【感想】『七つの大罪』第199話 光なき者たち
週刊少年マガジン 2016年51号[2016年11月16日発売] [雑誌]
第199話 光なき者たち
- 岩に包まれた巨大な広間の中で。
「ディアンヌ!! 最初から全力でとばすんだ!!」
伝説の巨人と妖精めがけ、矢のように飛んでキングは叫んだ。
「そのつもりだよ!!」
地を蹴るディアンヌが叫び返す。 - 「真・霊槍シャスティフォル」
キングの全身から魔力が噴出し、彼を包んで炎のように燃え盛った。
「第二形態…「守護獣 」!!!」
既にクマめいたヌイグルミの形を成していた霊槍が、ボンッと筋骨隆々に膨れ上がる。 - 「まずは正解っス」
強張った顔のキングに対し、グロキシニアは悠々としたものだ。
「キミらの実力じゃ死ぬ気でかかってきてくれないと三秒も楽しめない」
薄笑いで右手をシャッと宙に走らせると、描かれた光環から巨大な霊槍 が飛び出してくる。 - 歯を食いしばり、即座にキングは印を結んだ。クマ型の
守護獣 が、白刃 取りの要領で大槍 の穂先を受け止める。
ガガガガッ
両足で床を抉りながら、キングを掠めて後方へ滑り押された。 - 「ぐっ!!!」
両腕を交差して、駆け抜けた衝撃と瓦礫から身を庇うキング。肩越しに視線で追えば、止まり切れない守護獣 の背は壁にぶつかる寸前だ。
(しめた…! ここが どこかは わからないけど)(あの勢いで壁を突き破れば脱出口が開く!!) - しかし。
壊れるどころか、壁はググ~ンと たわんで守護獣 を沈みこませ、跳ね返るように元に戻ったではないか。
押し戻された守護獣 は、バスキアスごと ドカッと床に投げ出された。 - 「壁が強い弾性を持ってる…!?」
キングは唖然とする。まるで、しなやかな生物の内部にいるかのような。
「!! ここは魔力で造られた建造物か!!」 - そう。彼は知る由もなかったが、この場はグロキシニアとドロールが協力して創り上げた鉱樹オルドーラの内部。1000フィートの高さにそびえ、鉱物の硬と植物の軟を併せ持つ、制作者らが許さぬ限り脱出不能の魔塔なのだ。
◆全高1000フィート…およそ305mですか。東京タワーより ちょっと低いのね。
思ってたより低かったです。前回の全体図で、半分以下の辺りから雲がかかってたから、もっとバカでかいのかと思ってました。1000m以上あるかと(苦笑)。
…アレは雲じゃなくて、塔自体が生きてて光合成してて、水蒸気的なモノを吐き出してたのかな~…。 - 「よそ見をしてる暇は ないっスよ」
無慈悲な声がして、キングは思考を中断する。
床に落ちたバスキアスが浮き上がり、彼の背後で姿を変え始めていた。 - 「うわっ!!」
避けることが出来たのは僥倖か。
蜂に似た巨大怪物の毒針から危うく身をかわす。 - 「霊槍バスキアス第二形態」「「
守護虫 」」
それを両手で操るグロキシニアが、フッと嗤った。 - キングは、身をかわした勢いで宙を回りながら間髪入れずに叫ぶ。
「真・霊槍… シャスティフォル」「第五… ハァ ハァッ… 形態」
床に転がったままだった豹紋のクマが解 け、
「「増殖 」!!!」
無数の大鏃 となって、上昇する守護虫 を追尾していった。 - だが。届くかと思われた瞬間、巨大蜂は
解 けて掻き消え、目標を失った鏃 は四散・迷走するばかりだ。 - 「な…!? 消え…」
激しく息が切れて、声は掠れる。
もはや意識を広げる余裕のない少年の背後に、木肌の鎧で身を固めた古 の王が迫っていた。
「これが今の限界のようっスねえ…」 - 今度は、振り向く
暇 もない。
霊槍バスキアス 第五形態「神樹の鎧 」をまとうグロキシニアが、鋼より鋭い神樹の鉤爪で、キングの背を深く、長く引き裂いた。
◆真・シャスティフォルを初めて解放したときは、それだけで全身から血が噴き出て、一発大槍を撃っただけで気絶してました。
二度目は、三つの形態を連発して、気絶はしなかったけど血を吐きました。
そして三度目の今回。二つの形態を操って、息切れはしたけど、それだけでは血を吐いてませんし、気絶もしてません。
一応、進歩はしてるんですよね…。 - 少し
遡 って、ディアンヌは。
「これが ボクの…」「全力 だーーーっ!!!」戦鎚 を振り上げ、ドロールに文字通り飛び掛かっていた。
バカカカカッと、滅多矢鱈に乱打する。 - 成すがまま打たれ、ドロールは漆黒の目を開けたまま眉一つ動かさない。
やがて、左手の一つを無造作に突き出した。 - それだけで弾き飛ばれ、地に激突したディアンヌだったが、しっかりと受け身は取っていた。両手を交差させて顔と胸を庇った彼女の肌は、金属のような質感で鈍く光を反射している。
(ただの掌底が なんて…威力なの)(“重金属 ”を とっさに使わなかったら危なかった…!!)
