【感想】『七つの大罪』第164話 譲らぬ者共
週刊少年マガジン 2016年14号[2016年3月2日発売] [雑誌]
第164話 譲らぬ者共
- 「勝負あった」
大岩に立つドロールが判じた。面布の下からじっと円舞台 を視上げ、勝者の名を読み取る。
「名は………エリザベス …エレイン」
◆なんですと!?
ドロールは闘級だけでなく、名前などの情報まで見通せるんですか!
きっとメアドやケー番も丸わかりですね。
…いや真面目に。仲間にも言ってない秘密とか、虎の子 の底力とか、弱点まで見通されちゃったら面倒そう。
魔神は心臓が沢山あるらしいけど、その位置も視えるのかな。 - 「はいはーーい」
気安い調子で応じたグロキシニアは、手代わりに霊槍 を振って指示を飛ばした。
「タイズーくん」「コール! コール!!」
ビクッと震えた進行役は、慌てて大声を張り上げる。
「タッグマッチ 最初の勝者は」「エリザベス&エレイン組 !!」 - 試合終了のコールは、
円舞台 上のエリザベスらにも届いていた。 - ジグモに支えられて どうにか半身を起こしたトーラが話しかけてくる。
「エリザベス…王女 我は…マラキアの民として貴方に借りを作るわけには… ぐっ」
◆あれ。トーラさん、まだ痛みがあるみたいです。
エリザベスの治癒術は、どんな傷でも完璧に治してしまえるってわけじゃないんですね。当たり前ですが、なにがしか限界やリスクがあるんでしょう。 - エリザベスは優しく微笑んだ。
「話は また後で 今はゆっくり体を休めて?」 - 「……」笑顔を前に口をつぐむトーラ。
「王女様 の言う通り まずは…」
すっかり彼女に魅了されたジグモが口添えしかけた、その時。 - 「「!!?」」
突然、彼らの足元に奈落が開いた。 - 「ああっ…!!」
落ちていく彼らを見て顔色を変えるエリザベス。咄嗟に覗き込むと、守るようにトーラの腕を掴んだジグモが、こちらへ片手を伸ばす姿が見えた。
「エリザベス 危ないわ!!」
その手を掴もうと身を乗り出しかけた彼女を、浮かぶエレインが前から抱きついて止める。結局、穴は渦を巻いて閉じてしまった。彼らを呑み込んだまま。
「そんな…」 - グロキシニアがニヤニヤと嗤う。
「無様な負け犬には即 御退場 願うっス~~」
◆グロキシニアさん、今まで活躍した<十戒>の中でも 一、二を争う性格の悪さですなー(苦笑)。 - 穴の痕跡すら失せた床を見つめて、エリザベスは涙を浮かべている。心配そうに慰めるエレイン。
- その様子を隣の
円舞台 から見下ろしながら、メリオダスは独りごちた。
「…泣くなエリザベス お前は よくやったよ!!」
傍らに立つバンも口を開く。
「何はともあれ これで一安心ってとこか♪」 - メリオダスは己の
円舞台 の中央へ視線を向けた。
「そんじゃまー こっちもボチボチ始めますかね!!」
釣られてそちらを見たバンが、だるそうな顔で眉をひそめる。
「…ん?」「オイ 団ちょ 俺らの相手って………」
そこに立つ二つの影は、明らかに人間ではない。身の丈は3m近くあり、全身真っ青で、鳥に似た異形の頭と脚なのだ。
メリオダスが答えた。
「御察しの通り魔神族だ あの青色共のスピードは侮れねぇからな 気をつけろよ?」 - そう言い終えたかどうかのタイミングで。ゴキッゴキンッと首の骨を鳴らしたり、「クプ…」と囀ったりしていた青色の魔神らの姿が、消えた。
- 「「お?」」
揃って目を瞬かせたメリオダスとバンの間を疾風が翔け抜ける。青魔神らだ。一瞬後には遥か上空で漆黒の翼を羽ばたかせ浮遊している。 - 「なんだよ 空飛ぶのは反則だろ反則♪」人の悪い笑みでバンは揶揄した。
前回の喧嘩祭りには、予選で空を飛んで「卑怯」呼ばわりされたのが こたえたか、本戦はおろか観戦中すら飛ばなかった小心者 がいたものだが。青魔神どもは、何と言われようが降りる気はないらしい。
◆エレインだって飛んで戦ってたのに、今さら反則って言うかな(苦笑)。
そういやバンさん、エレインが生き返ったからか、これまでのような魔神族への過剰な憎しみは失せたみたいですね。 - 「捕まえんのが面倒そうだな…」
メリオダスは とぼけた調子で頭を掻いている。 - デモンストレーションのつもりか、夜空をツバメのように飛び交い続ける青色の魔神たち。それを呑気に見物するメリオダスとバン。奴らが仕掛けてくるまで、特段することがないからだ。しまいに軽口をたたき合い始める。
