【感想】『七つの大罪』第225話 滅びし廃都へ
週刊少年マガジン 2017年32号[2017年7月12日発売] [雑誌]
第225話 滅びし廃都へ
- 風車式の粉挽き小屋が林立する、リオネス王国南東に位置する農村・オーダン。
- その外れの荒所に新しい墓地があった。緩い斜面に並ぶ、杭を十字に結んで建てただけの簡素な墓標の群れ。その数は、あまりにも多い。
- うち一つの周囲の土は湿っていた。作られたばかりなのだろう。せめてもの供養か、墓標の根本は花で飾られている。その傍らでスコップを手に立つ壮年の男に、幼い少年が憤りをぶつけていた。
- 「もうやめてよ パパ!! 魔神族に媚びるために旅の人間を生贄に差し出すなんて…!!」
「わかってくれ ペリオ!! これも村の人間たちを守る長 の務めなんだ!!」 - 「パパたちは意気地なしだ!!」
金色の髪を肩口で切り揃えた、父親によく似た面差しの少年は、手に棒きれを持って叫ぶ。
「こうなったら… 俺が魔神たちを やっつけてやる!!」
「バカ!!」
父親は焦ったように息子の頬を平手で打った。幾分 声を潜める。
「もし今のが聞かれでもしたら…」 - 「聞イタゾ~?」
奇妙な響きの声が被さった。
「!!?」
ギクリとして振り向けば、異形の魔神がヌルンッと2mほどの高さに半身を立ち上げている。
頭部はボールのように丸く大きく、目鼻立ちだけは人間に近い。人間より関節が一つ多い腕は三対六本。脚はなく、蛇のように伸びた胴体の先端はサソリの毒針を思わせる形をしていた。
「誰ガ俺タチヲ ヤッツケルッテ?」「ヌヒョヒョッ!」
細目で薄く笑ったかのような顔で、尖った舌を五枚も垂らしている。それで ペロペロペロペロ と忙しなく口の周りを舐め回し続けていた。 - 『公開処刑』が行われたのは村の広場だ。村人全員を集めてのことだった。
「ヌヒョヒョヒョ~ッ!! ドウシタ? ン? 反撃シテミロ!」「オレタチヲ ヤッツケルンダロ~~ウ?」
棒きれを持っただけの少年を、丸頭の魔神が六本の腕で一方的に殴り続けている。
「ホレ ホレ」
大きな手で左右の頬を パ パァン パ パン と繰り返し張った。 - 村人たちは辛そうに目を逸らし、あるいは自分の子供を抱きしめて、せめて惨状が目に入らぬようにするしかできない。
- 数十人の村人が集められているのだ、<十戒>ならまだしも、格下らしき丸頭の魔神一匹だけなら、団結しての反撃を試みる者もいたかもしれない。
だが、丸頭の魔神は背後にもう一体、巨人族よりやや小柄…身長4mほどの巨大な魔神を控えさせていた。「コルル…」と獣のように唸るそれは、短い角を左右に生やし、ひび割れの底のような目、丸く空いたままの口に乱杭歯を見せて、逞しい胸板から繋がる腕の太さは巨木のようだ。
「ハラ…」「ヘッタ」
今のところは大人しく佇みながら、不穏に よだれを垂らしている。 - 殴られ続ける息子を、父である村長は苦しげに、しかし目を逸らさずに見つめていた。周囲で村の男たちが口々に非難する。
「ペリオのバカめ…」
「村長!! あんたの息子のせいで俺たちまで割りを食ったら どう責任取るんだ!?」
もはや己の保身しか考えられない人々に反論も出来ず、村長は「…っ」と言葉を詰まらせるばかりだ。 - 「ペリオが…!! このままじゃ殺されちゃう」
人々の輪の中で幼い少女が泣き喚いている。ペリオを中心に<七つの大罪>ごっこに夢中だった仲良し組の一人、メラだ。彼女を母親が必死に抱き止めている。
「行っちゃダメ!! 仕方ないの!!」
