『七つの大罪』ぼちぼち感想

漫画『七つの大罪』(著:鈴木央)の感想と考察。だいたい的外れ。ネタバレ基本。

【感想】『七つの大罪』第217話 心の在り処

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週刊少年マガジン 2017年24号[2017年5月17日発売] [雑誌]

第217話 心の在り処

  • 「…何か古城の屋上に落ちてこなかった?」
    掃き掃除の手を止めた主婦が、高台の自宅門前から古城を見やっている。
    「ワォン」と足元の飼い犬が返事した。

  • 霧に沈む町並みから遥か高く突き出た塔城。そのいただきには土煙が上がり、原因となった巨人の少女を英雄たちが取り囲んでいる。
  • 「…やあ みんな 久しぶり」
    こんな派手な再会になろうとは思わなかった。尻もちをついた少女の膝から身を起こして、照れ臭い思いで挨拶するキング。
    そこで、ディアンヌがばっと半身を起こした。周囲の仲間たち一人一人の顔を食い入るように眺めやる。
  • 「二人とも息災か」
    宙に浮いて薄く笑っているマーリン。
  • 「どっから出て来てんだよ♪」
    やや呆れ気味に笑うバン。
  • 無表情のゴウセルは無言のままだ。
  • ディアンヌさん キングくん!!」「ご無事でしたか!!」
    エスカノールは歓迎とばかりに両腕を広げ、目をキラキラさせている。
  • 「また みんなに会えて ボク… 嬉しいよ!!」
    みんな変わりない。嬉しそうに笑ったディアンヌの目に、じわりと涙が浮かんだ。
    「これで団長が生きてさえくれてたら…」
    辛そうに目を伏せて、ぐすっと鼻をすする。
    「オイラもキミと同じ気持ちさ…」
    キングも表情を翳らせ、そっと彼女の前髪に手を触れた。
  • 「…………」
    周囲の仲間たちは無言である。
  • 「生きてますが?」
    場違いな呑気さで、聞き覚えのある声が響いた。
    ケツの下で かろうじて」
  • 「に゛ゃっ!!?」
    弾かれたように身を捻ってお尻をどけるディアンヌ
  • その下敷きだった瓦礫から金髪の少年が頭を突き出しているではないか。…しれっとした顔のメリオダスが。
  • 「は?」
    キングが目を瞬かせ、ディアンヌは顔をひきつらせる。
  • その時だ。
    「この時を待ちわびたぞ……」
    靴音を響かせ、屋上庭園の出入り口に威厳ある人影が現れた。
    「ようやく集まったようだな…!!」「<七つの…」
    右手を差し伸ばして朗々と呼びかけた――
  • 「「団長のお化けーー!!!」」
    …のだが。
    身を寄せ合って絶叫したキングとディアンヌの大声のせいで(キングは半泣きである)、こちらの声は掻き消されたのだった。
    「…!」
    片手を差し伸ばしたポーズのまま、やり場なく停止してしまう。
  • 「カッカッカッ♪ こんなとぼけた ちんちくりんの幽霊がいるか♪」
    バンは呵々大笑し、エスカノールが よく見てくださいとばかりに懸命に両腕でメリオダスを示した。
    「バンさんの言う通り 正真正銘の団長ですよ!!」
    ◆バンさん、メリオダスのこと「ちんちくりん」だと思ってたんですね(笑)。
  • 当のメリオダスは「ほっ」という掛け声と共に瓦礫から身を抜くと、パンパンと服の埃を叩き落としている。
    「ざっくり言うと まあ色々あって生き返ったのだよ」
    笑って言えば、キングは「ざっくりしすぎだよ!!」と顔をしかめて突っ込み、ディアンヌは「本当に生きてる~~~!!」と嬉し涙を流した。大きな指先で つんつんメリオダスの足をつついて実在を確かめている。
    ◆ここで足をつついてるのは「幽霊には足がない、でも足があるから生きてる」って意図の演出?
    ちなみに、幽霊に足がないというのは日本独自の概念で、江戸時代に、線香の煙で足元が掻き消されている幽霊のイラスト(掛け軸)が怖いと評判になって、そこから広まったと言われています。
  • キングは複雑な顔で一旦口を閉ざした。言わねばならないことがある。
    スス… と空中から降りてきた彼に、メリオダスとバンが「「!」」と注目した。
    「オイラ… 団長のこと勝手に色々 誤解して… 酷いことも たくさん言っちゃったよね」
    メリオダスと目線の合う高さに降りると、項垂れて苦しげに目を伏せる。
    「その… ごめん」
  • 「キング… お前 この羽どした?」
    が。意を決した謝罪は、受け取ってもらえなかった。
    メリオダスは一瞬で背後に移動し、人さし指で つんっとキングの羽をつついていたのである。
    「ちっちゃ♬」
    その傍らで、バンも覗き込んで苦笑している。
  • キングの顔が引きつり、こめかみに血管が浮かんだ。
    「とうとう生えたか!! オメデトウ!!」「これで お前も立派な大人の仲間入りだ!!!」
    「カッカッカッ♬ サイズは お子様だけどな~~♬」
    浮かぶ血管は増え、眉根が寄っていく。
    「もーー!! 何さ!! 人が真面目に話してるのにぃ!!」
    ついに怒鳴ったキングは真っ赤に噴火して涙目だ。