「団ちょは すぐにでも王女様を抱擁 しに行きてぇのにな?」
「お前の方こそ 早くエレインとイチャつきたいんじゃねーの?」
「カッカッカ♪ 団ちょと一緒にすんなよ~~♪」右手を伸ばして、バンはメリオダスの頭のてっぺんに飛び出した癖毛をピンッと弾いた。 - メリオダスがからかう。
「なーんだ バン お前って 案外 お子様なのな」
「はぁ? お子様はどっちだっつーの♫」
幾分眉根を寄せたバンの頭の横を疾風が吹き抜けた、と感じた時には、彼の右手首から先は消え失せていた。小柄な青色の魔神・カルツォが、目にも止まらぬ速さで切断し持ち去ったのだ。血の滴るそれを片手に「クププッ」と笑っている。 - が。二人は、いささかも動じはしなかった。
「あれ? お前 手どうした」と、軽い調子でメリオダスが訊ねはしたが。
「話をすり替えんな♪」「尻 を触って喜んでる団ちょとは違うんだよ~♪」
バンに至っては痛みを感じた様子すらない。血を噴出させていた右手首も、数瞬後には指先まで元通りである。
◆前回の喧嘩祭り後、魔神化メリオダスがギーラの手首を切断した場面を思い出しました。あの時、ギーラは痛みに絶叫して悶絶したものでしたが、バンは平気な顔でお喋りを続けています。
ファンブックには、バンは不死身ではあっても痛覚はあると書かれていました。しかし、こうした様子を見ると、とても そうは思えないですね。
生き物は痛みだけでも死ぬことがあるものです。普通に痛みを感じるなら、どんなにガマン強くても、ここまで平然とできませんよ。
やはり「大き過ぎる、瞬間的な」ダメージの場合、痛みを感じないんじゃないのかな。脳が痛みを感じる前に治っちゃうとかで。
「ゆっくり刺される」「刺されたまま傷を抉られる」とかなら、それなりに痛みを感じてそうです。 - 「プクアッ」馬鹿な、と言いたげに驚く青魔神カルツォ。キッと目を細めると、矢のように速く、今度はメリオダスへ降下した。
- そんな様子も目に入れず、メリオダスは のほほんとバンに声を返している。
「バカを言え 俺は尻 を触って満足するだけの お子様ではない」「おっぱいだって触りまくる!!」 - 急襲する青魔神カルツォ。鉤爪のある大きな手でメリオダスの頭を鷲掴み、バツンと体から千切り取る!
「クププッ」やったぞと言わんばかりに笑って、戻った空から返り見れば。 - 「団ちょ 何 頭につけてんだよ」
呆れたようなバンの声。
「ん?」と目を丸くするメリオダスの首は健在だった。
千切れて血を噴き出していたのは、その頭を鷲塚んだままのカルツォの手。 - 「?」髪に付いたごみを捨てる態度で、メリオダスはそれを ぺっと捨てる。
「クプァアアアアアァァァ!!!」
手首から血を噴出させたカルツォが空で悶絶していたが、無情なことに、その絶叫を耳に入れる様子もなかった。
「バン 所詮 お前には エリザベスのプニプニモチモチの良さは一生わからん」
腕を組んで、嫌味たらしく「はっはっはっ」と笑ってみせれば、バンは簡単に挑発されて「ピキッ」と青筋を浮かべる。 - 一方、左手首を失った青魔神カルツォも怒りを沸騰させ、今一度メリオダスへの急襲を試みていた。
「プクアッ」
頭から一直線に降下し、そのくちばしがメリオダスの頭蓋を貫かんと―― - 「オウ コラ てめ 俺に喧嘩売ってんのか? 言っとくがな団ちょ そりゃあ こっちの…」「台詞だ!!!!!」
――した瞬間、ガラ悪く切れたバンが容赦ない正拳直突き をメリオダスの顔めがけ繰り出していた。 - 「クプ?」ちょうどその前に割り込む形となったカルツォは後頭部を貫かれ、おびただしい血を噴出させて倒れる。もう動かない。
- 「ほっほーう?」
カルツォ越しに殴られたメリオダスは、幾分首を傾けはしたものの、何事もなかったかのように話を続けていた。
バンもバンで、魔神も死ぬ強さで友達を殴ったのに、少しも気にした様子がない。キツネのように目を細めて嬉しげに惚気はじめる。
「エレインの抱き心地と言ったら もう フワフワスベスベで最高なんだよ♫」
「フワフワスベスベの抱き心地……ね」白けた様子のメリオダス。
◆フワフワスベスベ。なんだか不思議な抱き心地です。
フワフワ…スベスベ………スベスベマンジュウガニ……。
…じゃなくて。うーん、マシュマロみたいな感じ?