「どうして!?」 - その隣では、やはり仲良し組の少年であるカッツとトーマスも、親に抱きかかえられて「ペリオー」と泣いていた。
- 子供たちの方が よほど真っ当だ。重圧に潰されきった大人たちは、本当の望みを口にする勇気もない。
- 「ペリオ…」苦しそうに脂汗を流しながらも、村長は項垂れた。
「ゆ…」「許してくれ…」
魔神族には逆らわない。その決断で、全滅した村や町も多いなか、この一ヶ月余り村を守ってきた。村人全員の命には代えられない。村長の目に涙がにじむ。 - その声が聞こえたかのように、殴られるばかりだったペリオが棒切れを支えに踏みとどまった。
- 「オ?」と、丸頭の魔神。
- 「パパに… 友達に… 村のみんなに… 悲しい顔をさせる お前らを 俺は… 許さないぞ」
「ハ…」「ハ…」と浅い息を吐く幼い顔は、血で汚れて無残に腫れ上がっていたが、怯まず魔神を睨みつける。
「おれは… 聖騎士になる男… なんだ…化け物 らなんかに絶対… 負けない」
◆ペリオが子供とは思えぬ素晴らしい強メンタル・心の広さで感服しました。
父親に見捨てられても恨まず・諦めず、父を追い詰めて そうさせた魔神こそが悪いのだと正しく怒り、友達や村人たちのことまで思いやるとは。大人でも なかなか そうできないです。 - その喉に、シュッと魔神の尾が巻きつけられた。軽々と持ち上げられた少年の両足が宙に浮く。
「んっぐっ」
足をバタつかせるばかりで、どうにもできない。 - 「飽キタナ モウ死ネ」
興が醒めたとばかりに、丸頭の魔神は「んばぁ~~♫」と大きな口を開けた。魂を喰らおうとばかりに。 - その時だ。誰かが言った。
「まず その子を返せ」 - 「ドウゾ」
目前の男に魔神は子供を渡す。そして「ン?」と混乱した。どうして従ったのか? その丸い頭には闇色の光の矢が突き立っていたが、自覚はない。 - ペリオは霞む目で自分を抱きかかえた男を見上げた。甲冑を着ている。きっと聖騎士なのだろう。背まで伸びた癖のある髪、眼鏡の下の意外に線の細い顔立ち。それらには ひどく見覚えがあって、大きく目を開く。
- 「それから」
ほんの半年ほど前までペリオの お守り役だった男が、立派な聖騎士の装いをして、不機嫌さを隠さぬ声音で魔神に命じた。
「飽きたなら一人で死ね」 - 「誰ダァ テメェェェッ~」
魔神は六本の腕で容赦なく殴りかかる。
ド ボコ ベコ ボゴゴ ボコォッ
「ブベラプラッペペラボヘッ」
自分自身の顔面に向けて。 - 「「!!?」」
異常な事態に、村人たちがどよめいた。 - 「あ… あの人は…」
その中で、少女メラは ハッと気付いた顔をする。 - 丸頭の魔神は、ボコボコになった顔面に己の拳をめり込ませたまま混乱していた。
「?」「ナンレ…自分…レ」
五枚舌は全て自ら噛み千切ってしまっている。 - ドサッ、と丸頭の魔神が地に崩れたのと同時に、背後の巨大な魔神が両腕を振り上げた。
「魂 …」「喰ワセロ!!!」
大木のような腕を、グアッ と聖騎士めがけ振り下ろす。 - 真・霊槍シャスティフォル 第五形態
「増殖 」
腕が振り下ろされるより早く、その全身から指先に至るまでが無数の大鏃 で切り刻まれ、粉々に砕け散っていた。 - 「ひえっ」
「わあっ」
バラバラと雪崩落ちる肉片から逃げまどう村人たち。 - 巨体が散って開けた空の向こうに、やはり全身を甲冑で固めた少年が浮かんでいるのが見えた。背には小ぶりの翅が生えている。
- 『さっすがはハーレクイン!! 本来の霊槍の力を大分 使いこなせるようになったようだね~』