    メリオダスは しれっとした顔で「はっはっ」と笑いを装い、バンは何がそこまで面白かったのか笑い過ぎて涙を滲ませ、キングの冑に宿るヘルブラムは汗タラして見守っている。
    ◆バンさん、テンション高すぎません?(苦笑)酔ってもないのにナチュラルハイっぽい。実は全員集合に浮かれてるのかなあ。
    メリオダスの方は演技っぽいというか、本当の感情は出してないなーって感じなんですが。
  • 「キング~~ 怒らないの!!」
    ディアンヌが苦笑して たしなめた。
    「団長もバンも喜んでくれてるんじゃない」
    「そうかな~~~?」
    不満げに彼女を見上げたキングの周りでは、メリオダスがシラッとした笑顔で「めでたいの~」と踊り、バンは「♬」「酒盛りしよ~ぜ♬」と上機嫌である。
    「も~~~ そうなの!」
    甘い声で叱れば、キングは頬を染めて矛を収めた。
    「ま…まぁ ディアンヌが そう言うなら…」
    デレデレした様子で彼女の目線まで浮かび上がる。
    ◆妖精王様、既に奥さんに操縦コントロールされまくっておる(笑)。
  • 「……」
    「ん?」
    一連の やり取りを見たメリオダスとバンが、少し不思議そうに表情を改めた。
    「…なんか変わったか?」
    と、腕を組んで尋ねるメリオダス
  • キングは ハッと振り向いて、照れながらも得意げに、やれやれと首を振ってみせた。
    「やっぱり気付いちゃった? いやあ… 自分で言うのもなんだけどさ やっとオイラの気持ちが届いたと言うか通じ合ったと言うか…結ばれ合ったと言うか…」「フフ…」
  • 「お前じゃなくてディアンヌだよ!!」
    にべもなく切り捨てられて、無言で固まって カアアア… と頭から湯気が出るほど赤面する。
  • ディアンヌは微笑んだ。
    「うん!」「ボク… 記憶が戻ったの!!!」
  • 「!!」
    無表情のままピクリと反応するゴウセル
  • 「記憶が……?」「それは本当か?」
    マーリンは怪訝な顔をした。
  • 浮かぶ彼女の下では、事情を知らなかったのだろう、エスカノールがキョトンとしている。
  • 「あり得ないな」
    無機質な表情でゴウセルは言いきった。
    「消去された記憶が戻ることはない」
    ◆マーリンの様子から見ても、ディアンヌの記憶は二度と戻らないと見立てられていたんですね。誰もキングに言わなかったけど。いや、キング自身も解ってて、絶対に自分が取り戻すと敢えて言ってたのかな。
    ギーラにしたような記憶書き換えなら簡単に元に戻せても、記憶消去は戻す手立てがない・または難しいというのが一般的な見解だった?
    (じゃあ、王都決戦時にキングによる記憶消去が解除されたのは、本当の奇跡だったんですね。)
    ゴウセル自身、二度とディアンヌの記憶は戻らない・戻せないと最初から確信しててやった。だからバィゼル~リオネス城で再会した時も、謝ったり記憶を戻そうとしたりはしなかった(無意味だから)、ってことでしょうか。
  • 「それは違うよゴウセル…」
    ディアンヌは首を大きく左右に振って立ち上がる。
    「心に深く刻まれた大切な記憶は たとえ忘れたりもやに隠れても」「絶対に消えないんだよ」「そう キミの生みの親が言ってた」「だからボクは三千年前の彼とキミとの約束を果たす」
    ◆「心に深く刻まれた大切な想い(記憶)は誰にも消せない」というのは、かつて(第112話)ディアンヌ自身が言った、彼女の心からの言葉でもあったのに(そう言われて、ゴウセルは ならばとディアンヌの記憶を消した)、今や術士ゴウセルの受け売り・薫陶としてしか扱われてないのは、ちょっと寂しい気がしました。
  • 「「!!?」」
    三千年前と聞いたマーリンとメリオダスの顔色が変わった。
  • ゴウセル
    立って背筋を伸ばしたディアンヌは、まっすぐな視線で射貫いてゴウセルに左手を差し伸べる。
    「一緒にキミが失くした心を取り戻そう!!!」
    彼女の目線の高さには、同じ表情で見下ろすキングが寄り添っていた。
  • 「俺が…」「失くした心……?」
    見上げるゴウセルの表情は茫洋としている。
  • ディアンヌ… 今 さらっと三千年前って言ったか?」
    例によってシラッとした態度でメリオダスが腕を組む。
    「夢でも見てたんだろ♪」
    バンは、馬鹿げてるとばかりに顔をしかめたが。
  • 「あり得ない話ではない… おそらく女神族に伝わる刻還ときがえりの術だ」
    「「「!!!」」」
    そう言ったマーリンに、メリオダス、バン、エスカノールの三人が一斉に顔を向けた。
  • 「それにしても失くした心とは」「一体どういうことでしょう…?」
    真剣な様子で尋ねるエスカノール。
  • さて。屋上庭園の出入り口で、ずっと所在なげに固まっていた人影が、満を持して一歩踏み出した。
    「…私の予兆によれ」
  • 「国王の予兆によれば――」
    だが、その声はまたも、大きなマーリンの声に掻き消されてしまう。
    うぐぐ、と拳を握りしめた人影の心中など知る由もなく、薄く笑みを浮かべた彼女は言葉を続けていった。
    「そこに映ったゴウセルには“かつて”の感情が灯っていたそうだ」
  • 「え…? それって まさか…」
