『七つの大罪』ぼちぼち感想

漫画『七つの大罪』(著:鈴木央)の感想と考察。だいたい的外れ。ネタバレ基本。

【感想】番外編 キミに伝えたいのは

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週刊少年マガジン 2017年2・3号[2016年12月14日発売] [雑誌]

番外編 キミに伝えたいのは

週刊少年マガジン』本誌掲載の4P番外編の二弾めです。

柱や巻末の編集者コメントによれば、作者さんは無事に手術を終えられて経過も順調だとか。良かったですね。

 

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では、内容の感想。

 

 

自宅前の穏やかな小川の岸に、剣を持ってジェリコは佇んでいました。

少し離れた場所に並んで見守っているのは、ギーラと、ジェリコの家に仕える年配の家政婦(ばあや? 面倒なんで「乳母」ってことにしておきます)です。

 

特に何も説明されてないんですけど、ここ、ジェリコの家の庭っぽい。

小川は穏やかで、川岸が非常に綺麗に整えられています。水を引いて作った人工の川、または庭用に整備した川ではないかと。近くには大きな屋敷が見え、川を含めた一帯は塀で囲まれています。

 

第101話を参照するに、この屋敷はジェリコの家です。

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なので、自宅の庭の小川にジェリコはいて、様子を心配して訪ねてきたギーラを、乳母が庭まで案内した、という場面かなと読み取りました。

 

物憂げに川面を見つめるジェリコ。やがて「くそ!!!」と何度も罵りながら、剣で水面を打ち始めます。

まるで、水鏡に映った自分自身を斬りつけているかのように。

 

水しぶきでズブ濡れになっても やめない彼女を見守りながら、口元を押さえて涙する乳母。

「お嬢様が心配です
 グスタフ様が亡くなられてから ずっとあの様子で…」

隣に立つギーラも心配げに「ジェリコ…………」と呟きはするものの、近付くことはできずに、荒れ狂う彼女を見守っています。

 

「なんで… なんで俺なんか庇って死ぬんだよ!?」「いつも俺に… 文句ばっか言ってたくせに… バカ… バカ! バカ!!」

川の水でビショビショの頬を ボロボロと伝い落ちていく大粒の涙。

「バカだよ俺は…」「叶いもしねえ色恋に うつつぬかして……」「みんなの足を引っぱって…」「兄貴に守られて…」「兄貴…俺は…」

一粒の涙が川辺の石に落ちる…それが、丸い形のまま パリ と砕けました。

「どうすりゃいいんだよ!!?」

川面に激しく剣を叩きつけた、その時。

頬に霜を貼り付かせた顔で、ジェリコは「え?」目を丸くしていました。

剣で叩かれ左右に割れ散った形のまま、川の水が凍り付いていたのです。

「これは…」「ジェリコ…!! あなた まさか魔力が………」

駆け寄ってくるギーラ。

「しかも それは貴方の兄上と同じ――…」

 

兄グスタフの魔力は「氷牙アイスファング」。氷結の力でした。

そして、ジェリコは魔力値が40と低く、それ故に、ギリギリで聖騎士の資格を得られずにいました。魔神の血を飲んで魔力アップして聖騎士になったものの、その呪縛から解放されると元に戻ってしまっていたのです。

 

呆然と己の手を見つめるジェリコ

「……」「わかったよ兄貴……」

きつく食いしばっていた口を開くと、霜になって頬に貼り付いていた涙が、パリッパリッと割れて綺麗に剥がれ落ちていきました。

まるで、氷の手が涙を拭ってやったかのように。

「俺 もう一度 目指すよ…」「兄貴を越える聖騎士を…!!」

悲しみを湛えた目で微笑んで、ジェリコは、兄の背を追い続けて歩いた道を、もう一度、自分の意思で歩いていこうと決めたのでした。おしまい。

 

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感動的なお話でした。

 

第196話の感想に、

>ジェリコが聖騎士になりたかったのは、兄に憧れると同時に反発して、見返したいと思っていたから。その兄が死んだ…。彼女の目標は無くなってしまいました。
>ジェリコは今度こそ、兄と同じ気持ちで、家や国を守る責任を負って聖騎士を目指すのでしょうか。それとも、全てから解放されて女の子として自由に暮らすのかな。

