【感想】『七つの大罪』第287話 暗黒の王子
週刊少年マガジン 2018年 48号[2018年10月31日発売] [雑誌]
第287話 暗黒の王子
- 彼は囁いた。
『約束は必ず守る…』『オレが十の戒禁を取り込んで魔神王になった その時にな』 - 「今から見せるのは このゼルドリス本来の魔力だ…!!」「とくと味わえ!!」
蠢く闇を足元に沼のように湧きたたせ、ゼルドリンは両手で持った剣を刃先を下に掲げた。 - 増大した鬼気に呑まれて顔を更に蒼白にし浅い息を吐くギルサンダーをよそに、エスカノールはシラけた様子で こぼす。
「ハッタリでないことを祈りますよ」 - マーガレットの器に宿るリュドシエルは薄く微笑んでいたが、それでも背後のヘンドリクセンに注意を促した。
「ここからは庇いだてはできんぞ …退 がっていろ」
「は…はい!」 - 「残念!!!」
「ああ… 我らの出番はない!」
不服を隠さないチャンドラーと自慢げなキューザックは、繭の張った壁を背に、何故か後ろ手で壁に両腕を突き刺していた。まるで自身を壁に固定するかのように。 - あの時、彼は囁いた。
かつて捨てた一族の下へ自ら戻り、傲慢にも自分が魔神王になると今更 告げると、圧倒的な力で弟たちを叩き伏せて。反抗したゼルドリスの耳元に囁いたのだ。
『ゲルダは生きている』 - 剣を逆さに掲げるゼルドリスは唇を噛む。漆黒の瞳に複雑な色が滲んだ。
- 『12年前… 封印から目醒めたゲルダは お前との運命を悲観して 自ら死を選ぼうとした…』『だからオレは もう一度ゲルダを封印したんだ……………………その時が来るまで』
◆エジンバラに開いた大穴は封印だったんですかい…(汗)。つまりメリオダスは封印術が超々苦手ってことですね? あんなアリエナイ大穴を無意味に開けなきゃ封印できないってことなんだから。 - 3000年前、エジンバラの鍾乳洞穴の中に吸血鬼王族を封印した際、封印の結界越しにゲルダと交わした言葉を、ゼルドリスは思い浮かべる。
『自分を責めないで… キミは何も悪くないよ』
そう言った彼女は、しかし、悲しそうに涙を浮かべていた。
『…私は封印の深い眠りの底で』『ゼルドリス… キミとの日々を夢見続ける』 - 彼女の言葉は、同じ結界の奥側にいた彼女の一族…吸血鬼王族たちにも聞こえてはいなかっただろう。二人の恋は秘されたものだったから。そしてゼルドリスは、封印の透明な壁に押し当てられた彼女の手に自分のそれを重ねることもできずに、俯いて目を逸らしていたのだった。
- リュドシエルが煽ってみせる。
「フン! 貴様がどう足掻こうとも…」「聖戦に勝利するのは我ら女神族だ!!!」 - 「聖戦?」
下に向けていた刃先をユラ~…と回して上に向け、真上でピタ、と止めてゼルドリスは言った。
「そんなものに興味はない!!」 - ピク、と微かに震えるキューザック。
- 右手で剣を掲げてゼルドリスは唱えた。
「凶星雲 」 - 冷静に見ていたリュドシエルの髪が、サラ、となびいた。ゼルドリスの方へ向かって。たちまち長い髪が床に平行に引っ張られ、あろうことか、後ろから頭にかぶさったのは めくれ返った自身のロングスカートだ。
- みっともない身なりを直す暇もない。足が床から離れ体が楽々と宙に舞った。風に吹かれた落ち葉のように。驚きのあまり背に広げていた翼が消えてしまう。
- 彼だけではない。ヘンドリクセンも、ギルサンダーも、マーリンも、エスカノールの巨体さえも。浮き上がり成す術もなく吸い寄せられていた。剣を片手に佇むゼルドリスに向かって。
◆際どい服装ながら魔法によってギリギリ見えない寸止めラインを保っていたマーリンさんが、まさかのパンモロ…!!
