【感想】『七つの大罪』第257話 出撃の時
週刊少年マガジン 2018年 14号[2018年3月7日発売] [雑誌]
第257話 出撃の時
- 光ある世界は、徐々に閉じて行きつつあった。
- 「やめろアーサー… 剣を放すんだ!!!
姉々 …早く傷を癒してくれ!!!」
覗き込み、必死に叫んでいるマーリンの顔が見える。隣にエリザベス王女。やや離れて、あれはキングとディアンヌか。みな一様に顔を強張らせている。 - 「目を開けろアーサー!!」
(マーリン………………ごめ…ん…)
緩慢な思考で少年は呟いた。
まぶたが重い。薄く開いていた視界が、細く狭く閉じていく。 - 「キング… どうしてアーサー王は自分で…自分を?」
「わからない… けど――まるで何者かに操られていたような…」
遠いディアンヌとキングの会話。同時に響く、切羽詰まったエリザベスの声。
「ダメ… マーリン 剣を抜かないと傷が治せない!!」 - (キミの…期待…に…応えられな…く…て…)
- 「頼むから… 手を放すんだアーサー!!!」
- できなかった。禍々しい
魔神 の声が、敬愛する師 の懇願より強く、今のアーサーを支配していたのだから。 - 『まだだ小僧 最期の力を振り絞り 己の心臓を破壊しろ!!』
- 開きかけていた指が聖剣の柄を ぐっと握り直した。突き立ったままの剣を渾身の力で胸の中心へ ずらし動かす。
- 「アーサー~~~~~!!!」
引き千切れる感覚と、悲痛なマーリンの声。
世界は急速に閉じて、全て闇に塗り潰された。 - 「……ひでぇ 酷すぎるぜ こんなの…」
この涙声はホークのものだろうか。 - 「アーサー …ポクに…うそ… …ついた」
最後に聞こえたのはキャスの声。誰よりも魔力の目覚めを熱望してくれていた相棒の、小さな咎めの言葉だった。 - そろそろ早朝の時間帯を抜けたリオネス王都。
- 街なかの空き地に停留した<豚の帽子>亭を、全身鎧の聖騎士が一人、訪れた。
- 「エリザベス王女!! ならび英雄<七つの大罪> 代表者を立て リオネス城への御足労願います!!」「リュドシエル様が聖戦における作戦の最終確認を行いたいとのこと お急ぎください!!」
- 「わかった… ありがとう」
バルコニー庭園上に浮かんだキングが返す。
彼の表情は冴えなかった。傍らの巨人の少女に至っては涙ぐんでさえいる。 - だが、そんなこともあるのだろう。なにせ、ブリタニアの命運をかけた大戦争直前なのだから。
「では 失礼します!!」
詮索せずに、聖騎士は拳を心臓の上に置いて敬礼すると、きびきびと来た道を戻っていった。 - バルコニー庭園にアーサーの姿はない。マーリンとエリザベスが運び去り、エスカノールもどこかへ消えている。
- 「キャス… そう しょげんなよ」
残っていたホークが、傍らのキャスに言った。目は向けないまま。
キャスは応えない。
「………いや そんなの無理だよな……」「お前の気持ち …痛いほどわかるぜ…!」
目に涙を滲ませて、勢いよく顔を向けた。
「わかるけど 元気出せよ」「なあ――」 - 続きをホークは呑み込んだ。
「キャ… …ス?」 - 鬼もかくやという恐ろしげな形相を、キャスがしていたからである。
眉間に深くしわを寄せ、こめかみには怒りで浮き上がった血管。尖った歯をギリギリと食いしばり、両目からは とめどない血の涙を流していた。 - 「なんで… なンデ」
ホークの声など一切耳に入っていなかった様子で、鬼の形相をした化け猫の頭は呟き続けている。
「ナンデ」「ナン……デ…」「ダ!!!」
◆キャス怖ぇえ~(汗)! - アーサーの遺体は、<豚の帽子>亭内のマーリンの私室に横たえられていた。
