【感想】『七つの大罪』第245話 聖者の行進
週刊少年マガジン 2018年 1号[2017年12月6日発売] [雑誌]
第245話 聖者の行進
- マーガレットの器に宿るリュドシエルは語った。
「三千年前 の聖戦時――」「均衡を保っていたはずの戦局が 突如大きく傾き 女神族は苦渋の決断をせざるを得なくなった」
「…自らの肉体を犠牲に 魔神族を封印したのだ」
「…精神体となり 我らは様々な遺物に宿ると復活の時を待った」 - 「まさか本物の女神族とは…」
眉を顰めるドレファス。
「この神聖な魔力… 間違いないよ!!」
ヘンドリクセンの顔は陶然と輝いている。 - リュドシエルの指先に星のような光が瞬き現れた。くるくると人差し指を回し手首を振れば、それにつれてキラキラと星も動く。
なんて面白く美しいのだろう。民衆がここにいれば、みんな目を輝かせて見入ったに違いない。
最後に人差し指を立てて天を指せば、キィィィン とガラスを弾くような音を立てて星が撃ち上げられた。まるで、天の何かへ信号を送りでもしたかのように。 - 「「!!?」」
驚いて目で追うドレファスとヘンドリクセン。 - 見上げる顔を満足げに緩めてから、リュドシエルは腰の
刺突剣 を抜いた。
「……もちろん わかっていた」「封印 は単なる引き延ばしに過ぎないと…」
ピピュンッと目にも止まらぬ速さで十字を切る。マーガレットなら到底できない剣さばきだ。 - 「…!!」
慄くドレファスらの見守るなか、リュドシエルの前に十字型の扉が開く。形は固定されていた。剣で空間を裂いたようにも見えたが、そうではなく、元々存在していた扉を開ける合図 として十字を切ったのかもしれない。 - 「完全な決着をつけるためには 双方どちらかが滅ぶしかないと」
その美しさとは裏腹に、光輝く扉を潜る四翼の天使の言葉は、恐ろしい覚悟をはらんだものだった。 - 同じ頃、リオネス王都。
激しい戦いが続いていた。<大罪>が王都を離れるのを見計らっていたかのように、魔神族が再度 侵攻したのである。
とは言え、今回は<十戒>のような魔将はいない。赤・灰・青・橙や、その他の下位魔神だけであったが、それでも、数を減らした聖騎士や一般騎士たちには手に余るものに違いはなかった。 - ギーラが爆炎を、ジェリコが凍気を放つ。
大型の色魔神たちを爆気で押しのけ、赤ん坊のように頭でっかちな小型魔物たちを凍結粉砕しながらも、二人とも満身創痍で荒く息を吐いている。 - すると恐るべき素早さで滑空してきた青魔神がギーラを背後から殴り飛ばし、ハッと顔を向けたジェリコを別の青魔神が殴り伏せた。
「ぐは…」
ギーラは完全に意識を失い、ジェリコは起き上がろうとしているものの、意識朦朧としているのだろう、動きが緩慢である。 - 這いつくばった二人に赤魔神が獄炎を吐こうとしたとき、大竜巻が二人を包み込み、同時に獄炎と赤魔神を押しのけた。
- 竜巻を起こしたのは、二人の前に駆け込んだハウザーである。
彼もボロボロで、愛用の槍も折れていたが、力を振り絞って竜巻を保持し続ける。
「ハーッ ハーッ」「ゲホッ」 - だが命を削った風の防壁も、真上から振り下ろされた巨魔神の掌に パン、と簡単に叩き潰された。まるで虫けらのように。
- 巨大な掌は、そのまま三人を握り込んで持ち上げていく。
「あ…が」「ぐあ…!!」
メキメキと音を立てて鎧が軋み、バキッ ベギと骨が砕けた。三人の口や、潰された鎧の隙間から血が勢いよく噴き出していく。 - 「
魂 … 喰ワセロ」
