【感想】『七つの大罪』第216話 いざ 大罪集結へ!!
週刊少年マガジン 2017年23号[2017年5月10日発売] [雑誌]
第216話 いざ 大罪集結へ!!
- 中央に歪な大樹を屹立させた、現代の妖精王の森。
神器 を枕に眠っているキングに、肉食獣の大きな口が近づけられた。ハッ ハッ と息を吐きながら様子を窺い、大きな舌で ぺろっと頬を舐める。- 「……ん…」
パチ… とキングが目を開けた。至近距離に、見慣れた黒妖犬 の顔が見える。
「バホッ」
「やあ オスロー オイラ とってもいい夢を見てたみたいだ」
ぱたぱたと尾を振る友人に、横たわったまま少年は微笑んだ。
「ハッ ハッ」
「どんな夢かって?」
犬は声すら出していないが、その心の声を妖精族は読み取ることが出来る。組んだ両手人差し指の先を ちょんと合わせて、もじもじ押し合わせながら、キングは うっすら汗をかいて林檎のように頬を染めた。
「そ…… その ディアンヌと キ… キ……」「キッスをしちゃった」
言い淀んだあげく、出たのは羽虫のような囁き声。 - 即座に、はっきりした大きな声が返った。
「夢じゃないよ」 - 押し合わされていたキングの両人差し指が、スカ、と ズレ外れる。
枕元に巨人の少女もいたのだ。ぺたんと座り込んで、いつもの愛らしい顔でキングを覗き込んでいる。 - 「ディ…ディディ ディアンヌ!!?」
跳ね起きて正座したキングに、彼女は明るく言った。
「ビックリしたよ~? 急に倒れちゃうから でも元気みたいだね」
◆倒れた原因は、主に、度を過ぎた興奮のためなんでしょうが。ディアンヌがキングの鼻と口 両方を塞いでいたためでもあったろうと思う(笑)。 - 「あの… どうしてオイラと… その …キ… キ……」
キングの質問は、肝心なところが口から出てこない。再び両人差し指を押し合わせながら、もじもじ視線を彷徨わせて
「…いや オイラは すごく うれしいんだけど…」
と付け足した。 - ディアンヌは、ツインテールにした髪の先を恥ずかしそうに摘まんだが。
「二百年前の約束を守ってくれた お礼」「…かな?」
いつものように髪先で隠すだけでは足りなかったらしい。大きく背けて伏せた顔は、キング以上に真っ赤に染まっていた。 - ぽふ、とオスローが
神器 に長い顎を乗せる。 - キングは丸く目を見開いた。
「二百年前の………」「約…束? ……え?」
思い当たるものは一つしかない。
『キミの元に必ず戻る』『…約束するよ』
200年前、人間の村が焼き討ちされているのに気付いて、共に暮らしていた洞窟を飛び出した時。留守を任せた幼いディアンヌに、そう言い残したのだ。 - だが、その記憶は二度に渡って消されたはず。この一ヶ月、戻る気配はなかったというのに。
「まさか… まさか…」「…消えた記憶が!?」 - ディアンヌは微笑んで頷いた。
「ゴウセルがね ボクへのお詫びとプレゼントにって戻してくれたんだ」
◆違うよ。人形ゴウセルの世話をする約束をしたから、そのお礼の贈り物だと言って記憶を戻したんだよ。お詫びとは言ってないし無償でプレゼントしてくれたわけでもない。 - 「ゴウセルが………」
「ゴウセルは二人とも キングが思うような悪いコじゃないよ」
軽くたしなめてから、「…後でキミに そのことで相談したいことがあるの …いいかな?」とディアンヌは付け足した。
「う…うん もちろん」 - 頷いたキングの後ろでは、オスローが
神器 を がじがじ齧って、次いで跳ね上げて、ボフン ベフン とヘディングして遊んでいる。 - 「…………」
両膝をついたまま、キングは悄然と項垂れた。
「オイラ… 彼に ひどい態度を とっちゃったな」
その後頭部を、くわえた神器 を振り下ろして ボフ、とオスローが叩く。まるで、子供を叱ってゲンコツを落としたかのようなタイミングで。 - 「心に刻まれた大切な記憶はね たとえ
一時 忘れたり靄 に隠れちゃっても」「決して消えることはないんだって…」