正確には、宙に浮かされていた。
心臓に柄元まで刺された聖剣を抜くことが誰にも出来なかったため、背に突き抜けた長い剣先が数cm床から離れた高さで、魔法で浮かばされているのだ。
血だらけの服も、血に汚れた顔もそのまま。それ以外は眠っているかのように穏やかに見える。 - 少年の体を空中に固定する術をかけ終わると、マーリンは暗く目を伏せた。
背後で見守るエリザベスは哀しげに、しかし言葉をかけずに見守っている。
◆多分、腐敗防止の魔法もかけている…んですよね? - 「計り知れない素質と未知の魔力を秘めた少年だった…」
マーリンは口を開いた。
「初めて会った時 …私は運命を感じたのだがな」「…結局 その秘めた可能性を引き出してやれなかった… できてさえいれば…あるいは―――」 - マーリンは少年に手を伸ばした。
「…お前は 私に未知の世界を見せてくれるのではなかったのか?」「アーサー」髪を優しく撫でながら、切なげに微笑む。
「お前の魂は今 どこにある?」「私の目の前か…?」「まだ体の中か…?」「それとも」 - 扉の外には逞しい男が一人。手をギリギリで止めたまま、扉をノックすべきか逡巡を続けている。
- その気配に気付きもせず、打ちのめされたマーリンは言葉を続けていた。
「お前の魂も血も数多 の英雄同様 聖剣に吸収され」「もう次の主 を選ぼうとしているのか…?」 - 「そんな若僧がいなくとも私があなたを護…」「ちがう」
扉の外のエスカノールは、漏れ聞こえる悲痛の声に、ノックしようとする手を震わせながら、ブツブツと呟いている。
「アーサー王のことは残念でしたが あなたには この私がついております…!!」
言うべき言葉はこれだ、と決めかけた時。 - 「アーサー様は あなたにとって かけがえのない存在だったのね」
扉の中からエリザベスの声が聞こえたのだ。
「私にとってのメリオダスのように―――」 - エスカノールの動きが止まる。
エリザベス王女にとってのメリオダス団長と同じ。
そんなものに対抗できるはずがない。代わりに支えたいなど、おこがましいにもほどがあるではないか。 - 得意の『傲慢』は、今は逆さに振っても出てこなかった。
力なく手を降ろして扉に背を向けると、彼は悄然と歩き去ったのである。 - 室内では、浮かぶアーサーの前の
腰掛け に座り込んだマーリンが、ぐったりと肩を落としていた。
「人間はあまりに永い時間を生きるものではないな…」「こんな時に どんな表情をすべきか… 自分の感情が どんな状態なのか」「まるで忘れてしまった……」
虚ろな目にまぶたを落とす。
「今は ただ 目の前を闇が覆っている……」 - 暗澹の闇。
遥かな昔、似た心境になったことがあると、不意に思い出した。まるで光が走ったかのように。
3000年も昔、本当に幼かった時のこと。
賢く愚かな選択の果てに寄る辺を失った自分は、まさに闇の中にいる心地だったのだ。 - そんな自分を
掬 い上げ、抱きしめてくれた暖かな腕。 - 「マーリンに祝福を…」
チュッ、と額に落とされた柔らかな唇の感触が、幼き日を蘇らせた。 - あの日の自分を抱きしめてくれた女神エリザベス。その後ろで微笑っていた魔神メリオダス。当時の二人の境遇も良くはなかったはずだが、二人は幼子を支えてくれていた。
- 「
姉々 …………」
子供のような あどけない表情 で頬染めたマーリンを、エリザベスが優しく覗き込む。
「許してね」「何も してあげられなくて…」 - 「フ…」
マーリンの口元に笑みが浮かんだ。
「懐かしいな……」「どんなに孤独を感じていた時も」
幼き日、女神エリザベスに このキスをもらった時のように。