己の身を金属のごとく硬く重くする、巨人族独自の防御技だ。 - 「でも…」
“重金属 ”を解除して手を横に突き出し、
「ボクだって」戦鎚 をバトンのようにブンブンと回し始める。
「負けないからね!!!」柄尻 の方で鋭くドロールを指して叫んだ。
“乱撃衝 ”!!!
◆ディアンヌは、記憶喪失後にガランに襲われたときは、相手の力を感じただけで恐怖に身がすくみ、やけくその突撃しかできず、すぐに危機に陥って、泣きながら『メリオダス(記憶の中の「ずっと好きでいる」と言ってくれた男の子)』に救いを求めるばかりでした。
でも今回は、かなり落ち着いて戦っています。今までで最も絶望的な、「光なき」状況でしょうに。
この違いは何か?
…キングが側にいる、ってことだと思う。
大喧嘩祭りでドロールのゴーレムと戦った時も、自分の攻撃が通じないと判るとパニックに陥って泣いてしまっていましたが、キングがアドバイスすると落ち着いて、それまで以上の力を発揮していました。
絶望的な状況でも、彼が側にいれば落ち着けるのでしょう。
ディアンヌは独りで何でもできる女の子だけど、キングは、彼女の成長に必要な存在なんじゃないかな。 - これは巨人族の魔法。
ディアンヌの周囲の床が無数の芽吹きのごとく盛り上がり、一つ一つがドロールの頭より巨大な石の拳となって、一斉に殴りかかる。 - その一撃を、ドロールは立ったまま首を傾けて避けた。
- ディアンヌは目を丸くする。
(よけた!!)
先ほど戦鎚で殴ったときは、蚊に刺されたほどの痛痒もない様子で突っ立ったままだったのに。 - 次の拳も、トン、と地を蹴って側転でかわす。
(また…!!) - それからの様子は愉快なものだった。
次々と襲い掛かる石の拳を、ドロールはスルスルと足摺りし、跳び、回って避けていく。 - 「よけてる よけてる!!」「そんなにボクの攻撃が怖いのかな~~~?」
へっへーー♡ と笑い、ディアンヌは調子に乗ってウインクすると
「フフ~ン♬ いつまで よけていられ………」と言いかけたが。 - そこで、ハッと血が冷えた。
(違う!!)
