【感想】『七つの大罪』第163話 王女と聖女
週刊少年マガジン 2016年13号[2016年2月24日発売] [雑誌]
第163話 王女と聖女
- 天上の
円舞台 に戸惑い、不安そうに見廻すエレインとエリザベス。 - グロキシニアの声が響いた。
「大喧嘩 祭りのルールその1」「あらゆる武器・魔力の使用および汚い手を使うことを許可する」「ルールその2 勝利条件は以下の通り」「相手組 の殺害 または無力化 または場外落下」 - 後ずさりかけたエリザベスの足元が僅かに崩れ、振り向き見た景色に「キャッ…」と悲鳴を上げる。
砕けた小石がガラガラッと崖を落ちていった。そこは円舞台 の際 だったのだ。落下を阻止してくれる柵もなく、地上まで100m以上あるだろうか。落ちれば命はないだろう。 - 「グロキシニア!!! エリザベスは関係ねえ!! 今すぐ戻せ!!!」
先程までの余裕を捨ててメリオダスが吠える。バンも恫喝した。
「てめぇら エレインに手を出しやがったら ミンチにすんぞ!!!!」 - 「それを決めるのは あたしらっスよ? メリオダス~~~」「…と ツンツン頭くん」「残念ながら 迷宮に足を踏み入れた時点で参加者と見なしたっス」
微塵も動じた様子なく、ひっひっと グロキシニアはうすら笑う。
◆知らずに巻き込まれたバンは仕方ないけど、メリオダスには、こうなることなんて解りきってたでしょうに。何を今さら「エリザベスは関係ねえ」なんだ? 本気で「面白い」喧嘩試合が出来て、エリザベスらは安全に観戦できるとでも思ってたのか?
こういうのを見ると、メリオダスは深く考えず行動する性格なんだなと、改めて認識させられます。少年漫画の主人公なので その方が物語を動かし易いでしょうが、一団を率いる最年長リーダーとしては、褒められたことじゃないですよね。
何度も書くけど、メリオダスと対等の立場で諫めてやれるキャラがいればなあ。
現状、メリオダスって基本 人の意見 聞かない。人当たりいいようでいて、かなりのワンマンです。そうやって危地にみんなを引っ張っていくとゆー。 - 「ちっ」舌打ちするやバンはダッシュした。愛しい女の側、すぐ隣の眼下に見える彼女らの
円舞台 を目指して。 - ところが。
自分らの円舞台 を出ようとした瞬間、その際 の地面からブワッと枝々が生え出し、円舞台 を檻のように囲んだ。
「!!!」
バンは咄嗟にバック転して戻り、接触を回避する。 - グロキシニアの声が響いた。
「ルールその3 試合放棄は厳禁っスよ!!!」
生え出た枝々は蛇のように蠢き、それぞれに意思でもあるのか、鉤爪のように尖った先端には顔らしき造作が窺える。
<死荊 >や、エスカノールを一撃で殺しかけた触腕の力を鑑みれば、これも甘いものではないのだろう。容易く突破はできそうにない。
◆枝の先に付いた、超リーゼントな この横顔。花王株式会社の三日月マーク(古い方)を思い出す…。
とかいうのは置いといて。ガランの肘や膝に付いてた顔とも、ちょっと似てるかも(笑)。鷲鼻で歯を食いしばってるところが。
この、顔の付いてる枝を見たら、第155話でマトローナとディアンヌをはぐれさせた幻覚胞子を出してたキノコは、やっぱりグロキシニアが生やしたものだったのかなと思えました。(あのキノコも顔が付いてたから。) - その時、眼下の
円舞台 からエリザベスの声が響いた。
「メリオダス様!! 私のことなら心配なさらずに!!」「今は御自分のことに集中してください!!」
男たちのやり取りは、彼女らにも よく聞こえていたらしい。
(私 決めたんです……!!)(ずっと あなたの隣にいられるように強くなるんだって!!)
少女は、強い意志を瞳に宿す。
◆アルビオン戦前後の布石が、およそ一年経ってようやく回収。もー忘れかけてたよ!(苦笑)
第二部冒頭、メリオダスがエリザベスに冷たくして「お前がこれ以上危険に身を晒す必要はねぇ」と旅へ連れて行くまいとしてたこと、皆さん覚えていますか?