「この まじないで」「いつも心が救われた…」 - エリザベスが目を瞬いた。
「マーリン…………」
マーリンの右目から一筋、涙が流れ落ちていたのである。 - 「…?」
怪訝な様子で頬を拭った指先を見つめたマーリンは、目を丸くした。
「涙だ」
珍しいものでも発見したかのように、軽く声を弾ませる。
「これは驚いたな 四百三十年ぶりだ」 - 「え?」
汗タラするエリザベス。 - 「メリオダスの創作料理 魔神ガエルのレバーケーキを食した時 以来か」
◆つまり、哀しい・辛い・激怒・感動などの感情的な涙だけでなく、痛い・辛い・熱い・不味い・眠いなどの生理的な涙すら、430年も流さずにいられたってこと? よっぽど快適で、ある意味 無味乾燥な生活してたのだろーか。
あと、メリオダスは少なくとも430年前から殺人料理を作ってたのね(笑)。作者さん曰く、メリオダスの料理が不味いのは、作り方が いい加減だ(食べる人のことを考えない)かららしいけど…。
そして気になる「魔神ガエル」。単にそういう名前の魔物系カエルなだけか、本当に魔界のカエルで、どこかの封印から出てきたのか? そのうち番外編とかで描かれるのでしょうか。
レバーケーキというと、昨今は犬用おやつとして作る人も多いそうですが、勿論、人間の食べる伝統的なものもあります。メリオダスさん、例によって下ごしらえしないで…血抜きしてないレバーで雑に作っちゃったのかなあ。 - 安堵したように、クスッ とエリザベスは笑った。一時的であろうと、マーリンに笑顔が戻ったのだから。
- 勢いよくマーリンが立ち上がった。
「さて!姉々 …」「城へ向かおうか 今度の作戦の確認は決して怠れん」
扉へ向かい、ブーツの踵を鳴らして歩き始める。
その背中で呟いた。
「…姉々 には敵わんな…」「私には女神の洗脳術すら効かぬというのに」
◆(柱の質問コーナーの「アーサーとマーリンは あくまで師弟関係で、恋愛感情はない」に続き、)「エリザベスは洗脳術を使っていません」という作者さんからの注意が入りました(苦笑)。読者に妙な邪推・深読みをさせまいという気遣いでしょう。 - 「…無理だけはしないで…?」
エリザベスは気遣う。 - 「いいや! 無理は してでも」「必ず
姉々 の呪いを解き メリオダスの魔神王化を食い止めよう!!」
肩越しに、マーリンは強く返した。
「これ以上 大切なものを失うことは私自身が許せん!!」
◆思うのですが、エリザベスが必ずエリザベスとして生まれ変わる・そのうえで「あと三日で死ぬ」という、ある意味とってつけたような危機設定、無かった方がよかったんじゃないかなあ。別の危機にして欲しかった。
「必ず生まれ変わり、本当の意味では死なない」のに「死を阻止する」という矛盾を孕む設定は、あまりよくなかったかも。
あくまで「恋人を死と呪いから救うために全てを投げうつ」方向で行くなら、少女漫画系の伝奇ファンタジーみたいに、予め世界を「狭い」範囲しか描かない方法もありますよね。敵も味方も主人公カップルの恋愛を妨害または応援するだけの範囲しか描かれず、モブキャラたちの死はあえて明確に描かないか、事件が解決すれば無かったことになる、みたいなの。そういう漫画も好きです。主人公カップルの恋愛だけに集中できて、「二人のための世界」に気持ちよく感情移入できるから。
でも この漫画、<大罪>たち其々の背負うもの・護るべきものを描いたり、モブキャラたちが残酷に無為に殺されていく様を何度も描いている。加えて、主人公がモブキャラたちを意図して死に追いやるエピソードすらあった。
感情移入する点・気になる点がたくさん出来て、結果、主人公カップルの恋愛成就を、他は何を犠牲にしても支援すべき、とは思えなくなってしまいました。「この世界は二人のためだけに存在するのではない」と思う。