頭の左右に小ぶりの角を生やした巨魔神は、三人を掴む手を頭上に掲げると大きな口を開いた。乱杭歯の並ぶ口からダラダラとよだれが流れ出す。同種の魔神はオーダン村でも暴れていたものだが、食い意地の汚さが種の特徴らしい。 - 食い意地巨魔神は手を開き、三人は口の中へバラバラと落ちていく…。
- そう思われた時、奇怪なことが起きた。魔神の頭が半分消滅したのだ。
巨魔神自身にすら意味が解らなかったに違いない。キョトンとした顔の残りが泡のように吹き消え、巨体は地響きを立てて仰向けに倒れた。 - 「ぐあっ」
三人は地面に落ちる。 - 「ガハッ」「なん……だ?」
瀕死に近いハウザーが、血を吐いて頭を上げたとき。
ペン… ペペン…
場違いな音が聞こえてきた。 - ぺぺぺん ぺんっ ぺんっ ぺん ぺん
弦楽器の音だ。この地獄に相応しからぬ、呑気な旋律。 - その音が次第に近付くにつれ、意識なく倒れていたジェリコとギーラの身体が光に包まれ、程なく身を起こした。
「痛みが………消えた」
傷が綺麗に消えている。 - ぺけぺんぺん
- 彼女たちばかりではない。辺りの死にかけていた騎士たちも回復し、信じられないという面持ちで次々と立ち上がっていた。
- 「お… お前は…」
やはり快癒して立ち上がったハウザーは、巨魔神の死骸の向こうから歩み寄ってきた小柄な姿に目を剥いた。リュートをかき鳴らす姿には見覚えがある。二ヶ月ほど前のバイゼル大喧嘩祭りで、一時的とはいえタッグを組んだ仲なのだから。 - 吟遊詩人ソラシド。
見知った姿に慄かざるを得なかったのは、その背に見知らぬ二対四枚の純白の翼が開いていたからだ。 - ぺん ペン ぺぺんっ
「…我らは導き手なり」
楽器をかき鳴らし歩むごとに、足元の草がうねり伸びて葉を開き、花を咲かせている。
「我が言葉こそ真実 我が行為こそ正義」
微笑む彼の両瞳には、女神の紋様 が浮かび上がっていた。
◆歩いてくるソラシドの足元に草が伸びて花が咲くの、『もののけ姫』のシシ神を思い出しました。あっちは一歩踏み出すごとに生えて枯れるんだけど。 - やはり同じ頃、リオネス王都の別の戦場。
- 「…我に従え 人間共よ」
長柄の星球棍棒 の先端が光に包まれていた。キラキラと輝く それ自体が言葉を発したかにも思えたが、そんなはずはあるまい。不思議にも手を離れて浮いているものの、持ち主は傍らで口を開いている。
「我が<光の聖痕 >の一員となって」「共に魔神族を滅ぼそうぞ!!」
輝く棍棒を傍らに浮かせ、笑って告げた長身の男は破戒僧アーバス。バイゼル大喧嘩祭りの参加者である。相変わらず前髪で目は見えないが、背には小ぶりの純白の翼が三対六枚広がっていた。 - 彼の周囲には、たった今 棍棒で滅多打ちに潰された無数の魔神どもの死骸が折り重なっている。
- 死の戦場に現れた眩い救い手に騎士や民は歓呼し、涙を流して拝む者さえ少なくなかった。
- だが、不信の目を向ける者もいる。聖騎士団<
暁闇の咆哮 >のスレイダーとサイモン、<蒼天の六連星>のデスピアス、ワイーヨ、アーデン、デルドレーである。 - 彼らは<蒼天の六連星>団長・デンゼルの最期を見た。魔神族を滅ぼすべく己が身に女神ネロバスタを顕現させたデンゼルは、しかし呆気なく魔神デリエリに殺されたのだ。この時、ネロバスタが<十戒>を恐れて戦いを拒否したことを、彼らは恨んでいた。
デンゼルが命を捨てる覚悟で顕現させたのだから、ネロバスタも命を捨てて人間族のために戦うべきじゃないか。女神族など、いざとなれば人間を見捨てる連中なのだ。信用できやしない。
◆さて、身勝手なのはどっち?