まるで無かったみたいになってました。
なにせ、今は逆に、なんで魔神の罠と解ってるとこへ平気でエリザベスを連れていくんだよ状態ですもん。
第二部冒頭のエリザベスは、メリオダスに旅への同行を断られて「私は やっぱり足手まといの… お荷物でしかないんですか?」と口走っちゃったり、一人でアルビオンを倒したメリオダスの圧倒的強さを見て、自分と彼の力の差を痛感して、やっぱり私は足手まといだと 不安になってたり。
ところが。
それから後は、その悩みは なかったみたいになって、メリオダスは普通にエリザベスを旅に連れて行くし、エリザベスは何の屈託もなく、これまでにない熱さでメリオダスとイチャイチャし続けるし。「ん??」と思ってました。
それが、ここで急に思い出したように「メリオダスの足手まといにならないよう、旅に付いていけるよう強くなる」宣言きましたよ。
一応、投げっぱなしにしないで話を片付けに来た…のか。
……じゃあ、第二部冒頭ではエリザベスを旅に連れていくまいとしてたメリオダスが、ガラン戦後から急に そのそぶりを見せなくなった理由も、そのうち明かされるんですかね?
メリオダスは何考えて、「<十戒>ヤバいからエリザベスは連れて行かない」から「<十戒>の罠と解ってるけどエリザベスも連れて行く」に宗旨替えしたんでしょうか?
ガラン戦に大敗して何も守れなかった恐怖味わって、リズの死ぬ場面の夢まで見ちゃって、内心ブルブルのナーバスになって、エリザベスから離れたくない症候群にでもなってたか? - 「ヒュ~~ 言うねぇ♪」呆気に取られるメリオダスをニヤニヤ見下ろして、バンがからかった。
- 「バン!! 私も平気よ!!」「エリザベスの言う通り 自分たちの戦いに 集中して!!」
エリザベスの隣から、エレインも声を張り上げる。 - 「言いますな~~~~♪」ニヤニヤ笑うメリオダスに見上げられて、バンは ばつの悪そうな顔をした。
◆ここのバンの照れ顔、なんか珍しいと思いました。可愛いですね。
バンって、恋人のことで人をからかうことはあっても、自分が からかわれたのって、これが初めてでしたっけ。
- エリザベスは、己の共闘者を初めて注視した。
「あなた… どうして私の名前を……?」
宙に浮いた小柄で可愛らしい少女。バンの知り合いらしいが、自分とは初対面のはずなのに。 - 少女は笑うと、くるんと宙を縦に回ってみせた。
「私がずっとバンをのぞいていると その隣にはメリオダスと」「エリザベス …あなたが映っていたわ」「死者の都へ 彼らと訪ねて来たこともあったわね…」
髪は重力に従って動いているが、魔力でだろう、スカートは めくれずに固定されている。 - 「!! そ… それじゃあなたが――」
「エレインよ よろしくね」
一回転を終えて、エレインはにっこり笑って自己紹介を済ませた。
◆エリザベスが、バンの恋人・エレインの存在を知っていた!?
いつ、誰にその話を聞いてたの?
