【感想】『盗賊と聖少女』第Ⅱ話 盗賊と聖少女
少年マガジンエッジ 2017年3月号 [2017年2月17日発売] [雑誌]
第Ⅱ話 盗賊と聖少女
公式スピンオフ ストーリー漫画『七つの大罪 セブンデイズ ~盗賊と聖少女~』第二話の感想です。
エレインとバンが出逢いました!
小説では地の文でエレインの思考として語られていた説明的な部分を、漫画の「エピソード」に変換して組み入れていたり、原作漫画『バンデット・バン』で描かれた部分を、小説版の追加要素も足しつつ、別の漫画として再構成してあって、楽しいです。
よりドラマチック・ロマンチックになっていて、ドキドキしました♡
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バンは、妖精王の大樹からエレインに何度吹っ飛ばされても、森の加護を受けたかのように「偶然」に守られ、怪我一つせず死ななかった。
ここ、原作漫画『バンデット・バン』では、以下のように描かれています。
ここでバンが言う「巨大エリンギの上に運よく落ちたり…」という台詞。
実際の場面は描かれていませんが、ちょうど その台詞のフキダシの下にチキンマタンゴ(巨大エリンギ型のモンスター)が描かれているので、この上に落ちたんだろーなとイメージできます。
実際、アニメ版ではキノコ型モンスターの上に落ちていました。
でも、この漫画では解釈が違っていたので、おや、と思いました。
原作漫画時点では、森がバンを守っていたことは「偶然?」とも取れる余地が残してあり、エレインが最期に自ら大樹の種子を渡して「森はわかってたのね あなたが守ってくれること」と言い遺したことで、そうだったのか、と因果を読者に感じさせる作りになっています。
小説版『セブンデイズ』では、「バンが森にいる間、不思議にも彼の周囲に食べられる果実や虫が絶えず、飢えることがなかった」というエピソードを追加し、要素を強調していました。更に、エレインが最期にバンに渡す種子も「元々、バンの前に妖精王の大樹から落ちたものを、エレインが預かっていた」ことになっていて、エレインは最期に「バンは森の選んだ命の運び手だった」と確信して息絶えるのです。
そして今回の漫画版。
バンが森に入って腹の虫を鳴かせた途端、目の前にリンゴがぼとっと落ちてくる。
後にバンが落下する地点に、巨大キノコ(クッション)が予め(彼が初めて森に踏み込んだ時点で)生えている。
バンに都合のいいことばかりが、明らかな不自然さで起き続ける。要素が、小説版よりも更に強調されていました。
この漫画は原作や小説版の各要素を強調してドラマチックに盛り上げていて、そこが大好きです。(きゅんとする!)
けれど これに関してだけは、要素を強調しないでおいてくれたほうが好みだったかなぁと、少しだけ思いました。
流石に、ここまで強調してしまうと。
まるで「森」に人間的な意思があるうえ、精度の高い「予知能力」まで有しているみたいに感じられちゃうじゃないですか?
(歩かないキノコを予め生やしておいて、ピンポイントにバンを受け止めるなんて、すごく正確な予知でもしてないと不可能な感じがするから…)
個人的には、妖精王の森がバンを受け入れて守ったのは、枯れ行く植物が果実や花で鳥獣虫を誘引して種子を運ばせたり受粉させたりする的な、命を繋ごうとする「自然」の意思の一環のように解釈していました。
妖精王の森の力は妖精界の神樹に由来するもので、神樹は「妖精界を悠然と見守る存在、善悪の感情はない」という設定。
神樹は妖精王を選び、樹を蝕もうとするモノを
なんかすごくフワッとしたこと言ってて申し訳ないんですが。(^^;)
バンが行くところに「偶然か必然か」食べられそうな果実が実ってた、バンが吹っ飛ばされたら「偶然か必然か」枝に引っかかったり・柔らかい藪や巨大キノコの上に落ちたとか、そのくらい曖昧な余地を残しておいてほしかったなあという。
すみません、どーでもいいことですね。(;^ω^)
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兄の行方不明後、エレインが
小説版の発売時点で、ゲラードは登場していないキャラでした。
エレインに泉の番を事務的に申し付けた「妖精」(名前や容姿の描写はない)は、小説だと数人いたことになってますが、今作で それがゲラードに置き換えられています。
違和感ないです。ピッタリですね。(その分、ゲラード一人が悪役の泥をかぶったみたいになった点もありますが。小説では数人の妖精が口々に指示しますが、漫画ではゲラード一人が指示をして、他の妖精たちは黙って見ていたことになったので。)