冑に宿る親友 の亡霊が誉めそやしても、少年は冷徹な表情を崩さない。
「まだまださ 相手が弱すぎる…」
その指先の動きに従って、縦横に飛び回っていた大鏃 が風に巻かれた木の葉のように群れ集まり、渦を巻いて緑色のクッションに変化していった。 - 村人たちは広場の隅に固まったまま、闖入者たちを注視している。
肉片となった魔神は動かない。村中をうろついているはずの灰色や赤色の魔神も集まって来る様子はない。
「ま… まさか あの人たち…」
「俺たちを救って…くれた……のか?」
「わかんねえよ」
誰も笑わなかった。この一ヶ月が苛酷過ぎたのだ。肩で風を切っていた王国の聖騎士とて誰も魔神には敵わず、しまいに村人たちで捕らえて魔神への生贄に差し出してきた。それが今更、魔神を倒せるほど強い聖騎士が現れて助けてくれるなんて。誰もが疑い、恐れ、戸惑っている。 - 「ねえ… あの黒髪の人って」
そんな中で、ペリオを抱きかかえた聖騎士に言及する声があがり始める。
◆黒髪? ゴウセル(アーマンド)はモノクロだと確かにベタ塗りの黒髪ですが、カラーだと、ゴウセルもアーマンドも、赤紫~濃ピンクの髪色なのに。 - その頃、高台からメリオダスとマーリンが村の広場を見下ろしていた。メリオダスが倒したのだろう、周囲にはバラバラに分断されたた灰色の魔神の屍が転がっている。
- 「いいのか? こんなところで道草など…」
マーリンが尋ねた。
「ゴウセルが寄りたがってたんだ…」「それに」「魔神たちのせいで人間の心まで すさんじまってる… それを助けるのも聖騎士 の務めだろ」
『聖騎士らしい』立派な文言を唱えて、メリオダスは飄々と笑っている。その顔を ふと俯けると、笑みを消して堅い声で呟いた。
「のんびりする気はねえが…」「焦りは何より禁物だろ?」 - 村の広場では、動けない大人たちを置いて、子供たちがペリオを抱いた聖騎士に駆け寄っていた。
- 「やっぱりアーマンドだ!! ペリオを助けてくれたのね!!」
聖騎士の顔を見上げて、真っ先に声をあげる少女メラ。
「帰ってきてくれたんだなアーマンド!!」
「ペリオもアーマンドもすげぇぜ!!」
小柄な少年タントと、てっぺんの髪がツンと立った少年カッツはぴょんぴょん跳ねて はしゃぎ、肥った少年トーマスも、みんな泣き笑いで喜んでいる。 - 「メラ… エリック… トーマス… カッツ 元気そうだね」
子供たちを見渡して、アーマンドと呼ばれた聖騎士は穏やかに微笑んだ。
◆ここ、子供の名前を間違ってます。「エリック」の名を挙げてますが、それは赤ん坊の名前で、今回の話には出てきてません。正しくは「タント」では。
ところで、カッツの顔が以前とは別人かってくらい変わってる(笑)。頭が長くなった! 子供の成長は著しいですね。 - 村長の使用人でペリオのお守り役だった彼が、村から姿を消して半年ほど経つ。いつもペリオに従わされつつ遊んでくれていた彼が、どうしていなくなったのか、どこへ行ったのか、子供たちは知らされていなかったが。
- 聖騎士の腕の中で、笑ってペリオが明かした。
「アーマンドじゃない…」「本当の名前は …ゴウセルだ」 - 「「「え」」」
驚く子供たち。 - その眼前でアーマンドの髪がざわざわと蠢き、見る間に短くなって、癖のない直毛に変化していった。顔立ちは変わらない。しかし、この村で使用人として過ごしていた頃とは雰囲気が違う。
それでも彼は優しげに微笑んでいた。半年前に村を去る際ペリオに見せた、冷たい無表情ではなく。 - 「本当にお前は<七つの大罪>だったんだな」
