【感想】『七つの大罪』第261話 迷子の猫
週刊少年マガジン 2018年 18号[2018年4月4日発売] [雑誌]
第261話 迷子の猫
- 引き千切り掴み出されて なお脈打っていた心臓を、エスタロッサは容赦なく握り潰した。
- エスタロッサの指の間からボタボタと滴り落ちる血。
彼に首を掴まれ、胸を貫かれて硬直したモンスピート。
エスタロッサの背に負ぶさるような姿勢で彼の首を絞めながら、唖然とモンスピートの様を見るデリエリ。 - 「…お別れの時間だ」
ゴフッと口から血を吐いて、モンスピートが微笑った。 - 「なん……………」
言葉をなくし、デリエリはイヤイヤと子供のように首を左右に振る。
「バカ!」
やっと出せた小さな罵倒も意味はなく。 - 突き出されたモンスピートの左手から放たれた魔力が、デリエリを引き剥がし一気に空の彼方へと弾き飛ばしていた。
- 「まだ… 聞いちゃいねえ」
遠ざかる男を見ながら少女は唇を震わせる。
「私に伝えることが…あるって…」「お前が… 心に隠してた言葉ってなんだよ…」 - 一方モンスピートは、裸絞めから解放されたたエスタロッサの両頬を、すかさず両手で挟み込んでいた。
「!!!」 - 「すまないデリエリ」「もう… お前を護ることも傍に いてやることもできない」
彼方の少女を、男の瞳は未だ優しい色で捉え続けている。 - 「モンスピーート!!!」
飛ばされていくデリエリの目から振り落ちる涙。 - 「…だから」「言わないよ」
悪魔の形相で力を振り絞った彼の全身から黒い炎が沸き上がった。捕らえたエスタロッサごと、己をも包み込んで。 - ゴアッ
「くっ!!!」
遠ざかっていたデリエリの頬さえ焦がすほどの熱風と獄炎が噴き上がった。 - リオネス王都近くの荒野、<
光の聖痕 >と魔神軍の戦場。
ドン…と、大地から突出した岩柱が空中の魔神数体を打ち砕いた。 - 荒野には無数の魔神やアルビオンの
骸 が転がっている。人間の遺体は見当たらない。 - 空を飛んで戦場を離脱していく魔神たち。
- 「「フウッ」」
同時に一息 を吐 いて、キングとディアンヌが緊張を緩めた。二人とも汗と埃に汚れてはいたが、大きな傷はない。 - 戦場は鎮まっていた。
- ホークママの頭上で、固唾を呑んで状況を見守るエリザベス。
彼女に背を向けて神器 を展開させたゴウセルは未だ空からの襲撃を警戒し、暴龍 モードのホークは、炎を吹いてエリザベスを護ったのだろう、鼻先を焦がしている。 - 空中に浮かんで下界を見下ろすサリエルとタルミエル。
- 「ハウザー聖騎士長 群れの最後が撤退しました!!」
聖騎士の一人の報告を受け、「おっし!!!」と右拳を握ってハウザーは笑顔を見せた。 - 「ですが王都方面に逃亡した魔神も多数… 追撃しますか?」
別の聖騎士が確認する。 - 「ジール……!」
先程から王都の様子を気にし続けていたギーラが、思わずといった様子で弟の名を口にした。 - 未だ十分に王都を目視できる距離だ。王城の周囲に魔神たちが群れ飛び、撃ち放たれた閃光や爆煙が弾けているのが判る。
四方の城壁の門を防衛部隊が守備しているはずだが、空飛ぶ魔神相手にどれほどの意味があるものか。王都に家族を残してきた者は、今すぐにも駆け戻りたい気持ちであるに違いない。 - 「王都は防衛部隊が必ず死守してくれる!! あいつらを信じようぜ」
力の込められたハウザーの言葉に、ギーラは振り向いて「………はい!」と応じた。 - ハウザーは更に、馬を歩かせながら騎士たちに語りかける。
