【感想】『七つの大罪』第146話 さらば愛しき盗賊
週刊少年マガジン 2015年47号[2015年10月21日発売] [雑誌]
第146話 さらば愛しき盗賊
- 鋭い歯に噛まれた魂。バンの名を絶叫するエレインの視線の先で、ガランはガツガツと咀嚼し、溢れる汁を啜り、ゴキュンと呑み込んだ。
◆ガランにモグモグされてる魂から汁みたいのが飛び散ってて、「ジュルンッ」と汁を啜ってるみたいな効果音が書かれています。
えっ、魂にも体液があるの(汗)!? - バンを呼んで泣き叫ぶエレインを支えて戸惑うジェリコ。バンはメラスキュラの隣に、何事もなく立っているのに。
しかし、佇む彼は無表情でピクリともしない。魔神達も木石であるかのように無視している。 - 魂を腹に収めてゲップをしたガランに、険呑な様子でメラスキュラが詰め寄っている。
「ガラン…!! よくも人の獲物を横取りしたわね!」「彼の魂は 私のものだったのに!!」
「カッカッカッ! 早い者勝ちじゃ」「フン! もう食っちまったわい」 - 「バンは どうしちまったんだ?」「少しも動かねぇぞ?」異状を感じはしても理解はしていないジェリコに、泣きながらエレインが告げた。
「う…」「うぅうっ」「バンの魂は… 魔神に食べられてしまった」「彼の意識は もう… どこにも存在しない…」「あそこに立っているのは 彼の抜け殻……」「バン…… うっ… ひっく」「バン!!」 - 泣き崩れるエレインから離れて、ジェリコはフラフラと『抜け殻』に歩み寄った。
「う… そ… だよな?」「お前が死ぬわけねぇだろ? な?」その目に涙が浮かび、こぼれ落ちる。「だって お前は不死身の――」 - 魔神達は険悪に睨み合っていた。
「あなたのお守りをさせられた挙げ句に この仕打ちは 何?」とメラスキュラ。バンの魂を掠め取られたのがよほど腹にすえかねたらしい。
「”お守り”? 小娘が何をほざくか!!」と、反省する様子もないガラン。
「思慮分別に欠ける老人ほど始末に負えないものね…」
バンを下した今、彼らの脅威となる者はいない。周囲を無視して喧嘩を始めそうな様相だ。
◆メラスキュラはガランからは「小娘」呼ばわりされるくらい若いのか。
魔神族の一般的な寿命は1000年程度らしいので、ガランがそのくらいの年齢だとして、メラスキュラは数百歳程度?
750歳のディアンヌと同じくらいか、場合によってはもっと若いのかもですね。 - そんな彼らに、ジェリコは大股に歩き寄り始めた。
「バン… 仇はとってやる…………!!」涙と怒りにまみれた顔で、背負う剣を鞘から抜きかける。 - その時だ。柄を握る手に力強い手が重ねられ、抜く動きを抑えた。
「え?」ハッとして見上げた視線の先には……誰もいない。 - その瞬間にはもう、力強い手の持ち主は彼女から離れ、庇うように魔神に向かっていたからだ。
「その心配はねぇぜ…!!!」
溢れる力をオーラのように立ち昇らせ、三節棍を構えたバンが! - 彼は険しい顔で棍を振るう。
『”獲物狩り ”!!!』
直後。鞭のようにしなった三節棍に跳ね上げられ、空高く舞い上がった二つの肉塊――脈打つ心臓!
