【元ネタ】キング、オスロー、ヘルブラム、ゲラード【2/4】
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一方。
デュノストレ城でユオンを待ち続けたジェフームたちは、四ヶ月が過ぎたある日、ちょうど到着した<傲慢>への朝貢船を襲って異教徒30人を皆殺しにし、船と財宝を奪ってバビロンへ向かいました。
バビロンに着くと、ジェフームは言いました。
「
ジェフームはサラセン人として振る舞い、四つの橋を難なく通過すると、ガウディ提督に敬礼して嘘をつきました。
「閣下、私はモンブラン Monbranc で生まれた、アイボリン Ivorin 王の息子 ジャーカ Tyacre です」
「私の甥か! ようこそ! 何の用で?」
ジェフームは財宝を贈り物とし、連れてきた仲間を捕虜だと紹介しました。
「この12人は、先日エルサレムで捕らえたフランス人です、牢に入れておいて、次の聖ヨハネの祭日に弓の標的にして遊びましょう。この若い女は、あなたの娘の傍に置けば、良いフランス語の教師になるでしょう」
「おお! ジャーカよ、お前に牢の鍵を与えよう。そのフランス人を収監してくれ。しかし、よく食べさせるようにな。シャルル大帝が送ってきた、ユオンという若者のように、惨めに餓死しないように」
ジェフームの顔にカッと血が昇りました。彼は痛みと怒りを誤魔化すため、「異教徒が憎いのです、いつも こうします」とうそぶいて、12人の仲間を杖でひどく殴り続けました。提督がドン引いたほどに。
傷だらけで牢に入れられた12人は、裏切られたと思ってジェフームを呪いました。
しかし、そこで(つやつやと血色のいい)ユオンと再会できたのです。
ユオンは「私には解る! 全て我らの利益のためさ」と、仲間たちのジェフームへの怨嗟を笑い飛ばしました。
実際、ジェフームは裏切っておらず、夜になると食料を持って牢に来ました。仲間だと認めたエスクラルモンド姫を伴って。
こうして、姫はユオンの仲間たちにも認められ、いつか脱出して共にフランスに行くと誓い合う仲になったのでした。
さて。
そんなある日、バビロンに、1万以上の兵を率いた巨人 アグラパート Agrapart がやって来ました。
彼は<傲慢>の兄で、弟が殺されたこと、犯人をガウディ提督が牢で餓死させたことを知って、激怒していたのです。吊るし首にすべきだったのだと。
提督の襟首をつかんで、巨人は言いました。
「下郎め。遺産を要求するぞ。貴様は弟の奴隷だったのだから、今からはワシの奴隷だ。しかし寛大にしてやろう。奴隷になるか、武装した戦士をよこすか。貴様の望み次第だ。
ワシは闘技場でそれと戦う。それがワシを倒せたら何も要求しない。しかしワシが勝てば、貴様は生涯、ワシの奴隷だ」
提督は一も二もなく承知して、周囲に尋ねました。
「私の民の中で、この試合に挑む者はおらぬか。巨人を倒すことができれば、エスクラルモンドと王国の半分を与える」
けれど、みんな沈黙して目を伏せました。提督は「おしまいだ!」と泣きました。
その時、エスクラルモンドは そっと父の傍に行って囁きました。
ユオンは生きている、もし彼が巨人に勝てたら、彼を解放してやってほしいと。
ユオンは牢から出されて、鎖かたびらと金の杯と角笛も返還されました。
ユオンは鎖かたびらを着る際、ドキドキしました。
「私は着ることができるだろうか? オベロン、優しい王よ、あなたは私を許してくれるか?」
彼は鎖かたびらを頭から被りました。それは ぴたりと彼の体に合いました!
「神に感謝を! 私は優しい妖精王と和解できている。嘘をついて、そのうえ彼を罵った私を許すとは、なんと義理堅い。今、私に恐れるものは何もない」
ここで父の剣も返還され、ユオンは感謝して それを帯びました。
提督が提供した、白い斑点のある黒馬に乗ると、ユオンは馬に付けられた30の鈴をシャラシャラ鳴らしながら草地の闘技場へ乗り込みました。
巨人は、ユオンこそが弟を殺した犯人だと知ると言いました。
「貴様は勇敢な男なのだろうな。どうだ、貴様の神を捨て、共に東へ行かぬか。ワシは貴様を大国の領主にしてやるし、従妹を贈ってやろう。彼女はワシより大きく、肌はインクのように黒く、1フィート(30cmほど)の長歯をもっている」
「やあ!」ユオンは言いました。「悪魔と結婚とは! 私が この地に来たのは そんなことのためではない。覚悟しろ。神の名のもとにお前に挑む」
「では、ワシはマホメットの名のもとに貴様に挑もう」
二人は距離を取り、一気に馬を駆け戻らせるや、互いに馬から転げ落ちたほど激しく打ち合いました。
素早く立ち上がった巨人は、大鎌を振るいます。
しかしユオンは俊敏に避けて、アグラパートがもう一度打つために振り上げた隙に、兜が割れるほど剣で強打しました。巨人の右耳は切れて血が噴き出し、地に倒れました。
「やるな」アグラパートは言いました。「もう一打で、ワシは死ぬだろう。やめてくれ、殺さないで、ワシをガウディの奴隷にしてくれ。ワシは立ち去る。もはや傷つけないでくれ!」
ユオンは巨人の武装を解除させ、宮殿に連行していきました。
その様子を見たジェフームは、胸壁の上に並んで観戦していたガウディ提督に、自分は本当はユオンの部下だと明かしました。
巨人はガウディの足にキスして隷属を誓い、全ての部下と共に自国へ帰っていきました。
バビロンの宮殿では祝宴が開かれました。
「私は約束を守るぞ、娘と結婚してここに残るのか」と上機嫌の提督を押しとどめ、ユオンは金の杯を持ってくるようジェフームに命じました。
空の杯の上で十字を切ると新鮮なワインで満たされます。しかしそれを提督に渡すと、ワインは消え失せました。
「これは邪術だ」とガウディ。
「いいえ、それはあなたの罪です」ユオンは言いました。
「その杯は高貴なもので、大罪の穢れなき誠実な人物でなければ、ワインを飲むことはできないのです。
提督閣下、あなたの魂を哀れみなさい。無力なマホメットのもとを去りましょう。神を信じれば、あなたはこの世でも、次の世でも救われます。従わないつもりなら覚悟してください。武装兵でこの都市は一杯になる」
「そのバカバカしい話を聞けというのか? 私はお前を牢に一年入れていたのだ。それが私に威張り散らすとは! マホメットよ! 彼の愚かさに驚きます。誰が助けに来るというのか?」
「それがあなたの結論か?」とユオン。
「間違いなく」