「それに護らなくちゃならねえのは王都の民だけじゃねえ!!」「進軍中 魔神共に襲われている人間がいたら まず救助だ!!」「だが 町や村内での戦闘は避けて 被害を最小限に抑えろ!! ――――いいな!!」 - 「「「はい!!!」」」と声を揃える聖騎士たち。
- 一連の様子を見たギーラが頼もしげに微笑んだ。
◆あれ? ギーラのハウザーへの評価が…? - 「わ~~~ 聖騎士長ぽーい♬」
中腰でハウザーを覗き込んでディアンヌが からかう。
「ぽーい」
隣に浮かぶキングが、ポーズまで彼女を真似てシラッと追随したものだから、ハウザーはパッと顔を上げて声を荒げた。
「茶化すな」
◆少し前まではディアンヌに特別な好意を寄せている姿が描かれていたハウザーでしたが(以前のハウザーなら、こういう場面だとディアンヌにデレデレしていたかも)、もう全くその空気が無くなりましたね。キングとディアンヌが完全に結ばれたからかな。(安堵) - ハウザーは部下たちへの指示を続ける。
「ケガ人がいれば今のうちに手当てを済ませておくんだ!!」 - 「その必要はない 先へ急ぐことを進言する!!」
- 「なんだと…」
ムッとして顔を向けたハウザーは「!!」と息を呑んだ。
「デスピアス…」「あんた… ひどい傷を負ってたはずじゃ…」 - 傷一つなく馬に乗る男の姿があった。開戦間もなく、銅色魔神に叩き潰され血まみれになっていたはずなのに。
- 「リュドシエル様の加護を受けた この体に不浄の者共の攻撃が効くわけがあるまい!!」
得意げに彼は笑う。
「聖騎士長 も加護を授かれば良かったものを! ハハハハハッ!!」 - 周囲では<蒼天の六連星>たち全員が無傷であり、同じようにニヤついていた。彼らだけではない、
祝福の息吹 を受けた聖騎士たちの多くが、戦えることが嬉しくてたまらないと言った様子で昂ぶり笑っている。 - (たしかに… 今の戦闘での彼らの活躍は めざましいものだったけど この違和感は…)
ギーラは眉根を寄せた。 - 「なんだか全員リュドシエルみたくなってる…」
とキングとディアンヌは呆れ顔だ。 - その時、ホークママの頭上から鈴のような声が響いた。
「みんな… その仮初めの力に頼らないで!!」 - 「!! … エリザベス王女様…」
普段は呼び捨てだが、流石に今は敬称を付けてハウザーが呼ぶ。 - 憂い顔の彼女は、躊躇なく三階建て分はあるだろう高さを飛び降りた。
- 「プゴ!?」とホークが驚く。
- 羽こそ広げなかったものの、重力を感じさせない軽さでフワッと降り立つと、デスピアスへ歩み寄った。
「“祝福の息吹 ”は“ペテンの光 ”とも呼ばれる術…」「対象者は高揚感を限界まで引き出され 痛みと恐怖心を失い… 死ぬまで戦い続けるわ」 - ただならぬ状況に気圧されながらも、鼻で笑うデスピアス。
「ハッ!! 愚かしい!! “ペテンの光 ”? なんという無礼!!」「あなたが一体 何を理解していると!?」 - 「ちょ…」「エリザベスに酷い言い方しないで!!」
ディアンヌが歯を剥いて鼻息を荒くした。キングも眉根を寄せる。 - 「たしかに 何もわかってない」
頭上からサリエルが口を挟んだ。
「ですよね~~~?」と得心の笑みを向けたデスピアスを見下ろし、冷たく告げる。
「キミらがだ」 - 「エリザベス様は戦闘の間ずっと魔神たちの精神に語りかけていた…」「“無駄な争いは望まない” “道を空けてほしい”とね …ただ ほとんどの魔神が応じなかっただけの話」
人々の注目を浴びて、どこか気まずそうにエリザベスは頬染めた。 - 「王女様が戦闘中…ずっと?」
