【感想】『盗賊と聖少女』第Ⅰ話 700年の孤独
少年マガジンエッジ 2017年2月号 [2017年1月17日発売] [雑誌]
第Ⅰ話 700年の孤独
新年から新しく連載開始した、公式スピンオフ ストーリー漫画『七つの大罪 セブンデイズ ~盗賊と聖少女~』の感想です。
この漫画は、2014年が初出の外伝小説『七つの大罪 セブンデイズ』(著/岩佐まもる)のコミカライズ。漫画担当は小菊路よう。
これまでの『七つの~』のスピンオフ漫画は、どれもパラレル設定のギャグもので、本編には関わりませんでした。
本作が、本編に真面目に接続する初の公式外伝漫画ということになります。
そうか~。
このコミカライズが始まるから、昨年秋に小説版を判型を変えて新しく発行し直してたんですね。
完結済み小説のコミカライズですから、展開や内容は確定しています。
なので感想を書くつもりはなかったのですけども。
一話目を読んだら、絵は綺麗だし、小説版や原作漫画にない描写もあるし、ドラマチックに盛り上げられているしで、心揺さぶられるじゃないですか!
なので、突発的に、萌えを吠えるだけの感想をば。
一話目は、まだエレインがバンと出逢う前で、代わりに、700年前のキングやヘルブラムとのやり取りがたっぷりあります。
いや~、もう、妖精トリオが むっちゃ可愛かったです!
(小説旧版のレビューにも同じようなこと書いたけど、)バンエレカップル好きさんだけでなく、キングを始めとした妖精族好きさんも、ぜひ読むべきですね!
人間から貰った笛を自慢したくてたまらないヘルブラムと、仕方なく話に乗ってあげるエレイン。(かわいい。)
人間の落とした笛を持ち帰ったのをエレインに見咎められて、誤魔化したつもりで全然 誤魔化せてないハーレクイン。(かわいい。)
突っかかって説教するエレインを意に介さない口八丁のヘルブラム、言い返せなくなって子供っぽく むくれてしまうエレイン。二人のケンカ(?)に ハーレクインは おろおろ。(かわいい。)
ハーレクインは大切な人たちには仲良くしてほしいんですね。
コケモモの思い出。
ファンブック『解体罪書』には、エレインの好きな食べ物は「バンと食べたコケモモ」だと書いてあります。
けど、それ以前に兄と楽しくコケモモを食べた思い出もあったんですね。
大切な人とコケモモを食べた、その思い出が、兄とのものから恋人とのものへと上書き更新されることになるんだなあ。
まだ小説版がなかった頃は、死者の都やバン外伝での印象から、エレインはしっかり者で、キツめの性格で、兄より精神的に上位なのかと思っていました。(気の強めなドラミちゃん、みたいな。)
なので小説版を読んで、実はエレインは、ややもすれば依存に近いレベルで兄が大好きで頼っていたのだと判って、そうだったのかと驚いた記憶があります。
エレインにとってハーレクインは、兄で親でたった一人の親友で絶対的なヒーローだった。
この漫画版を読むと、それが更に感じ易いですね。
ちょっと兄が留守にしたり姿が見えなくなっただけで不安になって「嫌だなァ…… 変なことが起きないといいけど……」とおろおろ探し回る。(他の子と遊ぶなんて、考えることすらしません。)
常に「兄さんがいなくなったらどうしよう、一人になったらどうしよう」と考えてる感じ。
他の妖精のことは、さほど視界に入らず。ゲラードもいるんだけど、エレインの関心の外なので、見事にモブ化しています。
そして、兄に優しくいたわられて、ほっと安心して寄り添う。
兄の後ろをついて回る ひよこみたいだったエレイン。
とはいえ、決して物怖じする性格ではありません。
勝気な面もあって、兄やヘルブラムには強気でガンガン説教もする。
けれどヘルブラムは子供をあしらうみたいに接してますし、ハーレクインは、説教されるがままで しどろもどろはするものの、やはり、彼女を幼い存在と見て接しているのは明らかです。
ハーレクインは、決してエレインには言い返しません。キツい態度で接することもありません。大事に大事にしてたんだなあと、改めて思いました。