「おお! 悔い改めるがいい」
ユオンは、ジェフームが手渡した角笛を口に当て、力いっぱい吹きました。
宮殿の全ての人々が歌い踊り始めました。
オベロンは、森の中でそれを聞きました。
「友の角笛が聞こえる。それがもたらす、あまりの痛みに私は耐えてきた。
彼の罪を許そう。少しばかり考えが浅いこと以外は、彼以上に誠実な人間はいないんだから」
そして唱えました。
「私は望もう、武装した10万の我が眷族を。もっと必要なら、それを求めよう」
言うや否や、彼はバビロンにいました。至る所から彼の部下が入って、都市を満たしました。
宮殿に入ってきたオベロンを見て、ユオンは彼を抱きしめました。
「大感謝です、
「いつでも君を助けるよ。君が戒めを破らない限りはね」
それから、ユオンはガウディ提督を脅しました。キリスト教の神を信じなければあなたは死にますよと。
「私はむしろ死を望む」提督は言いました。「私の神マホメットのもとを去るくらいなら」
ユオンは、エスクラルモンドを
その間に。オベロンの目くばせで、ジェフームの剣がガウディの頭を切り落としていました。
それからジェフームは、ガウディの白いあご髭を抜き、四本の歯を削り取ったのです。
「さあユオン」オベロンは言いました。「あご髭と歯は、ここにある。大事にするんだ。君が救われるか破滅するかは、それにかかってるんだから」
「師匠、あなたは知っているでしょ。私がいつも考え無しで迂闊だったことを。どこに持ってればいいんですか。私は、これらを失くしてしまうかもしれない」
「賢明だね。ジェフームに持っていてもらおう。彼なら間違いないだろうから」
すぐに魔法によって、それらはジェフーム本人にすら感じさせることなく、彼の脇腹の中に封印されました。
「さあ、私の話を聞いておくれ」
オベロンは言いました。
「君がフランスに戻るための船を用意した。君は提督の娘・麗しいエスクラルモンドを連れて行くんだよね? 妻にするって約束したんだから。
でも、注意しておくよ。
君が私との友情を継続したいなら、ローマで正式に結婚するまでは、彼女にキスするのを我慢すること。(婚前交渉や異教徒との性交は、当時のキリスト教的には大罪。今のエスクラルモンドは、まだキリスト教に改宗しておらず、処女。)これが守れなければ、とんでもない不幸を、君は引き寄せてしまうだろう」
「師匠、肝に銘じます」
ところが、オベロンは別れの挨拶を済ませると泣き始めました。
「どうしたんですか、師匠?」
「君が苦しむことになると『視えた』からだよ。そして私は、君とは会えなくなるだろう」
姿は消えました。
ユオンたちはバビロンに数日滞在しました。
キリスト教に改宗した身分高い男性とシビルを結婚させてバビロンを任せ、いよいよ出航です。
オベロンの用意した素敵な豪華船に財宝と食料を積み、いい風にも恵まれ、その日の夕食は楽しいものでした。
「私は本当に幸せな男だ。大都市と同じ価値がある 金の杯 を持っている。比類ない 鎖かたびら を持っている。欲しい時に私の軍を連れてくる 象牙の角笛 を持っている」
金の杯からワインを飲んで、調子に乗ったユオンは言いました。
「加えて、最も美しい女性エスクラルモンド。多くの人が願う以上のものさえ持ってるんだ。彼女は私を愛し、私も彼女の心を愛してる。神かけて! この気持ちを伝えて、彼女に今すぐキスしたい。
あの
ジェフ―ムは震えて立ち上がりました。
「あなたは、気がおかしくなったのか?
「好きにやって何が悪い。怖いなら、あの小型ボートに移って逃げればいい」
ジェフームと仲間たちはボートに食料を積んで去りました。
エスクラルモンドは、ユオンの足元に身を投げ出して「神の愛のためにご慈悲を! 結婚するまでお待ちください」と懇願しましたが、聞かん坊のユオンは彼女を抱き寄せてキスしました。
その瞬間を待ち構えていたかのように。
恐ろしい嵐が爆発しました。波と雷は船を破り、鎖かたびらも金の杯も角笛も、みんな海の底に沈んでしまいました。
なんとかエスクラルモンドを掴むことのできたユオンは、彼女と自分を船板に縛り付けて、荒れ狂う海を揉まれ漂流していきました。
長い苦しみの果てに、二人は無人島に漂着しました。
「嘆いていても無意味だ。トリスタンはイゾルデへの愛に殉じた。私たちも最期まで愛を貫こう」
怒り悲しむエスクラルモンドをユオンは宥めました。
その時、島に小型ガレー船が着いて、海賊じみた男たちが野営を始めました。食べ物を求めたユオンは近づき、彼らはエスクラルモンドを発見すると顔色を変えました。
「エスクラルモンド嬢、あなたなのですか? あなたの父をフランス人に殺させた? あなたの 伯父、モンブランの王 アイボリンのもとへ連行します。王はあなたを火あぶりに処すでしょう」
そしてユオンを捕らえ、首を切り落とそうとしました。
「ああ! お方々」エスクラルモンドは言いました。「私のことは好きになさい。でも彼を傷つけないで」
彼らはユオンの身ぐるみを剥いで、布で目隠しし、後ろ手に縛って、海岸に置き去りにしました。
エスクラルモンドが乗せられた小型ガレー船は、悪い風で道を失って、仕方なくファラーニャン Aufalerne に寄港しました。そこはギャラファ Galafre 提督の都市です。塔から船を見た提督は降りてきて、助けを求めるエスクラルモンドに心奪われました。
彼はガレー船の船員たちを殺させてエスクラルモンドを救い、「明日、あなたと結婚する」と言い出します。彼女は「2年は結婚しないと、マホメットに誓願しております」と断りましたが、聞く耳を持ちません。
一方、ガレー船の船員は一人だけ生き延びており、その日のうちにモンブランへ行って、アイボリン王に報告していました。
「ああ! この不幸! 弟は殺され、姪は囚われたとは! しかしギャラファは私の家臣だ。私に姪を返すだろう」
使いが送られました。返さねば兵を集めて都市を破壊すると。ところがギャラファは応じません。他の事なら何でもするが、彼女だけはと。
アイボリン王は激怒し、ギャラファの領地と人生を消し去ると髭に誓いました。
その頃。
妖精王オベロンは、森の大木(英訳版では「オークの木」)の下に座っていました。
ぽろぽろと泣きだした小さな彼に、周りを囲む家臣たちの中から、第一の騎士 グロリアンが尋ねます。
「どうしたんですか、
「私は」オベロンは言いました。「自業自得で不幸になった、哀れで愚かなユオンを、すごく好きだったんだ!