「ホウッ!!!」バンの発した怪鳥 音と共に再びしなり唸った棍が、それを真っ二つに断ち割った。 - 「!!!?」
咄嗟に反応できていなかった魔神達が血を吐き、胸を押さえてドシャッと膝をつく。
「ぐふっ… 何を…したの?」
「儂らの心臓を潰しおった!!」 - 全ては数瞬の出来事だ。やっと状況を認知したジェリコが「お前っ生きて…」と言いかけた時にはもう、バンは二人の女を抱えて遠く逃走を始めていた。
「口を閉じてろ 舌 噛み切んぞ♫」
「バン!!」と叫ぶエレインを左腕に抱き、右肩にジェリコを担いで、ほんの三跳びで丘の下の町に達し、生ける死者が暴れる阿鼻叫喚の中を猛ダッシュで駆け抜ける。 - その姿を視界に捉え「…なぜ 奴が生きておる~~~~!!?」とガランが叫んだ。魔神の心臓は一つではない。ダメージはあったが、心臓を一つ失ったからとて倒れる様子はなかった。無論、バンはそれを承知で逃げたのだ。
「魂を食べたのはあなたでしょう!?」と、忌々しげに指摘してメラスキュラはよろりと立ち上がる。 - 「小僧…
逃 しはせんぞ」ガランは一跳びでロケットのように舞い上がった。
「カアーーーーーッ!!!」『”惨散斬 ”!!!!』
眼下めがけ、長柄の武器で無数の突きを撃ち放つ。雨のように降り注いだ衝撃波で盗賊都市レイブンズは蜂の巣のように穿たれ、砕け散った。建物も、人も。何もかもが。 - だが、それほどの力を見せても、ガランは不満げに拳を握る。
「ぬう! まだ力が戻っておらん!!」「奴の魔力は まだ切れんのか!?」
バンの素早さに追いつけなかったのだ。彼はもう、町にはいない。 - 悔しがるガランとは対照的に、メラスキュラは冷静を取り戻している。
「…直 に切れるわ 分不相応な力を取り込んだ反動は相当なはずよ…」口元に付いたままだった己の血を、長い舌を伸ばして舐め取った。「ゆっくり追い詰めてあげればいいわ…」
◆メラスキュラの舌、ビックリの長さでした。普通の人間の三倍くらいありそう。魔神っぽい?
魔神・長い舌というと蛇などの爬虫類を連想しがちですが、舌先は割れてないから、爬虫類って感じじゃないかも。どっちかっつーと…そう、キリン。キリンの舌みたい。 - その頃、女達を抱えたバンは、レイブンズを遠く離れた街道を飛ぶように走っていた。
「マジかよ …町が壊滅だ!!」肩に担がれ、進行方向とは逆に顔があるジェリコが、地響きを立て崩壊していく都市を彼方に見て唖然としている。
だが、ここまで逃げれば大丈夫だろう。再びバンに尋ねた。
「おい バン説明しろ!!」「お前 あの化け物に魂食われたんじゃなかったのかよ!?」 - ところがだ。答えるどころか、バンはジェリコを前に放り捨てた。背中から落ちて勢いでうつぶせに転がり、「って~~な~~!! もうちっと優しく降ろしてくれよ」とぼやきながら顔を上げる。そしてぎょっとした。バンが両膝をつき、荒い息をついていたからだ。全身から汗が滴り落ち、ずっと持っていた三節棍も取り落とす。明らかに尋常ではない。
「お… おい 大丈夫か?」 - 武器やジェリコは取り落としても、エレインだけは手放さずにいた。涙でぐちゃぐちゃの笑顔で、彼女は恋人の頬に手を添える。
「バン……よかった!!」「もう二度と あなたに会えないと思ったら とても怖かった…!!」
バンも笑みを浮かべたが、消せない苦さも浮かんでいた。
「ああ…」「さすがに俺も覚悟しちまった……」 - メラスキュラの触手に魂を絡め捕らわれた、あの時。エレインが放った風で僅かに触手が緩み、どうにか逃げ出した。
だが、跳んだガランが背後に迫っている。
『このままじゃ捕まっちまう…』焦るバンの魂の前に、スッ…と現れた、もう一つの魂。
『バン!!』『俺が囮になる!!』『その隙に化け物 の背後に身を隠し体に戻るんだ!!』
『!!!』『お前…』『ジバゴ!!』その魂が何者かを悟った瞬間、バンの目にはそれが彼の姿に映った。それも、老いた狐男 の姿ではなく、若き日の人間の男の姿で。 - 『バン… あの時 お前を助けてやれなかった償いをさせてくれ…』
彼が何をするつもりか悟って、バンは異を叫ぶ。
『バカ言え!!』『魂を食われたら息子に… セリオンに会えなくなるんだぞ!!』
『…お前も 俺の大事な息子なんだ』『…セリオンだってわかってくれるさ』ジバゴの微笑みには曇りがなかった。
『……』『バカヤロウ…』拳を握りしめ、歯を食いしばって声もなく泣くバン。そんな彼に、穏やかな声音でジバゴは最期の餞 を贈った。
『生きろよ』『恋人のために親友 のために』 - 跳んできたガランが手を伸ばし、まんまとジバゴの魂を鷲掴む。その瞬間にはバンの魂はガランの背後に逃れ、そのまま己の体めがけて滑り降りている。
『…親父!!』それが彼に聞こえたのかは判らない。視界を遠ざかっていくジバゴの魂を振り返って、バンは「父」と彼を呼んだのだった。 - 聞き終えると、ジェリコは悲しげに項垂れた。
「そうか…」「オッサンが………」