(なお、ネロバスタは魔神族は全て封印されたと思っており、眠りから覚まされ顕現させられた時、魔神族・まして<十戒>と戦う想定はしていませんでした。)
話は変わりますが、この場面の<蒼天の六連星>、デスピアスとワイーヨはボロボロで血まみれ、アーデンは傷だらけだけど血まみれにまではなってない、そしてデルドレーは完全な無傷です。
アーデンとデルドレーは後衛・援護タイプだからでもあるでしょうが、特に、前線で戦う力のないデルドレーを庇う戦い方をしてたっぽいですね。(主にワイーヨが…) - 一方。
- “雷鳴斬”
窓のない屋内、階段の突き当りの踊り場で、壁に向かい、ギルサンダーは渾身の斬撃を放っていた。
「はあっ!!!」 - バシュッ
- 剣撃にまとわせた雷気は霧散するように消えうせ、石組みの壁には掠り傷一つ付いていない。
- 「ぐっ…」「くそっ…」
ここに連れてこられて幾日経ったのだろう。
まずは出口を捜して絶望し、ならば壁を破ろうと強硬策に出たものの、未だ成果は得られていない。気の遠くなるほど繰り返して、とうに手指の皮は破れ血が流れ出ているというのに。 - 「やはり この壁… 魔力で保護されているようだ…」「ハア」「ハア…」
汗だくで荒い息を吐いて、ギルサンダーは悔しげに歯噛みした。
「せめて… せめて誰かが中の物音に気付いてさえくれれば…」「いや… 聞こえたところで… 山中や森の中なら その望みも薄い……」 - 「ギル~ どこ?」
遠くから、己を呼ぶ女の声がした。 - 「!!」
息を呑んで振り返り、ギルサンダーは身を強張らせる。 - 「も~ また悪あがきしてるのかしら?」
ねっとりした甘え声は次第に近づいてくるようだ。 - 「く…」
怒りと恐れを半ばさせて歯噛みした時、ヒュオ…と耳元の髪がなびいた。
「なんだ?」
ハッと視線を動かす。閉ざされた屋内でヒョオオオ…と微かに空気が鳴っていた。
「風だ…」
柱と天井の隙間。他の継ぎ目に比べ、隙間が大きいように見える。
「まさか……!」
柱に接した天井の石組みをずらせば、人一人が通り抜けられるほどの隙間が開いたではないか。潜り込めば、急勾配の通路が上へ続いていた。 - 「間違いない!! この上向きの通路…」「外部からの空気の通り道だ…!! 地上に出られるぞ」
逸る気持ちで駆け上がり、突き当たりの石蓋を押し上げれば、見よ、満天の星の広がり。 - 「や…」「やった外だ!!!」「これでリオネスに戻れる!!!」
歓喜して駆け出したギルサンダーの足が、ピタッと止まった。 - そこはどうやら
露台 のような場所で、手すりがあり、行き止まりになっていた。(手すりには星辰日月らしき紋様が彫り込んであったので天文台として使われていたのかもしれない。)それはいい。問題は、手すりの向こうが一面の雲海で、空と星と雲海以外の何物も見当たらなかったことだ。
「……雲…」「うそ…だろ?」 - 天に届くような高山に登れば雲を眼下に眺めることが出来るというが、だとしても他山の頭くらい見えるだろう。これではまるで、高山すら越えて天空から見下ろしているかのような…。
- 「ここは空の上だというのか……?」
呆然と呟いたギルサンダーは、後方にそびえ立つ超巨大な天使像には気付いていなかった。右手をついて身を乗り出した上半身だけのそれは、あちこち ひび割れたうえ翼や左手部分は崩落して失われている。 - 「お師匠様が発見したのよ」「おそらく女神族が その昔に建造した天空宮の一つだろう……って」
魔物の掌を象った大杖をついて、魔女ビビアンが歩み寄ってきた。 - 追いかけっこはお終いだ。逃走の希望すら潰えた。
- 「もう諦めてギル!! リオネスは もう滅びているわよ!! ……残念だけどマーガレットも…」「けど どうしようもなかったの!! あのままいたら私たちも<十戒>に殺されてたはず!!」
哀しげに訴えながら、どこか芝居がかった胡散臭さは拭い去れない。 - 「…………マーガレット」「どうせなら… キミと一緒に死にたかった」
若者の呟きに含まれた諦念を好機と見たか、魔女の声音は たちまち歓喜を帯びた。
「ダメよ ギル♡ そんな悲しいこと言っちゃ!!」「彼女の分まで 私たちは生きるべきなのよ!!」 - 「黙れ… それ以上口を開けば―――」
ギルサンダーは涙の滲んだ目でビビアンを睨みつける。 - 「そうだわ♡ 私たちの子供を作りましょう?」「もし女の子ならマーガレットと名付けてもいいわ」
だが、歪んだ欲望に浸る魔女には歓喜しかないのだった。
逃げ道は全て塞いだ。欲しい男は間もなくこの手に堕ちる。
(マーガレット ギルはもう私のものよ!! ざまあみろ!!) - 王国に仕えていた頃は顔を仮面で隠し、肌も極力 見せないようにしていたが、今は肩と胸を大胆に露出させた薄手のドレスを着ている。ここには容貌を比較される師匠も王女もいないのだ。何を遠慮することがあるだろう。
- 大きな胸を見せつけるように後ろ手に大杖を持ち、小首を傾げて、最大限に愛らしく微笑んでみせた。
「ギル♡」 - その背後に、突如 十字型の光の扉が開く。
そこから突き出された細い剣先が、ブツとビビアンの延髄から喉までを貫いた。 - 「けう?」
