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『七つの大罪』ぼちぼち感想

漫画『七つの大罪』(著:鈴木央)の感想と考察。だいたい的外れ。ネタバレ基本。

【考察】エリザベスのこと(第二部序盤時点)

※2015年3月時点の文章です 。

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エリザベスは『七つの大罪』のヒロイン。

物語開始時点で16歳で、本名はエリザベス・リオネス。リオネス王国の第三王女であり、正真正銘の「お姫様」です。

家族は、国王である父バルトラ・リオネス(60歳)と、長姉マーガレット・リオネス(22歳)、次姉ベロニカ・リオネス(18歳)。王妃であった母キャロラインは、15年前、まだエリザベスが1歳で物心もついていなかった頃に、野外でのお茶会の最中、魔物に襲われて命を落としています。(王妃の親友だった、ギルサンダーの母レネ、グリアモールの母アンナも、このとき運命を共にしました。)

 

出生の秘密

リオネス王家の絆は強く、家族として慈しみ愛し合っています。みな愛情深く、それでいて勇敢でもあり、人のために我が身を傷つけることを恐れません。まさに「王」の気質を持つ一家です。

エリザベスも同様で、似たもの家族なのですが、実は彼女だけ血の繋がりがないことは、連載開始直後から明かされていた事実です。

 

彼女は5歳かそこらでそれを知ってしまい、家族の愛情を確かめたくて、色々といたずらや無茶を繰り返したそうです。城で一番高い木に登りつめたり、城の外に一人で遊びに出て吊り橋から落ちかけたりと。すると、父も姉も彼女を助けるべく無茶をして、木や吊り橋から落ちて怪我を負ってしまいました。

エリザベスは家族からの愛を確信すると同時に後悔し、また家族を失うことを恐怖して、次第に無茶を控えるようになっていったようです。幼い頃は少々おてんばでしたが、16歳時には おっとりした淑女レディになっていたのは、こうした経験の賜物なのでしょう。

とはいえ「三つ子の魂百まで」。いざとなれば無茶をするのは変わらないようです。ただし今は、自分のためでなく誰かを護るために。やはり、血の繋がりはなくとも似たもの家族ですね。

 

それにしても、リオネス王家と血の繋がりがないのなら、彼女は何者なのでしょうか。

王家の養女になるにはそれなりの縁故が必要に思われます。ならば、どこか別の国の王女か貴族だったのでしょうか?

 

父バルトラは一度だけ、エリザベスの故国はダナフォール王国だと教えてくれたことがあるそうです。姉ベロニカも、父と聖騎士長ザラトラス(ギルサンダーの父)が、エリザベスの本当の両親はダナフォールで亡くなったと話していたのを立ち聞きしたことがあります。(小説版『七つの大罪 昔日の王都七つの願い』)

ダナフォールはリオネスと並ぶ勢力の大国でした。しかし16年前、突然に王都が巨大な空隙に呑まれ、今は地図上から消えています。

ということは、エリザベスは滅亡したダナフォール王家の生き残りなのでしょうか?

 

しかし、そう言いきるには不整合な点が幾つかあります。

第一部王都決戦で彼女が奇跡の力を発揮した際、ヘンドリクセンは言いました。

「目覚めたか ドルイドの巫女に流れる血が―― 女神の使徒よ!!」

この漫画世界におけるドルイドとは「深い森の中に住まい 自然と女神を崇め 自然ならざる魔神を忌む者たちの集団」です。姻戚関係にあった可能性は否めはしませんが、ダナフォールの王族がドルイドだった、またはドルイドの血が入っているとは思い難い。なにせ「世俗の者を忌み嫌う節が」ある一族だそうですから。

 

もう一つ、大きなネックとなるのが「リズ」の存在です。

かつてのメリオダスの恋人であった彼女は、ダナフォールの騎士であり、元は異国の奴隷でした。16年前のダナフォール滅亡の日に死亡し、同日にエリザベスが生まれています。

彼女を知るケインの伝によれば、リズの本名もまた「エリザベス」(「リズ」は愛称)。前髪で右目を隠す髪形も、顔立ちも声もエリザベスにそっくり。アニメ版メリオダスによれば胸の大きさも同じだそうです。

 

二人の「エリザベス」は似すぎています。無関係とは思われません。

では、エリザベスはリズの妹か何かでしょうか?