ハーレクインやヘルブラムにとって、エレインは可愛い小さな女の子だったんですね。
ハーレクインが魔力を使うとき、指先を細やかに使ってる描写がされてたのには萌えました。
座ったまま、神樹の洞に妖精界の森(人間界には存在しない巨大キノコ生えてる)や妖精王の森(鹿などの普通の動物がいる)の色んな場所の映像を映しています。
なお、映像を映し出すだけでなく、音声も拾える模様。
設定上できるはずと思ってたけど、今まで 公式で そう描かれているのを見たことなかったので、やっぱりできるんだなーと判って嬉しい。
ところで。
ハーレクインはヘルブラムの事件が起きる以前から「人間を信用しちゃいけない」と唱えていたと、原作漫画でも語られていたわけですけども。
この漫画で、それがとても強調されていたので、ちょっと気になったりしました。
当時人間嫌いだったエレインでさえ少し引いたほど強く、人間への嫌悪を語っていた700年前のハーレクイン。
これはどういうことなんでしょうか。
ゲラードから3000年前の裏切りを教えられていたとかではなく、「彼自身の体験」として人間を嫌悪する理由があったんでしょうか。
考えてみれば、ハーレクインは侵入・侵略を狙う人間たちと直に相対し、戦い続けていたんですから、実は妖精族の中で最も人間に接していたはずで、そう思うだけのことがあったとしてもおかしくはないんですよね。
で。
ここでハーレクインが強調している嫌悪ポイントは「同族同士で!」殺し合い・騙し合っている種族だから分かり合えない、と。
やっぱ、そこがハーレクイン的には重要なのか…。
彼は一族を何より大切にしているから。一族を大切にしない者とは分かり合えないと思っている。
(なので、同族と争ってるうえ、その理由をはぐらかして説明しないメリオダスを理解できず、ケンカしている。と、私は思っています。)
対して、ヘルブラムは非常に性善説的な捉え方で人間に接していました。
人間に邪悪な面があることを認めながらも、それが全てではない、色んな人がいるから実際に接してみればいいと。
…結果、最悪の結末になったわけですが。
ヘルブラムがいかにして騙され、戦う力があるのに どうして捕らえられてしまったのかが、この漫画で初めて描かれていて、興味深かったです。
- 同じ行商人に何度も親切にされ、すっかり気を許したところで襲われた。
- アルドリッチと戦おうとしたが、行商人に後ろから頭を殴られ気絶した。
- 妖精たちが入れられた檻には魔力が込められていたため逃げられなかった。
なるほどー。
あと、ヘルブラムがあの冑をどうしてハーレクインに贈ろうとしたかも語られていました。
この冑は王様っぽいのかしら?(笑)
「少しの間だけ」と言って、兄が飛び出して行ってから700年。
不安屋でいつも兄の後ろをついて回っていた少女の心は すっかり凍りきってしまい、侵入してくる人間を眉一つ動かさず殺して「冷酷無比の怪物」と人間たちに恐れられる存在になっていました。
で。
そこにバンがやって来て心を溶かし、美しく花開かせるというわけですね!
次回、ついにバンとエレインが出逢う。
ジバゴやゲラードのことなど、原作小説が出た頃は未だ不確定だった部分を補完して、より完全な「セブンデイズ」としてまとめ直してくれるんだろーなあと思うと、すごく楽しみです♡
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とても楽しく読んだのですが、一つだけ、すごく気になったところがあったので、メモしておきます。
妖精王の森の中心にあるのは「妖精王の大樹」です。
神樹は妖精界に生えている樹ですから、別物です。
漫画全体を読むと、ちゃんと妖精界と妖精王の森を別の場所と認識して描いているのに、何故かここだけ間違っている…。
単行本になるとき修正してあったらいいなあ。
そーいや、カラー扉絵に描かれていたヘルブラムとゲラードの配色が原作仕様ではなかったことも、少し気になりました。
ヘルブラムがアニメ版用の配色になってたので、ゲラードも、あれがアニメ版用の色指定なのかな?