【感想】『七つの大罪』第244話 選ばれし王女
週刊少年マガジン 2017年51号[2017年11月22日発売] [雑誌]
第244話 選ばれし王女
- ブリタニアの荒野。一見して美しい風景の片隅には、さほど古くない人骨が折り重なっている。
- 「“
羅貫 ”!!!」
ドレファスが、突き出した剣から貫通の魔力を撃ち放った。 - 「ゴ…ォァ」
身を庇って かざした左掌はおろか右胸まで貫かれた橙魔神は、しかし倒れず、よろめきながらも右手に渦巻く闇を出現させる。 - 「させるか!!」
橙魔神の背後に待機していたヘンドリクセンが跳びかかり、オレンジ色の背に左手を当てた。
「浄化 」!!! - 眩い光が
迸 る。「パフォッ」と短い悲鳴をあげた橙魔神は、スイッチを切ったように目の光を失って倒れた。 - 「よし!!」とドレファスが言ったのも束の間。
- 「キャアアッ!!!」
響いた悲鳴に、気を休める間もなく二人は顔を向けた。 - 「助けて……!!」
悲鳴をあげる恋人を抱きしめて若い男が震えている。片隅に退避させていた彼らの前に小型の魔物が群れ現れていたのだ。 - 「私の後ろへ…!!」
二人を背に庇って、マーガレット王女が細身の剣 を抜いた。彼女も退避させられていた一人だというのに。 - キィィィイイと甲高い声を上げて襲い掛かってきた魔物たちは、頭でっかちで、シルエットは手足の長い赤ん坊のようにも見えた。手足の指は細く長い三本、丸い頭に開いた大きな口は縦長で、細かな歯が多重に列をなしている。はみ出た舌は太く長い管状だ。あの歯でヤスリのように獲物の肌をこそげ取って血を流させ、舌でストローのように吸うのかもしれない。
- 「やっ」「はあっ」
マーガレットは懸命に剣を振り回したが、全て軽々と避けられていた。どうにか接近を防ぐ役にしか立っていない。それも時間の問題だが。 - 「「
浄化 」」
「“衝破 ”」
そこに響く、男二人の声。
合技 “浄滅衝 ”!!!!
浄化の光と衝撃波が同時に駆け抜け、小魔物の群れは一度に消滅していた。 - 呆然と荒い息を吐くマーガレット。二の腕が裂かれて血が滲んでいたが、痛みを感じる余裕もないようだ。その背後で、涙目で震えている恋人たち。
- 「ふうっ」
ヘンドリクセンは息を吐き、
「危なかった」
彼と剣を交差させたドレファスは、心底の安堵の声を落とした。 - 数分後、ヘンドリクセンはマーガレットに治癒術をかけていた。岩に腰かけた彼女の手首を左手で取って、右手を二の腕の傷にかざす。
「あまり無茶をなさらぬよう」
光が、見る間に傷を塞いでいく。
「…痛みは まだありますか?」 - 「…………平気です」
答えた彼女の声音は硬く、表情は強張らせたまま目線は逸らされている。
「………」
ヘンドリクセンは眉を曇らせた。…が。
「けしからん!!!」
背後から響いたドレファスの怒声にビクッと震えて目を丸くした。 - 「今はブリタニアの そこら中に魔神が溢れかえっているというのに…」「逢引するために
山奥 まで来たなど まったく呆れて物が言えんわ!!」
仁王立ちして物を言いまくっているドレファスに、若いカップルは多少身を縮こまらせながらも「おじさんも逢引に来たんじゃないの?」と薄ら笑いを返す。
「誰とだ!!?」
◆ドレファスは誰と逢引に来てたと思われた?