私の戒めに彼は従わなかった。今、彼は、あまりにも悲惨なことに、私が与えた全ても、エスクラルモンドさえ失って、裸で離島に放棄されている。
バっカじゃないのか! 自分のしたことの報いを受けたんだ。私は救い出したりなんかしない」
泣きながら決定を下します。
その時、マラブロンがオベロンの前に身を投げ出して言いました。(英訳版では、以下の台詞を言うのはグロリアン)
「オベロン様、あなたは間違ってます。考えてみてください。神様だって、言いつけに背いて知恵の実を食べたアダムとイブを許したじゃないですか。神より冷酷なことはしないでください。あの子供を救ってあげてください!」
(英訳版では、グロリアンが上の台詞を言った後、マラブロンが出てきて「一時間だけユオンを救けに行かせてください」と懇願する)
「私は何もしない」
「だったら私が行きます」とマラブロンは言った
「そうしたいならすればいい。ただし、条件がある。
君は30年間 海の
ユオンの方は、大陸の海岸まで運んでやっていい。でも手助けはそれまで。裸のまま置いてくるんだ」
(英訳版では、ここで以下のグロリアンの台詞が追加
「些細なことで腹を立てて、そんなにユオンを苦しめるんですか。
鎖かたびらを回収しろって、それをユオンが どうやって手に入れたか、あなたは知っているでしょう。そうでなきゃ、あれは<傲慢>に奪われたままでした。
私にはユオンを助けだす自由があります。じゃあ、島のどこにいるか教えてください」
)
「全て承りました」マラブロンは言いました。「どこで子供を見つけることができますか?」
オベロンは答えました。
「
無人島の海岸で、裸で転がって絶望していたユオンは、誰かに話しかけられて驚きました。
「ユオン、起きてるか、眠っているのか?」
「えっ! 神よ! 私に喋っているのか?」
「君を心配して来たんだ、子を想う母親みたいにね。私はマラブロン。かつて君をバビロンに運んだ海の
「兄弟よ」ユオンは言いました。「こっちに来て、目隠しを取って手を解いてくれ」
戒めから解放されると、ユオンはマラブロンを深く抱きしめました。
「ああ!
「オベロンは、私がここに来るのを許したよ。ただし、私が もう30年海の
「バっカじゃないのか!」ユオンは言いました。
「そんなこと言うなよ。君が言ったこと全部、あの人は聞いてるんだ」
「あいつを刺してやる!」ユオンは言いました。「あいつは私を あまりにも傷つけた! 教えてくれ兄弟、まさか、あんたは私をここに残していくつもりなのか?」
「いいや。君を大陸の海岸まで運んでから帰るよ」
彼は脱ぎ捨てていた獣の皮の中に入り、ユオンは彼の背に胡坐をかきました。
鳥が空を横切るより短い時間で、マラブランはユオンを寂しい海岸に下ろしました。
「さよなら。これ以上は君のために何もできないよ。海の底に鎖かたびらと角笛と杯を捜しに行かないといけないから」
彼は波に飛び込み、ユオンは一人でそこに残されたのでした。
「これからどうしたら…。せめて着るものがないと」
裸ん坊のユオンは海岸から田園地帯へ歩いていき、老人が木の下に座っているのを見ました。傍らには使い込まれた竪琴と手回しオルガンが置いてあります。前に広げたテーブルクロスには白パンが四つ以上と、木製の杯にはワイン。ところが杯をひっくり返し、ワインを飲めずに涙を落としました。
そこで老人は、裸の若者が間近にいることに気付いて、大いに恐怖しました。野蛮人に襲われると思ったのです。
しかしユオンが「何もしないから」と
服を着て、がつがつ飲み食いするユオンに、老人は尋ねました。あなたの信じる神は何か? どの国から来たのか?
(神よ!)ドキッとして、子供は自問自答しました。
(嘘をつくか、真実を言うか? この異教の地で、本当のことを言えば殺されるだろう。嘘をつけばオベロンが激怒するだろう。
ああ! オベロンよ、あなたは、ごく些細なことで私を ひどく虐待した。仕返しにあなたを怒らせてやる。私が嘘つきになれば、それが あなたをムカつかせるんだから)
ユオンはぺらぺらと嘘をつきました。
「私はアフリカから来たんです。海商の仲間とモンブランに行くつもりでした。大きな嵐が私たちの船を壊し、仲間は みんな溺れました。モハメットは私を救いました。
しかし旦那、どうしてそんなこと気にするんです?」
老人は答えました。あなたも噂は聞いているんじゃないかと思いますが、と。
「兄弟。私はイストリモン Estrument と呼ばれています。この辺りで私より優れた吟遊詩人はおりません。竪琴も手回しオルガンも、シンバルやベルも、諸侯の前で巧みに演奏してきたものです。
私には、友人だった、そして便宜を図ってくれた君主がいました。それはバビロンの提督ガウディです。
彼の恐ろしい死の報せを受けたとき、同時に知りました。彼は、ユオンとかいうフランスの不良少年に、彼の宮殿で討たれたのだと。ああ! モハメットよ、奴を殺したまえ! 私を破滅させたのはそいつです」
俯いたユオンに、老人は名を尋ねました。「ギャリネット Garinet と呼ばれています」とユオン。
「ギャリネットよ、そんなにしょんぼりすることはありませんよ。あなたは少し前まで空腹でしたが、今はもう満腹です。シャツとズボン、素敵なオコジョの毛皮付きの長衣と赤いマントだって手に入れました。あなたは若くて美しくて、まだまだ人生にチャンスがあります。
しかし私は老人です。私は愛する君主を失いました。ああ! モハメットよ、彼を殺した奴に復讐あれ!」
ユオンは、ますます俯いて答えませんでした。
老人は、ガウディ提督の兄である、モンブランのアイボリン王のもとへ行くつもりだと話しました。この凶報を伝える名目で彼に目通りし、演奏してみせて、新たなパトロンになってもらう。自分の技能ならそうできると。
そして、ユオンを助手に誘いました。楽器などの荷物を運び、キツい山道では吟遊詩人の老人をも背負って運ぶ仕事です。
吟遊詩人の報酬は、演奏後に投げ与えられる上着などの『おひねり』ですが、それの回収もします。
私の技能なら担ぎきれないくらい もらえる、稼ぎはあなたと山分けにすると約束しますよ、と。
ユオンは承知して、老人の荷物を担ぎました。内心で、昨日までは豪華船で忠実な仲間とオベロンの宝に囲まれていたのにナと嘆きながら。
イストリモン老とユオンは、夕食時にモンブランの都市に着き、宮殿に上がりました。
アイボリン王はガウディ提督の訃報を既に知っており、エスクラルモンドがギャラファ提督にさらわれていること、ギャラファを吊るし首に、エスクラルモンドは火あぶりにするつもりであることを語りました。
それを聞いたユオンの心臓は跳ね上がり、「この命尽きるまでに彼女を見つけ出すぞ」と小声で呟きました。
食事が終わると、アイボリン王は老人に演奏させました。それは素晴らしく、ユオンの憂いも晴れたほどでした。
貴族たちは絶賛し、着ていた豪華な上着を脱いで、報酬として投げ与えました。ユオンは素早く拾い集めて回ります。
王はユオンを見て言いました。
「こんなに美しい若者が吟遊詩人に奉公しているとは勿体ない。どうしてこんなことに?」
老人がユオンを雇った経緯を話すと「大した お人好しだ。彼があなたを悪路に捨てて金品を奪うとは思わなかったのか?」と呆れ、ユオンを呼んで「もっと立派な仕事に就こうと思わないのか?」と叱りました。するとユオンは言いました。
「仕事? これは仕事じゃありません、私には役不足です。あなたが望むなら、私の才能をお見せしますよ」