バンが死にかけのエレインを放置してメリオダスのため煉獄へ行ってしまうエピソードなんて、やりすぎだと思うんですよね。
バンのレベルアップは嬉しいけどさぁ…。
バンがエレインを捨ててメリオダスを選ぶ展開、二度目ですよ? いくら親友だからって、そこまでさせなくてもいいのに。親友なら当たり前でしょうか? 逆の立場なら、メリオダスが死にかけのエリザベスを置いてバンを取るなんて99%ありえないじゃん。
エレインが元気なら、あるいは魔神化したメリオダスは世界を滅ぼすから阻止しないとエレインも死ぬとかなら、アリだったかなとは思うのですが。
作者さんに人でなしと思われるとしても、私はやはり、死んでも同じ名前と姿で生き返って記憶も戻そうと思えば戻せることが確定している人を、『他の人が無数に理不尽に殺されている状況下』では、最優先されるべき『特別に可哀想な存在』だと思えないので、エリザベスの呪いを解くため・彼女を恋人と生き別れにさせないために一刻を争って『みんなを率いて』戦う今の展開は、理不尽な気がしてモヤッとしてしまいます。
現在 魔神の総大将の立場にあるメリオダスを、倒すべき敵と認定して戦いに臨むリュドシエルが、悪者ポジションの流れ…。
これ結局、大勢 人が死んだ後で「メリオダスとエリザベスの痴話喧嘩は無事 解決しました♡」ってなるんですよね? そして二人の仲を認めないリュドシエルらを ぶっとばす、と。
…まあ、疑似魔神王化したメリオダスが、意図せず本当に暴走してしまい、リュドシエルらもチャンドラーらも協力し合って みんなで戦って止める、王道な熱い展開とかもあるのかもしれませんが…。 - 肩を怒らせて並みならぬ気迫を満々と みなぎらせ城へ向かうマーリン。同じ様子のエリザベス。
そんな二人に同行するエスカノールは、マーリンから背けた顔を俯かせ、普段は傲然と怒らせる肩を心なしか下げていた。 - 「いってらっしゃーい…」
常ならぬ様子に戸惑いながら手を振るディアンヌ。彼女とキングは留守番だ。
「マーリン… 少し元気…でたのかな」
傍らに浮かぶキングも戸惑い顔で見送っている。
「うん… それよりエスカノールの方が元気なかったみたい」
日が昇っているのに、あの男が悄然としているなんて。
◆ところで、なんでマーリンは城への呼び出しを知ってたんでしょう。いつキン&ディアが留守番担当に決まったのかしら。
場面省略されてるだけで、キングかディアンヌが窓からでも報告して、その場で参加・留守番を決めたのかな。 - リオネス王城。聖騎士団の作戦会議室に、九人が集結していた。
- <大罪>からはエリザベス、マーリン、エスカノール。
<四大天使>はリュドシエル、サリエル、タルミエルの全員。
リオネス聖騎士団からは、ハウザー、ドレファス、グリアモール。
人数は指定されていなかったはずだが、各陣営ごとに ちょうど三人ずつだ。 - 最も上座にエリザベスが座し、左右にマーリンとエスカノール。
他陣営は、リュドシエル、ハウザーを それぞれの上座側に置いて、テーブルの左右に分かれて座っている。
◆エリザベスが最も上座にいる。この聖戦の総大将(総責任者)は彼女なんですね。 - 「では 今から作戦及び部隊編成の確認を行う」
右掌の上に神器 を浮かせたマーリンが宣したなか、サリエルとタルミエルはポカンと大口を開けていた。エリザベスの隣に半裸で控えるエスカノールを見て。 - 「驚いた… 本当にマエルの恩寵だ」とサリエルが言えば、「信じられないわ~」とタルミエルも追随する。
- ぶしつけな視線に不快を隠さず、ジロ…と、エスカノールが睨みつけた。