とか最初は想像しましたが、考えてみたら「フワフワ」でした、「フカフカ」じゃなくて。
つまり、エレインは抱いててもフワフワしてるんでしょうか。元の体重が軽いうえ、常に微妙に浮いてて、バンに体重かけてないとか。そしてお肌は、常若の妖精族ゆえ 赤ちゃんのようにスベスベ。…ってことですかバンさん?
エリザベスが「プニプニモチモチ」なのはイメージ通りでした。どっちかっつーと「モチモチ」より「ムチムチ」を想像してましたが(笑)。
ふむ。エリザベスちゃんはモチ肌なんですね。手に吸いつくなめらかさ。 - 「クアアァアアァッ」
彼らの頭上では、仲間の死を目にした青魔神ドルツォが猛り狂っていた。
急降下し、円舞台 の床面ギリギリで水平飛行に転じる。
「可哀想に♪ 団ちょには わかんねぇだろ~な♪」小馬鹿にして笑うバンの背後から、襲いかかろうと―― - 「知るか!!!!!」
――した時、その場で軽く、とは言え2mは跳躍したメリオダスが、バンの顔を蹴飛ばした。
恐ろしい力で吹っ飛んできた不死人が、避ける間もなくドルツォに激突、体の中心にめり込み、骨を砕いて肉をへこませる。ドーン、と砲撃のような音を立てて、バンごと床に叩きつけられた。 - その様子を、隣の
円舞台 から眺めるエレインとエリザベス。
「あ… あの二人 さっきから な… 何を言い争ってるの? ////」
「さ… さあ… ////」
会話は切れ切れにしか聞こえないが、何やら恥ずかしいことを言っているのは判る。知らず、少女たちの頬は赤く染まっていた。 - 床に軽く降り立ったメリオダスは、ビシッと右の人差し指を立てて真顔で断言する。
「言っておくぜバン…!!」「…最高なのはエリザベスだ!!」
半身を起こしたバンは、目や口から溢れ出る血を拭って不満げに言い返した。
「バーーーカ♫」「最高はエレイ…ん?」
指先にグニ…とした感触を感じて、そちらを見やる。
「あ?」「…なんで こいつ死んでんだ?」
バンの下に敷かれて、青魔神ドルツォは死体と化していた。バンのクッション代わりに叩きつけられたのが余程のダメージだったのか、眼球が飛び出て抜け落ちている。 - シラッとした調子でメリオダスが先に死んでいた青魔神カルツォを示した。
「見ろよ バン! いつの間にか もう一匹も片づいてるぞ」
バンは唖然として叫ぶ。
「ウソだろ オイッ!!? ……まさか これで終わりなのかよ!?」
対戦相手だった青色の魔神たちは、戦った記憶もないうちに、どちらも息をしていなかった。
◆バンは本気で無意識だったようですが、メリオダスの方は解っててバンごと青魔神を蹴り倒したようにも見えますね。
青色の魔神 弱すぎです。速く飛ぶ以外の能力ないみたいだし、バンに激突された程度で死ぬなんて。(バンの体が潰れも千切れもしない程度の衝撃。)赤き魔神より よほど低闘級でないと納得できない脆弱さ。元が小鳥だから?