生意気な物言いにムッとした王は、ならばテストしてやろうと言いました。
ユオンは、自分ができること、得意なことを数え上げます。鷹の世話、猟犬や角笛を用いる狩り、チェス、騎馬と槍による戦闘、白兵戦、女性の扱い方…。
王は、チェスでテストすると決めました。
「私には、世界の誰より賢い娘がいるのだ。娘に『チェックメイト』と言えた者は一人もおらぬ。お前が負ければ首を切る。しかし勝てば娘婿に迎えて王国の半分をやろう」
王女とのチェス勝負になりました。
「なんて美しいの! 愛されるために作られたみたい」
彼女はユオンを見て、思わず言いました。
「残念ね、こんな美少年が首を失うなんて。私に勝てるはずないもの」
見事な絨毯の真ん中に置かれたチェス盤は金と銀、コマも金と銀です。周囲を貴族たちが囲んで見守る中、勝負は始まります。
すぐにユオンは多くのコマを失い、ピンチに陥りました。
「下郎、あなたは手を禁じられたわ。頭を切られることになるわね」
王女が嘲ると、ユオンは言いました。
「ゲームは終わっていない。貧しい吟遊詩人の少年と結婚しなければならなくなったとき、あなたは その嘲笑を悔やむだろう」
王女はユオンを見ました。愛は心臓に入りました。
彼女が彼のことを考え過ぎたため、あるいは故意にそうしたために、彼女の手は失敗だらけになり、どんどん旗色が悪くなっていきました。
「陛下」ユオンは言いました。「あなたの娘に『チェックメイト』と言うのも、今や私次第ですね」
「我が娘よ!」王は立ち上がって罵りました。「呪われろ! お前は多くの君主を負かしてきた。それが、お前自ら、この少年に勝ちを譲った!」
しかしユオンは王を宥め、元より王女と結婚するつもりはありません、吟遊詩人の助手を続けますと言ったので、王は落ち着きを取り戻し、そういうことならと、ユオンに銀100マルクを与えると言いました。
一方、ユオンの意図を悟った王女は、そうと知っていたら絶対負けなかったのにと悔しがったのでした。
翌日になると、アイボリン王はファラーニャンを攻める軍勢を集めました。
ユオンは王に申し出ました。
「陛下、私に武器と馬をお貸しください。そして私がそれをどんな風に使うかご覧ください」
ユオンに馬と剣が用意されましたが、サラセン人たちは彼を馬鹿にし、あるいは警戒していたので、わざと悪いものが出されました。
馬はひどい年寄りで、目は潰れ、足を引きずっていて、あばらが浮き出るほど痩せており、拍車を打っても ちっとも言うことを聞きません。
しかし、倉庫の奥から適当に引っ張り出されてきた古ぼけた長剣の方は。
鞘から抜いて、刃にフランス語で刻まれていた銘を見たユオンは、目を輝かせました。
「
ユオンは満足して「喜び」の剣を帯びました。
軍は、すぐにファラーニャンの門に着きました。エスクラルモンドを差し出せとの王命に、提督は応じません。
提督の甥、若きソルボハン Sorbrin が「こんな侮辱に甘んじるおつもりですか?」といきり立ち、草原の花より白い愛馬 ブランシャール Blanchard を駆って、門を出てきました。鞍は象牙、手綱は純白、馬の胸には30の金の鈴がきらめいています。
「私と一騎打ちする勇気のある者はいるか?」
「ソルボハンだ。奴と戦えば死ぬぞ」
囁き合うサラセン人たち。挑む者はいません。そこに、足を引きずる痩せ馬に乗ったユオンが、よたよたと飛び出して、一騎打ちを申し出ました。
「お前はサラセン人か?」
「私が? とんでもない! 私は『我らのために十字架にかけられた者(キリスト)』を信じている。みすぼらしいとご案じなら、安心なされよ、私は良い育ちの騎士である」
「愚か者が。死に場所を探しているらしい。最初の一撃で殺してやる」
ユオンの駄馬は走れないので、ソルボハンの方から突っ込んできました。風のように槍で打撃します。それをユオンは盾で受け続け、ついに槍が壊れましたが、何の不思議か、いや、殆ど動けない駄馬の首を回すことができた技量ゆえか、無傷でした。
次いで、ユオンは己の槍を投げ捨てました。抜いたのは腰の名剣。そしてソルボハンが前を通ったときに、彼の兜の上から打撃したのです。刃は頭飾りからベルトまで達し、抜けば地上に くずおれました。
そして、主のいなくなったブランシャールに乗り、悠々と王のもとへ帰ったのでした。王はユオンの首を抱きしめ、自分の隣に座らせました。
さて。
次の朝、ユオンは自ら王に願い出て、再び軍を率いてファラーニャンへ向かい、門を剣で打って叫びました。
「ギャラファ王よ。私と話し合え。私はあなたの甥を殺した。エスクラルモンドを返さなければ、あなたも同じ運命になるぞ」
すると門が開き、完全武装の騎士が飛び出してきました。白い髭が鞍や鎖かたびらに広がっています。
ユオンはブランシャールを突っ込ませ、言葉もなく、互いに槍を突き出しました。それは壊れ、盾も突き通して、二人とも地に激しく落馬します。
すると敵の騎士は剣を抜き、ユオンの頭を打撃したので、兜が叩き割られて鮮血が飛び散りました。身をよじるのが僅かでも遅れていたら即死だったでしょう。
ユオンは言いました。
「こんな打撃、受けたことがない。私は死ぬ。エスクラルモンド、さようなら永遠に! 忠実なジェフーム、もう二度と会えない!」
すると、敵の騎士の動きが止まりました。凍り付いたかのように。そして剣を投げ捨てて、無言でユオンの顔を見ています。
「サラセンよ」ユオンは言いました。「戦いを放棄するのか?」
すると、敵騎士がやっと口をきいたのです。
「ああ! ユオン様」それは、ジェフームの声でした。「私の剣を取り、私の頭を切り落としてください。そうされて当然です。あなただと判るべきだったのに」
前日、ユオンたちが帰ったあと、ファラーニャンの港に、ジェフームたちの乗ったボートが漂着しました。捕虜になった彼らは、身の安全と引き換えに、アイボリン軍と戦うよう命じられたのです。
また、ジェフームはエスクラルモンドと再会を果たしていました。彼女は、ユオンが あのまま無人島で死んだと思っており、ジェフームたちと共にフランスへ逃げて修道女になって、生涯ユオンの魂のために祈ることを望んでいました。
「いいですか、時間はありません」ジェフームはユオンに囁きました。
彼はユオンを捕虜にしてファラーニャンに連行し、ギャラファ提督に言いました。私は彼を牢に入れてきます、あなたは門の外で戦いを続けてください。
そして提督が外に出て都市の門を閉じるや、フランス人たちは
そんなこととは露知らず、門の外では2000人が死んだほどの激しい戦いが続いていました。
この混戦の真っ只中で、ファラーニャンの都市から脱出した男が、ついにギャラファ提督のもとに辿り着いていました。
「閣下、ご存じないのですか? あなたが捕まえて使役していたフランス人が、あなたの宮殿で大宴会しています。
彼らは門を閉め、あなたの都市を乗っ取りました。跳ね橋を上げ、中にいた全ての人を殺しました。
あなたの甥を殺した、先ほど捕まえた男は、彼らの主君です。また、ガウディ提督を殺した者でもあります。私は十分に知っています。奴がアグラパートを破ったとき、バビロンで見ていたのですから」
ギャラファはアイボリンのもとへ行き、跪いて全面降伏を誓うと、都市を奪ったユオンたちを討つ協力を願い出ました。あなたが連れてきた少年、あれは あなたの弟を殺したフランス人だったのですと。
アイボリンはギャラファを許し、ユオンを呪いました。二つの軍で協力してファラーニャンを取り戻し、フランス人14人を縛り首にしない限り帰らないと誓ったものです。
