【感想】『七つの大罪』第305話 断末魔
週刊少年マガジン 2019年 17号[2019年3月27日発売] [雑誌]
第305話 断末魔
- 「この… クソ野郎が!!!」「
自分 の血を分けた息子じゃねえのか!!?」
激昂したバンは魔神王メリオダスの顔面を殴り続けた。
戦場にはゼルドリスが倒れ、父に裂かれた肩から腹までの傷をバックリ開けて、死体のように動かないでいる。
叫ぶバン。
「何様のつもりだ!?」
◆何様かと問うなら「神様」だ(笑)。
「血を分けた息子を殺すのは大罪」。一般的概念ですが、それをバンが語り、こうも激昂するのかと、不思議な気持ちに襲われました。
何故なら、バンは故郷のレイブンズに帰還した際、実父の安否を気にかけることが一切なかったからです。幼い頃 実父に虐待を受けて家出した経緯からだと思われます。
更に彼は、ガランとメラスキュラを攪乱して逃れるために、意図的にレイブンズの町なかを駆け抜けました。結果として(もしかしたら未だ実父が生きて暮らしていたのかもしれない)レイブンズは、ガランによって滅亡しました。バンが、滅んだレイブンズを悼む描写もありませんでした。
これらのエピソードから、バンが大切にするのはエレインやメリオダス、ジェリコ、ジバゴなど後天的に構築した絆であり、血の繋がりや同郷の同胞を重視する感情は希薄なのだと印象付けられていたので、今回の「血を分けた息子を父親が攻撃した」ことへの、今まで見たこともないほど苛烈な切れっぷりに、違和感を覚えたという次第です。
自分が実父に虐待されていたからこそ、哀れなゼルドリスに子供時代の自身が重なって「父への憎しみ」が爆発したのか?
…バンはメリオダスが<十戒>に殺されていた一ヶ月の間、リオネス王都で聖騎士として真面目に働いて民を護っていたようでした。バルトラ国王に市街に一軒家を賜ってエレインと共に暮らし始めたから……所帯を持って地に足を付けて生活を始めたことで、自ずと考えに変化が起きて、より良識的・一般市民的になっていたということかもしれません。
エレインとの間に息子ランスロットが産まれたら、決して虐待などしない、生きる道を縛りもしない、いい父親になるのでしょう。 - 殴られ続ける魔神王メリオダスが くわっと目を剥いた。
「我は魔神王!!!」「我が血脈に弱者は不要!!!」
アッパーで殴り返す。 - 「知るか!!!!」
更に激昂したバンが殴り返した。 - 「ばはぁっ…」
情けない悲鳴を上げて魔神王メリオダスが仰け反った、まさにその時、精神世界の老魔神王も全身の無数の穴から血を垂れ流して仰け反っていたのである。
「こ…の…許さ……」 - 「終わりだ魔神王…」
顔面を左手で覆ってよろめく老父に、闇弾の旋風に己を取り巻かせたメリオダスは低く告げた。
「オレの中から……」
上半身を捻って両腕を回し、
「消え失せやがれ!!!」
何かを抱えるような形で束の間 動きを止めれば、つられて動いていた闇弾の群れも動きを停める。
◆構え的には「かめはめ波」。 - 静から動へ。
溜めた力をぶつけるように、メリオダスは前屈みに右手を突き出して叫んだのだった。
“トリリオン・ダーク”!! - ズババババババ
超無数 の闇弾が激烈な強さで老魔神王を撃ち貫いていく。- 「んごぉっ」「おが… ご… あぎあが…」
今や、老魔神王の叫びは魔神王メリオダスと同期 していた。
「おあぁ がが…ぎ いいいいい」 - 「ホウッ!!!」
怪鳥 音を発したバンに蹴り飛ばされ、魔神王メリオダスは数10mを水切りの石のように何度も地にぶつかりながら吹っ飛っんでいく。間もなく激突して高く土煙を上げて止まった。 - やがて立ち上がった彼の全身からは、闇が立ち昇り蠢き出でている。
「ア…」「ゴ…ォア!!!」 - バオン
- 哀れな様子で呻いていたが、不意に跳ね上がり、闇の尾を長く引いて高速かつジグザグに空を飛び巡り続けた。まるで穴の開いた長風船だ。
「ギェアアアアアアアァ」
奇声を上げながらの飛行に知性は感じられず、時に自ら地面に突っ込んで激突しては、再び飛び上がる無軌道ぶりである。 - 「…今度はなんだ!?」
若干 引いたバンの背に女が声を掛けた。
「魔神王の断末魔だ」
マーリンの声である。 - 「お前ら…」
軽く顔を向けたバンは、<大罪>とエリザベスが目を覚まして動いているのを見た。 - 「団長殿を自分の道連れにする気だ… 今すぐ追い出すぞ!!」