王都決戦中にバンがメリオダスを殺そうとした時、エレインを生き返らせるためだと聞いたメリオダスは言いました。
「エレイン…… お前が寝言で言ってる名前の… ……そっか」
つまり、『エレイン』がバンの死んだ恋人の名らしいと、彼の寝言から推測はしていたものの、ちゃんと話を聞いたことはなかったってことです。
大親友のメリオダスにさえ話していなかったことを、バンが、(「一緒にいて嫌な感じのする」人間の一人だった)エリザベスに話していたとは思えません。
また、メリオダスが親友の重い過去を、エリザベスら第三者に口軽く吹聴したとも思えません。
繰り返すけど、なんでエリザベスが、エレインのこと(バンのプライベートな過去)を承知してたのでしょうか。
……可能性があるとしたら、ホークかなあ。彼はバンがメリオダスを殺そうとした場面に居合わせてて、バンが死んだ恋人エレインを生き返らせようとしていると知ってしまいました。
考えてみたら、バンのメリオダス殺害未遂~それを悔いての<大罪>離脱の顛末をキングに話したのもホークです。(それでキングは、バンの旅に付いていった。)
以上から、王都決戦後からの八日間に、ホークがエリザベスに話したと見るのが、一番ありえそうに思います。
ただホークも、エレインがキングの妹なのは知らないはず。だからエリザベスやメリオダスも、それは知らない……ですよね? - その時だ。
それまで黙って佇んでいた対戦者…マラキア暗殺騎士団のトーラとジグモが、こちらへ向かい駆け出したのは。
「兄者… やはり女子供を手にかけるのは 気がのるもんではないにゃあ」と、ジグモ。
「たわけ」「暗殺者にとっては飯を食うことと人を殺めることは同義――――」
並んで走るトーラは腰に挿していた棒状の武器を取り、左右に引き抜いた。錐のような刃の二本の短刀となったそれを両手に構え、エリザベスの両肩めがけて無造作に突き立てようとする。
「よくある日常ぞ」 - 「そうね よくある日常だわ」
落ちついた少女の声が返した。
エリザベスではない。彼女は、瞬きの間に起きたこの展開に、ろくに反応も出来ていない。当たり前だ、戦う力のない少女ならば。
では、この声は。
『”そよ風の逆鱗”』
直後の烈風が、エリザベスの眼前からトーラを押しのけた。
「あなたたちのような人間を相手にするのは」
「くぉ… ぁあああぁがっ!!!」
それでも数瞬は耐えたものの、吹き飛ばされ、何度も転がって地面が抉れるほど激しく打ちつけられる。
ジグモは転がらずに済んだが、それでも10数mは風に押されて地を滑った。 - 「「何…!?」」暗殺者たちが、いや、エリザベスすらも愕然とした目で見やる。己の傍らに浮かぶ、幼い外見の少女を。
- 「妖精王の森の聖女にとってはね」
先程までの愛らしい表情から一変した、大人びて冷徹な瞳。
エレインが、風を放ったばかりの左手を差し伸ばして涼やかに告げた。 - 「よ… 妖精王の…森の聖女だと? バカな… ただの おとぎ話では…」
全身を打って、かなりのダメージを受けたらしい。なかなか起き上がれないトーラに気付いて、ジグモが慌てて駆け寄っていく。「あ…兄者!!」
◆ジバゴも「おとぎ話」のつもりでバンに妖精王の森の聖女について話したと言っていましたが、森が大焼失する以前から、既に、妖精族はUMA扱いの幻の存在になってたんですね。
キングがディアンヌと暮らしていた頃(500~200年前)は まだ、珍しがられはしたものの、妖精族として現実的に認識されていました。してみるに、ここ200年くらい(ヘルブラムが処刑され、キングが牢獄に封印されてから)の間に、急激に人間たちから忘れられていったんでしょう。
妖精王の森を守り続けていたエレインも、ここ200年くらいは、殆ど人間と出遭わなかったのかもしれません。しょっちゅう人間が入り込んでいたなら「おとぎ話」扱いには ならないはずですから。
(500年も姿を消していて、人間にすれば神話か伝説のように思われていた妖精王が、人間の前に現れて牢に入ったことで、忘れられかけていた妖精族との和平の盟約が息を吹き返し、人間が妖精王の森へ向かうことに制限がかけられ、結果として民衆には忘れられて、おとぎ話扱いになってた、とか?) - 「エレイン あなたすごい!!」
エリザベスが褒め称えた。
(すごい! 本当にすごい!!)
エレインは目を瞬かせる。同時に聞こえる『心の声』が、口にした言葉と殆ど同じだったからだ。知らず、クスッと笑いがこぼれた。
「フフ… エリザベス あなたは想像通り 裏表のない本当に素直で素敵な子!!」
上から見下ろすのをやめ、フワ…と地面に降りる。
「そ… そうかしら?」
心を読まれているなど想像もしていないだろう。頬を赤くして戸惑う彼女に「ええ!」と太鼓判を押しつつ 、愉快そうに笑い続ける。
◆ディアンヌに対しては、結構長いこと「ディアンヌ様」と様付けで呼んでいたエリザベスですが、エレインに対しては初対面時から馴れ馴れしく呼び捨てです。
何故?
