【感想】『七つの大罪』第170話 その光は誰が為に
週刊少年マガジン 2016年20号[2016年4月13日発売] [雑誌]
第170話 その光は
- 「想定外の結果だな」「まさか精神世界の擬似的 それも抽象的な
太陽 で反応するとは」
服を弾けさせて巨大化していき、放散する熱気でチリチリと周囲を焦がし始めたエスカノールを、きょとんと小首を傾げて見上げるゴウセル。 - よろよろと半身を起こしたジェリコが、全身に汗を滲ませて呟いた。
「エスカ…ノール!」「まだ…夜だぞ な…なんで?」
離れているのに、暑くてたまらない。 - 一方、ゴウセルの足元で頭を床にめり込ませていたホークが、自力で身を起こして「プハッ」と息を吐いた。やはり全身汗まみれで。
「急に蒸してきやがった!! 一体――…」「ん?」
そこで、ゴウセルの前に立つ、筋骨隆々たる大男に気づいた。
「と… 闘級2万8800!!?」「つか 誰このオッサン!?」 - 大岩の上では、魔神たちが色めき立っている。
「なんスか なんスか あの変化は!?」面白そうに「ヒュー♫」と口笛を吹くグロキシニア。
「闘級こそ ガランを上回る程度ですが 実に面白い…!!」と静かな興奮を見せるドロール。 円舞台 のゴウセルは、バックステップで素早く間合いを取る。
「所詮 擬似的変化では本来の数値には程遠い 姿の維持も数秒間だろう」
「数秒 あれば十分ですよ」
が。その一瞬で、エスカノールの指先はゴウセルの眼鏡を掠め取っていた。- エスカノールがピッと脇に飛ばしたそれは、スチャッとホークに装着された。
「?」「プゴッ!? なんだなんだ〜〜〜!?」「め… 目が ぐるぐる回る〜!!」 - 一方、眼鏡を失った目を パチクリ☆ と瞬かせたゴウセルは、細めた目でギロリと睨む。悲しいかな、そこまで凝視しても、ぼんやりした物の形くらいしか判らないのだ。
◆見えなくて目つき悪くなっただけで、怒ったわけではありません(笑)。 - 「メガネを返せ…!!」
見えないので狙えない。両腕を前に差し伸ばすや、生体操作の光矢を広範囲に乱れ放った。
“傀儡乱れ撃ち ” - 「「!!」」
無差別の猛襲に顔色を変えたのはジェリコとホークだ。
「わああ〜〜!! 無茶苦茶だ!!」足元を ぐるぐると駆け回って器用に避けるホーク。「プッゴ〜〜〜〜!!」
「ゴウセル やめろ!!」ジェリコは広く走って、こちらも器用に逃れる。 - そんな中、肝心のエスカノールは100mは高空に跳んでいた。
夜空に浮かぶ巨大な満月。それを掴むかのごとく開いた右手を差し伸ばして唱える。ゴウセルの視界を奪ったのは、この召還の隙を作るため。
「わが意志に応えよ…!!」「神斧 リッタ!!」 - 彼方の荒野に人知れず突き立てられていた巨大な戦斧が、カタカタと震え始めた。すぐにガタタタ…と震えを大きくし、ドッと土煙をあげて跳ね飛んでいく。
- 光矢を撃ち続けていたゴウセルがピクッと震えた。
- 魔神たちも反応する。
「!!?」と空の一方を見やるグロキシニア。
ドロールも、勢いよくそちらへ顔を向けた。
「今度はなんだ? 凄まじい速度で何かが――…」 - 飛んできた神斧を、エスカノールはガシィッと空中で掴んだ。静かな表情で唱える。
「神器」「解放」
ズワッと爆裂する莫大な魔力、伴う太陽の光。真昼になったかのごとく世界が光輝に満ちる。 - 幾つもの
円舞台 上の面々が、一様に空を見上げた。 - 「な…なんだ!?」
驚いて振り仰ぐ暗殺騎士エスタロ&破戒僧アーバス。彼らと対戦中のヘンドリクセンは、背後を守る剣を下ろさない。 - 「夜に…太陽!?」