と書きました。

その回答が ここに。

 

うん。やっぱり、お兄さんの跡を継いで聖騎士の道を歩くのね。

それがいいし、そうなるだろうとは思っていましたが、彼女が本当はフリルやリボンなんかの女の子っぽいものが大好きな性格だということを思うと(だからジェリコの私服は ふりふりの可愛い系)、聖騎士を目指す原動力だった兄が死んでまで、無理に男っぽく振る舞って聖騎士になろうとする必要はないのかな…とも思えて。どっちがいいんだろう? ジェリコはどっちを選ぶんだろう? と思っていました。

 

グスタフはどう思うのでしょう。

妹には普通の女としての人生を歩んでほしいと思うあまり、聖騎士になろうとする彼女を認めずキツく当たっていた彼だから、生きていたら この決断を喜ばないんでしょうか?

 

うんと小さい頃(4、5歳くらいまで)のジェリコは、リボンやフリルが好きで、結婚に憧れていて、惚れっぽい女の子でした。

それが、兄が7、8歳くらいで騎士としての修業を始めてから変わった。

7歳からは、兄を真似て一人称を「俺」にして、髪も切って、殊更がさつに振る舞って、とうとう自分も騎士の修業を始めた。

兄が大好きだったから、自分も同じようになりたかった。そして兄に褒めてほしかったのです。

でも、妹には普通の女としての幸せを得てほしかった兄には理解できず、元々の性格もあって高圧的にダメ出しばかり。ジェリコの方も噛みついて反発することしかできず。10年あまりを経て、兄妹間の亀裂は大きくなっていました。

 

 

ジェリコはずーーっと、「兄に認めてほしい」という飢餓感を抱えていました。

皮肉にもそれは、彼が死んだ今になって満たされたんですね。

 

亡き兄の魔力と同じものが、唐突に、ジェリコの身に発現した。

兄妹ですから、たまたま同系の魔力が発現しただけなのかもしれません。

けれども、もしかしたら、亡きグスタフの意思が起こした奇跡なのかもしれない。妹に「後は任せたぞ、騎士として家と国を守ってくれ、お前が頼りだ」と魔力を託してくれたのかもしれない。

 

真相は判りません。

しかし、ジェリコは後者の意味に捉えたのだと思います。

 

魔力の殆どなかった自分の身に、兄の魔力が宿った。

この奇跡は、兄が自分を認めてくれたから、頑張れと背を押してくれたから起きたんだと。

そんな風に感じたから、もう一度 聖騎士を目指す気持ちになれて、微笑むことが出来たんじゃないでしょうか。

 

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今回のジェリコの「氷牙アイスファング」発現を見て、多くの読者が考えただろうこと。

 

第一部で、バンの傷を治らなくさせて出血多量で危機に陥らせた、あのジェリコの魔力は、結局 何だったの?

 

うーん。

キングが「傷口の時間を止めてしまう魔力とか…」「それとも痛覚を伴う幻覚の魔力…?」と言ってたから、そういう系なのかなと素直に思っていたけれど。

 

魔神の血で得た魔力と、今回発現した魔力は全くの別物?

傷口を凍らせて再生を妨げていた?

はたまた、彼女の魔力は時間を「凍らせる」可能性を秘めている?

 

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次回のミニ番外編は<七つの大罪>が登場するそうです。

エスカノールの変身抑制の眼鏡の話かな?(自分的には、そこを明文化しておいてほしいデス。)

 

それと、作者さん考案の突発企画を実施するとか。

いや、手術したんだからゆっくり休んでくださいよ。(^^;)

 

企画、何でしょうね。

個人的には、いつかキャラクターの衣装デザインの公募企画をやってほしいです。

私はデザインできませんが、webのファンイラストを見てると、皆さん、素敵な服を着せてるじゃないですか。

第二部になってから、死闘でしょっちゅう服が破れて衣装チェンジが頻繁にありますし、他にも、過去編での私服とかカラー扉絵での普段と違う服とか。需要は山とある。

それ用の衣装デザインを沢山募集して、湯水のごとく次々と披露してほしいかもです。

 

 

年末なので、来週は『マガジン』の発売はありません。

次号2017年4・5合併号は、2016年12月28日発売です。

 

 

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