……つーか、何で今さら「バンとメリオダスは遊んでるだけで魔神も倒せるほど強いんですよー、本気出さなくても勝てますよー」ネタをやるんでしょうか…。今の状況にそぐわない気が。
大迷宮で大勢の人間が殺されています。なのに、恋人自慢しながら遊んでたら勝てましたー、なんてやられちゃうと、彼らが真剣に事態に相対しておらず、人の命を軽んじてるみたいで。
巻き込まれただけなうえ 元々「アウトローキャラ」なバンは いいけれど、意図的にこの状況を作って人々を巻き込んだメリオダスに遊ばれると、ちょっと……。 - 「まあ なんにせよ… こいつらがエリザベスたちには当たらず
幸運 だったけどな」
メリオダスが言うと、バンは先程まで見せていた心配を棚に上げて鼻で笑った。
「ハ♪」「当たったところで こんな雑魚どうってことはねぇよ♪」「幸運 なのは王女様がエレインと組めたことだな~~~~~~~♪」「…なんせ あいつは妖精王 の代わりに妖精王の森を七百年も守りつづけた女だ♪」
まだ張り合おうとするバンの挑発に今回は乗らず、ただ、メリオダスは穏やかに微笑って こう言った。それでも誇らしげに。
「それを言うならエリザベスだって負けちゃいねえよ」「あいつは昔 たった一人で魔神の軍勢を改心させたことがあるんだぜ!!」
◆エレインがキングの妹だとメリオダスは知らないはず、知ったらどんな反応かなと思ってたら、超スルーかい。(^_^;)
メリオダスさん、エレインにもキングにも、全然 興味がないんですねえ。
しかしバンさん、さっきまであんなに心配してたくせに。結構調子に乗る性格だったんですね(笑)。
つーか。当たってたら普通に苦戦してたのでは。ジェリコとの戦いを見るにエレインはそんなに素早くなく、ジェリコに本気で避けられただけで風攻撃が全て外れていました。お兄ちゃんみたいな高命中度ではなかったです。それに、お兄ちゃんより ずっとスタミナがない感じでした(しばらく攻撃したらすぐに息が切れて汗だくになっていた)。妖精王の森の助けもなく、超速く空を飛び回る青魔神二匹相手だと、かなり苦戦したんじゃないでしょうか。 - その会話は、隣の
円舞台 から見上げる少女たちには届いていない。
とは言え、談笑する男たちの様子から、試合が無事に済んだことは感じ取れたらしい。
「向こうも無事だったみたいね」とエレイン。
「ええ!」顔を輝かせ、エリザベスは大きく右手を振った。「メリオダス様~~~~~!!」 - メリオダスも左手を振り返す。
その隣で、バンが怪訝そうに眉根を寄せていた。
「あの王女様が魔神族の軍勢を…?」
そんな話、今まで聞いたこともない。いや、いくらなんでもあり得ない。そもそも、魔神族の軍勢……? そんなものが、このブリタニアのどこに。
「つか 昔っていつの話だ フカしてんじゃねえ!!」
親友に睨まれたメリオダスは「にしし」と笑った。 - 巨岩の上では、グロキシニアが再びタイズーに指示している。
「タイズーくん コールをヨ・ロ・シ・ク」
「はっ はい!!」
(あいつら やっぱ すげぇっ!!!)と思いつつ、タイズーは試合終了をコールした。
「勝者――… メリオダス&バン組 !!!」
二人は笑って、ガツッと拳を打ち合わせた。 - 翳り始めた満月の下、グロキシニアは含み笑う。
「あいかわらず鉄板の強さっスね メリオダスは」「とはいえ最後に笑うのは あたしらなのは間違いないっスけどね!! プクク…」
ドロールが言った。
「しかし 不確定要素が多いことも また事実… それはグロキシニア あなたも気付いているはずです」
「…たしかに 結構 気になる人物がチラホラいるっス」
そう呟いて、グロキシニアは視線を動かす。その先にいるのは――…。
◆ドロールの魔眼でも、不確定なものは見通せないんですね。まだどう化けるか判らないものは。 - メリオダス達の
円舞台 の逆隣。エリザベスらの円舞台 を親指とするなら中指に当たる最も高い円舞台 で、轟音鳴り響く激しい戦闘が続いていた。 - ドン、と撃ち放たれた攻撃を
戦鎚 で受け、巨人の少女は十数m背後に滑って踏み止 まる。
気をつけねば、たちまち場外に落ちてしまうだろう。人間には広々とした円舞台 も、彼女には土俵程度の大きさでしかないようだ。 - 攻撃を放ったのはドロールを模した