泣き笑いの顔で、ペリオは慣れ親しんだ男の首にしがみついた。
「…俺が嫌いで嘘をついたんじゃなかったんだな!!」
◆ペリオは、そんな風に疑ってたのか…。誤解が解けて良かったですね。 - 広場の端に留まったまま、村長は かつての使用人と息子を見守っている。今の自分に割り込む資格はないと思っているのか。
- ゴウセルは訊ねた。
「…ペリオは まだ 聖騎士になって俺を捕らえたい?」
半年前は、<七つの大罪>は指名手配された お尋ね者だった。自分は<大罪>ゴウセルだから村を去ると告げたアーマンドに憤って、本当に本物の<大罪>だというなら、いつか聖騎士になって捕まえてやる、その時になって謝っても絶対に許してやらないとペリオは泣き喚いたのだ。 - そして今、訊ねられたペリオは笑って首を左右に振った。
「俺は」「お前みたいな聖騎士になりたい…!!」 - ゴウセルは微笑む。面映ゆげな、満足そうな笑顔だった。
- 一方。
自らを殴って倒れていた丸頭の魔神は、密かに広場を逃げ出していた。すれ違った村の女性が「ひっ」と悲鳴をあげたのにも構わず、猛スピードで這い進んでいく。
「グゾ…」「許セン…! 許サン…!! 必ズ復讐…」 - ゴッ
「プッ」
その顔面が何かに激突し、阻まれる。
「ナ…ナンダ!? コノ デカブツ」「ソコヲ ドケ!」
見れば、鎧をまとった、人間にしては長身の男が立っていたのだった。その向こうには灰色の魔神の屍が転がっていたのだが、動転した丸頭の魔神の目には入っていない。 - 「あ~~ 久々に死にてぇ気分だ♪」
背を向けたまま、銀色の髪をツンツンと立たせた男は言った。
「ナラバ死ネ!!」
丸頭の魔神は背後から殴る。 - 『わかんのかよ♫』『好きな女を二度も死なせる気持ちが』
「自分 が一番 不幸みてぇな面 しやがって」「我ながらヘドが出るぜ♪」
昨日の自分の言葉を思い出しながら、長身の男…バンは魔神の拳を受け続けた。サンドバックのように、佇んだまま。
『それからの三千年 107人のエリザベスと出会い 過ごし』『106人のエリザべスの最期を看取った』
そして、メリオダスの悲壮な告白を思い浮かべる。 - 「丁度イイ…!! オマエノ魂ヲ食ッテ傷ヲ治シ――」「ヤツラニ復讐ヲ…」
魔神は地を這いながら一方的にバンを殴り続けていたが。
「んな痛みじゃ足りねぇわ♫」
歌うようなバンの声が響いた直後、魔神の顔に硬い踵が落とされていた。
バァン
そのまま踏み潰される。
◆バンがバァン - 頭が完全に潰れて目玉が転がり、ピクピクと筋肉痙攣を続ける死骸を眺めながら、バンの思考は遠く飛んでいる。村外れに留まっている<豚の帽子>亭で休む最愛の女に向けて。
(エレイン… 俺は… どうすりゃいい?) - 「バカ…」
ベッドに半身を起こした妖精の聖女は、小さく呟いた。 - 村にいた全ての魔神を倒し、<大罪>一行は再び南東目指して出立した。
どんどこ どんどん と歩み去っていくホークママ。別れを惜しんで、ペリオら子供たちが手を振りながら追ってくる。 - ついに道が途切れたところで、子供たちは足を止めて大きく手を振った。<豚の帽子>亭屋上から手を振り返すゴウセル。
- 『ペリオ… もし友達が困っていて』
『え? …うん それで…?』
『それが他人には簡単に解決できないような問題――――』『例えば 命が懸かっているような悩みだったら… 何をすればいい?』
『ん~~~ よくわかんねぇけど…』『そんなの決まってんだろ』 - 出立前に交わした会話を思い浮かべて、ゴウセルは微笑む。小さな、けれど頼もしい友達の言葉は、彼の胸を心強く満たしていた。