唖然と口を開くアーサー。彼の頭上の謎生物・キャスも空を見上げている。共闘者 のサムライ・ななしは静かな顔だ。 - そしてバンは、焦りと怒りの顔で天空のエスカノールを睨みつけていた。
「あいつ…まさか!!」
「……」
その隣でメリオダスは相変わらず沈黙していたが、表情が僅かに険しくなっている。 然 しもの魔神たちすら、突如生まれた太陽を見上げて驚きを隠せずにいた。
「これは… エスタロッサ級の魔力っスよ!?」高く浮かび上がって目を丸くするグロキシニア。
「あり得ない…!!」とドロール。- 右薬指の
円舞台 上では。
ゴウセルが無差別攻撃をやめたので、ジェリコも足を止めて、小さな太陽を見上げていた。
「オッサン 何をする気だよ!?」
「・・・」
じっと見上げるゴウセルは相変わらず目つきが悪い。ジェリコの疑問に対してか単に独り言か、資料を読み上げるかのごとく解説をぶち始めた。
「エスカノールは日の出と共に力が増し 正午において力が頂点 に達する特異体質者」「強力無比な力と体から発する熱量は 周りのもの全てを焼き尽くしてしまう」「奴の神器・神斧 リッタの特性は「充填 &放射 」 奴の発する莫大な熱量を全吸収し 蓄え 任意で放つことを可能にする」 - 解説どおり、天空に留まるエスカノールの放つ熱と光輝は、その掲げ持つ神斧の中心に さざ波のように集中して膨れ上がり続けている。
ーーアレが、この円舞台 に撃ち落されたとしたら。
◆神斧リッタの特性は「『以前』蓄えておいた力を、別の戦いで放射できる」ものなのでしょうか?
そうじゃなくて、『今』充填・放射してますよね、これ。
エスカノールは神器なしだと周囲に熱を放散しまくって無差別に焼いちゃいますが、神器を使うとその熱に指向性を持たせることができる、ってコトでしょうか。
解放・神斧リッタは、予め力を貯めておく貯蔵庫的アイテムではなく、その場で充填・発射するソーラー砲的な武器だと思います。 - 「ちっ!」
舌打ちし、バンが己の円舞台 から飛び出そうとした。
が、その腹にガッとメリオダスの裏拳が当たって止められる。
「団ちょ どけ!!」
バンはメリオダスの腕を掴んだが、小柄な彼を少しも動かすことができなかった。
◆メリオダスの鋼の腕に阻まれたバンが、駅の自動改札で改札閉まっちゃった人のようでした。
- バンが焦り見やった先には、天空のエスカノールとその掲げる神斧の光輝に照らされた、ゴウセル、ジェリコ、ホークの姿がある。
――充填 された熱が、あそこに撃ち落されたとしたら。
「このままじゃ ゴウセルもろとも 師匠とジェリコが死んじまうぞ!!」
バンは叫んだ。
「見殺しにする気か!!?」 - だが。メリオダスは、やはり動きはしないのだ。
「エスカノールを信じろ… バン!!」
険しい顔でエスカノールらの円舞台 を見たまま、毅然と命じる。 - 「…っ」
言葉を呑んでバンは踏み留まった。 - 大岩の上では、グロキシニアが両手を挙げて大はしゃぎしている。
「これぞ まさかの一発逆転劇っスね〜〜〜〜!!」「祭りはこうでなくっちゃ!!」 - 全ての視線を集めて、エスカノールは天空で輝き続けていた。
「心を弄んだ大罪を――」「その身を以って贖 いなさい…!!!」
変身を始めた際と ほぼ同じ言葉を、もう一度繰り返す。
◆大事なことなので、二度言いました。 - 「受けて立つ!」
目つきの悪いゴウセルは、合わせた両手を ス… と前に伸ばした。それぞれの手から一つずつ生じた光の大弓を十字に交差させ、中心に大きな光弾が膨れていく。
双弓ハーリット 自動追尾モード
“大停電の矢 ”
これなら、追尾するので見えずとも構わない。
天空めがけ、撃ち放った! - 同時に振り下ろされる神斧!