その眼前で、バンがとうとうドッと倒れ伏した。未だエレインを抱く手だけは緩めていないが、荒い息を吐いて立ち上がれない。エレインもまた、ずっと続く死の苦しみから逃れてはおらず、冷や汗をかいて浅く息をついている。 - 慌てて助け起こそうとしたジェリコの全身がゾワッと粟立った。顔を上げて街道の彼方を見やる。崩壊したレイブンズの方角から、恐ろしい気配が迫りつつあるではないか。
「やべぇ… やべぇよ」「あの化け物共が こっちに近づいてきてるぞ!!」 - 倒れ伏したままバンが言葉を吐いた。
「もう 指先一つ動か…ねぇ…」悔しげに「ちいっ」と舌打ちする。
”狩りの祭典 ”の反動だ。時間切れで奪った力が相手に返ると、反対にこちらの全身が虚脱して一定時間動けなくなる。その程度は奪った力の大きさに比例するのだった。
ジバゴに生かしてもらったこの命。腕の中にはエレイン。なのに、ここまでか。
唯一の希望は、信頼できる人間が…動く手足を保ったジェリコが側にいること。
「頼む… ジェリコ エレインを連れて逃げるんだ!!」
ジェリコは心底驚いた顔をした。「は? お前はどうすんだよ!?」
「俺は… 不死身だ」「必ず… あとで合流する…!!」
必死の嘘は、腕の中の恋人に否定された。
「ダメ… 相手は… 魂を喰らう魔神よ」「おね…がい ジェリコ… バンと二人で… 逃げて」「私は… 魔神族の…… 禁呪で… 一時的に… 蘇ったに… すぎない」「いずれ また死ぬ身よ …だから お願い… バンを…… 助けて」
息も絶え絶えに、それでも必死に訴えるエレインを、バンはどうにか上げた顔で覗き込んで叱咤する。「ダメだ… エレイン!!」
◆おお!? エレインが初めて、ジェリコを名前で呼びました! - どうしろと言うのか。互いを庇い合う恋人達の訴えに、ジェリコは苦しげに歯を食いしばって顔を背けた。
「~~~~~ッ!!」「お前ら 二人そろって どんだけ わがままなんだよ!!」
そもそも、ひと一人抱えて逃げおおせる確証もないのだ。これまで目にしてきた化け物共の力を思うに、どうポジティブに考えても絶望的だ。 - そしてジェリコは決断した。
肩に斜めに掛けていた剣帯を外して腰に着け直す。上着を脱いで、それでバンの体に小さなエレインの体をくくりつけた。それから、忘れずに三節棍をバンの首に掛けてやる。
「お前……正気か?」ぐったりしたバンが、呆れと驚きを隠さず落とした悪態は無視してやった。
魔神達は矢のような速さで近付いてくる。
「お前ら この貸しは高くつくからな!!!!」
バンとエレイン。二人を諸共に背負って、ジェリコの逃避行が始まった。 - 次回「死の猛追」
バン&ジバゴの大イリュージョン!
入れ替わりマジーーーック!!
ジバゴがバンの身代わりになる展開自体は、予告された「さらば愛しの盗賊」というサブタイトルから予想され得るもので、WEB上でもよく見かけたものです。
だからそれ自体には驚かなかったのです……が。
入れ替わりの描写に唖然。
雑にも程があるでしょ~~!?(汗)
なんでアレで魔神達にバレずに済むのか。
いくら漫画が嘘を読ませるものとは言え、週刊漫画は勢いで押し流すことが許されがちなものとは言え、テキトーすぎるわぁ~~っ!!
もうちょい丁寧に、読む人も納得できる形で見せられなかったんですか。
規模は小さいけど、ある意味、「釈然としないビックリ展開」でした。
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ジェリコ大活躍の巻。
バンの体重70kg、エレインは38kg、併せて108kg。
いくら聖騎士見習いとは言え、女の細腕で引きずるならまだしも背に担ぎあげ、疾走!? 火事場の馬鹿力でも凄すぎるぅう。
ここまでしてもらったら、一度は彼女を殺そうとしたエレインも、友情を感じざるを得ないんじゃないかしらっ。(わくわく)
将来、エレインがバンとの間に産んだランスロットが聖騎士になる頃、ジェリコも別の男性と幸せな結婚してエクターを産んでて、彼も聖騎士になって、彼らが兄弟みたいに仲良くなればいいのになー。という夢。
子世代に続く仲良しになってくれたらいいな。
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今バンがぐったりしてるのって、恐らく「
とすれば、そう間を置かず回復するはず。
で、ジェリコによる逃走という「時間稼ぎ」をここで投入、と…。
今まで、特訓も覚醒もしてない神器もないバンが、一人で<十戒>二人に敵うはずがない、途中で誰かが助けに来るんだろうとばかり思っていましたが、もしかしたらバンが一人で片付けちゃう可能性もあるのかな、これ。
ジェリコ、バンとエレインを抱えて逃げる! しかしついに追いつかれピンチ! そこでバンの反動時間が終わって復活! でも不利なことに違いなし! そこに<
…的な(笑)。
そしてエレインには翅が生えて真に生き返り! ジェリコは時間操作の魔力に目覚めて3000年前の聖戦の真実を知る時間旅行に発ち! 妖精王は行方不明になって第三部まで出てこない!