- <豚の帽子>亭、メリオダスとエリザベスの居室。
眠るエリザベスを見つめながら、ディアンヌは辛そうに項垂れている。
「ボクのせいでエリザベスが こんな目に…」「…ボクが無責任に記憶を思い出せばいいなんて言わなければ…」 - すると、後ろにいたエスカノールまでもが項垂れた。
「ディアンヌさんのせいじゃありません 全部 僕のせいです…」「マーリンさんを助けたいばかりに 何も考えず 王女様を巻き込んでしまった」
◆いや…。エスカノールは全く悪くないでしょ(汗)。マーリンを助けるためにエリザベスを連れてきたのはヘンドリクセンだもの。 - 「違う!! 悪いのはボクなの!!」
勢い良く振り向いて涙をこぼしたディアンヌが叫んだとき、
「誰も悪くねぇよ!!」
とホークが一喝した。 - 「お前ら少しは冷静になれ!!」「本当に辛いのはメリオダスなんだ」「エリザベスちゃんを助ける方法は きっと あるって!!」
昨日まで顔からあらゆる液体を垂れ流して泣いていたというのに、今日のホークは普段通りだ。「プゴ」と鼻息を吹いて少女と中年を諫めてのけた。 - ホークママは進んでいく。
その日は それ以降何事もなく。
薄暗い自室で、裸の胸にエレインを抱いて、物思いにふけっているバン。
普段通りに過ごして残飯を食べているホーク。
巨人サイズに戻るほど時間が過ぎても しょんぼりしたままのディアンヌは、キングに優しく頭を撫でてもらって、少しだけ微笑んだ。 - メリオダスは屋上で一人、景色を眺めていた。夜には甲冑を脱いで店長服に着替え、眠るエリザベスを覗き込む。彼女は丸一日以上眠ったままだ。目覚めてほしい反面、その時から終わりのカウントダウンが始まることは判っている。
- 夜は更け、日が昇った。
リオネス王都を出発して三日目。
足を止めたホークママの頭上、<豚の帽子>亭の扉を開けて、再び甲冑を着込んだメリオダスが歩み出てくる。
「ようやく着いたか…」「城塞都市コランドだ」 - それは、周囲を千尋の奈落に囲まれた陸の孤島だった。唯一の入口は細く長い岩の橋。飛べる種族や魔術師には無意味ではあるが、人間族相手ならば難攻不落の城塞だっただろう。
◆コランドの岩橋。
橋を支える岩柱があまりにも長く高く規模が大きいうえ、足場も悪い。人間の技術で造るのは困難に見えます。種族特性の魔力で直接 岩柱を地面から生やせる巨人族が、建造に関わってたんじゃないかなあ? - 「さてさてさーて…」
続いて酒場から出てきた仲間たち、既に巨人サイズでホークママと並んで立っていたディアンヌ(未だに浮かない顔をしている)を見渡して、メリオダスは改めて指示を飛ばした。
「全員で とっとと次元のひずみとやらを解除して キャメロットに乗り込むぞ!!」 - その時、何かに気付いた顔をしたエスカノールが、都市を指さして戸惑い含みに報告した。
「団長…? 街の入り口に架かる橋の上に人が…」 - メリオダスも目を向ける。橋の根元、都市の門前に立つ人影を認めて、大きく顔色を変えた。
- 「ここへ来たのはエリザベスのためか?」「ということは まだ生きているらしいな… しぶとい女だ」
小柄な少年だ。その声質はメリオダス自身によく似ている。 - 表情を険しくするマーリン。
「!! なぜ奴が…」「メリオダス これは罠だ」 - その警告を聞いていながら。
ドンッ
背負う剣の柄を掴むや、ホークママの頭を蹴ってメリオダスは跳び出していた。一跳びで都市の門前に、そこに立つ魔神ゼルドリスに向かう。 - 「いい加減 あの女に囚われるのはやめろ」