「なんですか? 今 私は とても機嫌が悪い!」 - 「私語は慎め!!」
「…はい」
マーリンに一喝された途端、大男はしゅんと背を丸めた。 - 汗タラするエリザベス。
- マーリンはプレゼンを開始した。
浮かぶ金属球 がブン…と魔力の光を発すると、空中にブリタニアの大きな地図が浮かび上がる。 - 「おお~」と感嘆するハウザー。
- 「まず我々の拠点となる
王国 を死守する防衛部隊」
地図にリオネス王都のアイコンが現れた。
「キャメロットへ南下し魔神軍と正面から衝突 撃破していく掃討部隊」
リオネスから短い矢印が複数、南に伸びる。
「キャメロットに直接 攻撃を仕掛ける最少人数構成の強襲部隊」
それとは別に長い矢印が一本、ぐっとブリタニア南端に伸びて、先端がキャメロット王都のアイコンに至った。 - 「防衛部隊の指揮は 南門がドレファス 東門がグリアモール 北門 ヘンドリクセン」
聖騎士側の席から、元聖騎士長ドレファスが口を開く。 - 「んで 人員の一番多い掃討部隊の指揮に
聖騎士団 からは俺とギルサンダー」
と、親指で己を示しながら聖騎士長(代理)ハウザーが続けた。 - 「<四大天使>からはタルミエルとサリエルが掃討部隊の指揮をとる」
女神族の席からリュドシエルが言い、話を続ける。
「…それから朗報だ 巨人の里と妖精王の森からの友軍も合流するらしい」
◆え? なんでそれをリュドシエルが報告するの? - 「強襲部隊には私とエスカノール リュドシエル殿の三名」
マーリンは地図を消して椅子に腰を下ろした。
「これはゼルドリスの戒禁「敬神」による二次的な被害を最小限に抑え かつ 混戦を防ぐためだ」 - リュドシエルが嗤った。
「おや エリザベス様 私はてっきり強襲部隊に加わるものとばかり…」
「私と<七つの大罪>は掃討部隊に加わるわ」
毅然と見据えたエリザベスに、リュドシエルは笑みを崩さず嫌味を返す。
「フフ… やはり目の前で邪悪な恋人が討たれる様を見るのは忍びないということですか」 - 「やめろよ リュドシエル」
隣席から、目を伏せて白々とサリエルが咎めた。 - 「何…」
ピク、と眉根を寄せて仲間を見やるリュドシエル。 - 「残る<十戒>を捜して 戒禁がメリオダスの手に渡るのを阻止するのも重要な役割です~~~」
「そう… それにはエリザベス様の助力は必要だろ」
タルミエルが話に加わり、目を上げたサリエルが結論付けた。 - 「ありがとう タルミエル サリエル」
微笑むエリザベス。
◆は? 掃討部隊はあくまで、向かってくる魔神軍と正面から戦い続けながらキャメロットへ向かう役割でしょ? 残る<十戒>をどう捜しに行くのさ。そんな余裕あるの? 部隊から抜けて勝手に捜しに行く気なのでしょうか。言ってることがおかしいよ。
まあ恐らく、エスタロッサやデリエリたちの方からエリザベスの方へ来てくれる、ご都合展開になるんだろーけどさ…。
(あるいは、<豚の帽子>亭に あえてメラスキュラを乗せたまま移動することで、エスタロッサを誘き寄せる気なのかな。掃討部隊の人たちはご愁傷様。果たして、エリザベスとキン&ディア&ゴウだけでエスタロッサに勝てる算段があるのか? サリエルとタルミエル頼りか?)
ところで この場面、読みようによっては<四大天使>でエリザベスの取り合いしてますね(笑)。
リュドシエルは自分の部隊に加わると思ってたエリザベスが来なくて嫌味を言い、サリエルとタルミエルは自分たちの部隊にはエリザベスが必要だと勧誘する。いつだって姫様はアイドル!
しかしエリザベス、どうして強襲部隊に加わらなかったのでしょうか。メリオダスを討つ気 満々のリュドシエルがいるのに、放置していいの?