驚き ざわめく聖騎士たち。ディアンヌとキングも唖然としている。 - 「うそ…」
汗を垂らして呟いたホークに「本当」とゴウセルが微笑みかけた。
◆魔神軍と<四大天使>とゴウセルにだけ「精神への語りかけ」が聞こえていた。闘級は無関係に、魔神族と女神族にだけ聞こえる精神的ラジオな周波数があるっぽい。これは、魔神族と女神族が近似種族で、彼らに共有された能力があるという意味なのでしょうか。 - 「結局王女は なんの役にも立っては――…」
言い募ろうとしたデスピアスを、びしゃりとサリエルが撥ねつける。
「いい加減 黙りなよ」「最上位魔神二体…チャンドラーとキューザックの絶対的な命令に下位の魔神たちが抗えるわけがない」「それでも数十体の魔神は戦意を失い逃げたようだけど」
◆魔神軍はチャンドラーとキューザックの命令で嫌々 戦っているだけで、本当はみんなエリザベスに従いたい?
ってゆーか、どうしてチャンドラーとキューザックだけを名指ししたんでしょう。今回の指揮官が彼らだと知っている? どうして? また、彼らの上官であり魔神軍の大将の立場であるゼルドリスやメリオダスの名を挙げないのはどうして?
戦意を失い逃げた魔神たちは脱走兵(はぐれ魔神族)になったのかしら。チャンドラーたちを それほど恐れているというなら、のうのうと魔神の陣営へ戻れないですよね。
脱走魔神たちは、今後 他種族への危害を加えず慎ましく隠れ暮らすのでしょうか。それとも別の場所に移動しただけで、普通に人間の魂を食うのでしょうか。 - サリエルの後ろから薄ら笑ってタルミエルが声を張り上げた。
「それから~~~~」「“祝福の息吹 ”には傷を癒やす効果はありません~~」 - 「…!?」「で… では なぜ!?」
目を見開くデスピアス。 - 「そういえば………」
ふと、といった様子でギーラが己の顔を拭った。ハウザーも己の額をちょんと触り、その指先を確かめて「あれ?」と目を瞬かせる。
「俺たちのケガも いつの間に……」「治ってる……?」
先程まで流れていたはずの血が止まったどころか消え失せており、痛みもないではないか。 - ディアンヌはキングと唖然とした顔を見合わせ、キングは少女の頬に触れて、一切の傷が消えているのを確かめた。
- 誇らしげにサリエルは微笑む。
「エリザベス様は戦いの間 キミたちの体を癒やし続けていたんだよ……」「それがなければ もうすでに半分は死んでいたはずだ」
◆戦闘終了した時点で付いていた傷が、エリザベスがホークママから降りてきて喋った間に消えています。彼女は呪文や身構えどころか、手もかざさず・光も発さずに、(会話すらしながら)立っているだけで、戦場中の友軍すべての傷を治し続けることが出来るようです(汗)。チートの加速が凄いですね。 - 己の胸に手を添えて、エリザベスはもの憂げに語った。
「できることならば ここにいる全員に生き残ってほしい…」「誰も傷つけずに済むのなら そうしたい……」
◆大変美しい平和思想です。けれど今までの流れ、彼女がここにいる動機や背景を考えると、噛み合わないように感じられてスッキリしない部分があります。うーん…。 - 「何を」
言いかけたデスピアスを遮って
「それが甘い考えということも わかっているわ」と続ける。
「…けれど 誰かが あなたたちの無事を願っていることだけは忘れないでほしいの」 - その言葉に、ハッとして己の肩の上を見やるデスピアス。彼にしか見えない友人・妖精インビジブルの哀しげな視線に、やっと気づいたように。