そう続けたマーリンは肩をエスカノールに支えられている。同じようにキングの肩をゴウセルが支え、ディアンヌとエリザベスは自力で凛々しく立っていた。 - そのエリザベスの足元に とんとこ と駆けてくる豚。
「なあ メリオダスには会えたのか!? 元気してたか!?」 - 「ええ…!」
エリザベスは力強く頷いて、戸惑ったような顔をした。
「……どうしてホークちゃんは来なかったの?」 - 「…そ……それは…」
ホークは気まずげに顔を逸らす。らしくもなく。 - 一方、相変わらず「オオオッ」と奇声を上げながら飛び回り続けている魔神王メリオダス。飛んでは自ら地面に突っ込み、飛び上がって、また突っ込むことを繰り返す。
- 「…とにかく動きを止めねーとな!!」
バンが駆け出した。 - たかが地面に激突した程度で魔神王と化したメリオダスの肉体を傷つけることができるのかは疑問だが、マーリンの推論通りなら、それによってメリオダスの肉体を破壊して共に死のうという意図なのだろう。
いや、メリオダスの肉体を破壊して共に死にたいのなら、自爆なり自刃なりすれば一瞬で済むのに、訳の分からない手間暇をかけている辺り、知性が無くなっただけなのかもしれない。死にかけのゴキブリやネズミが断末魔の苦しみにバタ狂って駆け回るように。 - 地面スレスレを水平に飛ぶ魔神王メリオダスの前にバンは飛び降りて割り込み、両腕でガッと肩を掴んで押さえた。
「往生際が悪すぎんぞ!!」 - 魔神王メリオダスの推進力が大きすぎて、すぐには抑え込めない。
「くっ」
ゴザアァアアァアッ
彼の両肩を抑えたまま、バンは押されて後ろに地を滑っていく。
「ぐ!!」
ドガン
「らぁっ♬」
天高く、ボールのように魔神王メリオダスを蹴り上げた。 - すかさず各々の術式に入る仲間たち。
- “
聖櫃 ”
凛々しく立つエリザベスがキラキラしい浄化の光の球で、 - “
完璧なる立方体 ”
エスカノールの肩に支えられたマーリンがエネルギー反射の牢獄で、 - 「
花粒園 」
ゴウセルに肩と腰を抱きかかえられたキングが守護結界で、
◆ここでゴウセルがキングの腰に手を回してるので、
あれ、キング立てなくなっててゴウセルが横抱き してるのかしらと思いましたが(第58話でもキングを おんぶしてましたし)、他のコマでは肩を貸してるだけなので判断は保留。
キングが大きく腕を振って術を使ったから、倒れないよう腰を支えただけかな。 - 合技
“三層牢獄 ” - 三重の魔力で魔神王メリオダスを閉じ込めたのだ。
- 「オガアァアァァ!!!」
牢獄の中でもメチャクチャに飛び回ったが、なかなか破れずに箱の中のボールのように跳ね返り続けている。
◆「 オ母 アァアァァちゃ~~ん!!!」と叫んだかと思った。
ところで、魔神王が メリオダスの肉体を壊して道連れに死のうとしてるから止めるってハナシじゃなかったんでしょうか。
メチャクチャ結界内でぶつかってるケド いいんか?(汗) 地面にぶつかるのはダメだけど結界ならOK?
あ、キングの「花粒園 」には治癒効果があるから、閉じ込めながらメリオダスの肉体を癒してますとか…?
…とゆーか。魔神王の魔力「支配者 」はどーなったんでしょう。「聖櫃 」の魔神を溶かす効果や「完璧なる立方体 」の打撃エネルギーを反射する効果は無効化されてる? むしろ反転されて回復効果になってる? そうなると「花粒園 」の治癒効果も反転して継続ダメージ与えてるんかいな。謎。
それはそうと、この場面見てて何か思い出すなと思ったら、グロキシニアとドロールが合技“鉱樹オルドーラ”でチャンドラーを閉じ込めた場面(第241話)を彷彿とさせたんでした。 - 「待ってて団長…!」
ディアンヌが戦鎚 をバトンのように背回しして魔力を練り始めた。 - だが、練り上がる前に三層の結界は弾け飛ぶ。
パァン - 解き放たれるや急降下した魔神王メリオダスに体当たりされたバンは「ぐっ…」と くぐもった苦鳴をあげた。
- 「ガ…」
両脚で降り立ってバンと対峙する魔神王メリオダス。 - 「ぐが!!」
身体を くの字に折って10数mほど後ろに滑らされたバン。 - 歯を剥き血と唾液を垂れ流した魔神王メリオダスの両眼は吊り上がり、
炯々 と燃え輝いて、文字通り電光が漏れ放たれている。 - それが後ろから ムニュと塞がれた。
蹄 のある丸々とした豚足 に。
「!?」 - 「最終奥義…」
響くキイキイ声。
“肉の目隠し !!!