かつて自分自身も語ったことを受け売りのように話して、ディアンヌは一度口をつぐんだ。
「………………
ボク…… ずっと言いたかったことがあるんだ」 - 「?」
キングは項垂れていた頭を上げる。 - 果実のように染めた頬で微笑んで、彼女はキングを真っ直ぐに見つめていた。
「ボクはキングが 今までも これからも …ずっと大好きだよ」「…キングは今も ボクを好きでいてくれる…?」 - キングの頬も染まる。
『キミをずっと好きでいるし 側にいるよ!!』
200年前、まだ幼かったディアンヌに「ボクをずっと好きでいて」と願われて、キングはそう誓ったことがある。
けれど彼女は「ずっと好きでいてくれればいーの!」と背を向けて、本当は どう思っていたのか、キングには よく解らなかったのだ。 - 王都決戦で記憶を取り戻した当時のディアンヌが、それを悔いていたことをキングは知らない。
『ボクね… すごく後悔してるんだ』『昔ね… ずっと昔… キングが言ってくれたの「キミをずっと好きでいる」って』『でも ボクからキングには何も言わなかったんだ そんなの伝わってると思い込んでいたの』『だから キングが帰ってきたら―――――――ちゃんと言うの』『キングが好き…って』
そうエリザベスに話していたことを。何も知りはしない。 - だが。
どうであろうと、答えなんて とっくに決まっている。 - キングは浮かび上がり、彼女の唇に優しくキスをした。
今度は、お互いに目を閉じて。 - やがて離れ、彼女の頬に添えていた右手を下ろすと、今さら真っ赤になって硬直し、視線を下に向ける。
「……」
言葉が出ない。伝わっただろうか? - 「……」
ディアンヌも言葉を失っていた。
これまで以上に真っ赤な顔。驚きと喜びに見開いた瞳で呆然とキングを見つめ、自分の唇に触れる指先は、微かに震えている。 - 言葉を使わなくとも伝わることもある。こんなにも。
- そんなことは我関せずとばかりに、
神器 に抱きついてゴロゴロ転がって遊ぶオスロー。 - 「………………………………」
キングは尚も沈黙を続け、ディアンヌは気恥ずかしさに耐えられなくなったように話題を変えた。
「そっ」「そうだ キング 背中の具合は もういいの?」 - 「背中?」
キョトンとしたキングは、肩越しに己の背中を見やる。それどころではなかったので気にしていなかったが、身に着けているのはズボンと靴だけ。何故か上着とシャツがない。まるでグロキシニアみたいに。
「そういえば なんでオイラ裸だったん…」
その目が大きく見開かれた。己の肩甲骨の上に見える、一対の小さな……羽。
「はっ…」
蝶に似た形のそれは、意識すれば ピコピコ と自在に動く。
「生えたーー!!!?」 - キングの最大のコンプレックスであり、ここ一ヶ月は切実な悩みの種でもあった、いつまでも生えなかった羽。(
初代妖精王 には「前代未聞」とすら言われた。)それが、それがついに。 - 「羽が生えてる…!! まるで夢みたいだ 信じられない~~」
顔を緩めて ぱたたた… と羽ばたかせてみるキングを、ディアンヌもニコニコと見つめている。
「これでオイラも立派な妖精王になれ……」 - そこでハッと強張った。
初代妖精王 の素晴らしい羽を思い出して。強張ったあまり正装 に変身してしまったほどである。
自分の羽なんて15cm程度のミニサイズ。身の丈ほどはある初代に比べて、見劣りし過ぎではないか。 - ズ~~ンと落ち込んだキング(おっさん姿)を、ディアンヌが笑って慰めた。
「あはっ 生え始めは そんなもんスってグロキシニアが言ってたよー?」 - キングが気を失っていた間に親しく会話していたらしい。となれば、上着を脱がしたのも彼だろうか。
気付けば、あちこち痛々しく破れていたはずのディアンヌの服も、綺麗に修復されている。
◆ディアンヌの服、鉱樹オルドーラでの戦いで胸と腹に結構な大穴が開いていたのに、綺麗に直ってます。
時間や状況的に、ディアンヌが自分で直したとは思い難いので、グロキシニアが魔法で直してやったっぽい?