そしてこれ、エスカノールはガン見してるのかしら。鼻血発熱しないでよかったですね(笑)。
なんとなくマーリンは黒の総レースとか穿いてるのを想像してたので、白で驚きでした。色はどうあれ、着ている服(腰に すごく深くスリット入ってる)的に、紐パンなのは間違いないでしょうが…。……いや。それこそ魔法を使って、魔力吸着な紐の無い前貼りなのかも…! - 「俺の邪魔をするな…!!!」
そうゼルドリスが怒鳴った、直後。 - ズドォッ
- リュドシエルらは広間の対面まで吹き飛ばされ、壁に激突していたのである。
- エスカノールの下側にギルサンダー、ヘンドリクセンの隣にリュドシエルが。壁に蜘蛛の巣状の亀裂を走らせて背中から めり込んでいた。
- ギルサンダーとヘンドリクセンは口や頭から血を流して意識を失っている。
- リュドシエルは意識を保っていたものの「ごほっ」と血にむせ、胸鎧の真ん中が袈裟懸けの太刀傷のように バキ… とひび割れた。
「…何が…起きた?」 - 訳が分からないと思っているうちにも、再び髪や裾はなびき、壁から剥がされてゼルドリスの方へ引っ張られる。
- 「!?」「か…体が…」
マーガレットの器は軽い。簡単に足が床から浮いてしまう。
「吸い寄せられて…」
咄嗟に剣を床に突き立て、背に純白の翼を広げて、風になびく旗のようになりながら どうにか体を留めた。 - その脇を、意識のないヘンドリクセンやギルサンダーが無抵抗に吸い寄せられていく。
- 「フン!!」
同様に吸い寄せられかけたエスカノールは、気合いと共に右足を床に突き立て、
「フン!!」
残る左足も突き立てて踏みとどまった。
「む…」「むむ」
それでも、床を ズズ… と両脚で抉って じりじりと吸い寄せられていったが…。
「フン!!」
再三の気合いで下半身に力を入れ、太腿の筋肉が パン と張られるとビタッと留 まった。なんと、筋力だけで吸引に抵抗したのである。 - 己の体を安定させるや、彼は振り向いて愛しい人に呼びかけた。
「マーリンさん 無事ですか!?」
彼女の姿は見えない。 - 同時に、床に刺した剣で留まったリュドシエルも、吸い寄せられていく人間たちに気付いて声をあげる。
「ヘンドリクセン……!!!」
意識のないヘンドリクセンは、もはや待ち受けるゼルドリスの眼前だ。 - ところが、人間たちがフッと消えた。
- 「!」
一方を睨むゼルドリス。 - 「安心しろ!! まだ二人は生きている」
瞬間移動で引き寄せた人間らを足元に浮かべて、マーリンがリュドシエルの隣に現れた。 - 「マーリンさん!!」
エスカノールの表情が緩む。 - だが、現れた途端に、マーリンらは たちまち吸引された。
「……っ! それにしても この状況は…」 - 顔を顰めた彼女と人間たちがアッという間にゼルドリス近くまで引き寄せられたのを見て、焦って片手を伸ばすエスカノール。
「ああ!!」 - パチッとマーリンが指を鳴らせば、三人はまた背後に戻っていた。
「おお!!」
安堵のエスカノール。 - 壁に両腕を刺して吸引に耐えているチャンドラーが言った。
「小器用な真似を!! 連続“瞬間移動 ”でゼルドリスから距離を保ち続けるとは!! 無限の魔力なしには できん芸当だ!!」
隣のキューザックが呟く。
「…だが 逃げ続けるだけでは 何の解決にすらならない…!」 - マーリンの足元に留められているヘンドリクセンが薄く目を開けた。生きているという言葉は嘘ではなかったようだ。
- 「世話のかかる奴め……!!」
それを確認したリュドシエルは笑うと、
「どれ…」
床から剣を引き抜いて翼を消し、一気に跳んだ。
「そんなに引き寄せたくば こちらから行ってやる!!」「一撃めこそ油断したが貴様の太刀筋など すでに見切っておるわ!!」 - 引き寄せられる勢いで剣撃を見舞おうと嗤ったリュドシエルと対面して、ゼルドリスも愉快そうに嗤ったのである。その胸元が光った、ような気がした直後。
- グシャッ