土人形 の二対の拳。ゲラードに似た花人形 は、杖で巨大植物を操っている。 - 鮮血が飛び散った。
ボスッと床に落ちたのはクッション形態の霊槍シャスティフォル。そのすぐ近くにボタタタッと おびただしい血が滴って、点々と血溜まりを作っていく。
「!!!」「ごふっ…」
口元を押さえた手の下から血を溢れ出させたのは、キングだ。びっしょりと汗をかき、顔色は赤いのか青いのか定まらない。 - 「キ… キミ 大丈夫!?」
共闘者の異変にディアンヌがうろたえた。
「ど… どうして!? ダメージは受けていないはずなのに」 - キングは、血で汚れた己の掌を見つめている。
「し… 仕方ないよ」「だ… だって この状況じゃ」
声はか細く、体は小刻みに震え続けていた。 - 先程、彼と出会った時に芽生えた思い。それが ふつふつと強くなるのをディアンヌは感じた。
「安心して…!! キミのことは守ってあげる!!」
自分が守らなければ。この小さくて ひ弱な男の子を! - 決意を新たに勇ましく戦鎚を構える彼女の胸で。その豊かな双丘の谷間に肩まで押し込まれ身動きとれないキングが、こらえきれない興奮の鼻血を、またもドクドクと撒き散らしていた。もはや失血死しそうなほどに。
「も… もう限界…!!」 - 次回「ちぐはぐラバーズ」
次回サブタイトル「ちぐはぐラバーズ」は、またもセルフパロディで、作者の過去作タイトルの流用です。
今回のお話を読んで蘇ったのは、第138話を読んだ時の気持ちでした。
魔神フラウドリンがデルドレーにアッサリ魅了され、マヌケに倒されたやつ。
いや面白かったけど。先週までシリアスだったのに、急にコテコテのキャラ萌えギャグになったぞ? という、あの戸惑い。
今回も、コミカルで楽しいし、みんな可愛いし、萌え萌えでした。
でも、あんなに沢山の人が残虐に殺されて、残ったキャラ達も命を失いかねない恐ろしい試合を強制されたところだったのに。「尻とかおっぱいとか言いながら遊んでるうちに勝ってましたー」って。
これでいいのか? と戸惑っちゃいますね。(@_@;)
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エリザベスのこと、一つめ
リオネス王国は ほんの一年前、マラキア王国を裏切って理不尽に滅ぼした。エリザベスはその顛末を語り、マラキアの民に向かって自らがリオネスの王女であると明かした。
前回この流れを読んだとき、彼女は王女としてマラキアの民の恨みを引き受ける覚悟なのかしら、と思いました。
けれど、それにしては「放っとけないわ」と微笑む様子が軽々しい。エレインも「エリザベスってなんて優しいの」的に賞賛していて、話がズレている。
国の問題が絡む以上、彼女の個人的な優しさを褒め称えるような場面ではないはずです。
なぜ、エリザベスが上位に立つ形で賞賛されることになるのか?
不思議に思ってたんですけど、今回トーラやジグモが王女と判明したエリザベスに丁重な言葉を使い、ジグモに至っては召使いか崇拝者のような態度になっているのを見て、判ったような気がしました。
私は
「マラキアの民にリオネス王女だと名乗る」→「マラキアの民の怒りが増し、優しくした効果も薄まって憎まれる」(リスクでしかないのに、何故わざわざリオネス王女だと名乗ったのか?)
と考えたのですが、この漫画世界では
「マラキアの民にリオネス王女だと名乗る」→「リオネスの高貴な方が優しくしてくれたと ますます感激され、国を滅ぼされた恨みも消える」(メリットなので、王女と名乗るべきである)
という理屈なんですね、どうも。
マラキアの民は気が優しい…というか、ちょろいなぁ(苦笑)。
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エリザベスのこと、二つめ
「あいつは昔 たった一人で魔神の軍勢を改心させたことがあるんだぜ!!」
これ、きっと3000年前の 始まりの「エリザベス」のことですよね。
やっぱり彼女は「光の導き手」だったのでしょうか。
では、メリオダスも「黒き血脈」でいいのかな。グロキシニアらのような、異種族が後天的に魔神化した存在ではなくて、生まれながらに魔神の力を持つ者だと。
「エリザベス」が改心させたという魔神の軍勢を率いていたのはメリオダスだったんでしょうか?