ディアンヌの服、あれだけ破れたからには、第一部の服に戻るか新しい服にチェンジするかなと覚悟してましたが、このままでいくようですね。
反対に、ずっと変わらないだろうと思ってたキングの服が、どーやらチェンジになるようで…。 - 「あ… ねえディアンヌ
初代妖精王 様は今どこへ…?」「ここは妖精王の森だよね…?」 - 変身を解いて訊ねれば、ディアンヌは笑って案内を始めた。小さな蝶(本物である)と戯れていたオスローも付いてきて、キングは神器を小脇に抱えて頭にヘルブラムの冑を乗せ、二人と一匹で妖精たちの うろつく美しい森を進んでいく。
◆そういえば、マトローナとザルパ一家はどうしたんでしょう? - やがて、ディアンヌが指さした先に、その光景を見たとき。
キングの目に涙が浮かんだ。 - 木漏れ日の射すなか、3000年ぶりに抱き合う
兄 と妹 。 - こんなにも胸に迫るのは、嬉しいのは、わずかな間とはいえ、キングが「グロキシニア」だったからだろうか。
- 木陰から、いつもゲラードにくっついている小妖精プオーラが、そっと見守っていた。
- 妹を抱き寄せるグロキシニアの顔は暗い。
「許してくれとは言わないっス… ただ… 謝らせてほしい……」「ロウのこと… お前の生死も怖くて確かめられなかったこと…」 - 抱き寄せられたゲラードは俯いた。
「もう過去の出来事です」「…それに彼も私も覚悟しておりました…」
こらえきれずに涙が溢れ、嗚咽で喉が詰まる。
「…っ」「ふ…ぐっ …兄上!!」 - その時だ。
「グルル…」
足元のオスローが唸り、バキバキと骨を軋ませて巨大化し始めたのを見て、キングは「!!」と驚いた。
「グァルッ」 - グロキシニアとゲラードも目を向ける。
- 「オスローー!?」
今までになく大きくなったオスローを前に、キングとディアンヌは大いに慌てた。この大きさなら巨人でも楽々呑み込めそうだ。 黒妖犬 は相手に警戒心を抱くほど大きくなる。牙を剥き、いつになく鋭い目で睨む対象はグロキシニアだ。- ゲラードが前に飛び出す。こらえてくれと言わんばかりに片手を突き出して、焦った様子で訴えた。
「誤解です オスロー この方は私の兄上 敵ではありません」 - 「あたしに敵意を持つのも当然っス」
グロキシニアは うっすらと微笑んでいる。
その落ち着きは、黒妖犬 ごとき何ほどでもないということでもあろうし、向けられた怨嗟を受け止める覚悟だということでもあるだろう。
「ガルルルルッ」
常人なら竦みあがっだろう威嚇にも動じず、「…やあ」と挨拶を返せば、気が済んだのだろうか、オスローはスススス…と縮んで、元の呑気そうな姿に戻った。ゲラードに歩み寄り、身を摺り寄せる。
「ハフォッ」 - ゲラードはオスローに背を預けるようにして頭を撫でた。
「オスローは兄上が姿を消した後に生まれて…」「兄上の代わりに私を守ってきてくれました…」
じゃれつかれ、遠慮なしに べろべろっと頬を舐められて、ゲラードは くすぐったげに目を細める。
「…今では お側につけぬ私の代わりに現妖精王 様を お守りしています」 - グロキシニアが眉を上げた。
「!」「まさか………」「あたしが あの時 聞いた 誰かの心の声は――」
3000年前、復讐の闇に呑まれて大槍 をロウめがけ投げ放った、あの時。
《次に生まれ変わったら…》《必ず お前を守る……》《お前の大切なものを 俺が代わりに守る》《どんな姿になろうとな》
あれは、大槍から逃げることなく微笑っていた、あの男の声だったというのか。
◆オスローがロウの生まれ変わりだったという設定には、色々言いたいことがあるのですが、それは後にして。
ロウに大槍を投げた瞬間の「心の声」ってやつ、キングには聞こえていませんでした。つまり、キングの読心能力はグロキシニアに比べても かなり低いってことなのかな。(グロキシニアの体を使ってても そうだったってことは、精神的な問題?)