エレインの外見が幼かったからでしょうか。ディアンヌ好きとしては ちょっと寂しい。 - 「私も あの…バン様の恋人がどんな
女性 か興味があったから…」少し言葉を濁らせたが、エリザベスは精一杯の親しみと好意を返そうとする。「思った通り とっても素敵な女性 !!」
が、心の読めるエレインには、エリザベスが何を言いかけて言葉を濁らせたかなんてお見通しだ。
「「あの何を考えてるかわからないバン様」?」
笑って指摘すると、エリザベスは真っ赤になってブブンと手を振った。
「ごっ ごめんなさい!!」
「いいの」エレインは笑って、年上ぶったウインクをしてみせる。
「お互い様でしょう?」「「何を考えてるか わからないメリオダス様」も」 - ブッとエリザベスが吹き出した。
「ウフフッ 本当ね!」
◆エリザベス、ぽっと出てきたエレインが人間関係や人格の把握をし過ぎてることに、疑問を抱かないのかな? 心を読まれてることに気づいたら、どんな反応するんだろう。
まあ、彼女やバンは平気なんだろうなと思いますが、エスカノールやディアンヌは気にしそう?
つーか、今回のエレインはずるいなあ(^_^;)。攻略本を読んだ有利状態でゲームしてる感じ。 - 真顔になると、エレインは本題に入る。
「あなたたちは なぜ バイゼルへ? やはり あの迷宮に巻き込まれたの?」
エリザベスも表情を引き締めた。
「いいえ… 私たちは大きな目的のため――…」「封印から醒めた<十戒>の侵攻を食い止めるためやってきたの…!!」 - (<十戒>…)
エレインは薄く冷や汗を浮かべる。
(…どうして初代妖精王が…) - 「それから――」未だエリザベスの言葉が続いていたのに気付いて、ハッと思考を浮上させた。
「「楽しそうだから」…」「って メリオダス様が」
エレインは、器用に空中でずっこけた。 - 「な…」「なんか バンも同じこと言いそう…」
呆れ笑いを浮かべて言えば、ニコッとエリザベスは微笑んだ。
「二人は親友だもの…!」 - その時だ。
二人の足元にコロコロと三つの玉が転がってきた。
「?」
よくよく見れば、玉には顔のような模様がある。きょとんとして見つめる少女たちに男が語りかけた。
「他愛のない女子話 は その辺にしてもらおうぞ…」
すっかり忘れていた対戦者・トーラの声だ。そして転がってきた玉は、もう一人の対戦者・ジグモの頭巾の飾り玉ではないか。
◆エスタロ、トーラ、ジグモの頭巾の飾り玉、それぞれ描かれてる顔の表情が違います。エスタロは無表情、トーラは憂い顔、ジグモは笑顔ですね。彼らの仮面の表情とも共通しています。「笑顔」のジグモは一番優しいみたいですし、性格を表してるのかも。
どれも効果は同じなんでしょうか? - 直後、玉が爆発して白い煙を吹いた。
「ケホケホ」「これは煙幕…」
濃密な煙に巻かれ、エレインは激しく咳き込む。
「エレイ… ゴホッ」「逃げ…」
同じく咳き込むエリザベスには、すぐ近くにいたはずのエレインの姿も見えない。 - 煙の向こうに、薄く人影が滲んだ。
「許すにゃ 小娘…」
ジグモの声である。束ねて腰に提げていた鞭をヒュルッと解く。
「我ら マラキアの民の宿願のために死んでもらうにゃ」 - 「!」
マラキア。その名を聞いたエリザベスがハッと目を見開いた、その瞬間。
彼女の右肩に熱い衝撃と痺れが走った。前にいるかと見えた人影は背後に回っており、その放った鞭を食らったのだ。
『”毒蛇鞭 ”』
それは、名前通り蛇のごとき鞭だった。鞭の先に付いた毒蛇の頭が自ら口を開き、少女の肌に深々と牙を突き立てる。
牙を喰い込ませたままジグモが鞭を跳ね上げると、エリザベスは勢いよく背後に引き倒された。 - 「兄者… 一人は片付けたにゃあ」
鞭を引き戻しつつ彼は言った。この鞭の牙には猛毒がある。もはや虫の息、少女なら即死でもおかしくないはずだ。
「了解… 残るは聖女とやらだな」
応えて、煙幕の中をトーラは走った。聖女の居場所を探るは容易い。
「エリザベス… 返事をしてエリザベス!!!」
愚かにも、彼女は大声をあげて自らの居場所を報せているのだ。
(仕留めた)
音もなく背後に回り、声を上げ続ける聖女の首筋に錐刀を打ちこむ! - …が。
「!!!」
彼は、ビタッと途中で動作を止める。いたはずの聖女の姿がない。
「何!? 完全に気配を断ち 背後をとった …なぜだ!?」 - 少女の声が聞こえた。
「私を相手にするなら 気配だけでなく 心の声も消すことね」