メリオダスがリュドシエルに負けるはずがないと高をくくっているだけか。メリオダスは死んでも生き返るから無問題だと思っているのか。万が一リュドシエルがメリオダスに勝ちそうになったら、マーリンとエスカノールがリュドシエルを裏切る手筈になっているのか。 - 「フン…」とリュドシエルは鼻で笑った。
「そうそう 私からも変更の要望がある」「私の護衛としてヘンドリクセンをつけさせてもらう」 - 「!!?」
激しく椅子を蹴って立ちあがるドレファス。
「バ… バカを言うな!! 魔神族の主力が揃う敵地 に連れていく…!?」「大体 ヘンドリクセンは防衛部隊の指揮の一人 …そんな勝手は…!!」 - 「代わりは他にいるだろう?」
声を荒げるドレファスに、素気なくリュドシエルは返した。
「それに これはヘンドリクセン自身の志願だ」 - 「「…………」」
傍らで、サリエルとタルミエルが無言で顔を見合わせている。不思議そうに。 - 志願と聞いて、ドレファスは責める言葉を失った。
「………!」「あの…バカ!!」 - 歯噛みする父を気遣わしげに覗き込むグリアモール。
- 「俺も行く」
その時、会議室の扉を開けて若者が入ってきた。 - 「ギル!!?」
その姿を認めて驚愕するグリアモール、そしてハウザー。
「お… お前までか!?」 - 周囲の驚きを意に介さず、まっすぐに愛しい女に宿る憎い男を見据える。
「リュドシエル… ヘンドリクセンはアンタを護るために行くのだろう?」「…ならば俺は マーガレットを護るために行く」 - 「…もちろん歓迎しよう」
リュドシエルの…その器たるマーガレットの美しい頬に、昏 い笑みが広がった。
「我々は共闘すべき仲間なのだから」 - 同時刻、キャメロット王都。
- 「フォッフォッフォッ… 他種族共が いよいよ殺気を放ってきよったわ」
チャンドラーが笑っている。 - 人間たちの魂を糧に広げ続けた常闇の棺の封印は、今や巨大な空隙と化し、薄暮の奥底から無数の魔神たちが雲霞のごとく湧き出し続けていた。
- 「フフフ… そうでなくては」「女神の封印も ほぼ解け… こちらの準備も整った」
笑うキューザックは、おもむろに長い髪を束ねていた紐を解く。 - 「本格的に儂らの出番のようじゃ <うたたね>の」
軋む音を立てながら老魔神たちは変化していった。
「そうだな… <おしゃぶり>の」 - チャンドラーは以前見せた異形の剣士の姿に。
- そして元の倍ほどの巨体となったキューザックは、太く長くなった腕を脛まで垂らしていた。元は両腰に差していた二本の剣柄が、今や指に挟まれたペンか、おもちゃのように見える。背には、チャンドラー同様の竜のような翼。
衣服にあったのと似た模様が、腕と胴の肌にも刻まれているのは、服の方に肌に似た模様を入れたのか、服に見えたのは皮膚の一部だったということか。 - 白目と黒目が逆転した目で、キューザックは言葉を続ける。
「年甲斐もなく暴れるとしようか…!!!」
老兵たちは邪悪に嗤った。 - 次回「聖戦開始」
アーサー王の死?
アーサー王が自ら心臓を潰して完全に死にました。
しかし前回の感想にも書いたように、彼は死なない・超強くなることが確定しているキャラです。
恐らく彼の魂は何処かの精神世界(聖剣の中とか、煉獄とか)で修行を積んだりするのだろうし、修行が済んだら不思議にも心臓が再生して生き返るのだろうし、目覚めれば魔力や聖剣を使いこなす超戦士になるのは想像に難くありません。
それはさておき。
これも前回の感想に書きましたが、アーサーの死と、予想される復活・超戦士化は、かつてのメリオダスの死と復活のエピソードに そっくりでした。
男が圧倒的パワーで敵をボコる
↓
しかし敵に逆転され、成す術もなく心臓を潰されて死亡
↓
男を愛する女は嘆き、遺体を葬らずに自室に安置する
↓
(男は生き返り、超パワーアップ。圧倒的強さで敵に報復する)
作者さんは このモチーフが お好きなのでしょうか。思えば
ガランにキャメロットで大敗(疑似的な死)→メリオダスの「ほんの挨拶」(復活・超パワーアップ・敵への報復)
も、同系のエピソードでしたっけ。
ついでながら。
アーサーが聖剣の力に付いていけず自壊するモチーフは、羽無し時代のキングが真・シャスティフォルを使った時と同系統でした。
違いは、キングは自身の未熟で自壊すると解っていながら覚悟して使ったのに対し、アーサーは自身の未熟を理解せぬまま軽率に使って自壊した点か?