一対の腕を合わせ、もう一対を広げて、片足立ちで止まったドロールの姿は美しかった。思えば、今までの動きもそうだ。全てがリズムを持ち、洗練されたものだったではないか。
(よけてるんじゃない…)(踊っているんだ……!!!) - 悟った瞬間、石の拳が ビタ… と背後で止まり、焦って返り見たディアンヌの眼前で粉々に崩れ落ちた。
(ボクの魔力が)(消えた?) - 直後に。ゾッとして目を戻す。
「娘よ… お前は まるで理解していないようだな…」
この一瞬で間合いを詰めたのか。ごく間近にドロールが立っていた。 - 「………あ……」
恐怖ですくんで、咄嗟に動けない。
そこに、横から巨大な掌が襲い掛かった。ディアンヌはビクッと震え、
“重金属 ”
再び身を硬くした、が。 - ドゴ
今までとは比較にならぬ打撃は、破れぬ壁に、彼女を あまりにも深く激しく めり込ませていた。 - 壁に跳ね戻された彼女が、再び石の広間に姿を現した時には。
「…は」
微かに息を吐いた鼻からも、顔や手足に開いた傷からも。血が滲み溢れ、また内出血し、文字通り全身が血まみれだったのである。 - グロキシニアに背から裂かれたキングは、倒れたまま動けずにいた。
内臓が傷ついたのだろう、口から血が溢れて血溜まりを作っていたが、涙までもが溢れ出して頬を伝っていく。
「ディアン………」
無残に血だるまになった少女の名を呼ぶも、それが精いっぱいだ。何もしてやることができない。 - 少女は両膝から崩れ落ちて、仰向けに倒れた。
- 「…覚えておくがよい 巨人族の力とは己の筋力のみに
非 ず」「巨人族 は大地の力を どれほど その身に変換できるかで強さが決まるのだ」
半ば意識が飛んでいるらしく、目は開けているが表情のない少女に向けて、今更、諭すように巨人の王は語る。 - 彼の顔の横に並び浮かんだグロキシニアもが、こちらも澄まし顔でキングを諭し始めた。
「現役 妖精王くん キミも そこの巨人ちゃん同様…」「下位魔神 相手ならともかく…<十戒>と戦うには力量不足すぎる」
チッチッと舌打ちでもしたそうに、立てた人差し指を左右に振る。そして、うつ伏せに倒れたキングの、服ごと肉の裂かれた背を見下ろした。
「おかしいと思ったけど 妖精王たる者が 未だ羽も生えてないとは 前代未聞の珍事っスね」
背中一面に むごたらしく四本の裂傷が斜め走り、服の裂け目からは止まらぬ血と肌しか窺えない。羽は影も形もなかった。それがなければ、一人前に魔力を扱えさえしないというのに。
「それじゃ真・霊槍を連発するどころか――― 維持することも難しいっスよ」
◆「前代未聞の珍事」? でもグロキシニアは初代妖精王で、キングは三代目。二代目がどんなだったかグロキシニアは知らないわけで…。ちょっと不思議な感じのセリフです。
…まあ、そもそも羽の生えない妖精は珍しいようだし。何より、羽が無ければ神樹の力を完全には引き出せないのですから、「誰よりも神樹の力を引き出せる者」たる妖精王に羽が無いのが「前代未聞」なのは間違いないんでしょう。
…個人的には、こんだけ「羽が生えなきゃ一人前じゃない」と騒がれると逆に、キングが「普通の羽は無いけど神樹の力を歴代の誰よりも引き出せる、前代未聞の妖精王」になっても面白いのになと思ってたりします。フラグ立ててから何年も経っちゃってますし、羽が生えて強くなりましただけじゃ、予定調和すぎるじゃん? - 無慈悲に現実を突きつける言葉を余所に、キングは涙を流し続けていた。
「ディアンヌ… …ごめん」「ケフッ」「……ごほっ キミを守ってやれなかった」「ゴホッ」
血にむせて吐き出し続けるのは、「大切」なものを守れなかったと悔やむ、止まらない自責の言葉。
自分は結局、どこまでもダメな男だった。
親友も、妹も、一族も、故郷も、たった一人の女の子すら。守りきれなかったのだ、「大切」なものを何一つも。 - ……だが、悔やめるのすら、ここまでだ。
「………ゲホッ」「殺すなら… さっさと… …殺せ…!!」
涙と血で顔を汚したまま、霞む目で睨み上げて吐き捨てた。
いつまでも息の根を止めないのは、いたぶっているのか。
いずれにせよ、二人とも致命傷を負わされている。このままでいても遠からず死ぬだけだ。希望の光はない。ならば、もう。 - 「………そっスね」「じゃっ 死んでもらうっス」
目を伏せて笑うと、グロキシニアは片手を眼前に かざして軽く握る。 - キングとディアンヌの体か宙に持ち上げられ、メキ…と骨を軋ませて首が締まった。
「ぐ…」
海老のようにのけ反ったキングは、思わず両手で自分の首を掻きむしったが、見えざる手を引き剥がせるはずはない。
「かはっ」
半ば意識を失っていたディアンヌが、こちらは指一本を動かす余力すらなく、声にならない悲鳴をあげた。 - 喉が潰れる、その寸前で。グロキシニアの言葉が続いて落ちた。
「キミらが私 らの期待を裏切ったら」 - 「「!?」」
困惑の目を向けた瀕死の二人を前に。 - 「今より汝らに修行を与え」
巨人は厳 めしく。
「私 らを越えてもらうっス…!!!」
妖精は薄笑いを浮かべて。
巨人と妖精の初代王たちは爆弾を落としたのである。 - 次回「聖戦の記憶」
キングとディアンヌの首を絞めたグロキシニアさん。
キングの「殺すならさっさと殺せ」発言に、少しイラッとしましたね?(苦笑)
キングが あそこで「諦めた」こと、人により思うことは様々かと思うのですが。
自分としては、ディアンヌ(守るべき「大切」な人)がいるのに諦めたってことは、本当に全く打つ手なし・どうやっても助からない、と確信できる状況だったんだなと解釈しました。
ただ、強いて殺せと言っちゃったのは、どういう心の動きなのか。
助からないなら早く終わらせてディアンヌを痛みから救いたかった?