ピクッと震え、暗殺騎士たちは声の源を振り仰ぐ。
「上!!?」
周囲を覆う煙も、上空は僅かに開けていた。そこに浮かび、両腕を交差させて顔を伏せ、じっと魔力を溜めている聖女の姿。
『”金色 の逆鱗”!!!』
両腕を開くや、エレインは一気に魔力風を撃ち放った。 - ドンッ
爆発的な風、その膨大な爆圧が、トーラを中心にした数m範囲を押し潰す。
「かはっ…」 円舞台 を揺るがす震動と轟音。
やがて白煙が風に吹き散らされていくと、踏み潰されたカエルのように仰向けに地に貼り付いたトーラと、辛うじて半身を起こしたジグモの姿が露になった。- 「マラキアの宿願……を」「果た……し…」
内臓が破裂したのだろう。仮面の下から吐いた血を床に飛び散らせたトーラは、もはや虫の息だ。
「あ… 兄者!?」
立たない足で這いずりながら、ジグモが必死に近寄っていく。 - 彼らには構わず、エレインは空からエリザベスを探し続けていた。
「エリザベス!?」「エリザベスーーーーーー!!」
白煙は完全には晴れておらず、少女の姿は見当たらない。 - その時、煙の中に人影が滲み、カツンと靴で床を踏む音がした。
あっと目を見開くエレイン。
煙の中からエリザベスが歩み出てきたのだ。服の右肩が破れて素肌が露出していたが、象牙のように白いそこには傷一つない。
「無事でよかった!」
呼びかけにも応えず、しっかりした足取りで真っ直ぐ歩いて行く。…倒れているトーラと、彼を抱きかかえて泣くジグモの元へと。
◆右肩のとこだけ服が破れて素肌が露出したエリザベスちゃん、右脇のハミ肉が見えて、なんかエロいです(笑)。私がメリオダスなら、あのハミ肉をぷにぷにしたい。(これ変態的発言?) - 「兄者… 死ぬにゃ… 俺を置いて… 死んじゃ嫌にゃあ」「兄者~~~~~~~!!」
動かないトーラをガクガクと揺さぶっていたジグモも、ようやくエリザベスの接近に気付いて ぎょっとした。
「は… なぜ生きてる!?」「毒が全身を巡って とっくに死んでるはず…」 - 「どいて!」
構わずに、エリザベスはジグモからトーラを奪い取る。気圧されて立ち上がり、場を譲ってしまうジグモ。
右手でトーラを抱きかかえ、エリザベスは毅然とした表情で左手をかざした。サアッ…と魔力の光が広がっていく。 - (…!!)(この魔力の波動は…!?)
今まで感じたことのない力に驚くエレイン。 - ぐったりしていたトーラが「ごほっ」と咳き込み、光の中で息を吹き返した。「あたた……かい…」と呟く。
◆エスタロは肌が黒い(トーンが貼ってある)けど、この場面で見えた仮面の下のトーラの肌は白色(トーン無し)でした。
肌が黒いのはマラキアの民の人種的特徴ってわけじゃなかったのね。 - 「ああ! 兄者…」喜びと戸惑いに立ち尽くすジグモに、エリザベスは熟練の
治癒士 のごとく指示した。
「しばらく安静にしてあげて…?」
「あ… ああ」 - スッと立ち上がったエリザベスを、エレインもまた戸惑って見つめた。威厳さえ感じられる態度で、先程までとは様子がまるで違う。
- 誰の顔も見ないまま、彼女は語り始めた。
「マラキア王国は リオネスと同盟を結んでいた友好国… でも一年前 リオネス二大聖騎士長が一方的に和平を破り マラキアを屈服させようとしたの」「その際に生じた戦いで マラキアの王族や民は散りぢりになり 事実上 マラキアは滅びたわ…」
物憂げに目を伏せた彼女の表情は、一介の少女のものではない。 - 「お… お前は?」ジグモが訊ねた。
静かな瞳で見返して、少女は名乗る。
「リオネス国王バルトラの娘」「エリザベス=リオネス」
「……っ!!」息を飲んで身を震わせるジグモ。 - 妖精は、人間の世界の事情になど興味はない。だから何を思って彼女がそうしたのか、エレインにはよく解らなかった。
「よかったの?」「私たちを殺そうとした人間よ?」不思議そうに尋ねる。 - エリザベスは振り向いた。
「うん… でも放っとけないわ」
鏡のように照らす満月を背に優しく微笑んだその表情は、元の一介の少女のものに戻っている。 - 「エリザベス……………」
(本当に あなたって…)
優しくて素敵な人間の少女に魅了され、エレインの顔にも鏡に映したごとく微笑みが浮かんでいた。 - 次回「譲らぬ者共」
後引き文に「聖女の強さと王女の優しさで掴み取った勝利!」「エリザベス&エレインコンビ、完全勝利!!」とありますが、この戦い、これで終わりなんでしょうか?