    「ああ」
    マーリンはエスカノールに頷く。
    「かつてのゴウセルには心が存在していた… ということになるな」
    「!!」
  • その時だ。
    「ウォッホン!!」「そのことなら私が話そう!!!」
    ついにしびれを切らした人影が咳払いし、誰にも負けない大声で割って入ったのである。
  • 「「「バルトラ国王!!?」」」
    ジャジャーーン、と庭園出入り口から現れた、老いながらも威厳ある姿。陰に控えているのか護衛の姿は見えない。
    「やっと登場できたわい」とこぼせば、シラッとメリオダスに突っ込まれた。
    「いつからいたの?」
    「言うな」
  • カツカツと靴音を響かせて、王が真っ直ぐに向かったのはゴウセルの前である。
    「これを捜し当てるのに 大分 時間がかかったが」
    そう言い、懐から手のひらに 幾分余るほどの物体を取り出す。
    「…ようやく見つかったよ」「覚えておるか ゴウセル?」
    差し出されたのは、蔓草紋の装飾が施された、美しい金属製の心臓ハート
  • それを目にした瞬間。
    ザ… と、ゴウセルの記憶領域にノイズが走った。
    『ゴ…ウセ』
    記憶されていないはずの誰かの姿と音声。
    彼女と歩いているのはメイド服を着た自分か。睦まじげに手を繋いで。
    『約束…』
  • 「バルトラ そりゃ一体」
    不思議そうに尋ねかけたメリオダスの脇を、風のようにゴウセルが駆け抜けていた。
  • 「!!!?」
    全員がぎょっとした、その一瞬に。
    「えっ…」
    ディアンヌが呆気に取られた声をあげる。
    屋上庭園の外縁を身軽に蹴って、ゴウセルが古城から飛び降りたのだから。
  • ゴウセル待て…!!!」
    血相を変えてバルトラ王が叫んだ時には、ゴウセルドンッと地に降り立ち、そのまま市街へ駆け去ってしまっていたのだった。
  • 「きゅ…急にどうしたんでしょう…?」
    屋上から下を覗いてエスカノールが戸惑う。
    「小便かな」
    シラッとした顔でメリオダス
    「あやつは人形だぞ」
    元の位置に浮いたままマーリンが突っ込めば
    「ウンコだろ♫」
    小指で耳をほじって、空とぼけた顔でバンが言う。
    「だから人形だって」
    キングが呆れ顔で律儀に突っ込んだ。
  • 「国王様… 何を見せたの!?」
    ディアンヌはバルトラに迫っている。
    「え?」
    「それを見た途端 逃げたように見えたもん…」
  • 目を丸くして巨人の少女を見上げたバルトラは、己の握る金属の心臓ハートに目を落とした。
    「…これは かつて ゴウセルの胸に入っていた物だ」「彼自身の話によると 心の魔法が込められているとか…」
  • 「心の魔法…!! なんて素敵なポエムが思いつきそうな言葉フレーズでしょう」
    詩人魂を刺激されたらしい。急いでネタ帳に したため始めたエスカノールの傍らに、「心の魔法………?」と不思議そうに呟くマーリンが降り立つ。
    「国王陛下… 少し見せてもらえるか?」
    右手を差し出せば、「う… うむ」と王が心臓ハートを手渡した
    エスカノールさん、ネタ帳なんか持ち歩いてメモってたんですね。思ってたより身を入れて詩作してたんだなあ。
  • 「それよりも早くゴウセルを追いかけよう!!!」「このまま放っとけないよ!!!」
    自分で心臓のことを王に訊ねたくせに、デイアンヌが大声で急かした。
    「それからマーリン!! ボクを小さくして」
    巨人の大きさでは街なかを動き回れない。
  • ゴウセルの姿は霧に沈む街に消え、とっくに見えなくなっている。
  • バンが にやにやと笑った。
    「先に捕まえた奴に全員で一杯おごるってのはどうだ?」
    「こんな時まで キミって奴は」と、ジト目で呆れるキング。
  • 「団長!!」
    エスカノールはネタ帳をしまって、ぐっと拳を握って訴える。
    メリオダスがしっかりと頷いた。
    「<七つの大罪>七つの掟…」「その四」
    にししっと笑って全員を肩越しに見回すや。
    「『仲間の危機は団員一丸 全力で助ける』だ!!!」
    真っ先に屋上から飛び降りた。
    「おお!!!」
    次いでバン。人間サイズのディアンヌを横抱きしたキングと続き、力が抑制された状態のエスカノールは飛び降りられないのでキングが神器クッションで運んでやっている。最後にマーリンが飛び降りた。
    スペシャルTVアニメ『聖戦の予兆しるし』でディアンヌを横抱き(お姫様抱っこ)したキングが印象的でしたが(DVD/BD下巻のジャケットイラストにも なってた)、 原作漫画でも見ることが出来ました♡
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    で。一方でエスカノールを神器クッションで運んであげてるのが優しいですね。
    第一部の王都決戦でリオネス城が崩壊した時も、キングはやっぱり、ディアンヌを自分で運びながら、飛べない人間たちを神器クマのヌイグルミで護って運んでいましたっけ。咄嗟の時に周囲に よく気の回るひとなんだなと思います。