普通に考えればマーガレットでしょうが、ヘンドリクセンを思い浮かべるもよし、というサービスエピソードなんでしょか(笑)。 - 「怒らない 怒らない」
割り込んだヘンドリクセンが笑顔でドレファスを宥めた。「おのれ…」と唸りながらも矛を収めるドレファス。
◆ヘンドリクセンの奥さん力 - ヘンドリクセンは彼らに尋ねた。
「私たちは ある聖騎士と 彼を誘拐した女魔術士を捜す旅の途中なんだ… 心当たりは ないかな?」
「騎士と… 女魔術士? ……さあ…」
若者は少し考えたものの困った顔をし、娘も口を挟まない。何も知らないようだ。 - 「これに懲りて二度と馬鹿な真似は」「キミたち 気をつけて帰るんだよ」
ドレファスの説教をヘンドリクセンが優しく遮れば、「はい!」と若者は返事した。
「おいヘンディ!!」 - 本当に解っているのやら。腕を組んで くっつき合いながら キャッキャッ とはしゃいで岩山を降りて行くカップルを、マーガレットは切ない思いで見送った。
ギルサンダーと あんな風に過ごしたことはない。意図なく触れ合えたのさえ、王都転覆の陰謀に巻き込まれた10年以上前の、ほんの幼い頃だけだった。以降の10年間は互いに監視され近づくことすら許されず、息を殺して微かな気配だけを求めあう日々。陰謀から解放され互いの想いを確かめ合ったものの、数日で彼は王都を去り、戻ってきたかと思えば死の戦場となって、挙句、目の前でビビアンに連れさらわれてしまった。 - マーガレットの目に涙が滲む。それが溢れる前に人々のいる方に背を向けた。
泣き顔は見せない。そうして耐えることを10年間続けてきたのだ。泣いて崩れれば、ギルや、父や妹たちや、周囲の人々を悲しませる。そして彼らにビビアンらが何をするのかが恐ろしかったから。微笑んで耐え続けた。
だから、このくらいは何でもない。けれど……。 - 『美しいな…』『お前の――…』
微かに誰かが囁いた。 - 「ギル…?」
マーガレットは勢いよく振り向く。 - 「マーガレット様……?」
「どうされましたか?」
そこにあったのは、不思議そうに覗き込んでいる中年男の顔ふたつ。
「…………」 - しばし言葉を失ってから、
「今………」と言いかけ、「――いえ 気のせい」とマーガレットは言い直した。
「風のざわめきが囁き声に聞こえたのね…………」
荒野を風が吹き渡っていく。 - それぞれが馬に乗り、旅は再開された。
マーガレットの馬を中央に挟み、先頭をドレファス、後尾をヘンドリクセンが務めている。 - やがて道は別れ、右は上り、左は下りの二股になった。
「道が二手に分かれてるよ どうする?」
ヘンドリクセンの問いにドレファスが答える。
「右手には たしか村があったはず」「マーガレット様 今晩は そこで宿をとりましょう」 - ところがだ。
マーガレットは無言で馬を歩かせた。下り…左の道へだ。 - 「…っ」
護衛たちを一瞥すらしない横顔は反抗的に見え、ヘンドリクセンは哀しげに眉を曇らせる。 - 「マーガレット様 …あの…… 右…」
ドレファスは呆気に取られていたが、大声で呼び止めるようなことはせず後を追った。
◆この場面の騎乗マーガレットを見て、『北斗の拳』でラオウが乗ってた黒王号を思い出す私であった。
この馬の足跡も象のそれくらいありそうです。 - 左の道を行けば近い範囲に村はない。
「見てください!! 丸々と太った八つ裂きウサギですよ!!」「ハッ ハッ ハッ」
野営の火を囲むマーガレットとヘンドリクセンのもとへ、狩ったばかりの獲物を得意げに掲げてドレファスは戻ってきた。 - だが、二人は こちらに構う様子がない。
「あなたが腹を立てるのは わかります…」
ヘンドリクセンの暗い声が聞こえて、ドレファスは目を丸くした。 - 「あなたとギルを10年もの間 苦しめ ビビアンを増長させた張本人と共に旅など…」「正直 耐えがたい苦痛でしかないでしょうね」
- マーガレットは不機嫌そうに目を伏せた。
「そうね… どうしようもないほど腹が立ってるわ…」 - 慌ててドレファスは口を挟む。
「お待ちください!! 責任というならば この私にこそ――」