自身の剣に手を掛けもせず仁王立ちのまま言った弟に、憤怒の顔で襲い掛かった。 - 次回「アラクレ」
ペリオの父親のこと
第178話で、魔神に恭順したオーダン村の様子が語られた際、元聖騎士フリージアを捕らえて魔神フラウドリンに差し出した村人たちの中に
「誇りで家族は救えんのだ…」
と言ってる立派な顎ひげの人がいて、多分この人がオーダンの村長でペリオの父親なんだろうな・後でまた出番があるんだろうなと思っていました。
たった2コマの登場でしたが、台詞に重みがあって思わせぶりだったのと、他の村人より威厳のある容姿だったからです。
ところが、その後スペシャルTVアニメ『聖戦の
えっ違ったのか恥かしい…と密かに思ってました(^^;)。
(そんなわけで、わざわざ父親の容姿の感想を記事にしたのである。)
でも。
なーんだ、やっぱり この顎ひげの人がペリオの父親だったんじゃないですかー(安堵)。
アニメ版と原作では、オーダン周りの設定は本当に色々違うんですね。
(そもそも、アニメ版には「アーマンド」が存在しない。)
まさかペリオ父のキャラデザインそのものさえ違うとは。
余談
原作ペリオの父の呼び方…パパ
アニメペリオの父親の呼び方…父ちゃん
個人的には、ペリオ父のしたことを責める気にはなれないです。
だから、ペリオが父親を憎んだり恨んだりせず、パパに悲しい顔をさせる
でも、ペリオ父は、これから苦悩し続けるんだろうなと思います。
魔神に対抗する力を持たない者が、家族(ペリオ)や村人を生き残らせるにはどうするか。選んだ手段は、魔神に恭順し、旅人を身代わりの生贄に差し出すこと。
その果てに、最も大切な家族(ペリオ)すら差し出さねばならなくなった。
本末転倒ですが、彼は父親であると同時に村長で、村人全員の命をも背負っている。息子(
それをどう評価するかは、人によって違うんでしょう。
守られた村人の中にさえ、今後、「自分の息子さえ見捨てるとは村長は冷血だ」と悪く言う人は、きっと出てくるんだろうなと思います。
彼は生贄に差し出した旅人の墓を、他人に任せずに自分で掘っていました。これからも墓を自分で管理して、独りで懺悔し続けるんじゃないでしょうか。また、一度見捨ててしまった
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バンとエレインとキング
この場面。まるで「事後」のよう(笑)。
個人的には、シテない…んじゃないかなあ…?? と思っています。
エレインは明日にも死にそうなくらい衰弱してるし、バンも精神的にそれどころじゃないでしょう。
バンは、キングやジェリコと同室で寝てた時は服を全部着たまま(寝巻に着替えたりしないし、上着を脱ぐことすらしない)でしたけど、エレインとだと脱ぐのね。
脱ぐと言えば。
王都出発時、<大罪>全員が戦装束を着てたのが、初日早々にエスカノールとディアンヌは脱いで普段着に着替えてて、翌日はバンとメリオダスも鎧を脱ぎました。
でも、ゴウセルとキングは、初日から三日目のコランド到着時まで、ずーーっと鎧を着たままでした。
人形のゴウセルはまだしも、キングは鎧を着っぱなしで しんどくなかったのかな?
いや、描かれてないだけで、きっと寝る時は脱いでたんでしょうけど…。
寝ると言えば。
先日発売されたキャラクターガイドブック『<ペア罪>バン&エレイン』読んで、ビックリしたことがありました。
「一日のスケジュール」のコーナーを見たらば、エレインてば、朝の四時に寝て、朝の五時に起床することになってるんですけど!?