  • 地上に降りると<大罪>は分散した。
  • メリオダスとバンは、同じ道を選んで二人組でリオネス王都を駆けている。
    あまりに早いので、街の人間の目には ろくに映らない。人の脇を駆け抜けたバンが背負い籠のリンゴを一つ盗んだが、まるで気付かれなかった。
  • 「………なぁ 団ちょは あいつが人形だってこと知ってたのか?」
    駆けながらリンゴに齧りついてバンが尋ねた。
    「まーな… あいつを作った奴のことも よく知ってるよ」
    メリオダスは素直に答える。以前はディアンヌに、ゴウセルが人形だったとは知らなかったと そらとぼけていたものだが。自分の正体も知れ渡った今、嘘を吐き続けるのにも飽きたということか。
  • 「魔神の王も一目置く程の魔術師だった」
    「なるほど~~♪ ゴウセルを見りゃ一目瞭然だわな」
    「その腕が たたって<十戒>の「無欲」に選ばれちまった」
    「「無欲」ねぇ」
    強欲な男は詰まらなさそうに呟く。
    「「無欲」は欲という欲を抱く者 全ての記憶や感情を奪っちまう」
    「お~~ コワ♪」
    「だから魔神の王は 奴を牢へ幽閉せざるを得なかった」
    風のように走りながら、メリオダスは周囲に目を配っている。
    「奴はゴウセルを自分の分身として生み出したのさ」「容姿は恋人と瓜二つ …でも決して情欲を抱かぬよう男の体に作ったんだと」
  • 己がその立場だったらと想像したのか、バンが真顔になる。
    「…ヒデェ話だな…」
    「…ああ」
    己の欲望を――愛する女を諦めねばならなかったのだろうか。そのうえ、その写し身のような、けれど決して同じに愛せぬよう戒めて作った人形を手元に置いたとは。
  • 二人は足を止めた。
    「しっかし 人形だけに参ったぜ」
    街の人ごみを眺めながらメリオダスが頭を掻く。バンも舌打ちした。
    「気配じゃ さっぱし捜しようがねぇな 呼べば応えるわけでもなし…… チッ」