いつもエレインにまとわりついていた小鬼三兄弟が、臆病なのに わざわざ妖精界から出てきて、エレインにお別れの挨拶をしました。
小鬼たちは、エレインが自分たちと仲良くしてくれたからと言う。
でも、エレインは無言になってしまいます。
何故なら、彼女は小鬼たちと特に仲良くした覚えがなかったから。
それどころか、大して関心も持っていなかったから。
妖精族は一族間で平等の愛を持ち、基本、互いに上下の序列をつけることがありません。 唯一の例外が妖精王、そしてその血族です。
キングがヘルブラムを親友と呼んで区別していたのは、人間かぶれのヘルブラムに影響されての特例的な状況でした。
そんな社会で、エレインは、勿論 孤立しても浮いてもおらず、誰かを傷つけるようなこともなく、みんなに愛されていたわけですが。
実は、エレイン自身は兄にしか関心を持っておらず、彼以外に心を通わせた相手を持っていなかったのでした。
エレインの世界は、「兄」と「(ヘルブラムも含めて)その他」だった。
思いがけない小鬼たちの言葉を聞いてエレインは驚き、初めて気付きます。
自分は今まで、兄以外の世界を見てこなかったのだと。
…と、小説版では語られている場面です。
この場面。
小説版での語りによれば、
命かけて守りたいほど「大切」に思える人が兄以外にいない。そんな人生を歩んできた。その兄がいないのに、森を守り続けなければならない。
この絶対の孤独を思い知った、という意味でした。
ハーレクインが守護者でいられたのは、妹や親友を含む一族の全てを、自分の命を捨てても惜しくないと思うほど「大切」に思い、愛していたからです。
しかし、この時点のエレインには、兄以外に そこまで「大切」な存在はいなかった。
だから、守りたい人が「精神的に」いない森を守る仕事は、彼女にとって苦行に他ならなかった……。
ってことなんですが。
今回の漫画だけだと、ちょっと違う感じに解釈できるかもですね。
(他の妖精たちが妖精界に帰ってしまったので、)守りたい人が「物理的に」いない妖精王の森を守らなきゃいけないから辛い、みたいな(苦笑)。
小説版を読まずに漫画版だけを読んだ人は、どう解釈したのでしょうか。
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エレインとバンの出会い。
バンが嘘をついていないと悟ったときのエレインの大アップが、すごく胸に迫りました。
その後の、初めて名乗り合う場面が、今回のいわばクライマックスに置かれていまして。
原作には、多くの情報を少ないコマで密度濃く・小気味よく読ませてくれる素晴らしさがあります。
そしてこの漫画には、心情を開いて、ゆったり・よりドラマチックに見せてくれる良さがある。
名乗り合っただけで、この神聖にしてドキドキ感!
すごくよかったです。
また次回も楽しみです。
「スカートの中覗き」とか「一緒に水浴び」とかもやるのかな?
今までの原作漫画・小説・OADにはなかった新規エピソードもあるといいなあ。
あと、個人的には「どうして赤き魔神は妖精王の森の内部に現れることが出来たのか」「赤き魔神は妖精王の森で何を探していたのか」って辺りも、小説版以上に、チラッと補完してくれたらいいなあと期待しています。
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ところで。早くも第一話が、分冊版単行本として発売されちゃいましたね。
七つの大罪 セブンデイズ?盗賊と聖少女? 分冊版(1) 「七百年の孤独」 (少年マガジンエッジコミックス)
作者: 鈴木央,小菊路よう
出版社/メーカー: 講談社
発売日: 2017/02/24
第一巻となっているので、今後も一話ごとに分冊販売されるんでしょうか。
前回、「妖精王の大樹」を「神樹」と書いてあるのが気になってました。
それがもう修正されてた。ビックリ! 仕事速いですね!(゚Д゚;)
そして、カラー扉絵のヘルブラムとゲラードの配色が原作版とは異なってましたが、それもバッチリ修正されてました。
おおお…。
よく見たら、キングの顔にも修正入ってるんですね。
熱意が凄い…!
この分冊版単行本、描き下ろしの四コマ漫画が3Pほど入っています。
恐らく、将来完全版の単行本が出る時にも収録されると思いますが、現時点では、読めるのはここだけ!
ヘルブラムとキングと、エンデとプオーラのお話。
ただのババ抜きのはずが、どうしてこんな緊張感あふれることになってしまったのか…ッ!?
すごく可愛いので、キング&ヘルブラムのコンビ好きさんに特にお勧めです♡