ホークが魔神王メリオダスの肩に乗って両前脚で目隠しをしたのだ。 - だが、漏れ放たれていた魔神王の眼光は豚の全身を焼き焦がした。
「んぎょええええ~~~~~!!」
絶叫しながらも離さない彼は、たちまち黒焦げになっていく。 - 「師匠!!!」
血相を変えるバン。これではリオネス王都決戦の悪夢の再来だ。 - その間もディアンヌは
戦鎚 を回し続けていたが、ついに戦鎚を水平に突き出して、練り上げた魔力を解放したのである。
“金剛塔 ” - ハッとしたバンの目前で魔神王メリオダスの足元が隆起した。魔神王はバランスを崩して仰け反り倒れ、黒焦げのホークは振り落とされる。
- ディアンヌが戦鎚を高く天に突き上げれば、その動きに応じて隆起した大地も高く高く、鉱物結晶が柱状に密集した奇岩の塔となって天を突いて育ち昇っていく。
- 「ごああがぁぉおっ」
その頂上に大の字に倒れた魔神王は、超加速が生み出した重力に押さえつけられて動けないらしい。ダメージは何ら与え得ていないが…。 - 「後はキミに任せたよ…」
戦鎚で天を指し続けてディアンヌが叫んだ。この場で最も頼るべき仲間の名を。
「バン!!!」 - その時にはもう、彼は垂直の
金剛塔 を脚力のみで駆け上がっていたのである。 - 雲を貫いて未だ伸び続ける塔の天辺を超えて跳躍したバンは、
頂 に磔 にされた魔神王メリオダスめがけ、拳を振り上げた。 - 「行くぜ団ちょ」
- 昇り続ける塔の
頂 で動けない魔神王。拳を振り下ろしながら降下するバン。 - 「戻ってこいよ~~♬」
- カッ
- 拳は過たず目標の腹に叩き込まれた。
目を剥いた魔神王メリオダスの口から吐き出される鮮血。
同時に金剛石 の塔の天辺が粉々に砕け散り、残った部分も断ち割られて長く亀裂が走り下りた。
破片は広範囲に降り注ぎ、溢れた衝撃は雲を環状 に変えて四方へ広がらせていく。 - 「……」
目の上に手をかざして、ディアンヌは呆然と雲間に霞む金剛塔 を見上げていた。
足元の仲間たちも同様だ。
「どう……」「なったの………?」
塔の天辺が砕けたのは判る。それを境に静寂が訪れたのも。しかしバンとメリオダスの姿を確認するのは、優れた目を持つ者揃いの<大罪>にも難しい。 - そんな中で、いち早く微笑んだのはエリザベスだった。
「ああ…」「おかえりなさい…!!」
指先で己の涙を拭う。 - 「やれやれやーれ…」
花のように裂けた塔の頂 。その一端に背を預けるようにして座り込んだ少年の二の腕には、元の形と大きさに戻った「憤怒 」の紋様がある。
「…体中がボロッボロだぜ……」
少年姿のメリオダスは顔面や腕こそ血に汚れていたが、表情は朗らかで、大怪我をしている様子はなく幾らか疲労した程度に見えた。着ている服は、感情メリオダスが煉獄や精神世界で着ていたものと同じである。
◆本来は実体のない存在である感情メリオダスが煉獄で作って着ていた服を、現実のメリオダスが着ているという不可思議。なんで??
魔神王を追い出して元の姿に戻ると同時に闇の魔法で同じ形の服を作ったんでしょうか。よっぽど気に入ってたんですね。
キングみたいに変身前の服装に戻るのが自然ではありますが、考えてみたら繭に入った時のメリオダスって「殲滅状態 」で、つまり闇をまとっただけの素っ裸でした。全裸はマズいか(笑)。 - 「…こちとらガッタガタだっつの♬」
近くの岩の上に腰かけたバンが、両手を頭の後ろに組んで、愉快そうに大口を開けて舌を出した。 - 次回「永き旅の終着」
ギャグだった。(;´Д`)
戦いの決着に際して、仲間たち一人ひとりに一応の貢献の機会を与えたこと…特に<大罪>で最も弱パワーアップだと読者に評されていたディアンヌに、
とは言え、<十戒>に並ぶ程度のパワーアップしか成し得ていないはずのディアンヌが魔神王に強打を与えたかに見えること、主人公ではなく脇役のバンの単独打撃が魔神王にとどめを刺して終わるという流れには、正直、不可解さと戸惑いの方を強く感じ、達成感や爽快感は得られなかったです。
え、なんで? え、これで終わり? マジに これで終わりなんですか? という困惑が勝る。
これが「神との戦い」なの?