小さく奇声をあげた首から剣先が抜かれると、それ以降は声もなく、ビビアンは棒のように前に倒れる。代わって、背後の人物の姿がギルサンダーの目に露わになった。 - 「約束は果たした」「恋人は救い 憎む魔女は討伐したぞ」
光の十字扉から現れた長髪の女。キンッと音を立てて刺突剣 を腰の鞘に納めた背には二対四枚の純白の翼が広がっている。女騎士のような出で立ちといい、奇妙なことばかりだが、その顔立ち、姿は見間違えようがない。 - 「マーガレット ……まさか キミなのか?」
殺されたと思っていた彼女が目の前にいる。ギルサンダーの左目からぽろりと涙が流れ落ちた。 - 問いかけに応じたように、フ…と翼が掻き消える。次いでピクッと震えた彼女の表情が劇的に変化して、感極まった様子でギルサンダーの視線を捉えた。
- 「…ギル」「ギル……なのね?」
泣き顔をこらえきれず、両目からぼろぼろと溢れ出す涙。 - 背後の十字扉からヘンドリクセンが、続いてドレファスが戸惑った顔で歩み出ていたが、恋人たちには意識の外だった。
- 「ギル!!!」
「マーガレットーーーーー!!!」
互いに両手を差し伸ばし、涙と笑顔で駆け寄る二人。まさに抱き合わんとした、その時。 - 「…次は お前が約束を果たす番だ」
白々とした声が響いて、王女は スッ と若騎士の手をすり抜けていた。 - 「…え」「マーガレット? どうしたんだ…」
すれ違い離れていく恋人の背に、取り残されたギルサンダーが狼狽える。
だが彼女は立ち止まりも、一瞥を返すことすらしなかった。その背には再び純白の翼が広がり、高慢に微笑う両瞳には女神の紋様 が浮かんでいたのだが、それは背後のギルサンダーには見えていない。
◆リュドシエルさん、抱き合うところまでさせてあげればよかったのに~。なんたる寸止め。
自分の器が男と抱き合ったり、まして感極まってチューしたりしたら嫌だと思ったのかな(苦笑)。感覚とか共有してそうだし。 - 「これは酷い…やりすぎだ!! ヘンディ 力を貸してくれ!!」
不意に響いた男の大声が、戸惑うギルサンダーをハッとさせた。
見れば、倒れたビビアンの脇に屈みこんで中年男が血相を変えているではないか。髪を短く切ってはいたが、ひどく見慣れた。 - 「ドレファス聖騎士長… いや 貴様は<十戒>の…!!」
叔父でもある この男に憑いた魔神にリオネス王都を壊滅に追い込まれ、死を覚悟した記憶は生々しい。王都に残されたマーガレットの変貌は、なるほど、魔神のせいだと言うなら納得がいく。
「マーガレットに何かしたのは貴様だな!?」 - 「…!!」
ドレファスは顔色を変えた。防衛戦途中で誘拐されたギルサンダーは、魔神フラウドリンの死を含む防衛戦終結の経緯を知らないことに思い至ったのだ。
「ギルサンダー!! ま… まてまて!! 私だ!! 本物のドレファスだ!!」
慌てて抗弁したところで血溜に伏すビビアンを目の端で認識し「いや… それよりヘンディ 早く!!」とヘンドリクセンに呼びかける。 - 当然、ギルサンダーが納得するはずもない。
「うそをつけ!!」
「信じてくれ!! 本当だ」「なあ ヘンディ?」「ヘンディ?」 - 当のヘンドリクセンは、一切の喧騒を耳から素通りさせていた。
「…信じられない! ドルイドの祭壇が こんな天空に繋がっていただなんて」
周囲を見回しながら、露台 に立つリュドシエルのもとへ歩いていく。 - 彼(今は彼女と言うべきか)が ピクッ と震えて一方に顔を向け、「む…」と懸念ありげに呟いたのを聞いて「どうされました リュドシエル様?」と尋ねた。
- 「一か所に集まりつつある…」
この夜は本物なのだろうか。満月輝く星空に沈む雲海を見通して、天使は答える。
「巨大な三つの邪星が」
メリオダス、ゼルドリス、エスタロッサ。魔神の三王子が、キャメロットで顔を合わせようとしていた。 - 次回「邂逅」
一週休んでの連載再開でした。
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戦局を傾けるもの
リュドシエルは言いました。
「
三千年前 の聖戦時――」「均衡を保っていたはずの戦局が 突如大きく傾き 女神族は苦渋の決断をせざるを得なくなった」
「…自らの肉体を犠牲に 魔神族を封印したのだ」
「…精神体となり 我らは様々な遺物に宿ると復活の時を待った」
急に戦局が傾いた? 何が原因だったのでしょうか。
似たようなことを、バイゼルでメリオダスを殺したとき(第176話)エスタロッサが言っていましたっけ。
「今度は いつ裏切るんだ?」「<十戒>の統率者だったお前が 俺らを見捨てた時みてぇに…」「あの頃のお前の強さ… 非情さは凄まじかったなぁ」(中略)「誰もが お前こそ次代の魔神王にふさわしいと認めていたよ」「俺の憧れでもあった」「…だが お前は突如 俺たちを裏切ると魔界を滅茶苦茶に破壊し 姿を消した」「居合わせた<十戒>二人を惨殺してな」
(中略)
「…それまで保たれていた魔神族と女神族の均衡は見事に崩れ――――」「
好機 と見るや 女神族は魔神族を一気に潰さんと他種族をけしかけた…」「…三千年前の戦争は お前が始めたんだよ」
エスタロッサが言ったのは聖戦開始の事情、リュドシエルのは聖戦終結の事情ですから、違う話です。
…なのに、んんん? なんか似たようなこと言ってる…。
たまたま?