◆ドレファスさんの むやみにヘンディを庇う癖、治りませんね…。彼にとってヘンディは永遠に ちっちゃな子供なのかなあ。
いい大人ですし、ヘンドリクセンとドレファスの罪咎と責任は、各自が負うべきものだと思うけどなあ、親友でも。
以前も書きましたが、ドレ&ヘンの親友コンビは、キング&ヘルブラムの親友コンビと、本当に対照的に描かれているなと思います。ドレ&ヘンは「親友には罪を負わせず、自分が身代わりになることを望む」で、キン&ヘルは「親友でも罪は負わせ、共に苦しむ」。 - 「ただ護られて ただ祈ることしかできない無力な自分に」
マーガレットは吐き捨てた。
「…こうしてる間も ギルはビビアンに屈辱を与えられているというのにね」 - 己一人、苦しみに耐えることは容易い。だが、耐え続けるだけでは大切なひとを救えないのだ。耐える以外に戦う術を持たぬ己に、どれほど忸怩としてきたことか。
- 「あなたたちには とても感謝しています…」「私一人では とても旅などできないもの」
顔を上げて、マーガレットは男たちに思いを告げた。 - 魔神族の脅威去らぬ今、父王は重要な戦力である聖騎士たちをギルサンダー捜索に割くことを許可しなかった。しびれを切らして一人で無謀な捜索に出ようとしたマーガレットに、ただ二人、同行を申し出てくれたのが彼らだったのだ。罪を犯して正式な聖騎士の立場を失っているゆえに、捜索に出ても王の意向に逆らうことにはならないと。
- 少しだけ口元を強張らせた、けれど美しい王女の微笑みを受けて、ヘンドリクセンは打たれたように口をつぐむ。
二人を見て、ドレファスは満足げに微笑んでいた。
◆なんでドレファスは、いまいち他人事めいた態度なんだろう。 - 「ところでドレファス 村へはどうして向かわなかったの?」
マーガレットは言った。
「へ? で…ですから私は村へ行こうと」
「?」「左へ行こうと囁いたでしょう?」 - 「「…………」」
戸惑って顔を見合わせる中年男たち。 - その時、「…はっ」と息を呑んでマーガレットが顔色を変えた。
梢に風でも吹いたのか、木々が どこか不穏に ざわめいたせいだろうか。
「どうされました?」
スッと立ち上がった彼女に、ドレファスが声を掛ける。
「…すぐに戻ります」
そのまま、焚火から離れて木々の中へ歩き出した。
「あまり遠くへ行かれませんように!」
「ええ…」 - マーガレットの姿が見えなくなると、ヘンドリクセンは口を開いた。
「…………なあドレファス さっき助けたあの二人…」
「ああ!! まったく最近の若い連中ときたら」
「そうじゃなくて」「マーガレット様は きっと寂しかったんじゃないかな…」 - ドレファスは虚を突かれた顔をする。
- 「他人からすれば他愛のないことでも …呆れることでも ギルと二人でやってみたかったと思う」「…私たちは そんな二人の大切な時間を奪ってしまったんだ」「…だからこそ なんとしても償いたいよ…」
俯いて、言葉を選びながら話した年下の親友に、ドレファスは微笑みを向けた。
「…ああ」「必ず ギルを救おう………… それに兄貴の言葉も伝えてやらんとな?」
魔神の邪術によって一時的にこの世に蘇った兄・ザラトラスが再びあの世へ還る時、息子・ギルサンダーへと伝言を遺したのだ。『いつも… 見守っている……』と。 - 「うん」
ヘンドリクセンも微笑む。 - 「しっかし お前も案外 女心が わかるようになったんじゃないか?」
バシン、とドレファスは親友の背を強く叩いた。天然ボケを通り越した、独特の感性とズレた発言を欲しいままにしてきた親友だ。特に異性関係で その才能は遺憾なく発揮され、おかげで恋人ができた試しがなかったものだが。
「茶化すなよ! …ただ齢をとっただけさ」
流石の体幹で体勢は崩さなかったものの、困り笑顔で「あと痛い」と付け加える。 - 「…………それにしても少し遅いな…」
ヘンドリクセンは、マーガレットの踏み入った茂みの方に目をやった。
「オシッコかな?」 - 「…前言撤回だ」
デリカシーの欠片もない物言いに、呆れ顔になるドレファスである。
◆「う〇こかな?」と言わなかっただけマシかと…(苦笑)。 - その頃。