莫大な熱光が塊となって閃き落ちる。 - 爆光が全てを呑み込んだ。
目を閉じてこらえるエリザベスとエレイン。唖然とするマトローナ、眼鏡ホーク。ディアンヌは咄嗟にキングを抱いて守り、ハウザーは吟遊詩人ソラシドを背に庇い、アーサーと ななし は圧倒され(キャスは平然)、ギルサンダーと魔術師ギルフロストはそれぞれ独りで耐え。バンは目を眇めながらも結末を見極めようとしている。
◆これまでなら、こういう場面では決まって、キングが神器を広げてディアンヌを守っていました。ところが今回はディアンヌに庇われています。神器を広げられないくらいダメージが酷い? - そして、光の中でも身を庇う様子なく目を大きく開いたままの『魔神たち』。
『それ』に気付いたグロキシニアとドロールはハッとし、メリオダスは眉一つ動かさず『全て』を見届けた。 - ドッと衝撃が走り、爆風が吹き抜ける。
ヘンドリクセンは幼いグリアモールを抱きしめて乱れ飛ぶ瓦礫から守り、吹き飛ばされそうになったエリザベスを、空中に静止したエレインが両手で掴んで引き止めた。
◆エレイン、意外と力持ち…?
キングもディアンヌを掴んで持ち上げてたことがありましたし、妖精兄妹は火事場の馬鹿(魔)力に優れてるのかしらん。 - そんな中、聖騎士シルバーは、己の
共闘者 に割り振られた青色の魔神コアツォを剣で貫いている。 - 地響きのような残響が消えていくと同時に、視界を覆い尽くしていた土煙も引いていった。
天空に うっすらと見え始めた影に気付いて、ハッとするバン。
エスカノールだ。神斧を振り下ろした姿勢のまま空中に静止していたが、開いたままの目はうつろで動かない。
見よ、その巨体の背から胸を、大きな光の矢がざっくりと貫いているではないか。 - ゴウセルの構えていた双弓が消えると同時に、「
大停電 」によって気を失った巨体は、固く握られたままの神器の重みで ぐらっと頭を下に向け、円舞台 にドサッと墜落した。 - 「俺の勝ちだ」
目つき悪く宣言するゴウセル。その背後ではジェリコが ゴホッと土煙にむせ、メガネを掛けたホークが「俺… 生きてる…?」とキョロキョロ周囲を見回していた。 - ひ弱な姿に戻って伏せているエスカノール含め、誰も死んでいない。
ゴウセルは、あの攻撃から全員を守り切ったのだ。
◆実は、その側面もあると思いました。 - 「残飯長 メガネを返せ…」
背後のホークに命じれば、その目つきの悪さ(ギロッと睨んでいるようにしか見えない)に怯えたホークは「は… はい!!」と二つ返事し、冷や汗をかきながら とんとことん とゴウセルに歩み寄った。耳を手のように使って器用にメガネを外し、渡す。 - 「エスカノール…」
敗れた彼を、ジェリコは痛ましそうに見つめる。そこで、ガラガラッと瓦礫が崩れる大きな音に振り向き、『それ』に気付くやゴウセルに怒鳴った。 - 「…何が勝ちだ ふざけるな!」
「事実を言ったまで 奴は倒れ俺は立っている」
眼鏡を取り戻して目つきの悪さから解放されたゴウセルは、淡々と述べる。
ジェリコは引かなかった。無意識に己の胸を押さえて訴える。
「ゴウセル……!」「てめぇにゃエスカノールの心が わかんねーのかよ!?」
「エスカノールの心……?」小首をかしげて、伏せているエスカノールを彼は見やった。
「俺に腹を立てていたのは間違いないな……」
何しろ、「心を弄んだ大罪を贖 え」と言ったのだから。「悪夢語り 」が相当腹立たしかったに違いない。 - ジェリコは、
憤懣 やるかたないといった表情で一方を指さす。
「あれを見ても同じことが言えんのか?」「エスカノールが お前に対して示した心だ!!!」 - ゴウセルは示された方に視線を向けた。
円舞台 の端が僅かに抉れ、未だもうもうと土煙や蒸気を上げている。エスカノールの熱攻撃が掠めたようだが。
そちらへ歩き、抉れた端から下を覗き込む。…攻撃が直撃した、その場所を。 - そしてゴウセルは知った。
“心を弄んだ大罪を―― その身を以て贖 いなさい…!!!”