メリオダスが死んだ時、エリザベスは一ヶ月ものあいだ安全圏に籠って、魔神族の侵攻から目を逸らし、メリオダスの遺体と共に現実逃避の酒場経営をしていました。
今回、似た状況に置かれたマーリン。
流石に一ヶ月 遺体と暮らしたりはしなかったか~。気持ちを前向きに切り替えてくれてホッとしました。
これ以上 「大切なもの」を失わぬために、無理をしてでも戦うとマーリンは言う。
アーサーは彼女にとってかけがえのない存在だとエリザベスは言いましたが、エリザベスとメリオダスも同じくらい かけがえがない、ということなんでしょうね。
…この伝で考えるなら、一ヶ月も引きこもったエリザベスには、メリオダスと並ぶほどに「大切なもの」「失いたくないもの」が無かった、ということになるのでしょうか。
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キャス怖ぇえええ…(汗)!
アーサーが亡くなった後のキャスが怖かった。
ひいぃいい……悪鬼の首!
どうしてこんなことになっちゃってるのでしょう。
アーサーが死んだ悲しみのあまり?
アーサーを殺した魔神への憎しみのあまり?
アーサーが亡くなった直後、キャスが
「アーサー …ボクに…うそ… …ついた」
と言ったのは、何を指していたのでしょう。
単に、メリオダスらと戦った際、お腹が空いたと訴えたキャスに「後で一緒に食べよう」と約束したことを指しているのか。
それとも、実は別の意味があったりする?
キャスは、マーリンに劣らずアーサーの成長を楽しみにしていました。片時も離れず、彼が強くなると嬉しいと言い、聖剣を手に入れる手助けをし、魔力が目覚めなければ意味がないと言った。
マーリンは、アーサーが「未知の魔力を持ち、未知の世界を見せてくれる」と感じていたそうですが、キャスがアーサーにこだわった理由は何だったのでしょう。
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支配する王、護る王、導く王
アーサーの未発現の魔力は「未知」のものだとマーリンは言いました。
3000年生きてきたマーリンが知らない魔力? よっぽど特異なんですね。
アーサーは王様ですし、選ばれし「ブリタニアを導く王」とのことですから、魔力も「王の力」に関連するものだったのかな?
「王」にも色々あります。
たとえば、メリオダスは王を
「
自分 のやりたいことをして気に入らねえ奴は殺すだけのクズ」
と評していました。
魔神王や最高神を指して こう言ったのだと思われますが、実のところ、彼自身も この「支配する王」タイプです。
勿論、彼は優しい男ですし誰も彼も殺したりしませんが(それを言うなら魔神王たちも手当たり次第に殺したりしてませんけど)、なんだかんだ言って圧倒的な武力で押さえつける、「殴り伏せて従わせる・拳を交わらせて解決する」気質の持ち主だからです。
次に、妖精王たるキングは「護る王」です。
己の「大切なもの」を護ることを最重視しています。
ではアーサーは、どんな「王」でしょうか。
「ブリタニアを導く王」になると言われているのですから、まんま、「導く王」なんですかね。人々の希望となり、その輝きで世界を導く?
もしもアーサーの魔力が「王の力」だとしたら、どんなものでしょうか。
周囲を支配し従わせる力? 周囲を護る力?
それとも、周囲に希望と勇気を与える力? …いや、それだと「
未知の魔力。どんなものか、覚醒が楽しみです。
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作戦会議
作戦会議室が、番外編『エジンバラの吸血鬼』で使われていたのと同じ部屋でした。
↑『エジンバラの吸血鬼』 ↓今回
構図もほぼ同じに描いてあるのは、何か意図があるのかなあ?