マーガレットは森を通り抜け、木々のまばらな丘陵地帯に出ていた。
丘の一つは、まるで椀を伏せたような 土まんじゅう型をしており、中心に一筋、深い縦の割れ目 がある。女神の玉門を模したようでもある造形は、天然の岩に亀裂が走っただけの偶然か。あるいは、古 の塚丘なのかもしれない。 - 何かに引かれたように真っ直ぐに歩いてきたマーガレットは、割れ目の前で足を止めた。
「…あなたなの…?」「ギル…………」
無理すれば一人くらいなら入れそうな暗闇の遥か奥で、何かが呼んでいる。 - 「マーガレット様ーーーー!!」
「マーガレット様 返事をしてください!!」
数分後。流石に遅すぎると判断して、男たちは王女を捜していた。 - 「一体どこへ行かれたのだ…! まさか… どこかでケガでも?」
「………ドレファス」
「なんだ?」
「…どうにも嫌な予感がする…」「マーガレット様の さっきの言葉が気になり始めたよ」 - そう、彼女は幾度か不可解なことを口にしたではないか。
『風のざわめきが囁き声に聞こえたのね…………』
『左へ行こうと囁いたでしょう?』 - 「…まるで十二年前 ダナフォールの大穴で我々が体験した時と同じような―――…」
国王バルトラの命で、ダナフォール王国の跡地に開いた巨大な大穴の底へ二人で調査に向かった、あの日。暗闇の中から声とも溜息ともつかぬ囁きが聞こえたのだ。
『ドレファス! 聞こえたか?』
『ああ… 呻き声にも風の音にも聞こえたが』
声の聞こえたと思しき方向へ誘われ、魔神フラウドリンに遭遇。憑依され、操られることになったのである。
◆「十ニ年前」とありますが、10年前の間違いでは。 - ゾッとして心臓を轟かせた二人は、焦る気持ちで捜索を続けた。森を抜け、正面に椀を伏せたような形の丘が見えてくる。
- 「頼む…! 無事でいてくれ……」
「ドレファス あそこに!!」
丘の割れ目を覗いたヘンドリクセンが奥を指して叫んだ。歩いていくマーガレットの後ろ姿が小さく見える。 - 「なぜ こんな岩の中へ…?」
「さあ わからない… とにかく後を追ってみるんだ!!」
二人も後を追い、割れ目に身を滑りこませた。 - 女性なら普通に歩ける幅でも、頑健な男が通るには いささか狭い。
「ハァ ハァ …フゥ」
やっとの思いで通り抜けたドレファスの前で、先に抜けたヘンドリクセンが驚きに目を見開いていた。
「こ… これは!!」「ドルイドの祭壇だ…!!!」「私が知っているものとは 別のものだけど…」 - それもまた、岩山に見えた。緩く尖った山頂部分に原始的な造作で目鼻と髭、翼が彫り込まれており、古代の祭器に刻まれたごとき歪な神の姿を象っている。
山の背後は大きく開け、雲一つない天空に大きな満月が浮かんで、岩山を明るく照らしていた。……割れ目を潜った時点で日暮れには程遠かったうえ雲も出ていたというのに? - 麓まで歩み寄ったマーガレットは、山頂の顔を見上げて語りかけていた。
「ギルじゃない…」「あなたは……誰?」「どうして私を呼んだの…?」 - ハッとするドレファスとヘンドリクセン。岩山から不可思議な声が返ったからである。
『マーガレット… 気高く美しく尊き魂の持ち主』『私は お前のような者を待っていた… その祈りを聞き 願いを叶えるため』 - 「こ… この声は!?」
身を竦ませたヘンドリクセンの後ろで
「やはり……!!」とドレファスが恐怖を滲ませる。 - 「私の願い……?」
マーガレットに恐れは見えなかった。ただ、困惑したように微かに眉を曇らせただけである。 - 『それには お前の献身が不可欠だ』
声は返した。 - 「「いけない!! その言葉に耳を貸しては――――」」
声を揃えてドレファスとヘンドリクセンは叫ぶ。 - 「ギルをビビアンから取り戻せるのならば」「私は どんなことにも耐えてみせるわ」
だが、マーガレットの口は迷いなく応えを紡ぎ出していた。 - たちまち彼女めがけて風が吹きおろし、ブワッと髪やマントが広がりなびく。
- 「まずい!!」
叫んで右手を伸ばし、ヘンドリクセンは彼女の背に触れようとした。
「浄化 」!!!