デルドレーとアーデンは叱られた子供のように気まずげに視線を逸らす。
ワイーヨは、王都にいる妹 や弟 の顔を思い浮かべた。 - 「では 行きましょう!!」
言うだけ言うと、彼女はパッと笑顔に切り替えて軽やかに身を翻す。 - 「うん!!」
笑顔で頷くディアンヌ。 - 一連の様子をホークママの上から見守っていたホークは、プゴ、と満足げな鼻息を落とした。
「なんだか すっかり頼もしくなっちまって …ちょっと寂しいぜ」「出会った頃のドジなエリザベスちゃんは もう いないんだな…」 - その時、小石につま先を引っ掛けて べちゃっ と地面にダイブするエリザベス。
「エリザベス!?」と驚くディアンヌの声を聞きながら
「あ いた」と汗タラするホークなのだった。 - 「も~~ 危なっかしいな~~~」
心配げなディアンヌが差し出した指先を掴んで立ち上がり、「イタタ」と照れ笑いするエリザベス。 - 「すごいな エリザベスは」
その様子を見降ろして、ホークの傍らからゴウセルが言った。
「<四大天使>最強のマエルが称賛するわけだよね…」 - 「へ?」
キョトンと見上げたホークの視線の先で、ゴウセルはエリザベスを見つめたまま、哀しげに眉を顰めている。
◆ええ…。「最強マエルもエリザベス信奉者でした、すごい」って…。エリザベス上げが留まるところを知りませんね。
それは置いといて、ゴウセルが哀しい顔をしたのは伏線なんでしょうね。術士ゴウセルが仕掛けた「聖戦を止めた方法」と「マエルの死」には関係がある?
マエルから恩寵を譲り受けて、それを使って聖戦を終わらせたのかしら。
恩寵を失ったマエルはエスタロッサに殺されてしまい、恩寵は聖戦終了後に別の誰か(ローザ?)に持ち去られ、3000年後にエスカノールに引き継がれた、みたいな? - その表情が、「ピッ」と電子音が響くと同時に一変した。
「!!!」
パッと顔を上げて空を見上げる。
「巨大な反応が接近してくる!!」 - ホークも見上げて、焦ってピンと耳を立てた。
- 「こ…」
ぎょっとするデスピアス。 - 「この気配は間違いない」
告げたキングの傍らで表情を険しくするディアンヌ。 - 聖騎士たちの頭上から悠然と見るサリエルとタルミエル。
- ドンッ
真っ直ぐに飛んできたそれは、爆発したかの勢いで地面に降り立ち、土煙を もうもうと高く巻き上げた。 - 「<十戒>だーーーー!!!」
降りそそぐ土砂を浴びて馬は怯え、聖騎士たちは悲鳴のような叫びをあげる。 - 「バ… バカ!! 取り乱すな!!」
馬を御してハウザーが指示した。
「気配は一つだ 対象を囲め!!!」「陣形 「赤薔薇 」!!!」 - たちまち馬を走らせた聖騎士たちは、バラの花弁を思わせる陣形で波状に闖入者を取り囲んだ。キングとディアンヌも加わり、中心を警戒する。
- やがて、薄れた土煙の向こうから、ゆっくりと歩み出てくる人影。
- その姿を見てエリザベスは小さく震え、戸惑ったように問いかけた。
「デリエリ…… あなたなの?」
<十戒>「純潔」のデリエリ。普段は恐ろしくも不愛想な彼女が、まるで別人のような……泣く寸前の迷子のような顔で、ふらふらと近付いてきたからだ。 - 次回「闇に歪む者」
聖騎士長ハウザー
もはや誰にも「代理」だなんて言わせない、立派な指揮ぶりです。
今回「襲われている人間の救助を優先、町や村で戦って損害を出すのは避けろ」と、高い倫理観も示していて、ますます素晴らしいなと思いました。
ところで。作戦会議の頃から ずっと気になっていたことが。
掃討部隊の補給って どうなってるの?