エスカノールの言葉の、真の意味を。 円舞台 の下、大岩の上。
熱に焼かれ瓦礫に埋もれた二人の魔神。『願いを叶える』というエサで人々の心を弄んだドロールとグロキシニアが、ジュウウゥ…と煙をあげて血の海に沈んでいた。- 次回「時は来たれり」
超展開キタマタ。
マガジン巻末の予告に「真の大喧嘩祭りが、全力の死闘が、幕を開ける!!」とありましたから、これで〈十戒〉二人が戦闘不能ってことはないはず。
途中でトーナメント崩壊して魔神との直接戦になるだろうなと予想はしてましたが、こんな形でしたか……。
大喧嘩祭り編が始まったとき、「どうしてメリオダスは何もしないの?」「メリオダスとエスカノールの二人で〈十戒〉ボコれば終わりじゃね?」という読者の声は よく聞こえたものです。その通りの展開になってしまうのでしょうか。
個人的には、既に完成されてる人たちが重ねて活躍を続けるよりは、発展途上で敵との因縁のあるキングとディアンヌに壁を破ってほしかったんだけどなあ。二人が代理人形と対戦した時点で きな臭さ ぷんぷんではあったんだけど。結構がっかりです。
このまま「もうメリオダスとエスカノールの二人だけいればいいんじゃね?」という、以前からよく聞こえた揶揄の声通りの展開になっちゃうんでしょうか?
それとも、メリオダスも敵わなくて、せめて全員で協力戦とかになってくれるでしょうか?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ジェリコは、エスカノールの心がわかんねーのか、あれがエスカノールが示した心だと、ノックアウトされた〈十戒〉を見せました。
でもこれ、ゴウセル的にはどうなんでしょう?
だって彼は、仲間と争うことになってでも『心』が欲しいという覚悟だったんでしょう。それを台無しにされた、とも言える。
他の、叶えたい願いがあって大会に参加していたマトローナやエスタロもですが、素直に感謝する前に怒り出す可能性もありそうです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ゴウセルの「
自動追尾できるとは。なんとも便利な技。
ゴウセルの大きな弱点は視力の悪さだと思いますが、ちゃんと対応できてるんですね。
これは『エジンバラの吸血鬼』で、昼エスカノールを気絶させるために使った技でもあります。
騎士団時代は いつもこの技で昼エスカを鎮めていたのではないでしょうか。
『エジンバラ~』時はマーリンが、エスカノールの気を引いたうえゴウセルに「
や。今回はエスカノールが全力を〈十戒〉に向けて、あえて自分の防御はお留守にしたからでもあるんでしょうが。
この技は、第112話で使った「
そちらでは、こう説明されていました。
「丁度10分間… 俺を中心とした半径3マイル以内に存在する――――」「数値にして「気力400」未満の全生物の思考を停止させた」
「
昼バージョン時でも、エスカノールの気力は400以下
ということになります。
意外と精神攻撃系に弱いのかも?
あと、気絶は10分間のみなんですね。
次回、〈十戒〉が暴れたとしても、メリオダスが10分しのげて、かつ、
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
地震が怖かったです。余震は今もドキドキです。
井戸水が真っ茶色で、髪洗うとキシキシ気分。
更に怖かったのは、大揺れで停電したとき、パソコンのリカバリ作業中だったことでした(;'∀')。
フル充電のノーパソだったので事なきを得ましたが、デスクトップだったらどんな惨劇が起きていたことやら。
避難している方々に心からお見舞い申し上げます。