あと、「お前の大切なものを俺が代わりに守る」ってコトは、今後オスローはグロキシニアも守るのかしら。 - 「……」
グロキシニアはオスローを見つめた。ヘッヘッと息を吐きながら尾を振っている、彼 の男の面影など ありようもない獣の姿を。
「…律儀な奴っスね」
顔を覗き込んで、幾分の揶揄を込めて言えば、大きな口で がぷっ と頭を噛まれた。まあ、甘噛みの範疇だけれども。 - ビクッと震えたゲラードが、またも慌てて愛犬を叱る。
「オ… オスロー!!」
「いや… いいっス」
グロキシニアは甘んじて受け入れることにしたようだ。 - 取り返しのつかないはずだった過去の惨劇が、今、和解を迎えている。
「…………」
それを見つめるキングの表情には、複雑な色が浮かんでいた。
自分も赦さなければならないのだろう、今まで赦せなかった多くのものを。まだ、完全に割り切れてはいないのだけれど。 - 彼の様子を、ディアンヌが横目で窺っている。愛おしそうに、見守るように。
- 彼女は笑って言った。
「キング… 一緒に王国に戻ろうよ」
「!」
考えていたことを言い当てられた、そんな顔で振り向いた彼に「…そしたらエレインにも会えるでしょ」と理由を重ねてやる。 - グロキシニアも笑って促した。
「行くといいっス …森のことなら あたしが代理で守ってやるっスよ」
「兄上…」
呟くゲラード。彼女に撫でられて、オスローは機嫌良さそうに尾を振っている。
◆グロキシニアさん、完全に味方に戻った扱いになってますが、肉体は未だ魔神化したままだし、戒禁も授けられたまま(つまり、魔神王に呪われたまま)なんですよね。
まあ、ギーラの例もあるので、このまま何事もないのかもしれないけど…。
何かが起きるとしても先のことでしょうが、このままでは済まないと思うし、また、済んでほしくはないなとも思っています。 - 「今 王国がどんな状況になってるか わからないけど…」「だからこそ 今 駆けつけなきゃ」
ディアンヌは ぐっと拳を握った。
「ボクらは<七つの大罪>なんだから!!!」
快活にウインクしてみせる。
◆過去編に入ってから異常に幼児っぽくなっていたディアンヌが、急にしっかりした感じに戻りましたね。記憶が戻って精神的にも成長した(戻った)んでしょうか。
考えてみたら、500年と16年分の記憶のないディアンヌは、精神的には、ホントに幼い女の子の状態だったのかも。 - 「うん」
キングは真面目な顔で頷いた。そして微笑って言ったのである。
「…それにゴウセルも救わなきゃ」「だよね?」 - ディアンヌの脳裏に、3000年前の人形ゴウセルの声とまなざしが浮かんだ。
『お願い』『ボクを正しい方向に導いて』
3000年後の今は感情と記憶を失っているという彼。だから迷わぬよう友となって導いてほしいと、車椅子のゴウセルに頼まれていた。
元より、後でこの件を彼に相談したいとは思っていたが。まだ言えていなかったのに、どうして伝わったんだろう。
「うん!!!!」
満面の笑みでディアンヌは頷いた。
やっぱりキングは凄い。ディアンヌの気持ちを誰よりも酌んでくれる。
◆ここ、読んでて「は!?」ってなりました。
救う? ゴウセルを? 何から???
えらくトートツですが、キングさん何言ってんの?
10p前、ゴウセルが記憶を戻してくれたとディアンヌが説明した場面で、続けて「後でキミに そのことで相談したいことがあるの」と言ってたのが、恐らく「人形ゴウセルと友達になって導くよう術士ゴウセルに頼まれたので、協力してほしい」って件だったんだと思うんですが。それ以降、相談した場面が描かれてないのに、何故かキングが全て承知した立場で「ゴウセルも救わなきゃ」と言い出す。
何だこりゃ。破綻してませんか。
こじつけるなら、キングが当てずっぽうで言った? それともディアンヌの記憶や心を読んでる? 移動中の描かれてない場面で相談してた?
