『七つの大罪』ぼちぼち感想

漫画『七つの大罪』(著:鈴木央)の感想と考察。だいたい的外れ。ネタバレ基本。

【感想】『七つの大罪』第124話 友情がもたらしたもの

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週刊少年マガジン 2015年23号[2015年5月1日発売] [雑誌]

第124話 友情がもたらしたもの

 

  •  馬を大穴の縁に繋ぎ、底へ降りて行くドレファスとヘンドリクセン。
    なんと、命綱など一切使わず、真っ暗な大穴の垂直の壁を躊躇なく滑り降りて行きました。ふつう死ぬ。
    エジンバラに空いてた大穴は深さが9km。この穴はもっと規模が大きく見えるのでそれ以上に深そうなのに。そもそも帰りはどうするの? とハラハラ。
    聖騎士ってつくづく超人なんですね。
  • かつてここに都市があったとは信じられない、隕石でも落ちたのかなと言うヘンディに、ドレファスは、残存魔力を感じるので人智の及ばぬ存在が作ったものだろうと鋭い見解を述べる
  • 穴の底へ到着。
    真の暗闇の中、誰かの呼び声が聞こえる? 亡霊か、生存者か。
    わんぱく三人組なら喜びそうな話だとヘンディが言えば、いやグリアモールは大泣きして漏らすだろうとドレファス
  • ドジっ子ドレファス、ここに至って灯りを忘れたと言い出す。ヘンディは「帰ったらエールをおごってもらうよ」と笑って、呪言の玉で灯りをともした。事前にマーリンに分けてもらっていたのだと言う。こちらはぬかりなしのしっかり者。
    ドレファスはヘンドリクセンより8歳年上です。
    つい先刻まで年長者然として先導してたドレファスが、ここにきて「忘れ物」なんて可愛いけど致命的なミスを犯し、年少のヘンディが余裕然とフォローした流れが面白かったです。この二人ってこういう関係なんですね。まさに「師弟であり親友」。