「しかし、その前に」アイボリン王は言いました。「我々には払っておくべきツケがある。大きな絞首台を建てよ!」
老いた吟遊詩人が連れてこられました。
「裏切り者め。こいつは私の弟を殺した者を連れてきた。命で贖え。この絞首台はお前のためのものだ」
「お慈悲を、閣下!」老人は言いました。「彼が何者か、誓って知りませんでした」
「嘘つきめ。絞首刑にする」
哀れな吟遊詩人は拘束され、首に彼の竪琴をぶら下げられて、絞首台の足元に引かれていきました。
老人は梯子を上り、都市の方を見て、夕食を終えて胸壁の上に見張りに出てきたユオンと仲間たちに気付きました。
「ああ! 閣下」彼は泣きました。「あなたは私が殺されるままにするのですか? あなたが私のところへ来たとき、私が何をしたのか思い出してください。あなたは裸でした。空腹でした。私はあなたに服と食べ物を与えた。その愛のために、私は吊るされるのです」
ユオンはそれを聞き、部下に言いました。
「武器を取れ。泣いているのは私のマスターだ。彼は私に すごく親切にしてくれた。それを見捨てるくらいなら、死んでしまった方がいい」
すぐに14人のフランス人は武装し、馬に乗りました。エスクラルモンドが門を開け、彼らが都市の外に出ると閉めました。
真っ先に絞首台に辿り着いたのはブランシャールに乗ったユオンで、槍で執行人たちを薙ぎ払いました。彼らは、既に首に縄を掛けられていた老人を降ろし、連れて都市へ取って返しました。
四方八方から追ってきたサラセン人たちを槍や剣で退けて活路を開き、都市の門の中に逃げ込みます。急いでエスクラルモンドが扉を閉めました。
ところが、彼らは一人を忘れていたのです。大船主のギャリンが、サラセン人に囲まれて逃げ遅れていました。
逃げられないのを悟ると、ギャリンは運を天に任せて、
ユオンは、胸壁の上からそれを見ました。出て行こうとしましたが、仲間たちが「狂気の沙汰だ」と止めました。
彼は国に妻子を残してきたのに、と嘆くユオンに、ジェフームは言いました。
「閣下。後悔しても彼は戻りません」
ユオンは、助け出した吟遊詩人に弔いの演奏を頼み、悲しみを胸に収めたのでした。
翌朝、ユオンたちは途方に暮れていました。
このまま立て籠もっていても、必ず門は破られ、連行されることになるでしょう。しかし逃げる船はありません。
その時、裏門の港に大きな船が入ってきました。舳先には金の十字架が立っています。迷い込んできたフランスの商船でした。
この船には、ボルドー出身だという、ひどく老いた男が乗っていました。名はギリー Guirré 。商人ではなく、人探しのため旅していて、路銀が尽きて路頭に迷っていたのを、商人たちが親切に乗せてやっていたのです。
彼が探していた人、それこそがユオンでした。
ユオンが旅立った後、弟のジェラールが領主代理を務めましたが、二年前に母が亡くなって、その領地を相続すると、財産権や相続権の法を勝手に改正し、横暴に家臣を苦しめているというのです。
彼は奸臣ジーボワード Gibouard の娘と結婚し、結託して悪事を行っています。
苦しむ家臣たちは、ユオンを探してくるようギリーに依頼し、彼は二年間、東方世界中を訪ね歩いたのでした。
そしてまた、ギリーはジェフームの兄でもありました。兄弟は60年ぶりの再会を喜びました。
ユオンは商船の船長に、フランスに連れて行ってくれと頼みました。報酬はたっぷり払うからと。しかし善良な船長は、無償で あなた方 全員を乗せましょうと言いました。
彼らは夜を徹して、商船に財宝と肉とワインを積み込み、老吟遊詩人も忘れず乗せて出航しました。(彼は後に、ボルドーの宮殿の吟遊詩人になりました。)
その後、サラセン人たちは都市への攻撃を開始し、もぬけの殻だと気付いて怒りを燃やしました。
それからアイボリンはモンブランに帰り、ギャラファはファラーニャンに残りました。
ユオンたちの船は良い風に恵まれ、すぐにブリンディジ(イタリアの都市)の港に着きました。
ユオンはギャリンの家に行き、彼の妻に夫の死を報告しました。彼女は悲しみのため倒れかけました。
それから船員たちに十分な報酬を与えて別れ、ローマへ。
教皇は甥の帰還を喜びました。
ユオンは教皇に旅の出来事を話して「赦免」を求め、罪を浄められました。
教皇自らエスクラルモンドに洗礼を施して結婚を許しました。彼女は名前を変えなかったので、洗礼後もエスクラルモンドのままでした。
婚礼の翌朝、ユオンたちはローマを出発しました。財宝を何頭もの馬に積み、エスクラルモンドはラバに乗っています。
そして ある日とうとう、ボルドー近くに帰ってきました。
遠くにボルドーの城壁と塔を見たユオンは、妻に言いました。
「愛しい人。私があなたへの持参金とする都市はここにある。今は公国だが、神の助けを借りて、いつか王国にして…」
「そんなに自慢しないでください」ジェフームが言いました。
「あなたは物事の判断がついていない。それに、今は あなたの都市に入る権利を持っていないことを思い出してください。何をすべきか解っていますか?
この近くのサンモーリス・デプレの修道院に行きましょう。そこは大帝の支配下ではありませんから、大っぴらに滞在することができます」
ユオンはサンモーリスの修道院長に使いを出し、修道院長は涙の喜びで迎えました。
善良な修道院長は「よろしければ、弟君のジェラール殿をお呼びしましょうか?」と提案し、ユオンは快諾しました。
「素晴らしい伝言をありがとう。寸暇を惜しんで会いに行くと兄にお伝えください」
連絡を受け取ったジェラールはそう言って使いを帰しましたが、内心は穏やかではありませんでした。兄がシャルル大帝に許されて領主に復帰したら、自分は領地を持たない次男坊の冷や飯食いに成り下がる、と危惧していたのです。
彼は義父である奸臣ジーボワードのもとへ行って相談しました。
「心配するな。良い助言を与えてやろう。
あなたは従騎士だけを連れて、兄君に会いに行きなさい。そして再会を喜んでおく。
翌朝、彼がパリへ出発したら、それに同行しなさい。
修道院の少し向こうに小さな森がある。私は60人の騎士を連れて待ち伏せしておく。その近くに来たら、あなたは彼と口ゲンカを始めなさい。その声を合図に森を出て、我々は彼の騎士全員を殺す。
そしてあなたは、彼をあなたの牢に投げ込むのです。
それからパリに行って、兄を収監した、条件を満たさずボルドーに帰ってきたからだと、シャルル大帝に言いなさい。そうすれば大帝は、それを良い口実に、裁判なしで絞首刑にするはずです。大帝がどんなにユオンを憎んでいるか知っているでしょう。彼は機会を逃しませんよ」
「素晴らしい助言だ」ジェラールは言いました。
ジェラールとジーボワードは計画通りに行動し、ユオンの仲間11人とギリーは殺され、ジェフームは、ユオンの懇願で命は取られなかったものの、脇腹を裂かれて、封印されていたガウディ提督のあご髭と四本の歯を奪われました。
ユオンとエスクラルモンドとジェフームは、ボルドーの宮殿の地下牢に入れられました。
ジェラールとジーボワードはサンモーリスの修道院へ行き、拒んだ修道院長を殴り続けて殺して、ユオンが彼に預けていた財宝を奪いました。
財宝を持ってパリへ行き、大帝と貴族たちにそれらを分配してから、ユオンが何の使命も果たさず戻ってきたので、大帝への忠義のために牢に入れましたと報告し、同行した新しい修道院長らも、その通りですと証言しました。
これを聞いた貴族たちは、みんなユオンに同情して泣きました。身内に売られるなんて!