無論、大地が割れたり突き上がったり大嵐が起きたりと演出はド派手でしたが、残った印象は「チンピラ同士が殴り合って終わった」というもので。
なんか…これは……ショボイ。(ぼそっ)
バンが強すぎる。
煉獄にいた魔神王(50%の力+煉獄生物を喰らって大きくなった)と、メリオダスに取り憑いた戒禁魔神王(50%の力+メリオダスの肉体と力)の強さは、大して差が無いはずです。
なのに、煉獄魔神王には「釈迦の掌の上で暴れる孫悟空」レベルに歯の立たなかったバンが、戒禁魔神王とは「全く対等」に殴り合うのは、最後まで納得し難さが消えませんでした。話の都合で強さが上下するにも、あまりに あからさま過ぎる。
また、バンは不死身ではなくなったのに、そのリスクは一切描かれず、実質 不死身の頃と変わらなかったのは つまらなかったです。
どんなに殴られようが蹴られようが、戦いを妨げるダメージは負わない。口から血を吐くほど腹を手刀で刺されてようが、声も大きく張れるし動きが鈍くなることもない。流れる血は °˖✧ アクセサリー ✧˖° です。
「神」という超強敵との死闘なのですから、腕や足の骨が折れて戦いが困難になるとか、出血多量で朦朧とするとか、そんなピンチが途中に挟まれてもよかったのに。
ピンチに陥った不死身ではないバンを、仲間たちが割り入って庇うとか、治癒術を掛けるとか、自分たちの力を奪って増強するよう促して力吸われて倒れるとか、もっと直接に手助けする泥臭い燃え展開があってもよかったのに、これまでしてきたように。
そして魔神王にトドメを刺す場面も、バン単独で殴るだけではなく、メリオダスが同時に何かする演出があった方が、予定調和であろうと、私はスッキリできたかもです。
魔神王も、陸に揚げられた死にかけの魚みたいに諾々とトドメを刺されるのではなく、何か最後の瞬間に抵抗して欲しかったなあ。神が重加速ごときで動けなくなるなよ。
魔神王が弱すぎる。
魔神王は とかく矮小化されていたと感じています。戦闘力は勿論、人格的にも。
煽り口調で わざわざ息子たちを嘲り、何故か今更エリザベスを殺そうとし、何故か今まで利用してきたゼルドリスを無意味に切り捨てる(ゲルダとの仲を許可して手元に留めた方がよほど有用なのに…)。
血の繋がった息子を害するとは最悪の毒親だとバンが激昂(メリオダスの方も、血の繋がった父親を殺そうとしてたんだけど)。さぁこいつは悪い奴だから親だけど殺してもいいよと定義された途端、魔神王の人格が何故か崩壊。獣のように奇声を上げながら変顔で球場のジェット風船のごとく飛び回り、自ら地面に激突しまくる。
なんですかこのギャグ。このくだり必要だったの?
マーリン曰くメリオダスを道連れにしようとしてる、止めねばというハナシでしたが、魔神王自身が地面にぶつかるのと、身動き取れなくしてバンが殴るのと、いったい何が違うのだろーか。
煉獄で戦った魔神王は強大でした。魔力「
ところが、いつの間にか「反転できるのは魔力攻撃のみ」という設定に変わっていて、シレッと脅威ではなくなっていました。如何に攻略するかと楽しみにしていたので拍子抜け。
また、四戒禁を取り込んだマエルは、真実・純潔・慈愛・沈黙に因んだ壮大な状態変化魔力(呪い)を行使できたものでしたが、それより遥かに強い十戒禁の力を持つはずの魔神王メリオダスは、その力を一切使いませんでした。
背中にくっついてた節腕を切り離して作った「刹那の隠者」も、闘級6万以下のゼルドリスの「
絶大な魔力と多様な特殊能力を持つはずの魔神王は、何故か ほぼ殴る蹴るしかせず、何故か人格すら崩壊して、動物みたいに駆除されました。
神、父の尊厳は微塵もありません。
彼の力が壮大で、手数が豊富で、人格が立派だったら、主人公側が太刀打ちできないから、矮小化することで倒させたように見えました。
でも、この方法だと、倒した主人公側も、大きく見えてはくれないのです。
残念でした。
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そういえば、アニメ第三期の放送決定か発表されたそうで、おめでとうございます。
昨年夏の雑誌インタビューで、後一年くらいで連載終了の予定と作者さんが述べられてたので、連載は今年の夏に終わるのかなと思っていましたが、アニメが秋から放送ということは、もしかしたら来年の春、今から一年後にアニメに合わせて連載終了するのかもしれませんね。