潔く終わらせるのが、王としての せめてのプライドだった?
皆さんはどう思いましたか?
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ディアンヌの服が、ボロボロに破けてしまいました。
王都決戦時にも劣らぬ激しい破れっぷりなので、これは、衣装変更になるでしょうね。
第二部冒頭の新コスチュームのうち、最後まで残っていたディアンヌの服も、とうとうダメになっちゃいました…。
で。
なんか、第一部の時と全く同じデザインの服に戻りそうな予感をヒシヒシと感じるのですが。
ああ~、どうかそんなことにはなりませんように!
いや。
最近、メリオダスとバンの衣装が第一部のに戻ったでしょう。
アニメ第二期では衣装替えしないことに決まったとかで(素材使い回し的な問題で)、それに合わせて原作も第一部衣装に戻すことにしたんじゃないかなーと。杞憂かもですが、邪推したんですよ。
となると、ゴウセルやディアンヌの服も元に戻っちゃうんじゃないかなーとか。
いやいやいや。
野郎どもは第一部と同じ服でも、まあ諦めなくはないですが、ディアンヌはぜひ、また新しいデザインの服を着せてあげてほしいです。キングに新しくデザインしてもらって。
だって女の子ですもん。
エリザベスは順調に新しい衣装に着替え続けていますし、ディアンヌも、また新しく可愛い服を着てほしいなあ。
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霊槍バスキアス第二形態が、キングと同じ「ガーディアン」なのに、キングの(神樹の苔の)クマに対し、巨大な蜂型の怪物だったのは面白かったです。
神樹は外敵が近づくと己に生える苔を
それとも、苔とは関係なく神樹を守る蜂がいて、それを模したものなんでしょうか。
なんとなく、シャスティフォルとバスキアスの形態の対照表を作ってみる。
第一形態 | ||
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基本の大槍。 | 基本の大槍。 | |
第二形態 | ||
熊っぽいヌイグルミ。腕は二対。 遠隔操作のゴーレムのように使用し、運搬、救助、格闘にも使える。大きさを変えられる。 |
蜂のような怪物。 遠隔操作のゴーレムのように使用。 空を飛び、毒針で刺す。 |
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第三形態 |
?
|
|
刺した対象を石化する。 |
現時点で不明
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第四形態 |
?
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|
ビーム攻撃。 威力・方向は調整できる。 |
現時点で不明
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|
第五形態 | ||
無数の刃で攻撃。追尾可能。 | 全身鎧。 武力0の妖精王でも、パワードスーツ的に、白兵戦が可能になる? |
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第六形態 |
?
|
?
|
現時点で不明
|
現時点で不明
|
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第七形態 | ||
照明 | 花の蜜を垂らす。 一滴で、瀕死でも完全回復。 ただし、一滴溜めるのに半月は かかる模様。 |
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第八形態 |
?
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|
広範囲をバリアで覆い、内部の者を徐々に回復。 |
現時点で不明
|
|
第九形態 |
?
|
|
現時点で不明
|
四方の広範囲に伸ばして、自動追尾で敵を貫く。掠めただけで即死する猛毒あり。 | |
第十形態 | クッション (名称不明) |
タコ足 (名称不明) |
大きさを変えられる。モフモフで気持ちいい。 主に休息に使用。 運搬にも利用。 |
主に休息に使用。 手の代わりに使える? |
残りの形態を見るのが楽しみですね。