  • ゴウセルく~~ん!!」「お~~~~い」「応えてください ゴウセルく~~~~~~~ん!!」
    一方、声が枯れるほど呼んでいるエスカノールである。
    「ゴウセ… ゲホッ… …ルくん!!!」「ハアッ」「ヒッ」「ゲホッ ゲホッ」
    すれ違う街の人々が「?」と不思議そうに振り返って見ていた。
  • 「応えて~~!!」
    フラフラしながら声を張る近くを、実はゴウセルが歩いていたのだが。気付かなかったし、向こうも素知らぬ顔で応えなかった。
  • 彼には髪型や髪と肌の色を変化させる機能がある。それを用い、髪型を ゆるふわのロングヘアに変えていたのだ。元々<豚の帽子>亭のウエイトレス服を着ていたので、一見して女性にしか見えない。
  • スタスタと早足に歩いていた身体が、フラ…と揺らいだ。フラフラして、歩きながら道端の壁や物にぶつかってしまう。
  • 「大丈夫かい お嬢さん?」
    振り向いた通行人に声を掛けられたが返事せず、ふらつきながら歩いていく。
  • 「……」
    その髪が変化して、色と長さが普段の彼のものに戻った。
    「……俺に心があった?」「…わからない……」「……なぜ 俺はバルトラの手にしたモノを見た途端 逃げ出したんだ?」
    古城を返り見る。随分離れた。ここまで逃げれば大丈夫だろうか。
    「何も思い出せない」「…俺は何を恐れている?」
    思いに耽るように俯き、顔を上げたところで、琥珀の瞳が見開かれた。
    「…!!」
    目の前に遥か高い壁がそびえ、行く手を遮っている。リオネス城の外壁だ。
    「城…?」「………なぜ 俺はここへ…」
  • ザザ
    再び記憶領域に走るノイズと、知らないはずの女性の映像。笑いながら本を差し出す姿。そして、ぐったりとベッドに横たわっている姿……。
  • 「このノイズは…?」「ダメだ… ここは… 良くない」
    ゴウセルは目を伏せた。
    「…………」「…不具合の原因が わからない以上――」
    だらりと垂らした両手の先に、ブン…と闇色の光が灯る。
    記憶モリーごと消去せねば」
    消えゆく彼岸ロストワールド
    両手を掲げ、己の頭に闇色の光を放とうとした、その時。
  • 「だっ」
    駆けてくる足音。ゴウセルが目を向けた直後、
    「めーーーーーーーーーーーーっっ!!!!!」
    バキッ
    駆け込んだディアンヌ両脚飛び蹴りドロップキックゴウセルの脇腹に炸裂したのだった。
  • 次回「また会えたね」