しかし姉妹で名前が同じなのも奇妙ですし、何より、リズは奴隷で出自が明らかではありません。前述のとおり彼女の死亡日にエリザベスが生まれていますから、もし姉妹なら、親がダナフォールに健在で、なのにリズは奴隷出身の騎士として天涯孤独に暮らしていたことになります。ありえなくはないですが、ちょっと無理がある。

では、エリザベスはリズの娘でしょうか?

しかし回想シーンを見る限り、死亡時のリズは全身鎧を着込んでいて、当日に出産したようには見えません。また、メリオダスの恋人だった彼女が他の男性との間に子供をもうけたとは思い難く、メリオダスの子ならば、彼は実の娘にセクハラをし続けていることになってしまいます。少年漫画でそれはないでしょう。

 

ともあれ、リズがダナフォールの王族ではないのは確かです。リズと関係深そうなエリザベスも、その可能性は低そうです。なのにどうして、バルトラは彼女を養女にしたのでしょうか?

 

可能性として、バルトラの魔力「千里眼ビジョン」の影響を挙げるのは容易いでしょう。自分の周辺限定なうえ漠然とした言葉や映像でしか見えないという制限はあるものの、高水準で未来を予知する能力です。<七つの大罪>の結団もそれにより成されました。同じように、エリザベスを引き取ることも見通していて、自ら受け入れたと考えるのが自然かと思います。

 

バルトラは千里眼ビジョンを駆使し、時に他国にすら足を延ばして、身分関係なく多くの子供を救っています。

蛮賊に使役される孤児だったスレイダーの窮地に駆けつけ、引き取って騎士に育て上げました。幼いアーサーの窮地をも救い、君は王になると予言して指針を与えています。

同じように、滅亡したダナフォールにも自ら駆けつけて、瓦礫の中から赤ん坊のエリザベスを抱き上げたのかもしれません。

 

と、ここまで考えたところで。

現時点で根拠はありませんが、そこにもう一人役者がいたのではないかと、個人的には思っています。

そう、メリオダスが。

彼は滅亡したダナフォールに生き残っていました。そこにバルトラが来たなら出会っていた可能性があります。

彼はその赤ん坊を「エリザベス」と呼び、バルトラに託して育ててくれるよう頼んだ。そして自身は聖騎士として仕え、彼女が幸せに育つ様を陰から見守り続けていた…。そんな過去があったのかもしれないと。

 

第1話でエリザベスと出逢った時、メリオダスは完璧に初対面の態度を貫いています。王女と知ると驚いてみせてさえいました。

けれども幼い彼女(4歳)とは面識があり、言葉を交わしさえしていたことが、後の本編や外伝で語られています。彼女の方は幼すぎて覚えていませんでしたが。メリオダスの方も10年前に別れた子供のことなんて覚えていなかったと解釈することも不可能ではありませんが、16歳になったエリザベスはリズそっくりなのです。気づくところがないはずがありません。

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即ち、メリオダスはポーカーフェイスで嘘をつく。本当は、彼女の出自を誰よりも詳しく知っているのではないでしょうか。

 

「エリザベス」の円環サイクル

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エリザベスとリズは名前が同じ。容姿も声もそっくり。性格は正反対ながら、人のために戦える心の強さも瓜二つ。リズの死亡と同日同所にエリザベスが生まれている。

となると、誰もが想像することでしょう。エリザベスはリズの生まれ変わりなんじゃないの、と。

 

ただ、リズ死亡の同日に生まれている点を見るに、死者の魂が誰かの胎内に宿って新たに生まれる、一般的な「転生」とは異なるように思われます。

ドルイドか何かの秘術で出産間際の妊婦の胎にリズの魂を移した…なんてパターンもなくはないでしょうが、あの崩壊したダナフォールでは難しそうですし、第三者の胎児に宿って生まれ直したのなら、容姿がそっくりなのは辻褄が合わない感じもします。

 