…なんて展開は嫌だ(笑)。
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ところで。
ぐったりしたバンと瀕死のエレインが、それぞれジェリコに「私の恋人を連れて逃げて」と頼む場面。
……こ、こここれは……(汗)。
……狙ってます、か? ませんか。
二コマ目、何故かエレインの肩部分にベタ塗ってないし(笑)。
いや。心の綺麗な人には、バンとエレインが互いを想いあう感動的な場面でしかないのだ。バンがエレインにしがみついてるのはそれだけ大事で必死だから。汗だくでハアハア言ってるのは状況的に必然。「げへへへ♥ 」と思ってしまうのは心の鏡が曇っているからだぁ~っ!
当初、台詞部分を抜いたカットを作ろうかと迷ったんですが、色んな意味でヤバさが増すのでやめました。
ほぼ同時に発表された番外編ではギーラとベロニカが全裸を披露してたし、妙にエロづいてますね(笑)。
…いや。そう思うのは私の心の鏡が(以下略)
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魔神が抜き出したバンの魂は「白い玉」としてジェリコにも認知されていました。
恐らく、かつてバイロンで赤魔神が町の人々の魂を抜いた時も、白い玉として人々に認知されていたのだと思います。
他方、キングの兜に憑いたヘルブラムの魂は、白い玉として認知されたことが、今のところありません。声がキングにだけ聞こえ、兜をかぶるとキングにだけ生前の姿そのままに見える、という仕様です。
この違いは何によるのでしょうか。
魔神に抜き出されたわけではないジバゴの魂も、白い玉として現れていましたから、そこは関係ない。
じゃあ、取り憑いてるかいないかの差?
エレインが、バンとジェリコの旅をずっと見ていたと言ってました。
これ、ぶっちゃけ「取り憑いてた」も同然だと思うんですよね。
死者の都に存在しつつ、同時に、バンに憑いているとゆーか。
そう思えば、取り憑いてる魂は特殊な方法でないと見えない、彷徨う魂は白い玉として見える、ということなのかもしれない。
それにしても、死霊と生霊って味おんなじなの? ガランさん、まるで気付いてませんでしたが。活け絞めの魚と野絞めの魚くらい味が違ったりはしないのだろーか。
そして、生霊も死霊も、味や成分が変わらないのだとしたら、メラスキュラは赤魔神に生きた人間の魂を集めてこさせるなんて面倒なことしないで、直接死霊をエジンバラに大量に召喚して食いまくれば、魔力は簡単に回復できたのではなかろーか。
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かつてバンは、死すべきところをエレインに救われ、今また、ジバゴに救われました。
ただ助けられたのではなく、いずれも、助けてくれた相手が身代わりに死ぬ(消失する)という形。
なんで繰り返されるんだろう。これがバンの宿命なんでしょうか?