補給部隊が随行しているように見えませんし、道中の村や町で補給(という名の略奪)を行うのだろーかと思ってたら、非常に紳士的に通過する予定らしい。(他の人間国からの援軍合流もなし?)
うーん。
まさか、マリえもんの便利な魔法具効果で、<豚の帽子>亭から無尽蔵に食料が湧くとか?
そもそも、ブリタニア北部のリオネスから南部のキャメロットまで「魔神軍と戦い続けながら」進軍するという作戦そのものが、私には無謀に思えます。
直線距離でも640km前後、道なりに行けば840km以上はある。川も森も丘もあるでしょう。甲冑着けて馬で移動するだけでも大変そうですが、道中を化け物の大軍と戦いながらというのは。高確率で疲弊して横死する気がしますし、辿り着いたとしても休息も ろくに出来ずボロボロで、キャメロットの魔神軍と戦うどころではないのでは。
(本命は強襲部隊であり、呪言の玉や空間転移門などの魔法を使えば瞬間で敵拠点に移動できることを踏まえると、戦いながら長距離を移動する意義を感じない。ので、掃討部隊は見せかけの本隊であり・囮なんだなと理解していますが、ならば王都周辺の防衛ラインをウロウロしながら敵を引き付けてるだけでも十分な気がする。)
まあ、どっちにしても掃討部隊が本当にキャメロットまで そのまま進軍する可能性は低く、例によって途中で何か事件が起きて状況変化するんだろうなとは思っていますが…。
(あ、でも妖精と巨人の軍が途中で合流するって予告されてたし、彼らが補給を担当してくれれば、普通にキャメロットまで行けて元気に戦えるのかなー。キャメロットに着いたら、地下からキャメロットの聖騎士軍が湧いて大盛り上がりしたりするのかしら。)
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スカッとブリタニア?
なんと! ホークママの頭上に じっと立って憂い顔で戦場を眺めていたかに見えたエリザベスが、実は戦場の全ての魔神に心の声で停戦を訴えかけ続け、同時に、全ての友軍の傷を光も何も出さずに恒常的に癒し続けていたのだと明かされました。
なんというチートでしょうか。
その威光に驚きどよめく聖騎士やディアンヌやホークたち。
傷の回復はリュドシエルの加護だと思い込んで、彼の加護を否定したエリザベスを嘲ったデスピアスを、サリエルとタルミエルが ビシッ と言い負かします。エリザベス様こそ素晴らしいんだ、と。
この場面、あなたはどんな感想を抱きましたか?
スカッとした? あるいは、モヤッとした?
色々なことを感じましたが。
まずは一つ。
エリザベスが魔神たちの精神に「争いは望まない、道を空けてほしい」と語りかけ続けていた、という部分。
第202話、3000年前の女神エリザベスは、血走っていた魔神の大軍に ほんの数分対峙しただけで、無血撤退させました。
この時、彼女は
「…私は少し話をしただけ」「誰も心の底から こんな争いは望んでいないもの」
と語ったのですが、戦争中に ほんの数分「話をしただけ」で敵軍を無条件・一方的に撤退させるなんて、通常では不可能な芸当です。子供の喧嘩の仲裁じゃあるまいし。何か特殊な手を使ったとでも思わなければ納得し難い異常さ。
続く第204話、エリザベスと対峙して撤退した下位魔神たちは
『オレたち… なぜ逃げたか…わからない』『…あの目見てると…戦うこと… …嫌になる』
と語りました。
エリザベスは「話をした」と言っていたけれど、当の魔神たちは「なぜ逃げたか わからない」「あの目を見ていると戦うことが嫌になる」と言っている。
エリザベスの平和論に「説得されて」撤退したわけではなく、わけの分からないまま「何故か、自分の意思に反して」撤退してしまったと読み取れます。
「女神の紋様の浮かんだエリザベスの目(女神の力を彼女が使う際の象徴)」が強調された絵になっていたこともあって、てっきり、エリザベスは魔神たちに精神干渉した…一種の洗脳を行った…のだと解釈していました。
今回のエピソードは、それを否定する意図のようですね。
洗脳なんてしてないよ、エリザベスは「言葉で」説得したのさ!