が、眩い光に弾かれる。
「ぐあっ」
「ヘンドリクセン!!」
数十cmほど押されるように地を滑った親友をドレファスが呼んだ。 - マーガレットのマントが脱げて、風に舞い上がる。
- 「「
浄化 」?」「ああ… かつて我らがドルイドに教えた秘術だったか」
強風に風を波打たせるマーガレットの口調は、今までとは違っていた。
「おお… 魔力がみなぎっていく」「我が魔力と これほど親和性があるとは 最高の器 だぞ…!!」
悠然と微笑む姿自体は変わってはいない。だが、全身を恐るべき魔力が包み、可視の光となって ゆらゆら立ち昇っているではないか。 - 「途方もない この魔力!! どこかで…」「いや… 俺の記憶ではない…… フラウドリンの記憶にあった…」
知らず、恐怖がドレファスの歯をカチカチと鳴らす。
◆ドレファスさん、フラウドリンの記憶が残ってるんですか!? それヤバくないですか。自分とフラウドリンの記憶を区別していようとも、多少なりとも混淆・影響されちゃうでしょう。となると、どうしても彼の価値観は魔神族寄りになってしまいそうな。
それは置いといても、もしかしなくても現・人間族の中では最も魔神族通ってことになるのでは? 魔界の様子も弱点すらも、全てお見通しってことになっちゃいそうです。…流石にそれだとマズいから「記憶は一部だけ」って扱いになるのかな。 - その時、ヘンドリクセンが勢いよく
跪 いたので、ドレファスは驚いた。
「!? …おい何を!?」
構わず、彼は光に包まれたマーガレットを見上げて問いかける。
「この光に満ちた魔力… あなたは!?」 - バサッ、と彼女の背に純白の翼が広がった。
「…我は女神族」「<四大天使>リュドシエル」
二対四枚の翼は背から直接は生えておらず、少し離れた空間に浮いている。本物ではなく魔力を具現化させたものなのだろう。そうであっても、背に四枚の翼を広げて両瞳に女神の紋様 を浮かび上がらせた彼女は、その微笑みの高慢ささえ含めて、あまりにも神々しく、美しかった。 - 「我に従え 人間……」
見上げるヘンドリクセンの顔に恍惚たる歓喜の笑みが浮かぶ。
ドレファスの顔は不信と恐れに歪んでいた。
「我が<光の聖痕 >の一員となりて」「共に魔神族を滅ぼそうぞ!!」 - 次回「聖者の行進」
次号休載。
バンが煉獄へ旅立って、これからどうなるのかとワクワクが高まったところで、視点が女神族側にシフトしました。拍子抜けしたけど、メリオダスの感情奪還には女神族の本格参戦・三つ巴の混戦展開が欠かせないってことなのかな?
このお話、時間軸的には、コランドでエスカノールとメリオダスが戦っていた辺りなんでしょうか。
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今更ですが、ホークと煉獄の話
ホークの目は煉獄に通じていて、マーリンは理由に心当たりがあるという。
ホークには前世があるので後天的な理由かなと思ってましたが、先天的な可能性もあるんですかね?
ファンブックに、ホークの出身地は「ホークママの中」だと書いてあります。
ホークママは常に移動しているからホークを産んだ土地を特定できない、だから母親の中という表現にした、というだけの意味かもですけど、ホークママの胎内が煉獄かそれに近い異界に通じていて、ホークはそこから出てきた、ということもあるのかな? その息子(端末)だからホークは煉獄の回廊なのかな? と。
「混沌の母」なる動物が幽鬼アナオンや吸血鬼族を生み出したという。
混沌の母とはホークママのことではないかとは、ファンブックで初めて名前が出た当初から推測していました。
ホークが煉獄への回廊ならば、ホークママも異界への回廊だという可能性があるかも?