そうなると、胎を介さないタイプの生まれ変わりでしょうか。遺体が赤ん坊に戻って「再生」したのだと。

ただ、こちらの説にもネックはあります。エリザベスがリズ本人ならば、髪色が異なるのは奇妙だからです。(エリザベスはプラチナブロンド、リズは赤みがかった栗色。)また、リズは騎士でしたがエリザベスは運動音痴で、肉体の基礎能力も異なるように見えます。

まあ、リズは苦労して奴隷身分から騎士になりあがったそうですから、本当は運動音痴なのに努力して身体能力を伸ばし、髪は、変に絡まれないよう地味な色に染めていた、などと考えるのも不可能ではないでしょうが。まだまだ隠された要素がありそうです。

 

ともあれ、エリザベスがリズの生まれ変わり、むしろ同一人物であることは、現時点では原作本編よりも、アニメ版やゲーム版など商業二次物で強く示されています。

中でも、ほぼ決定的に語っているのが、3DS版ゲーム『七つの大罪 真実の冤罪アンジャスト・シン』(バンダイナムコ)の、原作者監修オリジナルシナリオです。

 

<大罪>たちが倒した大鴉の魔物が、死に際に「ネヴァーモアのしゅ」をエリザベスにかけます。眠るたびに心地よい過去の夢を見させられ、次第に蝕まれて、しまいに目覚めなくなってしまうというものでした。

ところが、エリザベスが見たのは自分の過去ではなく別人になる夢。女騎士リズの記憶だったのです。

『真実の冤罪』サブシナリオ「大鴉の呪詛」

今日もまたあの人の夢が始まるのですね。
夢の中であの人は「リズ」と呼ばれていました。
リズさんは元々奴隷として生きてきました。奴隷という身分のためだったのでしょう。自分以外の人を信じてはいませんでした。一人で頑張って、頑張って…… ようやく国に認められ、騎士となることができたのです。
その国は戦争をしていました。だから騎士であるリズさんが、戦いに出ることもありました。
ある時、敵国に夜襲をかけることになり、その戦いに参加することになったのですが……。
夜襲は失敗に終わりました。捕らえられた敵国の騎士を生かしておく必要はない、ということなのでしょう。処刑をすることはすぐに決まりました。


リズ
(これで私も終わり、だな。最期までろくでもない人生だったな。)

 

ですが、処刑の前夜……。


聖騎士団長
「そんじゃお前ら全員、オレの敵な。」


一人の聖騎士団長が処刑から助けてくれたのです。


リズ
「甘っちょろい男だね!」
聖騎士団長
「そお?」

リズ
「「そお?」じゃないよ! どーせお前の目的は私の体なんだろう! 近寄るな!」
聖騎士団長
「まあまあ、そう興奮すんなよ。メシでも食おうぜ。」


その時はまだ人を信じることができず、その「甘っちょろい男」に対しても敵意を向けたままでした。
ですが……その聖騎士団長との出会いは、一人で生きてきたリズさんの人生を、運命を大きく変えることになるのです。
あの聖騎士団長の姿。もしかして、メリオダス様……なのでしょうか?

 

『真実の冤罪』サブシナリオ「解呪の香油」

今日もまた、私はリズさんの夢を見ていました。
聖騎士団長との出会いは、リズさんを大きく変えていくことになりました。


聖騎士団長
「よお、リズ。今日はオレと一緒に騎士団の皆のところに行こうぜ。」
リズ
「なんで私がお前と一緒に、しかも敵国の騎士団に行くんだよ。」
聖騎士団長
「いや、皆に紹介したくてさ。「新入り」だって。「オレの嫁」でもいいけど。」
リズ
「誰が嫁だ!」


ですが、共に生きていくうちに、リズさんは聖騎士団長に徐々に惹かれていきました。聖騎士団長はわざとリズさんをからかっていたのかもしれません。そうすることで、リズさんが心を開いてくれるように。


リズ
「まずい。」
聖騎士団長
「え?」
リズ
「お前が作る飯はまずいといったんだ。どうやったらこんなまずい料理が作れる!」
聖騎士団長
「オレが作るとどーしてもまずくなっちまうんだよな。」
リズ
「わかった。今度からは私が料理を作る。文句はないな?」


最初は団長以外の騎士の人も、リズさんを疑っていました。しかし、リズさん自身の魅力もあり、徐々に騎士団の人たちもリズさんに心を開いていったのです。


リズ
「だから、そうやって触ろうとするな!」
聖騎士団長
「わりーわりー。」
リズ
「もう! 皆からも何とか言ってやってくれよ。」


今になればわかります。聖騎士団長は甘っちょろい男ではなく、とても、とても優しい人だったのだと。
幸せな毎日です。ずっとこの日々が続けばいいと、そう思います。
……でも、なぜでしょう。なぜ……。
○雨が降っている(ダナフォール滅亡の日)
なぜ、メリオダス様は……泣いているの?