……まあ、作者さんのミスですよね、これ。
作者さん、疲れてます? - 「よ~~~し!! それじゃ頼むよオスロー!!」
キングが勢いよく拳を振って指示を飛ばした。
「バフォン」
オスローが元気よく応える。 - 同時刻、リオネス王都の町外れにそびえる古城。
霧に沈んだ街並みを眼下にする屋上庭園に、五人の英雄たちが集まっていた。 - 「懐かしいな~ <
七つの大罪 >が聖騎士長殺しの容疑をかけられた古城じゃねーか」
庭園外縁の段差に腰かけて、<豚の帽子>亭店長服のメリオダスが辺りを見回している。 - 「おい マーリン♪ 俺たちを こんな場所に集めて一体なんの話だ?」
バンが歌うような口調で尋ねれば、魔女は笑み含みに口を開いた。
「今朝」「国王が再び予兆を見た」 - 「「「「!!」」」」
メリオダス、バン、そして、いつものバーテンダー服のエスカノールと、何故か<豚の帽子>亭の旧ウェイトレス服のゴウセル。四人の男たちの視線を集めて、マーリンは朗々と予言を詠った。 - 「「真昼の月輝き」」
今、青い空には、白い満月が薄く貼りついている。
「「たれこめる霧 王都を満たす刻 ――――」」
空は晴れていたが、王都は深い霧の中だ。 - 「!」
その時、何かに気付いた様子で顔を上げるメリオダス。 - マーリンの声は続いている。
「「我らを王国の反逆者たらしめた因縁の城の頂 に」」 - 「ん?」
メリオダスの頭上、10数mほどの空に、ゆらゆらと揺れる大きな円盤が現れていた。高度はまるで違うが、遥か天空の白い月と並んでいるかのように見える。 - 「「
陽炎 の如き もう一つの月 現れ――」」 - 「どっかで見たことがあるような…」
呟いたメリオダスの視界が、ふっと暗くなる。
月のようにも見えた『空間の穴』から巨大なお尻が降ってきて日光を遮ったから。そう、彼が知覚するや否やの間に。 - 「「<七つの大罪>は 再び集結する」」
ドシンッ - 轟音を立てて震動する古城。
崩壊こそ しなかったが、屋上庭園の石畳は粉々に割れた。また、屋上から突き出る尖塔の一つに巨大な戦鎚 の柄が当たって ひび割れてしまっている。 - 突然の事態に、無表情で微動だにしていないゴウセル。薄く笑んで得心顔のマーリン。エスカノールは縮み上がって変なポーズで硬直しており、バンは呆れた様子で歯を剥いていた。
- そして。
「えへっ」
落下するとは予想外だったのだろう。古城の屋上に尻もちをついて引きつり笑いしているディアンヌと、その膝に しがみついているキング。 - 大きなお尻の下には、馴染みの金の癖毛の誰かさんが敷かれていたが、まだ誰にも気付かれていなかった。
- 次回「心の在り処」
かつて(第125話)、キングがオスローの力でキャメロットに駆け付けたとき、メリオダスは『空間の穴』から飛び出てきたキングを、顔を わし摑んで放り投げたものでした。
でも流石に、デイアンヌの超級
もちろん、メタ的な視点で見れば、メリオダスが下敷きになったのは、彼が死んだと思ってるキングとディアンヌとの再会を演出する下準備だろうとは解るのですが。
ここはあえてコジツケ妄想してみる。
昔からメリオダスはディアンヌからの暴力は甘んじて受けてるよーな面がありましたから(第5話など、嫉妬で暴れたディアンヌに、メリオダスは たんこぶだらけにされてた)、あえて尻に敷かれたのかもしれない、と。
男だったら投げるけど、女の尻を わし掴んで投げたら可哀想だろ(古城から下に落ちたら巨人族でも怪我しそうですし)、と思ってくれたとか。
下敷きになった珍しいメリオダスの姿に、個人的には、ちょっぴり溜飲が下がったかもしれません。だってメリオダスは ず~っとカッコいいからね(笑)。たまには。
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モヤッとした。
↓この場面。
項垂れたキングの頭をオスローがクッションで叩く演出までされていて、作者さんはこのオチを目指して、丸2年かけて喧嘩エピソードを描いて来たのかぁと、うら寂しい気持ちになりました。
なんだか納得できないなぁ~~と思ってしまうのは、ディアンヌが「ゴウセルは悪いコじゃない」とする根拠が「記憶を戻してくれたから」だからです。
だって、記憶を消したのもゴウセルなのに。
しかも無償で返したわけでもない。(ディアンヌは お詫びとして返してもらったと、何故か嘘ついてキングに報告してたけど。)
それに、術士ゴウセルと人形ゴウセルは別人なのに、まるで同一人物であるかのように、術士ゴウセルのしたことは人形ゴウセルの手柄、みたいに扱っているのも変。
そもそも、現代(現実)のゴウセルはディアンヌに記憶を戻してないし詫びてもいないんですけど?