それとも、実は繋がっているのでしょうか。
女神族は自らの肉体を捨てて魔神族を封印する道を選んだという。これ、「自己犠牲の死を選んだ」のと ほぼ同義です。
そうまでせざるを得ないほどの状況だったということ。聖戦末期に、一体何が起きたというのでしょうか。
術士ゴウセルが何かして戦局を傾けた?
魔神王と最高神の陰謀?
第三勢力の介入?
色々有り得そうですけども。
ずっと、3000年前にメリオダスが魔界を破壊して<十戒>二人を惨殺したというのは冤罪なんだろうと思っていました。
エスタロッサが「メリオダスが戦争を起こした」と言うのも、角笛の女神がメリオダスを殺すのは四種族(女神・妖精・巨人・人間)の平和のためだと言ったのも。
どうせ誤解か陰謀なんでしょ?
とタカをくくっていたのです。だって主人公ですもんね。
けれど。
本当にそうだった、って可能性もアリなのかな? と、リュドシエルの発言を読んで考えてみました。
第28話、ベロニカが言っていました。
「あの男(メリオダス)の姿は仮初のもので」「かつて怒りのままに大破壊を繰り広げた化け物が真の姿!!」「…ってね」
絵には、異形の怪物となったメリオダスのシルエットが描かれています。
この怪物姿は、その後の場面で「メリオダスの影」としても描かれていて、彼が怪物なのは噂でも妄想でもない、真実なのだと暗示されているように見えます。
ベロニカに この情報をもたらしたのは恐らくヘンドリクセン…即ち、彼を操っていた魔神フラウドリンでしょう。
魔神である彼がメリオダスを「大破壊を繰り広げた化け物」と評した。よほど異常な状態になったのだと思います。
キン&ディアの修業編で見た3000年前のメリオダスは、今と同じ姿で、異形の怪物ではありませんでした。
もし彼が異形になった過去があるのだとしたら、インデュラ化のような、特殊な条件下での一時的な変身・暴走ではないかと想像したくなります。
たとえば、
3000年前メリオダスは何らかの原因で暴走して魔界を破壊・<十戒>の仲間二人を殺してしまい、魔界に戻るに戻れなくなった。
そして聖戦末期に もう一度暴走して(ベタなパターンなら、自分またはエリザベスが封印の生贄にさせられそうになったとか。封印されて無理に抜け出したことで暴走したとか。単純に何かで激怒しただけでもいいか)、魔神族側のみならず<
暴走したメリオダスは奇跡的に元に戻ったが、彼に脅威を感じた魔神王と最高神が協力して、彼とエリザベスを聖戦の最終決戦場から引き離して対峙し、呪いをかけた。(当時は今よりもっと強かったのだろうメリオダスらが魔神王らに一撃すらできないほど歯が立たなかったのは、暴走と解除で魔力を使い果たし、疲労困憊していたのも一因である、とか。)
一方、戦場に残された女神族たちは、<
…みたいな想像はどうでしょうか(笑)。
や、もっと複雑ですよね。術士ゴウセルがどういう役割を果たしたのか、全然想像つかないです。すんごい突飛なことしてたらどうしよう。
いずれにせよ「
けど、もしも似たような事件があったとしたら、リュドシエルのみならず、<
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女神の使徒たち
器を得た女神族たちが続々と復活を始めました。
アーバスやソラシドが女神族関係者なのは、以前から予想していた通り。(個人的予想では ななしも怪しいけど、どうでしょうね。)
まだハッキリ言われてませんが、アーバスに憑いてる女神族は、羽の数・形からして<四大天使>タルミエルっぽい。
←タルミエル
←女神族の器となったアーバス
では、ソラシドに憑いているのは同じく<四大天使>のサリエルなんでしょうか?