一時間しか寝てない。これどーゆーことなの?(動揺)
エレインは妖精王の森の番人になってから、あまり食事をしなくても平気になったそうですから、同じように、番人になったことで睡眠も 殆ど とらなくても身体を壊さないのでしょうか?
それとも、そもそも妖精族が あまり眠らないものなんでしょうか?
はたまた、エレイン個人が超ショートスリーパーなんでしょうか。
また、なんとなくメリオダスより寝坊だと思っていたバンが、メリオダスより三時間も早く起床してる(就寝時間は同じ)のにも驚かされました。
エレインの睡眠時間が、ちょっと尋常じゃないレベルで短かったので、兄のキングの睡眠時間はどうなんだろうと気になりました。エレインが あまり食べたり眠ったりしなくても問題ないのが、森の番人になったためなのだとしたら、キングも同様だろうと思われるからです。
彼は「怠惰の罪」で「昼寝が好き」なので、朝寝坊なのかなというイメージもありますが…。
個人的には、野外暮らしの妖精族なので、体内時計が自然のサイクルに添ってて、朝は日が昇ったら普通に目を覚ますんじゃないかなとも思っています。夜更かし昼夜逆転の不健康な人間的生活サイクルのイメージは ないかも。
だから、朝は意外に すごく早起きで、合間にちょこちょこ昼寝してるのかもと想像してたり。(あれ、それだとホークのスケジュールと同じだ 苦笑)
キングと言えば。
『<ペア罪>バン&エレイン』を読むと、声優対談のコーナーでエレインの役の声優さんが
(エレインは)戸惑いとか孤独とか、そういった複雑な感情をキングに対して抱いているのではないでしょうか。それでもプロフィールの「尊敬する人物」に「キング」と書いてあることから分かるように、根本の気持ちは変わってないんじゃないかな。エレインとキングがいつか和解できるとしたら、二人の間にはバンがいると思います。エレインにとっても、バンという存在がいたから、キングの見え方が変わったのかも。
と仰ってたり、キャラクター相関図のエレインのページで、エレインからキングの矢印のコメントに
また仲のよい兄妹に戻りたいな
と書いてあって、えっ、エレインってまだキングと仲直りしてなかったのか!? と、ちょっと衝撃を受けました(苦笑)。
てっきり仲直りしてるんだと思ってたよ…。
ちなみに作者さんはインタビュー記事で
(現在のエレインはキングにどんな感情を抱いているのかという質問に)
もちろん兄として大好きだし、許しているけど、それは「バンのおかげ」という部分がありますよね。くどくど言ったりはしないけれど、兄妹関係の修復にバンが欠かせなかったということをキングにわかってほしいとは思っているはずです。当のキングが理解しているかは微妙なところですが(苦笑)。本当はキングこそ、バンに頭が上がらないはずですけど、あくまで「オイラの妹に手を出すな」というスタンスなんですよね……(笑)。
と仰っていました。
あら…。
エレインがキングに「バンを守って」と繰り返し頼んでたのは、兄を守護者として信頼してたからとかではなくて、『兄さんはバンに恩があるんだから、もっとバンのために働いて(プンプン!)』という意味だったんですかね(^^;)。
概ねは許していても、バンへの対応は不満に思ってるということなのかな。もっとバンに感謝して・尊重して・優しくして! と。
現在のエピソードで、エレインの命は尽きかかっています。
なのに何故か、キングが それを どう思っているかが全く描かれない。お見舞いしてる場面もない。(ディアンヌは再三訪ねていますから、エレインの具合がよくないことを、キングが全く知らない筈は ないと思う。しかも同じ家にいるのに…。)
エレインの方も、自分の死でバンが苦しむことは心配しても、兄のことは考えている様子がありません。
互いにたった一人の肉親同士なのに、やけにドライじゃない?