 どんな夢かとメリオダスに問われ、エリザベスは夢の詳細を語りました。リズという女騎士が、一人の男性との出会いで人生が変わり、多くの仲間に囲まれて幸せだったこと。けれど夢の最後は悲しくて、誰かが泣いていたことを。メリオダスは「リズ」の名を呟きます。

<大罪>たちの尽力で解呪の香油が完成し、エリザベスは夢を見なくなりました。すると夢の記憶も曖昧になって薄れてしまいましたが、喜ぶ仲間たちに頷いてメリオダスは言うのでした。「ああ。余計な記憶なんか持っているもんじゃねーぜ。」

 

過去の記憶を見る呪いでリズの記憶を見たということは、エリザベスとリズは同一人物と見て間違いないのでしょう。リズの再生体がエリザベス?

そして、メリオダスは過去の記憶より、今のエリザベスであることの方が重要だと考えているようです。だから初対面のふりをしていたのでしょうか。(一方で、かつての恋人だからこそ初対面からセクハラしまくりだったのでしょうが…。)

 

さて。

エリザベスはリズの再生体。しかし、それだけで終われない謎が、まだ残されています。

敵国の騎士として捕らえられ処刑寸前だったリズを、メリオダスは救いました。

当然反対した部下たちに、「そんじゃ お前ら全員オレの敵な」と敵対宣言までして。

一国の全騎士を束ねる聖騎士団長という重責にありながら、その全てを棄て、裏切る姿勢を示したのです。会ったばかりの女性を救うために。異常です。

 

ここから立てられるのは、リズもまたメリオダスにとっては初対面ではなく、その更に先代の「エリザベス」の再生体だったのではないか、という仮説です。彼にとってかけがえのない存在だったから、異常なレベルで執着し、全てを敵に回してでも守ろうとしたのではないでしょうか。

 

もしかしたら、その先代「エリザベス」も更に前の「エリザベス」の再生体だったのかもしれません。その「エリザベス」すらも更に更に前の…。

では、二人の始まりはどこにあるのでしょうか?

 

第51話にて、メリオダスがこんな独り言を言います。

「一天を流星が十字に斬り裂く時
 ブリタニアを至大の脅威が見舞う
 …それはいにしえより定められし試練にして
 光の導き手と黒き血脈の聖戦の始まりの兆しとならん」

「あぁ… そして終わらせようぜ」「オレは約束する」「ずっと一緒に戦ってきたあいつのためにも」「三千年繰り返してきたこの戦いに――…」「今度こそ決着ケリをつける!!」

 前半の「一天を流星が~兆しとならん」のくだりは、ブリタニアに伝わる古詩で、その少し前(作中時間で数週間前くらい?)、実際に流星群が夜空を十字に交差したばかりでした。間もなく聖戦が始まるようです。それとは別に、3000年前にも聖戦は起き、魔神族の封印を以て終結しています。

ところが、「ずっと一緒に戦ってきた」「終わらせよう」と彼は言っています。3000年前の聖戦からずっと、誰かと共に終わらない戦いを続けてきたかのように。それを間もなく起こる第二の聖戦を機に完結させたい、と述べている?