- またもリュドシエルは吹き飛ばされ、蜘蛛の巣状の亀裂を走らせて背中から壁に激突していたのだった。
- 「ぐふっ」
致命傷ではない。だが血を吐いた。
身に着けていた鎧は粉々に砕け、刺突剣 は根元から折れる。 - 立て直す間もなく壁から剥がされて またも吸引されたリュドシエルは、すぐに、幾分弾力のある熱い壁に背中からぶつかった。
◆体勢的に胸からぶつかるべきところを、何故か背中からぶつかっています。リュドシエルが咄嗟に身を捻って背中を向けたのでしょうか。胸を押し当てる形になったらマーガレットに申し訳ないと思った? - 「…なんの真似ですか? 馴れ馴れしい」
不機嫌な声音でエスカノールが言う。
熱い壁は彼の広い背中だったのだ。相変わらず両脚を膝まで床に埋めて吸引に耐えていたが、少しずつ床を抉って引き寄せられつつある。
◆頃合い的に、そろそろエスカノールは耐えがたい高熱を発し始めているはずです。リオネス防衛戦ではギルサンダーら周囲の聖騎士は鎧が熱されて着ていられなくなり、バンは服が燃えあがりました。
でも今のところ、(闘級の高くない)ギルやヘンディの身にさえ そんなことは起きていませんね。マーリンが予め熱耐性の魔法でも全員に掛けておいたんでしょうか。 - 「好きでお前の背中に落ちたわけでは―― 今は それどころの話じゃなかろう!!!」
リュドシエルは頭ごなしに怒鳴った。
「愚か者め!!」
「愚か? 私が?」と高慢な調子のエスカノール。 - 「まったく仲の良いことだ…」
大の男たちの子供じみた言い争いに呆れた溜息をついたマーリンは、ふと床に目を落として「!」と気付いた。
これほどの吸引力なのに、床や壁、瓦礫は全く動いていない。引き寄せるものに指向性がある。即ち、この場の重力を操っているわけではないということか。 - リュドシエルが呼んだ。
「マーリン!!」「奴の魔力の正体はなんだ!?」 - エスカノールが いっそう不機嫌に顔を歪めた。マーリンさんに偉そうに話しかけるな、とでも思ったのかもしれない。
- マーリンは語った。
「現時点で判明している「凶星雲 」の特性は三つ」
「―――奴を中心に強烈な吸引力を持つ力場 が発生
―――対象は生物のみ
―――こちらの物理攻撃は届かずに正体不明の攻撃が襲ってくる」
「……ついでに もう一つ 「凶星雲 」発動前に放った 私とリュドシエルの技に 奴はまったく無傷だった」「つまり魔力攻撃も無効! おそらく それが奴のもう一つの魔力「魔神王」の正体だろう」
「防御不能の攻撃に加え物理も魔力も通じない」「想像以上に骨の折れる戦いになりそうだぞ」 - マーリンの見解を聞き終えると、リュドシエルはキラキラしい光の
靄 でマーガレットの器を治療した。血の汚れの消えた顔で背中合わせの男に指示する。
「エスカノール!! 私に手を貸せ!!」 - 「嫌です」
- 「……………っ」
絶句してリュドシエルは目と口を開ける。
「はあっ!?」 - 今は軍事作戦中だ。耳を疑って確かめてしまう。
「今 嫌だと……!?」 - 「私に命令しようなど おこがマックス」
- 「「…おこがマックス」」
チャンドラーとキューザックの呟きが重なった。 - 「お前 何様のつもりだ!?」
「<傲慢の罪 > エスカノール様ですが?」
「身の程知らずが!! 私は女神族<四大天使>長 リュドシエルだぞ!!」
怒鳴り、リュドシエルはアプローチを変えてみた。
「我が言葉は最高神 の言葉と思い協力しろ!!」
伝家の宝刀を抜いたというのに、返答は にべもない。
「知ったことではありませんね」 - 「ふざけ…」
己にとって至上のものすら否定されて、思わず身を乗り出したリュドシエルの体が たちまち浮き上がり、
「るなぁああああああぁ~~~~~~~~~~っ!!!」
大股開きの情けない格好でゼルドリスのもとへ吸い寄せられていった。 - 「あーあ」とシラけた揶揄をこぼすエスカノール。
- 指を鳴らして瞬間移動を続けているマーリンが、やや呆れた顔で命じた。