←サリエル
←女神族の器となったソラシド
…サリエルは二対四枚羽で、上側の一対がすごく大きいのが特徴です。ところが、ソラシドの羽は上下二対の羽が同じくらいの大きさ。つまり羽の形が違います。
なので、別の女神族なのかな? と最初は思ってたんですけど。
タルミエルが登場したなら相棒のサリエルが出てくるのが自然なので、やっぱりサリエルなんですかね。
タルミエルとサリエルは3000年前、エリザベスに協力して、インデュラ化したモンスピート&デリエリを救っています。
エリザベスは「魔神族を救った」罪で最高神に罰され永劫の輪廻の呪いをかけられたので、協力した二人も多少なりとも罰を受けたのかなと思っていましたが、特にお咎めはなかったようですね。そして、魔神族への敵対心も変化していないようです。
あの後、彼らが「エリザベス様の考えに一時賛同したけど、やっぱり魔神族は滅ぼすべきだ」と思ったような何かが起きていたんでしょうか。
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天空の城
ビビアンがギルサンダーを閉じこめた「秘密の場所」。窓がないので地下か岩の中かなあと思っていたら、なんと「雲の上」でした。
でも、イマイチどういう場所なのか判らないですね。
雲海が見えるくらい高い山の上に建つ砦城?
でもビビアンは「天空宮」、ヘンドリクセンは「天空」と言い、ギルサンダーは「空の上」だと言っています。天空の城ラピュタみたいに、雲の上に岩塊に造られた砦が浮かんでいるのでしょうか。
発売されたばかりの単行本29巻に収録された番外編『呪いの婚約』に、雑誌掲載時からラスト1ページ追加されていて、ギルサンダーが閉じこめられた場所の全体図が載っていました。
これで見ると ただの岩山の地下かな? て感じにも見えますね。
いや、下側に雲らしきものがあるし、やっぱり岩塊が天空に浮かんでるの? それとも、単に雲海を突き抜けるくらい高い岩山なの??
天空にラピュタっぽい砦が浮かんでいるのだと仮定して。
地上から見上げると、この天空宮が満月に見えるようカムフラージュされている、なんて想像はアリなのかな、とふと思いました。
バイゼル大喧嘩祭りの辺りの感想に、作中時間で五日くらい満月が続いてておかしい、もしや満月に見えるのは女神族の術か要塞か何かではと、半ば冗談で書いたことがあります(笑)。
女神族の天空宮(要塞)というモノが本当に空にあったんなら、マジに そういう仕掛けでしたってコトでも面白いかもしれない。
(まあ、それだと月が二つ見える日があることになっちゃうので、ダメか。)
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呪いはどうなった?
今回、漫画の柱に
「ギルサンダーは190話でビビアンに攫われてからずっと、なんと55話分も幽閉され続けているぞ!」
と解説してあって笑いました(笑)。担当編集さん、数えたんかーい。
作中時間だと幽閉されてたのは最短で一週間くらい、長くても二ヶ月くらいだと思うんですけど、リアル時間では一年ちょいでした。
が、55話分と言われると、それよりもっと長かった気がしてきますね。ギルサンダー、手籠めにされずに よく耐えた。
ところで気になったのですが。
ビビアンにマーリンが掛けた呪いってどうなったの?
番外編では乳房のかなり上のところまで痣が広がっていたのに、
今回、胸の大きく開いたドレスを着ていたにも拘らず、痣が全く見えませんでした。
ギリギリ隠れてたんでしょうか。それとも、魔法か化粧で隠してる?
あと、左手薬指にあったはずの呪いの指輪自体が見当たらない。
いずれにせよ、「
それに、ビビアンが死ぬ(倒される)なら、この呪いに関連してなんだろうと思っていたのに、呪いは一切関係なく、首をブスッと剣で刺されて終了。
えええええ。これじゃ「
面白くなりそうな設定をいわくありげに提示しておいて、さして有効活用しないまま、話が別方向に行って尻つぼみに終わっちゃう。
ある意味、設定を贅沢に使い捨てていると言えるのでしょうが…。
この漫画、こういう「設定の未消化・使い棄て」が多いですよね。「戒禁」もそうなっちゃいましたし。(´・ω・`)
ところで。
マーガレットの鎧は胸部分に大きなハートの飾りが付いています。
そして、今回ビビアンが着ていたドレスも、胸部分に大きなハートの飾りが付いてたんですよね。
これ、何か意味があるの? たまたまデザインが被っただけ?