    それはともかく、忘れ物したドレファスの「…しまった!」にブフッとなりました(笑)。いや、王都決戦で二人が戦った時、ドレファスが足を滑らせて「しまったーー!!」ってやったの思い出しまして。ドレさんの持ち芸なんかい。作者さんの遊びでしょうか?
    王都決戦時の「しまったーー!!」が、フラウドリンの操作ではなく、マジにドレさんのズッコケだったらどうしよう
  • ヘンディは暗闇が苦手。
    というのも、まだドルイドの里に住んでいた幼少時、土葬された遺体が「自然ならざる魂」を得て甦らないよう、腐って骨になるまで夜毎に見張る仕事をさせられており、トラウマになったのだと。
    早く腐ってほしいあまり<腐食アシッド>の魔力に目覚めたが、それ故「臆病者」「呪われた子」と忌まれて里を追い出され、リオネスに移ることになった
  • なお、ドルイド族の女性は「女神の使徒」、男性はそれを補佐する「司祭」になりうるが、実際になれるのはごく一部で多くは一信徒に過ぎない。ヘンディもそうだった
  • ドレファスは「臆病者なんかじゃない ただ優しいだけだ」と笑い飛ばし、お前は立派な聖騎士長になれる、俺も兄貴も陛下もそう思っていると明かした。
    かつて自分にも聖騎士長を目指していた時期はあったが、今はその気がない。己が望むのは平和を守れる最強の聖騎士になること、そして息子の誇りであり続けることなのだからと
  • 思いがけない話にヘンディは戸惑い、「案外子供っぽいんだな」と茶化しつつも「…でも羨ましいよ」と眩しそうにドレファスを見つめた。
    ヘンディはドレファスの何が「羨ましい」のでしょう?
    誇りになりたいと思える息子がいること? 子供のように純粋な夢をてらいなく真っ直ぐに語れるところ? 夢に挫折したことを恥じず、新たな夢を目指せる強さ?
  • とは言え、現聖騎士長ザラトラスがいる限り王国は安泰で、ドレファスが最強の聖騎士になる日もヘンディが聖騎士長になる日も、まだまだ遠い未来のことだ。そう二人が笑いあった時、<悪魔>の声がした。
    「ならば…その宿願を叶えよう」
  • それは人間ではない。妖精族でも巨人族でもない。左の目元に(フラウドリンの)黒い文様が浮かんだ気味の悪い異形の怪物で、ボロボロに千切れた体で穴の底に這いつくばっていた。
    剣を構えたドレファスの隣で、戦慄しながらヘンディが叫ぶ。
    「この凶々しい魔力 ま…間違いない 伝承にある魔神族だ!! …まさかダナフォール消滅の原因はこいつ!?」
  • 魔神は「我にその体差し出さば 汝らの望み叶えよう…」と言うが、ドレファスは「残念だな魔の者よ お前は頼む相手を間違えたようだ」とすげなく断る。
    「ならば力づくでも手に入れるまでよ…!!」と、魔神の体から黒い靄が抜け出し、ドレファスめがけて雪崩れ込んだ!
  • が、ドレファスは鋼の意思でそれを拒み、余裕で笑って見せた。「我が意志は何ものも断ち斬る剣にして 国を民を子を友を守る盾!!」と
  • 「これは驚いたな 我の操心の術が及ばぬ…だと? なんという堅固な意志と魂よ…!!」
    気に入った、どうあってもいただくぞと靄と化した魔神は笑い、お前を乗っ取る方法は他にもあると、今度はヘンディへ流れ込んだ。一瞬で乗っ取られ、目元には魔神と同じ文様が浮かび、瞳は漆黒に染まる
  • 魔神はヘンディの記憶を検索し、個人情報や人間関係を把握。
    彼はドルイド族だが<浄化パージ>は使えないと知る
  • ドレファスは憤ったが、戦ってもこの器が死ぬだけだと嗤われて観念する。
    ヘンディから離れることを条件に、彼は剣を棄て、魔神に肉体を開け渡した。ただし、ヘンドリクセンを殺せば貴様を必ず殺すと言い置いて。
    「美しき友情かな… いいだろう この男の身は保証する…」
    「すまない兄貴… 許してくれグリアモール」
  • やがて、大穴の壁をよじ登ってドレファスとヘンドリクセンが出てきたが、ドレファスの顔には魔神の文様が浮かび、ヘンディの目つきは凶々しく変わっている。
    二人は王国へ帰っていった。王に、ここには何もなかったと偽りの報告をするために
    魔神フラウドリンは、ドレファスの男気に惚れて、強いて彼を依り代に選んだのか…。ヘンディじゃ満足できなかったのか…。モテモテですねドレさん
  • 場面は現代へ。
    ヘンドリクセンの話を聞き終わった わんぱく三人組は、衝撃と憤りで言葉を無くしている。グリアモールの両眼からは涙が溢れていた
  • ヘンドリクセン曰く「私の意志はすでにその時、奴の術中にあり」、王都に帰るとドレファスに憑いた魔神と共謀して、まずは、魔神を倒し得る<浄化パージ>の魔力を持つザラトラスを殺害した。更にその罪を<七つの大罪>に着せ、彼らを王国から追放させたのである
  • というのも、<大罪>の団長メリオダスこそが、16年前のダナフォールで魔神を撃破した仇だったからだ。ドレファスに憑いたのも、メリオダスに復讐する力を取り戻すまでの依り代としてである
  • そしてメリオダスにとっては、この魔神は最愛の恋人(リズ)を殺した張本人だった
  • 次回「打倒<十戒>!!」

 

……何かがおかしい。

つまり、ヘンドリさんが半裸でフラフラ谷歩きしてた時から、今回おニューの服で颯爽と登場した間に、何か一ドラマあったってことなんですよね?

ヘンドリさんは本来<浄化パージ>は使えなかった。なのに、何故か今は使える。

ヘンドリさんは<十戒>復活の時点では、10年前に何があったかすら覚えてなくて混乱してた。なのに今は全部覚えてる。それどころか、彼が知り得ないはずのことまで何故か知っている。

なんでヘンドリさんがメリオダスと魔神の死闘を把握してるの? なんで彼の恋人が魔神に殺されたことまで知ってるの?

なんかもう、色々おかしい、気がします。

半裸ヘンドリさんに服と剣と<浄化パージ>の能力を与えて、リズとメリオダスの顛末まで教えて導いた何者かがいるとか、そういう裏ドラマでもなかったんなら納得しがたい……ような……。

それとも、ドレファスを救いたい一心で、いきなり<浄化パージ>の魔力に目覚めただけとか、過去に一度魔神に憑かれた時に魔神の記憶が全部見えてましたとか、そんなことなんでしょうか。

 

次。

どうしてリオネス国王はドレファスとヘンドリクセンの二人だけにダナフォールの調査をさせたのか? だって、ダナフォール関係者のメリオダスが直属騎士として仕えているのに。彼に任せるか同行させるのが筋では?