何より納得できないのは、術士ゴウセルが
●ロウたち人間を利用して<
●彼らの殺し合いの感情を感じて喜んでいた
●その救援へ向かうキングらを妨害した(結果、間に合わず、ゲラード以外 全員殺された)
という行いをしているのに、ディアンヌが それを完全無視(もしくは軽視)して、その件そのものを無かった扱いにしているところです。
私は別に、術士ゴウセルが超極悪人だとは思っていません。
人形ゴウセルはじめ、自分の身内には優しくて、深い愛を注いでいると思います。彼には彼の価値観や事情があって、例によって「可哀想な過去」があったりして、彼の世界では彼の行いは正義・正道なのでしょう。
それに、彼はきっと自分の命を捨てて、感動的に聖戦を止めたんでしょうね?
しかし、前述の行いがある限り、私は彼が「悪いコじゃない」なんて とても言えませんし、言いたくありません。
失われた沢山の命を無視・軽視して「(私には 善いことしてくれたから)ゴウセルは悪いコじゃない」と言い張るディアンヌに不信感さえ抱くほどです。
(あの状況でロウに惚れて庇おうとしてたゲラードにも、同じような感想を抱きましたけど。
前から思ってましたが、この漫画、モブキャラの命の価値が羽毛より軽い。ゲラードもディアンヌも、たった今 沢山殺されてるのを無視して、それどころか無かったかのよう振る舞って、彼は私に優しいから善い人よ、と主張してくる。)
ディアンヌの主張は、私の目から見ると、目の前で友達を殺した男が、けれど自分には飴玉をくれたから「この人は悪い人じゃない」と訴えているかのようです。
作者さんが術士ゴウセルを善人扱いしたいなら、どうして前述の行いをさせたのでしょうか。そんなエピソードなんて無しで、単純な善人として描いてくれていたら、こんなにモヤ~っとしなかったのになあ。
今回、反省するキングは言いました。
「オイラ… 彼に ひどい態度を とっちゃったな」
恋人の記憶を消され、それが原因で彼女が失踪し生死不明になろうとも、怒ってはいけなかったようです。
あるいは術士ゴウセルに対して、彼の指示で今しも仲間がどんどん殺されていようとも、彼の目的が「聖戦を止めること」だと説明されたなら、
「お前と話すことは もう何もない!!」
と言ってはならず、仲間の救援は放棄して妹が瀕死にされようが無視して、「キミはいい人だ、もっと話を聞かせてくれ、キミの子供の面倒はぜひ見よう」と愛想よく時を超えた友情を結ばなければならなかったようです。
……なんか、辛いなあ。
勝手な考えですが、この漫画が少女漫画か、あるいは女性の作家さんだったならば、「ゴウセルは悪いコじゃないよ」という台詞の前に「キングはボクを心配して怒ってくれてたんだよね、ありがとう」みたいな台詞を付けて、一応はキングを
だって、キングがあれだけ怒ってたのって、結局はディアンヌのためなんですよ。(あるいは、3000年前のゲラードや仲間たちのため。)
ディアンヌにとっては大して怒るようなことではなかったんでしょう。そりゃ辛かったでしょうが、自分のことですし、記憶が戻ったなら もういいと切りかえるのは楽かと思う。キングの心配なんて余計なお世話でしかなかったのかもしれない。
また、ケンカは理由がどうあれ不快なものだから、早々に丸く収めてしまいたいという気持ちも解る。
けど。贅沢を言えば、あなたの恋人のキングの気持ちも、もう少し酌んであげて欲しかったです。余計なお世話だけど(´・ω・`)。
この始末の付け方だと、キングの立つ瀬がない。
カノジョなら、カレシを立ててあげることも大切じゃよ…。
おこがましいついでに、もう一つ。
私はやっぱり、術士ゴウセルが記憶を戻してくれたから、人形ゴウセル(術士ゴウセルとは別人)も悪い子じゃない、という論理は歪んでいると思う。筋が通っていないから説得力がないです。
どーせなら
「ゴウセルは本当は悪いコじゃないって、ボクは信じてるよ。だからもっと彼と話したい。本当の友達になりたいんだ。キング、協力してくれる?」
系の言い回しだったらなあ。
ゴウセルが仲間であったはずのディアンヌの記憶をわざと消したのも、それを少しも悪いと思ってないのも、再会しても謝らなかったのも、誤解でも冤罪でも何でもない、事実なんですよ。