兄妹が不自然なレベルで関わらないのですが、これ、意図的なものなんでしょうか。
まあ、一ヶ月前に生命不安定なエレインをバンに任せて妖精王の森に帰った時点で、キングはもうエレインとは話を尽くしていて、もはや自分の出る幕はないと思ってて、色々な覚悟もしてるってコトなのかもしれないけど…。
エレインの完全な蘇生は、無論、バンが成し遂げるでしょう。その際に一つくらいキングも手助けできて、ダメ兄貴の挽回を少しは できたらいいのに。
…と、エレインが復活した直後にキングが<豚の帽子>亭を飛び出していった当時に期待したものでしたが、結局、全部終わってから到着という超遅刻で、煽るだけ煽っといて何しに行ったんだよとしか思えない結末でしたっけ。
今回も、妹の生死に全く関われず蚊帳の外に置かれたまま、再三のダメ兄貴ぶりをさらすことになるのでしょうか。(^^;)
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「一番 可哀想な人が王様です」
案の定、ディアンヌやバンが「あんなに可哀想なメリオダスとエリザベスに、身の程を知らない・無責任な暴言を吐いてしまった」と落ち込む展開になってしまいました。悲しい。
ホークは言います。
「本当に辛いのはメリオダスなんだ!!」
まあ、よくある言い回しなんですが。
よくあるからこそ、コレ言ってほしくなかったなあ、とも思いました。
前々回の感想にも書いたように、より可哀想な人が偉いわけじゃないと思っているので。
ディアンヌは、ホークに一喝され・キングに慰められても、立ち直れていません。となると、目覚めたエリザベスに「あなたは悪くないわ」と言ってもらって浮上するパターンでしょうか。
バンの方は、「悔やんでメリオダスに謝罪する」パターンは もう二回もやっちゃってるので、今回は違う感じになるのかなと想像しています。
多分これ、バンの闘級アップイベントなんですよね?
自力で立ち直ってメリオダスを助けてパワーアップ! とか?
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「慈愛」の戒禁の謎
第183話、王都防衛戦にて、バン、ギルサンダー、ハウザー、スレイダー、サイモンらは<十戒>エスタロッサの「慈愛」の戒禁に掛かっていました。
エスタロッサの前で「憎悪」を抱くことで発動し、あらゆる者への一切の攻撃(傷つける行動)ができなくなってしまうのです。(攻撃の意思を持つと武器を持つ手に力が入らず、足が動かず、魔力も使えない)
これにより彼らは戦闘能力を封じられ、エスタロッサがエスカノールに吹っ飛ばされて海の向こうに退場した後も、フラウドリンやグレイロードに攻撃できなくなってしまいました。
…で。
今回バンさん、普通に、灰色の魔神や丸頭の魔神を殺してるんですけど。
(考えてみたらハウザーも、番外編でホークに攻撃してましたね、普通に。)
んんん? 「慈愛」の戒禁はどうなったの?
説A
「慈愛」の戒禁とは、実は「エスタロッサだけを攻撃できなくなる」呪いなのに、王都防衛戦時は「全ての敵に攻撃できなくなる」と勘違いしていた?
説B
エスカノールに吹っ飛ばされたエスタロッサが死亡したので戒禁が解けた?
説C
実は時間経過で「慈愛」の戒禁は解ける?
説D
バンはメリオダスに殴られて腹に大穴開けたことで「死んだ」と判定され戒禁が解けた?(この説だとハウザーも攻撃できるようになってる理屈が通らないけど。)
説E
マーリンがチート能力で戒禁を解いた?
気になるので、近いうちに作中で説明があると嬉しいです。
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今回、線が汚いなと思う箇所が ちょこちょこありました。よろよろしてるとゆーか。
作者さん、お疲れなのでしょうか。
アニメ第二期の放送開始月と、2018年夏に新作劇場版上映の情報が開示されました。
おめでとうございます。