「エスカノール!」「協力してやれ!!」 - たちまち、跳躍したエスカノールは片手でリュドシエルを受け止めていた。
「喜んで!!!」
その足は再び床に埋められ、吸引に逆らって踏みとどまっている。 - 「な…っ お前 他人の命令は聞かぬと…」
「マーリンさんは別格です! ――それよりも」 - 二人を眺めるゼルドリスは余裕の嗤いだ。
- 「…良い作戦があるんでしょうね? なければ殴りますよ」
闇の王子を見やってエスカノールは口角を持ち上げる。
「私の指示に従うのが条件だ…!!!」
むっつりと眉根を寄せてリュドシエルは確かめた。 - 次回「オペレーション“ゴッド”」
リュドシエルが可愛い回でした。
前回に引き続き、ツンツンしながらもヘンドリクセンを心配している様子が可愛い。
「お前の太刀筋など見切っておるわ!」とか大見得切っといて全然見切れてないのがアホ可愛い。
エスカノールと子供じみた口ゲンカするのが男子可愛い。(呆れてる
面白かったです♡
口ゲンカに夢中になった果てに大股開きのスカートめくれで吸い寄せられてった絵面は笑撃的だったな~(笑)。
マーガレット姫がロングスカートでも油断せず厚手のタイツを履いていてくれてよかったですね。
いや、
意外にも、リュドシエルはチームワークを大事にするひとでした。
急造チームなうえ悪役扱いでしたし、エスカやマーリンたちを一方的に利用して独断専行・スタンドプレイなワンマンな戦い方をするのかもと思ってた。
蓋を開けてみたら、物言いこそ高慢ですが、マーリンの頭脳を頼り、エスカノールと共同で戦うべく呼びかけるなど、ちゃんと彼らを仲間と認めてチームで戦おうとしていて、嬉しい驚きでした。
変な駄々こねたのは、まさかのエスカノールの方だった(笑)。可愛かったけど。
エスカノールって、昼の方が言動に子供っぽさが出ますね。
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ゼルドリスの魔力
ゼルドリス本来の魔力が明かされたわけですが。
「現時点で判明している「
凶星雲 」の特性は三つ」
「―――奴を中心に強烈な吸引力を持つ力場 が発生
―――対象は生物のみ
―――こちらの物理攻撃は届かずに正体不明の攻撃が襲ってくる」
「……ついでに もう一つ 「凶星雲 」発動前に放った 私とリュドシエルの技に 奴はまったく無傷だった」「つまり魔力攻撃も無効! おそらく それが奴のもう一つの魔力「魔神王」の正体だろう」
「防御不能の攻撃に加え物理も魔力も通じない」「想像以上に骨の折れる戦いになりそうだぞ」
…あれ? これがゼルドリスの魔力なら、過去修行編(第215話)でディアンヌ(ドロール)に使った、一瞬で魔力を封じる力は何だったんですか?
借り受けた魔神王の魔力は絶対防御の「
う~…ん……。
設定変更?
さておき。
この感想を書いている時点で既に明かされていることですが、連載を読んだ当時は「
(誰もが思ったように)技名に「星雲」と付いてて吸引するんだからアレかなと思いつつ、でも生物だけ吸引するのは不思議だなと思ったり、「正体不明の攻撃」は何なのかサッパリ判らんなあと思ったり。
そして、そう言えば しばらく前の、担当編集さんが柱に書いてるファンレター募集の文に、作者さんが『Newton』誌を購読しているとあったなあ、と思い出したりしました。(読み返してみたら、第281話の柱でした。)
とゆーことは、その頃(一ヶ月ちょい前)にゼルドリスの技のネタを練ってらしたということになるんかな? と想像してみたり。
気になったこと。
「
…の割には、吸引される人物の着ている「服(スカートやマント)」までもが大いに吸引されていたのは何故なんでしょうか。
↑吸引されたスカートが めくれかえって頭にかぶさるという、大人としてアルマジキ状態。後ろにいたヘンディやギルからは丸見えだったでしょう。つくづく厚手のタイツを履いていてよか(略)
ゼルドリスが吸引したい人物を任意で指定、対象の服も吸引対象になる?