(12年前に封印から目覚めた吸血鬼族・黒爪のレンがメリオダスとゼルドリスを取り違えてましたし、3000年前のメリオダスは今とは違う大人の姿だった? それとも、世間には隠された存在だった?)
なんにせよ、魔神族と他種族は、一度は和解したことがあったってこと?
なのに、最終的には決裂して全面戦争となり、魔神族は封印され、女神族は実体を保てないほどに疲弊・弱体化してしまった。
何があったんでしょう。
ゼルドリスは、他種族とメリオダスに ひどく怒っていました。そして女神族は今でもメリオダスを危険視しています。
きっと、メリオダスが強大な力を振るって全種族を(あまりいい意味でなく)震撼させたことがあったんでしょうし、経緯はどうあれ、これらの戦いの中で「エリザベス」は命を落とし、不自然に生まれ変わり続ける奇異な存在になったのでしょう。
エスタロッサがメリオダスの分身だとしたら、こうした騒ぎの中で分裂したのかなあ?
そして、メリオダスだけが封印の外に残った。
……とかいう埒もない妄想は置いといて。
メリオダス、やっぱり前世の「エリザベス」と今のエリザベスを区別していないんですね。
だからこそ初対面からセクハラしまくりだったし、今回も完全に「俺の女」扱いでバンと競ってた、と。
メリオダスは大人ですから、いちいち「好きだ、付き合おう」なんて宣言しなくても、恋人関係は成立すると考えているのでしょう。確かに、大人同士ならそうですね。
でも、エリザベス=リオネスは16歳の子供です。「私はリズさんの身代わりだ。だから好きとは言えない。でも、強くなって せめて仲間として付いていきたい」と健気に思い込んでいるのも、愛されているという自信を持てていないからです。
メリオダスさんは、いいトシしたおっさんなんですから、逆に「好きだ、付き合おう」くらい言ってあげればいいのに。
前世の関係に胡坐をかいて手を抜くのは、傲慢だと思います。
……とかゆー、なんとなくベロニカお姉ちゃんっぽい気分になりました(苦笑)。
エリザベスが彼を好きなんだから仕方ないけど、傍から見てるとメリオダスはわりと悪い男ですよ。とにかくワンマンだし。
過去の思い出もいいけど、もっと「今の」エリザベスを見てあげてほしいのにな。「わかるさ あいつのことなら なんだってな」とか一方的に惚気てるだけじゃなくて。
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ディアンヌの豊満なお胸に IN されちゃったキングさん。
大変だ、<十戒>に辿り着く前に鼻血で死にそうです。
これまで、男性でディアンヌのあの位置に入ることを許されていたのはメリオダスだけでした。(5巻表紙イラスト参照)
ついにキングさんもその位置に。やったね! ……とは言えないのがなんだかなあ(笑)。
今のディアンヌにとって、キングは出会ったばかりの知らない男の子。それを胸に入れるってのは、全く異性として意識してないってことかと。
王都決戦時にジールを抱いて庇ったごとく。キングを小さい子供か小動物みたいに思ってるんだと思います。
ちなみに、王国騎士時代~王都決戦前のディアンヌなら、キングを自ら胸に入れることは決してしなかっただろうなと。メリオダスを好きだったからってだけでなく、キングを ちゃんと異性として意識してたと思うので。
…そう思えば、これはラッキーではなく、後退、か?