 

この「ずっと一緒に戦ってきたあいつ」が何者かは、かなり解釈の余地がありますが、もしかしたら「エリザベス」なのかもしれません。

だとすれば「エリザベス」とメリオダスの関係は、3000年前から始まっていることになるでしょう。

 

第110話で、エリザベスはディアンヌにメリオダスへの恋心を告白し、次のように語っています。

「私ね… よくわからなくて
 誰かに こんな気持ちになったことがないから
 メリオダス様を見るだけで ただ嬉しくなったり
 一人でいるとメリオダス様を思い浮かべたり
 メリオダス様と一緒だと どんな不安も消えるの
 ……
 好き
 あの方と初めて出会った時からずっと…………
 ………ううん
 自分でも不思議なんだけど
 とても懐かしくて もっと前から知ってたような
 そんな気がするの」

 懐かしくて前から知ってた気がする。そう語りながら街を歩く場面に、何故か「追いかけっこをする街の子供(幼いカップル)」のコマが、かなりの大きさで脈絡なく挿入されています。あまりに唐突で目立つので、意図のある演出かと思われます。

 

この場面、ディアンヌの愛するキングは失踪し、エリザベスの愛するメリオダスは冷たく突き放してきて、ヒロインたちは悲しみに沈んでいます。

そこに挿入された「追いかけっこする子供たち」は、逃げる男の子を女の子が追いかけて捕まえる様子です。(女の子は笑顔ですが、捕まえられた男の子は往生際悪く「捕まってないよ」ともがいています。)

流れを見るなら、エリザベスとディアンヌのヒロイン二人が、恋に逃げ腰の(?)メリオダスとキングのヒーロー二人を、それぞれ追いかけて捕まえるという、今後の大まかな展開・結果の暗示であるようにも読めます。

しかし、もう一つ別の暗示があるようにも感じられました。エリザベスが「懐かしい」と言った直後に、幼いカップルが印象的に描かれるのです。もしや、3000年前の「始まり」のメリオダスと「エリザベス」は、幼なじみだったのではないでしょうか。

根拠は全くないので、的外れの可能性が高いですけども。

 

女神の紋章

 エリザベスは奇跡の力の持ち主です。普段は平凡ですが、いざとなると強大で異質な魔力を放出し(1000年以上生きるキングが「こんな魔力は今まで感じたことがない…」と驚いていました)、魔を祓い、傷付いた者を完全に癒すのです。(ただし、死者を蘇らせることだけはできません。)

 

この力が発揮される時、普段は髪で隠している右目が、青からマリーゴールドの花弁のような橙金色に変わり(カラー扉絵で、彼女の右目の横にマリーゴールドらしき花が描かれています)、瞳に「入」に似た三俣の文様が浮かび上がります。

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ちなみに、マリーゴールド花言葉は「勇者、悪を挫く、悲しみ、変わらぬ(深い)愛、献身、健康」。たまたまかもしれませんが、この場面のエリザベスは「悲しい」と言いながら悪のヘンドリクセンを挫き、愛を以て傷付いた人々を癒しましたので、ピッタリですね。

(「変わらぬ愛、悲しみ」という花言葉は、カルタという少女が太陽神への叶わぬ恋に焦がれるうち痩せ細ってマリーゴールドになってしまったというギリシャ神話にちなむと思われます。ただしカルタの魂は太陽に吸い込まれたとも言われ、神世で結ばれたのかもしれません。マリーゴールドは花の様子から「小さな太陽」とみなされ、よって生命力や健康の象徴ともされます。)

なお、マリーゴールド marigold の名は「聖母マリアの黄金(の花)」を意味しています。マリアの祝日の頃に咲いたからだそうです。

 

エリザベスの右目は、普段は左と同じ、変哲のない青い瞳です。けれど右目だけ前髪で常時隠していました。4、5歳の頃は前髪を短く切りそろえて両目を出していましたから、成長過程で意図的に隠すようになったのだと思われます。

エリザベスは自身の奇跡の力の自覚が全くありませんでしたが、姉たちや父は承知していました。恐らく、幼い彼女の瞳がマリーゴールド色になって文様が浮かぶことが、過去に幾度となく起きたのだと思います。自覚がないなりに、右目に人に見せてはならない変化が起きていることは彼女も気づいていた、もしくは姉たちに隠すよう指示されたのではないでしょうか。第97話の扉絵は、手で右目を隠して泣いている幼いエリザベスです。ファンブックには、彼女のコンプレックスは「右目」だと書かれてあります。

エリザベスの「前世」であるリズも、同じように前髪で右目を隠していました。やはり右目に変化が起きて奇異の目で見られたことがあり、隠すようになっていたのではないかと思います。