煉獄には怪物が跋扈しているとマーリンが説明していました。ホークママが煉獄かそれに近い異界に通じていて、そこから怪物たちがこの世にまろび出てくるってコトなのかも…。最終的に、バンはホークママの口とか鼻から出て帰還するのかも…。(それ以外の場所は ご勘弁 苦笑)
でも、そう考えちゃうと、ホークママの胎内に魔神王がいるみたいなイメージになっちゃって微妙ですね(苦笑)。ホークの目だけでなくホークママの目からも覗き見し放題だったのかしらって思っちゃうし。
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聖女マーガレット
マーガレットがドレファス&ヘンドリクセンと共にギル捜索に旅立った第222話の感想に、以下のように書きました。
>マーガレットと彼らの間には因縁があります。
>彼らが魔神に操られていた・実際に手を下していたのはビビアンだったという事情があるとはいえ、マーガレットとギルサンダーを10年間苦しめたのは、他ならぬ彼らだからです。思春期の10年を棒に振らされたというのは、とても大きいと思う。
>そんな彼らが、マーガレットと共にギルを捜しに行く。
>
>マーガレットの心の中は、きっと穏やかではないのだと思う。彼女は我慢強くて分別があるので、そうそう面には出さないのでしょうが。
>けど、ドレファスとヘンドリクセンにとっては、これはチャンスなんでしょうね。
>自身の罪を償い・禊ぎとするための。
>かつて自分たちが苦しめたマーガレットとギルサンダーを救うことによって、自分自身(の、罪悪感と名誉)を救うことになるのでしょう。
>
>彼らがこの旅で何を得て、どんな道を見つけるのか。
>結末を楽しみにしたいと思います。
ところがです。
特に償いなどしていない段階で、ヘンドリクセンの方から
「あなたは私を憎んでいるんでしょう、だから態度が悪いんでしょう」と言い出し、マーガレットが
「憎いのは無力な自分です」「捜索に付き合ってくれたから、あなたたちには感謝しています」と返答。
これで償い完了らしいです。(^^;)
えええええええええ~!? 超インスタント。
つーかヘンドリクセンさん、自分が苦しめた17歳も年下の女性に、「あなたの態度が悪いのは私を憎んでるからでしょう」などと自分の感情優先で絡むなよ…。子供かい。どんだけ甘えん坊さんなのかしら。(;^ω^)
それに対し、マーガレットの方が「あなたを憎んでいないから心配しなくてもいいですよ(精一杯の優しい微笑)」と、反対に気遣ってあげちゃう始末。
(少し歪んだ口元に、マーガレットの大きな優しさと辛さが うっすら見える気がする)
ヘンディくん(39歳…でも作中で誕生日を迎えてるはずですから40歳?)は、つくづく スーパー末っ子ポジションというか、総愛され役というか。これまでもジェンナ、ドレファス、メリオダスと年長者たちに(私から見て、過保護ぎみに)庇われてきましたが、とうとう年下で被害者のマーガレットにさえ甘やかされることと相成りました。
個人的には、ドレ&ヘンにはもう少しちゃんと、ビターな償い(精神的な意味でです。ここまで生きのびたんだから、護って死ねばOKみたいなのは勘弁)を経験してほしかったです。
ヘンドリクセンは子供みたいで、ドレファスは他人事みたい。そしてマーガレットは「絵本の女の子みたいに都合よく優しい」。
サブキャラで複雑な展開はしないというコトかもしれませんが、少し残念でした。
…と思いつつ読み進めていたら、マーガレットにリュドシエルが憑依する展開に。
あっ、並外れて心が美しかったからこそ女神族の依代に選ばれた、って意味で「簡単に許す」エピソードだったのかな!? と一瞬思ったのですが。
よくよく考えてみたら、リュドシエル自体は「人を憎まない、美しい心の持ち主」ってわけでもなかったですね。(^^;)
とはいえ。
ドレ&ヘンは簡単に許しちゃうマーガレットも、ビビアンだけは許していないはずです。なにせ「魔女ビビアンの討伐」と自ら口にしていますから。
リュドシエル曰く、マーガレットは器として彼の魔力との親和性が非常に高いと。「気高く美しく尊き魂の持ち主」だからこそ選んだし、とても遠くにいた時点から呼び寄せることが出来たほど、何かの波長が合っているらしい。
もしかしたら、リュドシエルとマーガレットには似た部分があるのかも?