ところで。
性的に興奮して鼻血を出す、というのは日本(の創作物、主に漫画)独特の表現で、海外の読者には、そういうお約束だと呑み込むまではピンとこないモノなんだそうです。
今回、キングがディアンヌの胸に挟まれて鼻血を出してた件は、海外のファンフォーラムを見てると、正確に理解してる人もいる一方、違う解釈をしている人たちもチラホラいました。
曰く、キングがディアンヌの胸の圧力で窒息死しかけてる、と。
鼻血が出て苦しんでたのを、胸の圧力で圧迫されてるからだと、合理的に解釈したみたいです。
海外の人に言わせると、性的興奮で鼻血が出るなんてアリエナイそうで。
日本人でも、医学関係の方は否定的です。そんなことあるはずがない。本当に興奮で鼻血が出るなら、それは異常な高血圧か血管の異常だ。生命が危険な状態なのですぐに病院に行ってください、と。
しかし一方で、興奮して鼻血が出た経験を語る人は、ネット上には結構見受けられます。まあ、殆どが子供の頃、性的ではなく別の興奮でのようですが。
そうした実体験が、「興奮すると鼻血が出る」という通念を日本人の間に生み出したのでしょうか。
これ、結構 昔からあった通念のようで、太宰治の小説『列車』(1933年)にも、主人公の友人が結婚を巡って父親と言い争い、卒倒せんばかりに興奮して、しまいに ぼたぼたと鼻血を垂らしたと書かれてあります。
さて。
こうした「興奮すると鼻血が出る」という通念を漫画に取り入れ、「性的に興奮すると鼻血が噴水のように噴き出す」という形に進化させたのは、1970~71年に『週刊少年マガジン』で連載されていた谷岡ヤスジのギャグ漫画『ヤスジのメッタメタガキ道講座』だと言われています。
この漫画から「鼻血ブー」という言葉が生まれ、流行語にもなり、性的興奮で噴水のごとく噴き出る鼻血は漫画読者の共通認識となり、以降の様々な漫画やアニメに取り入れられ、受け継がれていったと。
……と、漫画表現としての鼻血ブーについて書いてみましたが。
実は、性的興奮で鼻血を出し死んだと(日本人の間で、俗に)言われる人物が、歴史上に実在しています。
彼は、現在のロシアからドイツに至る広大な帝国を支配し、周囲に侵攻の手を伸ばし続けた強力な大王でした。40代後半で亡くなったとされ、死因に関しては諸説ありますが。その一つ、東ローマの歴史家プリスクスの著した記録に、
新しく妻の一人に加えた、若く美しい娘イルディコとの婚礼の宴で、大量の鼻血を出して倒れ、意識を失い、そのまま死んだ
とあるのです。
これが、一部の日本人の間で「若い嫁さん もらって興奮のあまり鼻血を出して死んだ」と揶揄されているのでした。(日本人独特の解釈?)
ちなみに、その死は453年のこととされていますから、『七つの大罪』をアーサー王の時代(5世紀末~6世紀頭)とみなして当てはめてみると、物語中の現在の50年ほど前、キングが牢獄に封印されてた頃の話になりましょうか。
王様が……若い嫁さんもらって、興奮のあまり鼻血ブーして死んだ…………。
まあ、性的興奮のためではなく、喉の動脈瘤破裂などの病気だったのではという解釈もありますが。
一応、これは史実……史実なのです!
550歳も年下の嫁さんをもらうだろうキングさんには、鼻血で死なないよう、よくよく注意してほしいものですね。
つーか、ディアンヌのお望みは「たくさん子供を作る」ことなんで、お胸に IN くらいで鼻血で死にそうになってたら身が持たない。早く耐性をつけないと(笑)。
『ハーメルンのバイオリン弾き』という漫画に、女性と何かあると すぐ鼻血を噴出する純情すぎな男性キャラがいて、好きな女性と大恋愛の末に結婚した後も、嫁相手に鼻血を吹きまくって大量出血でいちいち死にかかるので、子供を一人作るまで、長い年月と嫁さんの苦労を要した、と語られていました。
同じようなことになったらディアンヌが気の毒なんで、マジに、キングさんには早く慣れていただきたいです。(^_^;)
話を少し戻して、海外のファンフォーラムで今回分の感想を見ていたら、「
「キングがディアンヌにスヌースヌーされる~」みたいな感じで。
これは『
そんな感じで。
今回、ネットを ざっと見ただけでも、国内も海外も多くの読者がキングの命を案じてるようでした(笑)。
土人形&花人形に殺される心配は誰もしていないのに、ディアンヌ(の おっぱい)には殺されそうだと。
頑張れキングさん。小動物みたいに震えて鼻血出してないで、男を見せろ!(笑)
でないとスヌースヌーされちゃう。
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<十戒>に殺されかけたことがトラウマになって、過剰に怯え、血を流して戦うより踊りの方がいいと言っていたディアンヌ。
でも、自然にまた戦っていますね。
アースクローラーからエリザベスを守るため、ひ弱な小さい男の子(キング)を守るため。
勝利や力の誇示のためには戦わない。けれど、守るためには全力で戦う。
彼女にその心を教えたのはハーレクインだと思うけど。
次回以降、彼の「守るための戦い」も見せてほしいです。