それを無視・軽視して「悪くない」とばかり言って甘く庇うのは、私は、いいことだとは思わないです。
とゆー、一読者の感想でした。
・
・
・
ディアンヌ(作者さん)が、二人のゴウセルは「いいコ」だとは言わず「悪いコじゃない」と、もってまわった表現を使っている点に、何らかの含みを見出すことも不可能ではないのかもしれませんが。
まあ、穿ちすぎですね。\(^o^)/
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オスローがロウの生まれ変わりだった件
大ショックでした・・・。(◎_◎;)
オスロー、可愛くて好きでした。
ひっくり返ってモフモフのお腹を出して撫でてもらってたり、キングの顔をベロベロ舐めてたり、尻尾を振ってじゃれ回ってたりしてて、微笑ましかった。
しかしこれからは。
コイツ、ほんとは「バン激似の男」なんだよな…。バン似の男が ひっくり返ってお腹撫でてもらってたり、キングの顔 舐め回してたりしてたんだな…。
と、つい思ってしまい、ビミョーな気持ちになってしまう……。
つーか。
オスローって、ホークの食べかけの残飯を盗み食いしてたんですけど…。
ホークを「団長」と尊敬して舎弟になってるんですけど…。
バン似の男が…豚の残飯を盗み食いし…豚の舎弟に…。
あぁあ~~~…。
いやいやいや。
生まれ変わりとはいえ、オスローに前世の記憶はないですよね?
魂が同じだろうと、今のオスローの人格は、前世のロウとは違いますよね!
だって、単行本21巻収録の番外編で、オスローの心の声が台詞として書かれてますけど、ロウとは口調や性格の感じが全く違います。「~なの?」みたいな可愛めの口調で、控えめな感じの性格でした。ロウだと「~だぜ、~か?」で、優しいけど男らしい性格ですよね。
いくらなんでも、人間の自我と記憶を持ったまま犬に生まれ変わって、残飯盗み食いして・尾を振って媚びて・人の顔を舐め回してるなんて、たとえオスロー(ロウ)自身が平気でも、読んでる私は居た堪れないです。(^^;)
うん、「オスローに前世の記憶はなく、人格は完全に別人」で決定!(ツイーゴさんとカイーデさんに決定してもらうよ決行!)
それはともかく。
「オスローはロウの生まれ変わり」って、急遽作られた後付け設定かなと思いました。
だって、最初からこの設定だったなら、ゲラードが登場した当時からオスローと彼女を同じコマに並べて描くものではないかと。
でも、そんな様子は全くなく、今回の過去編に突入する寸前の妖精王の森の場面ですら、並ぶ・絡むことは一度もなかったです。
(むしろ、最初から常にゲラードの傍に描かれていたのは、小妖精プオーラでした。)
・・・
実はもう一つ、オスローがロウの生まれ変わりだったという設定になったことで、ガッカリしたことがあります。
だって、オスローが「本当はゲラードの犬でした」ってコトになってしまったから。
初登場時、オスローは「キングの友達」だと説明されていました。
だからキング個人の友達なんだと思ってました。他の妖精たちからキングが孤立してる中、唯一寄り添ってくれている妖精眷族だと。
ところが、復活したエレインに呼ばれたオスローが、キングを放置して行ってしまうエピソードが発生。
えっ、キング個人の友達じゃなかったの。実は「妖精王家の愛犬」みたいな立ち位置で、むしろエレインの方に懐いてる?
と、ちょっぴりショックを受けつつ、認識を新たにしたものでした。
そして今回、新しくなった設定では。
妖精王家の愛犬どころか、前世の愛によってゲラード個人を守ってる騎士犬ですかい…。
そしてキングの傍に付いていたのは、ゲラードが「妖精王」を大事にしてるから、彼女のために守っていたのでした、ということに。
…はあ。
今までキングを慰めたり励ましたりしてくれたオスローの優しさが嘘だったとは思いません。
でも。
クラスで仲が良いと思ってた友達が、実は担任の先生に頼まれて仲良くしてくれてたんだと判ったみたいな。
なんともいえない、淋しい気持ちになりました。(´・ω・`)
そっかー。
キングの個人的な友達じゃなかったんだ。
ゲラードのためにキングの側に付いてたんだぁー…。
最後にもう一つ。
オスローって何歳なんでしょうか?