リュドシエルは「魔神族 絶対 滅ぼすマン」で、現時点、作中では「悪人・敵」の扱いになっています。しかしネロバスタは彼に心酔し、彼は聖戦の勝利のため友も家族も捨てさった、だから報われるべきだと述べていました。彼が魔神族を これほど憎悪するのには、個人的な「憎む理由」があるのではないか、と想像したくなります。
聖女のように優しいマーガレットでもビビアンだけは許せない。
同じように、魔神族を憎悪するリュドシエルも、それ以外の面では愛や優しさを持っているのかもしれない。
マーガレットと波長が合うのなら、実はすごく思いやり深い面もあるのかも(でなければ、ネロバスタのような心酔者は現れないのでは)、と想像したりしました。
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ドルイドの祭壇
ドルイドの祭壇のデザインが素敵でした!
古代の祭具っぽいケレン味があって、スケールがどデカい。
また、この祭壇のある場所が一種の「異界」であるらしい点も面白かったです。
岩山の割れ目を通る前は昼だったのに、通り抜けると月夜で、それまで全く見当たらなかった、顔の刻まれた岩山(祭壇)がそびえている。明らかに「普通とは違う場所」です。
祭壇のある異界へは、岩に開いた裂け目…暗く細い道を進まねばなりません。個人的には、これに すごく気を惹かれました。あ~、これこれ、って感じ。
神話・民話好きなら お馴染み。「岩山の割れ目、または開閉する岩山・岩門、または二つの山の狭間」の奥に異界があるモチーフは、「橋・川を渡って異界(あの世)へ至る」のと同じくらいの鉄板、伝統的な お約束の一つですから。
たとえば、ギリシア神話でアルゴー船が潜り抜けた打ち合い続ける岩門「
誰もが知ってる、「開けゴマ」でアリババが開いたり閉じたりした洞窟。
『アラジンと魔法のランプ』も、原典(ガラン版)を読みますと、「二つに裂けた岩山の間」の「等分の幅の道」を抜けた先に、引き上げ蓋に隠された秘密の地下空間があり、奥には宝石の実のなる果樹園など不思議な世界があって、その最奥の犬小屋の中に魔法のランプがあったと語られています。
二つの山の狭間(あるいは、岩山が裂けて現れる谷道や洞窟)は女性器を暗示し、神話伝承では「冥界(あの世・異界)の入口」を示す符牒であると言われています。「母の胎内=魂の還るところ」という観念からです。そして、母胎の「生命を生み出す」という世界最大の神秘と奇跡への崇拝が「そこに宝がある」という形で表れていると考えられます。
作者さんは神話伝承の類を本当に よく読んでおられるのだな~と、改めて思いました。
そういうのは置いといても、単純に、不思議でいわくありげなカンジが とっても よかったです。
あと、イギリスで塚丘と言えば妖精だけど、この漫画では女神なんだなーと思いました。
まあ、アイルランドの神話では、古代の戦いに負けた女神ダーナの神族は縮んで地下に身を隠して妖精(美しいやつ)になったとも言われているけれど。
なお、女神ダーナの一族に駆逐された、魔神バロール率いるフォモール族(人喰いの異形種族)も、敗北後は縮んで海の向こうなどに身を隠して妖精(魔物)になったとされています。
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マーガレットが女神族に憑依されました。
女神族を厚く信仰するドルイド族の出身であるヘンドリクセンは、歓喜に顔を輝かせます。
しかしドレファスは恐れと嫌悪に顔を歪めている。先日まで彼に憑依していた魔神フラウドリンの記憶に引きずられて、女神族を悪しきモノと感じているようです。
現時点、女神族は邪悪っぽく描かれているため、読者の多くはドレファスに感情移入し、ヘンドリクセンに危機感を覚えるのかもしれません。
しかし、果たしてどうなのでしょうか?
注意しておきたいのは、女神族が悪だとしても、魔神族が善ということにはならない、という点です。