 

さて。

エリザベスのマリーゴールド色の瞳には「入」に似た巴風の文様が浮かび上がります。

これは三脚巴さんきゃくともえ(トリプルスパイラル、トリスケル、トリスケリオン)と呼ばれる、ヨーロッパの伝統的なマークに想を得たものだと思われます。

このマークは(アーサー王伝承と繋がる)古代ケルトでも使われていました。古来の三脚巴は三つの渦巻きが中心で繋がり回転しているもので、後には三本の脚が中心で繋がり回転しているものも現れました。エリザベスの瞳の文様は、三本脚バージョンを簡略化したものによく似ています。(余談ですが「7」を三つ組み合わせた三脚巴を作ると、エリザベスの瞳の文様によく似たものになります。)

三脚巴Wikipedia

三脚巴が何を象徴するマークかは諸説あり、「老婆(消えゆく月)・母(満月)・娘(満ちゆく月)の女神の三相」「海・大気・火炎のような世界の三要素」など三位一体の事物や、「(車輪のように回転しながら天空を渡る)太陽」など、様々なものと結びつけられています。

かつてケルト文化に根付いていた原始宗教ドルイド教は、魂は不滅で永遠に転生・復活し続けると唱えました。その流れで、渦型三脚巴の三つの渦は「生命の永遠と魂の流転」を示し、三つの渦の繋がった中心部は「聖域、この世の神秘」を象徴している、という見方もあります。

「エリザベス」が3000年間、再生し魂の流転を繰り返し続けている存在なのだとしたら、なかなか相応しい文様です。また、これがドルイド教でも使われていた文様であることと、『七つの大罪』作中でエリザベスが「ドルイドの巫女」と呼ばれていることも、符合があって面白いですよね。

 

この文様にはまだまだ謎があります。

そもそも、これはエリザベス個人のものなのでしょうか? それとも、彼女は「ドルイドの巫女」だそうですからドルイド族の紋章なのでしょうか。或いは「女神の使徒」だそうですから女神族の紋章?

現時点では判断できません。

 

一方で大いに気になることに、メリオダスがこの文様を好んで甲冑に使っているという事実があります。

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 ダナフォール王国で聖騎士長を務めていた頃は、両手の手甲と剣の柄頭部分に、あの文様が刻んであります。リオネス王国に移って<七つの大罪>団長になってからは胸元と両膝に刻んであり、ベルトの留め具までその形になっています。どんだけ好きなんだって話です。

愛する「エリザベス」のマークだから自分の甲冑に刻んでいたのでしょうか?

それとも、彼自身がドルイドなり女神なりの陣営に属した過去があって、その名残で紋章を身に帯び続けているのでしょうか。

 

また、或いは…。

第109話で魔神ゼルドリスが復活した際、「<七つの大罪>という邪魔な存在がいてな」と聞いただけで「メリオダス――か」と理解していました。そして外伝『エジンバラの吸血鬼』では、やはり3000年ぶりに復活した吸血鬼族の王イズラフが、人間の討伐騎士団の名が<七つの大罪>だと知るや「おこがましい人間らしい不遜な名よ 正に死に値するわ」と不機嫌になっていました。 

即ち、3000年前にも<七つの大罪>という英雄集団が存在し、メリオダスはそれに属していたのでは?

 例の三脚巴はその紋章でもあり、だからメリオダスはそれを身に帯び続けている……などと考えてみても面白いかもしれません。まあ、十中八九違うでしょうけども。

 

追記

メリオダスの弟の魔神ゼルドリスの剣の柄頭にも、やはり例の三脚巴が刻まれているのだそうです。気づいてませんでした…!