『エジンバラ~』では当時の聖騎士長ザラトラスが座っていた上座に、今回はエリザベスが座っています。彼女が今回の聖戦の総大将で総責任者なんですね。
参加兵たち・非戦闘員の民たちの命の重みは、彼女の肩にかかっている。
「メリオダスとの痴話喧嘩の解決」という行動理由で その席に座ったのであっても、自分の意志で進んで人を集め盟約を結んで、沢山の人の命を背負う立場になったこと、みんなを戦場へ導く総責任者であること、忘れないでいてほしいです。
土壇場になって「戦いは哀しい、私はこんなこと望んでいない、みんなを救います」などと、穢れを知らぬ第三者のような顔で言い出したりしませんように。
でもまあ、この痴話喧嘩は結局、ブリタニアの古詩に謳われるほど昔から預言されてきた、定められた成り行きってコトになるんでしょうか。
古詩に言う
「黒き血脈」→魔神軍の総大将になったメリオダス
「光の導き手」→<
って感じになっているっぽい、今のところ。
『エジンバラ~』の際、この作戦会議室で立てられた作戦は、残念なことに お粗末なものでした。
テキトー・成り行き任せ・力でゴリ押し。超強いメリオダスとエスカノールがいるからこそ成り立つ、ただバラバラに突入して好き勝手に行動するだけの、メリオダス曰く「作戦」。
そして今回も、非常に大雑把です。
掃討部隊が囮となって時間稼ぎしてる間に、強襲部隊の「三人」で敵陣に潜入して解決しちゃうぞ、という超作戦。
なお、3000年前と同じく、仲間内の意見のすり合わせが成されていない。メリオダスをどうするか、リュドシエルとエリザベス(&<大罪>)は対立したままです。こんなの、上手くいかないに決まってる。
肝心の掃討部隊は、実質 現場任せで突撃・ゴリ押しするのみ。元より、作戦上は時間稼ぎの捨て駒なわけだけど…。
少年漫画だから、細かいこと考えなくても十分、ということなのでしょうけども。
もう一つ、とても気になったのは、巨人族と妖精族の軍が合流すると、「リュドシエルが」みんなに報告した点です。
どういうこと? なんでリュドシエルが?
キングやディアンヌが予め個人的にリュドシエルに話を通していたのでしょうか??
また、キングもディアンヌも、昨日の今日でよく出兵の手配ができたな、という点にも驚きました。
巨人族も妖精族も、作中時間で つい昨日、それぞれの始祖王を魔神族に討たれていますから、復讐心を煽って弔い合戦に誘い出すのは容易だったのかもしれませんが…。
昨日の真夜中過ぎにリオネスに戻って・盟約を結んで、それから それぞれ故郷に戻って一族をまとめて出兵に同意させて諸々任命して、またリオネスに戻ったのですか。
マジに、キングは昨日一睡もしてなさそうです。
あと、普段から傭兵として活動している巨人族はともかく、数千年引きこもって戦うことなどなかった妖精族が、訓練もしないまま いきなり戦場に出て戦うのは無茶じゃないか…。闘級は聖騎士並みにあるんでしょうけど、訓練してなきゃ ただの烏合の衆ですよ…と、無駄死にしそうで心配になりました。
妖精と巨人の軍が参加するのなら、その大将たるキングやディアンヌが作戦会議に出ないのは、驚いたし不安にもなりました。
いいの? ちゃんと顔見せして他種族の連中に睨みをきかせておかなきゃ、妖精・巨人の軍が都合よく使い捨てられるかもしれませんよ?
……いやいや。リュドシエルから報告された点が まさにミソで、キングが予めリュドシエルに王として話をして、友好を裏切らないよう圧をかけておいたのかなあ?
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エスカノールとマーリン
アーサーの死に打ちのめされるマーリン。そんな彼女を支えたいと思いながらも、エリザベスの
「アーサー様は あなたにとって かけがえのない存在だったのね」「私にとってのメリオダスのように―――」
という発言を耳にして、これまた打ちのめされ、何も言うことが出来なくなってしまうエスカノールなのだった。
あれあれ、エスカノールは失恋してしまったのか…?
今回の柱の読者からの質問コーナーの内容、次のようなものでした。
Q.アーサーとマーリンは お互いのことが好きですか?
A.好きです。師弟愛として。
マーリンのアーサーへの気持ちは恋愛感情ではないと、作者さんは強いて発言しているわけで。逆に言えば、どうやらエスカノールの恋に分があるらしい。
失恋したと思い込んで、子供っぽく しょげて拗ねちゃってるけど、まだまだアタックの余地はあるぞ。がんばれ、エスカノール。
…しかし。マーリンのアーサーへの執着は、単に、師匠としての愛(もはや親子愛に近い?)でしかなかったんですね。
アーサーの魔力がマーリンの何かを救う鍵になるとか、なにかしら特別な理由があるのかなと思っていたけれど、別にそんなことはなかったぜ!