グロキシニアが闇堕ち・失踪した直後に生まれたとしたら、3000歳になってしまいます。
妖精族の平均寿命は1000~1500歳という設定。妖精王とその血族は特殊で、どうやら5000年以上は生きるらしい。
そんな設定なのに、生まれ変わりとはいえ一介の
…うーん。
ゲラードは
「オスローは兄上が姿を消した後に生まれて…」
としか言ってませんから、キングと同じくらい(1300年前)に生まれたとかであっても、辻褄は狂わない、か。
どうなんでしょうね。
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キングの羽
伏線が張られてから、リアルで2年以上経過。ついにキングさんに羽が生えました。
おめでとうこざいます!
ちっちゃ!!
小さくて最初はびっくりしましたけど、これからまだまだ成長するってことなのね。
第三部の最終決戦辺りに、成長しきって、グロキシニアくらい大きくなるのかなあ?
羽、蝶だけどアゲハ系じゃないのか。
どんな色かは判りませんが、設定上「妖精族の羽は虹色」ってことになってるので、一応 王ですし、現実の蝶とは違う色とりどりなカラーリングなのかも。
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二回目もあなたと
キングさんが意外とスマートにやり遂げてくれました。やる時はやる男だぜ!
キングが鼻血を出したり気絶したりしなかった。
成長したんだね!! 生えたことだし!
恋人らしい触れ合いをするたびに そんなことになってたらディアンヌが可哀想だなと心配してたので、大きなお世話ですけど、ホッとしました(笑)。
これで結婚も安心だ!
あと、キングさんに望むこと。
結婚するまでに、かつてディアンヌの記憶を消したことを打ち明けて、謝ってくれたらいいなあと思っています。
ディアンヌは100%赦すでしょうけど、やはり、話さないと。
本筋とは関係ないことなので、このまま省略される可能性も少なくないと恐れているのですが、最終回までに描かれたら嬉しいですね。
どうか作者さんが描いてくれますように。
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書き忘れてたので追記。
ディアンヌの記憶はキングに取り戻してほしいと思っていたので、それがなされなかったのもガッカリでした。(´・ω・`)
なにせ、
第126話では「キミの記憶は 必ずオイラが取り戻す!!!」と力強く宣言し、
それからリアルで2年経った、ゴウセル外伝掲載号での作者さんへの質問コーナーでも、「ディアンヌは記憶を取り戻せますか?」という読者の質問に対し「キング「オイラが必ず取り戻してみせる!!」」と作者さんが回答していましたから。
これで期待するなって方が難しいですよね?
ところが上述の質問回答の、なんと次の話で、「術士ゴウセルが」ディアンヌに記憶を戻したのでした。
そして今回の、悄然と項垂れるキングという流れ・オチでしたよ。
…………。
なんか、ショボ~ンって気分になりました。
作者さんは意地悪ですね。
ものすご~~く穿って考えるなら、
術士ゴウセルがディアンヌの記憶を戻したのは、人形ゴウセルの面倒を見ることを彼女が引き受けたから、そのお礼
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術士ゴウセルが人形ゴウセルの面倒を見てくれと頼むほどディアンヌを信頼したのは、彼女と その恋人のキングが、「無欲」の戒禁に引っかからない無償の愛を互いに持つ人物だったから
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記憶のないディアンヌがキングを愛せたのは、キングが彼女に無償の愛を与え続けたから
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キングが記憶削除や失踪にめげずに、彼女を深く愛し続けたからこそ、ディアンヌの記憶が戻った。つまり、キングがディアンヌの記憶を取り戻したのだ!!
…と、こじつけられなくもないかもしれない。(無理がある? 苦笑)
でも自分としては、キングが何か直接的なアクションをしたことでディアンヌの記憶が戻るという、ごく ありきたりでシンプルな、愛と奇跡の展開が見たかったです。
たとえば、キングがもう一度「キミをずっと好きでいるし、ずっと側にいるよ」と告白したら、それをキーにして記憶が戻るとか。
なんで関係ない術士ゴウセルに 美味しいとこ取られなきゃならなかったんだろう…。
残念でした。