悪い表現なら「愛する人の命を喰らって生き延びる」、いい表現なら「愛する人に命を託されて生きる」と。
エレインが生き返りそうで、やっと「罪」から解放されそうだと、ホッとしながら読んでいたのに。なんで新たな罪を背負わせるのか。
こんなこと繰り返されては、本人もたまらないですよね。
今回のジバゴとバンの場面を見ていて、芥川龍之介の『杜子春』が思い浮かびました。
ろくでなしの貧しい男が、魔性に殺されて魂となって、過去に亡くなっていた親と再会する。不老不死者(仙人)になりたいという己の目的を果たすには親の魂が鬼にズタボロにされるのを看過しなければならない。親も言う。「心配するな、私たちはどうなっても、お前さえ幸せになるのなら、それが一番なのだから」と。
杜子春は耐えきれずに声をあげて親に駆け寄り抱きしめ、彼の望みは果たされませんでした。
この小説では、杜子春のこの選択を大肯定しています。彼自身も「これでよかった、これからは平凡な人間として生きる」と満足していましたし、試練を課した仙人は「もしお前が親を見捨てていたら、即座にお前を殺していただろう」とまで言うのですから。
ところで、この小説には中国の古典小説『杜子春伝』という原作があり、そちらは結論が正反対なのです。
愛する者の死を看過できず試練に失敗した杜子春に、仙人は言います。「お前は、喜び、怒り、悲しみ、恐怖、憎悪、欲望の情は忘れることができたが、愛だけは忘れられなかった。もしお前が試練に失敗しなければ、私の薬が完成して、お前も仙人になれただろうに。お前はこれから平凡に生きるがいい、ガンバレ」と。杜子春は激しく後悔しましたが後の祭りだった…という苦いオチです。
一般道徳的には「愛を捨てることができなかった」ことは肯定されるでしょう、芥川版のように。けれど原典は「人外の超越者になり得る者は、普通の人間でいてはならぬ」と語っているわけです。(同時に、人間である限り愛だけは捨てられないとも語っている。)
バンが、この絶望的な状況で、恋人や親友と生きたいという目的を果たすには、親を犠牲にせねばならない。そうまでしなければ彼の望みは果たされない。そういうことなのでしょうか。
バンがジバゴに言われるままに、なすすべなく彼を身代わりに喰わせて、自分は生き返ったのを見たとき、この辺りのイメージがぐるぐるしました。
バンに身代わり拒否して死んでほしかったわけではありません。ぐずぐず迷ってほしかったわけでもありません。
私は、バンに道理を突き破ってほしかったのかもしれない。
相手が「いいから、私が死ぬから、あなたは生き延びて」とぐいぐい勧めてきたとしても。その状況を打破してほしかったのかも。
いつかまた同じようなことが起きたら、三度目の正直で、そうなってほしいなあ。
親が子のために自己犠牲するのは当たり前でしょうか。感動的でしょうか。
実際は、ジバゴはバンの親ではありません。余所の子にも実の子へのような愛情を注いでくれた親切な人、というのが真のところです。
身代わりになる際、彼は言いました。「あの時 お前を助けてやれなかった償いをさせてくれ…」と。
これは純粋な愛情なのでしょうか。
極限の状況下で、実の子を優先した。それは生きている間ずっと、それどころか死んですらも悔やみ続けて、身を犠牲にしてでも償わなければならぬ大罪なのですか?
全ての状況においてそうとは言えませんし、平等論者の方はピリッとするのかもしれませんが、私は、突き詰めた時に実の子を優先するのは普通のことだと思います。
それでも、ジバゴは生きている間ずっと後悔して苦しんでくれた。とても優しいひとです。それで十二分じゃないですか。
死ぬ間際にバンに再会できて許しももらえた。そのまま満足して死者の都へ逝って欲しかったのに。
それを引きずり出して「償いをさせてくれ」なんて言わせて、自ら「無」に突入させて、それを美談扱いするなんて、なんて過酷な話なんだろう。
死んだ親にまで そこまでさせちゃダメだよ。入れ替わりの描写は雑だし(しつこい)
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追記。書き忘れてました。
先日発売した17巻のおまけページに、新規情報が色々書いてあって面白かったですね。
エリザベスの闘級が1925(武5 魔1700 気220)ってのも驚きでしたが、お絵かき騎士団コーナーのコメントでチラチラ示唆されてた設定も興味深かったです。
- バンの神器は監獄で「聖騎士に」取り上げられた。
◆これ読んで、「聖騎士に」返してもらう展開になるのかなと思ったんですが、どうでしょう。 - キング曰く「昔の妖精王様たちも(霊槍シャスティフォルに)似たような神樹の武器を持ってたって話だよ!」
◆三つのことが推測できます。
一つ。シャスティフォルは代々の妖精王に受け継がれたものではなく、あくまでキング専用の武器。
二つ。伝聞形式で語っていることから、キングは先代・先々代の妖精王とは面識がないと思われる。彼らの死後に誕生した?
三つ。過去の妖精王たちに「様」付けしているので、親子ではないっぽい。
3DSゲーム版見るに「妖精王の血筋」というものはあるらしく、過去の妖精王の顔立ちはエレインによく似ていた。「神樹を介した血縁」的なものはあるのかも? しかし人間と同じような形の血縁ではないっぽい? - ゲラードは「先代の」妖精王から仕える存在で、妖精族の最長老。
- メリオダスは未だゴウセルと腹を割って話したことがない。