ゴウセルの「心」の件は、魔法の心臓を探しに行くなどの手順を まだまだ後回しして踏むのかなと思っていたので、バルトラ王が わざわざ城から出向いて持参してきた展開に、なんか急に風呂敷を畳み始めたなあ、という印象を抱きました(笑)。

でも確かに、もう そろそろ第二部を畳んでくれていいですよね。今まで間延びし過ぎてた。

 

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キングの謝罪をメリオダスは受け取ったのか?

 

キングがメリオダスに謝罪しました。

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ところがメリオダス、それに返答しませんでした。

無視して羽をからかい、バンと一緒にふざけて、謝罪を曖昧にしてしまったのです。

うぅ~~ん…?

 

かつて、メリオダスを殺そうとしたことを後悔して彼の前から逃げ続けていたバンが、偶然再会して、ついに謝罪した時は(第159話)、核心を避けた言い回しをしたり・背を向け合って話したりと婉曲的ではあったものの、メリオダスはバンの謝罪を ちゃんと受け止めていたように思います。

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彼が自分に牙を剥いた理由(好きな女を生かすため)を理解・共感して赦し、今後も親友として共に在ろうと力強く告げる。

温かくしっかりした信頼が感じられました。

 

しかし、キングは これ(^^;)

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所詮、キングはギャグ担当か~。

メリオダスにとって、自分の秘密主義が生んだキングの不安や怒りも、真剣に考えた末の帰還と謝罪も、どーでもいい、軽いことに過ぎなかったのかな?

元々、メリオダスはキングを「ペット的な立ち位置」の存在だと言ってました。ペットの機嫌が多少悪かった・放っておいたら機嫌が直ってた、ぐらいのことでしかなかったのでしょーか。

……な~んて、つい卑屈なことを考えてしまいました(;^ω^)。

 

だって読者としては、リアルで2年も、キングの怒りや悩みに付き合ってきたんですよ。(ここ数ヶ月は 継続的に この話題が語られていました。)

それで このオチ?

全く真剣に取り合ってもらえず、謝罪を無視されてギャグに流され、受け取っても もらえないとは。

 

たとえば、キングが謝罪の意思があるのに謝る度量がない、みたいな幼稚なキャラだったら、今回のような対応は「メリオダスの大人びた優しさ」に見えたかもしれない。

しかしキングは きっちり言葉に出して謝罪してたので、それを受け取らないのは、メリオダスが大人げないように感じました。

 

 

 

 

 

 

番外編『大罪Vacation』に、仲間を騙して小遣い稼ぎをしたメリオダスを懲らしめたマーリンが、けれど、小遣い稼ぎの理由がエリザベスに贈り物をしたかったからだと知るや、「…………それは悪いことをしたな」と謝罪して、メリオダスが「いいって いいって」と許してやる、という場面がありました。

私の目から見ると悪いのは100%メリオダスなのに、マーリンが謝ってメリオダスが赦す?

それが非常に印象に残って、いつかキングの謝罪エピソードが描かれたら同じようなことになるんじゃないかと戦々恐々としたものでした。

というのも、キングとメリオダスのケンカについて、私はキングだけが悪いとは思っていなかったからです。

 

魔神族で元<十戒>だからという理由で、メリオダスが裏切るんじゃないかと恐れて疑ったキングは、確かに間違っていました。

けれど、メリオダス自身がその不安を煽る態度をとっていたのも確かです。

頑なに事情・目的を説明しない。(別の場面・別のキャラの前では、割と核心的な情報をチョロっと口にしてるのに…)

キミは本当に味方なのかと問われれば、お前が俺に敵対するなら敵だと返す。挙句、話に関係ないキングの身体的欠陥(羽無し)を指摘し、彼を激怒させていました。

明らかに「わざと」キングの怒りを増大させる言動をとっていたわけで。

メリオダスにも非があると思いませんか?

 

 

今回の謝罪エピソード。

謝られたメリオダスが度量大きく許してあげる、という定番の形にならなかったのは、かなり驚いたけれど、少しホッとも しました。

けど謝罪を無視するってのは、もっとダメだろうと(苦笑)。

 

すごく個人的な願望を言いますと、ケンカ両成敗的なのが希望でした。

キングが謝って、メリオダスも ちょこっと「悪かった」「怒らせたのに仲直りに来てくれて嬉しい」的なニュアンスを見せるみたいなのが。

「…俺も不安にさせて悪かったな」とか「ありがとうな。これからも頼むぜ」

みたいなの。

そっちの方が、本当の度量の大きさではないかと思うのである。

 

 

 

それにしても。

覚悟はしてましたが、とうとう、メリオダスは自分から「俺は二度目の寝返りはしない」と証明するための説明はしませんでしたね。

キングが勝手に怒って、勝手に悩んで、勝手に過去を見て、勝手に反省して、クソ真面目に謝罪に来ただけ。(そして謝罪を無視)

これ以降は「メリオダスとキングは固い絆で結ばれた<七つの大罪>の仲間」という第一部時点の扱いに戻るのかと思いますが。

個人的には、微妙にケチが付いたような感覚があります。

キングはメリオダスにとって軽い存在なんだなあという印象が付いちゃったから。

 

しかし済んだことですから、気持ちを切り替えないとね!