洗脳をする悪い女神族はリュドシエルで、エリザベスは清く正しいのさ!
…って言いたいんだなあと。
それでも、エリザベスがホークママの頭上に突っ立ったまま、実は魔神たちの「精神に、直接」呼びかけていたっていうのは、なんだかモゾモゾする設定ではあります(苦笑)。怖くない? 戦争中に敵から直接脳内に語りかけられ続けるってさ。
関係ない話だけど、このエピソードを読んでて、なんとなく二つのことを思い出しました(笑)。
一つは、第二次大戦中に、米軍が投降・降伏を呼びかける日本語のビラを日本各地に撒いたり、日系人に日本語で喋らせた降伏を呼びかける日本向けのラジオ番組を流してたっていう話。
あとはアニメの『マクロス』(笑)。戦争中に女の子の声を流して敵の戦意を削ぐとゆースペースファンタジー。エリザベスちゃんも次はアイドル衣装で歌ってみるといい。デカルチャー。
次に感じたこと。
誰も犠牲にしたくない、だから敵に停戦を呼びかけ続け友軍を癒し続けたというエリザベス。
その部分だけを切り取って読めば、大変美しく素晴らしいです。
しかし。
ここに至るまでの状況、この戦いの背景を含めて読むと、モヤモヤする。
ハイ、元々魔神軍は侵攻してましたね。
でも、今、この場面での戦いは、エリザベスが主導したものです。
彼女がこの戦場にいる理由は「メリオダスの魔神王化を止める=彼との生き別れを阻止する」こと。超私的な動機に、みんなを利用している。
その前提が無視されているのは、いただけない。
エリザベスが犠牲を出さぬよう頑張っていたのは素晴らしいことです。
しかし、サリエルがそれを上から語って称賛させる流れに、なんでなるのか。
私的な都合に皆を利用する形で戦場に出たのに、「戦いを望んでいない、誰も犠牲にしたくない」と真逆のことを言い出して、それで称賛されている。
自分で仕掛けて、自分で否定して、褒められてる。
作者さんにその意図はないのでしょうが、申し訳ないけれど、マッチポンプみたい。モヤモヤします。
もう一つ。
エリザベス賞賛とセットで、リュドシエルと彼の加護を受けたデスピアスらを貶し・落としているのにも、モヤモヤしました。
作者さん的には、彼らを貶して「スカッとする」意図なんでしょうけどね。なろう系小説で言う「ザマァ」要素ってやつ。
「
でも、これナシだと、聖騎士たちは低位魔神とすら ろくに戦えないのも事実なので、一概に否定できないのでは。
純粋な疑問なのですが。
エリザベスは「
じゃあ、なんで聖騎士たちを戦場に出したんですか?
最初から「人間の皆さんは戦力外なんで王都の守備に専念してください」と、戦場から排除しておけばよかったのでは。
「
戦場で魔神に潰される人間たちを庇い・片端から治癒し続ける? それって無意味ではないですか。負担・足手まといです。
「
ろくに戦えず簡単に潰されるのを、エリザベスの治癒で回復させて、また戦わせる? バンの不死身戦法みたいに?
足止めの壁として、倒れては回復して立ち上がりを延々と続けさせるつもりだったの?
それって、リュドシエルが「
エリザベスが何を思って聖騎士たちと共に戦場に出たのか、解りません。
あくまで<大罪>と<四大天使>の力だけが欲しかったのに、聖騎士がオマケで付いて来てしまった、とかいう話なんでしょうか。
魔神たちを説得するより先に、友軍と話し合い・説得すべきだったのでは?