実はマーガレットとビビアンは好みが似ているのでしょうか。確かに、同じ男性に熱烈に恋してるわけだし(苦笑)。
同じような服とかアクセサリーを持っていそう。そして お互いにギリギリしていそう。
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なんのつもりで討伐に?
リュドシエルに首を刺されて倒れたビビアンを見たドレファスが
「これは酷い… やりすぎだ!!」
とリュドシエルへの非難めいたことを言いつつ慌てて治療しようとしていたのを見て、えっ? とビックリしてしまいました。
彼らは「魔女ビビアンの討伐」の旅をしていたはず。
ビビアンは闘級2580の、リオネス一の魔術師。元二大聖騎士長とは言え、戦えば ただでは済まない相手でしょう。
ブリタニア全体が荒んだ状況下で、最初から死闘する(いざとなれば殺し合う)覚悟で討伐に同行したのだと思っていたので、「酷い、やりすぎだ」という甘々なドレファスの言動は意外でした。
ええええ。
ドレファスさん、何のつもりで討伐の旅に来たの?
子供たちの恋愛沙汰の仲裁に来たくらいのつもりだったんでしょうか。
まあ、不意打ちして致命傷を与えるのは酷い、みたいな意味なのかもしれませんが。元々仲間ですし、ビビアンに対して身内意識があるのかな?
一方で、ヘンドリクセンのスルーっぷりは真逆に突き抜けてて、これはこれで凄いなとも思いました(苦笑)。10年間、ビビアンとは共犯者で共同研究者だったのに、死にかけてても全くどうとも思わないのだなあ。
なお、ギルサンダーが刺されたビビアンを全く気遣わないのは当然のことだと思います。そう扱われるだけのことを彼女はしたので。
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聖者の行進
今回のサブタイトルは「聖者の行進」でした。
ジャズやブラスバンドでも人気の、有名なアメリカ民謡のタイトルからの引用でしょうか。
曲名でもあり、歌詞で繰り返される
when the saints go marching in
のフレーズは「聖者の行進」と和訳されるのが定番ですが、「聖者が町にやって来た」と訳されていることも多いようです。
しかし、それは誤訳なのだとか。
明るく楽しい曲調なので、聖者(神様や聖人やお坊さん?)が天国か何処かから訪れて町をパレードしていくような、おめでたいイメージを抱き易いかもしれません。けれども実際は、この曲は黒人霊歌であり、墓地へ行って戻る葬列で演奏されたものなのだそうです。
Oh when the saints go marching in
When the saints go marching in
Oh lord I want to be in that number
When the saints go marching in
おお、聖者が行進する時、聖者が行進する時
おお主よ、私も数に加わりたいよ。あの聖者の行進に
「聖者 the saints」には、日本語で言うなら「仏様」に相当する意味があります。神や聖人だけでなく、「死んだ人」を意味することもある。
つまり「聖者の行進」とは死んだ人たちの行進。あの世へ向かう亡者行列を意味しています。なので、聖者が「町へやって来た」という訳は誤りとなるわけです。町へやって来たのではなく、町からあの世へ行進していくのですから。
これを踏まえて、上記の歌詞を思いっきり和風に意訳すれば
ああ、ホトケさんたちが行く、ホトケさんたちが極楽へ歩いてく
ああ お釈迦様、俺も行きたいよ、あのホトケさんたちと一緒に
…という感じになるでしょうか。
キリスト教の教えでは、浮世の苦しみは神の与えた試練だとされます。苦しみの人生を全うした者は救いの国へ行く資格を得られると。
苛酷な生活を強いられていた黒人奴隷たちが、ブラックユーモア的に「こんなに苦しい人生を全うしたんだから、死んだ彼らは さぞや いいところへ行くんだろう。俺も一緒にあの世に行きたいね」と
女神族が次々と復活し、人間たちを改めて<
この漫画では「町の外から聖者たちがやって来た」という意味での、このサブタイトルでしょうか。
今までの描かれ方から、読者の多くは女神族に いい感情を持っていないはず。感激する騎士たちが愚かに見えるでしょうし、むっつりと不信顔をしている<蒼天の六連星>たちに安堵するのかもしれません。
でも、復活した女神たちが、魔神たちに殺されかけていた人間たちを助け、治癒術までかけてあげたのも事実なんですよね。
ぶっちゃけ、魔神族と女神族は どっちもどっちだと思うのですが、魔神族は嗜好品として他種族の魂を食うので、それに比べれば女神族の方がマシと言えるかもしれません。
魔神族や女神族にとって、人間族は格下の種族。いわば、人間にとっての猿や犬みたいな存在なんだろうと思っています。
猿は賢くて可愛いから保護してあげなきゃと親しく付き合う人もいる。(でも、猿を護るために自分の命や家族さえ捨てようとまで思う人は多くはない。)一方で、猿の脳みそは珍味だからと好んで食べたがる人もいる。
魔神族や女神族にとって、人間族を殺したり慈しんだりするのは、その程度のことなのではないでしょうか。
女神族が人間族を仲間に引き入れようとしているのは、奇妙なことに見えます。
だって人間は強くない。3000年前より更に弱体化しています。
なのに人間を頼って仲間に引き入れねばならないほど、女神族自体が弱体化しているということか。
こんなんで、果たして、魔神族に対抗できるのか?