 

 

 

そういえば、ケンカ時にキングが言ってた「初めて出会った時の言葉」、本当に伏線回収されないまま終わってしまいましたね。(^^;)

それも残念でした。また今後に期待。

 

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うそつきメリオダス

 

ゴウセルが人形だったと知ってたし、作った奴のことも よく知ってると、細かい事情をペラペラ語ったメリオダスさん。

へ? 術士ゴウセルのことまで全部知ってたの!?

 

とゆーことは、3000年前の聖戦の時点でメリオダスは500歳以上だったと確定…?

とかいうのは置いといて。

 

メリオダスさん、(作中時間で)一ヶ月ちょい前にリオネス王都でゴウセルが暴走してマーリンに一時封印され人形の正体をさらした時(第114話)、ディアンヌゴウセルが人形だったことを知っていたのかと訊かれて

「うんにゃ 今 初めて知った」

と答えてたじゃん!?

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あれは真っ赤な嘘だったってことですか。ケロッとした顔して。

 

しかもですよ奥さん。

上述の場面、「ゴウセルが人形だったと知らなかったのに少しも動じないばかりか、何者であろうと仲間だと笑って言いきるメリオダスは凄い」と、ディアンヌやスレイダーは称賛し・エリザベスは うっとり頬を染める…という、メリオダス礼賛の流れだったのです。 

なんだよー、ゴウセルの正体を知らなかったどころか、元々3000年前の仲間で、作られた経緯まで知ってたんじゃん!

嘘ついて高評価されてたなんて、なんかズルいなぁ。

 

 

そもそも、どうしてメリオダスは嘘をついたのでしょうか?

例えば、メリオダスが自分が元<十戒>だということを隠したいと思っていたのだとしても。リオネスでゴウセルが暴走した時点で「人形だと知っていた」と明かしたとして、そこから「メリオダスゴウセルは<十戒>の仲間だった」と推測することは不可能です。

つまり、あの場面で「知らなかった」と嘘をつく必要はありません。

必要のない嘘を必要のないタイミングで つく意味が解りません。

 

 メリオダスが、仲間に不必要な嘘をつく人だと明かされた。

なんなんでしょうね、この展開…。

 

 

ついでにもう一つ。

これは「嘘をついた」ってほどのことではありませんが。

 

ドルイドの修練窟でケンカした時(第134話)、メリオダスはキングに

「なぁ キング… お前こそ 本当に妖精王なのか?」「先代の妖精王ダリアも 先々代… 初代妖精王グロキシニアも 立派な羽を持ってたけど」「なんで お前には生えてねえ?」

と言って激怒させました。

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話を逸らすために人の身体的欠陥を指摘するなんて酷いな、と当時から思ってましたが、いやいやメリオダスは妖精族の羽の事情なんて詳しく知らなくて、そこまでの悪意なく純粋な疑問を口にしただけなんだろうし……とも思っていました。

 

ところが今回、妖精族の羽は成長によって生える(生えていない妖精は一人前ではない)と、メリオダスが知っていたことが確定。

 

…そっかー。

知ってて、あの場面でそれを口にしてたのかー。お前は妖精王として肉体的な欠陥があるだろと。ああ言えばキングが動揺・傷つくと確信してて言ったんですね。

メリオダスもキングに肩を裂かれてムカついてたんでしょうし、そもそもケンカ時の発言なんだから当然ではあるけど。

 

でもまあ、今回、謎の踊りで祝福してくれたから良かったですね。

 

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<無欲>の戒禁のこと

 

「「無欲」は欲という欲を抱く者 全ての記憶や感情を奪っちまう」「だから魔神の王は 奴を牢へ幽閉せざるを得なかった」 

 え…。

なんすかそれ。

そんなんじゃ全然役に立たないじゃーん(汗)。

術士ゴウセルは人形ゴウセルを作れたから<十戒>として働くこともできたけど(人形を介してだと戒禁は発動しないってことですよね)、彼以外だったら幽閉されたっきりになるしかないってことじゃないですか。(戒禁の効かない)<十戒>や、(恐らく効かないのだろう)魔神王・魔神王代理以外の誰にも会えなくなる。会った端から記憶と感情を奪ってしまうから。

 

「不殺」の戒禁もそうですが、魔神王は何を考えて こんな使い勝手の悪すぎる戒禁を作ったのかしら。

 

…それとも、戒禁を魔神王が作ったっていう前提自体が間違いなのかなあ?