中でも、ユオンとジェラールの おじであるネーメス公は、ジェラールは嘘をついている、そうでなかったにしても、兄を死に追いやる卑劣な人非人だとなじります。(潔癖な彼は、ジェラールが配った財宝も受け取りませんでした。)そして大帝に提案しました。ボルドーに行ってユオンから直接話を聞くべきだと。
煮え切らない態度ながら、大帝は貴族たちを率いて すぐにボルドーへ向かいました。
ボルドーの宮殿に着くと、もてなしの宴会が始まりました。しかしネーメス公は怒って立ち上がり、大帝のワインの杯がひっくり返ったほどでした。
彼は言いました。ここへは生死に関わる審判のため来たはず、酔っぱらって審判する気ですかと。
しぶしぶながら、大帝は食卓を運びだすよう命じ、ユオンたちを連れてこさせました。三人は足に重い鉄枷をはめられていました。
貴族たちはユオンに同情し、また、エスクラルモンドの美しさに驚きました。誰もジェフームのことは気にしませんでした。(ただし、ネーメス公はジェラールから彼の名を聞いたとき驚いていました。あの誠実な男が帰ってきたのか、彼は騎士としての同輩だったのだと。)
大帝を見ると、ユオンの顔にカッと血が昇りました。
彼は地に頭を垂れ、まさか弟に裏切られるとは思わなかったと、これまでの経緯を語り、証拠としてジェフームの脇腹の傷を見せました。
そして提案しました。ジェラールとジーボワードの二人と決闘したい、夜までに二人に自白させられなければ絞首刑になってもいいと。
私は無実です決闘なんてしませんと大帝に懇願するジェラールと、
板挟みに悩む風を見せた後で、大帝は言いました。
ガウディ提督のあご髭と歯をユオンは持っていない。そもそも、使命を果たしたと証明される前に領地にいたら殺すと言い渡してあった。しかるに今、ユオンはボルドーにいる。約束通り、ユオンと共犯者ジェフームを縛り首にする、と。
もはやネーメスの諫めも聞かず、再び食卓を運び入れるよう命じ、食事が終わったら、すぐに刑を処すと言い切ったのです。
ジェラールはニヤける顔を抑え、他の貴族たちは同情して泣きました。
エスクラルモンドは夫にキスして「ナイフを持っていたら、自分の心臓を刺すでしょう」と泣き、ジェフームは「何と悲しい我が運命! 苦しみの中で人生を過ごし、最後にこんな死に方をしようとは!」と嘆きました。ユオンも絶望の涙をこぼしました。
さて。
その時、オベロンは彼の森に…彼が魔法で引き出した素晴らしい宮殿にいました。
家臣たちに囲まれて食卓に着いていたものの、食べていません。考え込んでいる彼の目から涙が溢れました。
「どうしましたか、
「好きだった人のことを考えている。ボルドーのユオンのことさ。
彼は、自分の罪をよく償った。
自分の国に戻り、ローマで赦免を受け、結婚し、そして弟に裏切られた。
彼は今、今までで最大の危機にある。
ボルドーの彼の宮殿で、足枷で囚われている。
皇帝シャルルマーニュは宣誓した。食事が済んだら彼を絞首刑にすると。だが彼の誓いは間違いだ。
私は、友達を救い出す」
オベロンは唱えました。
「ボルドーの大広間に、私のテーブルが欲しい。シャルルが食事をしているものより2フィート(約70cm)高いものが。
そのテープルの上には、私の良き杯と象牙の角笛、鎖かたびらが欲しい。
言い終えるより早く、彼の願いは成就しました。
そのテーブルはシャルル大帝のものより上座で、2フィートは確実に高く、上に角笛、金の杯、真っ白い鎖かたびらが置いてありました。
シャルルは驚き、ネーメスに言いました。
「これは何だ? 見てくれ、何か素晴らしいものがある」
全ての貴族が驚きました。
ジェフームは、鎖かたびら、黄金の杯、象牙の角笛を見て、目を
「閣下」彼はユオンに言いました。「安心なさい、あなたの良き鎖かたびらが そこにあります。象牙の角笛と杯も。助けが来ました!」
ユオンはそれを聞きました。じゅんぐりに宝物を見て、天に両腕を掲げました。
「神よ、ありがとうございました! 私の素敵な
一方、オベロンは軍勢を率いてボルドーの都市に入ってきました。たちまち大通りは騎士でいっぱいです。彼は宮殿へ向かい、グロリアンら幾人かの騎士を従えて大理石の階段を上がりました。
彼は、ボタンと金の留め具が胸に付いた、キラキラ輝く絹の服を着ており、夏の太陽のように魅力的でした。
一瞥すらせず前を通って、頭から王冠が転げ落ちたくらい強く、大帝の肩にぶつかります。
「神よ!」王冠を落としたシャルル大帝は言いました。
「私を突き飛ばした、この小人は誰だ? 大帝である私を ひっくり返しそうにしておいて、こちらを見もしないほど誇り高いとは。理解できん。しかし『我らの貴婦人ノートル・ダム(聖母マリア)』よ、彼は美しい!」
オベロンは真っ直ぐユオンに向かいました。
彼がユオンを持ち上げて唱えると、エスクラルモンドとジェフームのものも同時に、足枷が外れて落ちました。
三人はオベロンのテーブルの、彼の傍に座りました。
オベロンが十字を切り、良き杯は鮮やかなワインで満たされます。それを手に取るとエスクラルモンドに渡し、彼女は飲んでユオンへ、また飲んでジェフームへと渡されました。三人の誰が手にしてもワインが消えることはありません。
それを確認すると、オベロンはユオンに言いました。
「この杯を、シャルル大帝に運ぶんだ。和睦の印として飲むようにって。拒否するのなら、彼は対価を払うことになる」
これらの不思議を黙って見ながら、シャルル大帝は困惑していました。
ユオンが立ち上がり、縁までワインで満たされた杯を運んできます。
大帝は拒まずに受け取りました。ところが、すぐにワインは消え失せました。
「下郎め」シャルルは言いました。「これは邪術である!」
「いいや」オベロンは言いました。
「君が邪悪だからだよ。この杯は価値あるものでね、あらゆる大罪の穢れなき誠実な人間でなければ飲むことはできないのさ。
皇帝シャルルマーニュ、君が遠い昔に犯した大罪を、私は知っている。そして、君はそれを決して懺悔しなかった。
君の名を汚して構わないなら、みんなの前で それを言ってみようか」
大帝は頭を垂れて震えました。オベロンは口をつぐんで、彼を辱めませんでした。
ユオンは良き杯をネーメス公に運びました。その人は一気に飲み干しました。
けれど、彼の後にワインを消されることなく杯に触ることのできた貴族は、部屋に一人もいませんでした。
オベロンはネーメス公を呼びました。
「君はいい人間だ。私の近くに座るといい」
そしてシャルルに顔を向け、ユオンは確かに使命を果たした、君は間違っていると言い、ジェラールを呼びました。
ジェラールは逆らう勇気なく、強風の中の木の葉のように震えて近づきました。