女神族は胡散臭いですけど、最後の砦でもある彼らが敗北したら、人間族は魔神族に喰われて滅亡まっしぐら…なのが悩ましいですよね。
『聖者の行進』の本来の意味のように、一緒にあの世に行っちゃうことになると困ります。
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単行本29巻限定版のカレンダーに書かれてあった、キャラクターの誕生日で面白かった奴のメモ。
ナージャ…1月5日 遺言の日、シンデレラの日
魔術士ゴウセル…4月15日 遺言の日
●ナージャと術士ゴウセルのどちらもが「遺言の日」なのが…(´・ω・`)。しんみりしました。人形ゴウセルは辛いですね。
ネロバスタ…2月12日 ブラジャーの日
リュドシエル…2月17日 天使の囁きの日
タルミエル…7月13日 生命尊重の日、オカルト記念日
サリエル…10月4日 天使の日
●サリエル君の誕生日の「天使の日」は、正確には「天使のブラ発売記念日」です。サリエル君 ブラ男子疑惑。(オイ)
カルマディオス…1月25日 左遷の日
ゼノ…12月1日 鉄の記念日
アラナク…11月7日 知恵の日
チャンドラー…8月13日 左利きの日
キューザック…11月1日 紅茶の日、教育の日
バルージャ…11月3日 ゴジラの日
●「敬神」の戒禁持ちだった先代<十戒>カルマディオスさんが「左遷の日」なのは笑いました。殺されて後釜にゼルドリスが入ったんじゃなくて、ゼルドリスに左遷されて戒禁を取り上げられたんでしょーか(笑)。
●メリオダスが魔界を出奔する際に惨殺したとされる先代<十戒>アラナクとゼノ。
ロボットっぽい奴と髭が丸く繋がってる奴、どっちがアラナクでゼノなのかなと思っていましたが、ゼノがロボットで、アラナクが髭かもですね。(髭が知恵の輪っぽい?)
●かつての<十戒>で、ガランさんの友達で、インデュラ化して巨大な怪物になって今も魔界を彷徨っているバルージャさんの誕生日が「ゴジラの日」。あはは(笑)。
二代目妖精王ダリア…9月21日 国際平和デー(世界の停戦と非暴力の日)
妖精インビジブル…3月2日 ミニの日
妖精エンデ…3月15日 オリーブの日
妖精メリク…8月1日 自然環境クリーンデー
妖精シスカ…8月7日 花の日
ロウ…6月20日 ペパーミントの日
●二代目妖精王ダリアの誕生日が停戦と非暴力の日だったのは、おや、と思いました。ファンブックの年表や小説版を参照するに、ハーレクインが1000年前に人間の王国と和平の盟約を結んだのは間違いないんですけど、彼が生まれる以前に、ダリアも停戦をしたことがあるのかなと。マッチョだったそうですが、非暴力主義の凄く優しいひとだったのかな? それで最終的に異種族に殺されちゃったんでしょうか。
●デスピアスの小さな友達にして優秀な偵察者インビジブル。考えてみたら、マーリンの使い魔のオルロンディはゼルドリスに発見されたのに、インビジブルは全く発見されることなく偵察任務を果たしてたんですよね。凄くないですか。
●ロウ(オスローの前世)の誕生日はペパーミントの日。ゲラードの体臭はミント。
ゼルドリスの恋人ゲルダの誕生日(4月19日)が、地図の日、飼育の日、養育費の日、みんなの保育の日なのは、意味があるのかないのか…。ゲルダさん養育費が欲しいの? 子供いるの?(オイオイ)