魔神王が何者かに呪われてて、それを十分割して<十戒>に戒禁として与えることで緩和してたとか…。考えすぎですね。

 

 

…しかし。

「無欲」の戒禁が「欲という欲を抱く者 全ての記憶と感情を奪う」のなら、それに引っかからなかったキングとディアンヌって、全く欲が無かったってこと?

聖人か? 実は もの凄いことだったのかも。

だから術士ゴウセルは、初対面なうえ敵だった二人と友人になりたがったのでしょうか? こんな無欲な者たちなら間違いなく約束を果たしてくれる、と踏んだ?

 

 

一説に。

宗教上の「無欲」とは、何も欲しがらない望まないとか、生きたい食べたい寝たいなどの当たり前の欲望すら抱かないという意味ではないそうです。

相手から貰いたい・奪いたい・してもらいたいと思うのではなく、相手に与えたい・してあげたいと思うこと。これが「無欲」なんだそうな。

そんな風に見ると、キングとディアンヌが「無欲」だというのは解る気がします。

 

 

 

術士ゴウセルに恋人がいて、人形ゴウセルは彼女に似せて作り、しかし情欲を抱かぬよう男性に変えて作ったと。

……術士ゴウセルは彼女の姿を覚えてるんですから、記憶は失ってない。彼自身は戒禁に引っかからなかったってことですよね?

それとも、「無欲」の戒禁って、記憶と感情の両方でなく、どちらか一方を奪うものなんでしょうか? だとしたら感情を失った?

恋人の方はどうなったんでしょうね。戒禁に引っかかって記憶を失って、術士ゴウセルを忘れてしまったんでしょうか。

 

 

 

余談。

魔術師の男が、過去に失った恋人の姿をした、けれど性別は男に変えた、人間そっくりの人形を作って側に置く、という設定。古い漫画ですが山口美由紀の『タッジー・マッジー』を思い出しました。

そっちの話では、魔術師の男は寿命が尽きる間際に恋人と会うことが出来たのだけど、術士ゴウセルは満足して死ねたんでしょうか。

 

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サイズ可変で便利に

 

久々に人間サイズになったディアンヌちゃん。

その服が、巨人の時 着てた物のまんまだという点に驚かされました。

 

今まで人間サイズになるには、マーリン作の魔法薬「ミニマム・タブレット」を飲むか、偶然チキンマタンゴの胞子を浴びるかで、縮むのは身体だけ。その度に素裸になって着換えなくてはならなかった。

それが。服まで縮んでるじゃないですか!

 

もしや、身に着けたもの含めて同時に縮小化する魔法か魔法具マジックアイテムかを、マーリンが新しく開発したのでは? 今まではミニマム・タブレット一粒七時間だった時間制限も緩和されてたりするのかしら。

流石はマリえもん。どんどん便利になりますね。

 

 

さておき。

ディアンヌは今後キングと結婚して妖精界へ行き、そこで何百年何千年と暮らすことになるでしょう。

となれば、常にマーリンと会えるわけではない。

マーリンと会えなくても自由にサイズを変えられるように、(ミニマム・タブレットみたいな消費していく魔法薬でなく、)半永久的に使える魔法具を、マーリンが開発してくれないかなあ。もしくは、キングに縮小化の魔法を習得させるか。

 

それとも、意外と妖精界には「生き物のサイズを一時的に変える花粉を出す植物」とかが普通に生えてたりするのでしょうか。チキンマタンゴは いっぱいいそうですね。

 

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七つの大罪>七つの掟

 

スペシャルTVアニメ以来久々に、七つの掟がまた一つ明かされました。

メモっておこう。

七つの大罪>七つの掟

  • その一 不明
  • その二 不明
  • その三 <七つの大罪>は互いの罪に干渉せず
  • その四 仲間の危機は団員一丸 全力で助ける
  • その五 団員同士のわだかまりは喧嘩で決着をつける
  • その六 団員同士の殺し合いは 他の団員が 総力を以て止めなければならない
  • その七 不明 

 

 

 

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