国王はメリオダスがダナフォール滅亡に関わることを知らなかった?

…でも、ケインの話によれば、彼がダナフォールを滅ぼしたと噂になってたんですよね。知らないなんてあるかなぁ。

いや、噂はドレファスに憑いたフラウドリンが、後に広めたのかな?

それでも、メリオダスがダナフォールの生き残りってことは知ってたはずですし…。

王はメリオダスを信用していないから、彼に隠して調査させたかった?

そんなわけないですね。ヘンドリクセンが出発前にマーリンから呪言の玉をもらってます。彼女が知っててメリオダスが知らないことはないでしょう。

メリオダスは穴の調査によってドレファス達に危険が及ぶと思わなかったのか? フラウドリンが生きていると思ってなかったから?

色々納得しがたい点があって、モヤモヤします……。

 

更に次。

メリオダスは詰めが甘すぎませんか?

第二部冒頭時点でも、ヘンドリクセンの死体を確認せず、不明になった常闇の棺を放置して、案の定<十戒>復活を招いたので、詰めが甘いなあと思ってました。(マーリンに常闇の棺が持ち去られたと報告された時、どうしてすぐ捜索の手配をしないのか、自ら捜しに行こうとしないのか、当時すごく疑問に思ったんですよね。)

そしたら、16年前もそうだったなんて。

やだ。ちゃんととどめを刺さなかった(封印しなかった)からフラウドリンが復活したんじゃないですか~。

つまり、10年前からの騒動の元凶はメリオダスの自業自得ってことに…。

刃折れの剣を肌身離さず持ち歩いてまで封印守ろうとしてたのは何だったのか。

 

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モヤモヤする点はさておき、ドレファス達がフラウドリンに憑かれた経緯や、ダナフォール滅亡の真相が明かされ始めたのは凄く面白いです。

ドルイド族の設定も説明され始めましたね。…結局、血族集団じゃなくて宗教・思想集団なのかな?

少ないとはいえ「女神の使徒」とそれを補佐する「司祭」は何人かいるわけですか。じゃあ、常闇の棺を開くのに必ずしもエリザベスにこだわらなくてもよかったってことでしょうか?

つーか、エリザベスを補佐する司祭もいるの?

 

フラウドリンの能力は、彼自身の魂が乗り移るのと、乗り移ってなくても精神操作できるのと、二種類あるのかな? 解りにくいです。

「操心の術」ってのが複数の相手に同時に使えるのだとしたら、とても恐ろしいですね。一国を潰すのなんて簡単にできそう。

ゴウセルは今、フラウドリンの術の影響下にあるんでしょうか?

 

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死者が「自然ならざる魂」を得て甦らないよう、死体が朽ち果てるまで毎晩見張るというドルイド族の慣習は、とても面白かったです。

現実に行われていたことですよね。悪霊が入り込まないよう死体や墓を見張るのは。

 

現代日本でも「通夜」を行いますが、これには元々、遺体に悪霊が入り込まないよう埋葬まで見張るという面があります。また、遺体の枕元に小刀を置くことがありますが、これも悪霊を退けるためです。(霊的存在は金属に弱いとされるので。)

 

こうした習慣は世界各地にあって、民話や神話にも、悪霊に悪さをされないように、または死者の魂を悪魔が地獄へ連れゆくのを阻止するために、またあるいは、墓の主が起き上がるのを宥めるために「夜毎に墓を見張る」話って色々あります。(そういうお話では、大抵、見張るのは三晩ですが。白骨化するまで見張らされてたヘンディ少年は気の毒すぎて震えます。すっごい腐敗臭してたと思うし…。そりゃトラウマになるわ。)

 

で。『七つの大罪』で死体に入り込むという「自然ならざる魂」って、魔神族、もしくはその眷族のことですよね。今までも散々、魔神族のことを「自然ならざる魂」「自然ならざる存在」と形容してましたから。

つまり、魔神族ってのは伝承で言う悪魔であり、悪霊ってことなのでしょうか。

 

もしも魔神族に「お前の恋人を生き返らせてやろう」って言われたら、バンはどうするのかなぁ。

 

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個人的見解ですが、ヘンドリクセンを守るために自らの肉体を開け渡したドレファスの決断は、私は、正しくはなかったと思います。

友達を助けたいだけなら正しいけれど、本当に国や息子を守りたいと思っていたのならば。

 

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