「聞くんだ、ジェラール。私は真実を明かすために神によって君に厳命する。そして、君が嘘をついたところで何ほどもない」
誤魔化しても無駄だと悟って、ジェラールは、びくびくと真相を語りました。
「私はサンモーリスの修道院に行きました。兄に会うために。私の義父ジーボワードは、60人の騎士と森に隠れました」
「声が聞こえない」とオベロン。「もっと大きな声で話しなよ」
「本当に」ジェラールは言いました。「何を言えば? 私は悪い行いをしました。私は昨日、修道院の外に兄を連れだしました。森の近くに達したとき、私は兄に喧嘩を吹っ掛けました。義父と部下らは森を出てきて、兄の仲間を殺しました。彼と彼の妻とジェフーム老を、手首を縛って目隠しをして、町に連れていきました。私はジェフームの脇腹を切り開いて、顎ひげと歯を引っ張り出しました。
あなたが望むなら、それらを探しに行きますが」
「逃げようったって無駄だよ」オベロンは言います。(彼が唱えると、それらはテーブルの上に現れました。)「続けて」
「はあ! 私は牢に兄を入れました。それから、義父と共に修道院に戻り、委託された財宝を修道院長に要求しました。そして、拒否した彼を殺し、別の修道院長を据えました。手に入れた財宝で10の荷を作り、気前良く振る舞うために、宮廷まで車で運びました。
私は、ユオンは死刑にされる、遺産が手に入ると信じていました。これは大変な裏切りです。しかし、そうさせたのはジーボワードです。彼なしでこんな考えは持たなかったでしょう」
「心配しなくていいよ。絞首台は君たち両方のために建てられる。それに、そこの修道院長と修道士のことも忘れていない。彼らがした嘘の証言のためにね」
その時、ユオンがオベロンの前に跪いて、弟を許してやってくれませんかと頼みました。悪いのは全部ジーボワードだからと。
「それは私の考えに合わない。世界中の『黄金』だろうと容赦はしないだろう」
オベロンは望みを唱えました。「草原に建つ絞首台が大きいように。そこでジェラードら四人が絞首刑になるように」と。
言い終えないうちに、四人がぶら下がった大絞首台が建っているのが、部屋の窓から見えました。
人々は混乱に陥り、シャルル大帝は叫びました。
「この男は神か!」
「いいや、陛下」オベロンは言いました。「私は神じゃない。ただの男だよ」
彼は自分の生い立ちと能力を説明し、続けました。
「私は、あらゆるものの中で、勇敢さと誠実さを最も評価する。
ユオンを好きなのは そのためだ。彼が好ましい男だったから、私は彼をテストした」
そしてユオンに呼びかけました。
「友よ。シャルル大帝に顎ひげと歯を持って行くんだ。約束通り、彼は君に、両親の遺産(領地)を返すだろう」
大帝は立ち上がり、ユオンを抱きしめてキスしました。
「私はあなたを許す。あなたの土地を返す。そして今、私たちは友人である」
貴族全員が喜び、中でもネーメス老のそれは大きなものでした。
「ユオン、聞いておくれ」オベロンは言いました。
「三年経ったら(英訳版「四年後の同じ日に」)、君にモンムルに来てほしい。私の跡を継いで妖精の冠を被ってほしいんだ。国と力の全てを遺しておくよ。
君の領地は、ジェフームに遺すといい。忠実に仕え、多くの苦労をしてくれたんだから」
「
「友よ」オベロンは言いました。
「私はもう地上に いなくていいんだ。主が天国に呼んでいる。私の席はそこに用意されているから。
どうか約束の日を忘れないで。(英訳版、忘れたら罰が下って悪い死に方をするよと戒める)」
「
オベロン王はシャルル大帝に別れを告げ、ユオンを抱きしめて、彼の全ての騎士と共にモンムルに消えました。
その後、ユオンはサンモーリスの修道院に補償して新しい修道院長を任命し、エスクラルモンドとジェフームと共に、長い冒険が終わったことを喜びました。
おしまい。
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続編の詩『エスクラルモンドの唄 Le Chanson d'Esclarmonde』によれば、ユオンとエスクラルモンドが王位を継ぐべくモンムルへ向かった旅も、苦難に満ちた冒険だったと語られています。嵐で船が難破して 樹木の茂った未開の海岸に流れ着き、謎の集団に捕らえられます。実はオベロンの眷属だったので、彼らに連れられて妖精の国へ入れましたが。
妖精の国に着くと、死後に妖精の国(アヴァロン)に住んでいたアーサー王が、ユオンが王位を継ぐことに異を唱えました。(彼は自分がオベロンの領地を取って妖精王になりたかったのです。)妖精王は妖精の妃を得るべきだ、お前は人間の妻を連れているではないかと。妖精たちも それを理由に反発してユオンに従いません。
エスクラルモンドは、妖精モルガン・ル・フェイの案内で「地上の楽園(地上のどこかにある「エデンの園」のこと)」に行き、そこで「若さの泉(若返りの泉、青春の泉、回春の泉。飲んだり浴びたりすることで青年期の若さに戻れる。生命の泉の一種。ギリシア神話の女王神ヘラは毎年春になると回春の泉で水浴びして処女に戻り、浮気性の夫ゼウスも この時ばかりは いそいそと妻の元へ戻って新婚生活を楽しんだという)」で水浴びして、イエス・キリストの奇跡で妖精に変化し、妖精たちに妃として認められたのでした。
「オベロン」という名は「アルベリッヒ」の変形だと言われています。フランス語では l が u に変化するのは普通のこと、更に ich はフランス語にない語尾なので on に置き換えられ、結果、そうなったのだと。
Albrich / Elberich アルベリッヒ / エルベリッヒ
↓
Auberich オーベリヒ
↓
Auberon / Oberon オーベロン
即ち、オベロンという名も「妖精王」という意味なのでした。
『七つの~』のハーレクインが、妖精王であることを根拠に「キング」と名乗っている設定なのは、ここに想を得たものなんでしょうか。
オベロン(アルベリッヒ/エルベリッヒ)は、老いることなく永い時を生きる永遠の少年です。博識で、便利な魔法具を持ち(ワインと食料の湧く杯は『聖杯』とみなせます。彼は聖杯王でもある)、森に居ながらにして外界の事象を把握できたり・人の心を読んだり・手を使わずものを運んだり・一国の軍勢を退けたりと、強大な力を持っています。
が、決して完璧ではありません。
「悪竜」や「<傲慢>と呼ばれる巨人」には敵わず、大切な人や物を守れずに失っています。
「キリスト教信者=真っ当な社会構成員・良識ある人」
という認識があるので、つまり「良識家」という性格設定なんですね。
生真面目で不正を嫌い、これと見込んだ人間を、時にストーカーかってほど追い回して見守っては、父親のように口うるさく説教して生活指導しようとする。
