匠ズが<原初の魔神>になる。
- その魔力を、マエルとの戦闘を終えた後の覚醒キングが感じ取る
- その場にバンが帰還
おかしくありませんか?
マエルショックから立ち直ってすぐに師匠ズは<原初>に変化しています。そして、<原初>の出現は「バンの帰還」とほぼ同時であるかのように描かれている。
しかし、マエルショックの起点は煉獄でのメリオダスと魔神王の会話であり、それから煉獄脱出まで60年ほどの時間が過ぎたと語られていました。煉獄での60年は現世の1時間です。
そしてバン&メリの煉獄脱出のタイミングは、覚醒キングらが暴走マエルを鎮めた後。
以上から、マエルショック~暴走マエル解決まで、およそ1時間かかったのだと読み取れますよね。
一方キャメロットでは、マエルショックが起きてから殆ど間を置かずに<原初の魔神>が登場したように見える。
なのに、暴走マエル解決後のキングが、その「出現を」感じ取っているのです。
キング組とキャメロット組の時間の流れが一致していません。
時間が歪んでいませんか?
それともまさか、マエルショックから<原初>出現までに1時間以上経過しているのでしょうか。
治癒術で回復したギルサンダーが目を覚ます場面に、時間の経過を示す空白コマが一つ描かれています。
実はこの時に1時間経っていた?
いやいやいや。
もし1時間経っていたというなら、マエル=エスタロッサとの関わりが薄いマーリンが、1時間も頭痛に苦しんで動けなかったということになってしまいます。
流石にそれはおかしい。
だって、マエル=エスタロッサと関わりの深かったサリエルやタルミエルすら、そんな長時間は行動不能になりませんでした。
それに、もし1時間経っていたなら、エスカノールは何をしていたんですかというハナシになっちゃう。魔神たちが回復していくのも、メリオダスの繭も、1時間も何もせず放置してたんかい、ってことに。
マエルショックからバン&メリ帰還までの1時間、キャメロット組は何をしていたのか、どんな展開になるのかと楽しみにしていたので、この大雑把な消化は残念な気持ちになりました。
にしても。
作中の現在時刻は何時なんでしょうね。
エスカノールが「ザ・ワン」を妨害されてから(正午から) さして経っていない気もする。でも、理屈的には1時間以上経ってないとおかしい。
マエルショックが起きてから1時間、その前の師匠ズVS.マーリンに30分掛かってたと仮定して、現在時刻を昼の1:30と考えてみます。
バンが煉獄にいた期間は およそ1060年。煉獄の1年は現世の1分なので、現世では17時間40分ほど。
現在を昼の1:30とするなら、バンが煉獄へ旅立ったのは前日の夜19:50くらい…?
作中の描写を見るに、チャンドラーの二度目の襲撃の時点で夕刻でした。そして、メリオダスがエリザベスを連れてキャメロットに着いた頃には、チャンドラーの魔力とは関係ない本当の夜になっていた。メリオダスが去ってすぐにバンは煉獄へ行っています。
要は、日没の少し後に出発しているっぽく見える。
リオネス王国誕生祭の日付から日を数えるに、作中の時季は5~6月っぽいです。チャンドラーに襲撃された場所は、キャメロットへ向かう途上でしたからブリタニア南部。
ブリタニア(イギリス)南部の5~6月頃なら、日没時間は夜の20:30~21:00頃。
うーん、ちよっとズレる?
バンが旅立った時点では、本当は まだ夕暮れだったけど、チャンドラーの「夜」のせいで暗かった…とでも考えれば、辻褄は合わせられますけども。
↓ついでに。なんとなく作ったイベント経過表。
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エリザベスの 呪い 発動初日 |
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エリザベスの 呪い 発動2日目 (1日経過) |
エリザベスの呪いの「三日」のタイムリミットは、きっかり72時間なのでしょうか。
だとすれば、まだ一日と少し…26時間くらいしか経ってない。残り二日弱…46時間くらいあることになる。明後日の昼前まで大丈夫。
でも、足掛け三日方式(初日を一日目と数える)なら、明日には呪い発動しちゃうことになる。
第253話、作中時間の今日の早朝(コランドで目覚めてから18~19時間経過)の時点で
「エリザベスの呪い発動まで残り二日――」
と書いてあったので、昨日が最初の一日、今日と明日を合わせて「残り二日」と数えた足掛け方式っぽく思えなくもない? いや72時間? どっちかな?
タイムリミットは作中時間の「明日のいつか(足掛け三日目)」なのか「明後日の昼前(72時間後)」なのか。
「明後日」なら余裕ある感じ?
作中時間の「今日」中にはキャメロット決戦は終わりそう(真の本気メリオダスが呪い解きそう)ですが、そう思わせといて時間が飛んだりするのかしらん。