そりゃあ、物語の流れ上、これからどう転ぼうとも、最後にはトーラとジグモの負けは確定でしょう。
けど私が二人の立場なら、ここで勝ちを譲ったりしないです。まだギリギリまで戦うと思う。もっと汚い手を使ってでも。
今回、エリザベスの優しさが大きくクローズアップされており、エレインは「エリザベスって素敵ね」と賞賛する役でした。読んでて気恥ずかしくなるほどに。
ここで『心を読む』能力をこういう風に使いますか…。
もしジェリコより先にエリザベスと対面していたら、エレインはなんの葛藤もなく「人間にも素敵な人がいるのね」と笑顔でウインクして心を開いたのでしょうか?
エレインには、心を開くまで時間のかかる、少し気難しい女の子というイメージがありました。バンにもジェリコにもそうだったでしょう。けれど、エリザベスへは最初から好感度MAX。(エリザベスの心が特別綺麗だからってことなんでしょうが…)
エリザベスには、育ちと礼儀正しさゆえの壁があって、親友のディアンヌとすら名前を呼び捨て合う関係になるまで時間がかかったものでした。けれど、エレインのことは最初から呼び捨てで好感度MAX。
……なんか、哀しいというか寂しいというか。
仲良きことは美しきかなですけど、インスタントだなーと、どこかで思ってしまう。彼女らがディアンヌやジェリコと友達になるエピソードが、それぞれ素敵だっただけに。
互いを褒め称え合うだけの関係が、どこか空々しい。
エリザベスが優しくて強くて素敵な女の子なのは事実で、異論はありません。なのに、なんとも言えないモヤモヤ感が、今回のお話にはありました。
それは、マラキアの民の立場から見れば、「リオネス王女」に非がないとは言えない、と感じたからです。
勿論、エリザベスはマラキア王国滅亡にはノータッチでしょう。
彼女が<七つの大罪>を捜すべく王国出奔したのは、作中でおよそ10ヶ月前と推測されます。(現在3月28日。出奔は前年の彼女の誕生日6月12日の少し前と思われるので。)一年前だというマラキア王国滅亡は、出奔の2、3ヶ月前のことと考えられます。
となれば、その頃の王国は二大聖騎士長に支配され、既に王族は実権を失っていたでしょう。それに、当時の彼女はまだ15歳。社交界デビューすら怪しい子供で、政治に関われていたとは思われません。
それでも彼女がマラキア王国滅亡の顛末を知っていたのは、政治に関心を持っていたからに他ならない。偉いです。当時、心を痛めていたんだろうなとも推測できます。
それでも。
彼女自身はノータッチで、心を痛めていて、そうした諸々を是正すべく<大罪>を捜して たった一人で出奔して成果を出したのであっても。
マラキアを理不尽に滅ぼしたのがリオネスであり、彼女がその王族だという事実は変わりません。
である以上、一方的に同盟国を滅ぼした責は彼女にも負わされる。また、マラキアの民には彼女を憎む理由がある。
そんなわけで、彼女がトーラを許して癒したのは、優しさだけでなく罪悪感を含む贖罪行為だったとみなせます。
だから わざわざマラキアとリオネスの因縁を説明したうえで、リオネスの王女だと名乗った、と。
ですから、「殺そうとしてきた悪漢にさえ優しくしてあげるなんて。エリザベス、あなたはなんて素敵な人なの」とかいう、彼女を上に置いて褒め讃えるような話じゃないと思うのですよ。
エレインの賞賛が的外れに思えてモヤモヤでした。(彼女は妖精で、人間社会のしがらみとは遊離した存在ですから、仕方ないんだけど。)
少し前、「マトローナを殺しかけたリオネス王国の王女だから」という理由でディアンヌが冷たい態度をとったのに、エリザベスは優しくし続けて、
この場合は、ディアンヌは一時的に記憶を失っているだけで元々エリザベスとは身分や肩書を超越した対等な友人同士であり、既にディアンヌの中でリオネス王国への恨みは乗り越えられた問題だったので、問題なく感動できました。