そもそも、魔神軍を心の声で説得しますと、なんで作戦会議では言わなかったの? 戦場で突然 思いついたの?
エリザベスは常に綺麗な平和論を口にする。
そこだけを切り取って見れば素晴らしい。
でも、背景を含めて全体を見ると、なんかおかしい。
3000年前のインデュラ事件の際も、魔神族との和平どころか全種族の平等と救済とゆー壮大な理想にまで話を広げてたけど、その実、同じ拠点にいた友軍(<
メリオダスと同じで、御大層なことを口にする割に、行き当たりばったりに見える。
ものすごーく勝手な、個人の妄想を書いちゃうと。
高い場所に突っ立って人知れず心の声で平和を訴えつつ癒やすなんて、カミサマみたいなチートをぶちかますよりは、第一部の頃にやってたような、みっともなくて愚かな体当たりを見せてほしかったです。
戦場で無謀にも魔神たちに向かい、声に出して「お願い戦いをやめて」と訴えてほしかった。
当然、敵も味方も呆れるでしょう。何を今更? と。それでも懲りずに訴え、傷つけられ、上手くいかずに涙する姿が見たかったです。
そして後悔と反省を口にして欲しかった。メリオダスと別れたくなかったから皆の力を借りて戦おうと思ったけれど、それは間違いだった。皆を犠牲にしていいはずがない。私が間違っていた、ごめんなさい、と泣いてほしかった。
エリザベスがそんなことを言ったら、きっとディアンヌは言うでしょう。そんなことないよ、僕はエリザベスと団長のためなら命だって惜しくない、友達だものと。
そうしたら、ハウザーやギーラには、こんな風に言って欲しかった。俺たちはエリザベス王女とメリオダスの恋のために戦ってるわけじゃねえ。自分の国や家族、大切なものを護るために戦いに来たんだ。俺たちには俺たちの戦う理由があり、あんたや<四大天使>を利用してるんだ。お互い様だ。だから気にすることはないんだぜ。さあ行こう、と。
私は、エリザベスが自分の恋を理由に軍を率いて立ったのは、間違いだと思っています。全く正しいことではありません。
それを認めたうえで、それでも力を貸すというディアンヌらと、自分の理由で戦う聖騎士たち・女神族たち、それぞれの目的と立場を明確化させる、そんな方向に行ってほしかったナー。という勝手な妄想。
エリザベス様は素晴らしい、誰よりも優しく健気で、正しく、そして強大である。称賛せよ、彼女のため戦うのは当然なのだ。…みたいな流れには、して欲しくなかったですね。
二年くらいか前に、作者さんの過去の他誌での長期連載作品の、当時(最終回後)の感想文を、検索していて たまたま見つけ、拝読したことがありました。『七つの大罪』連載開始の何年も前に書かれたものです。
連載の最初の頃は文句なく非常に面白かった。話と設定はよく練られ、主人公を始めとするキャラたちは魅力的だった。ところが、次第に主人公のチート・周囲からの称賛が強くなり、過剰になって、連載末期には鼻について苦痛なほどだった。不快を感じない読者もいるようだから、この主人公称賛要素を受け容れられるか・られないかで、評価が分かれる漫画だろう、と。
これを読んだとき、あれ、『七つの大罪』も似たようなことになってきているな、と感じたのでした。今や、主人公だけでなくヒロインもですけども。
雑誌を超えて追うほどの熱心な大ファンの方々すら、口を揃えて、ばっちょは長期連載するとインフレ過剰になって話が崩れ、読者が離れて打ち切りになると仰っていたのですから、これが作者さんの性癖・作風なんでしょうね。
過ぎるインフレ・チートを我慢して、適度に抑えてくれたら、もっと多くの読者が連載の最後まで楽しく読めるのかもしれないけども。治らなさそう?