優しくて友達想いな反面、敵とみなした相手には容赦なく、死の断罪も厭わない。
友達に怒って なかなか許せず、その危機を案じているのに助けに行くのを渋るような、意地っ張りな面もある。
なにかと泣く。とにかく涙もろい。
『泣いて
小狡く立ち回れない、公正とも融通がきかないとも言える不器用な厳格さ。
こうしたオベロンの性格を見ていると、思います。
『七つの~』のキングの性格設定は、オベロンから採られた部分があるのかも? と。
偶然 似たのだとしても、それはそれで、とても面白いことですね。
中世西欧の説話に登場する妖精は多くいますが、オベロンの性格や存在感は一線を画しています。
ギャップ萌え満載で、超越者でありながら人間臭い。
この魅力的なキャラクターは、各時代の読者のハートもガッチリ掴んだようです。13世紀フランスの『ユオン~』が16世紀に英訳・出版されるや、イギリスの創作者たちが、こぞって自作品にオベロンを借用・登場させたのですから。
その一つが、ご存じ、シェイクスピアの歌劇『夏の夜の夢』です。
シェイクスピアは、オベロンの「陰から世話を焼き、人間の男女の仲立ちをする」という設定はそのままに、妃ティターニアを創作、オベロン自身の恋愛模様も描きました。また、彼の部下を物々しい妖精騎士団ではなく、パックをはじめとした可愛らしい妖精たちに変更しました。
この「森でオベロンを囲む可愛い妖精たち」という設定は、その後の「妖精」のイメージに大きな影響を与えたと言われています。
さて。
18世紀ドイツのヴィーラントによる、『ユオン~』を翻案した叙事詩『オベロン』では、エスクラルモンドの名を「レツィア Rezia (洗礼後はアマンダ Amanda)」に変更、「レツィアの侍女・ファティマ Fatme」を旅の仲間に加え、
「オベロンが予め夢で逢わせておいたので、ユオンとレツィアは現実に会う前から互いに恋していた」
「レツィアの婚約者は嫌な奴で、元々ユオンと因縁があり、向こうから襲い掛かってきたので返り討ちで殺した」
という風に、ストーリーも(『
(現時点、日本で最も簡単に読めるだろう、ブルフィンチの翻案版『ユオン・ド・ボルドー』は、このアレンジを取り入れていますね。元の『ユオン~』とは かなり違います。)
特に、無人島に漂流して以降は完全に異なる展開で、ユオンとレツィアの恋愛が中心です。(シャルル大帝の話はどこ行った、ってくらい。苦笑)
ヴィーラントは『夏の夜の夢』の設定まで取り入れて、元の『ユオン~』には いなかった ティターニアを登場させました。
妖精王夫妻は「男と女、どちらが より誠実か」という話題でケンカし、物語後半、それぞれユオン&レツィアに干渉・試し続けるのです。(彼らが試練を越えて愛を貫き、真実の愛を証明するまではティターニアの元に戻らないと、オベロンは誓う。)
これを原作とし、パックを登場させたり、ストーリーを よりオベロン寄りにアレンジしたものが、ウェーバー作曲の歌劇『オベロン、または妖精王の誓い』(19世紀)です。
元の『ユオン~』でオベロンがユオンを手助けした理由は「彼の誠実さを好み、後継者にしようと思ったから」ですが、こちらでは最初から「ティターニアの愛を取り戻すため」でして、オベロンが 相当な恋愛脳です(笑)。
でも、それが可愛いんですよね。
ちょっと、冒頭のところを紹介してみましょう。
妖精界の美しい庭で、花に囲まれてオベロンが眠っています。周囲の妖精たちは「静かに、蜂も泉も音を立てるな、オベロン様は長らく眠っていなかったのだから」と囁くように歌っています。
そこに現れる側近のパック。心配そうに王の寝顔を見て
「オベロン様はどうして あんなに悲しそうなんだい?」
もう一人の側近ドロルが答えます。
「他愛もないことから始まったのです。
あれは数晩前のこと。常々、秋より春の方が美しいと仰っていたティターニア様でしたが、秋の美しい彩りを見て、どの季節より美しいと讃えられた。
それを聞いたオベロン様は微笑んで仰ったのです。『君は移り気だね。女の子はみんなそうだけど』」
「『男はみんな移り気』だって言うべきだったね、王様は」
「そう、それがティターニア様のお答え」
「あるいは『人間みたいに』か」
「人間には賢明になってもらわねば困ります。さもなければ、この妖精界に大いなる災いが降りかかることになる。オベロン様とティターニア様は、恐るべき誓いをされたのだから。
…人間のつがいが、互いへの誓いを貫き、男女が同じだけ誠実であると示すことができなければ、お二人は 二度と 愛し合うことはないと」
「そんな人間いるもんかねぇ?」
そこで がばっと起き上がって気炎を吐くオベロン。悲しくて苦しくて寝ていられないそうです、ティターニアの愛を取り戻さないことには。
ドロルの提案で、ユオンとレツィア姫の仲を取り持ち、試練を与えて、二人が愛を貫き通せるか試そうという計画が立てられたのでした。
すったもんだの物語の最後、処刑の危機の中でもユオンとレツィアが愛を貫くと、ババーンとオベロンが救いに現れ、その傍らにはティターニアが睦まじく寄り添っておりましたとさ。
なんたるお騒がせ夫婦! いやに お馬鹿になってるし。
でも、これはこれで可愛いですよ(笑)。
嫌われたら何日も眠れなくなっちゃうくらい、奥さんが好きなんですね、王様。
ところで。
『七つの大罪』のキャラはアーサー王伝説が元ネタなんじゃないのか、オベロンはアーサー王とは無関係じゃん、と思う方もいらっしゃるかもしれません。
実は、オベロンもアーサー王物語群のキャラクターに含まれています。16世紀以降、アーサー王ものの物語に、彼も登場するようになったからです。
『夏の夜の夢』と同時期のスペンサー『妖精の女王』では、オベロンの娘 グロリアーナに若きアーサー王が恋い焦がれています。
シャルル大帝の人質だった聖騎士オジェ・ル・ダノワの伝説群の中には、オジェが死後に若返って モルガン・ル・フェイ の恋人になり、彼女の支配する異界アヴァロンに招かれると、そこにはアーサー王や、モルガンの弟であるオベロンがいた、と語るものもあります。
また『ユオン~』の四つの続編詩のひとつ『エスクラルモンドの唄 Le Chanson d'Esclarmonde』によれば、アーサー王は死後に妖精の国の一端であるアヴァロンに住み、オベロンの退位後は当然 自分がオベロンの領土を得てアヴァロンと同盟させると考えていたので、ユオンが後継者になったことに大いに怒り、攻め込んで領土を奪おうとしました。しかしオベロンはアーサーを脅して戦争を回避させたのでした。
オベロンとアーサー王には、ビミョーな縁があるんですね。
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