しかし今回は違います。
後引き文は「王女の優しさで掴み取った勝利」と謳っているけれど、マラキア暗殺団が、エリザベスの優しさに屈服して頭を垂れ、国を滅ぼされた恨みを水に流すということでしょうか。
私がマラキアの民なら、そんなのあり得ない。
この王女個人は善人なんだなと思うでしょうが、じゃあ滅ぼされた王国はどうなるんだ、住む場所も何もかも失った民はどうなるんだ、と思います。
二大聖騎士長のやったことで王族は関係ありません? 知るか。二大聖騎士長は魔神のせいでおかしくなってたんです? もっと知るか。って。
つーか。
エリザベスちゃん、あえて王女と名乗って「放っとけないわ」と言った以上は、王族としてマラキアの民に報いるつもりなのかい? マラキアの難民をリオネスに受け入れるとか、リオネス王国としてマラキア王国再建に力を貸すとか。(現状、難しいだろーけど。リオネスも王都崩壊するわ地方疲弊してるわ ぐちゃぐちゃですもんね。)
それとも、何者だろーと目の前で死にかかっている人は放っとけないわ、程度の憐れみでしかないのかい?(王女じゃない、ただの16歳の女の子ならそれで十二分ですけどね…。)
トーラとジグモが敗退しても、マラキア暗殺団のエスタロはまだ残っています。
二大聖騎士長がマラキア王国を滅ぼした? 本人(ヘンドリクセン)がこの場にいるじゃないですか。
彼らの対決はあるのでしょうか。
もしその対決が実現したとして、「悪くないのに恨まれる悲劇の英雄ヘンディと、愚かな敵エスタロ」って形には してほしくないなあ。
個人的には、ヘンディにとっての贖罪は何か、この機会に ちょっとは示してほしいかもです。
メリオダスらと共に魔神を倒すのは当然として、それだけすればOKなんでしょうか?
魔神のせいでも、沢山の人に長期間 取り返しのつかない事をしたのは事実です。
情状酌量の余地は多分にあるから、牢屋に入れとまでは思わないけど、ジェンナやメリオダスが言うように「仕方なかったから許してやれ」と、簡単に無かったことにできるレベルの話じゃないと、私には思えます。
彼に親を殺された子は孤児のままだし、彼に国を滅ぼされた人々は今も寄る辺なく彷徨っているんですもの。
子供に戻ったグリアモをヘンディが保護してるのは、幾つかの意味でずるいなあと思うのですが、魔神の影響で歪んでしまった10年を、あるべき形で取り戻して、互いに人生を再生してるって感じなのかもですね。
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エレインの技のこと。
第142話にて、死から蘇ったエレインは、大勢の妖精たちを一度に攻撃する大技を使いました。
この技の名前、雑誌掲載時は
だったんですよ。
「
ところがどっこい。
後に単行本化したのを見たら(初版)
に修正されてるじゃん!
え、「
と思いつつ調べてみると、「
ただし「
……もしかして、正しくは
とすべきものを、雑誌時点では漢字もふりがなも誤植して
にしちゃってて、それを単行本化の際に直したつもりで、ふりがなの方は直っておらず
になっちゃってたんでしょうか。
……とか思ってたところへ、今回エレインがトーラを瀕死にした大技
の出現です。
むむう……。
これ、この技名で正しいのかな?
まさか、またも「
ちなみに、「
というのも、五行説で「金」は、季節にして秋、方角にして西を表すから。
秋になって冷たい風が吹くと、木の葉が一斉に吹き散らされてしまいます。
エレインの大技が「
秋に木の葉が一斉に吹き散らされるごとく、敵を一斉に吹き散らせるほど強力な風の大技
という意味なのかなと、勝手に思いました。
秋に吹く台風でもいいけど。