最後に思ったこと。
サリエルとタルミエルがエリザベスの味方をして、リュドシエルの加護を過信しているデスピアスを ピシャッ とやり込めた件。
サリエルとタルミエルが好きになった・いい奴だと思った、と思う人が多数派?
…でも私は、ここのサリエルらにも モヤッとしてました。(^^;)
いや、サリエル自体は好きなのです。真の姿のキャラデザインはカッコ可愛いし、強いから。
でもねえ。
だってサリエルとタルミエルは、リュドシエルが聖騎士たちに「
でも止めも苦言もしなかったし、聖騎士たちに忠告したり同情したりもしてなかったでしょう。
それが、エリザベスが批判を始めたら たちまち尻馬に乗って、彼女の味方をしてデスピアスをやり込め、間接的にですがリュドシエルの批判をしている。
なんだこいつら。卑怯だな。
そう思いました。「いい奴」だとは思えなかったです。
(私が、エリザベスを正しいと思っていないからでもあるんでしょうが。)
この場面のサリエルらは、苛めや路上の暴力の際に傍観・野次馬しておいて、場の状況を変えるヒーローが現れた途端、「私もいけないことだと思ってたんだよね」「あいつが悪いと思ってたんだよね」と調子に乗って正義ぶりだすひとみたい。
モヤモヤしてたけど、世の皆さんはみんな「好きになった、いい奴だ」と言ってて、自分はおかしいってことかなーと、ちょっと暗い気持ちになりもしたんですが。
海外のファンフォーラムの中に、私とほぼ同じ感想を書いている人がいて、ホッとしたりしました。
少数派でも、世界のどこかには同じこと思った人がいるのね…と。
ちなみにこの回の感想、私が見た範囲ではですが、海外では
「エリザベスがチート過ぎる、過剰なエリザベス上げがきそうで嫌だ(同意見多数)」
「まだ実際にそうなってないのにうるさい」
って感じの論争になってました(笑)。
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<蒼天の六連星>の明日はどっちだ?
カマセとなって殺されるフラグ ビンビンだった<蒼天の六連星>ですが、今のところ全員健在。
とりあえずは、カマセ死のフラグは折られたようで、ホッとしました。
ただ、インビジブルがデスピアスを庇うとか、傷ついた仲間を見て我に返るとか、そういう、彼らのためのドラマチックなエピソードを期待していたので。
まさか、エリザベスに説教されてフラグ折れる、などという、インスタントと言うか、つまんな…ゲフン、ことになろうとは。(^^;)
死ななかったのはホッとしたけど、少し残念だったかも。
…って、まだまだ分かんないですけどね…。
ドゲッドやデンゼルの、惨めで無意味でカマセな死を、忘れてないデスよ…。
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ディアンヌのマーク
第一部のディアンヌの服の左胸には、花か木を模したようなマークが付いていました。
16年前の巨人族の里や他の巨人たちの服に同じマークは見当たらなかったので、ディアンヌ独自の飾りなのかなと思っていたら、16年後、人間風の服装に変わったマトローナの手甲に同じマークが付いていて、アレッと思わされたものです。
このマーク、巨人族の伝統的な紋様とか、(実はマトローナとディアンヌは親戚で)家紋だったりするのか?
それとも、マトローナが生き別れになったディアンヌを偲んで、あの子の服にはこんなマークが入ってたなーと思って付けてた??
なんてことを考えていたら、マーリンが作ってくれた新衣装の背中一面にも、ででーんと大きく、このマークが入ってるじゃありませんか!(^^;)
え。マーリンさん わざわざ このマークを入れてくれたの?
どういう意図で入れたんでしょうか。
巨人族(ディアンヌの家系?)にとって特別な紋様だと思って入れてくれた?
単に、以前のディアンヌの服に入っていたマークを覚えていて、深く考えず付けてくれただけ?
つーか、結局、このマークって何なんだろー…。