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 となると、「愛するエリザベスのマークだから身に帯びている」説は没ですね。ゼルドリスには吸血鬼族のゲルダという恋人がいたことが明かされています。

「女神族の紋章」説も厳しいでしょう。ゼルドリスが過去に女神族と関わりがあったとしても、今は魔神族の精鋭<十戒>なのですから。

ドルイドの紋章」「3000年前の<七つの大罪>の紋章」も難しいですね。ゼルドリスがそれらに属したとは考えづらい。何か込みいった事情があれば考えられなくもないでしょうが…。

 

現時点では全く判りません。

一つだけ言えるのは、「エリザベス」とメリオダス、ゼルドリスは、同じ集団(?)に属したことがあり、メリオダスとゼルドリスは今もそれを大事にしている、ということでしょうか。

 

光の導き手

エリザベスは「女神の使徒」で、女神族ではありません。「ドルイドの巫女」とも呼ばれています。「巫女」と「神の使徒」はほぼ同義で、神と交信・仲介し時にその代理人となる「人間」を指す言葉です。ファンブックにも「人間」であると明記されています。

しかし普通の人間ではないことも確かです。奇跡の力や右目の紋章は勿論、その血液は魔神族を封じた<常闇の棺>の鍵であるうえ、触れた魔神族の肌を、軽度ですが酸のように焼くからです。

 

そもそも、「ドルイドの巫女」たる「女神の使徒」とは、具体的に何なのでしょうか? 人間ならば、どうして女神族めいた力を発揮でき、女神の互換物のように扱われるのでしょうか。

これは妄想ですが、女神族の血を飲んだ人間、という説を挙げておきます。

魔神族の血を(適合者が)飲めば、魔神族に近い外見や能力を得られる。ならば、女神族の血を飲んでも同じようなことが起きるのではないかと。

ドルイド族は女神を崇める人間集団とされています。よって女神族と親交があり、血の供与が行われていたかもしれません。ドルイド族の選ばれた巫女が女神の血を飲み、適合者が「女神の使徒」と呼ばれる永遠の再生者となる。…なんてことだったら面白いですが、どうなんでしょうね。

 

小説『七つの大罪 セブンデイズ』に、以下のような一文があります。

 ブリタニアがまだブリタニアと呼ばれる前の時代。

 この地には女神族、妖精族、巨人族、魔神族の四つの種族が混在していた。そこへ人間がやってきて、この地で生物学的に上位層に含まれる種族は五つになった。

 戦いが起きたのは数千年前である。

 禍々しい力を持ち、他種族との調和の一切を拒絶した種族、魔神族。

 これに対し、妖精族、巨人族、人間を率いた女神族が討伐を敢行した。戦争は四つの種族の力を合わせた女神族の勝利に終わり、魔神族は封印された。しかし、戦いの中で女神族もまた力を使い果たし、姿を消した――と伝説にはある。

 つまり、この伝説を信じるのであれば、妖精と人間はある一定の期間、共闘関係にあったと言えよう。ただし、それも戦いが終わるまでの間だった。女神族という、いわば各種族の導き手とも言える存在を失った時点で、すぐに妖精族は人間との関係を断った。一応は人間の国家との間で和平の盟約を結んでいるが、それは互いの積極的な交流を意味するものではない。

 ここで女神族を、バラバラだった各種族を結びつけた「導き手」だと記してあるのは興味深い表現です。

前述のブリタニアの古詩にも「光の導き手と黒き血脈の聖戦の始まりの兆しとならん」とありますから、素直に見るなら、光の導き手=女神族、黒き血脈=魔神族の戦いが再び始まる、という解釈になるでしょう。

 

しかし、うがった見方をすることも不可能ではありません。

黒き血脈がメリオダスで、光の導き手とはエリザベスのことであり、この二人が魔神族以外の何かに立ち向かう、真の聖戦が始まるのだと。

 

思えば第一部において、エリザベスはまさに、バラバラだった<大罪>たちや聖騎士たちの心を動かしまとめた「導き手」の立ち位置でした。メリオダス&ホーク、ディアンヌ、キングが仲間になるエピソードに顕著です。

ディアンヌ

「ボクは 人間や… 人間の国の事情は知らないし 正直 あんまり興味もない…
 でも…」

「キミのためなら戦ってもいいと思った
 今日のキミが あんまりカッコ良かったから」

「キミは 自分には力がないって言ってたけど… ちゃんとあるよ
 ボクや団長の心を動かす力が……さ」

 エリザベスは「女神の使徒」だから、かつての女神族のような「導き」の力を、知らずに発揮しているのでしょうか?

あるいは。3000年前に女神族の代理人として四種族を導いたのこそが、始まりの「エリザベス」だった、なんて可能性もあるのでしょうか。

  

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