いやいや、だったら味方のキューザックやチャンドラーまでもが吸引対象になってるのはおかしいし。謎です。
気になったことふたつめ。
マーリンが
「防御不能の攻撃に加え物理も魔力も通じない」
と言うので、「
よくよく考えてみたら、前回リュドシエルの剣攻撃は普通に効いていました。
改めてマーリンの解説を読み返すと
「こちらの物理攻撃は届かずに正体不明の攻撃が襲ってくる」
と言ってるんですね。
つまり、魔力攻撃は「
…ゼルドリスが借りた「
だったら遠距離から物理攻撃をし続ける方法もあったんじゃないかなあ。「
とゆーか、もしかしてディアンヌがいたら楽勝でしたか? 地面から壁を生やしたり穴を作って大勢で隠れたりを簡単にできるので仲間の吸引も防げたはずですし、ゼルドリスの足元(死角)の地面を操って強烈に物理攻撃できたでしょうから。
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無責任な戦争放棄
メリオダスの耳打ちの内容は、予想通り「ゲルダは生きている」でした。
ゼルドリスは恋人ゲルダの解放をエサにされてメリオダスに従っていたと確定。
そこまではいいんだけど。
そのうえでゼルドリスが
「聖戦?」「そんなものに興味はない!!」
と声高に言い切ったのはビックリでした。
ガッカリです。
戦争はくだらない。そんなことより愛し合うことの方が大切だ。
いかにも戦後日本らしい、個人の幸せを優先すべきとする価値観です。
学校なら褒められる模範解答。
それを否定する気はありません。私だって戦争は嫌だし、個人主義を謳歌させていただいている人間ですから。
けれども、既に起きている戦争の最中に「興味がない」と言って許されるのは、決定権なく戦争に巻き込まれ生活や命を奪われた民衆であって、戦争を主導する側の者が、戦争の最中に、部下の前で言っていいコトなのでしょうか。
もし日本が戦争を始めたとして、物資困窮して国民が一杯死んだ果てに、首相が「戦争なんかどうでもいい。私は恋人と幸せになりたいから」と言ったら、どう思います?
国民一丸となってあなたの幸せに協力しますと言えますか? あるいは、どうぞ仕事は放棄して恋人の下へ走ってくださいと応援できますか? 放棄して戦争に負けてもいいと思えます?(戦争はケンカではないので、負けたら終わりとはならない。)
皆が好き勝手を謳歌できている平時なら「ご勝手にどうぞ」ですが、非常時ならば、ここまで耐えさせておいて なんだそれは! と私なら怒る。
第271話でメリオダスが語ったところによれば、メリオダスがくだらねえと思いながら魔神軍を率いていた頃、ゼルドリスは真剣に「魔神族のために」剣を振るい続けていたそうです。メリオダスが思うに、それは愛する女ゲルダを護るためだったと。
けれどゲルダの一族が謀反という罪を犯した際、ゼルドリスはメリオダスのように「仲間を殺し、裏切って敵軍に就く」ことはせず、恋人を封印する道を選びました。
切ないなと思いつつ、苦しみながらも魔神族を裏切らなかったゼルドリスに好感を抱きました。とても社会的責任感の強い男だと思った。
今まで描かれてきた範囲で見るに、ゼルドリスは下位魔神でも粗末に扱いません。メリオダスやモンスピート、デリエリらは、パンチングマシーンくらいの扱いで大量の下位魔神を殺しているのにです。
(他種族に関しては違うけど、)ゼルドリスは魔神族内部での差別はしない。魔神族社会全体を大切にしているんだなぁと思っていました。
だから、ゼルドリスが聖戦なんて興味がないと、部下たちの前で軽々しく言い切ったのは、とても残念でした。
今まで戦争で戦ったり死んだりした沢山の魔神族たちを、ここにきて、自分の幸せと比べて軽んじたように感じたからです。
いや、ゲルダを救いたいと思うのは悪いことじゃないですよ。幸せになりたいと思うのも。
でも王子かつ将軍の立場で「戦争になんて興味ない」と部下の前で公言するのは、考えなしで愚かだと思います。
ゼルドリスが「聖戦に興味はない」と言ったとき、キューザックがピクッと反応してたのは意味深でした。
ゼルがメリオダスに耳打ちされた際、ペロニアには どうやら内容が聞こえていたらしく、後でキューザックに何かを伝え、キューザックがヤボ用だと言って少しの間姿を消していた展開があったものです。
まあ、恋愛至上の この漫画のことですから、キューザックがゲルダを害したかも…と不安がらせておいて、逆に どこかに保護してたり、あるいは別の誰かが匿っていたりで、ゲルダは無事でしたー、ってことになりそう。(流石にゲルダ死んでたら可哀想ですから…。)
吸血鬼王族のオルロンディがマーリンの使い魔にされてたので、他の吸血鬼王族もマーリンに改造されて配下にされていて、マーリンの指示でゲルダを護っていました…なんてことになれば、ご都合だけど、色々平和的でしょうか。